【実施例】
【0021】
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、車体フレーム11の前部に転舵可能に取付けられたフロントフォーク12と、このフロントフォーク12の下部に回転自在に取付けられた前輪13と、フロントフォーク12の上部に取付けられた操向用のハンドルバー14と、このハンドルバー14の後方に順に配置され車体フレーム11で支えられる燃料タンク15及びシート16と、燃料タンク15の下方に配置され車体フレーム11で支えられるエンジン17と、車体フレーム11から後方へ延びるスイングアーム18と、このスイングアーム18に回転自在に取付けられた後輪19と、燃料タンク15の前方にフロントフォーク12を囲うように配置されたフロントカウル22と、このフロントカウル22の上部に取付けられたスクリーン23と、フロントカウル22の前部の取付けられたヘッドライト24とを備え、シート16に跨って乗る形態の車両である。
【0022】
図2に示すように、ハンドルバー14の左端部には、先端から車体中心へ左グリップ部26L(Lは左を示す添え字である。以下同)、左スイッチボックス27L、左レバーブラケット28Lが取付けられている。ハンドルバー14の右端部には、先端から車体中心へアクセル用の右グリップ部26R(RLは右を示す添え字である。以下同、右スイッチボックス27R、右レバーブラケット28Rが取付けられている。
ハンドルバー14の車両前方には、車幅方向中央にメータケース29が配置されている。
以下、左グリップ部26L付近の詳細構造を説明する。
【0023】
図3は左グリップ部26L付近の拡大図であり、
図4はそれの分解図である。
図4に示すように、ハンドルバー14の左端部に左グリップ部26Lが取付けられ、この左グリップ部26Lの車体中心側にてハンドルバー14に左スイッチボックス27Lが取付けられ、この左スイッチボックス27Lの車体中心側にてハンドルバー14に左レバーブラケット28Lが取付けられる。
【0024】
左レバーブラケット28Lは、ブラケット本体31と、キャップ32とからなり、ボルト33を外すことで、ハンドルバー14から外すことができる。
【0025】
ブラケット本体31には、左バックミラーの取付部35とパーキングレバー36の保持部37が設けられている。この保持部37はハンドルバー14より車両前方に位置する。
さらに、ブラケット本体31には、鋸歯部38を有するストッパ部材39が取付けられ、このストッパ部材39の近傍にパーキングレバー36を受ける受け面41が形成され、パーキングブレーキワイヤ42を案内するワイヤガイド部43が設けられている。
更に、ブラケット本体31には、パーキングブレーキワイヤ42の張りを調整するパーキングワイヤ調整ねじ49がねじ込まれている。
【0026】
パーキングレバー36は、通常のクラッチレバーや左ブレーキレバーと類似した形状を呈し、左グリップ部26Lとほぼ同じ長さである長いレバー部材であって、一端にピン穴44を有し、途中に、雌ねじ部45、ばね止め穴46、第1湾曲部47及び第2湾曲部48とを有している。パーキングレバー36は、十分に長いため、揺動させるための操作力を十分に小さくすることができる。
なお、第2湾曲部48は、パーキングレバー36を引いたときに、パーキングレバー36の先端部がグリップ部26Lと略平行になるようにして、レバーストロークが十分に確保されるようになっている。
【0027】
雌ねじ部45には、ロックレバー51を止めるビス又はピボットボルト52がねじ込まれる。この際に、トーションばね53は、一端がばね止め穴46に差し込まれ、他端がばね受け54に当てられようにして、パーキングレバー36とロックレバー51との間に渡される。ロックレバー51は指掛け部55を備えている。
【0028】
さらに、左グリップ部26Lには、左ナックルバイザー57Lが付設される。左ナックルバイザー57Lは、左グリップ部26Lを前方から囲うようにしてガードする部材である。右グリップ部26R(
図2)も右ナックルバイザー57Rでガードされる。
この実施例では、左ナックルバイザー57LはL字状のナックルバイザー本体58と、I字状のガードステイ59とからなり、ガードステイ59にピン穴61と雌ねじ部62が設けられている。
【0029】
ナックルバイザー本体58は、ガードステイ59の雌ねじ部62にねじ込むビス63により、ガードステイ59に一体化される。ナックルバイザー本体58とガードステイ59を分離することなく、一体の成形品とすることはできる。しかし、この実施例のようにナックルバイザー本体58とガードステイ59を別々に製作する方が、材質を替えることができ、ナックルバイザー本体58をより複雑な形状にすることができると共に、成形金型の構造が簡単になる。
【0030】
ガードステイ59のピン穴61と、パーキングレバー36のピン穴44にピンねじ64を通し、このピンねじ64をブラケット本体31の保持部37にねじ込むことで、ガードステイ59とパーキングレバー36をブラケット本体31に共締めする。
ナックルバイザー本体58の他端をハンドルバー14の他端(左先端)にビス65で固定する。
【0031】
組み付けが完了した姿は、
図3に示される。
パーキングワイヤ調整ねじ49を回すことにより、パーキングブレーキワイヤ42の張りを調整することができる。すなわち、ハンドルバー14側にパーキングブレーキの調整機構を設けたので、手元で容易に調整でき、使い勝手が向上する。
【0032】
左グリップ部26を握った手を想像線67Aで示す。このときには、パーキングレバー36は、一杯に前方へ伸ばした第1指68Aの指先よりも前方に配置される。よって、左グリップ部26を握った手37Aがパーキングレバー36に触れる心配がない。
【0033】
手の平を伸ばした状態の手を想像線67Bで示す。このときは、一杯に前方へ伸ばした第1指68Bの指先がパーキングレバー36が掛かる。
第1指68Bを引くと、パーキングレバー36がピンねじ64を中心に回転し、左グリップ部26Lに接近する。このときに、左スイッチボックス27Lにパーキングレバー36が接近するが、第1湾曲部47は前方に突とされ、後方に窪みがあるため、パーキングレバー36は左スイッチボックス27Lに干渉し難くなる。結果、左スイッチボックス27Lが大型であっても、パーキングレバー36を十分に左グリップ部26Lに接近するまで、揺動させることができる。
【0034】
図5に示すように、ブラケット本体31には、高さ方向途中に凹部71が形成されており、この凹部71にパーキングレバー36が差し込まれる。ブラケット本体31はガードステイ59、59で上下から挟まれ、この状態で上からピンねじ64が差し込まれる。ピンねじ64にナット72をねじ込む。以上により、ブラケット本体31にガードステイ59が固定される。パーキングレバー36は揺動自在にブラケット本体31及びピンねじ64で支持される。
【0035】
図6は、ブラケット本体31の底面図であり、ブラケット本体31の底面31aに、パーキングスイッチ73が直接的に取付けられている。パーキングスイッチ73をアタッチメントを介してハンドルバー14に取付ける場合に比較してアタッチメントが不要となり、部品数の削減を図ることができる。
【0036】
図では、受け面41にパーキングレバー36が当たっていると共にこのパーキングレバー36でパーキングスイッチ73の接触子74が押されている。パーキングレバー36は、非パーキング状態にある。
パーキングスイッチ73のスイッチング信号は、中継部75へ送られ、この中継部75は、例えばメータケース29に設けられているパーキングブレーキランプ76を点灯又は消灯させる。
【0037】
非作動状態ではパーキングブレーキランプ76は消灯させる。
パーキングレバー36がピンねじ64を中心に、図面時計回りに引かれると、接触子74が突出する。この突出量が一定値を超えると、スイッチング信号が切り替わり、パーキングブレーキランプ76が点灯する。運転者に、パーキングブレーキが制動状態にあることを視認させることができる。
【0038】
図7に示すように、レバーロック機構50は、ブラケット本体31に設けられているストッパ部材39と、パーキングレバー36に設けられているロックレバー51と、トーションばね53とからなる。
トーションばね53は、ロックレバー51をビス52を中心に、図反時計回りに付勢する。パーキングレバー36から立てたストップ片77にロックレバー51が当たることで、ロックレバー51の反時計回りの回転が制限される。
図では、鋸歯部38にロックレバー51が噛み合っていない。
【0039】
図8(a)は非パーキング作動状態を示す。
図8(b)に示すように、パーキングレバー36を揺動させる。パーキングレバー36により、パーキングブレーキワイヤ42が引かれる。パーキングブレーキワイヤ42の先端は、
図9に示すパーキングブレーキ80のアーム81に繋がっており、アーム81が揺動されるとパーキングブレーキ80がブレーキディスク82を挟む。
【0040】
図8(b)にて、指掛け部55を車両前方へ押すことで、ロックレバー51を想像線で示すように揺動する。次に、パーキングレバー36を少し戻すと、ロックレバー51が鋸歯部38に噛む。この状態でパーキングレバー36から指を外しても、パーキングレバー36が戻る心配がない。すなわち、レバーロック機構50により、パーキングレバー36がパーキングブレーキ位置で保持される。
なお、ストップ部材39を鋸歯部38とすることにより、必要に応じて制動力を選択できる。
【0041】
パーキングブレーキを解除するには、
図8(b)にて、パーキングレバー36を少し引く。すると、想像線で示すロックレバー51が鋸歯部38から離れ、トーションばね(
図7、符号53)の作用で、実線の位置に戻る。以降、パーキングレバー36を緩めることで、
図8(a)に戻すことができる。
なお、本構造に対してトーションばね53の作用を逆向きにして、ロックレバー51がストッパ部材39側へ押される構造とすることにより、パーキングレバー36を引くと同時にロックレバー51が鋸歯部38に係合するようにしてもよい。
【0042】
図9に示すように、後輪を支えるスイングアーム18を基準として、上方に液圧ブレーキ装置であるディスクブレーキ83が配置され、下方にパーキングブレーキ80が配置される。液圧ホース84はスイングアーム18の上辺に沿って配置される。
【0043】
パーキングブレーキワイヤ42は、スイングアーム18の車体中心側を通るように配置される。パーキングブレーキワイヤ42は、スイングアーム18で保護される。外観性も高まる。
スイングアーム18は、アルミニウム合金の中空鋳物であり、鋳砂を排出する穴85が車体中心側の面に残される。
この穴85にゴム栓96が嵌められ、このゴム栓86にパーキングブレーキワイヤ42が沿わされる。
【0044】
なお、
図10に示すように、パーキングブレーキ80は、スイングアーム18を基準にして上方に配置することもできる。この配置であれば、パーキングブレーキ80が路面から遠くなり、路面からの飛石が当たりにくくなり、路面の泥水が掛かりにくくなる。
【0045】
尚、本発明は、実施の形態では二輪車に適用したが、三輪又は四輪を備える鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
また、実施例では左グリップ部にパーキング操作子を取付けたが、パーキング操作子を右グリップ部に取付けることは差し支えない。