(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂に対する前記活性炭の使用比率が、活性炭の質量/ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の質量=1/10〜2/10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
前記溶媒が、フェノール、トルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂は、流れ性や低吸湿性に優れるエポキシ樹脂の原料として有用であり、そのジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂をエポキシ化したものは、半導体封止剤およびプリント配線基板の原料に用いられている。
【0003】
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂は、例えば、フェノールおよびジシクロペンタジエン類を三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素エーテル錯体等の酸触媒とともに加熱することにより製造される。酸触媒は、反応が終了した後、中和剤を用いて中和される。これは、反応終了後に過剰量の触媒が残存していると、後工程の未反応フェノールを蒸留除去する段階で反応が過度に進行するおそれがあるからである。酸触媒を中和した後は、中和剤や酸触媒残渣を除去するために、濾過を行なう。濾過によって、中和剤および酸触媒残渣からなる固形分と、未反応フェノールと反応生成物からなるろ液に分別される。最後にろ液を減圧蒸留して、未反応フェノールを蒸留除去し、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収する。このようにして製造されるジシクロペンタジエン類変性フェノールは、通常、赤褐色の色調を有している。また、このような、赤褐色のジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を用いて、エピクロロヒドリン等のエポキシ化剤と反応させてエポキシ樹脂を製造すると、エポキシ樹脂は濃い茶色を呈する。従来の赤褐色のジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を原料に用いて製造されるエポキシ樹脂の色調は、50%ノルマルブタノール溶液として、ガードナー色数が13以上である。また、そのエポキシ樹脂を酸無水物系、アミン系またはフェノール系の硬化剤で硬化させて得られる硬化物も濃い茶色を呈する。そのため、薄い色調が要求される用途、例えば、プリント基板用樹脂などの一部用途には、使用が制限される問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1には、活性水素と還元性金属化合物との共存下にジシクロペンタジエン型フェノール樹脂を製造することで、着色と色相を改善する方法が開示されている。この方法では、有効な脱色効果を得るために、亜鉛粉末などの自然発火しやすい還元性金属粉を用いる必要があり、火災などの危険性が高くなる問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、活性白土、酸性白土、シリカマグネシア系脱色脱酸合成ゲル、シリカアルミナ系脱色脱酸合成ゲル等を用いる方法が記載されている。しかし、これらの吸着剤は、活性炭に比べて比表面積が小さく、着色低減効果は不十分であった。また、吸着性を上げるため、これらの吸着剤の添加量を増やすと、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂成分まで吸着剤に吸着され、歩留まりが低下する問題があった。
【0006】
また、特許文献3には、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成した反応生成液に、アルカリ性化合物および実質的に無水の活性炭を添加して中和し、中和後、アルカリ性化合物および酸触媒の残渣をろ別し、ろ液からジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂を回収する方法が記載されている。この方法によれば、半導体封止剤やプリント配線基板用積層板の原材料として使用できるほど不純物の含有量が少ないジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を製造することができる。しかし、実質的に無水の活性炭を製造するためには、活性化のための熱処理に加えて、水分量が0.1質量%以下になるまで、窒素やアルゴンなどの不活性ガスの存在下、真空下または空気中で、活性炭を100〜500℃に加熱する必要があり、コスト的に改良の余地を残していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、製造工程の発火などの問題がなく、また、歩留まりが高く、良好な色調改善効果を達成できるジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の製造方法、
ならびにその製造方法によって製造されたジシクロペンタジエン類変性フェノール樹
脂をエポキシ化し
てエポキシ樹脂
を得る方法およびその硬化物を
得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の色調を改善すべく鋭意検討を重ねた結果、色調の改善には、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶媒に溶かし、特定の細孔径を有する活性炭で処理することが有効であること、その活性炭は、比表面積が特定の範囲にあり、特定のpHを有するものが色調改善により優れていること、その活性炭を用いて、活性炭と樹脂の比率を特定範囲にすると、歩留まりが高くなること、製造工程において、フェノールを濃縮する前のジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂とフェノールの混合液を回収し、この混合液を用いて活性炭処理を行うことで、簡易なプロセスで色調に優れたジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を得られることを知得し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(
11)を提供する。
(1)ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液に、平均細孔半径が0.9nm以上の活性炭を添加し、混合して、混合液を得る混合工程と、
上記混合液を撹拌する撹拌工程と、
上記混合液から活性炭を除去し、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む処理液を得る活性炭除去工程と、
上記処理液から溶媒を除去して、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収する回収工程と
を備える、色調が改善されたジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の製造方法。
(2)上記活性炭の比表面積が1000m
2/g以上である、(1)に記載の製造方法。
(3)上記活性炭のpHが6.5以上である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)上記ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂に対する上記活性炭の使用比率が、活性炭の質量/ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の質量=1/10〜2/10である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)上記溶媒が、フェノール、トルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンからなる群から選択される少なくとも1種である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法
。
(6)
(1)〜(5)のいずれか1項に記載のジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂とエポキシ化剤とを反応させて
エポキシ樹脂を得る、エポキシ樹脂
の製造方法。
(
7)上記エポキシ樹脂の50%(w/v)ノルマルブタノール溶液のガードナー色数が10以下である、(
6)に記載のエポキシ樹脂
の製造方法。
(
8)(
6)または(
7)に記載のエポキシ樹脂と硬化剤とを反応させて
硬化物を得る、硬化物
の製造方法。
【0011】
(
9)上記混合工程の前に、さらに、
フェノール類およびジシクロペンタジエン類を反応原料として酸触媒の存在下で反応させ、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する反応工程と、
上記反応工程で得られた反応生成液に中和剤を添加して上記酸触媒を中和する中和工程と、
上記中和工程で酸触媒を中和した後の反応生成液をろ過して、中和剤の残渣を含む固形分と、フェノール類およびジシクロペンタジエン類変性フェノール類を含むろ液とに分別する分別工程とを備え、
上記ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液が上記分別工程で得られたろ液である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
(
10)上記混合工程の前に、さらに、
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶媒に溶解する溶解工程
を備え、
上記ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液が上記溶解工程で得られた溶液である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
(
11)上記混合工程の前に、さらに、
フェノール類およびジシクロペンタジエン類を反応原料として酸触媒の存在下で反応させ、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する反応工程と、
上記反応工程で得られた反応生成液に中和剤を添加して上記酸触媒を中和する中和工程と、
上記中和工程で酸触媒を中和した後の反応生成液をろ過して、中和剤の残渣を含む固形分と、フェノール類およびジシクロペンタジエン類変性フェノール類を含むろ液とに分別する中和剤除去工程と、
上記ろ液からフェノール類を蒸留除去し、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収するフェノール類除去工程と、
上記フェノール類除去工程で回収したジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶媒に溶解する溶解工程と
を備え、
上記ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液が上記溶解工程で得られた溶液である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造工程の発火などの問題がなく、また、歩留まりが高く、良好な色調改善効果を達成できるジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の製造方法、
ならびにその製造方法によって製造されたジシクロペンタジエン類変性フェノール樹
脂をエポキシ化し
てエポキシ樹脂
を得る方法およびその硬化物を
得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、さらに詳しく本発明を説明する。
【0014】
〔ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の製造方法〕
本発明のジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という場合がある。)は、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液に、平均細孔半径が0.9nm以上の活性炭を添加し、混合して、混合液を得る混合工程と、上記混合液を撹拌する撹拌工程と、上記混合液から活性炭を除去し、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む処理液を得る活性炭除去工程と、上記処理液から溶媒を除去して、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収する回収工程とを備える。
【0015】
上記混合液から活性炭を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、ろ別、遠心分離・回収による方法が挙げられる。工程数を少なくできることから、ろ別が好ましい。
また、上記処理液から溶媒を除去する方法は、特に限定されないが、蒸留除去による方法が好ましい。特に、減圧下でロータリーエバポレーターを用いると、迅速に溶媒を除去できる。
【0016】
本発明の製造方法は、上記混合工程の前に、さらに、フェノール類およびジシクロペンタジエン類を反応原料として酸触媒の存在下で反応させ、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する反応工程と、上記反応工程で得られた反応生成液に中和剤を添加して上記酸触媒を中和する中和工程と、上記中和工程で酸触媒を中和した後の反応生成液をろ過して、中和剤の残渣を含む固形分と、フェノール類およびジシクロペンタジエン類変性フェノール類を含むろ液とに分別する分別工程とを備えてもよい。
【0017】
本発明の製造方法は、また、上記混合工程の前に、さらに、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶媒に溶解する溶解工程を備えてもよい。この場合、上記ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液は、上記溶解工程で得られた溶液である。
【0018】
本発明の製造方法は、また、上記混合工程の前に、さらに、フェノール類およびジシクロペンタジエン類を反応原料として酸触媒の存在下で反応させ、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する反応工程と、上記反応工程で得られた反応生成液に中和剤を添加して上記酸触媒を中和する中和工程と、上記中和工程で酸触媒を中和した後の反応生成液をろ過して、中和剤の残渣を含む固形分と、フェノール類およびジシクロペンタジエン類変性フェノール類を含むろ液とに分別する中和剤除去工程と、上記ろ液からフェノール類を蒸留除去し、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収するフェノール類除去工程と上記フェノール類除去工程で回収したジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶媒に溶解する溶解工程とを備えてもよい。
【0019】
(ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液)
本発明の製造方法で用いるジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液は、例えば、フェノール類およびジシクロペンタジエン類を反応原料として酸触媒の存在下で反応させ、得られた反応生成液に中和剤を添加して酸触媒を中和し、酸触媒を中和した後の反応生成液をろ過して、中和剤の残渣を含む固形分と、フェノール類およびジシクロペンタジエン類変性フェノール類を含むろ液とに分別し、得られたろ液をそのまま使用することができる。この場合、上記ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液は上記分別工程で得られたろ液であり、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成した際の反応生成液を中和した反応液のまま、脱色処理をすることができるため、効率的である。
【0020】
また、本発明の製造方法で用いるジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液は、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶媒に溶解することにより得られたものであってよく、溶媒に溶解するジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の入手方法は、特に限定されず、例えば、第三者が合成したものを購入し、譲受し、または貸渡しを受けたものを用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。この場合、上記ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液の溶媒として、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成した際に用いたフェノール類以外の溶媒も用いることができる。
【0021】
溶媒に溶解するジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂として、合成したものを用いる場合は、例えば、フェノール類およびジシクロペンタジエン類を反応原料として酸触媒の存在下で反応させ、得られた反応生成液に中和剤を添加して酸触媒を中和し、酸触媒を中和した後の反応生成液をろ過して、中和剤の残渣を含む固形分と、フェノール類およびジシクロペンタジエン類変性フェノール類を含むろ液とに分別し、得られたろ液からフェノール類を蒸留除去して、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収し、回収したジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を用いることができる。
【0022】
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する際に用いるフェノール類は、特に限定されないが、好ましくは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−キシレノールまたはこれらの混合物を挙げることができる。中でも、樹脂の特性や経済性の点から、フェノールが好ましい。
【0023】
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する際に用いるジシクロペンタジエン類は、特に限定されないが、好ましくは、ジシクロペンタジエンや少なくとも一つのアルキル基またはビニル基が置換したジシクロペンタジエンまたはこれらの混合物である。アルキル基はメチル基、エチル基等である。中でも、樹脂の特性や入手の容易さからジシクロペンタジエンを用いることが好ましい。
【0024】
フェノール類とジシクロペンタジエン類とを反応させる場合、その仕込モル比(フェノール類/ジシクロペンタジエン類)を調整することで、得られる変性フェノール樹脂の軟化点を調節することができる。すなわち、フェノール類の仕込モル比を増やすと変性フェノール樹脂の軟化点は低下し、フェノール類の仕込モル比を減らすと変性フェノール樹脂の軟化点は上昇する。工業的に有意義な軟化点(70〜150℃、好ましくは80〜140℃)を有する変性フェノール樹脂を製造するために好適な該仕込モル比は1/1〜15/1、好ましくは1/2〜1/10である。
【0025】
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を合成する際に用いる酸触媒は、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体等である。中でも、取扱いが容易で、単位触媒量当りの変性フェノール樹脂の収量が大きい三フッ化ホウ素・フェノール錯体が好ましい。酸触媒の使用量は、三フッ化ホウ素・フェノール錯体の場合で、DCPD類100質量部当り0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0026】
フェノール類とDCPD類の反応温度は酸触媒の種類により異なるが、三フッ化ホウ素
・フェノール錯体の場合で、20〜170℃、好ましくは50〜150℃である。この反応は水分が可及的に少ない状態で行うことが好ましく、100質量ppm以下であることが好ましい。
【0027】
酸触媒の中和は、反応生成物に中和剤を添加し、10〜150℃、好ましくは30〜90℃で、10分〜10時間、好ましくは20分〜5時間加熱攪拌して行う。酸触媒の中和の終了は、例えば、メチルイソブチルケトンに溶解し、得られた溶液に水を加えて攪拌し、水層のpHを測定することにより確認することができる。
【0028】
中和剤は、特に限定されないが、ハイドロタルサイト、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア等が挙げられる。中和剤の添加量は特に制限されないが、酸触媒1質量部に対し1〜10質量倍、好ましくは2〜5質量倍である。中和剤の添加量がこの範囲内であると、濾過時間が長くなり過ぎず、変性フェノール樹脂の生産性が低下しない。また、酸触媒を十分に中和することができる。
【0029】
酸触媒を中和した反応生成液は、蒸留、ろ過などの固液分離手段により、液体と固形分に分別されるが、ろ過が簡便であり好ましい。ろ過の方法、条件は特に限定されるものではないが、ろ過は減圧または加圧ろ過機を用いて行うことが好ましい。ろ過温度は室温〜150℃、好ましくは70〜130℃である。
【0030】
ろ液はそのままジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂および溶媒を含む溶液として用いてもよいし、蒸留して、未反応のフェノール類を除去し、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を回収してもよい。回収したジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂は溶媒に溶解して溶液とする。蒸留は、加圧下でも、常圧下でも、減圧下でも行うことができるが、減圧蒸留が好ましい。蒸留温度は100〜300℃、好ましくは150〜270℃、より好ましくは170〜250℃である。
【0031】
溶媒はジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の原料であるフェノール類、トルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンおよびメチルエチルケトンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの溶媒は、ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を容易に溶解させることができ、色調の改善効果も高いので好ましい。溶媒として、フェノール、トルエン、キシレン、アセトンおよびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いると、それ以外の溶媒を用いるときに比べてジシクロペンタジエン変性フェノールの溶解性がよく、活性炭処理の効果が増大する。
【0032】
(活性炭)
本発明の製造方法で用いる活性炭は、平均細孔半径が0.9nm(9Å)以上である。平均細孔半径が0.9nm未満である場合は、着色成分の吸着量が少なく、色調や透明性の改善が不十分である。平均細孔半径は、着色成分の吸着量がより多くなり、色調や透明性がさらに改善されることから、1.1nm以上であることが好ましい。
また、平均細孔半径は、細孔容積が一定の場合、比表面積と反比例の関係にあることから、1.5nm以下であることが好ましく、1.3nm以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、本発明において、活性炭の平均細孔半径は、細孔が円筒状であるとみなして、次式により求めた値である。
r=2V/S
ただし、r=平均細孔半径、V=細孔容積、S=比表面積である。
ここで、比表面積は、液体窒素温度(−196℃)における窒素ガス吸着によりBET法を用いて求めた窒素ガス吸着BET比表面積である。
【0034】
上記活性炭は、また、比表面積が1000m
2/g以上であることが好ましく、1200m
2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m
2/g以上であると、比表面積が1000m
2/g未満であるときに比べ、着色成分の吸着量がより多くなり、色調や透明性がさらに改善される。
なお、本発明において、活性炭の比表面積は、液体窒素温度(−196℃)における窒素ガス吸着によりBET法を用いて求めた窒素ガス吸着BET比表面積である。
【0035】
上記活性炭は、さらに、pHが6.5以上であることが好ましく、8.5〜9.6であることがより好ましい。pHが6.5以上であると、pHが6.5未満であるときに比べ、着色成分の吸着量がより多くなり、色調や透明性がさらに改善される。
なお、本発明において、活性炭のpHは、JIS K 1474:2007 活性炭試験方法の7.11 pHにより測定した値である。
【0036】
上記活性炭の形状は、特に限定されない。例えば、粉末状、円柱状、顆粒状、または繊維状など、いかなる形状のものでも用いることができる。
【0037】
ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂と活性炭の使用比率は、特に限定されないが、活性炭の質量/ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂の質量=1/10〜2/10であることが好ましい。ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂と溶媒の使用比率が前記した範囲外である場合も吸着性が低下して、活性炭処理の効果が低減する。
【0038】
〔ジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂〕
本発明の製造方法により色調の改善されたジシクロペンタジエン類変性フェノール樹脂を提供することができる。
【0039】
〔エポキシ樹脂
の製造方法〕
本発明はまた、前記の方法で得られる着色の少ないジシクロペンタジエン変性フェノールを原料に用いて、クロロメチルオキシラン等でエポキシ化して
、色調に優れたエポキシ樹脂を
得る方法を提供する。本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、従来のいかなる方法であってもよい。例えば、ジメチルスルホキシド等の溶媒中、ジシクロペンタジエンと化学量論的に過剰のクロロメチルオキシランを、水酸化ナトリウムとともに反応させる事で得られる。エポキシ化の反応温度は特に制限されないが、例えば、10℃から150℃の範囲で行うことができる。また、反応時間は、1時間〜5時間が好ましい。反応終了後は、未反応のクロロメチルオキシランを減圧蒸留で除去し、メチルイソブチルケトン等の抽出溶媒を加えて、生成したエポキシ樹脂を抽出分離する。次に、水を加えて、水層が中性になるまで水洗を繰り返す。その後、有機層を分離し、溶媒を減圧蒸留で除去することで、エポキシ樹脂が得られる。
【0040】
〔硬化物
の製造方法〕
本発明はさらに、上記エポキシ樹脂の硬化物を
得る方法を提供する
。硬化物は、前記したエポキシ樹脂をフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などで硬化させることで得られる。フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が好ましく、アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が好ましく、酸無水物系硬化剤としては、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が好ましい。硬化反応は、エポキシ樹脂と硬化剤とトリフェニルホスフィン、イミダゾール系化合物等の硬化促進剤を混合し、100℃〜200℃、好ましくは、120℃〜180℃の温度で、30分〜10時間、好ましくは、1時間〜8時間硬化させる事で得られる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明についてさらに詳しく説明する。
【0042】
〔物性測定〕
(比表面積、細孔容積、平均細孔半径の測定)
比表面積および細孔容積は、比表面積測定装置(迅速表面積測定装置SA−1000、柴田科学器械工業社製)を用い、液体窒素温度(−196℃)における窒素ガス吸着によりB.E.T法を用いて求めた。
平均細孔半径は、細孔が円筒状であると仮定して、次式で求めた。
r=2V/S
ただし、r=平均細孔半径、V=細孔容積、S=比表面積である。
ここで、比表面積は、液体窒素温度(−196℃)における窒素ガス吸着によりBET法を用いて求めた窒素ガス吸着BET比表面積である。
【0043】
(活性炭のpHの測定)
活性炭のpHは、JIS K 1474:2007 活性炭試験方法の「7.11 pH」に記載された方法によって測定した。具体的には、乾燥試料3.0gを秤とり、200mL容 三角フラスコに移しいれ、さらに水100mLを加え、静かに沸騰が続くように5分間加熱し、常温まで冷却した後、ガラス電極pH計(HM−30S、東亜電波社製)を用いて測定した。
【0044】
(ガードナー色数の測定)
ガードナー色数の測定は、JIS K 0071:1998 化学製品の色試験方法−第2部:ガードナー色数の「5. ガードナー色数試験方法」に記載された方法によって測定した。具体的には、活性炭試料の50%(質量/体積)ノルマルブタノール溶液を標準サンプル(比色標準液)と比較してガードナー色数を測定した。
【0045】
(光線透過率の測定)
光線透過率の測定は、硬化物の450nmにおける光線透過率を測定することにより行った。具体的には、所定のエポキシ樹脂、硬化剤として水素化メチル無水フタル酸、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを2質量%用いて、150℃、4時間加熱して、1mm厚の硬化物を作製し、この硬化物の波長450nmにおける光線透過率を、UVスペクトル測定装置(UV−1650PC、島津製作所社製)を用いて、測定した。
【0046】
(比誘電率、誘電正接の測定)
比誘電率および誘電正接の測定は、光線透過率の測定で用いた硬化物を、誘電率測定装置(エーイーティー社製)を用いて、同軸共振器法により、1GHzの条件で行った。
【0047】
[実施例1]
(ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂の合成)
攪拌装置、温度計、還流装置、不活性ガス導入管、オイルバスを備えた1リットルの反応容器(セパラブルフラスコ)にフェノール(和光純薬製)278g(2.9mol)を仕込んで80℃に加熱した。
加熱終了後、三フッ化ホウ素フェノール錯体(和光純薬製)2.5gを添加し、さらに、140℃に昇温して、ジシクロペンタジエン(和光純薬製)100g(0.76mol)を2時間かけて、徐々に添加した。添加が終了したら温度を145℃に上げて、さらに2時間反応させた。
【0048】
(酸触媒の失活処理)
反応終了後、触媒中和剤としてハイドロタルサイト 7.5gを添加し、30分間撹拌して触媒を失活させた。得られた反応液は、ろ過で中和剤を除去した後、反応液を220℃まで昇温して減圧蒸留を行って未反応のフェノールを除去し、ジシクロペンタジエン変性フェノールを得た。
【0049】
(活性炭処理)
得られたジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂 20gをメチルエチルケトン 200gに溶解し、表1に示す活性炭A 20gを加えて、2時間撹拌した後、活性炭をろ過した。
【0050】
(ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂の回収)
得られたろ液からメチルエチルケトンを蒸留除去して、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂を得た。
【0051】
(エポキシ樹脂の製造)
得られたジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂と、クロロメチルオキシランとを用いて従来の方法でエポキシ樹脂を製造した。このエポキシ樹脂は、50%(w/v)ノルマルブタノール溶液としてガードナー色数を測定した。
【0052】
(硬化物の製造)
このエポキシ樹脂は、硬化剤として、水素化メチル無水フタル酸を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用いて硬化物を製造した。
この硬化物の、光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
【0053】
(測定結果)
エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接の測定結果を表2に示す。
【0054】
[比較例1]
比較例1は、活性炭処理を行わなかった点を除いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂およびその硬化物を製造し、エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0055】
[比較例2、3]
比較例2、3は、それぞれ、活性炭として、表1に示す活性炭Aに代えて、表1に示す活性炭G、Hを用いた点を除いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂およびその硬化物を製造し、エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0056】
[実施例2〜6]
実施例2〜6は、それぞれ、活性炭として、表1に示す活性炭Aに代えて、表1に示す活性炭B〜Fを用いた点を除いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂およびその硬化物を製造し、エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0057】
[実施例7]
実施例7は、溶媒として、メチルエチルケトンに代えて、トルエンを用いた点を除いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂およびその硬化物を製造し、エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0058】
[実施例8]
実施例8は、溶媒として、メチルエチルケトンに代えて、テトラヒドロフランを用いた点を除いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂およびその硬化物を製造し、エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0059】
[実施例9]
実施例9は、中和剤をろ過して得た反応液100mLに表1に示す活性炭A 30gを加えて、2時間撹拌した後、活性炭をろ過し、フェノールを蒸留除去して、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂を得た点を除いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂およびその硬化物を製造し、エポキシ樹脂のガードナー色数、ならびに硬化物の光線透過率、誘電率および誘電正接を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1〜8のエポキシ樹脂は、いずれも、ガードナー色数が低く、色調が良好であり、また、それらの硬化物は、いずれも、光線透過率、誘電率および誘電正接が低く、透明性と誘電特性に優れていた。一方、比較例1および比較例2の樹脂は、ガードナー色数が高く色調が濃く、また、光線透過率も低く透明性が劣る。
本発明の樹脂は、色調や誘電特性などが重要視される半導体封止材料、プリント基板材料、LED封止材料等に用いられる樹脂として有用である。