【文献】
S.Strite,"Si as a diffusion for Ge/GaAs heterojunctions",Applied Physics Letters,Vol.56, No.17 (1990),pp.1673-1675
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のIII−V族層(3)との界面(8)に対し前記IV族層の反対側にある、前記IV族半導体材料層(10)との界面を有する第2のIII−V族半導体材料層(1)を備え、当該第2のIII−V族半導体材料層と前記IV族半導体材料層との間の界面に第2のシリコン層(14)を備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体材料。
【背景技術】
【0002】
光起電装置のよく知られた1つのタイプは、直列に接続された2つ以上のセルを有し、半導体材料の垂直方向の積層体から形成されており、各々のセルは、異なるバンドギャップを有するp−n接合部を含んでおり、これらの接合部は、このデバイスに当たる光のスペクトルの異なる部分を吸収するのに用いられている(タンデムセル)。多接合光起電デバイスは、現在使用されているものはゲルマニウム基板に作製されている。
【0003】
図1は、このようなデバイスの下側のセルの典型的な構造を示す。p型ゲルマニウム(Ge)基板1が準備され、このデバイスの第1のp−n接合部2が、III-V族の半導体材料の層3をこのゲルマニウム基板の上に成長させ、これら2つの層は界面8で接している。この層3は、この技術分野では核形成層と呼ばれている。プロセス中に用いられる高い温度では、V族の原子は、この核形成層3から界面を通過してゲルマニウム基板に拡散し、ゲルマニウムの表面の下の位置でp−n接合部2を形成する。V属の原子は、ゲルマニウム中でn型のドーパントとして機能するので、これらが充分な濃度で拡散するとn型領域4が形成され、この接合部が形成される。(n型領域4のもう一方の境界は、当然ながらIII-V族の材料とIV族の材料との間の界面8である。)III-V族の層3は、n型であるので、これとIV族のn型領域4との間は低抵抗のコンタクト部となっている。V族の原子の拡散深さのコントロールは、p−n接合部の品質を決定する重要な点であり、浅い接合部であることが好ましい。拡散は、さらなる他の半導体層5の核形成層3と共にこれらの成長およびアニーリング(および他の処理)の温度および時間でコントロールされる。このさらなる半導体の層5は、スペクトルの異なる部分を吸収するための1つ以上のさらなるp−n接合部を形成するために設けられる。
図1のようなボトムセルを有する多接合太陽電池の例は、特許文献1および2に記載されている。
【0004】
非特許文献1は、1990年に発行されている。非特許文献1(論文)の著者は、フォトトランジスタおよび空孔に基づいてドーピングを変化させた構造に興味をもっており、この論文自体は、ゲルマニウムで過成長したガリウム−砒素エピタキシャル層で形成されたダイオードの研究について論じている。この基本的なダイオードは、マイクロプラズマによって助長される、低品質な試料の非均質性によって引き起こされ、マイクロプラズマによって助長される絶縁破壊により損傷されるが、著者らはこれはGaAsの空孔(これは逆にGaおよびAsのGeへの外方拡散で生じる)によると示唆している。これを回避するために厚さ10Åの疑似モルフィックなシリコンの中間層が設けられた。(ゲルマニウムはp型であり、Gaが5×10
18cm
-3の濃度でドープされた。接合部でのGaAsは、これより低く、シリコンを用いて5×10
16cm
-3の濃度にドープされた。)とりわけこれは所定の深さとなるようにコントロールされてよい。
【0005】
太陽電池セルは、電力を発生するのに用いられ、好ましくは太陽光で発生される。これらの太陽電池セルには、太陽光が直接照射され、または効率を改善するための、太陽光をセルに集光する集光器を用いて照射される。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、半導体材料が準備され、この半導体材料は、シリコン以外のIV族半導体材料層と、少なくとも1種類のIII族の原子と少なくとも1種類のV族の原子とから生成され、IV族半導体層との界面を有するIII−V族半導体材料層と、III−V族半導体層とIV族半導体層の間の界面か、または、この界面から離間した、IV族半導体層か、またはIII−V族半導体層におけるシリコン層と、この界面と接しかつIII−V族半導体層を形成する、少なくとも1種類のV族原子でドープされたIV族半導体層におけるV族でドープされたn型の領域と、を備える。
【0009】
このシリコン層は、V族原子がIV族層へ拡散することを(これを低減することによって)コントロールし、これによってIV族層のドーピングをその深さおよび濃度に関してコントロールする。さらに、Si層の厚さを変えることにより、異なる条件でドーピングを変化させることができる。このようにして、IV族層のドーピングは、所望にコントロールすることができる。
【0010】
このIV族半導体層における、V族でドープされたn型の領域の部分は、シリコン層の特定の側にあり、このシリコン層の反対側にあるIII−V族半導体層部分を形成するものの少なくとも1種類のV族原子でドープされてよい。
【0011】
このシリコン層の特定の側にあるIV族半導体層の部分をドーピングする、V族原子の少なくとも一部は、このシリコン層の反対側にあるIII−V族層の部分からもたらされてよい。
【0012】
IV族半導体層における、V族でドープされたn型領域は、界面と接するIII−V族半導体層の領域を形成するV族原子の少なくとも1種類でドープされてよい。
【0013】
半導体層におけるV族でドープされた領域は、IV族の層におけるp型領域を有するp−n接合部となってよい。
【0014】
界面におけるIII−V族材料は、n型であってよい。
【0015】
このIII−V族材料層は、n型であってよい。
【0016】
代替として、IV族層においてV族でドープされた領域とIII−V族層とは、界面におけるトンネルダイオードを形成してよい。界面におけるIII−V族材料は、p型でドープされていてよい。
【0017】
IV族半導体材料層は、ゲルマニウムであってよく、またはシリコンーゲルマニウムであってよく、またはシリコン−ゲルマニウム−錫であってよい。
【0018】
III−V族材料は、Al,Ga,Inの内の1つ以上のIII族原子を含んでよく、P,As,Sb,Biの内の1つ以上のV族原子を含んでよい。このIII−V族材料は、InGaAsP,AlGaAs,AlGaAsP,GaAs,GaAsP,AlAs,InGaP,InGaAs,AlInGaAs,AlInGaPからなるグループから選択された材料を含んでよい。
【0019】
IV族層は、シリコン層とIII−V族半導体層との間に、IV族のエピタキシャル半導体層を備えてよい。
【0020】
III−V族半導体層は、シリコン層とIV族半導体層との間に、III−V族のエピタキシャル半導体層を備えてよい。
【0021】
IV族半導体層は、基板層と、この基板層の上に成長したエピタキシャル層とを備えてよい。
【0022】
好ましくは、シリコン層は7.5Å以下かまたは3原子層以下の厚さを有する。このシリコン層は、1原子層以下であってよく、あるいは1原子層未満であってよい。
【0023】
界面と接するIII−V族半導体層のドーピング濃度は、1cm
3当りの原子数が1×10
17個より多くてよく、または1cm
3当りの原子数が1×10
18個より多くてよく、または1cm
3当りの原子数が1×10
18個と5×10
18個の間であってよい。
【0024】
IV族半導体層における、V族でドープされたn型領域のV族原子のドーピング濃度は、1cm
3当りの原子数が1×10
17個より多くてよく、または1cm
3当りの原子数が1×10
18個より多くてよく、または1cm
3当りの原子数が6×10
18個より多くてよい。
【0025】
V族原子でドープされていないIV族半導体層のドーピング濃度は、1cm
3当りの原子数が4×10
18個より少なくてよく、または1cm
3当りの原子数が5×10
16個と2×10
18個との間であってよく、または1cm
3当りの原子数が1×10
17個と1×10
18個との間であってよい。
【0026】
本発明による半導体材料は、第1のIII−V族層との界面に対しIV族層の反対側にある、IV族半導体層との界面を有する第2のIII−V族半導体材料の層を備えてよく、この第2のIII−V族半導体層とIV族半導体層との間の界面に第2のシリコン層を備えてよい。
【0027】
また本発明は、本発明による半導体材料を備えた、光を吸収する光起電デバイスを提供する。
【0028】
この光起電デバイスは、複数の光吸収セルを備えてよく、これらの内1つ以上は本発明による半導体材料を備えている。この複数のセルの1つは、この複数のセルの他の1つと異なるバンドギャップを有してよい。この光吸収セルは、光を吸収するp−nダイオードであってよい。この光起電デバイスは、太陽電池であってよい。
【0029】
本発明は、さらに半導体材料を製造する、以下のステップを含む方法を提供する。
−シリコン以外のIV族半導体材料層を準備するステップ。
−少なくとも1種類のIII族の原子と少なくとも1種類のV族の原子とから生成され、IV族半導体層との界面を有するIII−V族半導体材料層を設けるステップ。
−III−V族半導体層とIV族半導体層との間の界面か、または、この界面から離間した、IV族半導体層か、またはIII−V族半導体層においてシリコン層を設けるステップ。
−III−V材料層からのV族原子をシリコン層を通ってIV族材料にドープし、界面と接するIV族半導体層において、V族でドープされたn型領域を形成するステップ。
【0030】
V族原子の拡散は、IV族層におけるp−n接合部を形成してよい。
【0031】
V族原子の拡散は、既にn型となっているIV族層の領域で行われてよく、高濃度のn型ドーパントを有する、n型ドープ領域が形成される。
【0032】
III−V族層は、IV族層の上あるいはシリコン層の上に直接成長されてよい。
【0033】
本発明による材料あるいは、本発明の方法によって製造された材料は、以下のステップによる太陽光を用いた発電に使用される。
−これらの材料で形成された太陽電池セルを準備するステップ。
−この太陽電池に太陽光を照射するステップ。この方法は太陽電電池に照射するための太陽光を集光するステップを備えてよい。
【0034】
本発明の第2の態様においては、半導体層から形成された2つ以上の光吸収セルを有する多接合光起電デバイスが提供され、このデバイスは以下のものを備える。
−シリコンゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウム錫の材料からなる第1のセル。
−シリコンゲルマニウム錫からなる第2のセル。
ここで第1のセルのシリコンゲルマニウムまたはシリコン−ゲルマニウム錫、および第2のセルのシリコンゲルマニウム錫は、ガリウム砒素に格子整合されている。
【0035】
多接合光起電デバイスは、さらにガリウム砒素材料のセルを備えてよい。
【0036】
この多接合光起電デバイスは、さらにガリウム砒素に格子整合されたインジウムガリウム燐のセルを備えてよい。
【0037】
この多接合光起電デバイスは、さらに、ガリウム砒素に格子整合されたアルミニウムインジウム砒素のセル、あるいはガリウム砒素に格子整合されたアルミニウムインジウムガリウムリンのセルを備えてよい。
【0038】
この多接合光起電デバイスは、ガリウム砒素の基板を備えてよく、セルの半導体層はこの基板の上に格子整合されている。代替として、この多接合光起電デバイスは、ガリウム砒素に格子整合された基板を備えてよく、半導体層はこの基板の上に格子整合されている。
【0039】
この光起電デバイスは、太陽電池であってよい。
【0040】
好ましくは、第1のセルはシリコンゲルマニウム材料からなる。
【0041】
また本発明のこの第2の態様は、以下のステップを備える多接合光起電デバイスの製造方法を提供する。
−ガリウム砒素の基板またはガリウム砒素に格子整合された他の材料を準備するステップ。
−シリコンゲルマニウムまたは上記基板に格子整合されたシリコンゲルマニウム錫からなる第1のセルを成長させるステップ。
−この第1の光吸収セルに格子整合されたシリコンゲルマニウム錫からなる第2のセルを成長させるステップ。
【0042】
この方法は、ガリウム砒素のセルを成長させるステップを備えてよい。
【0043】
この方法は、ガリウム砒素に格子整合されたインジウムガリウムリンのセルを成長させるステップを備えてよい。
【0044】
この方法は、ガリウム砒素に格子整合されたアルミニウムガリウム砒素の光吸収層を成長させるステップを備えてよい。
【0045】
この方法は、ガリウム砒素に格子整合されたアルミニウムインジウムガリウム燐のセルを成長させるステップを備えてよい。
【0046】
この方法は、2つの隣接する上記のセルの間に少なくともさらにもう1つの層を設けるステップを備えてよく、この少なくともさらにもう1つの層は、ガリウム砒素に格子整合されている。
【0047】
この方法は、基板を除去するステップを備えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明の実施例を、これに付随する以下の図を参照して説明する。
【
図1】公知の多接合光起電デバイスセルの下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図2】本発明による多接合光起電デバイスセルの第1の実施例の下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図3】本発明による多接合光起電デバイスセルの第2の実施例の下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図4】本発明による多接合光起電デバイスセルの第3の実施例の下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図5】本発明による多接合光起電デバイスセルの第4の実施例の下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図6】本発明による多接合光起電デバイスセルの第5の実施例の下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図7】本発明による多接合光起電デバイスセルの第6の実施例の下側のセルの半導体層の断面を示す図である。
【
図8】本発明によるシリコン層を有する半導体層構造とこのシリコン層を有しない半導体層構造とを比較する2次イオン分析図である。
【
図9】本発明によるデバイスのもう1つの実施例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、
図9のデバイスのセルにおける本発明の使用の実施例を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、
図9のデバイスのセルにおける本発明の使用の実施例を示す図である。
【
図10A】基板間にSiGe層のトランスファ層を有する本発明の実施例を形成する方法を示す図である。
【
図10B】基板間にSiGe層のトランスファ層を有する本発明の実施例を形成する方法を示す図である。
【
図10C】基板間にSiGe層のトランスファ層を有する本発明の実施例を形成する方法を示す図である。
【
図10D】基板間にSiGe層のトランスファ層を有する本発明の実施例を形成する方法を示す図である。
【
図11】本発明のデバイスを用いたもう1つの実施例を示す図である。
【
図11A】本発明の方法の使用の実施例を示す図である。
【
図11B】本発明の方法の使用の実施例を示す図である。
【
図11C】本発明の方法の使用の実施例を示す図である。
【
図11D】本発明の方法の使用の実施例を示す図である。
【
図12】本発明を用いたトンネルダイオードの実施例を示す図である。
【
図13】SiGeSn合金のバンドギャップおよび格子定数を示すグラフであり、GaAsおよびGeに格子整合され得ることを示すとともに、これにより生じるバンドギャップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明による光起電デバイスの第1の実施例が
図2に示されている。この図は、点線で示す1つ以上のp−n接合部を形成する半導体層5(もしこれが存在すれば)をさらに含む、下側のセルの層の断面を示す。全般的に、この構造は
図1に示すものと類似している。たとえばゲルマニウムである、p型のIV族半導体基板1が、この基板上に成長されたn型のIII−V族半導体の層3と共に準備され、これら2つの層は再び界面8で面している。また、ここでもV族原子はIII−V族層3から界面8に隣接するn型領域4を形成するIV族層に拡散し、これによりその領域が残りのIV属材料のp型部分と面するようなp−n接合部2を生成する。しかしながら、まず薄いシリコン層6が、層3とIV族基板1との間に設けられる。(特定のIV族半導体材料の可能性については後述するが、材料はシリコンそのものではない。III−V族材料の可能性についても後述する。)
【0050】
図3は、第2の実施例を示し、ここではIII−V族材料の核形成層3がSi層6の上に成長される前に、まずIV族半導体(シリコン以外)のエピタキシャル層7がこのSi層の上に成長される。通常この層7は、この層が成長する時に最初にp型またはn型でドープされてよい。
【0051】
これら2つの実施例では、シリコン層6は、V族原子が層3からIV族材料に拡散することをコントロールしている。このシリコンは、V族の拡散に対するバリヤとして機能し、デバイスを形成するのに使用される同じプロセス条件の組み合わせでは、このp−n接合部2は浅くなる。すなわちこのp−n接合部の位置は、IV族半導体と核形成層との間の界面8にさらに近くなる。このバリヤは完全ではない。このバリヤは、V族がV族原子の供給源であるIII−V族の材料から、Siバリヤの反対側にあるIV族材料への拡散を排除するというよりむしろ低減するものである。このバリヤの厚さの設定は、p−n接合部2の深さのコントロールに用いることができる。
【0052】
これら2つの実施例において、バリヤ6の好ましい厚さはシリコンの3単原子層(7.5Å)以下である。実際には、これは完全な1単原子層より薄くともよい。シリコン層には張力が発生する(これはシリコン層がIV族半導体の格子定数と整合しようとするためである)ので、この3原子単層は、シリコン層の好ましい最大厚である。上記の限界厚の上では、転位がシリコンにおける張力を緩和するように形成され、これらの転位はデバイス性能に対し不利となり得る。また、3原子単層までの範囲は、光起電デバイスに好適な接合深さとなる。
【0053】
第2の実施例(
図3)では、IV族のエピ層7の厚さは、好ましくはV族原子がデバイスのプロセス中に、IV属半導体材料の材料を拡散通過する距離を越えないようにすべきである。これはこの距離を越えると、Siバリヤを横断するV族原子が極小となるからである。通常この距離は1μm未満であり、使用されるV族種およびデバイスを処理するステップの温度に依存する。
(なお、
図3の実施例に関し、通常p−n接合部2は、シリコンバリヤ6のIII−V層側と反対の側にあり、本発明は通常バリヤ6がV族原子の拡散を制限するが、このバリヤを通過してIV族材料をn型に変換するには十分でない場合を含むものであり、このp−n接合部は、このバリヤかまたはこのバリヤの近傍
*にある。(
*p−n接合部はもちろん数単原子層のバリヤより大きい領域を有している。))
【0054】
図4および5は、それぞれ第1および第2の実施例と同じ層(
図2および3)を有する第3および第4の実施例を示すが、IV族半導体のp型エピタキシャル層10は、まずシリコン層6およびIII−V層3が成長される前に設けられる。この特定の実施例では、エピ層10は、基板1の上に成長されるが、中間層を有することが可能である。エピ層として層10を有することは、またIV族半導体における接合部のドーピングの厚さおよびプロファイルを正確にコントロールするのに役立つ。好ましくは、ここに示すように、層10は基板1(またはIV族材料の中間層)におけるよりもむしろこのIV族層でp−n接合部2がエピ層を形成するのに十分な厚さであるが、前者を排除するものではない。なお、しかしながら、IV族エピ層10は他の材料の上でも成長され得るので、基板1は必ずしもIV族である必要はない。
【0055】
図6および7は、それぞれ第1および第3の実施例(
図2および4)と同じ層を有する第5および第6の実施例であるが、シリコン層6およびIII−V族の主層3が成長される前に、まず最初にIII−V族半導体材料のn型エピタキシャル層9が設けられる。ここでもシリコン層はV族原子の拡散をコントロールするバリヤ6として機能し、V族原子が層3からこのバリヤ6の反対側にあるIV族材料に拡散することをコントロールする。IV族材料はまた、層9からのV族原子によってもドープされる。このSiバリヤは、このバリヤの他の側のIII−V族層からのIV族層へのドーピングレベルに対し顕著な差を設けるために存在するのであり、このためこのIII−V族エピ層9は、デバイスのプロセス条件下でV族原子が層3から層9を通って拡散するような距離より薄くなるはずである。
【0056】
p−n接合部が形成される材料として用いられるIV族半導体材料の例はゲルマニウムである。ゲルマニウム基板もまた容易に入手可能である。基板としてのゲルマニウムの方位は僅かに(100)および(111)からずれていることが好ましい。(正確な結晶面からずらされた基板は従来技術で知られている。)
【0057】
ゲルマニウム以外のIV族半導体が使用されてもよく、シリコン−ゲルマニウムおよびシリコン−ゲルマニウム−錫のように用いてよい。SiGeおよびSiGeSnは、ベース基板としては入手できないが、GaAsに格子整合して成長させることができる。このようなSiGeまたはSiGeSnは、本発明で用いる前に、元のGaAs基板から取り外して、より安価な基板にとりつけてもよい。このプロセスの例を以下に後述する。少なくとも0.04に達する成分量xを有し、場合によってはx=0.06以上であるSi
xGe
1-xが用いられてよいが、好ましくはxは0.01≦x≦0.03の範囲である。これに対応したSi
xGe
1-xのGaAsとの格子不整合は、約x=0.018における格子整合条件から離れる方向でxの0.01の変化に対し約0.04%となる。
図13は、SiGeSn合金のバンドギャップおよび格子定数を示すグラフであり、SiGeSnのバンドギャップ範囲0.66−1.1eVでGaAsに格子整合され得ることを示している。これはまたSiGeSnがGeに格子整合され得ることを示し、Geの格子定数が極めてGaAsの格子定数に近いため、SiGeSnがGeに格子整合され得るバンドギャップ範囲は、上記のSiGeSnのGaASへの格子整合の場合と類似している。SiGeSnは、SiのSnに対する比が約4:1のところでGaAsに格子整合される。たとえばSiの割合が2%で、Snの割合が0.5%のところでは、これらはGaAsに格子整合された場合より大きなバンドギャップをもたらし、Siの割合が8%で、Snの割合が2%のところでは、このバンドギャップは大きくなり、これらの割合がさらに大きくなると、このバンドギャップはさらに大きくなり、たとえば限界値である80%のSiおよび20%のSnでは、この材料のバンドギャップは約1.1eVとなる。
【0058】
従来技術で知られているように、核形成層3は、InGaAsやInGaPのような、種々のIII−V族材料から製造することができる。他の材料には、InGaAsP,AlGaAs,AlGaAsP,GaAs,GaAsP,AlAs,InGaP,InGaAs,AlInGaAs,AlInGaP,等がある。これらはまた、Sb(またはBiでもよい)を材料のV族原子(の1つ)として含むようなものを含む。従来技術で知られているように、これらの材料の殆どは、ゲルマニウム,シリコン,またはシリコン−ゲルマニウム,シリコン−ゲルマニウム−錫の少なくとも1つに格子整合あるいはほぼ格子整合されて成長され得る。
【0059】
これらの材料の多くは、V族原子としてAsおよび/またはPを含んでいる。なお、AsおよびPは共にIII−V族材料からIV族材料に拡散し、IV族材料に対し、少なくともGeに対してはAsはPよりも遠くまでかつ速く拡散する。2つ以上のIII−V族エピタキシャル層があるところ(たとえば
図6および7の実施例はエピタキシャル層3および9を有する)では、これらの層が、ベース材料を形成し、かつまた堆積中に行われるドーピングにおけるIII族およびV族の原子に関して同じ組成を有していることが好ましい。しかしながら、異なる組成も可能であり、これはIV族領域でのドーピングプロファイルをコントロールするのに有用である。実際、層中の異なる組成もまた除外されるものではない。
【0060】
同様に、2つ以上のIV族エピタキシャル層があるところ(たとえば
図5の実施例)では、上述のたとえばIV族材料の堆積中におけるV族の拡散の前のこれらの層が、ベース材料を形成し、かつまた堆積中に行われるドーピングにおけるIV族の原子に関して同じ組成を有することが好ましい。しかしながら、異なる組成も可能である。実際、層中の異なる組成および/またはドーピングもまた除外されるものではない。
【0061】
しかしながら、従来技術でエピタキシャル層に対してしばしば行われるように、このエピ層および基板が同じベース材料であった場合でも、IV族エピ層および基板(
図4,5、および7)では異なるドーピングであることが好ましい。
【0062】
上記のGaAs上に成長されたSiGeおよびSiGeSnの例で示唆されているように、IV族層10の材料は、非IV族材料の基板の上に成長されることができる。
【0063】
使用可能または好ましい幾つかのドーピング濃度は以下の通りである。IV族層との界面にあるIII−V族層では、このドーピング濃度は通常1cm
3当たりの原子数が1×10
17個であり、さらに好ましくは1cm
3当たりの原子数が1×10
18個であり、さらにもっと好ましくは1cm
3当たりの原子数が1×10
18個と5×10
18個の間である。IV族半導体層におけるドーピングを形成する、拡散されたV族原子の数は、通常1cm
3当りの原子数が1×10
17個より多く、好ましくは1cm
3当りの原子数が1×10
18個より多く、そして1cm
3当りの原子数が6×10
18個より多くてよい。IV族層の残りの(V族原子が顕著に拡散していない)部分については、ドーピング濃度は、通常1cm
3当りの原子数が4×10
18個より小さく、好ましくは、1cm
3当りの原子数が5×10
16個と2×10
18個の間であり、さらに好ましくは1×10
17個と1×10
18個の間である。
【0064】
このシリコン層6および他の層は、従来の技術を用いて成長させることができる。以下のように幾つかの方法は可能である。
【0065】
たとえばこのシリコン層は、III−V族層のエピタキシーに用いられる従来のMOCVD反応炉(このような装置は多接合光起電デバイスのIII−V族のエピタキシに従来より用いられている)で成長させることができる。(IV族半導体材料の例として)ゲルマニウム基板は、直接MOCVD反応炉に設置でき、またシリコンおよびIII−V族層を共に成長させるのに使用することができるので、この方法は、とりわけ第1の実施例(
図2)に適合しているが、この実施例に限定するものではない。シリコンはこのような反応炉においてドーパント源として用いられので、したがって、直接ゲルマニウム基板にシリコンを堆積するために、III−V族核形成層を堆積する前に、シリコンを堆積することができる。
【0066】
シリコン層6は、ゲルマニウム、シリコンおよびシリコン-ゲルマニウムまたはシリコン-ゲルマニウム-錫を成長させるCVD堆積装置でエピタキシャル成長させることができる。ゲルマニウム等の基板は、まずこの装置に設置され、またさらにシリコンおよびGeエピタキシャル層6および7を成長させることができるので、この方法は、とりわけ第2の実施例(
図3)に適合しているが、この実施例に限定するものではない。次に加工対象物は、MOCVD反応炉(好ましくはマルチチャンバシステム(cluster tool arrangement)を用いてゲルマニウムエピタキシャル層7が清浄なままとなるようにする)に移動されてIII−V族層3が堆積される。
【0067】
MBEをIII−V族材料またはシリコンの堆積に用いてもよい。
【0068】
図8は、2次イオン質量分析器を用いて、InGaAs/Ge接合部を有する多接合タンデムセルデバイスの試料で、直接界面に本発明によるシリコン層を有するボトムセル(a)とこれを有しないボトムセル(b)とを比較してプロットしたものである。縦軸は、GeにおけるAs原子の濃度を1cm
3当たりの原子数で示してあり、横軸は、Ge層の深さをμで示している。このグラフは、シリコン層を有する場合は、InGaAs層に拡散するAsドーパント濃度がGe層の1μmの深さに閉じ込められていることを示しており((a))、これに対してSi層を用いないコントロールの場合(ただし他のプロセス条件は同一)は、As原子が約4μmを貫通していることを示している((b))。さらに、As原子の濃度は、Si層を有している試料では低くなっている。これらの所見は、Si層がAsの拡散のバリヤとして機能することを示している。同様の結果は、異なるV族原子を有するIII−V族半導体材料を用いても得られる。
【0069】
本発明によるシリコン層を有する三重接合光起電構造の試料は、シリコン層を有しない場合に比べて1sunで照射された場合の最大出力および開路電圧(V
OC)を増加させるのに有効であると評価されている。
【0070】
図9は、本発明を用いた、多接合太陽電池のもう1つの実施例を示し、ここでは全てのセルが示されている。この図は本発明のデバイスのセルのタンデム構成を示している(各々のセルは様々の半導体層で出来ているが、これら詳細は示されていない)。このデバイスは、GaAs基板91からスタートし、本発明に基づいて、この基板にSiGeセル92が成長される(したがってp−n接合部、Si拡散バリヤ層およびこの上のドーピングを行うIII−V族層(たとえばGaInP)を有するSiGe層を備えるが、これらのいずれも図のセル92には詳細には示されていない)。この上にGaAsセル94およびInGaPセル96が設けられる。トンネルダイオード93および95はそれぞれ、SiGeセルとGaAsセルとの間、およびGaAsセルとInGaPセルとの間でセル間の抵抗を低減する。最後のウィンドウ層97は、デバイスを保護するが、光入射を可能とし、デバイスの金属コンタクトライン99は、デバイスで生成された電流を集電する。最後に反射防止膜98が、このウィンドウを被覆する。
【0071】
図9Aは、
図9のボトムセル92および基板91の例を詳細に示す(ただしもちろんこの例を使用することは、
図9の特定な実施例に限定することではない。)。この例は
図4の実施例の構造を有し、GaAsの基板1を有している。この上にGaAsに概ね(または正確に)格子整合されたp型SiGeのエピ層10が成長される。この上にSi拡散バリヤ6が成長され、この上にIII−V族核形成層3が成長され、これもまた概ね(または正確に)SiGeに格子整合される。V族原子は、層3の堆積およびこれに続く処理のステップの条件下で、バリヤ6でコントロールされて層3からSiGeに拡散し、このSiGeをドーピングして界面8に隣接したn型領域4を形成し、これによりSiGe層10にp−n接合部2が形成される。このSiGe層10の同様な例として、代わりにこの層はSiGeSnで形成される。
【0072】
このデバイスでは、GaAs基板1からのV族原子を用いたSiGe(またはSiGeSn)のドーピングに、潜在的な問題がある。すなわちAs原子によってSiGeがp型からn型にオーバードーピングされて、SiGe層10と基板1との間の界面の近傍でp−n接合部を形成するのである。
【0073】
この対策は以下の2つの方法で行われる。第一の方法では、SiGeがp型のままであるように、拡散を抑えるように、もう1つのSiバリヤ14が、界面に設けられてよい。(このSiバリヤには、7.5Åまたは3原子層の厚さが好ましい。この制限は、上記の試料のように、SiがGeに良く似たGaAs基板の格子定数に対して成長されることによる。)
【0074】
この問題を回避するもう1つの方法は、以降の処理のステップが実行される前に、SiGeを異なる基板の上にトランスファすることである。このトランスファは、以下に説明するように、発明者らの国際特許出願の国際公報WO2010094919で2010年8月26日に公開されており、この内容は本発明に組み込まれるものである。
【0075】
この方法では、Geを含む先躯体(たとえばGeH
4,GeCl
4,等)およびSiを含む先躯体(たとえばSiH
4,SiH
2Cl
2,SiHCl
3,ジシラン,等)のキャリヤガスとの混合ガスを用いて、SiGe層10をGaAs基板1の上にエピタキシープロセスを用いて格子整合されて成長させることができる。このSiGe層10は、これに限定するものではないが、ジボランを含む、ガス状または固体のドーピング源を用いて処理中(in−situ)にドープされてよい。この層10は、たとえば、大気圧または1〜1000Torrに減圧され、温度350℃〜800℃で成長されてよい。GaAsの基板の範囲として、p型,n型および準絶縁体を含むものが用いられてよく、ウェーハはエピタキシーの前にこの処理とは別に(ex−situ)または処理中にクリーニングされてよい。SiGe層10の結晶度特性は、たとえば格子整合の検査は、X線回析技術を用いて測定されてよく、層の厚さは通常角度可変のエリプソメータ分光を用いて測定されてよいが、また他の方法も可能である。
【0076】
このプロセスでは、GaAs基板とSiGe層10との間の材料組成交換が、良好なエッチング停止部として機能するヘテロ界面を生成し、GaAs基板が都合よく除去され、SiGe層10の滑らかな表面が的確に生じることを可能にする。GaAs基板の一部は、もしこれが速やかなあるいは容易または安価な製造プロセスであれば、機械的手段によって除去されてよい。たとえば、GaAs基板が500μm厚であれば、約400μmは、研磨によって除去されてよく、これによってGaAs材料はさらに容易に回収されて再利用することができる。最後の100μmは、選択的ウェットエッチングにより除去されてよい。
【0077】
この方法を使用して生成される光起電セル構造は、基板の厚みが取り除かれているために、軽量にすることができる。これはとりわけ宇宙分野での応用に重要である。適合する可撓性、熱特性、または他の所望の機械的または電気的特性を有する他の分野にも提供することができる。基板をヒートシンクに交換すると、基板は熱流を低減するように機能しないので、デバイスからの熱伝導をさらに効率的にすることができる。このヒートシンクまたは他の金属ベース層は、そのままデバイス底部への導電性電極として機能する。
【0078】
図10A〜10Dに1つの特定の方法を示す。GaAs基板1からスタートし、上記で説明したように、また
図10Aに示すように、SiGe層10がエピタキシャル成長される。次にGaAs基板以外の薄層以外を除去するためにトランスファ技術が用いられる。この層トランスファは、スマートカット(Smart Cut;登録商標)等の特許の剥離技術を用いて行われ、GaAs基板の開裂面12が丁度SiGe層10の下に形成される。この開裂面12は、イオンビーム打ち込み技術を用いて、水素またはヘリウム原子を、このビームエネルギで規定される正確な深さ、たとえば1.5μmまでの深さに堆積させて形成されてよく、本発明の条件ではSiGe層の厚さがほぼこの厚さである場合にこの技術が実用的となる。
【0079】
次に代替ベース13がSiGe層10に貼り付けられる。
図10Bに示すように、この代替ベースは、SiGe層がSiO2層に貼り付けられるように、酸化されたシリコンウェーハであってよい。ただし他のベースとして上述のような金属ヒートシンクが用いられてもよい。使用可能な他のベースの一部としては金属製、ガラスおよび半導体のベースがあり、これらはそれ自体が既に、金属、半導体および絶縁体の材料から選択された2つ以上の層を備えてよく、光起電接合部のような能動素子を1つ以上有していてもよい。次にこのGaAsバルク基板は、この構造体から分離され、僅かに残ったGaAs層が、たとえば選択ウェットエッチングにより除去され、上記で説明した酸化シリコンウェーハのような代替ベースの上に、
図10Cに示すようにSiGe層10が残る。次にこのデバイスの後の層、たとえばSiバリヤ6およびIII−V族層3およびこれに続く層5が、
図10Dに示すように形成される。
【0080】
上記で説明した技術の変形例の1つには、下側のSiGe層内で、基板の界面の真上の開裂面を形成することがある。層トランスファの後で、このトランスファされたSiGeは、さらなる必要な処理のために既に露出されている。GaAs基板の上に残っている残渣SiGeは、SiGeに選択的に作用しかつGaAsには作用しないウェットエッチを用いて、少なくとも部分的に除去されてよく、再使用可能なGaAs基板が残される。
【0081】
多種多様な異なった代替ベースが
図10Dの構造に可能であり、これらはそれ自体が既に、金属、半導体および絶縁体の材料から選択された2つ以上の層を備えてよく、光起電接合部のような能動素子を1つ以上有していてもよい。初期に形成されたGaAs基板上のSiGe層は、開裂または剥離に続く残渣GaAsの正確な除去の理想的なエッチング停止部となる。
【0082】
図11は、本発明を用いた多接合太陽電池セルのもう1つの例を示す。これは5個の太陽電池セルを示しており、ここでも全セルはタンデム型に接続されている。これらは、基板から順番に、Geセル111,もう1つのGeセル112,GaInAsセル113,AlGaInAsセル114およびAlGaInPセル115(高濃度n型コンタクト層116および金属ライン117)である。このデバイスでは、本発明はGeセル112を形成することに使用されており、このセルは上のセル113のIII−V族材料との界面を有し、Si拡散バリヤ6がセル112とセル113との間の界面に設けられるように、V族ドーパントを供給する。
【0083】
図11Aは、
図11のボトムセルの例111,112の例を詳細に示すが、ただしもちろんこの例を使用することは、
図11の特定な実施例に限定することではない。
【0084】
最下部のセル111は、p型のIV族基板1(たとえばGe)を有し、この上にn型のIV族エピ層(例えばGe)が成長されて第1のp−n接合部を形成する。次のセル112への低抵抗コンタクトを設けるために、次にトンネルダイオードの層16が堆積される。この上にp型のIV族材料(たとえばGe)のエピ層10が形成され、これに続いてシリコン拡散バリヤ6およびIII−V族エピ層3が形成されて、上記の例のように、エピ層3からバリヤ6を通って拡散されたV族原子でドープされたエピ層10のn型材料4と、IV族層10の残渣との間にp−n接合部を形成し、これによってセル112が形成される。
【0085】
図11Bは、
図11Aと類似したもう1つの例を示す。この例ではしかしながら、第1のセルは、基板を含んでいないが、基板1の上にp型で(通常は基板に格子整合されて)成長された、追加のIV族エピ層17とこの上に成長されたn型のIV族層15とから出来ており、この第1のセルのp−n接合部を形成する。
【0086】
図11Bの例で示す特定の例では、基板の材料は(
図11B(および
図11C)に記載されているように)GaAsである。これらのIV族層は、好ましくは通常この基板に格子整合されて成長され、この例ではSiGeおよびSiGeSnである。SiGeは、格子がGaAsに整合された場合は、0.66eVのバンドギャップを与え、SiGeSnは、これより大きい、〜1.1eVまでのバンドギャップを与える。もし、GaAsへの格子整合を維持したまま、0.66eVより大きい2つのバンドギャップが必要であれば、最下部のセル111およびこの次のセル112は共にSiGeSnで作ることができるが、必要なバンドギャップをもたらすように互いに異なる組成で作られる。
【0087】
図11Cは、さらにもう1つの例を示す。この例は、
図11Bに類似しているが、基板がIII−V族材料である場合にIV族材料層17における好ましくないp−n接合部の形成を避けるために、追加のSi拡散バリヤ14が(
図9Bの例のように)設けられている。
【0088】
図11Dは、多接合太陽電池のもう1つの例を示す。
図11Bおよび11Cの例のように、SiGeまたはSiGeSnの第1のセルがGaAs基板の上に設けられ、この上にSiGeSnの第2のセルが設けられている。この例では、さらに3つのセルが設けられており、これらもタンデム型で設けられている。第2のセルの上の第3のGaAsセル、この第3のセルの上の第4のInGaPセル、およびこの第4のセルの上の第5のAlInGaPセルである。これらのセルは全てGaAs基板に格子整合されている。(AlGaAsは、厳密にはGaAsと同じ格子定数を有していないが、充分に格子整合できるように殆ど同じ格子定数となっており、このAlGaAs層は、歪みが転位により開放されることが起きるような臨界厚より薄くなっているので、僅かな歪みとなっている。これはガリウムに対するアルミニウムの割合の成分範囲の全てで適用される。この例では、他の材料はGaAsと正確に格子整合する成分となっており、この成分が優先的に用いられる。)例として、これらのセルのバンドギャップは第1のセルから最後のセルまで順番に、0.7eV,1.0eV,1.4eV,1.8eV,2.0eVである。したがって、各々のセルはデバイスに当たる光のスペクトルの異なる部分を吸収する。必要があれば、このデバイスには、他の例で説明したように、Siバリヤ、トンネルダイオード、ウィンドウ層等が設けられる。また、
図10A〜10Dを参照して説明したように、この基板は除去されてよい。さらに、これらのセルの材料は、GaAsそのものの上に成長されなくともよく、GaAsに格子整合された他の基板の上に成長されてよい。他の層がこれらの光吸収セルの間に用いられてよく、これらはたとえば、トンネルダイオードであり、好ましくはこれらのセルと格子整合されており、また同様に好ましくは基板と格子整合されている。
【0089】
図12は本発明のもう1つの態様の例の層を示す。ここでは、IV族層10'とIII−V族層3'との間のSi拡散バリヤ6は、V族原子がこのバリヤを通ってIV族材料に拡散することをコントロールする。このIV族材料は既にn型であり、したがって、生成される拡散領域4'は高濃度でn型ドープされている。この例では、層3'および層4'はトンネルダイオードを形成する。
【0090】
図12に示す例は、IV族の光電セルに組み合わせたトンネルダイオードをを示す。p型のIV族基板1が準備され、この上にn型のIV族エピ層10'が成長され、この接合部は光起電セルとなる。この上に薄いSi拡散バリヤ6が設けられ、この上に高濃度ドープされたIII−V族層3'が設けられる。このIII−V族層3'のV族原子は、バリヤを通って拡散し、高濃度ドープされたn++領域4'を形成する。この上に他の層5、たとえば他の太陽電池セルがたとえばIII−V族材料で成長されてよい。高濃度ドープされたIV族n++領域4'および高濃度ドープされたIII−V族p++層3'は、低抵抗トンネルダイオード16を形成し、これは、層1と層10'との間のp−n接合部で生成された光電流が、大きな抵抗損失を受けずに上の層に導電されることを可能にする。
【0091】
上記の例と同様に、このシリコンバリヤは必ずしも厳密にIV族材料とIII−V族材料との間の界面にある必要はなく、V族原子の拡散に影響を与えるように一方の側に距離を置いて設けられてよい。
【0092】
上記の例においては、これらのサブセルは、GaAs基板(すなわち、GaAsに格子整合された基板、またはこの構造の格子定数に適合した他の基板)の上に逆順に設けられてよく、大きなバンドギャップのセルからスタートし、これに続くセルでは順にバンドギャップが小さくなり、最後がたとえばSiGe/SiGeSnセルとなる。最も大きなギャップのセルと基板との間に、犠牲層が設けられ、これらのセルが取り外されて適合した手段またはヒートシンクにトランスファされてよく、最も狭いバンドギャップのセルが基板に隣接し、最も広いバンドギャップのセルが入射光を最初に受けるように反転されてよい。
【0093】
典型的には太陽電池セルである、これらの材料を用いたデバイスは、通常は最初に必要な層または少なくともそれらの一部を有する半導体材料が準備されて製造される。材料は、通常半導体ウェーハ全体に渡り均一に製造されている。この材料は次にリソグラフィー技術により加工され、個々のデバイスおよび接続部が形成される。材料の製造はしばしば、リソグラフィー工程およびパッケージ工程を行う製造者と異なる製造者によって行われる。