(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
屋根構体と、側構体と、妻構体と、台枠と、前記屋根構体、前記側構体、前記妻構体及び前記台枠に囲まれた客室と、前記屋根構体に取り付けられた空調機と、前記空調機に接続され且つ前記屋根構体及び側構体に沿って形成された空調ダクトと、前記客室と前記空調ダクトとの間に形成された壁と、前記客室に配置された座席とを備え、
前記壁は、前記屋根構体の下方に配置された天井板を有し、
前記空調ダクトは、前記屋根構体と前記天井板との間に形成された第1空調ダクトと、前記第1空調ダクトに接続され且つ前記側構体に沿って形成された第2空調ダクトとを有し、
前記空調機から吹き出された風が前記第1空調ダクトから前記第2空調ダクトへ流れ、
前記空調ダクトには、前記客室と前記空調ダクトとを連通させる第1開口及び第2開口が異なる高さに形成され、
前記第1開口は前記座席の背もたれより上方に形成され、
前記第2開口は前記背もたれより下方に形成され、
前記空調ダクトには前記空調機から吹き出された風の流れる方向について前記第1開口の下流であり且つ前記第2開口の上流である位置に第1弁が配置され、
前記第1弁の開閉度を変えることができることを特徴とする鉄道車両。
前記加熱ダクトが、前記客室と、前記空調ダクトにおいて前記空調機から吹き出された風の流れる方向について前記第2開口の下流とに接続されていることを特徴とする請求項6に記載の鉄道車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調機で客室温度を調整する場合、冬季には天井付近から温風が吹き出されるため乗客の頭部が暖まるが、足下が暖まりにくい。これでは、人体に理想的な「頭寒足熱」を実現しにくい。また、ヒーターで足元を温める場合、ヒーターの消費電力が大きくなるため省エネルギー化(省エネ化)を図りにくい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、冬季に「頭寒足熱」を実現できるとともに省エネ化できる鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄道車両は、屋根構体と、側構体と、妻構体と、台枠と、前記屋根構体、前記側構体、前記妻構体及び前記台枠に囲まれた客室と、前記屋根構体に取り付けられた空調機と、前記空調機に接続され且つ前記屋根構体及び側構体に沿って形成された空調ダクトと、前記客室と前記空調ダクトとの間に形成された壁と、前記客室に配置された座席とを備え、
前記壁は、前記屋根構体の下方に配置された天井板を有し、
前記空調ダクトは、前記屋根構体と前記天井板との間に形成された第1空調ダクトと、前記第1空調ダクトに接続され且つ前記側構体に沿って形成された第2空調ダクトとを有し、
前記空調機から吹き出された風が前記第1空調ダクトから前記第2空調ダクトへ流れ、
前記空調ダクトには、前記客室と前記空調ダクトとを連通させる第1開口及び第2開口が異なる高さに形成され、
前記第1開口は前記座席の背もたれより上方に形成され、
前記第2開口は前記背もたれより下方に形成され、
前記空調ダクトには前記空調機から吹き出された風の流れる方向について前記第1開口の下流であり且つ前記第2開口の上流である位置に第1弁が配置され、
前記第1弁の開閉度を変えることができる。
【0007】
本発明では、天井付近に形成された第1開口と足元に形成された第2開口とから客室へ空調風を吹き出すことができる。また、第1弁の開閉度を変えることにより、各開口から吹き出される空調風量を調整することができる。これにより、冬季は乗客の頭部と足元の両方に温風を吹き出すことができるため、頭寒足熱を実現できる。また、座席下方のヒーターを使用することなく乗客の足元を暖めることができるため、省エネ化できる。
さらに、夏季は第1弁の開度を小さくすることにより、主に天井付近の第1開口から冷風を吹き出すことができる。これにより乗客に清涼感を与えることができる。
【0008】
また、上記車両は前記第1弁の開閉を制御する第1制御手段を備えており、前記空調機を暖房運転するとき、前記第1制御手段により前記第1弁の開度を前記空調機を冷房運転するときの開度よりも大きくすることが好ましい。
【0009】
暖房運転時に第2開口から足元へたくさんの温風を吹き出すことができるため、頭寒足熱を実現できる。
【0010】
さらに、上記車両において前記第1弁を完全に閉じることができることが好ましい。冷房運転時に第1弁を完全に閉じることで、天井付近にある第1開口だけから冷風を吹き出すことができる。これにより乗客に清涼感を与えることができる。
【0011】
また、上記車両は、前記第1開口を開閉可能な開閉板と、前記開閉板の開閉度を制御可能な第2制御手段とをさらに備え、
前記空調機を暖房運転するとき、前記第2制御手段により前記開閉板の開度を前記空調機を冷房運転するときよりも小さくすることが好ましい。
【0012】
暖房運転時に天井付近にある第1開口の開度を小さくすることにより、足元にある第2開口から吹き出す温風量を増やすことができる。これにより乗客の足元へ多くの温風を吹き出すことができるため、頭寒足熱を実現できる。
【0013】
上記車両において、複数の前記第1開口が前記鉄道車両の幅方向について前記鉄道車両の幅中心を挟んで両側に形成され、複数の前記第2開口が前記鉄道車両の幅方向について前記鉄道車両の幅中心を挟んで両側に形成されていることが好ましい。
【0014】
車両の幅方向中心を挟んだ左右両側から空調風を吹き出すことができるため、客室で空調風を効率良く循環させることができる。
【0015】
上記車両において、発熱体と、前記発熱体から生じた流体が通過する流路と、前記発熱体及び前記流路の少なくとも一方に隣接した加熱ダクトとをさらに備えており、
前記加熱ダクトが前記空調ダクトに接続されていることが好ましい。
【0016】
加熱ダクトを通過する気体を発熱体や発熱体から生じる流体で温めてから空調ダクト及び客室に送ることができる。これにより暖房運転時の空調機の負荷を軽減できるため、コストを削減できる。
【0017】
上記車両において、前記加熱ダクトが、前記客室と、前記空調ダクトにおいて前記空調機から吹き出された風の流れる方向について前記第2開口の下流に接続されていることが好ましい。
【0018】
客室の気体を加熱ダクトに取り込み、加熱ダクトで温めてから空調ダクト及び客室に送ることができる。これにより暖房運転時の空調機の負荷を軽減できるため、コストを削減できる。
【0019】
また、前記加熱ダクト、又は前記空調ダクトにおいて前記空調機から吹き出された風の流れる方向について前記第2開口の下流に第2弁が配置され、前記第2弁の開閉度を変えることができることが好ましい。
【0020】
第2弁の開閉度を変えることにより、加熱ダクトから空調ダクト及び客室に送られる温風量を調整することができる。また、夏季は第2弁を閉じることにより、加熱ダクトで生成した温風が客室に流れないようにして冷風だけを客室に送ることができる。
【0021】
上記車両において、前記加熱ダクトが、前記空調機と前記空調ダクトとの間に配置されていることが好ましい。
【0022】
空調機から吹き出された空調風を加熱ダクトで温めることができるため、空調機での熱交換量を減少させることができる。これにより空調機の負荷を軽減できる。
【0023】
上記車両において、前記第2空調ダクトは、
前記第1空調ダクトに接続され且つ鉄道車両の長手方向に所定の間隔で配置された複数の上第2空調ダクトと、複数の前記上第2空調ダクトの下方に配置され且つ鉄道車両の長手方向に延在した下第2空調ダクトとを有し、
前記上第2空調ダクトの下端部と前記下第2空調ダクトとが接続され、
前記下第2空調ダクトには複数の第2開口が鉄道車両の長手方向に沿って形成されていることが好ましい。
【0024】
鉄道車両の長手方向に延在した下第2空調ダクトに複数の第2開口を形成することにより、座席下方において車両長手方向の様々な位置から空調風を吹き出すことができる。これにより冬季に足元を暖めやすくできるため、頭寒足熱を実現しやすくできる。
【0025】
上記車両において、前記第1開口が鉄道車両の高さ方向に交差する方向に開口していることが好ましい。天井付近の高さにある第1開口から横方向や斜め方向の空調風を吹き出すことができる。これにより乗客に下向きの空調風が直接かからないようにできるため、快適な状態で清涼感を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、天井付近の第1開口と座席下方の第2開口とから空調風を吹き出すとともに各開口から吹き出される空調風量を調整できるため、冬季に人体に理想的な頭寒足熱を実現できるとともに省エネ化できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
本発明の1実施形態である鉄道車両について、
図1〜
図4を参照しつつ以下に説明する。
【0030】
鉄道車両100は、
図1,2に示すように、屋根構体1と、妻構体2と、車両の幅方向に互いに対向した側構体3,4と、床を構成する台枠5と、屋根構体1、妻構体2、側構体3,4及び台枠5に囲まれた客室6と、屋根構体1に取り付けられた空調機7と、屋根構体1に沿って形成された天井ダクト(第1空調ダクト)8と、右側の側構体3に沿って形成された右ダクト(第2空調ダクト)9と、左側の側構体4に沿って形成された左ダクト(第2空調ダクト)10とを備えている。空調機7と天井ダクト8は中間ダクト11によって接続されている。
【0031】
図2に示すように、右ダクト9及び左ダクト10はそれぞれ天井ダクト8の左右両端部から下方向に延在している。天井ダクト8と右ダクト9と左ダクト10とは連通し、これら3つのダクトにより空調ダクト12が構成されている。
【0032】
天井ダクト8と客室6との間には天井板13が配置されている。また、右ダクト9と客室6との間には右側壁14が形成されている。左ダクト10と客室6との間には左側壁15が形成されている。客室6には複数の座席16が配置されている。
【0033】
右ダクト9の下端部には加熱ダクト17,18,217が接続されている。また左ダクト10の下端部にも加熱ダクト18が接続されている。加熱ダクト17,18は側構体3,4に沿って下方に延在し、車体19の床下を通って上方向に折れ曲がり、床を貫通している。
【0034】
車体19の床下には、中央付近にエンジン等の発熱体20が配置されている(
図2参照)。発熱体20の左右両側には流路21,22が形成されている。流路21,22は車両の幅方向に延在し、一部が加熱ダクト17,18と隣接している。発熱体20から生じた熱流体(排気熱等)は流路21,22を通って外部に排出される。
【0035】
図3には空調ダクト12の一部を示している。天井ダクト8は、車両長手方向に延在した2本の天井右ダクト管31及び天井左ダクト管32と、これら2つのダクト管を接続する中央ダクト管33とを有している。中央ダクト管33の中央付近には開口33aが形成されている。開口33aには中間ダクト11の下端部が配置される(
図2参照)。
【0036】
図2に示すように、天井右ダクト管31の客室6に対向する角部には第1右開口31aが形成されている。また、天井左ダクト管32の客室6に対向する角部には第1左開口32aが形成されている。第1右開口31a及び第1左開口32aは車両の長手方向に所定の間隔で形成されている(
図3に示す第1左開口32a参照)。第1右開口31a及び第1左開口32aは、
図2に示すように天井付近の高さ(座席16の背もたれ16aより上方の高さ)に形成されている。
【0037】
第1右開口31aは右開閉板131により開閉度を調整でき、第1左開口32aは左開閉板132により開閉度を調整できる。右開閉板131には図示しない開閉機構が接続されている。また左開閉板132にも図示しない開閉機構が接続されている。各開閉機構によって右開閉板131及び左開閉板132を開閉動作させることができる。右開閉板131及び左開閉板132が開状態のとき、天井右ダクト管31及び天井左ダクト管32が客室6と連通する。
【0038】
第1右開口31aは
図2に示すように左斜下に向かって開口している。これにより空調風は第1右開口31aから客室6に左斜め下方向に吹き出される(
図4参照)。一方、第1左開口32aは右斜下に向かって開口している。これにより空調風は第1左開口32aから客室6に右斜下方向に吹き出される(
図4参照)。
【0039】
右ダクト9は、
図3に示すように、天井右ダクト管31から下方向に延在した複数の右縦ダクト管(上第2空調ダクト)41と、複数の右縦ダクト管41の下方において車両長手方向に延在した右長手ダクト管(下第2空調ダクト)42とを有している。右長手ダクト管42は乗客の足元の高さに配置されている(
図2参照)。右縦ダクト管41と右長手ダクト管42とは連通している。
【0040】
図2に示すように右長手ダクト管42の客室6に対向する部分には第2右開口42aが形成されている。第2右開口42aは車両の長手方向に所定の間隔で形成されている。第2右開口42aは座席16の座部16bより下方の高さに位置し、右壁弁142により開閉可能である。右側壁14の第2右開口42aに対向する部分には開口が形成され、右壁弁142が開状態のとき右長手ダクト管42と客室6とが連通する。
【0041】
左ダクト10は、
図3に示すように、天井左ダクト管32から下方向に延在した複数の左縦ダクト管(上第2空調ダクト)51と、複数の左縦ダクト管51の下方において車両長手方向に延在した左長手ダクト管(下第2空調ダクト)52とを有している。左長手ダクト管52は乗客の足元の高さに配置されている(
図2参照)。左縦ダクト管51と左長手ダクト管52とは連通している。
【0042】
図2に示すように左長手ダクト管52の客室6に対向する部分には第2左開口52aが形成されている。第2左開口52aは車両の長手方向に所定の間隔で形成されている。第2左開口52aは座席16の座部16bより下方の高さに位置し、左壁弁152により開閉可能である。左側壁15の第2左開口52aに対向する部分には開口が形成され、左壁弁152が開状態のとき左長手ダクト管52と客室6とが連通する。
【0043】
空調ダクト12内には天井右ダクト管31と右縦ダクト管41との境界部分に第1右弁(第1弁)61が配置されている。第1右弁61を開閉させることにより、天井右ダクト管31と右縦ダクト管41とを連通させたり、隔てたりすることができる。
【0044】
また、天井左ダクト管32と左縦ダクト管51との境界部分には第1左弁(第1弁)62が配置されている。第1左弁62を開閉させることにより、天井左ダクト管32と左縦ダクト管51とを連通させたり、隔てたりすることができる。
【0045】
車体19の床には加熱ダクト17,18の開口17a,18aが形成されている。開口17a,18aはそれぞれ第2右弁(第2弁)117及び第2左弁(第2弁)118により開閉可能である。
【0046】
上述した右開閉板131の開閉機構(図示せず)、左開閉板132の開閉機構(図示せず)、右壁弁142、左壁弁152、第1右弁61、第1左弁62、第2右弁117及び第2左弁118は、運転席周辺に配置された制御装置(第1制御手段、第2制御手段)110に電気的に接続されている(
図1参照)。運転台のレバーやボタンを操作すると、制御装置110から開閉機構及び弁に信号が伝達され、開閉板及び弁が開閉動作する。これにより開閉板及び弁の開閉度を調整できる。開閉機構及び弁を全て同時に制御することもでき、個別に制御することもできる。また開閉板及び弁の開閉は手動でも行える。上記開閉板及び弁は完全に閉じることができる。
【0047】
次に、冷房運転時と暖房運転時の空調風の流れの一例を、
図4を参照しつつ説明する。
【0048】
(暖房運転時)
図4(a)に示すように、右開閉板131及び左開閉板132を開き、第1右弁61及び第1左弁62を開く。また、右側壁14及び左側壁15を塞ぐ右壁弁142及び左壁弁152を開き、床を塞ぐ第2右弁117及び第2左弁118を開く。
【0049】
空調機7を運転すると、空調機7から吹き出された温風は中間ダクト11及び天井ダクト8を通り、一部が第1右開口31a及び第1左開口32aから客室6に吹き出され、残りは右ダクト9及び左ダクト10を通って第2右開口42a及び第2左開口52aから客室6へ吹き出される。また、客室6の気体の一部が加熱ダクト17,18に取り込まれ、右ダクト9及び左ダクト10に向かって流れる。ここで、加熱ダクト17,18を通過する気体と流路21,22を通過する熱流体(排気熱等)との間で熱交換が起こり、加熱ダクト17,18を通過する気体の温度が上昇する。温度上昇した気体が右ダクト9及び左ダクト10に流れ、第2右開口42a及び第2左開口52aから客室6へ吹き出される。
【0050】
このように空調機7から吹き出された温風の一部を乗客の頭部に吹き出し、残りを乗客の足元に吹き出す。また、客室の気体を排気熱等で温めてから乗客の足元に吹き出している。これにより人体に理想的な頭寒足熱を実現できる。
また従来は座席16の下方に配置されたヒーターで足元を温めていたが、乗客の足元に温風を吹き出すことができるため、ヒーター用いることなく、乗客の足元を温めることができる。これにより省エネ化できる。
【0051】
(冷房運転時)
図4(b)に示すように、右開閉板131及び左開閉板132を開き、第1右弁61及び第1左弁62を完全に閉じる。また第2右弁117及び第2左弁118も完全に閉じる。右壁弁142及び左壁弁152については
図4(b)では開いているが、閉じてもよい。
【0052】
空調機7を運転すると、空調機7から吹き出された冷風は中間ダクト11及び天井ダクト8を通り、第1右開口31a及び第1左開口32aから客室6に吹き出される。第1右開口31aから冷風が左斜め下方向に吹き出され、第1左開口32aから冷風が右斜め下方向に吹き出される。これらの冷風が互いに衝突することにより客室6で冷風が循環する。
【0053】
ここで、第1右弁61及び第1左弁62が完全に閉じられているため、右ダクト9及び左ダクト10に冷風が流れない。また第2右弁117及び第2左弁118が完全に閉じられているため、加熱ダクト17,18に気体が流れない。したがって、第2右開口42a及び第2左開口52aから客室6へ気体が吹き出されない。
【0054】
なお、
図4(b)では第1右弁61及び第1左弁62を完全に閉じ、右壁弁142及び左壁弁152を開いているが、第1右弁61及び第1左弁62を開き、右壁弁142及び左壁弁152を完全に閉じてもよい。
【0055】
また、第1右弁61及び第1左弁62の開度が
図4(a)の暖房運転時の開度より小さくなるように第1右弁61及び第1左弁62を開き、空調機7から吹き出される冷風の一部を第2右開口42a及び第2左開口52aから客室6へ吹き出してもよい。
【0056】
以上に述べたように、本実施形態の鉄道車両によると以下の効果を奏する。本実施形態ではi)天井付近の高さに形成された第1右開口31a及び第1左開口32aとii)足元に形成された第2右開口42a及び第2左開口52aとから客室6へ空調風を吹き出すことができる。また、第1右開口31a及び第1左開口32aの開閉度を制御装置110や手動で変えることにより、I)第1右開口31a及び第1左開口32aから吹き出す空調風量とII)第2右開口42a及び第2左開口52aから吹き出す空調風量とを調整することができる。これにより冬季には乗客の足元に十分な温風を吹き出すことができるため、頭寒足熱を実現できる。また、座席16の下方のヒーターを使用することなく乗客の足元を温めることができるため、省エネ化できる。
また、夏季には第1右弁61及び第1左弁62を完全に閉じる又は開度を小さくすることにより、天井付近の第1右開口31a及び第1左開口32aから客室6に冷風を多く吹き出すことができる。これにより乗客に清涼感を与えることができる。
【0057】
また、暖房運転時に足元にある第2右開口42a及び第2左開口52aの開度を冷房運転時の第2右開口42a及び第2左開口52aの開度より大きくすることで、暖房運転時に乗客の足元へ温風を多く吹き出すことができる。これにより頭寒足熱を実現できる。また、鉄道車両100の扉が開いたときに天井付近の第1右開口31a及び第1左開口32aから吹き出された温風が車外に流出しても、足元の第2右開口42a及び第2左開口52aから吹き出された温風により車内を暖めることができる。
【0058】
さらに、暖房運転時に天井付近にある第1右開口31a及び第1左開口32aの開度を小さくすることにより、足元の第2右開口42a及び第2左開口52aから吹き出す温風量を増やすことができる。これにより乗客の足元に温風を多く吹き出すことができるため、頭寒足熱を実現できる。
【0059】
また、天井付近において鉄道車両100の幅方向中心を挟んで左右両側に第1右開口31a及び第1左開口32aを形成し、乗客の足元付近にも鉄道車両100の幅方向中心を挟んで左右両側に第2右開口42a及び第2左開口52aを形成している。これにより左右両側から空調風を吹き出すことができるため、空調風を効率良く循環させることができる。
【0060】
さらに、加熱ダクト17,18と、排気熱等が流れる流路21,22とが隣接しているため、加熱ダクト17,18を流れる気体と流路21,22を流れる排気熱等との間で熱交換が起こる。これにより加熱ダクト17,18を流れる気体の温度が上昇し、温度上昇した気体を右ダクト9、左ダクト10及び客室6に送ることができるため、空調機での熱交換量を減少できる。また、エンジン等(発熱体20)の必須の装置から生じた排気熱を利用して温風を生成できる。
【0061】
さらに、加熱ダクト17,18の開口を閉じる第2右弁117及び第2左弁118の開閉を制御装置110や手動で調整することができる。これにより冬季には乗客の足元に温風を多く吹き出すことができる。また、夏季には第2右弁117及び第2左弁118を完全に閉じることにより、客室6に温風が吹き出されないようにすることができる。
【0062】
さらに、空調ダクト12において乗客の足元の高さに右長手ダクト管42及び左長手ダクト管52を形成し、鉄道車両100の長手方向に沿って複数の第2右開口42a及び第2左開口52aを形成している。これにより乗客の足元の高さにおいて様々な場所で空調風を吹き出すことができる。よって冬季に乗客の足元を暖めやすくできるため、頭寒足熱を実現できる。
【0063】
さらに、天井ダクト8において第1右開口31aを左斜下に向かって開口させ、第1左開口32aを右斜下に向かって開口させている。これにより空調風が斜下方向に吹き出されるため、下向きの空調風が乗客に直接かからないようにできる。よって乗客に快適な状態で清涼感を与えることができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、
図5を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、加熱ダクト217、発熱体220及び流路221の位置である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0065】
鉄道車両200では、空調機7と中間ダクト211との間に加熱ダクト217が配置されている。そして、空調機7、加熱ダクト217及び中間ダクト211が連通している。
【0066】
エンジン等の発熱体220は屋根構体1に取り付けられている。発熱体220には流路221が接続されている。流路221は空調機7に向かって車両長手方向に延在し、一部が加熱ダクト217に隣接している。発熱体220から生じた熱流体(排気熱等)は流路221を通って外部に排出される。
【0067】
暖房運転時には、空調機7から吹き出された気体が加熱ダクト217及び中間ダクト210を通って空調ダクト12(天井ダクト8、右ダクト9及び左ダクト)に流れ、客室に吹き出される。ここで加熱ダクト217を流れる気体と流路221を流れる熱流体との間で熱交換が起こる。これにより加熱ダクト217を流れる気体の温度が上昇し、温度上昇後の気体が中間ダクト211、空調ダクト12及び客室に送られる。このように空調機7から吹き出された気体は加熱ダクト217を通過中に温められるため、空調機7から吹き出される気体は空調機7で熱交換されていない気体でもよい。また熱交換量が少ない気体でもよい。
【0068】
冷房運転時には、発熱体220と流路221との間に配置された弁(図示省略)が閉じられ、流路221に排気熱が流れない。したがって加熱ダクト217を流れる冷風が温度上昇することなく客室6へ送られる。発熱体220から生じた排気熱等は図示しない別の流路を通って外部に排出される。
【0069】
本実施形態では空調機7から吹き出された気体を加熱ダクト217で温めてから空調ダクト12及び客室に送ることができるため、空調機7での熱交換量を減少させることができる。これにより空調機7の負荷を軽減できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
例えば、上述の実施形態では天井付近の高さ(天井と同程度の高さ)に第1右開口(第1開口)31aと第1左開口(第1開口)32aが形成されているが、天井より低い位置に開口を形成してもよい。また、第1右開口31aは左斜め下方向に開口し、第1左開口32aは右斜め下方向に開口しているが、第1開口を左右方向(車両の幅方向)に開口させていてもよい。例えば
図2において、右縦ダクト管41の上端部及び左縦ダクト管51の上端部に左右方向に開口した第1開口を形成してもよい。
【0072】
さらに、上述の実施形態では座席16の背もたれ16aの上方において左右両側に第1開口(第1右開口31a、第1左開口32a)を形成したが、右側又は左側にだけ開口を形成してもよい。また、座席16の背もたれ16aの下方においても左右両側に第2開口(第2右開口42a、第2左開口52a)を形成したが、右側又は左側にだけ開口を形成してもよい。
【0073】
さらに、上述の第1実施形態では加熱ダクト17,18と発熱体20から生じた流体が通過する流路21,22とが隣接しているが、加熱ダクト17,18と発熱体20とが隣接してもよい。また第2実施形態では加熱ダクト217と流路221とが隣接しているが、加熱ダクト217と発熱体220とが隣接してもよい。また加熱ダクト17,18,217を備えない構成としてもよい。
【0074】
さらに、上述の実施形態では乗客の足元において右長手ダクト管42及び左長手ダクト管52に第2右開口42a及び第2左開口52aを形成したが、右縦ダクト管41及び左縦ダクト管51に開口を形成してもよい。この場合、右長手ダクト管42及び左長手ダクト管52を有さない構成としてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では加熱ダクト17,18の開口部に第2右弁117及び第2左弁118を配置したが、弁の位置は変更可能である。例えば、弁を加熱ダクト17,18の途中に配置してもよく、右ダクト9及び左ダクト10において空調風の流れる方向について第2右開口42a及び第2左開口52aの下流に配置してもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では第1右弁61及び第1左弁62を完全に閉じることができるが、完全に閉じることができない構成としてもよい。さらに、上述の実施形態では第1右開口31a及び第1左開口32aを開閉可能な右開閉板131及び左開閉板132が設けられているが、右開閉板131及び左開閉板132が設けられていなくてもよい。
【0077】
さらに、上述の実施形態では全ての開閉板及び弁の開閉が運転席周辺に配置された制御装置(第1制御手段、第2制御手段)110によって制御できるが、制御手段や制御方法は変更可能である、例えば、客室6の各所に湿温度センサーを設置し、各湿温度センサーの情報を基に制御装置(第1制御手段、第2制御手段)110を作動させ、これにより開閉板及び弁が自動に開閉する構成でもよい。
【0078】
また、空調ダクト12の構成は上述した実施形態の構成に限られず、変更可能である。例えば
図6に示すように、天井ダクト306の天井右ダクト管331と天井左ダクト管332とを車両の幅方向に近付け、右縦ダクト管341(上第2空調ダクト)に水平部341aと鉛直部341bとを設けてもよい。また、左縦ダクト管351(上第2空調ダクト)にも水平部351aと鉛直部351bとを設けてもよい。
図6では、右縦ダクト管341の上端部及び左縦ダクト管351上端部に左右方向に開口した第1右開口及び第1左開口432aが形成されている。また第1左開口432aが左開閉板432によって開閉可能である。