特許第6228055号(P6228055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228055
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】識別システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/06 20060101AFI20171030BHJP
   G06K 19/08 20060101ALI20171030BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20171030BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20171030BHJP
   G06K 7/12 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G06K19/06 084
   G06K19/06 140
   G06K19/08 060
   G01N21/27 A
   G06K7/14 004
   G06K7/12
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-65388(P2014-65388)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-187820(P2015-187820A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西垣 雄一
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010924(JP,A)
【文献】 特開2004−171109(JP,A)
【文献】 特開2003−029636(JP,A)
【文献】 特開平03−281395(JP,A)
【文献】 特開2013−010869(JP,A)
【文献】 特開平03−246097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/06
G01N 21/27
G06K 7/12
G06K 7/14
G06K 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる光透過特性を有する複数種類の透光体の組み合わせからなる透光体集合部と、
前記透光体集合部に光を照射する光照射手段と、
前記透光体集合部を透過した前記光の透過光からなる第1識別光を受光して、受光した前記第1識別光に応じた第1識別用情報を出力する第1受光手段と、
前記透光体集合部による前記光の反射光からなる第2識別光を受光して、受光した前記第2識別光に応じた第2識別用情報を出力する第2受光手段と、
前記第1受光手段から出力された前記第1識別用情報に基いて、前記第1識別用情報が複数種類の前記組み合わせのうちいずれの種類の前記組み合わせからなる透光体集合部に前記光を照射することで得られたものかを識別するとともに、前記第2受光手段から出力された前記第2識別用情報に基いて、前記第2識別用情報が複数の前記透光体集合部のうちいずれの前記透光体集合部に前記光を照射することで得られたものかを識別する識別手段とを備え、
前記透光体は、複数のシリカ粒子からなる集合体が樹脂中に複数分散されて配置されたオパール複合体からなることを特徴とする識別システム。
【請求項2】
複数種類の前記透光体は、前記樹脂中にそれぞれ異なる種類の染料が含まれることで、それぞれ異なる光透過特性を有することを特徴とする請求項1記載の識別システム。
【請求項3】
前記識別手段が用いる条件情報が予め記憶された記憶手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の識別システム。
【請求項4】
前記光照射手段は、前記透光体集合部の全体に白色光を照射する第1照射手段を有し、前記第1受光手段は前記第1識別光を受光して、前記第1識別光に含まれる複数種類の波長の光それぞれの強度の空間分布を表す情報を前記第1識別用情報として出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の識別システム。
【請求項5】
前記光照射手段は、前記透光体集合部に対して前記光を走査させて照射する第2照射手段を有し、前記第2受光手段は前記光の走査にともなって変化する前記第2識別光に応じた時系列情報を前記第2識別用情報として出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は識別システムおよび識別システム用オパール複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
外観上似ている複数の物品について、それぞれを識別するためには、例えばこの物品にそれぞれ異なる模様等を付けて物品の外観に特徴を持たせる方法がある。このような手法により、その物品を見た人物が、模様等に基づく外観的な特徴を判断材料として、その人物の主観的感覚に基いて物品を識別することができる。また例えば、外観に頼らずに下記特許文献1に記載されているようないわゆるICタグと呼ばれる無線通信チップを物品に埋め込み、このチップに記憶された識別情報(ID)に基いて外観上似ている複数の物品を識別する技術も利用されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−183693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の模様等を付ける手法の場合、人間が主観的に識別できる模様のバリエーション等には限界があるので、識別すべき対象の物品の数が多くなった場合、細かい模様の違いなどを人物の主観に基いて判断することが難く、また識別に多くの時間を要するといった課題がある。模様ではなく、数字や英字等の文字列からなる識別符号を明記しておく手法もあるが、この手法では物品の外観上の美観を損ねてしまう場合がある。また、上述のICタグ技術を用いる手法では、基本的に物品の製造過程においてICタグを物品に埋め込む必要があり、コストが比較的高くなってしまう。物品を製造した後に、物品の表面にICタグを取り付けることもできるが、この場合は物品の美観を損ねてしまう。本発明はこれら課題を解決することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、それぞれ異なる光透過特性を有する複数種類の透光体の組み合わせからなる透光体集合部と、前記透光体集合部に光を照射する光照射手段と、前記透光体集合部を透過した前記光の透過光からなる第1識別光を受光して、受光した前記第1識別光に応じた第1識別用情報を出力する第1受光手段と、前記透光体集合部による前記光の反射光からなる第2識別光を受光して、受光した前記第2識別光に応じた第2識別用情報を出力する第2受光手段と、前記第1受光手段から出力された前記第1識別用情報に基いて、前記第1識別用情報が複数種類の前記組み合わせのうちいずれの種類の前記組み合わせからなる透光体集合部に前記光を照射することで得られたものかを識別するとともに、前記第2受光手段から出力された前記第2識別用情報に基いて、前記第2識別用情報が複数の前記透光体集合部のうちいずれの前記透光体集合部に前記光を照射することで得られたものかを識別する識別手段とを備え、前記透光体は、複数のシリカ粒子からなる集合体が樹脂中に複数分散されて配置されたオパール複合体からなることを特徴とする識別システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的低いコストで、識別体の美観を損ねずに識別対象体を高精度に識別することができる。本発明によれば、識別体の美観をむしろ向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の識別システムの一実施形態について説明する機能ブロック図である。
図2図1に示す識別システムに用いるためのオパール複合体の一実施形態について説明する概略図である。
図3】本発明の透光体集合部の一実施形態を、図1に示す識別システムで識別する識別対象体に取り付けた状態を示す図である。
図4】第1受光手段から出力される第1識別用情報の一例である。
図5図1に示す識別システムにおいて、識別対象体のオパール複合体に第2識別光を照射している状態について説明する概略の側面図である。
図6】第2受光手段から出力される第2識別用情報の一例を示している。
図7】本実施形態のオパール複合体の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の識別システムの一実施形態について説明する機能ブロック図である。図2は、図1に示す識別システムに用いるためのオパール複合体の一実施形態について説明する概略図である。図3は、本発明の透光体集合部の一実施形態を、図1に示す識別システムで識別する識別対象体に取り付けた状態を示す図である。
【0010】
図1に示す識別システム100は、それぞれ異なる光透過特性を有する複数種類の透光体13α〜13γ(図3参照)の組み合わせからなる透光体集合部10(透光体集合部10a〜10n)と、透光体集合部に光を照射する光照射手段102と、透光体集合部10を透過した光の透過光からなる第1識別光R1を受光して、受光した第1識別光R1に応じた第1識別用情報を出力する第1受光手段104aと、透光体集合部10による光の反射光からなる第2識別光R2を受光して、受光した第2識別光R2に応じた第2識別用情報を出力する第2受光手段104bと、第1受光手段104aから出力された第1識別用情報に基いて、第1識別用情報が複数の組み合わせのうちいずれの組み合わせからなる透光体集合部に光を照射することで得られたものかを識別するとともに、第2受光手段104bから出力された第2識別用情報に基いて、第2識別用情報が複数の透光体集合部のうちいずれの透光体集合部に光を照射することで得られたものか否かを識別する識別手段108とを備えている。識別システム100はまた、識別手段108が用いる条件情報が予め記憶された記憶手段106を有する。
【0011】
光照射手段102は、透光体集合部10の全体に白色光L1を照射する第1照射手段102aを有し、第1受光手段104aは第1識別光R1を受光して、第1識別光R1に含
まれる複数種類の波長の光それぞれの強度の空間分布を表す情報を第1識別用情報として出力する。例えば第1識別用情報として、赤色の波長帯域の光C1の空間分布を表す情報と、黄色の波長帯域の光C2の空間分布を表す情報と、青色の波長帯域の光C3の空間分布と表す情報とを出力する(図4参照)。
【0012】
透光体13α〜13γはそれぞれ、複数のシリカ粒子1からなる集合体2が樹脂4中に複数分散されて配置されたオパール複合体からなる。複数種類の透光体13α〜13γは、樹脂4中にそれぞれ異なる種類の染料が含まれることで、それぞれ異なる光透過特性を有する。例えば透光体13αは白色光の透過光が赤みを帯び、透光体13βは白色光の透過光が黄色みを帯び、透光体13γは白色光の透過光が青みを帯びるといった特徴をそれ
ぞれ有する。透光体集合部10a〜10nは、いずれも同じ種類の透光体13α〜13γの組み合わせとなっている。例えば第1識別用情報として得られる、赤色の波長帯域の光の空間分布と表す情報と、黄色の波長帯域の光の空間分布と表す情報と、青色の波長帯域の光の空間分布と表す情報とが、いずれもほぼ同様の特徴を有しており、透光体集合部10nに白色光を照射した際の透過光はいずれも、赤みを帯びた光、黄色みを帯びた光、青みを帯びた光の組み合わせになっている。第1照射手段102aは、例えば白色の光を照射できるLED照射デバイスなどである。第1受光手段104aは、例えばCCD素子等の光の空間分布を測定できるデバイスである。
【0013】
光照射手段102はまた、透光体集合部10に対して光L2を走査させて照射する第2照射手段102bを有し、第2受光手段104bは光の走査にともなって変化する第2識別光R2に応じた時系列情報を第2識別用情報として出力する。光L2は、例えば特定のピーク波長を有するレーザー光を用いることができる。第2照射手段102bは、例えばLED素子を有するLED照射デバイスや、レーザー光を出射するレーザー発光デバイスなどである。第2受光手段104bは、例えばフォトダイオード素子等を備える受光デバイスであり、受光した光の強度に応じた電気信号を第2識別用情報として時系列に出力する。
【0014】
記憶手段106と識別手段108とは、情報処理ユニット120に設けられている。また情報処理ユニット120には、各手段と接続して各手段の動作を制御する制御手段110も設けられている。情報処理ユニット120は、例えばメモリ106に記憶されたプログラムをCPU(図示せず)が実行することで各手段(記憶手段106、識別手段108、制御手段110等)が機能するコンピューターである。なお、情報処理ユニット120は、例えば特定機能を有する電子回路等が組み合わされて構成された専用装置であってもよく、光照射手段102や受光手段104、および情報処理ユニット120について、その構成は特に限定されない。
【0015】
識別システム100では、複数の透光体集合部10a〜10nそれぞれが、複数の識別対象体11a〜11nにそれぞれ取り付けられている(nは任意の数で特に限定されない)。記憶手段106には、透光体集合部10a〜10nの全体に白色光L1を照射した際に得られる第1識別光R1に含まれる、複数種類の波長の光それぞれの強度の空間分布の特徴を表す情報が記憶されている。本実施形態では上述のように、複数種類の波長の光それぞれの強度の空間分布の特徴を表す情報は、透光体集合体10a〜10nのいずれもほぼ同様である。識別手段108は、記憶手段106に記憶された条件情報を参照し、第1受光手段104aから出力された第1識別用情報に基いて、第1識別用情報が複数の組み合わせのうちいずれの組み合わせからなる透光体集合部に光を照射することで得られたものかを識別する。本実施形態ではより具体的には、透光体集合部10a〜10nが共通して有する複数種類の波長の光それぞれの強度の空間分布の特徴を有するか否かを判別する。記憶手段106にはまた、複数の透光体集合部10a〜10nそれぞれと、取り付けられた識別対象体11a〜11nそれぞれとの対応関係(例えばオパール複合体10aが識別対象体11aに取り付けられ、透光体集合部10bは識別対象体11bに取り付けられている等の情報)が予め記憶されている。また識別手段108は、記憶手段106に記憶された条件情報と対応関係とを参照し、第2識別用情報が複数の識別対象体11a〜11nのうちいずれに取り付けられた透光体集合部に光Lを照射することで得られたものかを識別する。
【0016】
本実施形態の透光体集合部10a〜10nそれぞれに用いられている透光体13α〜13γはいずれも、複数のシリカ粒子1からなる集合体2が樹脂4中に分散されて配置されている。集合体2では、シリカ粒子1はある程度の規則性をもって配列されてなる層が複数積層したような構造を有している。シリカ粒子1が層状に配列して構成された面を主面
3とすると、主面3の方向や位置、また層状に構成された主面3の間隔等は集合体2ごとに異なっており、樹脂4中にそれぞれがランダムに配置されている。このようなオパール複合体10に例えば白色光が照射された場合、白色光は集合体2におけるそれぞれの主面3において反射して特定波長の光が強め合うが、主面3の位置や角度の違い等に応じて、これら強め合う波長が変化する。
【0017】
透光体13α〜13γ内には、このように集合体2が分散しているので、見る角度に応じてそれぞれの集合体2の色が変化する(すなわち、見る角度に応じて、観察者の目に届く光のうちの強まっている波長が変化する)。このように見る角度に応じて、強度が強い光の波長(色)が変化する効果は遊色効果と呼ばれ、優れた美観を有する。また、集合体2の配置位置はランダムに分散しているので、集合体2で反射する光の強度やは場所毎に異なる。これら透光体13α〜13γにおける集合体2の位置(分散状態)や、各集合体2における主面3の向きや層の間隔などは完全に制御することは実質的に不可能であり、透光体13α〜13γがそれぞれ複数あれば、これら反射光や透過光の状態はオパール複合体10毎に全て異なっているといえる。
【0018】
一方で、透光体集合部10a〜10nは、いずれも同じ種類の透光体13α〜13γの組み合わせとなっており、例えば第1識別用情報として得られる、赤色の波長帯域の光の空間分布と表す情報と、黄色の波長帯域の光の空間分布と表す情報と、青色の波長帯域の光の空間分布と表す情報とが、いずれもほぼ同様の特徴を有している。すなわち透光体集合部10a〜10nから得られる第1識別情報が、いずれも例えば左側から赤、黄色、青の順で並んでいるといった共通の特徴を有している。
【0019】
加えて、遊色効果自体は複数の透光体集合部10それぞれが共通して有しているので、複数の透光体集合部10それぞれの外観上の特徴は、人間が主観的に識別できるほど大きくない。透光体集合部10はこのように、外観上の特徴は人間が主観的に識別できるほど大きくなく統一したデザイン感をもつ一方で、人間が主観的に識別できる精度よりも高い精度で反射光や透過光の状態を比較した場合、反射光や透過光の状態は複数の透光体集合部10それぞれで全て異なっている。
【0020】
識別システム100では、図3に示すように複数の透光体集合部10a〜10nそれぞれが、複数の識別対象体11a〜11nにそれぞれ取り付けられている。本実施形態の識別対象体11a〜11nは例えばバッジであり、材料の質感や形状、標記された文字列(図3で●▲■で示す)などからなる基本的デザインが同一である(すなわち、複数の識別体11a〜11nそれぞれで、人間が主観的に識別できるほど外観上の違いが大きくない
)。このように基本的デザインが同一のバッジは、例えば社章など、これらバッジをつ
けた人物が、特定の1つの組織(特定の企業等)に属していることを示すために用いられている。以下、識別システム100の使用例について説明する。
【0021】
《第1の識別》
まず、識別対象体11a〜11nのいずれかを例えば図示しないホルダ等に固定する。第1照射手段102aは、このホルダにおける特定位置に特定の角度で光L1が照射されるよう設定されており、第1照射手段102aは、この識別対象体11(識別対象体11a〜11nのいずれか)に取り付けられた透光体集合部10(透光体集合部10a〜10nのいずれか)の所定位置に所定の角度で光L1を照射する。
【0022】
第1受光手段104aの受光面も、ホルダに対して特定の位置と特定の角度で設定されており、第1受光手段104aは、この識別対象体11(識別対象体11a〜11nのいずれか)に取り付けられた透光体集合部10(透光体集合部10a〜10nのいずれか)の光L1の透過光からなる第1識別光R1を受光して、受光した第1識別光R1に応じた
第1識別用情報を出力する。
【0023】
図4は、第1受光手段104aから出力される第1識別用情報の一例を示している。記憶手段106には、透光体集合部10に光L1を照射した場合に得られる第1識別用情報の特徴を表す条件情報として、赤色の波長帯域C1の光の空間分布と表す情報と、黄色の波長帯域の光C2の空間分布と表す情報と、青色の波長帯域C3の光の空間分布と表す情報等が予め記憶されている。透光体集合部10a〜10nは、いずれも同じ種類の透光体13α〜13γの組み合わせとなっている。 識別手段108は、記憶手段106に記憶された上述の条件情報を参照し、取得した第1識別情報が透光体集合部10a〜10nに光L1を照射することで得られたものか否かを識別する。このような識別システム100によれば、例えばホルダに配置したバッジが、同一の組織を表す特徴を有しているか否かを識別することができる。
【0024】
《第2の識別》
図5は、識別システム100において、識別対象体11の透光体集合部10に光L2を照射している状態について説明する概略の側面図である。識別システム100では、識別対象体11a〜11nのいずれかを例えば図示しないホルダ等に固定する。
【0025】
第2照射手段102bは、このホルダにおける特定位置に特定の角度で光L2が照射されるよう設定されており、第2照射手段102bは、この識別対象体11(識別対象体11a〜11nのいずれか)に取り付けられた透光体集合部10(透光体集合部10a〜10nのいずれか)の所定位置に所定の角度で光L2を照射する。光L2は、受光手段104bの種類などシステムに応じた特性に応じて設定すればよく特に限定されない。例えば、紫外光や可視光など、その波長範囲は特に限定されず、またレーザー光などであってもよい。
【0026】
受光手段104bの受光面も、ホルダに対して特定の位置と特定の角度で設定されており、受光手段104bは、この識別対象体11(識別対象体11a〜11nのいずれか)に取り付けられた透光体集合部10(透光体集合部10a〜10nのいずれか)による、光L2の反射光からなる識別光R2を受光して、受光した識別光R2に応じた第2識別用情報を出力する。
【0027】
より詳しくは本実施形態では、第2照射手段102bは、透光体集合部10に対して光L2を走査させて照射し、第2受光手段104bは光L2の走査にともなって変化する第2識別光R2に応じた識別用情報を時系列に出力する。
【0028】
図6は、第2受光手段104bから出力される第2識別用情報の一例を示している。図6に示すように本実施形態では、第2識別光R2における、異なる複数(図示は2つ)の特定波長W1、W2それぞれの光強度(波長依存強度)を時系列に出力し、この時系列の情報を識別情報として用いている。
【0029】
透光体集合部10に対して光L2を照射した場合、透光体集合部10による反射光からなる識別光L2は、透光体集合部10にランダムに配置された集合体2の位置や、集合体2における主面3の状態等に応じて決まる。透光体集合部10に対して光L2を走査させて照射した場合は、識別光R2の波長依存強度は時系列に変化し、これら識別光R2の情報(本実施形態では時系列情報)は複数の透光体集合部10それぞれで異なっている。
【0030】
記憶手段106には、透光体集合部10に光L2を照射した場合に得られる第2識別用情報の特徴を表す条件情報として、図6に示されるような波長依存強度を表す情報が予め記憶されている。このような条件情報は、識別システム100の使用に先がけて、実際に
第2光照射手段102bおよび受光手段104bを用いて、各透光体集合部10(透光体集合部10a〜10n)が設けられた識別対象体11の全て(識別対象体11a〜11nの全て)について第2識別光L2の時系列変化情報を取得し、これら時系列変化情報を条件情報としてメモリ106に記憶しておけばよい。
【0031】
また本実施形態のメモリ106には、このような透光体集合部10それぞれ(透光体集合部10a〜10n)毎に記憶された条件情報に加えて、複数の透光体集合部10(透光体集合部10a〜10n)それぞれの条件情報と、取り付けられた識別対象体11a〜11nそれぞれとの対応関係が予め記憶されている。例えば、図5に示すような複数の透光体集合部10(透光体集合部10a〜10n)それぞれの条件情報の1つ1つについて、この条件情報に対応する透光体集合部10が取り付けられた識別対象体11はどの人物が所有するものであるかといった情報が、メモリ106に記憶されている。
【0032】
識別手段108は、記憶手段106に記憶された上述の条件情報を参照し、取得した第2識別情報がいずれの透光体復号部(透光体集合部10a〜10nのいずれか)に光L2を照射することで得られたものかを識別し、かつ対応関係を参照する。参照によって識別手段108は、取得した第2識別情報が複数の識別対象体11a〜11nのうちいずれに対応するものであり、さらに取得した識別情報は、どの人物に対応するもの(どの人物が所有するもの)であるかを識別する。
【0033】
このような識別システム100によれば、例えばホルダに配置したバッジが、どの人物が所有するバッジであるかを識別することができる。識別システム100は図示しないモニタ等の情報出力手段を備えており、この出力手段で出力された情報を確認することで、識別システム100を扱うオペレータが、ホルダに配置した識別対象体11を、どの人物が所有するものであるかを確認することができる。
【0034】
本識別システムを用いるとICタグ等を用いることなく比較的低いコストで、識別対象体を高精度に識別することができる。またオパール複合体は、遊色効果も備えた優れた美観を有するものであり、美観を損ねないばかりでなく、例えばバッジ等の識別体の美観をむしろ向上させることもできる。
【0035】
例えば社章等のバッジの一部等にオパール複合体からなる本実施形態の透光体復号部を用いた場合、オパール複合体が優れた美観を有する統一したデザインの一部を構成しつつ、人物名や組織内IDなどの個人情報を隠した(標記しない)状態で、識別システム100によって各バッジ等を1つ1つ識別することも可能である。
【0036】
例えば、会社等の建物の入場口に、第1照射手段102aと第1受光手段104aとを
配置し、第1照射光L1を照射した透光体集合部10が、いずれも同じ種類の透光体13α〜13γの組み合わせとなっているか否かを判定することで、透光体集合部10を所有する人物が、入場を許可された特定の組織に属しているか否かを判定することができる。その上で、館内の特定場所については、第2照射手段102bと第2受光手段104bとを配置し、第2識別情報に基づいて識別された特定の人物のみを入室させるなど、段階的な識別に利用することもできる。
【0037】
本システムの利用例はこのような例に限定されず、その他多様な形態で利用することができる。例えば、条件情報を記憶手段106に記憶させておくのではなく、システム100に設けられた図示しない入力手段(キーボードやマウス等)によって、外部から条件情報を入力し、識別手段108がこの入力された条件情報を用いて識別してもよい。このようにシステム100の構成についても、上記実施形態に限定されない。
【0038】
次に、透光体集合部10に用いる透光体13の製造方法の一実施形態について説明しておく。本実施形態の透光体13の製造方法は、薄膜状のオパールを粉砕することによって、複数の集合体を得る第1工程と、複数の集合体を樹脂中に分散させる第2工程と、集合体が分散された樹脂を固化して固化物を得る第3工程とを含む。
【0039】
第1工程においては、薄膜状のオパールを粉砕して複数の集合体2を得る。まず、シリカ粒子1を分散媒に少量ずつ混ぜ、最終的には質量比でシリカ粒子1に対して分散媒が1〜5倍程度になるようにして1〜3分間攪拌する。分散媒は極性を有する液体であれば特に制限されない。例えば水、アルコール、これらの混合物などが挙げられる。特に水のような極性の高い液体が好ましく、アルコールなどの揮発性の高い液体を分散媒に用いることも可能である。次に、シリカ粒子1の分散液をビュレットに入れて、平板上に塗布して、シート状のオパールの前駆体を形成させる。ここで平板は親水性を有するものが用いられことが好ましい。
【0040】
次に、平板上の前駆体を崩さないように乾燥室へ移動して、シリカ粒子1の分散液の分散媒を少しずつ蒸発させ、シリカ粒子1が沈殿するとともに、シリカ粒子1が凝集するように、シリカ粒子1の分散液の分散媒が少しずつ蒸発させていくのが良い。乾燥する温度と時間は、シリカ粒子1が沈殿するとともに、シリカ粒子1が凝集する時間を満足すればよく、30〜40℃、1〜10分間くらいが目安である。
【0041】
次に、乾燥した薄膜状のオパールを平板からリムバーなどで擦り落すなどの粉砕方法によって、集合体2を得る。あるいは、薄膜状のオパールを水やアルコールなどの分散媒で洗い落として、濾過して分散媒とシリカ粒子1とを分離して集合体2を得ても良い。または、薄膜状のオパールをミル内に投入してもよい。
【0042】
このように、薄膜状のオパールを粉砕すれば、主面を大部分有する集合体2を得ることができる。なお、平板に形成された薄膜上のオパールに事前に樹脂を添加して含浸させることによって、リムバーなどで擦り落とす際に、集合体2が崩れて主面3が損なわれてしまうことを低減することができる。
【0043】
これによって、安定して集合体2を再現性良く、かつ、効率的に製造することができるので、大量生産することが可能である。
【0044】
樹脂を含浸させた薄膜状のオパールは、また、その後の粉砕においても、板状の形を崩さないままで主面3を維持することができる。
【0045】
樹脂を含浸しない集合体2がオパール複合体10中に含まれる場合、より多彩な色合いを有する遊色効果が得られる。
【0046】
このような粉砕された集合体2は、粒径が揃うように分級しても良い。分級方法としては、フィルターでろ過すると集合体2同士が張り付いてしまうので、集合体2を水に分散させた分散液を遠心分離によって分級した後に、撹拌した分散媒中で保管するのが好ましい。
【0047】
第2工程および第3工程においては、複数の集合体2を、赤色や黄色や青色などの特定の色みを呈する染料が含浸されて樹脂4の中に分散して固化する。分散工程において、集合体2と樹脂4との比重の差により両者が混合しない場合、樹脂4を撹拌あるいは対流させながら集合体2を分散する、あるいはさらに、徐々に加熱することで樹脂4を固化した固化物とすればよい。このような分散工程により主面3がそれぞれ異なる方向に面した透光体10を得る。
【0048】
得られたオパール複合体は、最終的な表面仕上げとして、バフ研磨を用いてもよいが、研磨の有無および研磨の種類はこの限りではない。あるいは研磨しないで表面にニスなどを塗布して平滑にすることも可能である。このようなオパール複合体に対して、ワイヤーソー等でスライス加工してシート状にするなどの加工を施すことで、透光体13として使用することができる。
【0049】
図7は、このような工程を経て得られる透光体13の電子顕微鏡写真である。図7中で白く見える部分が集合体2であり、黒く見える部分が樹脂である。このように樹脂中に集合体2が分散されていることがわかる。透光体13における集合体2の配置等はランダムで、見た目の印象については統一感はあるものの、識別システム100によって得られる識別情報は、いずれも異なっている。
【0050】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限定されるものでない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行なってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0051】
1 シリカ粒子
2 集合体
3 主面
4 樹脂
10(10a〜10n) 透光体集合部
11(11a〜11n) 識別対象体
13(13α〜13γ) 透光体
100 識別システム
102 光照射手段
104 受光手段
106 記憶手段
108 識別手段
L1 光
L2 識別光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7