(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに嵌合する一対の筒状のハウジングにそれぞれ互いに接続される端子を収容するキャビティが形成され、このキャビティの開口端同士の隙間を水封するコネクタの防水構造において、
一対の前記ハウジングの水封部は、開口端部に互いに嵌め合う内側環状部と外側環状部とを備えて形成され、
前記内側環状部は、前記開口端部の基部から外周面に沿って前方に伸延する環状の覆い体で包囲され、当該覆い体の前端は当該内側環状部の前端よりも後方に位置され、当該覆い体の内周面と当該内側環状部の外周面とを溝側面として前記外側環状部が挿入される環状溝が形成され、当該環状溝の溝側面を構成する前記外周面は前端から当該環状溝の前記基部に向って末広がりの傾斜面で形成され、
前記外側環状部は、前記一対のハウジングの嵌合時に前記環状溝に挿入され、先端部が前記環状溝の溝側面に対応する前記内側環状部の外周面と前記覆い体の内周面との間に挟持されてなることを特徴とするコネクタの防水構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用されるコネクタの防水構造の一実施形態について
図1乃至
図8を参照して説明する。本実施形態では、自動車や自動二輪等に搭載される防水仕様のコネクタを例に説明するが、本発明の防水構造は、この種のコネクタ以外にも適用することができる。
【0014】
本実施形態のコネクタ11は、
図1及び
図2に示すように、雄コネクタ13と雌コネクタ15から構成され、雄コネクタ13の雄ハウジング17と雌コネクタ15の雌ハウジング19とを互いに嵌合させて、雄ハウジング17に収容された雄端子21と雌ハウジング19に収容された雌端子23とを電気的に接続するものである。雄端子21には、電線25が接続され、雌端子23には、電線27が接続される。雌ハウジング19は、雄ハウジング17の内側に一端側が嵌め込まれた状態で、雄ハウジング17にロックされるようになっている。本実施形態では、各コネクタに2本ずつ端子を収容する例を説明するが、端子の収容数は2本に限定されるものではない。なお、以下の説明では、
図1のX方向を前後方向、Y方向を幅方向、Z方向を高さ方向とし、両コネクタの嵌合方向をそれぞれ前方とし、
図1の上側を上方として定義する。
【0015】
雄コネクタ13は、
図1及び
図3に示すように、絶縁性の合成樹脂で円筒状に形成された雄ハウジング17と、雄ハウジング17に後方から収容される雄端子21とを有している。雄ハウジング17は、
図6に示すように、雄端子21が収容される雄端子収容室29(キャビティ)が形成された筒状の基部31と、基部31から後方に突出する電線保持部33と、基部31から前方に突出するフード部35とを一体的に備えて形成される。フード部35は、基部31の周壁と連なる周壁を有して形成され、軸方向と直交する断面が長円形の円筒状に形成される。
【0016】
フード部35の内面には、
図3に示すように、軸方向に延びる案内溝37が形成される。フード部35の前端面と面一で板状に立ち上がる壁部39には、一対の第1切り欠き部41と、一対の第1切り欠き部41の内側に形成された第2切り欠き部43とが設けられる。
【0017】
雄端子収容室29は、2個の雄端子25を互いに図示しない隔壁で仕切って収容し、雄端子収容室29の内部に延出させた図示しないランスを各雄端子25に係合させて、設定位置に保持するようになっている。雄端子収容室29は、
図4及び
図6に示すように、フード部35に包囲された基部31の前端面45に開口する開口端47と、電線保持部33を軸方向に貫通する貫通孔49とを軸方向に連通させて形成される。フード部35の内側には、基部31の開口端47の周縁の前端面45から前方に伸延する円筒状の外側環状部51が設けられる。
【0018】
雄ハウジング17は、
図3に示すように、基部31及びフード部35の外面に沿って軸方向の前方に片持ち状に伸延されたロックアーム53を有している。ロックアーム53は、基部31の幅方向の両側面から上方に立設する一対の壁部55にそれぞれ支持された2つの脚部57と、これらの脚部57に連ねて支持された基端部59と、基端部59から前方に伸延するアーム部61とを有して形成される。
【0019】
ロックアーム53は、壁部55に支持された基端部59を支点として、アーム部61の前端部が水平方向から上方に変位可能になっている。アーム部61の前端下部には、
図6に示すように、下方に突出するロック部63が設けられる。壁部55は、
図3に示すように、ロックアーム53を取り囲むようにフード部35の壁部39と連なって、枠状に立ち上げて形成され、壁部39,55に囲まれて形成されるロックアーム53の周囲は、雄ハウジング17の外部から内部(例えば、外側環状部51等)を臨むように開口されている。ロックアーム53の上端面は、壁部39,55の上端面と同じ高さか、それよりも低い高さに設定されている。
【0020】
雄端子21は、
図1に示すように、導電性の金属板材等で形成され、電線25の芯線を圧着接続する電線接続部65と、雌端子23と接続される雄タブ67とを一体的に備えている。雄タブ67は、前後方向に延在して棒状に形成され、雄端子21が雄端子収容室29の設定位置に保持された状態で開口端45から突出されて外側環状部51の前端よりも前方に延びて設けられる。
【0021】
一方、雌コネクタ15は、
図1に示すように、絶縁性の合成樹脂で円筒状に形成された雌ハウジング19と、雌ハウジング19に後方から収容される雌端子23とを有している。雌ハウジング19は、
図5及び
図6に示すように、軸方向と直交する断面が雄ハウジング17のフード部35と略相似形に形成され、雌端子23が挿入される2個の雌端子収容室69(キャビティ)が形成された基部71と、基部71から後方に突出する電線保持部73とを一体的に備えて形成される。雌端子収容室69は、2個の雌端子23を互いに図示しない隔壁で仕切って形成され、雌端子収容室69の内部に延出させた図示しないランスを各雌端子23に係合させて、設定位置に保持するようになっている。
【0022】
雌端子収容室69は、
図5及び
図6に示すように、基部71の前端面75に開口する開口端77と、電線保持部73を軸方向に貫通する貫通孔79とを軸方向に連通させて形成される。雌端子収容室69の開口端77は、基部71の前端部に位置する環状の内側環状部81の端面に位置され、内側環状部81の端面が基部71の前端面75をなしている。内側環状部81は、その後方の基部71の外周面を段付き状に小さくした外周面81aを有している。
【0023】
内側環状部81の外周面81aの一部は、基部71の外周面に沿って前方に伸延する環状の覆い体83に包囲されている。覆い体83は、内側環状部81の外周面81aに沿って、この外周面81aと対向するように設けられ、前方の端面が内側環状部81の前端面75よりも後方に位置している。覆い体83の内周面86と内側環状部81の外周面81aは、雌ハウジングの19の前方からみると、開口端77を包囲する有底の環状溝85を形成する。すなわち、覆い体83の内周面86と内側環状部81の外周面81aは、それぞれ環状溝85の互いに対向する溝側面となり、この溝側面は、外側環状部51が挿入可能な溝幅に設定されている。
【0024】
雌ハウジング19には、
図5に示すように、基部71の上面から軸方向に延びる一対の突条部87と、
図6に示すように、基部71の下面から軸方向に延びる段差部89が設けられる。一対の突条部87は、幅方向に離れて設けられ、それぞれ雄ハウジング17の内周面と当接可能になっている。一対の突条部87の内側には、上方に突出する係止部91が設けられる。係止部91は、前方の基部71に向かって下方に傾斜する傾斜面93が設けられ、両ハウジングの嵌合時に、雄ハウジング17のロックアーム53を傾斜面93に沿って押し上げるようになっている。
【0025】
雌端子23は、
図1に示すように、導電性の金属板材等で形成され、電線27の芯線を圧着接続する電線接続部95と、雄端子21の雄タブ67が挿入接続される角筒状の電気接触部97とを一体的に備えている。電気接触部97は、雌端子23が雌端子収容室69の設定位置に保持された状態で、基部71の開口端77から設定距離だけ後退させた位置に先端部が設けられる。
【0026】
次に、本実施形態の特徴構成について詳細に説明する。本実施形態のコネクタ11は、
図6及び
図7に示すように、雄ハウジング17の開口端部に形成された外側環状部51と、雌ハウジング19の開口端部に形成された内側環状部81とを互いに嵌合(接触)させて、雄ハウジング17と雌ハウジング19の開口端同士の隙間を水封する水封部が設けられ、両ハウジングの嵌合時において、内側環状部81の外周面81aに沿って形成された雌ハウジング19の環状溝85に外側環状部51の先端部(前端部)が挿入されるようになっている。
【0027】
外側環状部51は、雄ハウジング17の開口端47の周縁から円筒状に伸延する樹脂製の部材であり、内側環状部81の外側に嵌め込まれるとともに、内側環状部81と比べて比較的弾力性を有して形成される。
図7は、内側環状部81の外周面と嵌合された外側環状部51が外側に押し広げられて弾性変形する水封部(
図6の枠内)のシール構造を拡大して示す。
【0028】
外側環状部51は、雄ハウジング17の軸と平行に延びる内周面101及び外周面103を有して軸方向に肉厚が略均一に設定されているが、先端の内周面101には、前方に末広がりの面取り部105が形成されている。
【0029】
内側環状部81は、雌ハウジング19の基部71の前端部をなして環状に形成された樹脂製の部材であり、外側環状部51に外嵌されるとともに、外側環状部51と比べて肉厚が大きく、高い剛性を有して形成される。内側環状部81は、雌ハウジング19の軸と平行な内周面107と、軸方向に沿って後方(奥)に末広がりに傾斜する外周面81aとを有して前端から後方に向かって肉厚が次第に大きくなるように設定される。
【0030】
本実施形態では、
図7に示すように、外側環状部51の高さ方向に対向する内周面101間の内法寸法をL1、内側環状部81の高さ方向に対向する外周面81a間の前端部及び後端部の外法寸法を、それぞれL2、L3としたときに、少なくともL2よりも大きいL3が、L1よりも大きく設定され、具体的には、L2<L1<L3の寸法関係となっている。この寸法関係は、外側環状部51と内側環状部81の全周にわたって設定されている。そのため、外側環状部51は、雌ハウジング19の環状溝85に先端部が挿入されるに従って、先端部の内周面101が内側環状部81の外周面81aに押圧されて押し広げられる格好で密着され、雄ハウジング17と雌ハウジング19の開口端同士の隙間が水封される。
【0031】
環状溝85に先端部が挿入された外側環状部51は、その先端部が覆い体83で覆われる。本実施形態では、外側環状部51の先端部が内側環状部81によって外側に押し広げられることで、先端部の外周面103が覆い体85の内周面86に当接されるようになっている。
【0032】
次に、両ハウジングの嵌合動作の一例を説明する。まず、
図1に示すように、雄ハウジング17の雄端子収容室29に対して、ゴム栓109を装着した電線25が接続される雄端子21をゴム栓109とともに収容する。また、雌ハウジング19の雌端子収容室69に対して、ゴム栓111を装着した電線27が接続される雌端子23をゴム栓111とともに収容する。この状態で、
図8の矢印で示すように、雌ハウジング19と雄ハウジング17を互いに近づける。
【0033】
雌ハウジング19が雄ハウジング17のフード部35に挿入されると、雌ハウジング19の一対の突条部87がそれぞれ雄ハウジング17の第1切り欠き部41を通過するとともに、雌ハウジング19の係止部91が雄ハウジング17の第2切り欠き部43を通過する。また、雌ハウジング19の段差部89が、雄ハウジング17の案内溝37に沿って案内される。
【0034】
雌ハウジング19の挿入が進むと、雌ハウジング19の係止部91の傾斜面93に沿って、雄ハウジング17のロックアーム53が係止部91に乗り上げて、アーム部61が上方に撓み変形する。そして、アーム部61のロック部63が係止部91を乗り越えたところで、アーム部61が弾性復帰する。これにより、係止部91がロック部63に係止されて、両ハウジングが正規の嵌合状態でロックされる。
【0035】
また、これとともに、内側環状部81と嵌合された外側環状部51は、
図7に示すように、先端部が環状溝85に収容される。環状溝85に収容された先端部は、内周面101が内側環状部81の傾斜する外周面81aを軸方向に押し付けて全周にわたって当接する。このとき、外側環状部51は、内側環状部81に押し付けられて、外側に広がるように弾性変形するが、この弾性変形の復元力が内側環状部81の外周面81aを押し付けるため、外側環状部51と内側環状部81は、全周にわたって互いに密着され、雄コネクタ13の開口端47と雌コネクタ15の開口端77との隙間が水封される。また、外側環状部51の先端部は、外側に押し広げられることで、外周面103が覆い体83の内周面86と当接する。
【0036】
上述したように、本実施形態によれば、雄コネクタ13と雌コネクタ15との嵌合時において、雄コネクタ13の外側環状部51の先端部が、雌コネクタ15の環状溝85に収容されて、覆い体83で覆われている。これにより、例えば、車両の洗浄時において、コネクタ11に噴き付けられた洗浄用の高圧液が、ロックアーム53の周囲の開口を介してコネクタ11内部の外側環状部51に噴き付けられたとしても、内側環状部81と当接する外側環状部51の先端部に高圧液が接触するのを防ぐことができるから、外側環状部51と内側環状部81との水密状態を保持することができ、コネクタ11の防水性の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態において、外側環状部材51の先端部は、覆い体81の内周面86に当接しているから、環状溝85の対向する一対の溝側面、つまり、内側環状部81の外周面81aと覆い体83の内周面86とに挟まれて、環状溝85内に保持される。そのため、外側環状部51は、環状溝85から露出する部分に高圧液が接触しても、内側環状部81との接触状態を安定に保持することができるから、コネクタ11の防水性の低下をより確実に防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態では、雌ハウジング19の外周面に沿って覆い体83を形成しているから、コネクタ11の大型化を招くことがなく、しかも、構造を簡単化することができる。そのため、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態では、外側環状部51と内側環状部81をそれぞれ樹脂で形成し、これらを接触させてシールしているから、防水用のゴムパッキン等が不要になる。そのため、ゴムパッキンの劣化や高水圧による破損等を防ぐことができ、コネクタ11の防水性を高く維持することができる。加えて、ゴムパッキンを設けるスペースが不要になるから、コネクタ11の小型化を図ることができる。
【0040】
また、外側環状部51は、弾力性(バネ性)を有しており、全周にわたって内側環状部81を押圧するように形成されるから、例えば、コネクタ11に振動が伝播されて、両環状部材51,81が軸方向に振動したとしても、外側環状部51は、内側環状部81との接触状態を維持しながら、弾性変形して振動を吸収する。そのため、ハウジング間のガタ付きが生じることがなく、振動に伴うコネクタ11の経時劣化を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記の実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
【0042】
例えば、本実施形態では、雌ハウジング19の覆い体83を基部71の外周面に沿って環状に伸延させて形成する例を説明したが、覆い体83は、両ハウジングの嵌合時において、少なくとも、高圧液の影響を受けやすい外側環状部51の先端部の外周面103を覆うように設けられていればよく、例えば、環状の一部の円弧状に形成されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、雄ハウジング17に、外側環状部材51を形成し、雌ハウジング19に、内側環状部材81及び覆い体83を形成する例を説明したが、この例に限られず、雄ハウジング17には、内側環状部材81及び覆い体83を形成し、雌ハウジング19には、外側環状部材51を形成することもできる。
【0044】
また、本実施形態の水封部は、外側環状部51と内側環状部81が嵌合するときの弾性変形を利用して互いの接触状態を維持しているが、両ハウジングの開口端同士の隙間を水封する構造であれば、必ずしも各環状部材が弾性変形する必要はない。例えば、剛性を有する外側環状部51と内側環状部81の傾斜面同士を水密に接触させることもできるし、外側環状部材51の先端面を環状溝85の溝底に水密に接触させることもできる。