特許第6228056号(P6228056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228056
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/67 20060101AFI20171030BHJP
   A01D 34/81 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A01D34/67 Z
   A01D34/81
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-66621(P2014-66621)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188339(P2015-188339A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 俊介
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−117535(JP,U)
【文献】 実開平04−055225(JP,U)
【文献】 特開平03−285609(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0234699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00−34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方が開放されたハウジングと、該ハウジング内に位置して該ハウジングの上下方向に延びた回転軸と、該回転軸を回転中心として回転可能に前記ハウジング内に収納されたカッタブレードとを含む、芝刈機において、
前記カッタブレードは、前記回転軸に対し水平方向の両方へ延びた細長い部材であり、
前記カッタブレードの長手方向の両端部は、回転方向の前縁に形成された刃と、前記前縁から後上方へ湾曲しつつ延びて旋回流及び上昇気流を発生させるためのエアリフト部とを有し、
前記ハウジングは、前記カッタブレードの回転中心を基準とした平面視略円形状断面の周壁部を有し、
該周壁部の内周面のなかの、前記エアリフト部の回転軌跡に対向する位置には、全周にわたって複数の翼部が一定のピッチで形成され、
該複数の翼部は、前記周壁部の内周面から内方へ突出した上下に細長い凸条、又は該内周面から凹んだ上下に細長い凹条であって、前記エアリフト部の湾曲方向に対して反対側に湾曲しつつ傾いて形成され、
該各翼部の範囲は、該エアリフト部の回転軌跡の範囲内に位置し、該各翼部の範囲の高さは、該エアリフト部の回転軌跡の範囲の高さに対して同一に設定され、該複数の翼部のピッチは、前記翼部の前上端から後下端までの距離よりも小さく形成されていることを特徴とする芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタブレードを収納するためのハウジングを改良したロータリ式芝刈機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ式芝刈機は、下方が開放されているハウジング内に収納されたカッタブレードを、芝草に沿って回転させることにより、該芝草を刈るものである。近年、芝刈機のハウジングの改良が進められている。このような芝刈機の技術としては、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1で知られている芝刈機は、下方が開放されたハウジングと、該ハウジング内に位置して該ハウジングの上下方向に延びた回転軸と、該回転軸を回転中心として回転可能に該ハウジング内に収納されたカッタブレードとを含む。該カッタブレードは、長手方向の両端部に、回転方向の前縁に形成された刃と、回転方向の後縁に形成されたエアリフト部とを有する。該ハウジングの周壁部の内周面には、垂直な複数の凸状部と複数の凹状部とが、周方向に交互に形成されている。
【0004】
該カッタブレードが回転すると、凹状部には、負圧が発生することにより、空気の渦流が発生する。この結果、該ハウジングの周壁部の内周面での風速が増加して、芝草を立たせる効果が増す。その分、該カッタブレードの回転速度を下げても、芝刈り性能を確保できる。該回転速度が減少することによって、芝刈機の騒音を抑制することができる。
【0005】
しかし、芝刈機の芝刈り性能を高める観点から、該カッタブレードの回転速度を下げられない場合があり得る。また、該ハウジングの大きさを変更することなく、芝刈機の芝刈り性能を、より一層高める場合には、該カッタブレードの回転速度を一層増す必要がある。該カッタブレードの回転速度を下げられない場合や、増す必要がある場合には、芝刈機の騒音を抑制するための、何等かの騒音対策が必要となる。
【0006】
さらには、特許文献1で知られている芝刈機は、騒音が発生する要因の1つとされている、該ハウジング内の空気の渦流を増加させるものであり、騒音源の渦流は消えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−117535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハウジング内に発生する空気の渦流を抑制して騒音抑制性能を高めつつ、芝刈り性能を確保することができる、芝刈機の技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、下方が開放されたハウジングと、該ハウジング内に位置して該ハウジングの上下方向に延びた回転軸と、該回転軸を回転中心として回転可能に前記ハウジング内に収納されたカッタブレードとを含む、芝刈機において、前記カッタブレードは、前記回転軸に対し水平方向の両方へ延びた細長い部材であり、前記カッタブレードの長手方向の両端部は、回転方向の前縁に形成された刃と、前記前縁から後上方へ湾曲しつつ延びて旋回流及び上昇気流を発生させるためのエアリフト部とを有し、前記ハウジングは、前記カッタブレードの回転中心を基準とした平面視略円形状断面の周壁部を有し、該周壁部の内周面のなかの、前記エアリフト部の回転軌跡に対向する位置には、全周にわたって複数の翼部が一定のピッチで形成され、該複数の翼部は、前記周壁部の内周面から内方へ突出した上下に細長い凸条、又は該内周面から凹んだ上下に細長い凹条であって、前記エアリフト部の湾曲方向に対して反対側に湾曲しつつ傾いて形成され、該各翼部の範囲は、該エアリフト部の回転軌跡の範囲内に位置し、該各翼部の範囲の高さは、該エアリフト部の回転軌跡の範囲の高さに対して同一に設定され、該複数の翼部のピッチは、前記翼部の前上端から後下端までの距離よりも小さく形成されていることを特徴とする芝刈機が提供される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、ハウジングの略円形状の周壁部の内周面のなかの、エアリフト部の回転軌跡に対向する位置には、全周にわたって複数の翼部(ディフューザ)が形成されている。該複数の翼部は、上下に細長い凸条又は凹条に形成されており、該エアリフト部の湾曲方向に対して反対側に傾いている。
【0011】
一般に、カッタブレードが回転すると、該カッタブレードの回転方向後端から空気が剥離して、渦流が発生する。該渦流は、騒音の原因となり得る。該渦流は、カッタブレードの回転による遠心力により、ハウジングの周壁部の内周面に沿って周方向へ流動する。
【0012】
このときに、請求項1に係る発明では、該エアリフト部の湾曲方向に対して反対側、つまり前上方に傾いている複数の翼部が障害となり、該渦流を崩壊させて、散乱させる。このため、該渦流は乱されて、より小さい渦、又は、より乱れた乱流となる。従って、渦流の大きさが小さくなり、且つ、渦流の運動エネルギーが低減する。結果的に、該カッタブレードの回転方向後端から空気が剥離することによって発生した渦流による、騒音を抑制することができる。つまり、該カッタブレードの回転によってハウジング内に発生する、空気の渦流を抑制して、騒音抑制性能を高めることができる。しかも、該カッタブレードの回転速度に関係なく、騒音抑制性能を高められる。
【0013】
さらには、該エアリフト部の湾曲方向に対して、該複数の翼部が反対側に傾いているので、ハウジングの開放された下方から、該ハウジング内に吸入した空気の上昇流を、該複数の翼部によって上向きに案内することができる。つまり、上昇流を阻害しない。従って、芝地に生えている芝草を、上昇流により立たせて、カッタブレードにより、効率よく刈ることができる。この結果、芝刈機の芝刈り性能を確保することができる。
【0014】
さらには、該複数の翼部は、ハウジングの周壁部の内周面の全周にわたって形成されている。しかも、該複数の翼部は、上下に細長く且つ周方向に傾いている。このため、該複数の翼部は、略円形状の該周壁部を補強するための補強用リブの役割を果たすことができる。従って、該周壁部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る芝刈機の左側面図である。
図2図1に示される芝刈機の平面図である。
図3図1に示されるハウジングとカッタブレードの断面図である。
図4図1に示される芝刈機の底面図である。
図5図3に示されるカッタブレードの側面構成と平面構成と外周縁部の構成とを示す図である。
図6図4の6−6線に沿った断面図である。
図7図3に示されるハウジング及び翼部を下方から見た斜視図である。
図8図3に示されるハウジングと翼部とカッタブレードの関係を拡大して上から見た断面図である。
図9図8に示されるハウジングと翼部とカッタブレードの関係をハウジングの内側から見た展開図である。
図10図8に示される翼部を上から見た拡大断面図である。
図11図10に示される翼部を先端側から見た図である。
図12】本発明の実施例2に係る芝刈機のハウジングと翼部とカッタブレードの関係をハウジングの内側から見た展開図である。
図13】本発明の実施例3に係る芝刈機のハウジングと翼部とカッタブレードの関係を上から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る芝刈機について、図1図11に基づき説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側、Upは上側、Dwは下側、CLは機幅中心(機幅中心線)を示す。
【0018】
図1及び図2に示されるように、芝刈機10は、芝草を刈る歩行型自走式作業機であって、ハウジング11と、該ハウジング11の前部に備えた左右の前輪12,12と、該ハウジング11の後部に備えた左右の後輪13,13と、該ハウジング11の中央の内部に収納された芝刈用のカッタブレード14と、該ハウジング11の上部に備えたエンジン15(動力源15)と、該ハウジング11から後方へ延びた操作ハンドル16とからなる。なお、動力源15はエンジンに限定されず、例えば電動モータであってもよい。
【0019】
該芝刈機10は、図2に示されるように平面視において、該エンジン15によって該カッタブレード14を時計回り方向(矢印Ra方向)に回転させることにより、芝草を刈り取るとともに、該ハウジング11内に矢印Rbのような空気の流れ(旋回風の旋回流)を発生させ、該旋回流により、該カッタブレード14によって刈った芝草を刈り芝収納体22(図1参照)に送り込んで収納することができる。以下、該カッタブレード14によって刈られた芝草のことを「刈り芝」という。
【0020】
図3に示されるように、該ハウジング11は、下端面(図1に示される芝地Grに対向する面)だけが全面的に開放された、いわゆる下方が開放されたハウジングである。該ハウジング11は、機体の役割を兼ねており、上面に該エンジン15を重ねてボルト止めすることによって、一体的に組み付けたものである。該エンジン15は、下端から下方の芝地Grへ向かって該ハウジング11内まで延びた、出力軸15aを有する。該出力軸15aは、該ハウジング11内に位置して、該ハウジング11の上下方向に延びた回転軸である。結果として、該出力軸15aは、水平な芝地Gr(地面)に対して略垂直になる。
【0021】
図3及び図4に示されるように、該出力軸15aには、ハウジング11内において、クラッチ17を介して該カッタブレード14が取り付けられている。エンジン15によってカッタブレード14を駆動することにより、該カッタブレード14は、ハウジング11内において、出力軸15a(回転軸15a)を回転中心として回転可能である。
【0022】
図5(a)は、図3に示される該カッタブレード14を側方から見た構成を表している。図5(b)は、図5(a)に示される該カッタブレード14を上から見た構成を表している。図5(c)は、図5(b)に示される該カッタブレード14の一部を、回転軸15aを回転中心とした外周縁45側から見て、斜視図として表している。図5(d)は、図5(c)に示される該カッタブレード14を矢視d方向(外周縁45側)から見た端面を表している。
【0023】
図5(a)〜(d)に示されるように、カッタブレード14は、回転軸15aに対し水平方向の両方へ延びた、平面視略平板状の細長い部材である。該カッタブレード14の長手方向の両端部41,41は、該カッタブレード14の回転方向Raの前縁42に形成された一対の刃43,43と、該前縁42から後上方(矢印Rd方向)へ湾曲しつつ延びた一対のエアリフト部44,44とを有している。以下、「矢印Rd方向」のことを、「エアリフト部44の湾曲方向Rd」という。該エアリフト部44,44は、該カッタブレード14が回転方向Raへ回転したときに、空気の旋回流及び上昇気流を発生させるための部分であり、該カッタブレード14に一体に形成されている。
【0024】
以下、該ハウジング11の詳細について説明する。図2図4に示されるように、該ハウジング11は、カッタブレード14によって刈られた芝草を、旋回風によって旋回運動させつつ、刈り芝搬出通路21へ向かわせるためのスクロール部11dを有した、平面視渦巻状の部材、つまり渦巻ケーシング(spiral case、scroll case)である。
【0025】
より詳しく述べると、図4に示されるように、スクロール部11dは、バギングモードにおいて、カッタブレード14によって刈った芝草を、ハウジング11内で矢印Rc方向(旋回方向Rc)に旋回運動させつつ、矢印Rbのように刈り芝搬出通路21へ向かわせるものである。
【0026】
図3図4及び図6に示されるように、ハウジング11は、天板11aと外筒部11bと内筒部11cとスクロール部11dと刈り芝搬出通路21とからなる。該天板11aは、ハウジング11の上端を塞いでいる、略水平な平面視略環状の板である。該外筒部11bは、出力軸15aを中心として、天板11aの外縁から下方へ延びた円筒状の部材である。つまり、該外筒部11bは、出力軸15aの軸心SC(カッタブレード14の回転中心SC)を基準とした平面視略円形状断面の周壁部である。以下、該外筒部11bのことを、適宜「周壁部11b」と言い換える。該内筒部11cは、出力軸15aを中心として、天板11aの内縁から下方へ延びた円筒状の部材であり、外筒部11bよりも小径に構成されている。
【0027】
該スクロール部11dは、天板11aと外筒部11bと内筒部11cとによって囲まれた、平面視略環状の空間である。該スクロール部11dは、側方から見たときに下向きとなる逆U字状断面(図6参照)に形成されて、刈り芝が旋回する通路であり、刈り芝が旋回しながら刈り芝搬出通路21へ向かうように構成されている。つまり、該スクロール部11dは、刈り芝搬出通路21の通路開口23に連なる。
【0028】
図3及び図4に示されるように、刈り芝搬出通路21は、外筒部11bから後方(より詳しくは、後上方)へ向かって、外筒部11bの接線方向に延びた部材である。該刈り芝搬出通路21は、前端にはハウジング11に臨む通路開口23を有し、後端にはグラスバッグ等の刈り芝収納体22(図1参照)を取付け可能である。刈り芝は、ハウジング11の内部で出力軸15a回りを旋回しながら刈り芝搬出通路21へ送られる。
【0029】
以上の説明から明らかなように、外筒部11bから刈り芝搬出通路21が延びる方向は、カッタブレード14の回転方向Raに合致する。言い換えると、刈り芝搬出通路21はカッタブレード14の回転軌跡の接線方向に延びる。刈り芝搬出通路21の通路開口23は、カッタブレード14の回転方向Raに開いている。
【0030】
図3及び図4に示されるように、ハウジング11の内周面、つまり外筒部11bの内周面11eには、シャッタ30が配置されている。該シャッタ30は、ハウジング11の内部において天板11aに回転可能に取り付けられた回転盤31と、この回転盤31の外縁に取り付けられたシャッタ本体32とからなる。該シャッタ本体32は、出力軸15aの軸心SCを旋回中心として旋回可能である。該シャッタ本体32によって、刈り芝搬出通路21の通路開口23を開閉するとともに開度を調節することができる。
【0031】
操作レバー33を操作することによって、(1)シャッタ本体32を全開にして、刈り芝を図1に示される刈り芝収納体22に収納するバギングモードと、(2)シャッタ本体32を全閉にして、刈り芝をハウジング11の下方に排出するマルチングモードと、(3)シャッタ本体32を任意の開度に設定した、バギングモードとマルチングモードの中間モードとに、適宜切換えることができる。
【0032】
図3図4及び図7に示されるように、該周壁部11bの内周面11eのなかの、該エアリフト部44,44の回転軌跡46(図8参照)に対向する位置11f、つまり対向位置11fには、全周にわたって複数の翼部50(ディフューザ50)が形成されている。以下、該エアリフト部44の回転軌跡46に対向する位置11fのことを、適宜「対向位置11f」と言い換える。
【0033】
図7図9に示されるように、該複数の翼部50は、該周壁部11bの内周面11eから内方へ突出した上下に細長い凸条の部分であって、該エアリフト部44,44の湾曲方向Rdに対して反対側(矢印Re方向)に傾いている。以下、「矢印Re方向」のことを、適宜「翼部50の傾き方向Re」と言い換える。
【0034】
より詳しく述べると、図10及び図11に示されるように、該複数の翼部50は、外筒部11bの内周面11eからカッタブレード14の回転中心SC(図7参照)へ向かって膨出している。該複数の翼部50の膨出量は、生産の容易性を考慮すると、好ましくは外筒部11bの厚さ分であるが、これに限定されるものではない。
【0035】
さらに、図7図9に示されるように、該複数の翼部50は、該カッタブレード14の回転方向Ra且つ上方へ湾曲しつつ傾いている。つまり、該複数の翼部50は、カッタブレード14の回転中心SCから見て、該カッタブレード14の回転方向Ra且つ下方へ凸となるように湾曲した、略三日月状に形成されている。
【0036】
図8に示されるように、該各翼部50の内周方向の先端51は、該エアリフト部44の回転軌跡46に対し、微少の間隙Crを有して近接している。
【0037】
図9に示されるように、該各翼部50の範囲Hiは、該エアリフト部44の回転軌跡46の範囲Hb内に位置している。該各翼部50の範囲Hiの高さは、該エアリフト部44の回転軌跡46の範囲Hbの高さに対して同一または大きく設定されている。
【0038】
図9に示されるように、該複数の翼部50は、外筒部11bの内周面11eの周方向に一定のピッチPiで配列されている。該ピッチPiは、翼部50の前上端52から後下端53までの距離Liよりも小さいことが、より好ましい。ここで、該前上端52とは、翼部50のなかの、該カッタブレード14の回転方向Raの前上端の位置である。
【0039】
次に、上記構成の作用を説明する。図7図9に示されるように、ハウジング11の平面視略円形状断面の周壁部11bの内周面11eのなかの、エアリフト部44,44の回転軌跡46に対向する位置11f(対向位置11f)には、全周にわたって複数の翼部50が形成されている。該複数の翼部50は、上下に細長い凸条に形成されており、該エアリフト部44,44の湾曲方向Rdに対して反対側Re、つまり前上方Reに傾いている。
【0040】
一般に、カッタブレード14が回転すると、該カッタブレード14の回転方向後端から空気が剥離して、渦流が発生する。該渦流は、騒音の原因となり得る。該渦流は、カッタブレード14の回転による遠心力により、ハウジング11の周壁部11bの内周面11eに沿って周方向へ流動する。
【0041】
このときに、実施例1では、該エアリフト部44,44の湾曲方向Rdに対して反対側Reに傾いている複数の翼部50が障害となり、該渦流fs(図10参照)を崩壊させて、散乱させる。このため、該渦流fsは乱されて、より小さい渦、又は、より乱れた乱流となる。従って、渦流fsの大きさが小さくなり、且つ、渦流fsの運動エネルギーが低減する。結果的に、該カッタブレード14の回転方向後端から空気が剥離することによって、発生した渦流による、騒音を抑制することができる。つまり、該カッタブレード14の回転によってハウジング11内に発生する、空気の渦流を抑制して、騒音抑制性能を高めることができる。しかも、該カッタブレード14の回転速度に関係なく、騒音抑制性能を高められる。
【0042】
さらには、該エアリフト部44,44の湾曲方向Rdに対して、該複数の翼部50が反対側Reに傾いているので、ハウジング11の開放された下方から、該ハウジング11内に吸入した空気の上昇流を、該複数の翼部50によって上向きに案内することができる。つまり、上昇流を阻害しない。従って、芝地Grに生えている芝草を、上昇流により立たせて、カッタブレード14により、効率よく刈ることができる。この結果、芝刈機10の芝刈り性能を確保することができる。
【0043】
さらには、該複数の翼部50は、ハウジング11の周壁部11bの内周面11eの全周にわたって形成されている。しかも、該複数の翼部50は、上下に細長く且つ周方向に傾いている。このため、該複数の翼部50は、略円形状の該周壁部11bを補強するための補強用リブの役割を果たすことができる。従って、該周壁部11bの剛性を高めることができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2に係る芝刈機について図12に基づき説明する。図12は、実施例1の図9に対応して表している。実施例2の芝刈機10Aは、上記図9に示される実施例1の複数の翼部50を、図12に示される複数の翼部50Aに変更したことを特徴とし、他の構成については実施例1と同じ構成なので、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
具体的に説明すると、該複数の翼部50Aは、カッタブレード14の回転方向Ra且つ上方、つまり傾き方向Reへ「湾曲することなく」傾いている平坦な構成である。実施例2によれば、上記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。
【実施例3】
【0046】
実施例3に係る芝刈機について図13に基づき説明する。図13は、実施例1の図10に対応して表している。実施例2の芝刈機10Bは、上記図10に示される実施例1の複数の翼部50を、図13に示される複数の翼部50Bに変更したことを特徴とし、他の構成については実施例1と同じ構成なので、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
具体的に説明すると、該複数の翼部50B(図では1つだけを示す)は、該周壁部11bの内周面11eから凹んだ上下に細長い凹条であって、該エアリフト部44,44の湾曲方向Rd(図9参照)に対して反対側に傾いている。より詳しく述べると、該複数の翼部50Bは、外筒部11bの内周面11eから径外方へ向かって凹んでおり、その他の構成については、上記実施例1と同じである。実施例3によれば、上記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の作業機10,10A,10Bは、歩行型芝刈機に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0049】
10 芝刈機
10A 芝刈機
10B 芝刈機
11 ハウジング
11a 天板
11b 周壁部(外筒部)
11c 内筒部
11e 内周面
11f エアリフト部の回転軌跡に対向する位置
14 カッタブレード
15 エンジン
15a 回転軸(出力軸)
41 長手方向の端部
42 回転方向の前縁
43 刃
44 エアリフト部
45 外周縁
46 エアリフト部の回転軌跡
50 翼部
50A 翼部
50B 翼部
Gr 芝地
Ra カッタブレードの回転方向
Rd エアリフト部の湾曲方向
Re 翼部の傾き方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13