(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分析システムは、前記分析時点の最新の分析単位における前記キーワードの登場傾向の分析結果に応じて、予め設定された通知条件に基づいて通知を行う機能を有する請求項1に記載のプラント監視システム。
前記分析システムは、前記分析条件を複数設定可能で、前記通知条件はこれら複数の分析条件による分析結果を組み合わせて通知の有無を判断するように設定可能である請求項2に記載のプラント監視システム。
前記傾向判定基準は、前記検索期間における前記分析単位毎のキーワードの登場傾向の最新値、最大値、最小値、平均値及び標準偏差の何れか又はそれらを数式として組み合わせた請求項1乃至請求項3の何れかに記載のプラント監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、この実施の形態におけるプラント監視システム50は、作業内容蓄積装置(作業内容を、日誌を書くように入力することから、以下、日誌装置と呼ぶ)10、分析システム30、及びこの間のデータの送受信を行う通信部20からなる。なお、この通信部20は、有線又は無線による送受信、同一PC内でのデータ授受、別PC間でのデータ授受、を問わず、いずれの方式でもよい。
【0012】
日誌装置10は、図示しない各種プラントの運転に関する作業内容が電子的に入力されると、この作業内容をその実施時刻と共に蓄積する。この日誌装置10は、入力部11、記憶部12、表示部13の少なくとも3つの要素を有する。
【0013】
入力部11は、運転員が作業内容とその実施時刻の少なくとも2つの要素を入力できる機能を有する。この入力部11で入力した要素は、記憶部12に記録され、蓄積される。記憶部12はプラント操業において十分な量の要素を保持しておくことが可能なものとする。表示部13は記憶部12にある要素を所定のフォーマットに従って表示する機能を有する。
【0014】
分析システム30は、詳細を後述する分析用のキーワード、所定時間幅の分析単位、この分析単位のサンプル数、更新周期、及び傾向判定基準が分析条件として予め設定される。そして、上述した更新周期毎に、日誌装置10の記憶部12に蓄積された作業内容を分析し、その分析時点の最新の作業内容の傾向が、これまで蓄積された所定期間における作業内容の傾向から大きく外れているかを分析し判定する。すなわち、詳細は後述するが、分析時点の最新の分析単位における作業内容中での予め設定したキーワードの登場傾向が、分析時点から、分析単位のサンプル数分遡った検索期間におけるキーワードの登場傾向から外れているかを、予め設定した傾向判定基準に基づいて判定する。
【0015】
また、この分析システム30は、上述した傾向の分析結果に応じて、予め設定された通知条件に基づいて異常予兆としての通知を行う機能を有する。
【0016】
これらの機能を実現するため、分析システム30は、入力部31、記憶部32、機能部33、表示部34の少なくとも4つの要素を有する。
【0017】
入力部31は、前述した分析条件と異常予兆の通知条件との少なくとも2つの条件を入力できる機能を有する。この入力部31で入力した条件は、記憶部32に記録される。記憶部32はプラント操業において十分な量の条件を保持しておくことが可能なものとする。
【0018】
機能部33は入力部31で入力した条件に応じて日誌装置10の記憶部12と通信を行い、前述した分析と異常予兆通知を行う。この機能部33で分析した結果は条件ごとに記憶部32に記録される。表示部34は記憶部32に記録された条件ごとのデータを所定のフォーマットに従って表示する。
【0019】
次に、
図1のプラント監視システム50の動作説明を行う。まず、日誌装置10の動作を
図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0020】
運転員はプラント操業に関わる作業を実施した場合(動作100)、その内容を入力部11により入力する(動作111)。入力した作業内容は実施期間ごとに記憶部12に記録され(動作121)、実施期間ごとに表示部13に所定のフォーマットで表示される(動作131)。
【0021】
ここで、プラント操業に関わる作業内容の入力例としては、例えば、プラントのプロセスの目標値の変更操作や、プラントを構成する機器(例えばバルブ)の操作、さらには、プロセスにハンチング等の現象が生じた場合、これを運転員が認識して入力する行為などである。これらは定型文章で入力するか、定型文章が無い場合は作業内容に応じた任意の文章を作成して入力する。
【0022】
次に、分析システム30の動作を
図3のフローチャートに基づいて説明する。
図3Aは、入力部31の動作の流れを示している。まず、分析条件(後述する)の入力を行う(動作311)。入力した内容は条件ごとに記憶部32に記録される(動作312)。次に、通知条件(後述する)の入力を行うが、それに先立って、通知条件の一要素となる分析条件を読み込み(動作313)、それに応じた通知条件の入力を行う(動作314)。入力した内容は条件ごとに記憶部32に記録される(動作315)。
【0023】
図3Bは機能部33の動作の流れを示している。まず、日誌装置10の記憶部12に記録蓄積された作業内容の入力情報(以下、日誌情報と呼ぶ)と、分析システム30に入力され、その記憶部32に記録された分析条件とを読み込み(動作331)、分析を行う(動作332)。この分析動作332については後に詳述する。
【0024】
分析結果は分析条件ごとに記録する(動作333)。次に、記憶部32に記録された分析結果と、前述した通知条件とを読み込む(動作334)。そして、この分析結果について通知するか否かを、通知条件を満たしているか否かで判別し(動作335)、通知条件の全ての条件を満たしている場合は通知を行う(動作336)。この通知結果は通知条件ごとに記憶部32に記録する(動作337)。
【0025】
図3Cは 表示部34の動作の流れを示している。まず、記憶部32に記録された分析条件と分析結果を読み込み(動作341)、この分析結果を分析条件ごとに表示する(動作342)。また、同じく記憶部32に記録された通知条件と通知結果を読み込み(動作343)、この通知結果を通知条件ごとに表示する。(動作344)。
【0026】
次に、入力部31から入力され、記憶部32に記録された前述の分析条件及び通知条件を
図5に基づいて説明する。
【0027】
図3Aの動作311で入力される分析条件(以下、分析条件311として説明する)は、前述のように、分析用のキーワード3111、分析単位3112、分析サンプル数3113、更新周期3114、条件式3115の少なくとも5つの要素で構成される。したがって、これら5つの要素が入力される。これら5つの要素をまとめて1つの分析条件311とする。なお、この分析条件311は複数入力を可能とする。
【0028】
ここで、 分析システム30による分析とは、前述したように日誌装置10の記憶部12に蓄積されたプラント操業に関わる日誌情報(作業内容)の中に、予め設定したキーワードがどの程度登場するかの傾向(ここでは登場回数とする)を捉えて行う。そして、最新の傾向が、これまでの傾向(日誌情報の所定の蓄積期間中の傾向)から大きく外れているかを判定する。したがって、分析用のキーワード3111は、運転日誌等で普段常用しているキーワードであることが望ましい。
【0029】
分析単位3112は、どの程度の期間でキーワード3111の登場回数計測を行うかを決定する単位であり、所定の時間幅に設定される。例えば、分析単位3112を1日(24時間)と設定した場合、1日のキーワード3111の登場回数が1単位となる。この場合、対象となる作業が周期的な作業の場合、分析単位3112は、キーワード3111がある程度登場することが見込まれる期間とする。例えば、8時間に1回程度に周期的に発生することが予め想定される作業の場合、分析単位3112を6時間に設定すると、登場回数0回の分析単位が多く発生することとなり、後述する判定処理上好ましくない。このような場合、キーワードの登場回数が数回想定される、例えば1日(24時間)に分析単位を設定するとよい。
【0030】
分析サンプル数3113は、過去の傾向をとらえるための日誌情報の検索対象期間を設定するものであり、このデータ期間を構成する分析単位3112の数である。すなわち、分析単位3112に分析サンプル数3113を乗じたものが日誌情報の検索対象期間となる。例えば、分析単位3112が1日であり、サンプル数が10であれば、分析時点(現時点)より10日遡った期間に蓄積された日誌情報がデータ検索対象となり、この期間内におけるキーワードの登場回数が過去の傾向としてとらえられる。このサンプル数が少ない場合、傾向に偏りが発生することが想定されるので、サンプル数はある程度増やすことが望ましい。
【0031】
更新周期3114は、
図3Bで示した分析のためのデータ読み込み(動作331)、分析(動作332)及び分析結果記録(動作333)を実施する周期である。
【0032】
条件式3115は、検索結果である最新のキーワード登場傾向が、上述したデータ期間におけるキーワードの登場傾向から大きく外れているかを判定する傾向判定基準として設定される。そのために、≧、=、≦などの数式記号と分析結果の判別式の2つからなる。分析結果の判別式には定数の他、検索結果の最新値、最大値、最小値、平均値、標準偏差などを数式として組み合わせることを可能とする。
【0033】
図3Aの動作314で入力される通知条件(以下、通知条件314として説明する)は、上述のように、分析単位3112で分析した最新値を、条件式で判別し一致していた場合、通知を出すための条件を設定するものである。この通知条件314としては、通知方法3141と更新周期3142と分析条件選択3143の少なくとも3つの要素を入力する。これら3つの要素をまとめて1つの通知条件とする。また、この通知条件314は複数入力を可能とする。
【0034】
通知方法3141は、アラーム、メッセージなどから選択可能する。通知を出すことを決定した場合、選択した通知方法で運転員などに通知するものとする。
【0035】
更新周期3142は、
図3Bで示した通知のためのデータ読込(動作334)、選択した分析条件が通知対象か否かの判断(動作335)、その結果の通知動作(動作336)、及び通知結果記録(動作337)の更新周期である。
【0036】
分析条件選択3143は、分析条件を記憶部32から読み込んで通知条件を構成する要素として設定する。すなわち、前述した分析条件311は、
図5で説明したように、少なくとも5つの要素3111〜3115により構成されており、入力部31から入力する各要素3111〜3115の内容を変えることにより複数種構成できる。
【0037】
例えば、
図6(a)(b)で示すように、2つの分析条件311(条件名:「A1」,「A2」)が入力部31からの入力により、記憶部32に記録されているものとする。そこで、この2つの分析条件「A1」,「A2」を記憶部32から読み込んで、
図6(c)で示すように、これらを分析条件選択3143においてAND,OR等(
図6(c)の例ではORが用いられている)で組み合わせ、所定の通知条件314(条件名:「A」)を構成する。勿論、分析条件311を1つも入力していない場合、通知条件314を構成することはできない。
【0038】
次に、
図3Bで示した分析機能(動作332)の詳細を
図4のフローチャートに基づいて説明する。機能部33は、前述のように、日誌装置10の記憶部12に記録蓄積された日誌情報(作業内容の入力情報)と、分析システム30の記憶部32に記録された分析条件311(
図6で示した条件名:「A1」,「A2」の2つとする)とを読み込む(動作331)。
【0039】
ここで、分析条件311「A1」,「A2」は、
図6(a)(b)で示すように、キーワード3111として「AAA」が設定され、分析単位3112として「1日(24時間)」が設定され、分析サンプル数3113として数値「9」が設定され、更新周期3114として「1時間」がそれぞれ設定されている。条件式3115については、分析条件「A1」では、「最新値>平均値+標準偏差×2」が設定され、分析条件「A2」では、「最新値<平均値−標準偏差×2」が設定されている。
【0040】
前述した読み込み動作後、分析条件311「A1」,「A2」に従って日誌情報を検索し、その中に登場するキーワード3111「AAA」の登場回数を導出する(動作3322)。
【0041】
この検索に際しては、検索期間の終点を現在の最新データとし、そこから分析単位3112「1日」分、遡った範囲で検索を行う。検索されたキーワードの登場回数を検索期間ごとに記録する(動作3323)。最新の分析単位「1日」分の検索が終了すると、次に、1分析単位前の運転日誌データを検索するために、検索期間の始点と終点を変更する(動作3324)。この分析単位3112「1日」毎のキーワード検索(動作3322〜3324)をサンプル3113の数値「9」と一致するまで繰り返す(ループ3321)。
【0042】
上述のように検索され、分析単位毎に記憶部32に記録された内容から、キーワードの1分析単位毎の登場回数の最新値、最大値、最小値、平均値、標準偏差などを導出する(動作3325)。これらの値の何れか又はそれらにより数式が組み合わされ、条件式3115が構成されているので、上述した最新値が条件式3115と一致しているかを判断する(3326)。一致している場合は、当該分析条件は条件式を満たしていることとし(動作3327)、最新値が条件式3115と相違している場合は、当該分析条件は条件式を満たしていないこととする(動作3328)。これら、条件式を満たしたか否かの結果は記憶部32に記録する(動作333)。
【0043】
ここで、分析条件311「A1」,「A2」の条件式は、いずれも標準偏差(σ)を用いている。通常、キーワード「AAA」の登場回数が正規分布であるとき、キーワード「AAA」の最新登場回数が平均登場回数±2σの範囲に収まる確率は95.45%である。言い換えると、平均登場回数+2σよりも最新登場回数が大きい(分析条件311「A1」の条件式と一致しており、これを満たしている)場合、もしくは平均登場回数−2σよりも最新登場回数が小さい(分析条件311「A2」の条件式と一致しており、これを満たしている)場合、それは傾向から外れているといえる。
【0044】
すなわち、
図6の分析条件例は、キーワード「AAA」の最新登場回数が、平均登場回数±2σの範囲内にないとき通知するとして、入力部31へ入力した条件である。
【0045】
図6の条件で20XX/10/10 0:00に分析した結果を
図7に示す。
図7では、分析時点20XX/10/10 0:00における最新の分析単位20XX/10/9 0:00〜23:59における、日誌情報中のキーワードの登場回数、及びその1分析単位前のキーワードの登場回数、さらに、その1分析単位前のキーワードの登場回数、・・・が、サンプル数「9」分、記録されている。すなわち、最新登場回数が17回、最大登場回数が20回、最小登場回数が9回、平均登場回数が12.3回、標準偏差が3.507136・・・であることが示されている。
【0046】
これらの数値を分析条件311「A1」,「A2」の条件式に当てはめると、最新登場回数(17回)が平均登場回数±2σの範囲(5.285<17<19.314)に収まっている。すなわち、分析条件311「A1」,「A2」の条件式の何れとも一致せず、これらを満足しない。このため、この場合は、
図6(c)で示す通知条件「A」の分析条件選択「A1 OR A2」が成立せず、通知されない。
【0047】
上述した分析動作を更新周期3114「1時間」ごとに行い、キーワード「AAA」の最新登場回数が、平均登場回数±2σの範囲内にあるか否かをリアルタイムに判定する。その結果、平均登場回数±2σの範囲内にないときは、通知条件「A」の通知方法「アラーム」で通知する。
【0048】
なお、
図6で示した標準偏差を用いた条件式はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。例えば、最新登場回数が最大登場回数より大きいとき、或いは、最新登場回数が最少登場回数より小さいときに通知するなど、ユーザの目的および作業内容に合わせた条件を設定することが出来る。
【0049】
また、上記説明では、傾向を表すものとしてキーワードの登場回数を用いたが、あくまで一例であり、これに限定されるものではなく、例えばキーワードの登場周期など、任意に設定することができる。
【0050】
以上のように、この実施の形態に係るプラント監視システム及び監視方法では、運転員の作業内容を分析し、分析結果が作業内容の蓄積データの傾向から外れた場合に通知するようにしたので、アナログ信号、デジタル信号によらない運転員の作業データからプラントの重大事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。