(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の光学層の凸形状が、多数の構造体の1次元配列及び2次元配列のいずれかにより形成され、前記構造体が、プリズム形状、レンチキュラー形状、半球状、及びコーナーキューブ状のいずれかである請求項1に記載の光学部材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(光学部材)
本発明の光学部材は、第1の光学層と、反射層とを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0010】
<第1の光学層>
前記第1の光学層は、凸形状を有し、可視光に対して透明である。
ここで、前記凸形状とは、連続的又は非連続的に突出部が形成されている形状のことを意味する。そして、前記連続的又は非連続的に突出部が形成されている形状は、見方を変えれば、連続的又は非連続的に窪み部が形成されている形状ともいえる。前記連続的又は非連続的に窪み部が形成されている形状は、凹形状ということができる。そのため、本発明において、凸形状と凹形状とは同義である。
【0011】
前記第1の光学層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0012】
前記第1の光学層としては、前記反射層を支持するための支持体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0013】
前記第1の光学層の凸形状は、凸形状が形成されている面の反対側の面に対し、45°以上傾斜した斜面を含む形状であることが好ましい。このような形状にすることで、入射光はほぼ1回の反射で上空へ戻るため、前記反射層の反射率がそれ程高くなくとも効率的に上空方向へ入射光を反射できると共に、前記反射層における光の吸収を低減できる。
【0014】
前記第1の光学層の凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRzは、前記金属層の平均厚みの3.0倍以下である。
ここで、最大高さ粗さRzとは、JIS B 0601 2001で規定されるRzである。基準長さは、1μm〜3μmであることが好ましい。
前記第1の光学層の凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRzの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)の観察、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の観察などが挙げられる。なお、AFMを用いても、TEMを用いても、得られる結果はほぼ一致する。
【0015】
前記第1の光学層の凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRzの制御方法としては、例えば、表面粗さの制御された形状転写用原盤を用いて、第1の光学層の凸形状を作製する方法などが挙げられる。前記形状転写用原盤の表面粗さを制御する方法としては、例えば、SUSロール等の原盤基材に微細孔のない又は微細孔の小さい均質なニッケルリンめっきを施し、その微細孔のない又は微細孔の小さい均質なニッケルリンめっき面を超精密切削する方法、摩耗の異なる任意のバイト(切削工具)を用いてめっきされたSUSロール等の原盤基材の切削加工を行う方法などが挙げられる。
【0016】
前記第1の光学層は、光学部材や窓材などに意匠性を付与する観点から、可視光に対する透明性を阻害しない範囲で、可視領域における特定の波長の光を吸収する特性を有していてもよい。
意匠性の付与、即ち可視領域における特定の波長の光を吸収する特性は、例えば、前記第1の光学層に顔料を含有させることにより行うことができる。
前記顔料は、前記樹脂中に分散させることが好ましい。
前記樹脂中に分散させる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系顔料、有機系顔料などが挙げられるが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料とすることが好ましい。
前記無機系顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO
4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO
4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO
2又はCr、WドープTiO
2)、クロムグリーン(Cr
2O
3など)、ピーコック((CoZn)O(AlCr)
2O
3)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)
2O
3)、紺青(CoO・Al
2O
3・SiO
2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO
4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO
2・SiO
2)、陶試紅(MnドープAl
2O
3)、サーモンピンク(FeドープZrSiO
4)などが挙げられる。
前記有機系顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料などが挙げられる。
【0017】
前記第1の光学層の凸形状のピッチとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、20μm〜150μmが特に好ましい。前記第1の光学層の凸形状のピッチが20μm未満であると、原盤加工用バイトが摩耗して傾斜面が粗くなったり、光学的な回折により外観が悪化したりすることがある。また、前記第1の光学層の凸形状のピッチが150μmを超えると、深さもそれに応じて大きくなるため、光学部材が厚くなり曲げられなくなることがある。
前記第1の光学層の凸形状のピッチの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光学顕微鏡による観察、SEMの断面観察などが挙げられる。
ここで、前記第1の光学層の凸形状のピッチとは、
図1Aに示すPを指す。すなわち、前記第1の光学層の凸形状の一山の一端と他端の距離である。ただし、凸形状に複数のピッチが含まれる場合は、その平均とする。
【0018】
前記第1の光学層の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、シート状、プレート状、ブロック状などが挙げられる。光学部材を窓材に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、第1の光学層は、フィルム状、シート状であることが好ましい。
【0019】
前記第1の光学層の凸形状は、多数の構造体の1次元配列及び2次元配列のいずれかにより形成される。前記構造体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プリズム形状、レンチキュラー形状、半球状、コーナーキューブ状などが挙げられる。
【0020】
また、
図1Aに示すように、構造体11の形状を、光学部材の入射面S1に垂直な垂線l
1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体の主軸l
mが、垂線l
1を基準にして構造体11の配列方向aに傾くことになる。ここで、構造体の主軸l
mとは、構造体11断面の底辺の中点と構造体11の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して垂直に配置された窓材に光学部材を貼る場合には、
図1Bに示すように、構造体11の主軸l
mが、垂線l
1を基準にして窓材の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、
図1Aのような形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。
図1A及び
図1Bでは、プリズム形状の構造体11を垂線l
1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体11を垂線l
1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l
1に対して非対称な形状としてもよい。
【0021】
また、構造体11の形状は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用したものであってもよい。複数種類の形状の構造体を表面に設ける場合、複数種類の形状の構造体からなる所定のパターンが周期的に繰り返されるようにしてもよい。また、所望とする特性によっては、複数種類の構造体がランダム(非周期的)に形成されるようにしてもよい。
図2A〜
図2Cは、第1の光学層が含有する構造体の形状例を示す斜視図である。構造体11は、一方向に延在された柱状の凸部であり、この柱状の構造体11が一方向に向かって1次元配列されている。反射層はこの構造体上に成膜させるため、前記反射層の形状は、構造体11の表面形状と同様の形状を有することになる。
なお、
図1A、
図1B、
図2A、
図2B、及び
図2Cにおいて、符号3は反射層であり、符号4は、第1の光学層であり、符号5は、第2の光学層である。以下、本明細書の各図において、同一の部材等には同一の符号を示す。
【0022】
<反射層>
前記反射層は、少なくとも金属層を有し、好ましくは高屈折率層を有し、さらに必要に応じて、その他の層を有する。
前記反射層は、前記第1の光学層の凸形状上に形成される。
前記反射層は、少なくとも赤外光を含んだ光を反射する。
【0023】
前記反射層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。前記反射層の平均厚みが20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。
【0024】
<<金属層>>
前記金属層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、合金などが挙げられる。
前記金属単体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどが挙げられる。
前記合金としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ag系、Cu系、Al系、Si系又はGe系の材料が好ましく、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFeがより好ましい。また、前記金属層の腐食を抑えるために、前記金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、前記金属層の材料としてAgを用いる場合には、Ti、Ndを添加することが好ましい。
【0025】
前記金属層の平均厚みとしては、40nm以下であり、5nm〜30nmが好ましく、7nm〜20nmがより好ましい。
前記凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRz(nm)は、前記金属層の平均厚み(nm)の3.0倍以下であり、2.0倍以下が好ましく、1.0倍以下がより好ましい。
前記反射層が、高屈折率層と、金属層とを交互積層してなり、複数の金属層を有する場合、前記凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRz(nm)は、最も薄い金属層の平均厚み(nm)の3.0倍以下である。
【0026】
前記金属層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)観察による測定などが挙げられる。凸形状の傾斜が最も緩やかな部分の中央において、TEM観察を行い、前記金属層が明瞭に観察できる部分で、その幅が最小となっている部分の厚みを3か所測定し、それらを平均した値を平均厚みとする。
【0027】
前記金属層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
【0028】
前記金属層は、均一に形成されることが好ましい。ここで、均一とは、観察できる最大の金属層の幅が、金属層の平均厚みの3倍を超えないことを指し、不均一とは、観察できる最大の金属層の幅が、金属層の平均厚みの3.0倍以上であることを指す。
観察できる最大の金属層の幅が、金属層の平均厚みの3.0倍以上(不均一)であるとき、光学部材の耐久性が不十分である。それは、金属層が不均一な場合、表面積が増えること、水分その他の物質が入り込みやすくなることなどに起因し、劣化の進行が早まると考えられる。
前記凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRz(nm)を、前記金属層の平均厚み(nm)の3.0倍以下にすることで均一な金属層が形成される。
【0029】
<<高屈折率層>>
前記高屈折率層は、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する層である。前記高屈折率層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属酸化物、金属窒化物などが挙げられる。前記金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどが挙げられる。前記金属窒化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化チタンなどが挙げられる。
ここで高屈折率とは、例えば、屈折率1.7以上を指す。
【0030】
前記高屈折率層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜300nmが好ましく、15nm〜200nmがより好ましく、20nm〜150nmが特に好ましい。
【0031】
前記高屈折率層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、AFMの観察、TEMの観察などが挙げられる。
【0032】
前記高屈折率層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
【0033】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第2の光学層、機能層などが挙げられる。
【0034】
<<第2の光学層>>
前記第2の光学層は、例えば、前記第1の光学層の凸形状を埋め合わせるような凹形状を有している。
前記第2の光学層は、透過写像鮮明度や全光線透過率を向上するとともに、前記反射層を保護するための層である。前記第2の光学層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーカーボネート等の熱可塑性樹脂、アクリル等の活性エネルギー線硬化性樹脂などの樹脂が挙げられる。また、前記第2の光学層を接着層とし、この接着層を介して窓材に光学部材を貼り合わせる構成としてもよい。前記接着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感圧性粘着剤(Pressure Sensitive Adhesive:PSA)、紫外線硬化樹脂などが挙げられる。
【0035】
前記第2の光学層は、光学部材や窓材などに意匠性を付与する観点から、可視光に対する透明性を阻害しない範囲で、可視領域における特定の波長の光を吸収する特性を有していてもよい。
意匠性の付与、即ち可視領域における特定の波長の光を吸収する特性は、例えば、前記第2の光学層に顔料を含有させることにより行うことができる。
前記顔料は、前記樹脂中に分散させることが好ましい。
前記樹脂中に分散させる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第1の光学層の説明において例示した前記顔料などが挙げられる。
【0036】
前記第1の光学層と前記第2の光学層との屈折率差としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.010以下が好ましく、0.008以下がより好ましく、0.005以下が特に好ましい。前記屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。前記屈折率差が0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。前記屈折率差が0.005を超え0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。前記屈折率差が0.005以下であれば、回折パターンは殆ど気にならない。前記第1の光学層及び前記第2の光学層のうち、窓材などと貼り合わせ側となる光学層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、粘着材を主成分とする光学層により光学部材を窓材などに貼り合わせることができる。
【0037】
前記第1の光学層と前記第2の光学層とは、屈折率などの光学特性が同じであることが好ましい。より具体的には、前記第1の光学層と前記第2の光学層とが、可視領域において透明性を有する同一材料からなることが好ましい。前記第1の光学層と前記第2の光学層とを同一材料により構成することで、両者の屈折率が等しくなるので、可視光の透明性を向上することができる。ただし、同一材料を出発源としても、成膜工程における硬化条件などにより最終的に生成する膜の屈折率が異なることがあるので、注意が必要である。これに対して、前記第1の光学層と前記第2の光学層とを異なる材料により構成すると、両者の屈折率が異なるので、前記反射層を境界として光が屈折し、透過像がぼやける傾向がある。特に、遠くの電灯など点光源に近い物を観察すると回折パターンが顕著に観察されるという問題がある。
【0038】
前記第1の光学層と前記第2の光学層とは、可視領域において透明性を有することが好ましい。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収が少ないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、本発明では両者を有することが好ましい。現在利用されている再帰反射体は、道路標識や夜間作業者の衣服など、その表示反射光を視認することが目的としているため、例えば散乱性を有していても、下地反射体と密着していれば、その反射光を視認することができた。例えば、画像表示装置の前面に、防眩性の付与を目的として散乱性を有するアンチグレア処理をしても、画像は視認できるのと同一の原理である。しかしながら、本発明の光学部材は、指向反射する特定の波長以外の光を透過する点に特徴を有しており、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないといった要件が必要である。ただし、その用途によっては、前記第2の光学層に限っては意図的に散乱性を持たせることが可能である。
【0039】
<<機能層>>
前記機能層としては、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とするものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記クロミック材料としては、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、エレクトロクロミック材料などが挙げられる。
前記機能層の配置位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
前記光学部材は、透明性を有している。前記透明性としては、後述する透過写像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。
【0041】
前記光学部材は、好ましくは、透過した特定波長以外の光に対して主に透過性を有する剛体(例えば、窓材)に粘着剤などを介して貼り合わせて使用される。前記窓材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高層ビルや住宅などの建築用窓材、車両用の窓材などが挙げられる。前記建築用窓材に前記光学部材を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された前記窓材に前記光学部材を適用することが好ましい。このような位置の前記窓材に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるためである。前記光学部材は、単層の窓ガラスのみならず、複層ガラスなどの特殊なガラスにも用いることができる。また、前記窓材は、ガラスからなるものに限定されるものではなく、透明性を有する高分子材料からなるものを用いてもよい。第1の光学層及び第2の光学層が、可視領域において透明性を有すると、前記光学部材を窓ガラスなどの前記窓材に貼り合せた場合、可視光を透過し、太陽光による採光を確保することができる。また、貼り合わせる面としてはガラスの外面のみならず、内面にも使用することができる。このように内面に使用する場合、指向反射方向が目的とする方向となるように、構造体の凹凸の表・裏及び面内方向を合わせて貼り合わせる必要がある。
【0042】
前記光学部材は、光学部材を窓材に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、フレキシブル性を有することが好ましい。前記光学部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、シート状、プレート状、ブロック状などが挙げられるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。
また、前記光学部材は他の熱線カットフィルムと併用して用いることができ、例えば空気と第1の光学層との界面に光吸収塗膜を設けることもできる。また、前記光学部材は、ハードコート層、紫外線カット層、表面反射防止層などとも併用して用いることができる。これらの機能層を併用する場合、これらの機能層を光学部材と空気との間の界面に設けることが好ましい。ただし、前記紫外線カット層については、光学部材よりも太陽側に配置する必要があるため、特に室内外の窓ガラス面に内貼り用として用いる場合には、該窓ガラス面と光学部材の間に紫外線カット層を設けることが望ましい。この場合、窓ガラス面と光学部材の間の粘着層中に、紫外線吸収剤を練りこんでおいてもよい。
また、前記光学部材の用途に応じて、前記光学部材に対して着色を施し、意匠性を付与するようにしてもよい。このように意匠性を付与する場合、透明性を損なわない範囲で光学層が特定の波長帯の光のみ吸収する構成とすることが好ましい。
【0043】
<光学部材の機能>
図3、
図4は、光学部材の機能の一例を説明するための断面図である。ここでは、例として、構造体の形状が傾斜角45°のプリズム形状である場合を例として説明する。
図3に示すように、この光学部材1に入射した太陽光のうち上空に反射する光L
1の一部は、入射した方向と同程度の上空方向に指向反射するのに対して、上空に反射しない光L
2は光学部材1を透過する。
また、
図4に示すように、光学部材1に入射し、反射層3の反射膜面で反射された光は、入射角度に応じた割合で、上空に反射する光L
1と、上空に反射しない光L
2とに分離する。そして、上空に反射しない光L
2は、第2の光学層5と空気との界面で全反射した後、最終的に入射方向とは異なる方向に反射する。
光の入射角度をα、第1の光学層4の屈折率をn、反射層の反射率をRとすると、全入射成分に対する上空に反射する光L
1の割合xは以下の式(1)で表される。
x=(sin(45−α')+cos(45−α’)/tan(45+α'))/(sin(45−α')+cos(45−α'))×R
2 ・・・(1)
但し、α'=sin
−1(sinα/n)
上空に反射しない光L
2の割合が多くなると、入射光が上空に反射する割合が減少する。上空に反射する割合を向上するためには、反射層3の形状、すなわち、第1の光学層4の構造体の形状を工夫することが有効である。例えば、上空への反射の割合を向上するためには、構造体11の形状は、
図2Cに示すシリンドリカル形状、又は
図1A及び
図1Bに示す非対称な形状とすることが好ましい。このような形状にすることで、入射光と全く同じ方向に光を反射することはできなくても、建築用窓材などにおいて、上方向から入射した光を上方向に反射させる割合を多くすることが可能である。
図2C、
図1A及び
図1Bに示す二つの形状は、
図5及び
図6に示すように、反射層3による入射光の反射回数が1回で済むため、最終的な反射成分を
図3に示すような2回反射させる形状よりも多くすることが可能である。例えば、2回反射を利用する場合、ある波長に対する反射層の反射率を80%とすると、上空反射率は64%となるが、1回反射で済めば上空反射率は80%となる。
【0044】
図7A及び
図7Bは、柱状の構造体の稜線l
3と、入射光L及び上空に反射する光L
1との関係を示す。光学部材は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した入射光Lのうち、上空に反射する光L
1を選択的に(θo、−φ)の方向(0°<θo<90°)に指向反射するのに対して、上空に反射しない光L
2を透過することが好ましい。このような関係を満たすことで、特定波長帯の光を上空方向に反射できるからである。但し、θ:入射面S1に対する垂線l
1と、入射光L又は上空に反射する光L
1とのなす角である。φ:入射面S1内において柱状の構造体の稜線l
3と直交する直線l
2と、入射光L又は上空に反射する光L
1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。なお、垂線l
1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l
2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0045】
図8は、光学部材1に対して入射する入射光と、光学部材により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学部材は、入射光Lが入射する入射面S1を有する。光学部材1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した入射光Lのうち、上空に反射する光L
1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、上空に反射しない光L
2を透過する。また、光学部材1は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過写像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。但し、θ:入射面S1に対する垂線l
1と、入射光L又は上空に反射する光L
1とのなす角である。φ:入射面S1内の特定の直線l
2と、入射光L又は上空に反射する光L
1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線l
2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学部材の入射面S1に対する垂線l
1を軸として光学部材を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である(
図1A〜
図1B、
図2A〜
図2C参照)。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l
2として選択するものとする。なお、垂線l
1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l
2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0046】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、及び透過させる特定の光は、光学部材の用途により異なる。例えば、窓材に対して光学部材を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は、少なくとも近赤外光を含み、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域400nm〜2,100nmの可視光及び近赤外光であることが好ましく、780nm〜2,100nmの近赤外線であることがより好ましい。近赤外線を反射することで、光学部材をガラス窓などの窓材に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房付加を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射光強度が、正反射光強度より強く、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは15%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
【0047】
前記光学部材は、指向反射する方向φoが−90°以上、90°以下であることが好ましい。前記光学部材を窓材に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学部材が有用である。また、前記光学部材は、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、(θ、−φ)から5度以内が好ましく、3度以内がより好ましく、2度以内が特に好ましい。この範囲にすることで、光学部材を窓材に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、前記構造体として、例えば、球面、双曲面の一部、三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。又は、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0048】
前記光学部材の、特定波長体の光の指向反射としては、再帰反射近傍方向(すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長体の光の反射方向が(θ、φ)近傍)であることが好ましい。光学部材を窓材に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、3度以内がより好ましく、2度以内が特に好ましい。上記範囲にすることで、光学部材を窓材に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、再帰反射方向は入射方向と等しくないとならないが、本発明のように特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0049】
前記光学部材の、透過性を持つ波長帯に対する写像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50以上が好ましく、60以上がより好ましく、75以上が特に好ましい。前記写像鮮明度の値が、50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。前記写像鮮明度の値が、50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。前記写像鮮明度の値が、60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。前記写像鮮明度の値が、75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した写像鮮明度の合計値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、230以上が好ましく、270以上がより好ましく、350以上が特に好ましい。前記写像鮮明度の合計値が、230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。前記写像鮮明度の合計値が、230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。前記写像鮮明度の合計値が、270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。前記写像鮮明度の合計値が、350以上であれば、回折パターンはほとんど気にならない。ここで、前記写像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0050】
前記光学部材の、透過性を持つ波長帯に対するヘイズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、6%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。前記ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0051】
前記光学部材の入射面S1、好ましくは入射面S1及び出射面S2は、前記写像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有することが好ましい。具体的には、入射面S1及び出射面S2の算術平均粗さRaとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.08μm以下が好ましく、0.06μm以下がより好ましく、0.04μm以下が特に好ましい。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置及び測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機(サーフコーダーET4000A、株式会社小坂研究所製)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
【0052】
前記光学部材の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、光学層及び反射層を透過し、出射面S2から出射される透過光及び反射光の色度座標x、yとしては、例えばD65光源の照射に対しては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40が好ましく、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37がより好ましく、0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35が特に好ましい。更に、色調が赤みを帯びないためには、y>x−0.02が好ましく、y>xがより好ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なり、歩くと色が変化して見えるため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、0°以上60°以下の入射角度θで入射面S1又は出射面S2から入射し、第1の光学層、第2の光学層及び反射層により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、及び色座標yの差の絶対値としては、光学部材の両主面のいずれにおいても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05以下が好ましく、0.03以下がより好ましく、0.01以下が特に好ましい。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、及び出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
【0053】
(窓材)
本発明の窓材は、本発明の前記光学部材を有することを特徴とする。
前記窓材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高層ビルや住宅等の建築用窓材、車両用等の窓材などが挙げられる。前記建築用窓材に光学部材を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された窓材に前記光学部材を適用することが好ましい。このような位置の窓材に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるからである。
【0054】
図9は、光学部材1の入射面内における第1の光学層の凸形状の稜線方向D
Rと、建築物の高さ方向D
Hとが略直交するように、光学部材1を窓材10に貼り合わせた建築物500の一例を示している。このように光学部材1を窓材10に貼り合わせた場合には、光学部材1の反射機能を有効に発現させることができる。したがって、上方向から窓材10に入射した光の多くを、上方向に反射することができる。すなわち、窓材10の上方反射率を向上させることができる。
【0055】
(建具)
本発明の建具は、日光を採光する採光部を有し、前記採光部が、本発明の前記光学部材を有することを特徴とする。
前記建具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス戸、障子、シャッターなどが挙げられる。
前記採光部とは、例えば、建具がガラス戸である場合には、ガラス戸からサッシ部分を除いたガラス部分のことを指す。
図10は、建具の一構成例を示す斜視図である。
図10に示すように、建具401は、その採光部404に光学部材402を備える構成を有している。具体的には、建具401は、光学部材402と、光学部材402の周縁部に設けられる枠材403とを備える。光学部材402は枠材403により固定され、必要に応じて枠材403を分解して光学部材402を取り外すことが可能である。建具401としては、例えば障子を挙げることができるが、本技術はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。
【0056】
(光学部材の製造方法)
本発明の光学部材の製造方法は、第1の光学層形成工程と、反射層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0057】
<第1の光学層形成工程>
前記第1の光学層形成工程においては、凹形状を有する転写原盤を用いて、凸形状を有する第1の光学層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0058】
前記第1の光学層形成工程において、前記凹形状を有する転写原盤(以下、「形状転写用原盤」、「金型」ともいう)を用いて、前記凸形状を有する前記第1の光学層を形成する際に、前記凹形状を有する転写原盤の表面粗さを制御することにより、前記凸形状の粗さ(例えば、最大高さ粗さRz)を制御できる。本発明においては、前記凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRzは、前記金属層の平均厚みの3.0倍以下であるが、この条件は、例えば、前記凹形状を有する転写原盤の表面粗さを制御することで達成できる。
【0059】
前記凹形状を有する転写原盤の表面粗さを制御する方法としては、例えば、SUSロール等の原盤基材に微細孔のない又は微細孔の小さい均質なニッケルリンめっきを施し、その微細孔のない又は微細孔の小さい均質なニッケルリンめっき面を超精密切削する方法、摩耗の異なる任意のバイト(切削工具)を用いてめっきされたSUSロール等の原盤基材の切削加工を行う方法などが挙げられる。
【0060】
<反射層形成工程>
前記反射層形成工程としては、前記第1の光学層上に、反射層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0061】
<第2の光学層形成工程>
前記第2の光学層形成工程としては、前記反射層上に第2の光学層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記反射層上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布し、硬化する工程などが挙げられる。
【0062】
前記光学部材の製造方法の他の一例を説明する。
SUSロールなどの原盤基材上に微細孔のない又は微細孔の小さい均質なニッケルリンめっきを成膜し、めっき面をバイト(切削工具)を用いた切削加工、超精密切削加工、レーザー加工などより切削し、構造体と同一の凸形状、又はその反転形状を有する形状転写用原盤(以下、「金型」ともいう)を準備する。
【0063】
次に、例えば、溶融押し出し法、転写法などを用いて、前記金型の凸形状をフィルム状又はシート状の樹脂材料に転写する。前記転写法としては、型に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法や、樹脂に熱や圧力を印加し、形状を転写する方法などが挙げられる。これにより、
図11Aに示すように、一主面に構造体11を有する第1の光学層4が形成される。
【0064】
次に、
図11Bに示すように、その第1の光学層4の一主面上に反射層3を形成する。反射層3の金属層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。反射層3の高屈折率層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
【0065】
次に、
図11Cに示すように、反射層3の上部に基材5aを配してニップ部を形成する。
【0066】
次に、
図11Dに示すように、活性エネルギー線硬化性樹脂である樹脂5b’を前記ニップ部に供給する。
【0067】
次に、
図11Eに示すように、基材5a上から、光源23によりUV光を樹脂5b’に照射して樹脂5b’を硬化させる。
【0068】
これにより、
図11Fに示すように、表面が平滑な第2の光学層5が反射層3上に形成される。
以上により、所望の形状の反射層3が設けられた光学部材が得られる。
【0069】
前記光学部材の製造方法の他の一例を説明する。
SUSロールなどの原盤基材上に微細孔のない又は微細孔の小さい均質なニッケルリンめっきを成膜し、めっき面をバイト(切削工具)を用いた切削加工、超精密切削加工、レーザー加工などより切削し、構造体と同一の凸形状、又はその反転形状を有する金型を準備する。
【0070】
次に、例えば、溶融押し出し法、転写法などを用いて、前記金型の凸形状をフィルム状又はシート状の樹脂材料に転写する。前記転写法としては、型に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法や、樹脂に熱や圧力を印加し、形状を転写する方法などが挙げられる。これにより、一主面に凸形状の構造体を有する第1の光学層が形成される。
【0071】
図12に示す製造装置を用いて、以下のようにして反射層付き第1の光学層を作製する。
図12に示す製造装置は、スパッタリング用の製造装置であり、巻き出しロール101と、支持ロール102と、巻き取りロール103と、スパッタターゲット104とを有する。
長尺の第1の光学層4を、巻き出しロール101に密着させながら支持ロール102に送出し、支持ロール102に密着させた状態で、スパッタターゲット104を用いてスパッタを行い第1の光学層4の凸形状(構造体)上に高屈折率層を形成する。高屈折率層が形成された第1の光学層4を、支持ロール102を介して巻き取りロール103に搬送し、巻き取る。
さらに、同様の方法により金属層と、高屈折率層とを交互積層することで第1の光学層4上に反射層3が形成される。
【0072】
続いて、
図13に示す製造装置を用いて、以下のようにして光学部材1を作製する。
まず、この製造装置の構成について説明する。この製造装置は、巻き出しロール51と、巻き出しロール52と、巻き取りロール53と、ラミネートロール54、55と、ガイドロール56〜60と、塗布装置61と、照射装置62とを備える。
【0073】
巻き出しロール51及び巻き出しロール52にはそれぞれ、帯状の基材5a及び帯状の反射層付き第1の光学層9がロール状に巻かれ、ガイドロール56、57などにより基材5a及び反射層付き第1の光学層9を連続的に送出できるように配置されている。図中の矢印は、基材5a及び反射層付き第1の光学層9が搬送される方向を示す。反射層付き第1の光学層9は、凸形状(構造体)上に反射層が形成された第1の光学層である。
【0074】
巻き取りロール53は、この製造装置により作製された帯状の光学部材1を巻き取りできるように配置されている。ラミネートロール54、55は、巻き出しロール52から送出された反射層付き第1の光学層9と、巻き出しロール51から送出された基材5aとをニップできるように配置されている。ガイドロール56〜60は、帯状の反射層付き第1の光学層9、帯状の基材5a、及び帯状の光学部材1を搬送できるように、この製造装置内の搬送路に配置されている。ラミネートロール54、55及びガイドロール56〜60の材質としては、特に限定されるものではなく、所望とするロール特性に応じてステンレスなどの金属、ゴム、シリコーンなどを適宜選択して用いることができる。
【0075】
塗布装置61は、例えば、コーターなどの塗布手段を備える装置を用いることができる。コーターとしては、例えば、塗布する樹脂組成物の物性などを考慮して、グラビア、ワイヤバー、ダイなどのコーターを適宜使用することができる。照射装置62は、例えば、電子線、紫外線、可視光線、ガンマ線などの活性エネルギー線を照射する照射装置である。
【0076】
続いて、この製造装置を用いた光学部材の製造方法について説明する。
まず、巻き出しロール51から基材5aを送り出す。送り出された基材5aは、ガイドロール56を経て塗布装置61の下を通過する。次に、塗布装置61の下を通過する基材5a上に、塗布装置61により活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する。次に、活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された基材5aをラミネートロールに向けて搬送する。一方、巻き出しロール52から反射層付き第1の光学層9を送り出し、ガイドロール57を経てラミネートロール54、55に向けて搬送する。
【0077】
次に、基材5aと反射層付き第1の光学層9との間に気泡が入らないように、搬入された基材5aと反射層付き第1の光学層9とをラミネートロール54、55により挟み合わせ、基材5aに対して反射層付き第1の光学層9をラミネートする。次に、反射層付き第1の光学層9によりラミネートされた基材5aを、ラミネートロール55の外周面に沿わせながら搬送するとともに、照射装置62により基材5a側から活性エネルギー線硬化性樹脂に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。これにより、基材5aと反射層付き第1の光学層9とが活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物である樹脂層(以下、樹脂層5bとする)を介して貼り合わされ、目的とする光学部材1が作製される。次に、作製された帯状の光学部材1をガイドロール58、59、60を介して巻き取りロール53に搬送し、光学部材1を巻き取りロール53によりを巻き取る。
【0078】
以下に、前記光学部材の製造方法において説明した基材、樹脂層について詳細に説明する。
【0079】
<<基材>>
基材4aの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、シート状、プレート状、ブロック状などが挙げられる。基材4aの材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。前記公知の高分子材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。基材4a、及び基材5aの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産性の観点から38μm〜100μmであることが好ましい。基材4a、又は基材5aとしては、活性エネルギー線透過性を有することが好ましい。これにより、基材4a、又は基材5aと反射層3との間に介在させた活性エネルギー線硬化性樹脂に対して、基材4a、又は基材5a側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることができるからである。
【0080】
<<樹脂層>>
樹脂層4b、及び樹脂層5bは、例えば、透明性を有する。樹脂層4bは、例えば、基材4aと反射層3との間で樹脂組成物を硬化することにより得られる。樹脂層5bは、例えば、基材5aと反射層3との間で樹脂組成物を硬化することにより得られる。前記樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、製造の容易性の観点からすると、光又は電子線などにより硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、熱により硬化する熱硬化型樹脂などが好適に挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光により硬化する感光性樹脂組成物が好ましく、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂組成物がさらに好ましい。
【0081】
前記樹脂組成物は、樹脂層4b、又は樹脂層5bと反射層3との密着性を向上する観点から、リン酸を含有する化合物、コハク酸を含有する化合物、ブチロラクトンを含有する化合物をさらに含有することが好ましい。前記リン酸を含有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リン酸を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、リン酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーがより好ましい。前記コハク酸を含有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、コハク酸を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、コハク酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマー、オリゴマーがより好ましい。前記ブチロラクトンを含有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ブチロラクトンを含有する(メタ)アクリレート、ブチロラクトンを官能基に有する(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーが好ましい。樹脂層4b及び樹脂層5bの少なくとも一方は、極性の高い官能基を含み、その含有量は、樹脂層4bと樹脂層5bとで異なることが好ましい。樹脂層4bと樹脂層5bとの両方は、リン酸を含有する化合物を含み、樹脂層4bと樹脂層5bとにおける上記リン酸の含有量が異なることが好ましい。前記リン酸の含有量は、樹脂層4bと樹脂層5bとにおいて、2倍以上異なることが好ましく、5倍以上異なることがより好ましく、10倍以上異なることが特に好ましい。
【0082】
樹脂層4b、及び樹脂層5bの少なくとも一方が、リン酸を含む化合物を含む場合、反射層3は、リン酸を含む化合物を含む樹脂層4b又は樹脂層5bと接する面に、酸化物もしくは窒化物、酸窒化物を含むことが好ましい。反射層3としては、リン酸を含む化合物を含む樹脂層4b又は樹脂層5bと接する面に、亜鉛の酸化物を含む薄膜を有することが特に好ましい。
【0083】
前記紫外線硬化型樹脂組成物の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリレート、光重合開始剤などが挙げられる。また、前記紫外線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤及び酸化防止剤などを更に含有するようにしてもよい。
【0084】
前記(メタ)アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマー及び/又はオリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。ここで、オリゴマーとは、分子量500以上60,000以下の分子をいう。
【0085】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などが挙げられる。これらの化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記重合開始剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形分中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。前記配合量が、0.1質量%未満であると、光硬化性が低下し、実質的に工業生産に適さない。一方、前記配合量が、10質量%を超えると、照射光量が小さい場合に、塗膜に臭気が残る傾向にある。ここで、固形分とは、硬化後のハードコート層12を構成する全ての成分をいう。具体的には例えば、アクリレート、及び光重合開始剤などを固形分という。
【0086】
樹脂層4bに用いられる樹脂としては、反射層3形成時のプロセス温度でも変形が無く、クラックが発生しないようなものが好ましい。ガラス転移温度が低いと設置後、高温時に変形してしまったり、反射層3形成時に樹脂形状が変化してしまうため好ましくなく、ガラス転移温度が高いとクラックや界面剥がれが生じやすく好ましくない。具体的にはガラス転移温度が60℃以上150℃以下が好ましく、80℃以上130℃以下がより好ましい。
【0087】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、エネルギー線照射や熱などによって構造を転写できるものが好ましく、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、熱可塑性樹脂などがより好ましい。
硬化収縮が少ないよう、オリゴマーを添加してもよい。硬化剤としてポリイソシアネートなどを含んでもよい。また、基材との密着性を考慮して、水酸基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、リン酸基含有ビニル系単量体、多価アルコール類、カルボン酸、カップリング剤(シラン、アルミ、チタン等)や各種キレート剤などを添加してもよい。
【0088】
前記ビニル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アクリル(メタ)系樹脂が好ましい。前記アクリル(メタ)系樹脂としては、水酸基含有ビニル系単量体が好適に挙げられ、その具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート又はモノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートをはじめ、ポリエチレングリコール−ないしはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート又は此等とε−カプロラクトンとの付加物、「プラクセル FMないしはFAモノマー」[ダイセル化学工業株式会社製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名]の如き、各種のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。
【0089】
前記カルボキシル基含有ビニル系単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸の如き、各種の不飽和モノ−乃至はジカルボン酸類又はフマル酸モノエチル、マレイン酸モノブチルの如きジカルボン酸モノエステル類、又は、前掲の水酸基含有(メタ)アクリレート類と、こはく酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロロフタル酸の如き各種のポリカルボン酸の無水物との付加物などが挙げられる。
【0090】
前記リン酸基含有ビニル系単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアルキル〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ホスフェート類又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェート類、ジアルキル〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ホスファイト類もしくは(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスファイト類などが挙げられる。
【0091】
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール又はソルビトールの如き、各種の多価アルコール類の1種又は2種以上を使用することができる。またアルコールではないが、「カージュラE」〔オランダ国シェル社製の、脂肪酸のグリシジルエステルの商品名〕の如き、各種の脂肪酸グリシジルエステル類等をアルコールの代わりに使用することができる。
【0092】
前記カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、テトラクロロ(無水)フタル酸、ヘキサクロロ(無水)フタル酸、テトラブロモ(無水)フタル酸、トリメリット酸、「ハイミック酸」[日立化成工業(株)製品;「ハイミック酸」は同社の登録商標である。]、(無水)こはく酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、アジピン酸、セバチン酸又はしゅう酸などのような、種々のカルボン酸類などが挙げられる。これらの単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を共重合させてもよい。
【0093】
共重合可能な単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、イソプロピルスチレン又はp−tert−ブチルスチレンなどのスチレン系単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソ(i)−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレート、「アクリエステル SL」[三菱レーヨン(株)製の、C12−/C13メタクリレート混合物の商品名]、ステアリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートもしくはイソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの如き側鎖に官能基を含有しない(メタ)アクリレート類;及びエチレン−ジ−(メタ)アクリレートの如き二官能性ビニル系単量体類;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートもしくはメトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジ(n−ブチル)フマレート、ジ(i−ブチル)フマレートもしくはジブチルイタコネートの如き、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸により代表される各種のジカルボン酸類と1価アルコール類とのジエステル類;
酢酸ビニル、安息香酸ビニルもしくは「ベオバ」〔オランダ国シェル社製の、分岐状(分枝状)脂肪族モノカルボン酸類のビニルエステルの商品名〕、(メタ)アクリロニトリルの如き、各種のビニルエステル類;
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のような、N,N−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;や(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのブチルエーテル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のようなアミド結合含有ビニル系単量体等の窒素含有ビニル系単量体類;
などが挙げられる。
【0094】
これらは高屈折率層、金属層の性質に応じて任意に量を調整することができる。
【0095】
基材4a、又は基材5aは、樹脂層4b、又は樹脂層5bより水蒸気透過率が低いことが好ましい。例えば、樹脂層4bをウレタンアクリレートのような活性エネルギー線硬化性樹脂で形成する場合には、基材4aを樹脂層4bより水蒸気透過率が低く、かつ、活性エネルギー線透過性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂により形成することが好ましい。これにより、入射面S1又は出射面S2から反射層3への水分の拡散を低減し、反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学部材1の耐久性を向上することができる。厚み75μmのPETの水蒸気透過率は、10g/m
2/day(40℃、90%RH)程度である。
【0096】
以下に、本発明の第1〜11の実施形態を図を用いながら示す。
【0097】
<第1の実施形態>
図14は、本発明の第1の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。
図14に示すように、光学部材1は、光学層と、この光学層の内部に形成された反射層とを有する。光学部材1は、太陽光などの光が入射する入射面S1と、この入射面S1より入射した光のうち、第1の光学層4を透過した光が出射される出射面S2とを有する。
【0098】
図14では、第2の光学層4が、粘着剤を主成分とし、第2の光学層4により光学部材を窓材などに貼り合わせる例が示されている。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0099】
第1の光学層5と第2の光学層4とは、屈折率などの光学特性が同じであることが好ましい。より具体的には、第1の光学層5と第2の光学層4とが、可視領域において透明性を有する同一材料からなることが好ましい。第1の光学層5と第2の光学層4とを同一材料により構成することで、両者の屈折率が等しくなるので、可視光の透明性を向上することができる。ただし、同一材料を出発源としても、成膜工程における硬化条件などにより最終的に生成する膜の屈折率が異なることがあるので、注意が必要である。これに対して、第1の光学層5と第2の光学層4とを異なる材料により構成すると、両者の屈折率が異なるので、反射層を境界として光が屈折し、透過像がぼやける傾向がある。特に、遠くの電灯など点光源に近い物を観察すると回折パターンが顕著に観察されるという問題がある。
【0100】
第1の光学層5と第2の光学層4は、可視領域において透明性を有することが好ましい。ここで、透明性とは、光の吸収がないこと、及び光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、本発明では両者を有することが必要である。現在利用されている再帰反射体は、道路標識や夜間作業者の衣服など、その表示反射光を視認することが目的としているため、例えば散乱性を有していても、下地反射体と密着していれば、その反射光を視認することができた。例えば、画像表示装置の前面に、防眩性の付与を目的として散乱性を有するアンチグレア処理をしても、画像は視認できるのと同一の原理である。しかしながら、本発明に係る光学部材は、指向反射する特定の波長以外の光を透過する点に特徴を有しており、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないといった要件が必要である。ただし、その用途によっては、第2の光学層に限っては意図的に散乱性を持たせることが可能である。
【0101】
光学部材は、好ましくは、透過した特定波長以外の光に対して主に透過性を有する剛体、例えば、窓材に粘着剤などを介して貼り合わせて使用される。窓材としては、高層ビルや住宅などの建築用窓材、車両用の窓材などが挙げられる。建築用窓材に光学部材を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された窓材に光学部材を適用することが好ましい。このような位置の窓材に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるからである。光学部材は、単層の窓ガラスのみならず、複層ガラスなどの特殊なガラスにも用いることができる。また、窓材は、ガラスからなるものに限定されるものではなく、透明性を有する高分子材料からなるものを用いてもよい。前記第1及光学層及び前記第2の光学層が、可視領域において透明性を有することが好ましい。このように透明性を有することで、前記光学部材を窓ガラスなどの窓材に貼り合せた場合、可視光を透過し、太陽光による採光を確保することができるからである。また、貼り合わせる面としてはガラスの外面のみならず、内面にも使用することができる。このように内面に使用する場合、指向反射方向が目的とする方向となるように、構造体の凹凸の表・裏及び面内方向を合わせて貼り合わせる必要がある。
光学部材は、前記光学部材を窓材に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、フレキシブル性を有することが好ましい。前記光学部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、シート状、プレート状、ブロック状などが挙げられるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。
【0102】
また、前記光学部材は他の熱線カットフィルムと併用して用いることができ、例えば空気と光学層との界面に光吸収塗膜を設けることもできる。また、光学部材は、ハードコート層、紫外線カット層、表面反射防止層などとも併用して用いることができる。これらの機能層を併用する場合、これらの機能層を光学部材と空気との間の界面に設けることが好ましい。ただし、前記紫外線カット層については、光学部材よりも太陽側に配置する必要があるため、特に室内外の窓ガラス面に内貼り用として用いる場合には、該窓ガラス面と光学部材の間に紫外線カット層を設けることが望ましい。この場合、窓ガラス面と光学部材の間の粘着層中に、紫外線吸収剤を練りこんでおいてもよい。
また、光学部材の用途に応じて、光学部材に対して着色を施し、意匠性を付与するようにしてもよい。このように意匠性を付与する場合、透明性を損なわない範囲で光学層が特定の波長帯の光のみ吸収する構成とすることが好ましい。
【0103】
<第2の実施形態>
図15〜
図17は、本発明の第2の実施形態に係る光学部材の構造体の構成例を示す断面図である。第2の実施形態は、第1の光学層4の一主面にて構造体が2次元配列されている点において、第1の実施形態とは異なっている。
第1の光学層4の一主面には、構造体11が2次元的に配列されている。この配列は、最稠密充填状態での配列であることが好ましい。例えば、第1の光学層4の一主面には、構造体11を最稠密充填状態で2次元配列することにより正方稠密アレイ、デルタ稠密アレイ、六方稠密アレイなどの稠密アレイが形成されている。正方稠密アレイは、正方形状の底面を有する構造体11を正方稠密状に配列させたものである。デルタ稠密アレイは、三角形状の底面を有する構造体11を六方稠密状に配列させたものである。六方周密アレイは、六角形状の底面を有する構造体11を六方稠密状に配列させたものである。
構造体11は、例えば、コーナーキューブ状、半球状、半楕円球状、プリズム状、自由曲面状、多角形状、円錐形状、多角錐状、円錐台形状、放物面状などの凸部である。構造体11の底面の形状としては、例えば、円形状、楕円形状、又は三角形状、四角形状、六角形状、八角形状等の多角形状などが挙げられる。なお、
図15では、四角形状の底面を有する構造体11を最稠密充填状態で2次元配列した正方稠密アレイの例が示されている。また、
図16では、六角形状の底面を有する構造体を最稠密充填状態で2次元配列したデルタ稠密アレイの例が示されている。また、
図17では、三角形の底面を有する構造体11を最稠密充填状態で2次元配列した六方稠密アレイの例が示されている。また、構造体11のピッチP1、P2は、所望とする光学特性に応じて適宜選択することが好ましい。また、光学部材の入射面に対して垂直な垂線に対して、構造体11の主軸を傾ける場合、構造体11の2次元配列のうちの少なくとも一方の配列方向に構造体11の主軸を傾けるようにすることが好ましい。地面に対して垂直に配置された窓材に光学部材を貼る場合には、構造体11の主軸が、垂線を基準にして窓材の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。
【0104】
<第3の実施形態>
図18は、本発明の第3の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。
図18に示すように、第3の実施形態は、構造体11に代えてビース31を有している点において、第1の実施形態とは異なっている。
基材4cの一主面には、この一主面からビース31の一部が突出するようにビース31が埋め込まれ、基材4cとビース31とにより第1の光学層4が形成されている。
第1の光学層4の一主面に、焦点層32、反射層3、第2の光学層5が順次積層されている。ビース31は、例えば球状を有する。ビース31は、透明性を有することが好ましい。ビース31は、例えば、ガラスなどの無機材料、又は高分子樹脂などの有機材料を主成分とする。
【0105】
<第4の実施形態>
図19は、本発明の第4の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。第4の実施形態は、光の入射面に対して傾斜した複数の反射層3を第1の光学層4と第2の光学層5との間に備え、これらの反射層3を互いに平行に配列している点において、第1の実施形態とは異なっている。
図20は、本発明の第4の実施形態に係る光学部材の構造体の一構成例を示す斜視図である。構造体11は、一方向に延在された三角柱状の凸部であり、この柱状の構造体11が一方向に向かって一次元配列されている。構造体11の延在方向に垂直な断面は、例えば、直角三角形状を有する。構造体11の鋭角側の傾斜面上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法などの、指向性を有する薄膜形成法により、反射層が形成される。
第4の実施形態によれば、複数の反射層を光学部材内に平行に配列している。これにより、前記反射層による反射回数を、コーナーキューブ形状やプリズム形状の構造体を形成した場合に比べて低減することができる。したがって、反射率を高くすることができ、かつ、前記反射層による光の吸収を低減できる。
【0106】
<第5の実施形態>
図21は、本発明の第5の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。
図21に示すように、第5の実施形態は、光学部材1の入射面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層6をさらに有する点において、第1の実施形態とは異なっている。自己洗浄効果層6は、例えば、光触媒を含んでいる。光触媒としては、例えば、TiO
2を用いることができる。
上述したように、光学部材は特定波長帯の光を選択的に指向反射する点に特徴を有している。光学部材を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され指向反射特性が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。
第5の実施形態によれば、光学部材の入射面上に自己洗浄効果層6を形成しているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、入射面に対する汚れなどの付着を抑制し、指向反射特性の低減を抑制できる。
【0107】
<第6の実施形態>
第6の実施形態は、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、第1の実施形態とは異なっている。光学部材1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、第1の光学層4又は第2の光学層5の表面、第1の光学層5又は光学層4の内部、及び反射層3と第1の光学層4又は第2の光学層5との間のうち、少なくとも1箇所に設けられている。光散乱体は、好ましくは、反射層3と第2の光学層4との間、第2の光学層5の内部、及び第2の光学層5の表面のうちの少なくとも一箇所に設けられている。光学部材1を窓材などの支持体に貼り合わせる場合、室内側及び室外側のどちらにも適用可能である。光学部材1を室外側に対して貼り合わせる場合、反射層3と窓材などの支持体との間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。光学部材1を窓材などの支持体に貼り合わせる場合、反射層3と入射面との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学部材1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、反射層3との間に光散乱体を設けることが好ましい。
図22Aは、本発明の第6の実施形態に係る光学部材の第1の構成例を示す断面図である。
図22Aに示すように、第2の光学層5は、樹脂と微粒子12とを含んでいる。微粒子12は、第2の光学層5の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子12としては、例えば、有機微粒子及び無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子12としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子12としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、スチレン、アクリルやそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
図22Bは、本発明の第6の実施形態に係る光学部材の第2の構成例を示す断面図である。
図22Bに示すように、光学部材1は、第2の光学層5の表面に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。前記微粒子としては、第1の構成例と同様のものを用いることができる。
図22Cは、本発明の第6の実施形態に係る光学部材の第3の構成例を示す断面図である。
図22Cに示すように、光学部材1は、反射層3と第2の光学層5との間に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。前記微粒子としては、第1の構成例と同様のものを用いることができる。
第6の実施形態によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学部材1を曇らせて、光学部材1に対して意匠性を付与することができる。
【0108】
<第7の実施形態>
図23は、本発明の第7の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。第7の実施形態は、第1の光学層としての窓材41上に反射層3を直接形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
窓材41は、その一主面に構造体42を有する。この構造体42が形成された一主面上に、反射層3、第2の光学層43が順次積層されている。構造体42の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第1の実施形態における構造体11の凹凸を反転した形状などが挙げられる。第2の光学層43は、透過写像鮮明度や全光線透過率を向上するとともに、反射層3を保護するためのものでもある。第2の光学層43は、例えば、熱可塑性樹脂、又は活性エネルギー線硬化性樹脂を主成分とする樹脂を硬化してなるものである。
【0109】
<第8の実施形態>
図24A、
図24Bは、本発明の第8の実施形態に係る光学部材1の第1の構成例を示す断面図である。
図25A、
図25Bは、本発明の第8の実施形態に係る光学部材1の第2の構成例を示す断面図である。第8の実施形態は、第1の光学層4及び第2の光学層5の少なくとも一方が、2層構造を有している点において、第1の実施形態とは異なっている。
図24A、
図24Bでは、外光の入射面S1側となる第1の光学層4が2層構造を有する例が示されている。
図25A、
図25Bでは、外光の入射面S1側となる第1の光学層4と、外光の出射面S2側となる第2の光学層5との両方が2層構造を有する例が示されている。
図24A、
図24Bに示すように、第1の光学層4の2層構造は、例えば、表面側となる平滑な基材4aと、この基材4a及び反射層3との間に形成された樹脂層4bとから構成されている。
図25A、
図25Bに示すように、第2の光学層5の2層構造は、例えば、表面側となる平滑な基材5aと、この基材5a及び反射層3との間に形成された樹脂層5bとから構成されている。
光学部材1は、例えば、接合層8を介して被着体である窓材10の屋内側又は屋外側に貼り合わされる。接合層8としては、例えば、接着剤を主成分とする接着層、又は粘着剤を主成分とする粘着層を用いることができる。接合層8が粘着層であるである場合、
図24B、
図25Bに示すように、光学部材1としては、例えば、その入射面S1又は出射面S2に形成された接合層8(粘着層)と、この粘着層上に形成された剥離層81とをさらに有することが好ましい。このような構成にすることで、剥離層81を剥離するだけで、接合層8(粘着層)を介して窓材10などの被着体に対して光学部材1を容易に貼り合わせることができるからである。
光学部材1と接合層8との接着性を向上する観点から、光学部材1と接合層8との間に、プライマー層をさらに形成することが好ましい。また、同様に光学部材1と接合層8との接着性を向上する観点から、光学部材1の接合層8が形成される入射面S1又は出射面S2に対して、公知の物理的前処理を施すことが好ましい。公知の物理的前処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられる。
【0110】
<第9の実施形態>
図25は、本発明の第9の実施形態に係る光学部材の第1の構成例を示す断面図である。
図26は、本発明の第9の実施形態に係る光学部材の第2の構成例を示す断面図である。第9の実施形態は、窓材10などの被着体に貼り合わされる入射面S1又は出射面S2上、又はその面と反射層3との間に、バリア層71とをさらに有する点において、第8の実施形態とは異なっている。
図25では、光学部材1が、窓材10などの被着体に貼り合わされる入射面S1上に、バリア層71をさらに有する例が示されている。
図28では、光学部材1が、窓材10などの被着体を貼り合わせる側となる基材4aと樹脂層4bとの間に、バリア層71をさらに有する例が示されている。
【0111】
バリア層71の材料としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
x)、及びジルコニアの少なくとも1種を含む無機酸化物、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリフッ化ビニル樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物(EVOH)の少なくとも1種を含む樹脂材料などを用いることができる。また、バリア層71の材料としては、例えば、SiN、ZnS−SiO
2、AlN、Al
2O
3、SiO
2−Cr
2O
3−ZrO
2からなる複合酸化物(SCZ)、SiO
2−In
2O
3−ZrO
2からなる複合酸化物(SIZ)、TiO
2、及びNb
2O
5の少なくとも1種を含む誘電体材料を用いることもできる。
【0112】
上述のように、光学部材1が入射面S1又は出射面S2にバリア層71をさらに有する場合には、バリア層71が形成された第1の光学層4、又は第2の光学層5が以下の関係を有することが好ましい。すなわち、バリア層71が形成された基材4a又は基材5aの水蒸気透過率を、樹脂層4b又は樹脂層5bのものよりも低くすることが好ましい。これにより、光学部材1の入射面S1又は出射面S2から反射層3への水分の拡散をさらに低減することができるからである。
第9の実施形態では、光学部材1が入射面S1又は出射面S2にバリア層71をさらに有するので、入射面S1又は出射面S2から反射層3への水分の拡散を低減し、反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学部材1の耐久性を向上することができる。
【0113】
<第10の実施形態>
図27は、本発明の第10の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。第10の実施形態は、光学部材1の入射面S1及び出射面S2のうちの少なくとも一方に形成されたハードコート層72をさらに有する点において、第8の実施形態とは異なっている。なお、
図27は、光学部材1の出射面S2にハードコート層72が形成された例が示されている。
【0114】
ハードコート層72の鉛筆硬度は、耐擦傷性の観点から、好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上である。ハードコート層72は、光学部材1の入射面S1及び出射面S2のうちの少なくとも一方に、樹脂組成物を塗布、硬化して得られる。この樹脂組成物としては、例えば、特公昭50−28092号公報、特公昭50−28446号公報、特公昭51−24368号公報、特開昭52−112698号公報、特公昭57−2735号公報、特開2001−301095号公報に開示されているものが挙げられ、具体的に例えば、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのオルガノシラン系熱硬化型樹脂、エーテル化メチロールメラミンなどのメラミン系熱硬化樹脂、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの多官能アクリレート系紫外線硬化樹脂などが挙げられる。
【0115】
前記樹脂組成物は、ハードコート層72に防汚性を付与する観点から、防汚剤をさらに含有することが好ましい。前記防汚剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1個以上の(メタ)アクリル基、ビニル基、又はエポキシ基を有するシリコーンオリゴマー及び/又はフッ素含有オリゴマーを用いることが好ましい。前記シリコーンオリゴマー及び/又はフッ素オリゴマーの配合量は、固形分の0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。前記配合量が0.01質量%未満であると、防汚機能が不十分となる傾向がある。一方、前記配合量が5質量%を超えると、塗膜硬度が低下する傾向がある。前記防汚剤としては、例えば、DIC株式会社製のRS−602、RS−751−K、サートマー社製のCN4000、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC−HP、信越化学工業株式会社製のX−22−164E、チッソ株式会社製のFM−7725、ダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYL350、デグサ社製のTEGORad2700などを用いることが好ましい。防汚性が付与されたハードコート層72の純粋接触角は、好ましくは70°以上、より好ましくは90°以上である。前記樹脂組成物は、必要に応じて、光安定剤、難燃剤及び酸化防止剤などの添加剤をさらに含有するようにしてもよい。
第10の実施形態によれば、光学部材1の入射面S1及び出射面S2のうちの少なくとも一方にハードコート層72を形成しているので、光学部材1に耐擦傷性を付与することができる。例えば、光学部材1を窓の内側に貼り合わせた場合には、光学部材1の表面を人が触ったり、又は光学部材1の表面を掃除したときにも傷の発生を抑制したりすることができる。また、光学部材1を窓の外側に貼り合わせた場合にも、同様に傷の発生を抑制することができる。
【0116】
<第11の実施形態>
図28は、本発明の第11の実施形態に係る光学部材の一構成例を示す断面図である。第11の実施形態は、ハードコート層72上に防汚層74をさらに有する点において、第10の実施形態とは異なっている。また、ハードコート層72と防汚層74との間の密着性を向上する観点からすると、ハードコート層72と防汚層74との間に、カップリング剤層(プライマー層)73をさらに有することが好ましい。
第11の実施形態では、光学部材1がハードコート層72上に防汚層74をさらに備えているので、光学部材1に対して防汚性を付与することができる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0118】
(実施例1)
微細孔のない均質なニッケルリンめっきをSUSロール上に成膜し、めっき面を超精密切削することによって、形状転写用原盤を得た。前記形状転写原盤を洗浄後、熱硬化性樹脂を用いて、形状転写を行い凸形状を有する第1の光学層を得た。
次に、第1の光学層の凸形状が付与された面上に、真空スパッタ法により、構造A〔GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛、35nm)/AgNdCu(10nm)/GZO(70nm)/AgNdCu(10nm)/GZO(35nm)〕をこの順で成膜して、45°の傾斜面に垂直な方向にGZO(35nm)/AgNdCu(10nm)/GZO(70nm)/AgNdCu(10nm)/GZO(35nm)が交互積層されるようにし、反射層を形成した。なお、銀合金層であるAgNdCu層(金属層)の成膜には、Ag/Nd/Cu=99.0at%/0.4at%/0.6at%の組成を含有する合金ターゲットを使用した。GZO層(高屈折率層)の成膜には、Ga
2O
3/ZnO=1at%/99at%の組成を有するセラミックスターゲットを使用した。高屈折率層は、ロールを用いて、基材であるPETフィルムの成膜面の背面側を前記ロールで支持した状態で成膜した。以上により、反射層付き第1の光学層を得た。
次に、反射層を紫外線硬化性樹脂で包埋し、光学部材を得た。
【0119】
<凸形状の粗さの評価>
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)(NanoScope IV、日本ビーコ社製)を用いて、第1の光学層の凸形状の粗さ(算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRz)を測定した。なお、測定試料は、上記光学部材の作製において、反射層が形成される前の第1の光学層を用いた。結果を表1に示す。
なお、凸形状の粗さは、光学部材のTEM断面の観察によっても求めることができる。そして、TEM断面の観察によって算出した凸形状のRz及びRaの値と、AFMにより求めた凸形状のRz及びRaの値は、ほぼ一致する結果となった。
【0120】
<可視光線透過率の測定>
光学部材の可視光透過率は、紫外可視分光装置(V−560、JASCO社製)を用いて測定した。この測定により、波長と透過率の関数を表す関数τ[λ]を得た。τを、JIS A 5759に規定されている可視光線透過率の計算式に入れ、可視光透過率を算出した。測定条件を以下に示す。ただし、JIS5759では、ガラスに貼り付けて透過するよう定められているが、高温高湿試験を行うと、粘着剤とガラスが変色する場合があるため、これらを除いたものを用いて試験及び測定を行った。
測定モード :%T
レスポンス :Medium
バンド幅 :5.0nm
走査速度 :200nm
開始波長 :380nm
終了波長 :780nm
データ取り込み間隔:1.0nm
縦軸スケール :自動
繰り返し回数 :1回
【0121】
保存前期、及び70℃90%RHで100時間又は500時間保存した後の光学部材について上記測定を行った。
保存前(初期特性)の可視光透過率を表1に示す。なお、可視光線透過率が15%以上のものを合格とし、15%未満のものを不合格とした。
保存後特性については、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
〔保存後特性の評価〕
○:初期(保存前)の光学部材と比較して、可視光線透過率の変化が5%未満
△:初期(保存前)の光学部材と比較して、可視光線透過率の変化が5%以上10%未満
×:初期(保存前)の光学部材と比較して、可視光線透過率の変化が10%以上
【0122】
(実施例2)
実施例1において、形状転写用原盤を、微細孔のない均質なニッケルリンめっきをSUSロール上に成膜し、めっき面を1μmの摩耗がある切削用バイトを用いて切削加工して得られた形状転写用原盤に変更した以外は、実施例1と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0123】
(実施例3)
実施例1において、形状転写用原盤を、直径50nm以下の微細孔のあるニッケルリンめっきをSUSロール上に成膜し、めっき面を超精密切削することによって得られた形状転写用原盤に変更した以外は、実施例1と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0124】
(実施例4)
実施例1において、形状転写用原盤を、直径100nm以下の微細孔のあるニッケルリンめっきをSUSロール上に成膜し、めっき面を超精密切削することによって得られた形状転写用原盤に変更し、かつ反射層を、平均厚み20nmのAgNdCu層(金属層)のみからなる単層の反射層に変更した以外は、実施例1と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0125】
(実施例5)
実施例4において、AgNdCu層(金属層)の平均厚みを、40nmに変えた以外は、実施例4と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0126】
(比較例1)
実施例1において、形状転写用原盤を、直径100nm以下の微細孔のあるニッケルリンめっきをSUSロール上に成膜し、めっき面を超精密切削することによって得られた形状転写用原盤に変更した以外は、実施例1と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0127】
(比較例2)
実施例1において、形状転写用原盤を、Cuめっき付きSUSロールを超精密切削後、Crめっきをすることによって得られた形状転写用原盤に変更した以外は、実施例1と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0128】
(比較例3)
実施例3において、反射層の平均厚みを7nmに変えた以外は、実施例3と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0129】
(比較例4)
実施例4において、反射層の平均厚み50nmに変えた以外は、実施例4と同様にして光学部材を作製した。また、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
本発明の光学部材は、凸形状の傾斜面の最大高さ粗さRz(nm)が、金属層の平均厚み(nm)の3.0倍以下であるとき、可視光線透過率の変化量を抑えることができ、耐久性に優れることがわかった。また、金属層の平均厚みが40nmを超えると、初期の可視光線透過率が15%を下回るほど低くなってしまった。