(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造影剤が投与された被検体から第1の時相のデータを収集するための第1のスキャンと、前記被検体から第2の時相のデータを収集するための第2のスキャンと、前記被検体から第3の時相のデータを収集するための第3のスキャンとを実行する医用装置に備えられ、前記第1のスキャン、前記第2のスキャン、および前記第3のスキャンを実行するときの条件を設定する設定装置であって、
第1のスキャン時間を有する前記第1のスキャンの開始時点と、前記第2のスキャンの開始時点と、前記第3のスキャンの各々の開始時点と、前記第1のスキャンが終了してから前記第2のスキャンが開始されるまでの第1の遅延時間とを定めた第1のタイムラインに基づいて、前記第1のスキャンのスキャン時間が前記第1のスキャン時間から第2のスキャン時間に変更されたときの第2のタイムラインを作成する作成手段を有し、
前記作成手段は、
前記第2のタイムラインにおける前記第1のスキャンの開始時点を、前記第1のタイムラインにおける前記第1のスキャンの開始時点と同じ時点に設定し、
前記第2のタイムラインにおける前記第2のスキャンの開始時点を、前記第2のタイムラインにおける前記第1のスキャンの開始時点に対して、前記第2のスキャン時間と前記第1の遅延時間との和だけ遅れた時点に設定し、
前記第2のタイムラインにおける前記第3のスキャンの開始時点を、前記第1のタイムラインにおける前記第3のスキャンの開始時点と同じ時点に設定する、設定装置。
前記第1のスキャンは早期動脈相のデータを収集するためのスキャンであり、前記第2のスキャンは後期動脈相のデータを収集するためのスキャンである、請求項9に記載の設定装置。
前記第2のタイムラインは、前記被検体の血管に設定された領域内に所定量以上の造影剤が流入した時点から前記第1のスキャンの開始時点までの時間を表す情報を含む、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の設定装置。
前記第2のタイムラインは、前記医用装置にスキャンを実行するための命令が入力された時点から前記第1のスキャンの開始時点までの時間を表す情報を含む、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の設定装置。
造影剤が投与された被検体から第1の時相のデータを収集するための第1のスキャンと、前記被検体から第2の時相のデータを収集するための第2のスキャンと、前記被検体から第3の時相のデータを収集するための第3のスキャンとを実行する医用装置に備えられ、前記第1のスキャン、前記第2のスキャン、および前記第3のスキャンを実行するときの条件を設定する設定装置に適用されるプログラムであって、
第1のスキャン時間を有する前記第1のスキャンの開始時点と、前記第2のスキャンの開始時点と、前記第3のスキャンの各々の開始時点と、前記第1のスキャンが終了してから前記第2のスキャンが開始されるまでの第1の遅延時間とを定めた第1のタイムラインに基づいて、前記第1のスキャンのスキャン時間が前記第1のスキャン時間から第2のスキャン時間に変更されたときの第2のタイムラインを作成する作成
処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記作成処理は、
前記第2のタイムラインにおける前記第1のスキャンの開始時点を、前記第1のタイムラインにおける前記第1のスキャンの開始時点と同じ時点に設定し、
前記第2のタイムラインにおける前記第2のスキャンの開始時点を、前記第2のタイムラインにおける前記第1のスキャンの開始時点に対して、前記第2のスキャン時間と前記第1の遅延時間との和だけ遅れた時点に設定し、
前記第2のタイムラインにおける前記第3のスキャンの開始時点を、前記第1のタイムラインにおける前記第3のスキャンの開始時点と同じ時点に設定するプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0014】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル4などを有している。
【0015】
マグネット2は、被検体14が収容されるボア21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイル、勾配コイル、およびRFコイルなどが内蔵されている。
【0016】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体14はボア21に搬送される。
【0017】
受信RFコイル4は、被検体14に取り付けられている。受信RFコイル4は、被検体14からの磁気共鳴信号を受信する。
【0018】
MR装置100は、更に、造影剤注入装置5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、コンピュータ9、操作部12、および表示部13などを有している。
【0019】
造影剤注入装置5は、被検体14に造影剤を注入する。
送信器6はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源7は勾配コイルに電流を供給する。
受信器8は、受信RFコイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。
【0020】
コンピュータ9は、表示部13に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。コンピュータ9は、プロセッサ10およびメモリ11などを有している。
【0021】
メモリ11には、プロセッサ10により実行されるプログラムや、後述する基準タイムライン(
図5参照)などが記憶されている。プロセッサ10は、メモリ11に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。
図2に、プロセッサ10が実行する処理を示す。プロセッサ10は、メモリ11に記憶されているプログラムを読み出すことにより、作成手段101などを構成する。
作成手段101は、スキャンの開始時点などを定めたタイムラインを作成する。
【0022】
プロセッサ10は、作成手段101を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、この手段として機能する。
【0023】
操作部12は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ9に入力する。表示部13は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0024】
本形態では、MR装置100を用いてローカライザスキャンおよび本スキャンなどが実行される。
ローカライザスキャンは、スライスの設定などに使用される画像を取得するためのスキャンである。ローカライザスキャンでは、例えば、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像が取得される。
本スキャンでは、造影剤を用いた撮影が実行される(
図3参照)。
【0025】
図3は本スキャンの説明図である。
本スキャンMSでは造影剤が投与される。造影剤が投与された後、スキャンが実行される。
【0026】
本スキャンMSでは、先ず、被検体が息止めしている間に動脈相を2回撮影するdouble arterial phaseスキャン(以下、「DAPスキャン」と呼ぶ)SC0が実行される。DAPスキャンSC0は、造影剤の投与を開始してから時間TW1が経過した時点で開始される。時間TW1は、例えば、10秒〜15秒程度に設定される。DAPスキャンSC0は、被検体が息止めをしている間に実行される。したがって、DAPスキャンSC0を開始する前に、被検体に息止めをさせるための息止めメッセージa1が出力される。息止めメッセージa1の時間長Taは、例えば、5秒程度である。息止めメッセージa1により被検体は息止めするので、被検体が息止めしている間に、DAPスキャンSC0を実行することができる。DAPスキャンSC0が終了した後、被検体に呼吸を再開させるための音声メッセージb1が出力される。音声メッセージb1の時間長Tbは、例えば、5秒程度である。被検体は音声メッセージb1に従って呼吸を再開する。したがって、被検体が息止めしている期間に、DAPスキャンSC0が実行される。
【0027】
尚、DAPスキャンSC0は、動脈相を2回撮影するために、2つのスキャンSC1およびSC2を有している。以下、スキャンSC1およびSC2について順に説明する。
【0028】
スキャンSC1は、早期動脈相のデータを収集するためのスキャンであり、造影剤が投与されてから時間TW1(sec)が経過した時点で開始される。スキャンSC1を実行することにより、早期動脈相のデータが収集される。
【0029】
スキャンSC1が終了した後、次のスキャンSC2が実行される。スキャンSC2は後期動脈相のデータを収集するためのスキャンである。スキャンSC2は、スキャンSC1を開始してから時間TW2が経過した時点で開始される。時間TW2は、後期動脈相のデータの収集に適した時間に設定する必要があり、例えば10秒に設定される。また、スキャンSC1とSC2との間には、遅延時間TD1が設けられている。ただし、DAPスキャンSC0では、被検体が息止めしている間に2つのスキャンSC1およびSC2を実行する必要があるので、息止めによる被検体の負担を軽減する観点から、遅延時間TD1は理想的には0秒であることが望ましい。尚、撮影条件やMR装置の性能などが原因でTD1=0秒に設定できない場合は、遅延時間TD1はできるだけ短い時間(例えば1秒)に設定される。
【0030】
上記のように、DAPスキャンSC0では、被検体が息止めしている間に、2つのスキャンSC1およびSC2が実行される。
DAPスキャンSC0が終了した後、スキャンSC3が実行される。
【0031】
スキャンSC3は、門脈相のデータを収集するためのスキャンである。スキャンSC3は、スキャンSC1を開始してから時間TW3が経過した時点で開始される。時間TW3は、門脈相のデータの収集に適した時間に設定する必要があり、例えば、60秒に設定される。尚、DAPスキャンSC0とスキャンSC3との間には遅延時間TD2(sec)が設けられており、遅延時間TD2の値に応じて、時間TW3が変化する。したがって、時間TW3が門脈相のデータの収集に適した時間に設定されるように、遅延時間TD2を設定することが望まれる。遅延時間TD2は、例えば、40秒である。
【0032】
また、スキャンSC3は、DAPスキャンSC0と同様に、被検体が息止めをしている間に実行する必要がある。したがって、スキャンSC3の前に、被検体に息止めをさせるための息止めメッセージa2が出力される。息止めメッセージa2により被検体は息止めするので、被検体が息止めしている期間に、スキャンSC3を実行することができる。スキャンSC3を実行することにより、門脈相のデータが収集される。
【0033】
スキャンSC3が終了した後、被検体に呼吸を再開させるための呼吸再開メッセージb2が出力される。被検体は呼吸再開メッセージb2に従って呼吸を再開する。したがって、門脈相のデータを収集する場合、被検体が息止めしている期間にスキャンSC3が実行される。スキャンSC3が終了した後、スキャンSC4が実行される。
【0034】
スキャンSC4は、平衡相のデータを収集するためのスキャンである。スキャンSC4は、スキャンSC1を開始してから時間TW4が経過した時点で開始される。時間TW4は、平衡相のデータの収集に適した時間に設定する必要があり、例えば、2分30秒に設定される。尚、スキャンSC3とスキャンSC4との間には遅延時間TD3(sec)が設けられており、遅延時間TD3の値に応じて、時間TW4が変化する。したがって、時間TW4が門脈相のデータの収集に適した時間に設定されるように、遅延時間TD3を設定することが望ましい。遅延時間TD3は、例えば、1分20秒である。
【0035】
また、スキャンSC4は、被検体が息止めをしている間に実行する必要がある。したがって、スキャンSC4の前に、被検体に息止めをさせるための息止めメッセージa3が出力される。息止めメッセージa3により被検体は息止めするので、被検体が息止めしている期間に、スキャンSC4を実行することができる。スキャンSC4を実行することにより、平衡相のデータが収集される。
【0036】
スキャンSC4が終了した後、被検体に呼吸を再開させるための呼吸再開メッセージb3が出力される。被検体は呼吸再開メッセージb3に従って呼吸を再開する。したがって、平衡相のデータを収集する場合、被検体が息止めしている期間にスキャンSC4が実行される。このようにして、本スキャンMSが実行される。
【0037】
以下に、本形態におけるローカライザスキャンLSおよび本スキャンMSを実行するときのMR装置の動作について説明する。
【0038】
図4は、MR装置の動作フローを示す図である。
ステップST1では、ローカライザスキャンが実行される。ローカライザスキャンを実行することにより、スライスの設定などに使用される画像が取得される。ローカライザスキャンを実行した後、ステップST2に進む。
【0039】
ステップST2では、オペレータは、ステップST1で取得した画像などを参考にしながら、本スキャンMSを実行するときのパラメータ値(例えば、スライスの枚数、解像度)を設定する。これらのパラメータ値を設定した後、ステップST3に進む。
【0040】
ステップST3では、本スキャンMSで実行されるスキャンSC1〜SC4の各々の開始時点などを定めたタイムラインを作成する。以下に、タイムラインの作成方法について説明する。
【0041】
本形態では、メモリ11に、スキャンSC1〜SC4を実行するときの基準となるタイムライン(以下、「基準タイムライン」と呼ぶ)が保存されている。
【0042】
図5は、基準タイムラインTL0を示す図である。
基準タイムラインTL0には、スキャン時間TSを有するスキャンSC1〜SC4の開始時点が設定されている。ここでは、スキャン時間TSは、TS=10秒とする。
図5では、各スキャンに対して定められた開始時点を、符号「t
b」、「t
c」、「t
f」、および「t
i」で示してある。
【0043】
また、基準タイムラインTL0には、息止めメッセージa1〜a3および呼吸再開メッセージb1〜b3の出力が開始される開始時点が設定されている。ここでは、各メッセージに対して設定された開始時点を、符号「t
a」、「t
d」、「t
e」、「t
g」、「t
h」、「t
j」で示してある。
【0044】
更に、基準タイムラインTL0には、スキャンが終了してから次のスキャンが開始されるまでの遅延時間TD1、TD2、およびTD3が設定されている。TD1、TD2、TD3は、例えば、TD1=1秒、TD2=30秒、TD3=60秒である。
【0045】
ステップST3では、
図5に示す基準タイムラインTL0を参考にして、スキャンSC1〜SC4を実行するときの実際のタイムラインを決定する。以下に、実際のタイムラインを決定する手順について説明する。
【0046】
ステップST31では、作成手段101(
図2参照)が、ステップST2においてオペレータが設定したパラメータ値に基づいて、スキャンSC1〜SC4のスキャン時間を算出する。ここでは、算出されたスキャン時間を「TS1」とする。スキャン時間TS1を算出した後、ステップST32に進む。
【0047】
ステップST32では、作成手段101が、ステップST31で算出したスキャン時間TS1と、基準タイムラインTL0のスキャン時間TSとを比較する。
【0048】
TS=TS1の場合、ステップST4に進み、TS>TS1の場合ステップST33に進み、TS<TS1の場合、ステップST34に進む。以下、TS=TS1の場合、TS>TS1の場合、TS<TS1の場合に分けて、各ステップについて説明する。
【0049】
(i)TS=TS1の場合
TS=TS1の場合、ステップST4に進み、
図5に示す基準タイムラインTL0に従って、スキャンが実行される。
【0050】
先ず、時点t
0において造影剤が投与される。造影剤が投与された後、時点t
aにおいて、息止めメッセージa1の出力が開始される。息止めメッセージa1は、例えば、「息を吸って、吐いて、吸って、吐いて、息を止めてください」のような音声メッセージである。被検体は息止めメッセージa1に応答して息を止める。息止めメッセージa1を出力した後、時点t
bにおいて、スキャンSC1を開始する。スキャンSC1を実行することにより、早期動脈相のデータが収集される。
【0051】
スキャンSC1が終了した後、遅延時間TD1が経過した時点t
cで、スキャンSC2が開始される。遅延時間TD1は、例えば1秒である。スキャンSC2を実行することにより後期動脈相のデータが収集される。
【0052】
スキャンSC2が終了した後、時点t
dにおいて、呼吸再開メッセージb1の出力を開始する。呼吸再開メッセージb1は、例えば、「呼吸をしても大丈夫です。楽にしてください」のような音声メッセージである。被検体は、このメッセージb1に応答して呼吸を再開する。
【0053】
被検体に呼吸を再開させた後、時点t
eにおいて、被検体に息止めさせるための息止めメッセージa2の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa2に応答して息を止める。息止めメッセージa2を出力した後、時点t
fにおいて、スキャンSC3が開始される。スキャンSC3を実行することにより、門脈相のデータが収集される。
【0054】
スキャンSC3が終了した後、時点t
gにおいて、呼吸再開メッセージb2の出力を開始する。被検体はメッセージb2に応答して呼吸を再開する。
【0055】
被検体に呼吸を再開させた後、時点t
hにおいて、被検体に息止めさせるための息止めメッセージa3の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa3に応答して息を止める。息止めメッセージa3を出力した後、時点t
iにおいて、スキャンSC4が開始される。スキャンSC4を実行することにより、平衡相のデータが収集される。
スキャンSC4が終了した後、呼吸再開メッセージb3を出力し、フローが終了する。
【0056】
(ii)TS>TS1の場合
被検体が健常者の場合、一般的には、比較的長時間の息止めが可能である。しかし、例えば高齢者は、長時間の息止めが困難なことがある。そこで、オペレータは、長時間の息止めが困難と思われる被検体に対しては、スキャン時間が短くなるようにパラメータ値を設定する。スキャン時間を短くする方法としては、例えば、FOV(撮像視野)の解像度を低くする方法がある。スキャン時間が短くなるようにパラメータ値が設定された場合、ステップST31で算出されたスキャン時間TS1が、基準タイムラインTL0におけるスキャン時間TSよりも短くなる。例えば、基準タイムラインTL0におけるスキャン時間TSが10秒であるが、実際に算出されたスキャン時間TS1が8秒となる場合がある。この場合、TS>TS1であるので、ステップST33に進む。
【0057】
ステップST33では、基準タイムラインTL0に基づいて、スキャン時間TS1に適したタイムラインを作成する。以下に、タイムラインの作成方法について説明する。尚、以下の説明では、本形態の効果を明確にするため、先ず、本形態とは別の方法でタイムラインを作成する例について説明し、その後に、本形態の方法によりタイムラインを作成する例について説明する。
【0058】
図6は、本形態とは別の方法でタイムラインを作成するときの説明図である。
図6(a)は、基準タイムラインTL0を示す図であり、
図6(b)は、基準タイムラインTL0に基づいて本形態とは別の方法により作成されたタイムラインTL1を示す図である。
【0059】
図6(b)のタイムラインTL1の各スキャンのスキャン時間はTS1である。したがって、タイムラインTL1は、基準タイムラインTL0よりも、各スキャンのスキャン時間がΔT(=TS−TS1)だけ短くなっている。
【0060】
また、タイムラインTL1のスキャンSC1〜SC4の開始時点は、基準タイムラインTL0と同じ開始時点を保持している。したがって、タイムラインTL1は、基準タイムラインTL0よりも、遅延時間がΔTだけ長くなる。具体的には、タイムラインTL1では、スキャンSC1とSC2との間の遅延時間は(TD1+ΔT)となり、スキャンSC2とSC3との間の遅延時間は(TD2+ΔT)となり、スキャンSC3とSC4との間の遅延時間は(TD3+ΔT)となる。
【0061】
尚、スキャン時間が短くなることに伴って、呼吸再開メッセージb1、b2、およびb3の開始時点もΔTだけ早い時点に移動する。呼吸再開メッセージb1の開始時点はt
dからt
d1に移動し、呼吸再開メッセージb2の開始時点はt
gからt
g1に移動し、呼吸再開メッセージb3の開始時点はt
jからt
j1に移動する。
【0062】
上記のように、タイムラインTL1は、基準タイムラインTL0よりも、各スキャンのスキャン時間がΔTだけ短くなっている。また、DAPスキャンSC0に着目すると、タイムラインTL1は、基準タイムラインTL0よりも、DAPスキャンSC0のスキャン時間がΔTだけ短くなることがわかる。したがって、DAPスキャンSC0を実行するときの被検体の息止め時間を、ΔT短縮することができる。例えば、基準タイムラインTL0におけるスキャン時間TSがTS=10秒であり、遅延時間TD1がTD1=1秒の場合、基準タイムラインTL0におけるDAPスキャンSC0のスキャン時間は、21秒である。これに対し、タイムラインTL1におけるスキャン時間TS1がTS1=7秒の場合、タイムラインTL1におけDAPスキャンSC0のスキャン時間は、18秒である。したがって、スキャン時間が3秒短縮されるので、DAPスキャンSC0を実行するときの被検体の息止め時間を3秒短縮することができる。
【0063】
しかし、高齢者のように、長時間の息止めが困難な被検体は、息止め時にかかる肉体的負担は大きい。したがって、DAPスキャンSC0のスキャン時間を更に短くすることが望まれている。そこで、本形態では、作成手段101は、DAPスキャンSC0のスキャン時間を更に短くすることができるタイムラインを作成する。以下に、このタイムラインを作成する方法について説明する(
図7参照)。
【0064】
図7は、本形態におけるタイムラインの作成方法の説明図である。
図7(a)および
図7(b)には、それぞれ
図6(a)および
図6(b)のタイムラインを再度示してある。
図7(c)は本形態の方法により得られたタイムラインTL2を示す。
以下に、タイムラインTL2の作成方法について説明する。
【0065】
作成手段101は、スキャンSC1の開始時点をt
bに保持する。そして、作成手段101は、スキャンSC2の開始時点t
c1を計算する。スキャンSC2の開始時点t
c1は、以下の式(1)で計算することができる。
t
c1=t
b+TS1+TD1 ・・・(1)
ここで、t
b:スキャンSC1の開始時点
TS1:スキャンSC1のスキャン時間
TD1:基準タイムラインTL0におけるスキャンSC1とSC2との間の遅延時間
【0066】
式(1)から、タイムラインTL2におけるスキャンSC2の開始時点t
c1は、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC2の開始時点t
cよりも、ΔTだけ早い時点に設定されることがわかる。また、スキャンSC2のスキャン時間はTS1であるので、スキャンSC2は時点t
d1において終了する。したがって、タイムラインTL2は、基準タイムラインTL0よりも、DAPスキャンSC0のスキャン時間が2・ΔTだけ短くなるので、被検体の息止め時間を2・ΔT短縮できることがわかる。
【0067】
したがって、タイムラインTL2(
図7(c)参照)は、タイムラインTL1(
図7(b)参照)と比較すると、DAPスキャンSC0を実行するときの被検体の息止め時間をΔTだけ更に短縮することができるので、息止め時の被検体の負担を軽減することができる。
【0068】
次に、作成手段101は、スキャンSC3の開始時点t
fを計算する。スキャンSC3の開始時点t
fは、以下の式(2)で計算することができる。
t
f=t
c1+TS1+2・ΔT+TD2 ・・・(2)
ここで、t
c1:スキャンSC2の開始時点
TS1:スキャンSC2のスキャン時間
ΔT:スキャン時間TSとスキャン時間TS1との時間差
TD2:基準タイムラインTL0におけるスキャンSC2とSC3との間の遅延時間
【0069】
式(2)から、タイムラインTL2におけるスキャンSC3の開始時点t
fは、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC3の開始時点t
fと同じ時点に設定されることがわかる。したがって、門脈相のデータを最適なタイミングで収集することができる。尚、タイムラインTL2におけるスキャンSC3は、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC3よりもΔTだけ早く終了する。
【0070】
次に、作成手段101は、スキャンSC4の開始時点t
iを計算する。スキャンSC4の開始時点t
iは、以下の式(3)で計算することができる。
t
i=t
f+TS1+ΔT+TD3・・・(3)
ここで、t
f:スキャンSC3の開始時点
TS1:スキャンSC3のスキャン時間
ΔT:スキャン時間TSとスキャン時間TS1との時間差
TD3:基準タイムラインTL0におけるスキャンSC3とSC4との間の遅延時間
【0071】
式(3)から、タイムラインTL2におけるスキャンSC4の開始時点t
iは、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC4の開始時点t
iと同じ時点に設定されることがわかる。したがって、平衡相のデータを最適なタイミングで収集することができる。尚、タイムラインTL2におけるスキャンSC4は、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC4よりもΔTだけ早く終了する。
【0072】
また、タイムラインTL2は、基準タイムラインTL0と比較すると、各スキャンの終了するタイミングが早くなる。そこで、作成手段101は、各スキャンの終了するタイミングに合わせて、呼吸再開メッセージb1、b2、およびb3の開始時点も変更する。呼吸再開メッセージb1の開始時点は、t
dよりも2・ΔTだけ早い時点t
d1に変更される。また、呼吸再開メッセージb2の開始時点はt
gよりもΔTだけ早い時点t
g1に変更され、呼吸再開メッセージb3の開始時点はt
jよりもΔTだけ早い時点t
j1に変更される。したがって、スキャンの終了タイミングが変更されても、スキャン終了直後に呼吸再開メッセージを出力することができる。
【0073】
尚、タイムラインTL2では、スキャンSC2の開始時間はt
cからt
c1に変更されている。しかし、t
c1が所定の範囲内に含まれていれば、t
c1がt
cからずれても問題はない。
図8に、tc1が所定の範囲Rに含まれているときの一例を概略的に示す。
図8では、時点t
x1〜時点t
x2の範囲が、所定の範囲Rとして定められている。時点t
x1は、例えば、スキャンSC1の開始時点t
bから8秒が経過した時点に設定することができ、一方、時点t
x2は、例えば、スキャンSC1の開始時点t
bから12秒が経過した時点に設定することができる。タイムラインTL2のt
c1がt
x1〜t
x2の範囲に含まれていれば、診断に有用な後期動脈相のデータを収集することができるので、t
c1がt
cに対してΔTだけずれていても問題はない。ただし、ΔTの値によっては、t
c1が所定の範囲Rからはみ出てしまうことがある。この場合、診断に有用な後期動脈相のデータを収集することができない恐れがある。したがって、作成手段101は、t
c1が所定の範囲Rに含まれているか否かを判断することが望ましい。t
c1が所定の範囲Rに含まれていないと判断された場合は、オペレータに開始時点t
c1の変更が必要である旨の警告を与えればよい。この警告により、オペレータはスキャンSC2の開始時点t
c1が不適切であることがわかるので、本スキャンMSの実行前に、開始時点t
c1を変更することができる。
タイムラインTL2を作成した後、ステップST4に進む。
【0074】
ステップST4では、
図7(c)に示すタイムラインTL2に従って、本スキャンが実行される。
先ず、時点t
0において造影剤が投与される。造影剤が投与された後、時点t
aにおいて、息止めメッセージa1の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa1に応答して息を止める。息止めメッセージa1を出力した後、時点t
bにおいて、スキャンSC1を開始する。スキャンSC1を実行することにより、早期動脈相のデータが収集される。
【0075】
スキャンSC1が終了した後、遅延時間TD1が経過した時点t
c1で、スキャンSC2が開始される。遅延時間TD1は、例えば1秒である。スキャンSC2を実行することにより後期動脈相のデータが収集される。
【0076】
スキャンSC2が終了した後、時点t
d1において、呼吸再開メッセージb1の出力を開始する。被検体は、このメッセージb1に応答して呼吸を再開する。
【0077】
被検体に呼吸を再開させた後、時点t
eにおいて、被検体に息止めさせるための息止めメッセージa2の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa2に応答して息を止める。息止めメッセージa2を出力した後、時点t
fにおいて、スキャンSC3が開始される。スキャンSC3を実行することにより、門脈相のデータが収集される。
【0078】
スキャンSC3が終了した後、時点t
g1において、呼吸再開メッセージb2の出力を開始する。被検体はメッセージb2に応答して呼吸を再開する。
【0079】
被検体に呼吸を再開させた後、時点t
hにおいて、被検体に息止めさせるための息止めメッセージa3の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa3に応答して息を止める。息止めメッセージa3を出力した後、時点t
iにおいて、スキャンSC4が開始される。スキャンSC4を実行することにより、平衡相のデータが収集される。
スキャンSC4が終了した後、呼吸再開メッセージb3を出力し、フローが終了する。
【0080】
タイムラインTL2は、タイムラインTL1よりも、DAPスキャンSC0のスキャン時間をΔTだけ更に短縮することができるので、被検体が息止め時に感じる負担を更に軽減することができる。
【0081】
また、各スキャンのスキャン時間が短くなっても、スキャンSC3およびSC4の開始時点は、基準タイムラインTL0の開始時点と同じ時点(t
fおよびt
i)に保持されるので、門脈相および平衡相に適した条件でデータ収集することもできる。
【0082】
(iii)TS<TS1の場合
画像診断を行う上で、できるだけ解像度の高い画像が必要な場合、オペレータは、画像の解像度が高くなるようにパラメータ値を設定する。しかし、画像の解像度が高くなるようにパラメータ値を設定した場合、収集すべきデータ量が増えるので、ステップST31で算出されたスキャン時間TS1が、基準タイムラインTL0のスキャン時間TSよりも長くなることがある。例えば、基準タイムラインTL0のスキャン時間TSが10秒であるが、実際に算出されたスキャン時間TS1が12秒となることがある。この場合、TS<TS1であるので、ステップST34に進む。
【0083】
ステップST34では、基準タイムラインTL0に基づいて、TS<TS1に適したタイムラインを作成する。
【0084】
図9は、TS<TS1の場合のタイムラインの作成方法の説明図である。
図9(a)は基準タイムラインTL0を示しており、
図9(b)は、TS<TS1の場合に本形態の方法により得られたタイムラインTL3を示す。
【0085】
図9では、スキャン時間TS1とTSとの差は、ΔTで示されている。
作成手段101は、スキャンSC1の開始時点をt
bに保持する。そして、作成手段101は、スキャンSC2の開始時点t
c2を計算する。スキャンSC2の開始時点t
c2は、以下の式(4)を用いて計算することができる。
t
c2=t
b+TS1+TD1 ・・・(4)
ここで、t
b:スキャンSC1の開始時点
TS1:スキャンSC1のスキャン時間
TD1:基準タイムラインTL0におけるスキャンSC1とSC2との間の遅延時間
【0086】
式(4)から、タイムラインTL3におけるスキャンSC2の開始時点t
c2は、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC2の開始時点t
cよりも、ΔTだけ遅い時点に設定されることがわかる。また、スキャンSC2のスキャン時間はTS1であるので、スキャンSC2は時点t
d2において終了する。したがって、タイムラインTL3は、基準タイムラインTL0よりも、DAPスキャンSC0のスキャン時間が2・ΔTだけ長くなることがわかる。
【0087】
次に、作成手段101は、スキャンSC3の開始時点t
fを計算する。スキャンSC3の開始時点t
fは、以下の式(5)で計算することができる。
t
f=t
c2+TS1−2・ΔT+TD2 ・・・(5)
ここで、t
c2:スキャンSC2の開始時点
TS1:スキャンSC2のスキャン時間
ΔT:スキャン時間TSとスキャン時間TS1との時間差
TD2:基準タイムラインTL0におけるスキャンSC2とSC3との間の遅延時間
【0088】
式(5)から、タイムラインTL3におけるスキャンSC3の開始時点t
fは、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC3の開始時点t
fと同じ時点に設定されることがわかる。したがって、門脈相のデータを最適なタイミングで収集することができる。尚、タイムラインTL3におけるスキャンSC3は、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC3よりもΔTだけ遅く終了する。
【0089】
次に、作成手段101は、スキャンSC4の開始時点t
iを計算する。スキャンSC4の開始時点t
iは、以下の式(6)で計算することができる。
t
i=t
f+TS1−ΔT+TD3・・・(6)
ここで、t
f:スキャンSC3の開始時点
TS1:スキャンSC3のスキャン時間
ΔT:スキャン時間TSとスキャン時間TS1との時間差
TD3:基準タイムラインTL0におけるスキャンSC3とSC4との間の遅延時間
【0090】
式(6)から、タイムラインTL3におけるスキャンSC4の開始時点t
iは、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC4の開始時点t
iと同じ時点に設定されることがわかる。したがって、平衡相のデータを最適なタイミングで収集することができる。尚、タイムラインTL3におけるスキャンSC4は、基準タイムラインTL0におけるスキャンSC4よりもΔTだけ遅く終了する。
【0091】
また、タイムラインTL3は、基準タイムラインTL0と比較すると、各スキャンの終了するタイミングが遅くなる。そこで、作成手段101は、各スキャンの終了するタイミングに合わせて、呼吸再開メッセージb1、b2、およびb3の開始時点も変更する。呼吸再開メッセージb1の開始時点は、t
dよりも2・ΔTだけ遅い時点t
d2に変更される。また、呼吸再開メッセージb2の開始時点はt
gよりもΔTだけ遅い時点t
g2に変更され、呼吸再開メッセージb3の開始時点はt
jよりもΔTだけ遅い時点t
j2に変更される。したがって、スキャンの終了タイミングが変更されても、スキャン終了直後に呼吸再開メッセージを出力することができる。
【0092】
尚、タイムラインTL3では、スキャンSC2の開始時間はt
c2に変更されている。しかし、t
c2が
図8に示す所定の範囲R内に含まれていれば、t
c2がt
cからずれても問題はない。もし、t
c2が所定の範囲Rから外れた場合は、オペレータに開始時点t
c2の変更が必要である旨の警告を与えればよい。この警告により、オペレータは開始時点t
c2が不適切であることがわかるので、開始時点t
c2を変更することができる。
タイムラインTL3を調整した後、ステップST4に進む。
【0093】
ステップST4では、作成手段101が、
図9(b)に示すタイムラインTL3に従って、スキャンが実行される。
先ず、時点t
0において造影剤が投与される。造影剤が投与された後、時点t
aにおいて、息止めメッセージa1の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa1に応答して息を止める。息止めメッセージa1を出力した後、時点t
bにおいて、スキャンSC1を開始する。スキャンSC1を実行することにより、早期動脈相のデータが収集される。
【0094】
スキャンSC1が終了した後、遅延時間TD1が経過した時点t
c2で、スキャンSC2が開始される。遅延時間TD1は、例えば1秒である。スキャンSC2を実行することにより後期動脈相のデータが収集される。
【0095】
スキャンSC2が終了した後、時点t
d2において、呼吸再開メッセージb1の出力を開始する。被検体は、このメッセージb1に応答して呼吸を再開する。
【0096】
被検体に呼吸を再開させた後、時点t
eにおいて、被検体に息止めさせるための息止めメッセージa2の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa2に応答して息を止める。息止めメッセージa2を出力した後、時点t
fにおいて、スキャンSC3が開始される。スキャンSC3を実行することにより、門脈相のデータが収集される。
【0097】
スキャンSC3が終了した後、時点t
g2において、呼吸再開メッセージb2の出力を開始する。被検体はメッセージb2に応答して呼吸を再開する。
【0098】
被検体に呼吸を再開させた後、時点t
hにおいて、被検体に息止めさせるための息止めメッセージa3の出力が開始される。被検体は息止めメッセージa3に応答して息を止める。息止めメッセージa3を出力した後、時点t
iにおいて、スキャンSC4が開始される。スキャンSC4を実行することにより、平衡相のデータが収集される。
【0099】
スキャンSC4が終了した後、呼吸再開メッセージb3を出力し、フローが終了する。
【0100】
タイムラインTL3は、基準タイムラインTL0よりも、各スキャンのスキャン時間がΔTだけ長くなっているが、スキャンSC3およびSC4の開始時間は、基準タイムラインTL0の開始時点と同じ時点(t
fおよびt
i)に保持されている。したがって、スキャン時間が長くなっても、門脈相および平衡相に適した条件でデータ収集することができる。
【0101】
尚、スキャン時間の差ΔTが大きくなるほど、スキャンSC2とSC3との間の遅延時間(TD2−2・ΔT)が小さくなる。したがって、ΔTの値によっては、遅延時間(TD2−2・ΔT)が小さくなり過ぎることがある。
図10に、遅延時間(TD2−2・ΔT)が小さくなり過ぎたタイムラインTL4が示されている。スキャンSC2とSC3との間には呼吸再開メッセージb1と息止めメッセージa2との両方のメッセージを出力する必要がある。したがって、呼吸再開メッセージb1の時間長を「Tb」とし、息止めメッセージa2の時間長を「Ta」とすると、遅延時間(TD2−2・ΔT)は、TbおよびTaに対して以下の関係式を満たす必要がある。
TD2−2・ΔT≧Tb+Ta ・・・(7)
【0102】
しかし、
図10では、遅延時間(TD2−2・ΔT)は、息止めメッセージa2の時間長Taと同じくらいであるので、遅延時間(TD2−2・ΔT)の間に、呼吸再開メッセージb1と息止めメッセージa2との両方のメッセージを出力することができない。そこで、遅延時間(TD2−2・ΔT)の間に両方のメッセージb1およびa2を出力することができない場合、スキャンSC3の開始時点をt
fよりも遅い時点t
f1に変更することが望ましい。
図11は、スキャンSC3の開始時点をt
fよりもΔtだけ遅い時点t
f1に変更されたタイムラインTL5が示されている。この場合、スキャンSC2とSC3との間の遅延時間は、「TD2´」となる。TD2´は、以下の式で表される。
TD2´=TD2−2・ΔT+Δt ・・・(8)
【0103】
このように、スキャンSC3の開始時点をt
fよりも遅い時点t
f1に変更することにより、遅延時間TD2´は(TD2−2・ΔT)よりもΔtだけ長くなる。したがって、Δtの長さを調整することにより、遅延時間TD2´の間に、両方のメッセージb1およびa2を出力することができる。
【0104】
尚、呼吸再開メッセージb1の時間長はTbであり、息止めメッセージa2の時間長はTaであるので、遅延時間TD2´の間に両方のメッセージを出力するためには、遅延時間TD2´は以下の式を満たせばよい。
TD2´≧Tb+Ta ・・・(9)
【0105】
式(9)から、TD2´が(Tb+Ta)以上の値を有していれば、遅延時間TD2´の間に両方のメッセージを出力できることがわかる。したがって、TD2´の下限値は(Ta+Tb)となる。ただし、TD2´=Ta+Tbの場合、呼吸再開メッセージb1に従って被検体が呼吸を再開した後、すぐに息止めメッセージa2が流れるので、被検体は呼吸を再開した直後に、呼吸を止めなければならならず、被検体に掛かる肉体的負担が大きくなる。そこで、呼吸再開メッセージa1と息止めメッセージb2との間に一定の時間が設けられるように、TD2´の下限値を設定しておくことが望ましい。
図12は、呼吸再開メッセージa1と息止めメッセージb2との間に、一定の時間Tcを設けた場合のTD2´の下限値を示す。このように、時間Tcを設けておくことにより、被検体の肉体的負担を軽減することができる。
【0106】
また、被検体は、息止めメッセージa2に応答して息を止めるが、被検体が息止めメッセージa2に反応して息を止めるまでには、ある程度の時間が掛かることが考えられる。したがって、被検体が確実に息止めをした後でスキャンSC3が開始されるように、被検体の息止めのタイムラグを考慮して、息止めメッセージa2とスキャンSC3との間に一定の時間を設けられるように、TD2´の下限値を設定してもよい。
図13に、息止めメッセージa2とスキャンSC3との間に一定の時間Tdを設けた場合の遅延時間TD2´の下限値を概略的に示す。時間Tdを設けておくことにより、被検体が息止めを完了する前にスキャンSC3が開始されることを防止できる。
また、遅延時間TD2´に、時間TcとTdの両方を設けてもよい。
【0107】
尚、タイムラインTL5(
図11参照)では、スキャンSC3の開始時間はt
fからt
f1に変更されている。しかし、t
f1が所定の範囲内に含まれていれば、t
f1がt
fからずれても問題はない。
図14に、t
f1が所定の範囲Rに含まれている時の一例を概略的に示す。
図14では、時点t
y1〜t
y2の範囲が、所定の範囲Rとして定められている。時点t
y1は、例えば、スキャンSC1の開始時点t
bから55秒が経過した時点に設定することができ、一方、時点t
y2は、例えば、スキャンSC1の開始時点t
bから65秒が経過した時点に設定することができる。スキャンSC3の開始時点t
f1がt
y1〜t
y2の範囲に含まれていれば、診断に有用な門脈相のデータを収集することができるので、t
f1がt
fに対してΔtだけずれていても問題はない。ただし、Δtの値によっては、t
f1が所定の範囲Rからはみ出てしまうことがある。この場合、診断に有用な門脈相のデータを収集することができない恐れがある。したがって、作成手段101は、t
f1が所定の範囲Rに含まれているか否かを判断することが望ましい。t
f1が所定の範囲Rに含まれていないと判断された場合は、オペレータに開始時点t
f1の変更が必要である旨の警告を与えればよい。この警告により、オペレータはスキャンSC3の開始時点t
f1が不適切であることがわかるので、本スキャンMSの実行前に、開始時点t
f1を変更することができる。
【0108】
尚、本形態では、4時相のスキャンを実行する場合について説明されている。しかし、本発明は、4時相に限定されることはなく、3時相以上のデータを収集するためのスキャンに対して適用することができる。
図15に、z(≧3)時相のデータを収集するために実行されるスキャンSC1〜SCzのタイムラインを概略的に示す。
図15(a)はスキャンSC1〜SCzを実行するときの基準となる基準タイムラインTL0を示し、
図15(b)はスキャン時間TS1がスキャン時間TSよりも短い場合のタイムラインTL6を示し、
図15(c)はスキャン時間TS1がスキャン時間TSよりも長い場合のタイムラインTL7を示している。尚、
図15では、説明の便宜上、息止めメッセージおよび呼吸再開メッセージは図示省略されている。
【0109】
図15(b)のタイムラインTL6は、基準タイムラインTL0よりも、DAPスキャンSC0のスキャン時間を2・ΔTだけ短縮することができるので、被検体が息止め時に感じる負担を更に軽減することができる。また、タイムラインTL6のスキャンSCk〜SCzの開始時点は、基準タイムラインTL0のスキャンSCk〜SCzの開始時点と同じであるので、各時相に応じたタイミングでデータ収集を行うことができる。
【0110】
一方、
図15(c)のタイムラインTL7は、基準タイムラインTL0よりも、各スキャンのスキャン時間がΔTだけ長くなっている。しかし、タイムラインTL7のスキャンSCk〜SCzの開始時点は、基準タイムラインTL0のスキャンSCk〜SCzの開始時点と同じであるので、各時相に応じたタイミングでデータ収集を行うことができる。
【0111】
尚、上記の説明では、スキャンSC2の開始時点のみを変更した例が示されている。しかし、本発明はスキャンSC2とは別のスキャンの開示時点が変更されてもよい(
図16参照)。
【0112】
図16は、スキャンSC2とは別のスキャンの開示時点が変更されたタイムラインを示す図である。
【0113】
タイムラインTL8(
図16(b)参照))では、スキャンSC
k+1の開始時点がt
k+1からt
k+1,1に変更された例が示されており、一方、タイムラインTL9(
図16(c)参照))では、スキャンSC
k+1の開始時点がt
k+1からt
k+1,2に変更された例が示されている。このように、変更される開始時点は、スキャンSC2に限定されることはなく、診断に必要な画像に応じて、任意のスキャンの開始時点を変更することができる。
【0114】
尚、本形態では、造影剤の投与を開始してから時間TW1(
図3参照)が経過した時点で、DAPスキャンSC0のスキャンSC1が開始されている。しかし、撮影方法によっては、造影剤の投与開始時点とは別の時点を基準にして、DAPスキャンSC0のスキャンSC1の開始時点を定めてもよい。以下に、造影剤の投与開始時点とは別の時点を基準にしてスキャンSC1の開始時点を定める撮影方法として、Fluoro trigger法と、Smart prep法について説明する。
【0115】
図17は、Fluoro trigger法の説明図である。
図17(a)には、造影剤を監視するために設定される領域RTが概略的に示されている。Fluoro trigger法では、血管内に、造影剤を監視するための領域RTを設定し、領域RTに所定量以上の造影剤が流入された時点を基準にして、スキャンを開始する。
図17(b)に、Fluoro trigger法でスキャンSC1〜SC4を実行する場合の基準タイムラインTL0が概略的に示されている。Fluoro trigger法の基準タイムラインTL0は、領域RTに所定量以上の造影剤が流入された時点t0から時間TW0が経過した時点t1を、DAPスキャンSC0のスキャンSC1の開始時点と定めている。
図17(c)には、スキャン時間TS1のスキャンSC1〜SC4を実行する場合のタイムラインTL10が概略的に示されている。タイムラインTL10では、基準ライムラインTL0と同様に、領域RTに所定量以上の造影剤が流入された時点t0から時間TW0が経過した時点t1を、DAPスキャンSC0のスキャンSC1の開始時点と定めている。
【0116】
図18は、Smart prep法の説明図である。
図18(a)には、造影剤を監視するために設定される断面Sが概略的に示されている。Smart prep法では、血管を横切る断面Sを設定し、この断面SのMR画像を取得するためのスキャンを繰り返し実行し、そのMR画像を表示部にリアルタイムで表示させる。オペレータは表示部に表示されたMR画像を確認し、断面Sに所定量以上の造影剤が到達したと判断したら、操作部13(
図1参照)を操作し、スキャンSC1〜SC4を実行させるための命令を入力する。MR装置は、この入力に応答してスキャンSC1〜SC4を実行する。
図18(b)に、Smart prep法でスキャンSC1〜SC4を実行する場合の基準タイムラインTL0が概略的に示されている。Smart prep 法の基準タイムラインTL0は、スキャンを実行させるための命令が入力された時点t0から時間TW0が経過した時点t1を、DAPスキャンSC0のスキャンSC1の開始時点と定めている。
図18(c)には、スキャン時間TS1のスキャンSC1〜SC4を実行する場合のタイムラインTL11が概略的に示されている。タイムラインTL11では、基準ライムラインTL0と同様に、スキャンを実行させるための命令が入力された時点t0から時間TW0が経過した時点t1を、DAPスキャンSC0のスキャンSC1の開始時点と定めている。
【0117】
このように、本発明は、Fluoro trigger法やSmart prep法で撮影する場合にも適用することができる。
【0118】
また、本形態では、MR装置で複数の時相のデータを収集する例について説明されている。しかし、本発明は、MR装置とは別の医用装置(例えば、CT装置)で複数の時相のデータを収集する場合にも適用可能である。