特許第6228099号(P6228099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228099
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】鳥類の観測方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/04 20060101AFI20171030BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20171030BHJP
【FI】
   G01S13/04
   G06T7/60 110
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-225676(P2014-225676)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-90409(P2016-90409A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591146239
【氏名又は名称】いであ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】田悟 和巳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘章
(72)【発明者】
【氏名】益子 理
【審査官】 請園 信博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−008021(JP,A)
【文献】 特開2013−196225(JP,A)
【文献】 特開2013−206034(JP,A)
【文献】 特開2008−096103(JP,A)
【文献】 特開2003−216949(JP,A)
【文献】 特開2011−138310(JP,A)
【文献】 特開2012−108050(JP,A)
【文献】 河田真人、三田長久、的場大記,画像処理によるレーダ画像中の野鳥の追跡,電子情報通信学会2010年総合大会講演論文集 情報・システム2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2010年 3月 2日,p. 206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 − 7/42
13/00 − 13/95
G06T 1/00 − 1/40
3/00 − 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部から発射されて鳥類に当たって反射された電波を捕捉することにより、該鳥類を観測するようにした鳥類の観測方法において、
前記レーダーによる1回転分の走査画面を静止画像として抽出する静止画像抽出ステップと、
前記抽出された静止画像を二値化してノイズを除去するノイズ除去ステップと、
前記ノイズを除去した前記静止画像上のレーダー反応をポリゴン化して面積を算定するとともに前記ポリゴンの重心を算定する面積・重心算定ステップと、
前記レーダーが1回転する毎に前記静止画像抽出ステップから前記ポリゴンの面積・重心算定ステップまでの各処理を行い、前記各ポリゴンにおける重心の移動軌跡を描く移動軌跡生成ステップと、
その際に前記移動軌跡生成ステップで描かれた前記ポリゴンの重心の移動軌跡がt回転目で途切れている場合に、その前のt−1回転目の移動ベクトルを延長して移動軌跡を補間する移動軌跡補間ステップと、
前記移動軌跡生成ステップで描かれた移動軌跡の数に1レーダー反応当たりの平均的な個体数を乗じ、前記鳥類の個体数を算定する個体数算定ステップと、
を経て前記鳥類の数を算定し、
前記面積・重心算定ステップは、低閾値で二値化されたポリゴンを対象に、該ポリゴンの面積aLが所定の面積Amin、Amaxに対して、Amin≦面積aL≦Amaxを満たすポリゴンの重心を抽出し、さらに所定の面積Aに対してaL≧Aを満たす場合は該低閾値で二値化されたポリゴンの重心を高閾値で二値化されたポリゴンから抽出した重心に補正する、ことを特徴とする鳥類の観測方法。
【請求項2】
前記静止画像抽出ステップは、前記レーダーの1回転分の走査画面をRGBカラー化された静止画像として抽出し、その色情報を参照してレーダー反応以外を静止画像から除去し、そのRGBカラー化された静止画像をグレースケール化した静止画像に変換する、ことを特徴とする請求項1に記載の鳥類の観測方法。
【請求項3】
前記ノイズ除去ステップは、グレースケール化した静止画像を低、高それぞれ異なる閾値で各々二値化し、低閾値で二値化された静止画像及び高閾値で二値化された静止画像についてモルフォロジー演算によりそれぞれノイズ除去を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の鳥類の観測方法。
【請求項4】
前記移動軌跡補間ステップは、前記移動軌跡生成ステップで描かれた前記ポリゴンの重心の移動軌跡がt回転目で途切れている場合に、その前のt−1回転目の移動ベクトルを延長して移動軌跡を補間する、ことを特徴とする請求項1に記載の鳥類の観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鳥類の観測方法に関するものであり、特に、レーダーの走査画面に現れる鳥類の個体数や群れ数、及び飛行軌跡の観測を可能にし得る鳥類の観測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鳥類は、個体の生息や種の維持のため、巣やねぐらと採餌地との間を往来するばかりでなく、繁殖地と越冬地との間の長い距離を定期的に渡る等、飛翔行動に大きな生理生態的特徴を持つ。このため、環境アセスメント等において鳥類の生息保全を検討する際には、飛翔行動状況の把握が必要になるケースが多い。その理由として、送電線等の高くて視認性が悪い構造物や発電用風車の設置、飛行場の建設等が、バードストライクを引き起こしたり、渡りを阻害したりすることがあり、そのような鳥類への影響の検討に際しては、事業計画空間と鳥類飛翔空間との重なりの有無や程度を確認することが求められる。
【0003】
例えば飛行場の建設予定地周辺等の比較的狭い空間における鳥類の飛翔行動を観測する場合、従来は、測風経緯儀又はレーザー測遠システムによる観測が行われていた。測風経緯儀とは、目標の方位角及び鉛直角を2地点から同時に計測し、その交点を目標の位置として求めるものである。また、レーザー測遠システムは、1地点から目標にレーザー光を当て、目標の方位角、鉛直角、及び、斜距離を計測し、目標の位置を求めるものである。しかしながら、測風経緯儀は、2地点からの視準線が交差した場合にのみ観測値が得られ、レーザー測遠システムは、目標である鳥にレーザー光が当たった場合にのみ観測値が得られる。したがって、いずれも小形で速く飛んだり複雑な軌跡で飛ぶものの観測は困難で、観測できない個体が多数生じたり、鳥が見えない夜間や高高度域の観測はできないという問題があった。
【0004】
一方、大陸間の渡りなど広範囲の鳥類の飛翔行動を研究するために、気象用ドップラーレーダーを用いて、レーダーから発射され鳥類に当たって跳ね返ってきた電波を捉えることにより、目視観察など通常の方法では到底把握することができない広い範囲や、夜間における鳥類の動きを観測する手法もある。しかしながら、気象用ドップラーレーダーは、観測範囲は広いものの狭い範囲の分解能が低く、また大型で運搬が困難であるとともに非常に高価であるため、必要な場所で手軽に観測に用いることができないという問題があった。
【0005】
そこで、船舶用レーダーを使用し、その船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部から発射されて鳥類等の飛翔性動物に当たって反射された電波を捕捉することにより、該飛翔性動物を観測するようにした鳥類等の飛翔性動物の観測方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。この観測方法では、船舶用レーダーをその空中線部を鉛直面に沿って回転させて用いるので、夜間や高高度域であっても鳥類等の飛翔性動物を高精度で観測することができる。また、船舶用レーダーは比較的小型で安価であるので、必要な場所に運搬して手軽に観測を行うことができるなどの効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−96103号公報。
【非特許文献1】Sethi, K.I. and R. Jain. Finding trajectories of feature points in a monocular image sequence. IEEE Trans. Pattern Analysis and Machine Intelligence, 9, 56-73, 1987.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしなから、特許文献1で知られる船舶用レーダーを使用した鳥類等の飛翔性動物の観測方法は、鳥類が群れをなして飛行している場合や飛行軌跡が複雑な場合、夜間や高高度にあってはその鳥類の数をより正確に測定することが難しいという問題点があった。
【0008】
そこで、夜間や高高度で群れをなし、また複雑な飛行軌跡を描いて鳥類が飛行している場合でも、その鳥類の数をより正確に測定することができる鳥類の観測方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部から発射されて鳥類に当たって反射された電波を捕捉することにより、該鳥類を観測するようにした鳥類の観測方法において、前記レーダーによる1回転分の走査画面を静止画像として抽出する静止画像抽出ステップと、前記抽出された静止画像を二値化してノイズを除去するノイズ除去ステップと、前記ノイズを除去した前記静止画像上のレーダー反応をポリゴン化して面積を算定するとともに前記ポリゴンの重心を算定する面積・重心算定ステップと、前記レーダーが1回転する毎に前記静止画像抽出ステップから前記ポリゴンの面積・重心算定ステップまでの各処理を行い、前記各ポリゴンにおける重心の移動軌跡を描く移動軌跡生成ステップと、その際に前記移動軌跡生成ステップで描かれた前記ポリゴンの重心の移動軌跡がt回転目で途切れている場合に、その前のt−1回転目の移動ベクトルを延長して移動軌跡を補間する移動軌跡補間ステップと、前記移動軌跡生成ステップで描かれた移動軌跡の数に1レーダー反応当たりの平均的な個体数を乗じ、前記鳥類の個体数を算定する個体数算定ステップと、を経て前記鳥類の数を算定し、前記面積・重心算定ステップは、低閾値で二値化されたポリゴンを対象に、該ポリゴンの面積aLが所定の面積Amin、Amaxに対して、Amin≦面積aL≦Amaxを満たすポリゴンの重心を抽出し、さらに所定の面積Aに対してaL≧Aを満たす場合は該低閾値で二値化されたポリゴンの重心を高閾値で二値化されたポリゴンから抽出した重心に補正する、ことを特徴とする。
【0010】
この方法によれば、比較的安価で小型の船舶用レーダーを必要な場所に運搬して、船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させることにより、一回転で全方位を走査することができる。また、その際、走査画面より抽出した静止画像のノイズを除去した後、レーダー反応をポリゴン(多角形)化し、該ポリゴンの面積と重心を算定して、空中線部が一回転する度に変わる該重心の位置を滑らかに結ぶことにより該ポリゴンの移動軌跡を描くことができる。また、その移動軌跡が途切れている場合には、その前の移動ベクトルを延長して移動軌跡を補間し、該移動軌跡の断片化を軽減しポリゴンの重心の位置を更に滑らかに結び、精度を高めることができる。そして、ここで描かれた移動軌跡の数に1レーダー反応当たりの平均的な個体数を乗じ、鳥類の個体数を算定することにより、例え、夜間や高高度で群れをなし、また複雑な飛行軌跡を描いて鳥類が飛行している場合であっても、その鳥類の数をより正確に測定することができる。さらに、低閾値で二値化されたポリゴンの重心を高閾値で二値化されたポリゴンから抽出した重心に補正することにより、精度が高まり、その鳥類の数を更に正確に測定することができる。なお、ここでの鳥類とは、小形から大形の鳥、コウモリ類、及び小形の鳥以上の表面積を持つ飛翔性動物を含むものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の方法において、前記静止画像抽出ステップは、前記レーダーの1回転分の走査画面をRGBカラー化された静止画像として抽出し、その色情報を参照してレーダー反応以外を静止画像から除去し、そのRGBカラー化された静止画像をグレースケール化した静止画像に変換する、ことを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、レーダーの1回転分の走査画面をRGBカラー化された静止画像として抽出し、その色情報を参照してレーダー反応以外を静止画像から除去し、そのRGBカラー化された静止画像をグレースケール化し静止画像に変換することにより、レーダー反応のみに注目できる。そして、精度を更に向上させ、その鳥類の数をより正確に測定することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記ノイズ除去ステップは、グレースケール化した静止画像を低、高それぞれ異なる閾値で各々二値化し、低閾値で二値化された静止画像及び高閾値で二値化された静止画像についてモルフォロジー演算によりそれぞれノイズ除去を行う、ことを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、グレースケール化した静止画像を、低、高それぞれ異なる閾値で各々二値化し、更に前記モルフォロジー演算によりそれぞれ低閾値でのノイズ除去と高閾値でのノイズ除去を行うことにより、レーダー反応の強弱を反映させてポリゴンを識別し易くする。そして、精度を更に向上させて、その鳥類の数をより正確に測定することができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記移動軌跡補間ステップは、前記移動軌跡生成ステップで描かれた前記ポリゴンの重心の移動軌跡がt回転目で途切れている場合に、その前のt−1回転目に得られた移動ベクトルを延長して移動軌跡を補間する、ことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、移動軌跡を描く際、ポリゴンの重心の移動軌跡が途切れている場合に、その前の移動ベクトルを延長して補間し、その移動軌跡の断片化を軽減しポリゴンの重心の位置を滑らかに結ぶことにより、精度を更に高めて、その鳥類の数をより正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による鳥類の観測方法によれば、比較的安価で小型の、船舶用レーダーを必要な場所に運搬して、その運搬した場所で、船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させることにより、夜間や高高度で群れをなし、また複雑な飛行軌跡を描いて飛行している鳥類の数をより正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法を実施するための観測装置のブロック構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法を概念的に説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法における処理手順の一例を示す解析フローである。
図4】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、指示部の解析画面のハードコピーの一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、(a)は上記ハードコピーのレーダー反応のみを抽出した一例を示す図、(b)はグレースケール化した一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、(a)はレーダー反応を高閾値で二値化した後における静止画像の一例を示す図、(b)は前記静止画像をモルフォロジー演算によって微小なノイズを除去した静止画像の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、(a)はレーダー反応を低閾値で二値化した静止画像の一例を示す図、(b)は前記静止画像をモルフォロジー演算によって微小なノイズを除去した静止画像の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、(a)は静止画像上のレーダー反応をポリゴン化した一例を示す図、(b)はポリゴンの重心を抽出する一例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、ポリゴンの軌跡を作成するハードコピーの一例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、(a)は低閾値で二値化したポリゴンの一例、(b)は高閾値で二値化したポリゴンの一例を各々示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、移動軌跡を作成する一例を説明する図である。
図12】本発明の一実施形態に係る鳥類の観測方法の解析イメージ図で、途切れた移動軌跡を補間する一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は夜間や高高度で群れをなし、また複雑な飛行軌跡を描いて鳥類が飛行している場合でも、その鳥類の数をより正確に測定することができる鳥類の観測方法を提供するという目的を達成するために、船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部から発射されて鳥類に当たって反射された電波を捕捉することにより、該鳥類を観測するようにした鳥類の観測方法において、前記レーダーによる1回転分の走査画面を静止画像として抽出する静止画像抽出ステップと、前記抽出された静止画像を二値化してノイズを除去するノイズ除去ステップと、前記ノイズを除去した前記静止画像をポリゴン化して面積を算定するとともに前記ポリゴンの重心を算定する面積・重心算定ステップと、前記レーダーが1回転する度に前記静止画像抽出ステップから前記ポリゴンの面積・重心算定ステップまでの各処理を行い、前記各ポリゴンにおける重心の移動軌跡を描く移動軌跡生成ステップと、その際に前記移動軌跡生成ステップで描かれた前記ポリゴンの重心の移動軌跡がt回転目で途切れている場合に、その前のt−1回転目の移動ベクトルを延長して移動軌跡を補間する移動軌跡補間ステップと、前記移動軌跡生成ステップで描かれた移動軌跡の数に1レーダー反応当たりの平均的な個体数を乗じ、前記鳥類の個体数を算定する個体数算定ステップと、を経て前記鳥類の数を算定し、前記面積・重心算定ステップは、低閾値で二値化されたポリゴンを対象に、該ポリゴンの面積aLが所定の面積Amin、Amaxに対して、Amin≦面積aL≦Amaxを満たすポリゴンの重心を抽出し、さらに所定の面積Aに対してaL≧Aを満たす場合は該低閾値で二値化されたポリゴンの重心を高閾値で二値化されたポリゴンから抽出した重心に補正する、ようにして実現した。
【0022】
以下、本発明の実施形態による鳥類の観測方法の好適な一実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
図1及び図2は本発明に係る鳥類の観測方法を概念的に説明するための図で、図1はその観測装置のブロック構成図、図2はその観測説明図である。
【0024】
図1において、観測装置11は、鳥類、すなわち小形から大形の鳥、コウモリ類、及び小形の鳥以上の表面積を持つ飛翔性動物(以下、これらを総称して「鳥類」という)を観測するためのものであり、船舶用レーダー12と、GPS受信機13と、軌跡解析用プロッター14と、プリンター15と、録画装置16と、電源17とを備えている。
【0025】
一般に船舶用レーダー12とは、衝突防止及び自船位置の測定のために船舶に設置され、他船、島、陸岸、航路標識等の物標を検出するためのパルスレーダーであり、電波法で定められた、3GHz帯〜9GHz帯内の指定周波数帯を用いたパルスレーダーを使用する。
【0026】
さらに、前記船舶用レーダー12は、空中線部21と指示部22とを備えている。空中線部21は、長い箱型の形状をなし、中央部に接続されたモーターにより回転しながら、長手方向に沿った縁部からパルス波を発射するのと同時に、飛翔する鳥類からの反射波を受信し、受信信号として指示部22に出力する。指示部22は、空中線部21から入力された受信信号を反射波の処理回路により処理して物標位置を演算し、図2に示すように、空中線部21からの電波で捕捉された物標の位置を表示部22aに表示する。
【0027】
前記GPS受信機13は、受信したGPS衛星からの信号に基づいて自機位置の経度緯度、標高を演算し、その情報を軌跡解析用プロッター14に出力するものである。
【0028】
前記軌跡解析用プロッター14は、例えばパーソナルコンピュータであって、情報を決められた手順に従って処理する解析アルゴリズムを実施するためのプログラムが内蔵され、またプログラムで処理されたデータを読み書き可能に保持しておくためのメモリ23を有している。その軌跡解析用プロッター14は、船舶用レーダー12から入力された情報と、GPS受信機13から入力された情報とに基づいて、捕捉された鳥類の位置及び個体数、群れ数、飛行軌跡の空間座標を演算して解析するとともに、その解析結果を出力して判りやすく表示部22aに表示するものである。
【0029】
前記プリンター15は、軌跡解析用プロッター14からのデータに基づいて指示部22の表示部22aに表示される画像等を印刷するためのカラープリンターである。
【0030】
前記録画装置16は、軌跡解析用プロッター14からのデータに基づいて指示部22の表示部22aに表示される画像等を録画するためのレコーダーである。
【0031】
前記電源17は、上記の各機器の電源となるもので、発電機と該発電機で生成された電力を蓄積しておくためのバッテリーを備えている。
【0032】
また、観測装置11は、図2に示すように、空中線部21を鉛直面に沿うように支持する空中線部架台18を備えている。
【0033】
図3は、軌跡解析用プロッター14が、船舶用レーダー12から入力された情報とGPS受信機13から入力された情報とに基づき、捕捉された鳥類の位置及び個体数、群れ数、飛行軌跡の空間座標をメモリ23内のプログラムに従って演算して解析する手順の一例を説明する解析フローである。また、図4図9は指示部22の解析画面のハードコピーの一例を示すものである。
【0034】
そこで、図1及び図2示した鳥類の観測装置11を用いて捕捉された鳥類の位置及び個体数、群れ数、飛行軌跡の空間座標を、メモリ23内のプログラムに従って解析する方法の一例を、図1図9と共に以下説明する。
【0035】
まず、観測装置11の概略動作を説明すると、本実施形態の観測方法では、観測装置11の船舶用レーダー12を、観測対象範囲、例えば風力発電機を設置する範囲やその近傍に設置して行う。通常、船舶用レーダー12は、空中線部21を水平面に沿って回転させ、船舶用レーダー12から物標までの距離と方位角を計測し、物標の平面的な位置を観測する。しかし、本実施形態の観測方法では、空中線部21を、空中線架台18に支持させて、水平面に対して垂直になるように立ててから、図2の一点鎖線矢印に示すように回転させる。すなわち、空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、空中線部21から所定のビーム幅で電波を発射する。
【0036】
すると、空中線部21は、その空中線部21の設置地点を中心とする一定幅の探査断面を空域に連続的に作り出し、その断面内を飛翔する鳥類等からの反射した電波を受信して、指示部22に表示する。
【0037】
そして、ここでの船舶用レーダー12は、空中線部21を鉛直面に沿って回転させることにより、一回転で全方位を操作し、空中線部21の設定地点を中心とする一定幅の空域に探査断面を連続的に作り出す。その際に指示部22の走査画面(解析画面)上に現われるレーダー反応を重心で代表し、回転の度に変わるその位置を滑らかに結ぶことによって軌跡を作成する。また、レーダー反応が微弱で一時的に位置を見失う場合に備えた、軌跡の直前の状況から位置を予測し補間する方法と、レーダー反応の強弱を考慮した重心の補正方法を組み合わせる。なお、滑らかさの評価には次式(a)に示すパスコヒーレンス関数を用いる(例えば、非特許文献1参照)。この関数は重心間が滑らかに繋がるほど0に近づく。角度項、速度項の重みは状況に応じて調節する。
【0038】
【数1】
【0039】
更に、上記観測装置11を使用して鳥類の数を算定する解析アルゴリズムを、図3に示す解析フロー(S101〜S316)と共に、ステップ(1)〜(14)の順に従って、図4図9に示す解析イメージ図を参照しつつ、また、必要に応じて図10図12の模式図を加えて説明する。
【0040】
ここでの解析アルゴリズムは、大別すると、静止画像抽出ステップ(1)、ノイズ除去ステップ及び面積・重心算定ステップ(2)〜(5)、移動軌跡補間ステップ(6)、移動軌跡生成ステップ(7)〜(13)、個体数算定ステップ(14)からなる。
【0041】
[静止画像抽出ステップ]
ステップ(1):船舶用レーダー12の空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部21から発射されて鳥類に当たって反射された電波を捕捉することにより、t+1回転目の走査画面を静止画像として抽出する(S101)。図4は、その抽出された静止画像、すなわち指示部22の解析画面のハードコピーの一例を示す。この静止画像は、RGBカラー化されて抽出される。
【0042】
ステップ(2):上記静止画像の色情報を参照し、図5(a)に示すようにレーダー反応以外を静止画像から除去し(S102)、更に図5(b)に示すようにそのRGBカラー化された静止画像をグレースケール化した静止画像に変換する(S103)。
【0043】
[ノイズ除去ステップ及び面積・重心算定ステップ]
ステップ(3):上記グレースケール化した静止画像を図6(a)に示すように高閾値KHにて二値化し、次いで図6(b)に示すようにモルフォロジー演算(収縮N回・膨張N回)によって微小なノイズを除去する。また、その後、図8(a)に示すように上記静止画像をポリゴン(多角形)化し、図8(b)に示すように、そのポリゴンPHの重心CHを抽出し、そのポリゴンPHの重心CHをデータ化する(S109〜S115)。
【0044】
ステップ(4):上記ステップ(3)と同時に、グレースケール化した静止画像を図7(a)に示すように低閾値KLにて二値化し、次いで図7(b)に示すようにモルフォロジー演算(収縮N回・膨張N回)によって微小なノイズを除去する。また、その後、ステップ(3)での高閾値KHの場合と同様に、図8(a)に示すようにポリゴン化し、そのポリゴンPLの面積aLを算定する (S104〜S108)。
【0045】
すなわち、グレースケール化した静止画像を上記ステップ(3)と(4)において、高閾値KHと低閾値KLでそれぞれ二値化すると、図10の(a)に低閾値で二値化されたポリゴンPL、(b)に高閾値で二値化されたポリゴンPHをそれぞれ示すように、グレースケール化した静止画像にレーダー反応の強弱を反映させて、ポリゴンを細かく識別し、これによって精度の向上を図ることができる。図10の(a)では低閾値で二値化された1個のポリゴンPLが抽出されている。しかし、低閾値で二値化された段階では単一のポリゴンとして対象とできるかどうかが不明確であるが、更に高閾値で二値化することにより、図11の(b)に示すように2個のポリゴンPHに変化し対象とするポリゴンが明確になる。
【0046】
ステップ(5):ステップ(4)のポリゴンPLを対象に面積aLが所定の面積Amin、Amaxに対してAmin≦aL≦Amaxを満たすポリゴンPLの重心CLを抽出する。そのうち、所定の面積Aに対してaL≧Aも満たす場合は、ステップ(3)のポリゴンPHから抽出した重心CHに、ポリゴンの重心Cを補正する(S117〜S121)。
【0047】
[移動軌跡補間ステップ]
ステップ(6):図12に示すように、対象i(本実施例では各ポリゴン)、すなわち各ポリゴンの軌跡M(i)がt−1回転目の位置Pi,t−1で途切れている場合、Pi,t−1に移動ベクトルPi,t−2Pi,t−1を適用し、図12に示すようにポリゴンの位置Pi,t−1の次の位置Pi,tを予測して補間する(S201〜S204)。
【0048】
[移動軌跡生成ステップ]
ステップ(7):そして、ステップ(5)の重心Cを中心とする半径Rの円内に、t回転目での対象iの位置Pi,tがある軌跡M(i)を探索する(S205、S206)。
【0049】
ステップ(8):ステップ(7)の軌跡M(i)のPi,tを中心とする半径Rの円内に位置する重心Cを重心C’として探索する(S207、S208)。
【0050】
ステップ(9):各軌跡について、Pi,t−1、Pi,t、C’によるパスコヒーレンス関数が最も小さくなる重心C’を選定する(S209〜S212)。
【0051】
ステップ(10):重心C’として重心Cが重複せず選定された場合は、重心Cを対象iの軌跡M(i)にPi,t+1として追加する。重複した場合は、パスコヒーレンス関数が最も小さい軌跡にPi,t+1として追加し、いずれの軌跡にもPi,t+1として追加されなかった重心Cは新たな軌跡の始点に設定する(S301〜S305)。
【0052】
ステップ(11):ステップ(6)にて補間された対象iの軌跡M(i)にいずれの重心CもPi,t−1として追加されなかった場合は補間したPi,tを削除する(S306〜S309)。
【0053】
ステップ(12):走査が継続する場合は次の回転時に進み(S311)、終了する場合はステップ(13)へ移行する(S310)。
【0054】
ステップ(13):軌跡M(i)の長さlが所定の長さLに対して小さい、l<Lを満たす軌跡を削除する(S312〜S316)。
【0055】
[個体数算定ステップ]
ステップ(14):回転毎の重心及び軌跡の数に1レーダー反応当りの平均的な個体数を乗じ、瞬間個体数及び時間個体数を算定する。
【0056】
ただし、t=0(1回転目)では抽出した重心Cを新たな軌跡の始点に設定するのみとし、t=1(2回転目)では予測位置による補間は適用せず、パスコヒーレンス関数の代わりに式(b)に示すノルム関数を用い、滑らかさではなく近さで評価する。
【0057】
【数2】
【0058】
以上説明したように、本実施例によれば、比較的安価で小型の船舶用レーダー12を必要な場所に運搬して、船舶用レーダー12の空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、前記静止画像抽出ステップ(1)、ノイズ除去ステップ及び面積・重心算定ステップ(2)〜(5)、移動軌跡補間ステップ(6)、移動軌跡生成ステップ(7)〜(13)、個体数算定ステップ(14)、からなる解析アルゴリズムを実施することにより、鳥類が夜間や高高度で群れをなし、また複雑な飛行軌跡を描いて飛行している場合でも、その鳥類の数をより正確に測定することができる。
【0059】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は鳥類の観測以外に、類似する飛翔性動物等の観測にも応用できる。
【符号の説明】
【0061】
11 観測装置
12 船舶用レーダー
13 GPS受信器
14 軌跡解析用プロッター
15 プリンター
16 録画装置
17 電源
18 空中線部架台
21 空中線部
22 指示部
22a 表示部
23 メモリ
t 走査回数
KL 低閾値
KH 高閾値
N 収縮・膨張回数
PH 高閾値で得られたポリゴン
CH 高閾値で得られたポリゴンPHの重心
PL 低閾値で得られたポリゴン
CL 低閾値で得られたポリゴンPLの重心
aL ポリゴンPLの面積
Amin、Amax、A 面積
C、C’ ポリゴンの重心
Pi 軌跡iの構成点
M(i) 軌跡i
l 軌跡の長さ
L 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12