(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記介挿支持部材の内周面と前記スプール軸の外周面との間に介挿されるカラー部材を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
前記ピニオンギアからの前記介挿支持部材の抜けを軸方向で防止するための抜け止め部を更に有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の魚釣用スピニングリール。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用スピニングリールは、ハンドルを回転操作することで回転駆動されるロータと、釣糸が巻回されて前後方向に往復駆動されるスプールとを備えた構成となっている。一般的に知られるように、前記ロータは、ハンドル軸に装着されたドライブギアと噛合してハンドル軸と直交する方向に回転可能に支持されたピニオンギアの前端にロータナットにより固定されることで回転駆動され、また、前記スプールを支持するスプール軸は、前記ピニオンギア内に挿通され、前記ドライブギアにより駆動されるオシレート機構(往復動装置)によって前後方向に往復駆動される。
【0003】
したがって、前記スプール軸は、ハンドルを回転操作した際、回転駆動されているピニオンギア内に挿通された状態で往復駆動されることになる。そのため、スプールに大きな負荷が作用してスプール軸が撓むと、ピニオンギアの内面とスプール軸との接触圧が大きくなり、それにより、スプール軸の摺動抵抗が増大して、ハンドルの回転操作が重くなってしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、ピニオンギアの内周面とスプール軸の外周面との間にころがり部材を介挿して、ピニオンギアの内周面にスプール軸をころがり案内支持することで前述した問題に対処している。
【0005】
また、特許文献2には、ピニオンギアの前端部の外周面に螺合されるロータナットの内周面とピニオンギアの前端部から突出するスプール軸の外周面との間に介挿される転がり軸受によってスプール軸の前端側を支持するとともに、ピニオンギアの後部に設けられる軸受によりスプール軸の後端側を支持することにより、ピニオンギアの内周面とスプール軸の外周面とを非接触状態にする構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるスプール軸の支持構造では、ピニオンギアの内周とスプール軸の外周との間に介在するころがり部材のころがり案内となるため、ピニオンギアおよびスプール軸の硬度、耐久性が必要となり、材質が限定的となって設計の自由度が制約されるとともに、前後方向にころがり案内するためのスペースが必要となり、寸法、形状等の制約が必要となる。
【0008】
また、特許文献2に開示されるスプール軸の支持構造では、ピニオンギアの前端部の外周面に螺合されるロータナットの内周面とピニオンギアの前端部から突出するスプール軸の外周面との間に転がり軸受が介挿されるため、ロータナットが螺合するピニオンギアの外周面の雄ネジによってロータナットの位置が決まってしまい、そのため、ピニオンギアと転がり軸受との同芯度が出難く、したがって、ピニオンギアに対するスプール軸の同芯度が出難い。その結果、転がり軸受内で前後に摺動するスプール軸の摩擦抵抗が大きくなって摺動性に支障をきたし、スプール軸(スプール)を滑らかに精度良く前後動させることができない可能性がある。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、設計の自由度を制約することなく、ピニオンギアに対するスプール軸の同芯度を確実に得て、スプール軸の摺動抵抗を軽くできる魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、ハンドルの回転操作により駆動されるドライブギアと噛合して回転可能にリール本体に支持されるとともに、ロータが固定されたピニオンギアと、釣糸が巻回されるスプールが前端側に装着されるとともに、オシレート機構により前後動可能に支持されつつ前記ピニオンギア内に挿通されるスプール軸とを有する魚釣用スピニングリールにおいて、前記ピニオンギアの前端部の外周面に螺合することにより前記ロータを前記ピニオンギアに固定するロータナットと、前記ロータナットの内周面と前記ピニオンギアの前端から突出する前記スプール軸の外周面との間に介挿されて前記スプール軸を支持することにより、前記ピニオンギアと前記スプール軸との間に隙間を形成して前記ピニオンギアの内周面と前記スプール軸の外周面とを非接触状態に維持する介挿支持部材とを備え、前記介挿支持部材は、前記ピニオンギアの前端部
の外周面と嵌合して前記ピニオンギアに対する同芯度を得るための同芯嵌合部を有することを特徴とする。
【0011】
上記した構成の魚釣用スピニングリールによれば、スプール軸は、介挿支持部材により、その外周面がピニオンギアの内周面と接触することなく前後動可能に支持されるため、その前後動の際の摺動抵抗が軽く、したがって、ハンドルの回転操作も軽い。また、スプールに大きな負荷が作用してスプール軸が撓んでも、介挿支持部材によってスプール軸とピニオンギアとの間に形成される隙間により、スプール軸とピニオンギアとの接触を回避できる。
【0012】
また、上記した構成の魚釣用スピニングリールにおいて、介挿支持部材は、ピニオンギアの内周面とスプール軸の外周面との間ではなく、ピニオンギアの前端部の外周面に螺合するロータナットの内周面とピニオンギアの前端から突出するスプール軸の外周面との間に介挿されているため、ピニオンギアの内外径寸法の増大(したがって、リールの大型化および重量増)を最小限に抑えつつスプール軸の摺動抵抗を軽くすることができ、また、十分な大きさ及び強度の介挿支持部材を使用できるため、強度低下を招くことがない(必要な定格荷重を満たすことができる)。また、ピニオンギアの内周とスプール軸の外周との間に介在するころがり部材のころがり案内でもないため、設計の自由度が制約されることもない。
【0013】
更に、上記した構成の魚釣用スピニングリールにおいて、介挿支持部材は、ピニオンギアの前端部
の外周面と嵌合してピニオンギアに対する同芯度を得るための同芯嵌合部を有するため、介挿支持部材によって支持されるスプール軸のピニオンギアに対する同芯度を確実に得ることができる。したがって、ピニオンギアが安定した状態で回転することができ、これにより、ピニオンギアに挿通されるスプール軸も不必要な摩擦抵抗を受けることなく安定して精度良く前後動することが可能となる。また、介挿支持部材が他の中間部材を介在させることなく同芯嵌合部によりピニオンギアに対して直接に嵌合されるため、中間部材の寸法誤差の累積によって同芯精度を低下させずに済む。
【0014】
なお、上記構成において、介挿支持部材の同芯嵌合部は、ピニオンギアに対する同芯度を得ることさえできれば、その嵌合断面の形状が任意である。すなわち介挿支持部材の同芯嵌合部とピニオンギアの対応する嵌合部との嵌合は、円形(真円)断面同士の嵌合により成されてもよく、あるいは、少なくとも一部に円弧を有する略円形またはそれ以外の断面同士の嵌合により成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設計の自由度を制約することなく、ピニオンギアに対するスプール軸の同芯度を確実に得て、スプール軸の摺動抵抗を軽くできる魚釣用スピニングリールを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
図1〜
図3は本発明の第1の実施形態を示している。
図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用スピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚1aが一体形成されており、その前方には、回転可能に支持されたロータ2と、ロータ2の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール(釣糸が巻回される)3とが配設されている。
【0019】
リール本体1内には、ハンドル軸5aが回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル5が回転操作可能に取り付けられている。また、ハンドル軸5aには、巻取り駆動機構が係合しており、この巻取り駆動機構は、ハンドル軸5aに取り付けられ、内歯が形成されたドライブギア(駆動歯車)7と、このドライブギア7に噛合すると共にハンドル軸5aと直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部8aが形成されたピニオンギア8とを備えている。なお、ピニオンギア8は、その後端側に歯部8bが形成されており、この歯部8bがドライブギア7と噛合される。
【0020】
ピニオンギア8の前端部の外周面には雄螺子部8cが形成されており、ロータ2の中心孔をピニオンギア8の前端部に嵌合し、この部分で雄螺子部8cにロータナット9の内周面に形成される雌螺子部9aを螺合することによりロータ2がピニオンギア8に対して締め付け固定される。この場合、ロータ2は、非円形断面の嵌合部2bでピニオンギア8の外周面(非円形)に回り止め嵌合される。
【0021】
本実施形態のピニオンギア8は、その歯部8bとドライブギア7との噛合部位よりも前方(スプール3側)の2箇所で軸受10a,10bを介してリール本体1に回転可能に支持されており、その空洞部8aには、ハンドル軸5aと直交する方向に延出し、前端側にスプール3を装着したスプール軸3aが軸方向に移動可能に挿通されている。この場合、ピニオンギア8の中間領域の外周には、公知の一方向クラッチ11が配設されており、リール本体1の後方に回動可能に支持された切換レバー11aを切換操作することで、ピニオンギア8(ロータ2)の回転状態を切り換え可能にしている(両方向の回転状態/釣糸巻き取り方向のみの回転状態を切り換える)。なお、前方側の軸受10aは、ピニオンギア8に対して回り止めされる一方向クラッチ11の内輪11bとリール本体1との間に介挿され、後方側の軸受10bは、ピニオンギア8の歯部8bとドライブギア7との噛合部位の近傍にワッシャ10cを介して設置される。
【0022】
ピニオンギア8には、スプール3(スプール軸3a)を前後往復動させるための往復動装置(オシレート機構)12が係合している。
本実施形態の往復動装置12は、リール本体1内に回転可能に支持され、スプール軸3aと平行に延在する螺軸(ウォームシャフト)13と、スプール軸3aの後端部に固定される摺動体(オシレーティングスライダ)15とを備えている。螺軸13の前端部には、ピニオンギア8と噛合するオシレートギア16が設けられており、螺軸13は、ハンドル5を回転操作することにより、ドライブギア7、ピニオンギア8、および、オシレートギア16を介して回転駆動されるようになっている。
【0023】
螺軸13の外周面には、軸方向に沿って螺旋状のカム溝13aが形成されており、このカム溝13aに、摺動体15に収容保持された係合ピン18の係合爪(図示せず)が係合されている。
【0024】
摺動体15は、円筒状の収容孔を有する本体15Aを備えており、この本体15Aがスプール軸3aの後端部に取り付けられて、スプール軸3aの後端が支持された状態となっている。この場合、スプール軸3aの後端部分には、断面が非円形でハンドル軸の軸方向と直交する平坦面が形成されており、この平坦面に対して、抜け止め部材(プレート)20が当て付けられて、ハンドル軸方向から止めネジ21が螺入されることで、スプール軸3aは摺動体15に対して回り止め固定されている。
【0025】
摺動体15の本体15Aの円筒状の前記収容孔内には、円柱状に構成された係合ピン18が収容保持されており、その一端側(先端部)には、螺軸13のカム溝13aに係合される前記係合爪が形成されている。また、係合ピンの他端側は抜け止め部材20に当て付いて抜け止め保持されている。なお、摺動体15(本体15A)は、螺軸13と平行に延びてリール本体1の前後部に架設されたガイド23(1本または2本)により回り止めされつつ前後方向に移動可能に案内支持されている。
【0026】
図2および
図3に明確に示されるように、ピニオンギア8の前端8eから突出するスプール軸3aの突出端部は、ロータナット9とスプール軸3aとの間に介挿される介挿支持部材40によって支持される。具体的には、この介挿支持部材40は、外輪40aと、内輪40bと、外輪40aと内輪40bとの間に転動自在に保持される複数の転動体40cとを有する転がり軸受として構成されており、筒状のロータナット9の内周面とピニオンギア8の前端8eから突出するスプール軸3aの外周面との間に介挿されてスプール軸3aを支持することにより、ピニオンギア8とスプール軸3aとの間に隙間sを形成してピニオンギア8の内周面とスプール軸3aの外周面とを非接触状態に維持する。なお、前述したように、ピニオンギア8の後端から突出するスプール軸3aの後端側は、往復動装置12の摺動体15により支持される。あるいは、ピニオンギア8の歯部8bの後方において、リール本体1に形成する支持部でスプール軸3aの外周を支持するようにしてもよい。
【0027】
特に、本実施形態では、介挿支持部材40の内周面(転がり軸受40の内輪40bの内周面)とスプール軸3aの外周面との間に合成樹脂または金属から成る環状のカラー部材42が介挿されており、このカラー部材42の外周面と、スプール軸3aへ向けて径方向内側に環状に突出するロータナット9の環状突出部9bの内周面との間に介挿支持部材40が介挿される。なお、カラー部材42は、前述したように金属または樹脂材で形成され、摺動性の向上を図るとともに、径寸法および軸方向長が規格化されている転がり軸受(ボールベアリング)をリールの構成部の支持部材として採用するに際しての設計の自由度の向上も図っている。
【0028】
また、介挿支持部材40は、ピニオンギア8の前端部の外周面と嵌合してピニオンギア8に対する同芯度を得るための同芯嵌合部40abを有する。具体的には、この同芯嵌合部40abは、介挿支持部材である転がり軸受40の外輪40aによって形成される。すなわち、本実施形態では、転がり軸受40の外輪40aを内輪40bよりも軸方向に長く延出させて円環状の同芯嵌合部40abを形成するとともに、ピニオンギア8の雄螺子部8cの前端からそれよりも小径の突出嵌合部8dを段差部8fを介して前方へ向けて軸方向に突出して設けることにより、同芯嵌合部40abが雄螺子部8cの前方でピニオンギア8の外周面と嵌合できる隙間cをロータナット9の内周面とピニオンギア8の突出嵌合部8dとの間に形成するようにしている。
【0029】
この場合、同芯嵌合部40abは、円形断面を成しており、段差部8fの端面に当接するようにその円形の内周面がピニオンギア8の円形断面を成す突出嵌合部8dの外周面に対して同芯的に嵌合する。つまり、スプール軸3aは、ピニオンギア8と同芯的な介挿支持部材(転がり軸受40)を介して支持されることにより、ピニオンギア8に対する同芯度が確保される。
【0030】
また、本実施形態の魚釣用スピニングリールは、ピニオンギア8からの介挿支持部材40の抜けを軸方向で防止するための抜け止め部を更に有する。具体的には、本実施形態において、この抜け止め部は、ロータナット9により形成される。すなわち、本実施形態では、ロータナット9の環状突出部9bの前端部を径方向内側に突出させて抜け止め当接部9cを形成し、ピニオンギア8の突出嵌合部8dに嵌合する介挿支持部材としての転がり軸受40の外輪40aの前端縁に抜け止め当接部9cを当て付けることにより、ピニオンギア8からの介挿支持部材40の抜けを軸方向で防止している。なお、抜け止め当接部9cまたは段差部8fと外輪40aの端面との間に弾性材を介在させると、抜け止め装着状態の安定化の面で好ましい。
【0031】
また、本実施形態の魚釣用スピニングリールは、ロータナット9の回り止め部材52も有する。この回り止め部材52は、例えばロータナット9の外周面と非円形の嵌合部により嵌合することでピニオンギア8との締結後のロータナット9の回転を防止するとともに、ネジ50を介してロータ2に取り付け固定される。
【0032】
また、本実施形態において、ピニオンギア8を回転可能に支持する前方側の軸受10aは、ピニオン軸8側(本実施形態では、一方向クラッチ11の内輪11b側)に回転可能に嵌合される内輪62と、リール本体1の被嵌合部位1bに嵌合される外輪60と、これら内外輪60,62間に配設される多数の転動体63とを備えており、リール本体1の内部フレーム1aの壁部79,78間に挟まれた状態で組み込まれる。そして、外輪60とリール本体1の被嵌合部位1bとの間、および、内輪62と一方向クラッチ11の内輪11bとの間には、弾性部材(または軟質部材)によるOリング72,74が配設されている。この場合、各Oリング72,74は、その装着状態が安定するように、介在部分に溝を形成して装着されており、本実施形態では、内輪62の軸方向のほぼ中央部分と対向して一方向クラッチ11の内輪11bの外周面に円周溝75を形成するとともに、外輪60の軸方向の端縁部分と対向してリール本体1の被嵌合部位1bにテーパ溝70を形成し、これらの溝70,75にOリング72,74を取着している。
【0033】
この場合、各溝70,75の深さは、夫々に取着されるOリング72,74の径よりも僅かに小さく形成されると共に、各溝の開口幅は、夫々に取着されるOリング72,74の径よりも僅かに大きく形成されており、各Oリング72,74を溝70,75内に取着すると、各Oリング72,74は、溝70,75から僅かに突出すると共に、溝70,75内で軸方向に沿って変形できるようになっている。
【0034】
このため、各溝70,75にOリング72,74を取着した状態で軸受10aを軸方向に沿ってリール本体1に嵌め込むと、Oリング72,74は、軸方向に変形しながら潰れることができ、この結果、外輪60とリール本体1の被嵌合部位1bとの間、および、内輪62と一方向クラッチ11の内輪11bとの間で確実なシールが実現される。
【0035】
軸受10aの内輪62には、一方向クラッチ11の内輪11bが僅かな嵌合遊度をもって嵌合されており、Oリング74を介在することで嵌合遊度(ガタ)が吸収される。また、軸受10aの外輪60についても、リール本体1の被嵌合部位1bに対して僅かな嵌合遊度をもって嵌合されており、Oリング72を介在することで嵌合遊度(ガタ)が吸収されている。すなわち、軸受10aの内外輪60,62の内外周面にそれぞれOリング72,74を設置するという簡易な構成で、長期に亘ってシール機能の維持が図れるようになる。
【0036】
以上のような軸受10aの構造は、Oリング72,74の予圧により、部材同士が調心されて、回転フィーリングが安定および向上するため、有益である。すなわち、通常の軸受組み付け構造では、軸受の内外周に組み込みのためのクリアランスがあり、そのため、組み付けられた軸受が部品荷重によって一方向に偏る可能性がある。したがって、リールの向きを変えたり、ハンドルやスプールなどを好みで重量が違うものに取り換えた際に、軸受の偏り方向や偏り度合いが変わり、軸受により支持される回転部材の回転フィーリングが変化する場合がある。このような不具合を回避するために、軸受の組み込みクリアランスを無くして絞まり嵌めの組み付け設定にすることも考えられるが、その場合には、分解および組み立てが困難になってしまう。しかしながら、上記したような軸受10aのOリング介挿構造を採用すると、絞まり嵌めの組み付け設定にする必要なく、前述したクリアランスを伴う場合であっても、部材同士が調心されて、回転フィーリングが安定および向上する。また、装着したOリング(または軟質部材)72,74がダンパーとして働いて、ギアノイズや転がり軸受自体の転がりノイズを手や耳に感じ難くさせる効果もある。
【0037】
なお、上記構成において、Oリングは軸受10aの内輪62側または外輪60側の一方だけに設けられてもよい。また、軸受10aのこのような構造は、他の転がり軸受または他のタイプの軸受にも適用できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、スプール軸3aは、介挿支持部材40により、その外周面がピニオンギア8の内周面と接触することなく前後動可能に支持されるため、その前後動の際の摺動抵抗が軽く、したがって、ハンドル5の回転操作も軽い。また、スプール3に大きな負荷が作用してスプール軸3aが撓んでも、介挿支持部材40によってスプール軸3aとピニオンギア8との間に形成される隙間sにより、スプール軸3aとピニオンギア8との接触を回避できる。
【0039】
また、本実施形態の魚釣用スピニングリールにおいて、介挿支持部材40は、ピニオンギア8の内周面とスプール軸3aの外周面との間ではなく、ピニオンギア8の前端部の外周面に螺合するロータナット9の内周面とピニオンギア8の前端8eから突出するスプール軸3aの外周面との間に介挿されているため、ピニオンギア8の内外径寸法の増大(したがって、リールの大型化および重量増)を最小限に抑えつつスプール軸3aの摺動抵抗を軽くすることができ、また、十分な大きさ及び強度の介挿支持部材40を使用できるため、強度低下を招くことがない(必要な定格荷重を満たすことができる)。
【0040】
更に、本実施形態の魚釣用スピニングリールにおいて、介挿支持部材40は、ピニオンギア8の前端部と嵌合してピニオンギア8に対する同芯度を得るための同芯嵌合部40abを有するため、介挿支持部材40によって支持されるスプール軸3aのピニオンギア8に対する同芯度を確実に得ることができる。したがって、ピニオンギア8が安定した状態で回転することができ、これにより、ピニオンギア8に挿通されるスプール軸3aも不必要な摺動抵抗を受けることなく安定して精度良く前後動することが可能となる。また、介挿支持部材40が他の中間部材を介在させることなく同芯嵌合部40abによりピニオンギア8に対して直接に嵌合されるため、中間部材の寸法誤差の累積によって同芯精度を低下させずに済む。
【0041】
図4および
図5は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、ピニオンギア8の前端8eから突出するスプール軸3aの突出端部とロータナット9との間に介挿される介挿支持部材が転がり軸受ではなく滑り軸受(例えば、合成樹脂製のブシュ部材またはカラー部材)45によって形成される。また、本実施形態では、第1の実施形態のようにロータナット9に環状突出部9bが設けられず、また、カラー部材42も設けられず、介挿支持部材としての滑り軸受45は、ロータナット9の内周面とピニオンギア8の前端8eから突出するスプール軸3aの外周面との間に直接に介挿されて、ロータナット9の内周面とピニオンギア8の突出嵌合部8dとの間に形成される第1の実施形態の隙間cを完全に埋めるようにピニオンギア8側に向けて軸方向に突出するその同芯嵌合部45aがピニオンギア8の突出嵌合部8dと同芯的に嵌合する。この場合も、同芯嵌合部45aは、円形断面を成しており、ピニオンギア8の段差部8fの端面に当接するようにその円形の内周面がピニオンギア8の円形断面を成す突出嵌合部8dの外周面に対して同芯的に嵌合する。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。したがって、このような構成でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、介挿支持部材の構造が簡略化される。
【0042】
図6および
図7は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、介挿支持部材としての転がり軸受40の外輪40aを内輪40bよりも軸方向に長く延出させずに、外輪40aと内輪40bとを同じ軸方向寸法とし、同芯嵌合部40abとしての外輪40aの円形断面の端縁部をピニオンギア8の円形断面を成す突出嵌合部8dの外周面に同芯的に嵌合させている。
【0043】
また、本実施形態では、介挿支持部材40の内周面とスプール軸3aの外周面との間に介挿されるカラー部材42が、ピニオンギア8の前端部の内周面8gと同芯的に嵌合する嵌合部42aを有する。この嵌合部42aも、同芯嵌合部40abと同様に、円形断面を成しており、その円形の外周面がピニオンギア8の円形断面を成す前端部の内周面に対して同芯的に嵌合する。
【0044】
また、本実施形態では、ピニオンギア8からの介挿支持部材40の抜けを軸方向で防止するための抜け止め部が、ロータナット9ではなく、ロータナット8に係着される別部材によって形成される。具体的には、本実施形態では、ロータナット9の前端面にこれと当接するように取り付けられる抜け止め部材90が設けられる。この抜け止め部材90は、その径方向外側端部が略L字型に屈曲されるとともに、その屈曲端部90bがロータナット9の外面の係止溝9dに係止することによりロータナット9に取り付けられる。また、抜け止め部材90は、その径方向内側端部90aがピニオンギア8の突出嵌合部8dに嵌合する介挿支持部材としての転がり軸受40の外輪40aの前端縁に当て付くことにより、ピニオンギア8からの介挿支持部材40の抜けを軸方向で防止する。なお、前述した実施形態のように、ロータナット9に、直接、抜け止め当接部9cを形成してもよい。
【0045】
本実施形態のこのような構成によれば、介挿支持部材40の同芯嵌合部40abとカラー部材42の嵌合部42aとの両者によってピニオンギア8に対するスプール軸3aの同芯度が確保されるため、同芯度の精度が向上される。
【0046】
図8は本発明の第4の実施形態を示している。図示のように、本実施形態も第1の実施形態の変形例であり、第3の実施形態と同様に、介挿支持部材としての転がり軸受40の外輪40aを内輪40bよりも軸方向に長く延出させずに、外輪40aと内輪40bとを同じ軸方向寸法として、外輪40aの円形断面の端縁部を同芯嵌合部40abとするが、本実施形態では、同芯嵌合部40abとしての外輪40aの円形断面の端縁部(端縁部の外周面)がピニオンギア8の円形断面を成す突出嵌合部8dの内周面8hに同芯的に嵌合されている。言い換えると、介挿支持部材としての転がり軸受40は、ロータナット9の内周面とピニオンギア8の前端から突出するスプール軸3aの外周面との間に介挿された状態でピニオンギア8とスプール軸3aとの間にも介挿された配置形態となっている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。したがって、この構成によっても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、上記した実施形態では、介挿支持部材が転がり軸受または滑り軸受であったが、介挿支持部材は、スプール軸とピニオンギアとの間に隙間を形成するべくロータナットとスプール軸との間に介挿されてピニオンギアに対する同芯度を得るものであれば、どのような部材であっても構わない。また、介挿支持部材の同芯嵌合部は、ピニオンギアに対する同芯度を得ることさえできれば、その嵌合断面の形状が任意である。すなわち介挿支持部材の同芯嵌合部とピニオンギアの対応する嵌合部との嵌合は、円形(真円)断面同士の嵌合により成されてもよく、あるいは、少なくとも一部に円弧を有する略円形またはそれ以外の断面同士の嵌合により成されてもよい。