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特許6228098化学・物理現象検出装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228098
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】化学・物理現象検出装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20171030BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G01N27/416 353G
   G01N27/416 353A
   G01N27/414 301U
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-214040(P2014-214040)
(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-80601(P2016-80601A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】小西 智広
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和明
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/106800(WO,A1)
【文献】 特開2002−009274(JP,A)
【文献】 特開平10−332423(JP,A)
【文献】 特開2006−284225(JP,A)
【文献】 特開2002−098667(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077330(WO,A1)
【文献】 特開2011−238751(JP,A)
【文献】 特開2011−171575(JP,A)
【文献】 特許第2555981(JP,B2)
【文献】 特開平11−201775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
H01L 27/148,29/76
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
イオン濃度の検出に用いられる電荷を蓄積するセンシング部と、
前記センシング部に蓄積された電荷を転送する電荷転送部と、
転送された電荷の電荷量を検出する電荷検出部と、
前記イオン濃度に応じて前記センシング部の蓄積電荷量を変化させるイオン感応膜とを備え、
前記センシング部、前記電荷転送部および前記電荷検出部は、前記半導体基板上の、前記半導体基板と逆型の拡散領域に形成され、
前記半導体基板に電圧が印加された状態で前記センシング部のみに電荷が注入されるように、前記拡散領域における前記センシング部が形成される部分と当該部分以外の部分とのドーパント濃度が異なることを特徴とするイオン濃度センサ。
【請求項2】
前記イオン感応膜は、前記イオン濃度に応じて前記センシング部のポテンシャルの深さを変化させることを特徴とする請求項に記載のイオン濃度センサ。
【請求項3】
前記イオン濃度センサを覆う保護膜をさらに備え、
前記保護膜が、前記イオン感応膜の前記センシング部上に形成された部分を少なくとも露出させるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のイオン濃度センサ。
【請求項4】
さらに前記電荷転送部が、前記センシング部に蓄積された電荷を読み出して垂直方向に転送する垂直転送部と、当該垂直転送部から転送された電荷を前記電荷検出部に転送する水平転送部とを有している、請求項1からのいずれか1項に記載のイオン濃度センサを用いてイオン濃度を検出するイオン濃度検出方法であって、
前記センシング部に蓄積された電荷を前記垂直転送部に読み出す動作を複数回行うことで前記垂直転送部に蓄積された電荷を前記垂直転送部によって前記水平転送部に転送する第1工程と、
イオンが前記イオン感応膜に接していない初期状態における前記蓄積電荷量に応じた初期電圧を前記電荷検出部によって得る第2工程と、
前記イオンが前記イオン感応膜に接している検出状態における前記蓄積電荷量に応じた検出電圧を前記電荷検出部によって得る第3工程と、
前記検出電圧と初期電圧との差を算出する第4工程とを含んでいることを特徴とするイオン濃度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子の構造、製造方法、駆動方法などを用いて、イオンに感応するセンシング部を形成し、このセンシング部の表面の電位変化に基づくチャネルの電位レベルの変化量を検出して、イオン濃度を検出するフォトダイオード型のイオン濃度センサと、そのイオン濃度センサを用いたイオン濃度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のイオン濃度センサ、例えば水素イオン濃度を検出するイオンセンシティブFET(ISFET:Ion Sensitive Field Effect Transistor)には、感度が低い、時間的に出力が変化するといった問題がある。このような問題を解決するため、センシング部の表面電位レベルの変化に伴うチャネルの電位レベルの変化量を検出する構造が提案されている。この構造では、入力トランジスタ、出力トランジスタ、リセットトランジスタの3つのトランジスタなどの素子が必要となるため、10um以下の微細なセルを形成することが困難である。
【0003】
また、該構造は、セル毎にトランジスタを有していることから、センシング部だけで無く、各セルの素子間の特性ばらつきも、読み出し電荷の精度に敏感に影響を与えるため、各セル間のばらつきも大きくなり、精度が向上しない課題がある。そこで、セル毎に特性を事前に測定し、測定結果に基づいて検量線を作成して、そのデータを記憶し、記憶したデータと測定データとを照合の上、測定値を確定させる必要があるが、手間と時間がかかる。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたセンサは、電荷供給のための入力ダイオードと、出力ゲートと、リセットダイオードとを備えている。また、特許文献2に開示されたセンサは、入力ダイオードと、出力ゲートと、リセット部とを備えている。さらに、特許文献3に開示されたセンサは、入力ダイオードと、出力トランジスタと、リセットダイオードとを備えている。このように、特許文献1〜3に開示された各センサも、1つのセンシング部について、上記のような各素子が設けられているので、やはり前述のような課題が存在する。
【0005】
このような課題に対して、特許文献4には、電荷転送部によって容量電荷を転送して、周辺の1箇所で当該容量電荷を電圧に変換するインターライン方式のCCD(Charge Coupled Device)に近い構造が開示されている。これにより、各セルにリセットトランジスタおよび出力トランジスタが必要なくなる。ただ、この構造でも、電極や非感応膜による電荷注入部が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4195859号公報(2008年12月17日発行)
【特許文献2】特開2002−98667号公報(2002年4月5日公開)
【特許文献3】特開2007−278760号公報(2007年10月25日公開)
【特許文献4】特許第4231560号公報(2008年12月17日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
10um以下の高集積な微細セルを有するイオンセンサにおいて、微細化ゆえにセル毎に必要なトランジスタの占める割合が増加することにより、センシング部の面積が減少する。このため、当該イオンセンサには、感度および精度が低下するという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、イオン濃度センサにおけるセンシング部の面積を増大させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るイオン濃度センサは、半導体基板と、イオン濃度の検出に用いられる電荷を蓄積するセンシング部と、前記センシング部に蓄積された電荷を転送する電荷転送部と、転送された前記電荷の電荷量を検出する電荷検出部と、前記イオン濃度に応じて前記センシング部の蓄積電荷量を変化させるイオン感応膜と備え、前記センシング部、前記電荷転送部および前記電荷検出部が、前記半導体基板上の、前記半導体基板と逆型の拡散領域に形成され、前記半導体基板に電圧が印加された状態で前記センシング部のみに電荷が注入されるように、前記拡散領域における前記センシング部が形成される部分と当該部分以外の部分とのドーパント濃度が異なることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様または他の態様によれば、イオン濃度センサにおけるセンシング部の面積を増大させることにより、イオン濃度センサの感度および精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の実施形態1〜4に係るイオンセンサの一部を拡大して示す平面図であり、(b)は(a)の平面図におけるA−A線の矢視断面図であり、(c)は(a)の平面図におけるB−B線およびC−C線の矢視断面図である。
図2】本発明の実施形態1および2に係るイオンセンサの構成を示す平面図である。
図3】(a)〜(e)は本発明の実施形態1に係るイオンセンサの製造工程を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1および2に係るイオンセンサの1セル分の構造を示す断面図である。
図5】(a)は図4におけるD−D部の濃度プロファイルを示す図であり、(b)は図4におけるE−E部の濃度プロファイルを示す図である。
図6】(a)〜(d)は本発明の実施形態2に係るイオンセンサの製造工程を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態3および4に係る動作説明のためにポテンシャルの状態を示す部位を含む、実施形態1および2に係るイオンセンサの1セル分の構造を示す平面図である。
図8】(a)は図7のイオンセンサにおける電荷の読み出し動作を示すタイミングチャートであり、(b)は図7のイオンセンサにおける電荷の転送動作を示すタイミングチャートである。
図9図7における各部位におけるポテンシャルおよび電荷の状態の変化を示す図である。
図10】(a)〜(c)は図7に示されるセンシング部における水素イオンの有無に応じたポテンシャルおよび電荷の状態を示す図であり、(d)は実施形態1および2に係るイオンセンサのセンシング部における水素イオン量に対する電荷量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施の形態について図1図5を用いて説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
〈イオンセンサ100の構成〉
図1の(a)は、本発明の実施形態1に係るイオンセンサ100の一部を拡大して示す平面図である。図1の(b)は、当該平面図におけるA−A線の矢視断面図であり、図1の(c)は当該平面図におけるB−B線およびC−C線の矢視断面図である。図2は、実施形態1および2に係るイオンセンサの構成を示す平面図である。
【0015】
図2に示すように、本実施形態に係るイオンセンサ100は、受光領域5と、非受光領域101と、オプティカルブラック102とを備えている。イオンセンサ100は、CCD型イメージセンサを活用したフォトダイオード型のイオン濃度センサである。
【0016】
受光領域5は、方形をなしており、多数のセンシング構造がマトリクス状に配置されている。オプティカルブラック102は、受光領域5の周囲に形成された黒画素の部分であり、センシングには使用されない。
【0017】
非受光領域101は、さらにオプティカルブラック102の周囲に形成されており、受光に寄与しない部分である。この非受光領域101には、後述する水平転送部7などが含まれている。
【0018】
図1の(a)に示すように、イオンセンサ100は、受光領域5に形成される、センシング部1、第1ゲート電極2、第2ゲート電極3および垂直転送部4と、非受光領域101に形成される、加算部6、水平転送部7、出力ゲート8、フローティングディフュージョン部9、リセットゲート10、リセットドレイン11および出力トランジスタ12とを備えている。
【0019】
センシング部1は、受けた光を電荷に変換する光電変換部である。このセンシング部1は、例えば、フォトダイオードによって形成されており、変換した電荷を蓄積するダイオードを有している。
【0020】
第1ゲート電極2(転送電極)は、センシング部1に蓄積された電荷を読み出す制御のためのゲート電極であり、電荷の読み出し時にON電圧が印加される。また、第1ゲート電極2は、前段の第2ゲート電極3から転送されてきた電荷を次段の第2ゲート電極3に転送する制御のための電極でもある。第2ゲート電極3(転送電極)は、読み出された電荷を垂直方向に転送する制御のためのゲート電極である。第1ゲート電極2および第2ゲート電極3は、電荷の転送時にON電圧が印加される。
【0021】
垂直転送部4(電荷転送部)は、第1ゲート電極2および第2ゲート電極3に印加されるON電圧に応じて、読み出された電荷を垂直方向に転送する。この垂直転送部4は、複数のMOSキャパシタが隣接するように配置されることにより形成されている。
【0022】
加算部6は、複数の垂直転送部4の末端部分が接合されてなる部分であり、接合された各垂直転送部4によって転送された電荷を加算する。
【0023】
1つのセンシング部1と、当該センシング部1に対応する第1ゲート電極2および第2ゲート電極3と、当該センシング部1に対応する垂直転送部4の部分とにより、セルが構成されている。
【0024】
水平転送部7(電荷転送部)は、垂直転送部4と同様の構成によって、加算部6から出力される電荷を水平方向に転送する。
【0025】
出力ゲート8は、水平転送部7から転送されてきた電荷をフローティングディフュージョン部9に出力するためのゲート回路であり、ON電圧が印加されたときのみ、電荷を出力する。
【0026】
フローティングディフュージョン部9は、N型領域からなるキャパシタを有しており、出力ゲート8から出力された電荷の電荷量をキャパシタの容量値に応じた電圧として取り出すことにより、電荷量を電圧として検出する検出部である。
【0027】
リセットゲート10は、フローティングディフュージョン部9が出力を完了したセルについての電圧を、次のセルについての電圧が出力される前にリセットするための部分である。リセットドレイン11は、フローティングディフュージョン部9のリセット電圧を印加する部分である。リセットゲート10は、フローティングディフュージョン部9が電荷を検出している状態ではオフ状態であるが、リセット動作時にオン状態になる。これにより、フローティングディフュージョン部9がリセットドレイン11に印加される電圧にリセットされる。
【0028】
出力トランジスタ12は、入力抵抗の非常に高いアンプとして機能する。これにより、出力トランジスタ12は、フローティングディフュージョン部9から出力された電圧を緩衝増幅して、信号電圧として出力する。
【0029】
なお、出力ゲート8、リセットゲート10、フローティングディフュージョン部9および出力トランジスタ12は、出力部を構成している。この出力部は、1箇所に限らず複数箇所に設けられていてもよい。
【0030】
図1の(b)および(c)に示すように、イオンセンサ100は、垂直転送部4と、N型基板21と、Pウェル22と、フォトダイオード部23と、保護膜24と、電極26と、イオン感応膜27と、遮光膜28と、絶縁膜29と、イオン感応膜30とを備えている。
【0031】
垂直転送部4およびフォトダイオード部23は、N型基板21(半導体基板)上に積層されたPウェル22(P型の拡散領域)の上部に間隔をおいて形成されている。垂直転送部4上には、第1ゲート電極2および第2ゲート電極3がそれぞれ形成されている。
【0032】
第1ゲート電極2には、電源ラインに接続される電極26が接合するように形成されている。また、第1ゲート電極2、第2ゲート電極3および電極26の上には、これらを覆うように、遮光膜28が形成されている。Pウェル22には、前述の垂直転送部4、加算部6、水平転送部7、出力ゲート8、フローティングディフュージョン部9、リセットゲート10およびリセットドレイン11は、N型拡散層として形成されている。
【0033】
電極26は、TiN、Wといった高融点金属膜またはそのシリサイドによって構成されている。これにより、高温熱処理が可能であるため、界面準位抑制ができ、ノイズが抑えられる。また、高融点金属膜またはそのシリサイドの抵抗が低いことにより信号遅延が減少するので、高速動作が可能となる。しかも、高融点金属膜またはそのシリサイドは、遮光性が高い材料であるので、N型基板21への光ノイズの侵入を防止するができる。
【0034】
なお、イオンセンサ100に含まれる電極26以外の電極や配線についても、電極26と同じ上記の材料で形成されていることが好ましい。
【0035】
電極26上には、電極26を覆うように遮光膜28が形成されている。遮光膜28は、検体の実体イメージを同時に必要とする場合や、明状態での測定が必要な場合に、ポリシリコン電極25が光の影響を受けないように遮光する。遮光膜28上には、遮光膜28を覆うように絶縁膜29が形成されている。
【0036】
一方、センシング部1上にはイオン感応膜27が形成されている。イオン感応膜27は、主に、イオンセンサ100を光電変換用のセンサとして用いる場合、N型基板21の表面における光の反射を抑えるために設けられている。したがって、イオンセンサ100を光電変換用のセンサとして使用せず、光反射を抑える必要がない場合、イオン感応膜27を省略してもよい。
【0037】
また、絶縁膜29およびイオン感応膜27の上には、これらを覆うようにイオン感応膜30が形成されている。イオン感応膜30は、特定のイオンに接触するとセンシング部1におけるイオン感応膜30近傍の電位をイオン濃度に応じて変化させるイオン感応性を有するだけでなく、下層の部分への水分の侵入を防ぐ耐水性膜としての機能をも有している。
【0038】
さらに、保護膜24は、イオン感応膜30のセンシング部を含めたチップ全域に形成され、大きな凹凸を無くし、後述する上層配線と下層配線との絶縁を行うとともに、上層配線の加工を容易にする役割がある。
【0039】
〈イオンセンサ100の製造〉
図3の(a)〜(e)は、イオンセンサ100の製造工程を示す断面図である。図3において、左側が受光領域5の一部の製造工程を示しており、右側が非受光領域101の一部の製造工程を示している。図4は、イオンセンサ100の1セル分の構造を示す断面図である。図5の(a)は図4におけるD−D部の濃度プロファイルを示す図であり、図5の(b)は図4におけるE−E部の濃度プロファイルを示す図である。
【0040】
まず、図3の(a)に示すように、受光領域5において、N型基板21上に形成されたPウェル22に、イオン注入およびフォトリソグラフィ法によってフォトダイオード部23と垂直転送部4とをそれぞれ形成する。フォトダイオード部23は、センシング部1を構成する部分となる。
【0041】
N型基板21から電子注入を行う場合には、N型基板21の電位を変えて注入を行う。このため、Pウェル22に形成されたフォトダイオード部23(センシング部1)以外のN型の領域(垂直転送部4、水平転送部7など)には電荷の注入が起きないように、Pウェル22における、フォトダイオード部23が形成された部分と、それ以外の部分とのドーパント濃度が異なっている。このドーパント濃度の相違は、図4に示す、N型基板21およびPウェル22の境界面の垂直方向に沿った部分で異なる。図5の(a)の濃度プロファイルにおいて、左側がN型のセンシング部1を表しており、真ん中がP型のPウェル22を表しており、右側がN型基板21を表している。また、図5の(b)の濃度プロファイルにおいて、左側がN型のポリシリコン電極25を表しており、真ん中がP型のPウェル22を表しており、右側がN型基板21を表している。
【0042】
図4に示すフォトダイオード部23におけるD−D部の濃度プロファイルでは、図5の(a)に示すように、P型領域(Pウェル22)のP型ピーク濃度Cp1を低くしている。これにより、N型基板21で生じた電荷は、センシング部1に移動しやすくなる。一方、図4に示す垂直転送部4におけるE−E部では、図5の(b)の濃度プロファイルに示すように、P型ピーク濃度Cp2をP型ピーク濃度Cp1に対して1桁以上高くしている。これにより、N型基板21で生じた電荷は、垂直転送部4に移動するのが困難になる。
【0043】
次に、図3の(b)に示すように、受光領域5において、垂直転送部4上にポリシリコン電極25を形成する。このポリシリコン電極25は、前述の第1ゲート電極2および第2ゲート電極3を構成する。一方、非受光領域101においては、Pウェル22上にポリシリコン電極25を形成する。
【0044】
次に、図3の(c)に示すように、受光領域5において、前述の各セルにおけるポリシリコン電極25に接合される電極26を形成する。この電極26は、イオンセンサ100の周辺に引き出されて電源ラインと接続される部分となる。また、電荷の読み出しを複数回するために、垂直転送部4の容量が、フォトダイオード部23の容量の読み出し回数分の電荷量以上の容量を確保できるように、フォトダイオード部23および垂直転送部4のそれぞれのイオン注入量を設定する。
【0045】
また、フォトダイオード部23上に1〜100nmの範囲の膜厚でイオン感応膜27を形成する。この感応膜27とフォトダイオード部23との絶縁性をより高めるために、感応膜27とフォトダイオード部23との間にシリコン酸化膜を形成してもよい。
【0046】
ここで、フォトダイオード部23においては、フォトダイオード部23の表面付近に、通常、ノイズ成分となる暗電流を低減するためBを浅く濃く形成する。ただし、Bが濃すぎると、イオン感応膜27の電位変化に対する感度が落ちる。そこで、本実施形態では、1E15ions/cm〜8E18ions/cmをBの表面濃度の望ましい範囲としている。
【0047】
一方、非受光領域101においても、ポリシリコン電極25に電極26を形成する。
【0048】
次に、図3の(d)に示すように、受光領域5および非受光領域101において、ポリシリコン電極25および電極26を覆うように遮光膜28を形成する。
【0049】
さらに、図3の(e)に示すように、受光領域5および非受光領域101において、遮光膜28上に絶縁膜29を形成した後に、イオン感応膜27および絶縁膜29を含む全域にイオン感応膜30を形成する。
【0050】
イオン感応膜27,30としては、シリコンナイトライド、アルミニウム酸化膜、タンタル酸化膜など、イオンが吸着するダングリングボンドを多数有し、しかもイオンが透過しない膜質および膜厚を有しておれば、特に上記膜厚に限定されるものではない。しかしながら、イオン感応膜27,30の膜厚を薄くするとN型基板21への電位変化が大きくなることから、感度向上につながるので、好ましい。シリコンナイトライドとしては、LP−SiN(Low Pressure Chemical Vapor Deposition Silicon Nitride)が好適に用いられる。
【0051】
また、非受光領域101において、金属配線31として例えばアルミニウムを形成した後、さらに金属配線31を覆うようにパッシベーション膜32を形成する。その後、受光領域5および非受光領域101において、下層の保護膜24を薬液にて除去し、フォトダイオード部23の上のイオン感応膜30を露出させる。この保護膜24は、図示しないアルミニウム配線を加工しやすくするために、下地を平坦化することを目的として設けられている。したがって、アルミニウム配線の形成前に、チップ全域に保護膜24を形成して平坦化してから、配線加工が行われる。ただし、保護膜24を形成したままでは、イオン感応膜27が埋め込まれてしまうので、イオン感応膜30を露出させるように、アルミニウム配線の形成後、保護膜24を除去する必要がある。
【0052】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図2および図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0053】
〈イオンセンサ100Aの構成〉
図2に示すように、本実施形態に係るイオンセンサ100Aも、実施形態1のイオンセンサ100と同様、受光領域5と、非受光領域101と、オプティカルブラック102とを備えている。ただし、イオンセンサ100Aは、イオンセンサ100と異なり、前述の遮光膜28を備えていない。暗状態で測定を行う場合、遮光の必要がないので、このような使用状況が想定される場合は、遮光膜28が不要となる。
【0054】
〈イオンセンサ100Aの製造〉
図6の(a)〜(d)は、イオンセンサ100Aの製造工程を示す断面図である。図6において、左側が受光領域5の一部の製造工程を示しており、右側が非受光領域101の一部の製造工程を示している。また、図6の(a)〜(d)では、便宜上、N型基板21の図示を省略し、図6の(d)では、保護膜24の図示を省略している。
【0055】
図6の(a)〜(c)に示す工程は、それぞれ、図3の(a)〜(c)に示す工程と同じであるので、ここではその説明を省略する。図6の(d)に示す工程では、遮光膜28の形成が省略されることを除いて、図3の(e)に示す工程における処理と同じを行う。
【0056】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、図1図4および図7図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態では、前述のイオンセンサ100,100Aの動作およびイオン濃度検出方法について説明する。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、実施形態1および2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0057】
図7は、イオンセンサ100,100Aの1セル分の構造を示す平面図である。図8の(a)はイオンセンサ100,100Aにおける電荷の読み出し動作を示すタイミングチャートであり、図8の(b)はイオンセンサ100,100Aにおける電荷の転送動作を示すタイミングチャートである。図9は、イオンセンサ100,100Aの各部におけるポテンシャルおよび電荷の状態の変化を示す図である。図10の(a)〜(c)は、イオンセンサ100,100Aの各部における水素イオンの有無に応じたポテンシャルおよび電荷の状態を示す図である。また、図10の(d)は、イオンセンサ100,100Aのセンシング部1における水素イオン量に対する電荷量の変化を示すグラフである。
【0058】
〈基本動作〉
図1の(a)および(b)に示すように、第1ゲート電極2にON電圧を印加することにより、各セルのセンシング部1に蓄積された電荷が、センシング部1に隣接する垂直転送部4に読み出される。次に、図1の(c)に示すように、第2ゲート電極3にON電圧を印加することにより、第1ゲート電極2の下の垂直転送部4に蓄積された電荷が、第2ゲート電極3の下の垂直転送部4に移動する。この動作を繰り返すことにより、電荷が水平転送部7まで移動する。
【0059】
水平転送部7において、垂直転送部4と同様にして、図示しない別のゲート電極によって電荷を移動させる。そして、最終的に、出力ゲート8、リセットゲート10、フローティングディフュージョン部9および出力トランジスタ12で構成される出力部で、電荷の電荷量が電圧として検出されて出力される。
【0060】
上記の動作においては、各セルのセンシング部1から垂直転送部4へ、電荷の読み出しを複数回行い、垂直転送部4では読み出された電荷を蓄積してから、垂直転送してもよい(第1工程)。これにより、出力される電圧のS/Nを向上させることができる。
【0061】
〈読み出しおよび転送の詳細〉
図7に示すように、1セル(図中一点鎖線にて示す部分)すなわち1つのセンシング部1当たり、前述の第1ゲート電極2および第2ゲート電極3の代わりに、4つの転送電極41〜44を備える構成について、電荷の読み出しおよび転送の動作について説明する。転送電極41〜44は、第1ゲート電極2および第2ゲート電極3と同様、ポリシリコン電極25(図3参照)として形成されている電極である。転送電極41〜44は、垂直転送部4上に並ぶように配置されており、1セルにおいて電荷の読み出しを行う転送電極41に駆動パルスφV1が与えられ、電荷の転送を行う3つの転送電極42〜44にそれぞれ駆動パルスφV2〜φV4が与えられる。
【0062】
電荷の読み出し動作を図8の(a)および図9を参照して説明する。図9において、各グラフの横軸に付記された「深さ」は、各セルの表面側からの距離である深さを表しており、横軸の右端はN型基板21の深さとなる。図9において、左側の各グラフは、図4に示す構造のフォトダイオード部23におけるD−D部のポテンシャルおよび電荷の状態を示し、中央の各グラフは、図4に示す構造のポリシリコン電極25におけるE−E部のポテンシャルおよび電荷の状態を示している。また、図9における右側の各グラフは、図4に示す構造のフォトダイオード部23と垂直転送部4との間の領域におけるF−F部のポテンシャルおよび電荷の状態を示している。
【0063】
まず、図8の(a)に示すように、タイミングTaは初期状態であり、この状態からタイミングTbに移行すると、N型基板21に電圧φOFD(0〜3V程度の電圧)が印加される。これにより、図9において矢印で示すように、初期のポテンシャルに応じた電荷がセンシング部1に蓄積されていく。
【0064】
続くタイミングTcでは、N型基板21への電圧印加が停止される。この状態では、図9に示すように、センシング部1に所定量の電荷Qが蓄積されている。その後のタイミングTdで、駆動パルスφV1が転送電極41に印加される。これにより、センシング部1と垂直転送部4との間の障壁が下がるので、電荷Qがセンシング部1から垂直転送部4に読み出される(移動する)。タイミングTeで、駆動パルスφV1の印加が停止されると、垂直転送部4との間の障壁が上がる。
【0065】
その後のタイミングTfでは、再びN型基板21に電圧が印加されることで、センシング部1に電荷Qが蓄積されていく。続く、タイミングTgで、N型基板21への電圧印加が停止されると、図9に示すように、センシング部1に所定量の電荷Qが蓄積されている。その後のタイミングThで、駆動パルスφV1が転送電極41に印加されると、センシング部1と垂直転送部4との間の障壁が下がることで、電荷Qがセンシング部1から垂直転送部4に読み出される。そして、タイミングTiでは、駆動パルスφV1の印加が停止されると、垂直転送部4との間の障壁が上がる。この状態では、垂直転送部4に、タイミングTeで蓄積された電荷Qと、さらにタイミングThで読み出された電荷Qとが加算されて蓄積される。
【0066】
続いて、電荷の転送動作を図8の(b)を参照して説明する。図8の(b)においてφH1およびφH2は、水平転送部7に与える駆動パルスを表し、φRはリセットゲート10に与えられるリセットパルスを表している。水平転送部7においては、隣接する2つの転送電極(図示せず)について、一方に駆動パルスφH1が与えられ,他方に駆動パルスφH2が与えられる。
【0067】
まず、N型基板21に電圧φOFDが印加された後、電圧の印加が停止されると、駆動パルスφV1〜φV4のON・OFF状態が変化することにより、電荷の転送が行われる。具体的には、駆動パルスφV1,φV2がON状態(M)となり、駆動パルスφV3,φV4がOFF状態(L)となる第1期間、駆動パルスφV1〜φV3がON状態となり、駆動パルスφV4がOFF状態となる第2期間、駆動パルスφV2,φV3がON状態となり、駆動パルスφV1,φV4がOFF状態となる第3期間、および駆動パルスφV1,φV2がON状態となり、駆動パルスφV3,φV4がOFF状態となる第4期間を経て、電荷が垂直転送部4を転送されていく。この垂直転送の動作は従来のCCDで行われる垂直転送の動作と同様である。
【0068】
一方、水平転送部7においては、駆動パルスφH1,φH2が交互にON状態とOFF状態とを繰り返すことにより、駆動パルスφH1,φH2がそれぞれ印加される転送電極間での電位差が変化することで、電荷が転送されていく。この水平転送の動作も従来のCCDで行われる垂直転送の動作と同様である。
【0069】
〈イオン量に応じた電荷の蓄積〉
検体中のHの濃度を検出する場合、イオンセンサ100,100Aは、検体中のpHに応じて変化するHの量を検出する。センシング部1のポテンシャルは、Hの量が多くなるのに応じて深くなり、蓄積電荷量がそれに比例して増大する。そこで、初期の蓄積電荷量を記憶しておき、蓄積電荷量の検出値と記憶値との差ΔVを算出する。差ΔVがΔpHに相当することから、pHを検出することができる。上記の初期の蓄積電荷量の記憶、および差ΔVの算出は、例えば、イオンセンサ100,100Aを備えた検出装置に設けられている処理部によって行われる。以下に、イオン量に応じた電荷の蓄積について説明する。
【0070】
センシング部1上のイオン感応膜30の表面にHが無い初期状態の場合、図10の(a)に示すように、センシング部1には、初期の蓄積量で電荷Qが蓄積されている。このときの電荷量を図8および図9に示す前述の手順によって測定し、これにより得られた電圧(初期電圧)を記憶しておく(第2工程)。
【0071】
次に、センシング部1上のイオン感応膜30の表面に少しのHが接触した状態(検出状態)では、センシング部1の表面付近の電位がHの影響を受けて変化することにより、図10の(b)に示すように、センシング部1のポテンシャルが深くなる。この状態で、N型基板21への電圧印加により電荷を注入すると、センシング部1に蓄積される電荷量が増大する。このときの電荷量を前述の手順によって測定する(第2工程)。
【0072】
また、センシング部1上のイオン感応膜30に接触するHがさらに増加した状態では、センシング部1の表面付近の電位がさらに変化することにより、図10の(c)に示すように、センシング部1のポテンシャルがより深くなる。この状態で、N型基板21への電圧印加により電荷を注入すると、センシング部1に蓄積される電荷量がさらに増大する。このときの電荷量を前述の手順によって測定する(第3工程)。
【0073】
そして、図10の(b)または(c)に示すいずれの場合も、図10の(d)に示すように、測定された電荷量に応じた電圧(検出電圧)と、初期の電荷量(初期値)に応じた記憶された電圧(初期電圧)との差ΔVを算出することにより、Hの量(ΔpH)をイオン濃度として測定することができる(第4工程)。
【0074】
〈実施形態の効果〉
本実施形態では、10um以下の高集積セルを有するイメージセンサ構造およびシステムをベースにして、N型基板21に電圧を印加すると、センシング部1にのみ電荷が注入されるように、Pウェル22に形成された各部のドーパントの濃度プロファイルが、最適化されている。これにより、センサ表面付近に電荷注入用の電極を新たに配置する必要が無くなり、センシング部1の面積を拡張することができるとともに、センシング部1における僅かな電位変化を検知することができる。また、少なくともセンシング部1上のイオン感応膜30の部分を露出するように、イオンセンサ100,100Aが保護膜24により覆われている。これにより、イオンを接触させる領域以外の配線部などに耐薬品性をもたせた構造を提供することができる。
【0075】
本実施形態によれば、10um以下の解像度を有する高精度な2次元のイオンセンサを提供することができる。これにより、iPS(induced Pluripotent Stem)細胞などの微細な1つの細胞内の局所的な活動、性質に関する知見が得られる。また、30億個ある人のDNAのうち、病気に関係するDNAが5億個あると言われているが、7mm□程度のチップを用いて2000万セルで同時測定が可能となり、短時間で塩基配列の解析が完了することができる。
【0076】
しかも、電荷供給部や電荷注入調節部を必要とせずに、センシング部の容量測定を正確に行えるため、より微細なセルが形成できる。
【0077】
なお、本実施形態においては、N型基板21に電圧を印加することにより、センシング部1に電荷を注入しているので、イオンセンサ100,100Aをイメージセンサとして利用しない場合は、センシング部1が光電変換機能を有していなくてもよい。この場合は、センシング部1は、電荷を蓄積できればよい。
【0078】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、図1および図7図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、実施形態1〜3における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0079】
前述の実施形態1〜3では、センシング部1に電荷を注入するために、N型基板21に電圧を印加する構成について説明した。これに対し、本実施形態では、センシング部1に光を照射することで、センシング部1に電荷を蓄積させる構成について説明する。
【0080】
図1(a)〜(c)に示す構成では、センシング部1がフォトダイオードによって形成されている。これにより、センシング部1に対して光を照射することで、センシング部1に電荷を生じさせることができる。そして、図9に示すN型基板21から電荷を注入する場合と同様、生じた電荷をセンシング部1に蓄積させることができる。センシング部1への光照射は、図8の(a)に示すタイミングTc,TgでLEDなどの一定の光量を有する光を用いて行われる。
【0081】
蓄積された電荷は、実施形態3と同様に、図7に示す構成によって、読み出された後、図8の(a)および(b)に示すタイミングで転送される。そして、転送された電荷は、図10の(d)に示すようにして検出される。
【0082】
本実施形態では、光照射によってセンシング部1に電荷が蓄積されるので、実施形態3と同様、電荷を注入するための手段をセルに設ける必要がない。それゆえ、センシング部1の面積を拡張することができる。また、保護膜24により、イオンを接触させる領域以外の配線部などに耐薬品性をもたせた構造を提供することができる。
【0083】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るイオン濃度センサは、半導体基板(N型基板21)と、イオン濃度の検出に用いられる電荷を蓄積するセンシング部1と、前記センシング部1に蓄積された電荷を転送する電荷転送部(垂直転送部4,水平転送部7)と、転送された電荷の電荷量を検出する電荷検出部(フローティングディフュージョン部9)と、前記イオン濃度に応じて前記センシング部1の蓄積電荷量を変化させるイオン感応膜30とを備え、前記センシング部1、前記電荷転送部および前記電荷検出部が、前記半導体基板上の、前記半導体基板と逆型の拡散領域(Pウェル22)に形成され、前記半導体基板に電圧が印加された状態で前記センシング部1のみに電荷が注入されるように、前記拡散領域における前記センシング部1が形成される部分と当該部分以外の部分とのドーパント濃度が異なる。
【0084】
上記の構成によれば、半導体基板に電圧が印加されると、センシング部1のみに電荷が注入される。この状態で、イオン感応膜30にイオンが接触すると、イオン濃度に応じてセンシング部1の蓄積電荷量が変化するので、その蓄積電荷量を電荷検出部によって検出することにより、イオン濃度を特定することができる。このように、電荷の注入を半導体基板への電圧の印加によって行うので、センシング部1に電荷を供給するための電極などをセンサ表面付近に設ける必要が無くなる。したがって、イオン濃度センサにおけるセンシング部の面積を拡張することができる。
【0085】
本発明の態様2に係るイオン濃度センサは、検体のイオン濃度の検出に用いられる電荷を蓄積するセンシング部1と、前記センシング部1に蓄積された電荷を転送する電荷転送部(垂直転送部4,水平転送部7)と、転送された電荷の電荷量を検出する電荷検出部(フローティングディフュージョン部9)と、前記イオン濃度に応じてセンシング部の蓄積電荷量を変化させるイオン感応膜30と備え、前記センシング部1が光電変換により電荷を生じる。
【0086】
上記の構成によれば、センシング部1は、照射された光を電気に変換することにより、電荷を発生する。この状態で、イオン感応膜30にイオンが接触すると、イオン濃度に応じてセンシング部1の蓄積電荷量が変化するので、その蓄積電荷量を電荷検出部によって検出することにより、イオン濃度を特定することができる。このように、電荷の注入を半導体基板への電圧の印加によって行うので、センシング部1に電荷を供給するための電極などをセンサ表面付近に設ける必要が無くなる。したがって、イオン濃度センサにおけるセンシング部の面積を拡張することができる。
【0087】
本発明の態様3に係るイオン濃度センサは、上記態様1または2において、前記イオン感応膜30が、前記イオン濃度に応じて前記センシング部1のポテンシャルの深さを変化させてもよい。
【0088】
上記の構成によれば、イオン濃度に応じてセンシング部1のポテンシャルの深さが変化するので、イオン濃度に応じた量の電荷がセンシング部1に蓄積される。
【0089】
本発明の態様4に係るイオン濃度センサは、上記態様1から3において、前記電荷転送部による電荷転送を制御するための転送電極(第1ゲート電極2,第2ゲート電極3)をさらに備え、少なくとも前記転送電極および前記転送電極に接続される配線が、高融点金属膜またはそのシリサイドによって構成されていてもよい。
【0090】
上記の構成によれば、高温熱処理が可能であるため、界面準位抑制ができ、ノイズが抑えられる。また、高融点金属膜またはそのシリサイドの抵抗が低いことにより信号遅延が減少するので、高速動作が可能となる。しかも、高融点金属膜またはそのシリサイドは、遮光性が高い材料であるので、N型基板21への光ノイズの侵入を防止するができる。
【0091】
本発明の態様5に係るイオン濃度センサは、上記態様1から4において、前記イオン濃度センサを覆う保護膜をさらに備え、前記保護膜が、前記イオン感応膜30の前記センシング部1上に形成された部分を少なくとも露出させるように形成されていてもよい。
【0092】
上記の構成によれば、イオンを接触させる領域以外の配線部などに耐薬品性をもたせた構造を提供することができる。
【0093】
本発明の態様6に係るイオン濃度検出方法は、さらに前記電荷転送部が、前記センシング部1に蓄積された電荷を読み出して垂直方向に転送する垂直転送部4と、当該垂直転送部4から転送された電荷を前記電荷検出部に転送する水平転送部7とを有している、態様1から5のいずれか1つのイオン濃度センサを用いてイオン濃度を検出するイオン濃度検出方法であって、前記センシング部1に蓄積された電荷を前記垂直転送部4に読み出す動作を複数回行うことで前記垂直転送部に蓄積された電荷を前記垂直転送部4によって前記水平転送部7に転送する第1工程と、イオンが前記イオン感応膜30に接していない初期状態における前記蓄積電荷量に応じた初期電圧を前記電荷検出部によって得る第2工程と、前記イオンが前記イオン感応膜30に接している検出状態において前記蓄積電荷量に応じた検出電圧を前記電荷検出部によって得る第3工程と、前記検出電圧と初期電圧との差を算出する第4工程とを含んでいる。
【0094】
上の構成によれば、第2工程で得られた初期電圧と第3工程で得られた検出電圧との差を第4工程で得ることにより、その差電圧をイオン濃度として検出することができる。また、第1工程で、複数回の垂直転送部4への電荷の読み出しによって垂直転送部4に蓄積された電荷を転送することにより、多くの電荷を電荷検出部に転送することができる。これにより、電荷検出部から出力される検出電圧のS/Nを向上させることができる。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、DNAの塩基配列解析、iPS細胞などの細胞の特質の分析、分類または判別、インフルエンザウイルスなどの判定などに好適利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 センシング部
4 垂直転送部(電荷転送部)
7 水平転送部(電荷転送部)
9 フローティングディフュージョン部(電荷検出部)
21 N型基板(半導体基板)
22 Pウェル(拡散領域)
23 フォトダイオード部(センシング部)
24 保護膜
30 イオン感応膜
100 イオンセンサ(イオン濃度センサ)
100A イオンセンサ(イオン濃度センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10