【実施例】
【0023】
図1及び
図2は本発明に係る鳥類の観測方法を概念的に説明するための図で、
図1はその観測装置のブロック構成図、
図2はその観測説明図である。
【0024】
図1において、観測装置11は、鳥類、すなわち小形から大形の鳥、コウモリ類、及び小形の鳥以上の表面積を持つ飛翔性動物(以下、これらを総称して「鳥類」という)を観測するためのものであり、船舶用レーダー12と、GPS受信機13と、軌跡解析用プロッター14と、プリンター15と、録画装置16と、電源17とを備えている。
【0025】
一般に船舶用レーダー12とは、衝突防止及び自船位置の測定のために船舶に設置され、他船、島、陸岸、航路標識等の物標を検出するためのパルスレーダーであり、電波法で定められた、3GHz帯〜9GHz帯内の指定周波数帯を用いたパルスレーダーを使用する。
【0026】
さらに、前記船舶用レーダー12は、空中線部21と指示部22とを備えている。空中線部21は、長い箱型の形状をなし、中央部に接続されたモーターにより回転しながら、長手方向に沿った縁部からパルス波を発射するのと同時に、飛翔する鳥類からの反射波を受信し、受信信号として指示部22に出力する。指示部22は、空中線部21から入力された受信信号を反射波の処理回路により処理して物標位置を演算し、
図2に示すように、空中線部21からの電波で捕捉された物標の位置を表示部22aに表示する。
【0027】
前記GPS受信機13は、受信したGPS衛星からの信号に基づいて自機位置の経度緯度、標高を演算し、その情報を軌跡解析用プロッター14に出力するものである。
【0028】
前記軌跡解析用プロッター14は、例えばパーソナルコンピュータであって、情報を決められた手順に従って処理する解析アルゴリズムを実施するためのプログラムが内蔵され、またプログラムで処理されたデータを読み書き可能に保持しておくためのメモリ23を有している。その軌跡解析用プロッター14は、船舶用レーダー12から入力された情報と、GPS受信機13から入力された情報とに基づいて、捕捉された鳥類の位置及び個体数、群れ数、飛行軌跡の空間座標を演算して解析するとともに、その解析結果を出力して判りやすく表示部22aに表示するものである。
【0029】
前記プリンター15は、軌跡解析用プロッター14からのデータに基づいて指示部22の表示部22aに表示される画像等を印刷するためのカラープリンターである。
【0030】
前記録画装置16は、軌跡解析用プロッター14からのデータに基づいて指示部22の表示部22aに表示される画像等を録画するためのレコーダーである。
【0031】
前記電源17は、上記の各機器の電源となるもので、発電機と該発電機で生成された電力を蓄積しておくためのバッテリーを備えている。
【0032】
また、観測装置11は、
図2に示すように、空中線部21を鉛直面に沿うように支持する空中線部架台18を備えている。
【0033】
図3は、軌跡解析用プロッター14が、船舶用レーダー12から入力された情報とGPS受信機13から入力された情報とに基づき、捕捉された鳥類の位置及び個体数、群れ数、飛行軌跡の空間座標をメモリ23内のプログラムに従って演算して解析する手順の一例を説明する解析フローである。また、
図4〜
図9は指示部22の解析画面のハードコピーの一例を示すものである。
【0034】
そこで、
図1及び
図2示した鳥類の観測装置11を用いて捕捉された鳥類の位置及び個体数、群れ数、飛行軌跡の空間座標を、メモリ23内のプログラムに従って解析する方法の一例を、
図1〜
図9と共に以下説明する。
【0035】
まず、観測装置11の概略動作を説明すると、本実施形態の観測方法では、観測装置11の船舶用レーダー12を、観測対象範囲、例えば風力発電機を設置する範囲やその近傍に設置して行う。通常、船舶用レーダー12は、空中線部21を水平面に沿って回転させ、船舶用レーダー12から物標までの距離と方位角を計測し、物標の平面的な位置を観測する。しかし、本実施形態の観測方法では、空中線部21を、空中線架台18に支持させて、水平面に対して垂直になるように立ててから、
図2の一点鎖線矢印に示すように回転させる。すなわち、空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、空中線部21から所定のビーム幅で電波を発射する。
【0036】
すると、空中線部21は、その空中線部21の設置地点を中心とする一定幅の探査断面を空域に連続的に作り出し、その断面内を飛翔する鳥類等からの反射した電波を受信して、指示部22に表示する。
【0037】
そして、ここでの船舶用レーダー12は、空中線部21を鉛直面に沿って回転させることにより、一回転で全方位を操作し、空中線部21の設定地点を中心とする一定幅の空域に探査断面を連続的に作り出す。その際に指示部22の走査画面(解析画面)上に現われるレーダー反応を重心で代表し、回転の度に変わるその位置を滑らかに結ぶことによって軌跡を作成する。また、レーダー反応が微弱で一時的に位置を見失う場合に備えた、軌跡の直前の状況から位置を予測し補間する方法と、レーダー反応の強弱を考慮した重心の補正方法を組み合わせる。なお、滑らかさの評価には次式(a)に示すパスコヒーレンス関数を用いる(例えば、非特許文献1参照)。この関数は重心間が滑らかに繋がるほど0に近づく。角度項、速度項の重みは状況に応じて調節する。
【0038】
【数1】
【0039】
更に、上記観測装置11を使用して鳥類の数を算定する解析アルゴリズムを、
図3に示す解析フロー(S101〜S316)と共に、ステップ(1)〜(14)の順に従って、
図4〜
図9に示す解析イメージ図を参照しつつ、また、必要に応じて
図10〜
図12の模式図を加えて説明する。
【0040】
ここでの解析アルゴリズムは、大別すると、静止画像抽出ステップ(1)、ノイズ除去ステップ及び面積・重心算定ステップ(2)〜(5)、移動軌跡補間ステップ(6)、移動軌跡生成ステップ(7)〜(13)、個体数算定ステップ(14)からなる。
【0041】
[静止画像抽出ステップ]
ステップ(1):船舶用レーダー12の空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部21から発射されて鳥類に当たって反射された電波を捕捉することにより、t+1回転目の走査画面を静止画像として抽出する(S101)。
図4は、その抽出された静止画像、すなわち指示部22の解析画面のハードコピーの一例を示す。この静止画像は、RGBカラー化されて抽出される。
【0042】
ステップ(2):上記静止画像の色情報を参照し、
図5(a)に示すようにレーダー反応以外を静止画像から除去し(S102)、更に
図5(b)に示すようにそのRGBカラー化された静止画像をグレースケール化した静止画像に変換する(S103)。
【0043】
[ノイズ除去ステップ及び面積・重心算定ステップ]
ステップ(3):上記グレースケール化した静止画像を
図6(a)に示すように高閾値KHにて二値化し、次いで
図6(b)に示すようにモルフォロジー演算(収縮N回・膨張N回)によって微小なノイズを除去する。また、その後、
図8(a)に示すように上記静止画像をポリゴン(多角形)化し、
図8(b)に示すように、そのポリゴンPHの重心CHを抽出し、そのポリゴンPHの重心CHをデータ化する(S109〜S115)。
【0044】
ステップ(4):上記ステップ(3)と同時に、グレースケール化した静止画像を
図7(a)に示すように低閾値KLにて二値化し、次いで
図7(b)に示すようにモルフォロジー演算(収縮N回・膨張N回)によって微小なノイズを除去する。また、その後、ステップ(3)での高閾値KHの場合と同様に、
図8(a)に示すようにポリゴン化し、そのポリゴンPLの面積aLを算定する (S104〜S108)。
【0045】
すなわち、グレースケール化した静止画像を上記ステップ(3)と(4)において、高閾値KHと低閾値KLでそれぞれ二値化すると、
図10の(a)に低閾値で二値化されたポリゴンPL、(b)に高閾値で二値化されたポリゴンPHをそれぞれ示すように、グレースケール化した静止画像にレーダー反応の強弱を反映させて、ポリゴンを細かく識別し、これによって精度の向上を図ることができる。
図10の(a)では低閾値で二値化された1個のポリゴンPLが抽出されている。しかし、低閾値で二値化された段階では単一のポリゴンとして対象とできるかどうかが不明確であるが、更に高閾値で二値化することにより、
図11の(b)に示すように2個のポリゴンPHに変化し対象とするポリゴンが明確になる。
【0046】
ステップ(5):ステップ(4)のポリゴンPLを対象に面積aLが所定の面積Amin、Amaxに対してAmin≦aL≦Amaxを満たすポリゴンPLの重心CLを抽出する。そのうち、所定の面積Aに対してaL≧Aも満たす場合は、ステップ(3)のポリゴンPHから抽出した重心CHに、ポリゴンの重心Cを補正する(S117〜S121)。
【0047】
[移動軌跡補間ステップ]
ステップ(6):
図12に示すように、対象i(本実施例では各ポリゴン)、すなわち各ポリゴンの軌跡M(i)がt−1回転目の位置Pi,t−1で途切れている場合、Pi,t−1に移動ベクトルPi,t−2Pi,t−1を適用し、
図12に示すようにポリゴンの位置Pi,t−1の次の位置Pi,tを予測して補間する(S201〜S204)。
【0048】
[移動軌跡生成ステップ]
ステップ(7):そして、ステップ(5)の重心Cを中心とする半径Rの円内に、t回転目での対象iの位置Pi,tがある軌跡M(i)を探索する(S205、S206)。
【0049】
ステップ(8):ステップ(7)の軌跡M(i)のPi,tを中心とする半径Rの円内に位置する重心Cを重心C’として探索する(S207、S208)。
【0050】
ステップ(9):各軌跡について、Pi,t−1、Pi,t、C’によるパスコヒーレンス関数が最も小さくなる重心C’を選定する(S209〜S212)。
【0051】
ステップ(10):重心C’として重心Cが重複せず選定された場合は、重心Cを対象iの軌跡M(i)にPi,t+1として追加する。重複した場合は、パスコヒーレンス関数が最も小さい軌跡にPi,t+1として追加し、いずれの軌跡にもPi,t+1として追加されなかった重心Cは新たな軌跡の始点に設定する(S301〜S305)。
【0052】
ステップ(11):ステップ(6)にて補間された対象iの軌跡M(i)にいずれの重心CもPi,t−1として追加されなかった場合は補間したPi,tを削除する(S306〜S309)。
【0053】
ステップ(12):走査が継続する場合は次の回転時に進み(S311)、終了する場合はステップ(13)へ移行する(S310)。
【0054】
ステップ(13):軌跡M(i)の長さlが所定の長さLに対して小さい、l<Lを満たす軌跡を削除する(S312〜S316)。
【0055】
[個体数算定ステップ]
ステップ(14):回転毎の重心及び軌跡の数に1レーダー反応当りの平均的な個体数を乗じ、瞬間個体数及び時間個体数を算定する。
【0056】
ただし、t=0(1回転目)では抽出した重心Cを新たな軌跡の始点に設定するのみとし、t=1(2回転目)では予測位置による補間は適用せず、パスコヒーレンス関数の代わりに式(b)に示すノルム関数を用い、滑らかさではなく近さで評価する。
【0057】
【数2】
【0058】
以上説明したように、本実施例によれば、比較的安価で小型の船舶用レーダー12を必要な場所に運搬して、船舶用レーダー12の空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、前記静止画像抽出ステップ(1)、ノイズ除去ステップ及び面積・重心算定ステップ(2)〜(5)、移動軌跡補間ステップ(6)、移動軌跡生成ステップ(7)〜(13)、個体数算定ステップ(14)、からなる解析アルゴリズムを実施することにより、鳥類が夜間や高高度で群れをなし、また複雑な飛行軌跡を描いて飛行している場合でも、その鳥類の数をより正確に測定することができる。
【0059】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。