(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228210
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】フルボキサミン遊離塩基の精製方法およびそれを用いた高純度フルボキサミンマレイン酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 249/12 20060101AFI20171030BHJP
C07C 251/58 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
C07C249/12
C07C251/58
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-529666(P2015-529666)
(86)(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公表番号】特表2015-526507(P2015-526507A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】KR2013007647
(87)【国際公開番号】WO2014035107
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年8月22日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0094690
(32)【優先日】2012年8月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512225748
【氏名又は名称】エステックファーマ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ハシム
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジンエ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,キョンジェ
【審査官】
齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06433225(US,B1)
【文献】
特開昭51−125345(JP,A)
【文献】
特表2001−503772(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/077357(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/107897(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルボキサミンマレイン酸塩の製造方法であって、
(a)粗フルボキサミン遊離塩基を、水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させる工程;
(b)(i)工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミン酒石酸塩を得る、あるいは(ii)工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を工程(a)で使用した水混和性有機溶媒中でスラリー化し、得られたスラリーを濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミン酒石酸塩を得る工程;
(c)工程(b)で得られたフルボキサミン酒石酸塩を、水非混和性有機溶媒中、水酸化ナトリウム水溶液と反応させる工程;
(d)工程(c)で得られた反応混合物から有機層を分離した後、分離した有機層を濃縮してフルボキサミン遊離塩基を得る工程;
(e)工程(d)で得られたフルボキサミン遊離塩基を水中でマレイン酸と反応させる工程;および
(f)工程(e)で得られた反応混合物を濾過した後、得られた固体を5〜10℃の水で洗浄した後、乾燥してフルボキサミンマレイン酸塩を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
前記酒石酸がL−(+)−酒石酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)で使用される前記水混和性有機溶媒がアセトンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(a)が、粗フルボキサミン遊離塩基を水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させることによって得られた反応混合物を40〜45℃で30分間〜2時間撹拌した後、室温で30分間〜1時間撹拌する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(c)で使用される前記水非混和性有機溶媒が酢酸エチルであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルボキサミン遊離塩基をフルボキサミン酒石酸塩に転換することを含む、フルボキサミン遊離塩基の精製方法、およびそれを用いた高純度フルボキサミンマレイン酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルボキサミンマレイン酸塩は、下記化学式1の構造を有する化合物であるが、5HT4−受容体拮抗作用および選択的セロトニン再取り込み阻害作用を通じてセロトニン濃度を調節することにより、うつ病および大うつ病性障害の治療に有用に使用される。
【0003】
【化1】
【0004】
米国特許第4,085,225号には、フルボキサミンマレイン酸塩およびその製造方法が開示されている。米国特許第4,085,225号には、5−メトキシ−4’−トリフルオロメチルバレロフェノンオキシムと2−クロロエチルアミン塩酸塩とを反応させることを含む製造方法が開示され、最終的に得られる生成物、すなわちフルボキサミンマレイン酸塩は、アセトニトリルから再結晶化して精製される。しかし、最終工程でアセトニトリルのような有機溶媒を使用することによる残留溶媒の問題があり、特にフルボキサミンマレイン酸塩の純度が比較的低い(HPLC純度:約97.3%)という問題がある。
【0005】
米国特許第6,433,225号には、改善されたフルボキサミンの製造方法が開示されている。米国特許第6,433,225号には、5−メトキシ−4’−トリフルオロメチルバレロフェノンオキシムと2−クロロエチルアミン塩酸塩とを、塩基の存在下、水非混和性有機溶媒中で反応させることが含まれる。最終工程で得られたフルボキサミンマレイン酸塩は、濾過、トルエン洗浄、乾燥、水を使用した再結晶、濾過、冷水での洗浄、乾燥などの多くの単位操作を通じて精製される。しかし、反応の中間段階には精製工程がなく、最終化合物の精製を水による再結晶を通じて行うため、反応中に生成する多くの有機分解産物の精製が難しく、高純度フルボキサミンマレイン酸塩を得るには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、有機分解産物および残留溶媒が根本的に除去された、高純度すなわち99%以上のHPLC純度を有するフルボキサミンマレイン酸塩の製造方法を開発するために多様な研究を行った。本発明者らは、フルボキサミンマレイン酸塩の純度が、マレイン酸塩の形成に使用されるフルボキサミン遊離塩基の純度に決定的な影響を受けることを見出した。特に、本発明者らは、粗フルボキサミン遊離塩基をフルボキサミン酒石酸塩に転換した後、再びフルボキサミン遊離塩基に転換する場合、フルボキサミン遊離塩基の純度が顕著に高まることを見出し、これをマレイン酸塩の形態に転換する場合、99%以上のHPLC純度を有するフルボキサミンマレイン酸塩を製造できることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、フルボキサミンの酒石酸塩への転換を含むフルボキサミン遊離塩基の精製方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、前記精製方法から得られたフルボキサミン遊離塩基から高純度フルボキサミンマレイン酸塩を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、フルボキサミン遊離塩基の精製方法であって、
(a)粗フルボキサミン遊離塩基を、水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させる工程;
(b)(i)工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミンの酒石酸塩を得る、あるいは(ii)工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を工程(a)で使用した水混和性有機溶媒中でスラリー化し、得られたスラリーを濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミンの酒石酸塩を得る工程;
(c)工程(b)で得られたフルボキサミン酒石酸塩を、水非混和性有機溶媒中、水酸化ナトリウム水溶液と反応させる工程;および
(d)工程(c)で得られた反応混合物から有機層を分離した後、分離した有機層を濃縮してフルボキサミン遊離塩基を得る工程
を含む方法、が提供される。
【0010】
本発明の精製方法において、前記酒石酸は、好ましくはL−(+)−酒石酸であってもよく、工程(a)で使用される前記水混和性有機溶媒は、好ましくはアセトンであってもよい。工程(a)は、粗フルボキサミン遊離塩基を水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させることによって得られた反応混合物を、40〜45℃で30分間〜2時間撹拌した後、室温で30分間〜1時間撹拌する工程をさらに含んでもよい。また、工程(c)で使用される前記水非混和性有機溶媒は、好ましくは酢酸エチルであってもよい。
【0011】
本発明の別の態様において、フルボキサミンマレイン酸塩の製造方法であって、
(p)前記精製方法によってフルボキサミン遊離塩基を得る工程;
(q)工程(p)で得られたフルボキサミン遊離塩基を水中でマレイン酸と反応させる工程;および
(r)工程(q)で得られた反応混合物を濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミンマレイン酸塩を得る工程
を含む方法、が提供される。
【0012】
前記工程(r)は、工程(q)で得られた反応混合物を濾過した後、得られた固体を5〜10℃の水で洗浄した後、乾燥することによって、好ましく実施できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、粗フルボキサミン遊離塩基をフルボキサミン酒石酸塩に転換した後、再びフルボキサミン遊離塩基に転換する場合、フルボキサミン遊離塩基の純度が顕著に高まることが見出された。また、前記精製方法により得られたフルボキサミン遊離塩基をマレイン酸塩形態に転換する場合、99%以上のHPLC純度を有するフルボキサミンマレイン酸塩を製造できるということが見出された。また、本発明のフルボキサミンマレイン酸塩の製造方法では、有機溶媒(例えば、アセトニトリル)や水を使用する再結晶工程を行わずとも、単に冷水(例えば、5〜10℃の水)で洗浄することによって、高純度のフルボキサミンマレイン酸塩を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、フルボキサミン遊離塩基の精製方法であって、
(a)粗フルボキサミン遊離塩基を水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させる工程;
(b)(i)工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を乾燥して、フルボキサミン酒石酸塩を得る、あるいは(ii)工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を工程(a)で使用した水混和性有機溶媒の中でスラリー化し、得られたスラリーを濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミン酒石酸塩を得る工程;
(c)工程(b)で得られたフルボキサミン酒石酸塩を、水非混和性有機溶媒中、水酸化ナトリウム水溶液と反応させる工程;および
(d)工程(c)で得られた反応混合物から有機層を分離した後、分離した有機層を濃縮してフルボキサミン遊離塩基を得る工程
を含む方法、を提供する。
【0015】
本発明の精製方法は、粗フルボキサミン遊離塩基をフルボキサミン酒石酸塩に転換することを含む。フルボキサミン酒石酸塩は、アセトン、酢酸エチル、エーテル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒に対する溶解度が非常に低いため、再結晶を通じて容易に高収率かつ高純度で得ることができる。特に、オイル状のフルボキサミン遊離塩基は、カラムクロマトグラフィー法以外に精製する方法がないが、フルボキサミン酒石酸塩はオイル状ではない固体状であるため、大量生産に非効率的なカラムクロマトグラフィー法を使用せずとも簡便に得ることができる。
【0016】
本発明の精製方法は、粗フルボキサミン遊離塩基を水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させる工程(すなわち、工程(a))を含む。
【0017】
前記粗フルボキサミン遊離塩基は、先行文献、例えば米国特許第4,085,225号に開示された方法によって製造することができ、通常約80〜95%のHPLC純度を有するオイルの状態で得られる。
【0018】
前記酒石酸水溶液は、酒石酸を水に溶解させて得ることができ、この時、酒石酸は、粗フルボキサミン遊離塩基1モルに対して0.9〜1.2モル、好ましくは0.98〜1.2モルの量で使用できる。また、前記酒石酸水溶液の製造時、使用する水の量は厳密には制限されず、例えば酒石酸1重量部に対して1〜4重量部の範囲で使用できる。前記酒石酸としては、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸のいずれも使用でき、収率および純度の面でL−(+)−酒石酸が特に好ましく使用できる。
【0019】
工程(a)で使用される前記水混和性有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどであってもよく、好ましくはアセトンであってもよい。
【0020】
上記したように、工程(a)で得られた反応混合物は、続く工程(b)に直接使用できる。一方、規模を工業的大量生産に拡大する場合、工程(a)の反応混合物に存在する沈殿物が微細粒子の形態で生成され、続く工程(b)において長時間の濾過が必要となる恐れがある。しかし、工程(a)の反応混合物を加温し、所定の時間撹拌した後、常温に冷却する場合、より大きい粒子の形態で得られることによって、続く濾過を簡単に実施できることが見出された。したがって、本発明の一実施形態において、工程(a)は、粗フルボキサミン遊離塩基を、水混和性有機溶媒中、酒石酸水溶液と反応させることによって得られた反応混合物を、40〜45℃で30分間〜2時間撹拌した後、室温で30分間〜1時間撹拌する工程をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の精製方法は、フルボキサミン酒石酸塩を得る工程、すなわち工程(b)を含む。工程(b)は、工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を乾燥することによって、フルボキサミン酒石酸塩を単離することができ、また、選択的に、工程(a)の反応混合物を濾過した後、得られた固体を工程(a)で使用した水混和性有機溶媒の中でスラリー化し(すなわち、有機溶媒中に分散させ)、得られたスラリーを濾過した後、得られた固体を乾燥することによって、フルボキサミン酒石酸塩を単離することができる。前記のように、スラリー化工程を経由する場合、さらに高純度フルボキサミン酒石酸塩を得ることができるという長所がある。
【0022】
本発明の精製方法は、フルボキサミン酒石酸塩をフルボキサミン遊離塩基に転換する工程、すなわち工程(c)を含む。工程(c)は、工程(b)で得られたフルボキサミン酒石酸塩を水非混和性有機溶媒中、水酸化ナトリウム水溶液と反応させることによって実施できる。前記水非混和性有機溶媒は、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジエチルエーテルなどであってもよく、好ましくは酢酸エチルであってもよい。
【0023】
また、本発明の精製方法は、得られたフルボキサミン遊離塩基を単離する工程、すなわち工程(d)を含む。工程(d)は、工程(c)で得られた反応混合物から有機層を分離した後、分離した有機層を濃縮することによって実施できる。前記濃縮により得られた生成物(すなわち、精製されたフルボキサミン遊離塩基)は高純度、すなわち約99.5%以上のHPLC純度を有する。得られた生成物は高純度フルボキサミンマレイン酸塩の製造に直接、すなわちそのままの状態で、使用することができる。
【0024】
したがって、本発明は、前記精製工程を含むフルボキサミンマレイン酸塩の製造方法を含む。前記精製工程から得られたフルボキサミン遊離塩基のマレイン酸塩への転換は、公知の方法、例えば、米国特許第4,085,225号、米国特許第6,433,225号などに開示された方法によって実施できる。
【0025】
しかし、本発明による精製工程を経て得られたフルボキサミン遊離塩基の場合、有機溶媒を使用する再結晶工程を必要とせず、また水中での再結晶工程も行わず、簡便に高純度フルボキサミンマレイン酸塩を製造できる。
【0026】
したがって、本発明の一実施形態において、(p)前記精製方法によってフルボキサミン遊離塩基を得る工程;(q)工程(p)で得られたフルボキサミン遊離塩基を水中でマレイン酸と反応させる工程;および(r)工程(q)で得られた反応混合物を濾過した後、得られた固体を乾燥してフルボキサミンマレイン酸塩を得る工程を含む、フルボキサミンマレイン酸塩の製造方法が提供される。
【0027】
工程(r)は、工程(q)で得られた反応混合物を濾過した後、得られた固体を5〜10℃の水で洗浄した後、乾燥することによって、好ましく実施できる。
【0028】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はそれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
下記実施例において出発物質として使用した粗フルボキサミン遊離塩基は、米国特許第4,085,225号で開示された方法(実施例6)によって製造した。すなわち、ジメチルホルムアミド(12.5L)に5−メトキシ−4’−トリフルオロメチルバレロフェノンオキシム(5.0mol、1.3kg)、2−クロロエチルアミン塩酸塩(5.2mol、0.6kg)、および水酸化カリウム(0.7kg)を10℃で撹拌しながら順に加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した後、真空濃縮してジメチルホルムアミドを除去した。得られた残渣を水に入れ、pH3になるまで2N塩酸を加えた。エーテルを用いて残留するオキシムを除去した後、水層に2N水酸化ナトリウムを加えた。得られた溶液をエーテルで3回抽出し、有機層を合わせて5%重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、真空濃縮して、オイル状の粗フルボキサミン遊離塩基(1.12kg、収率75%)を得た(HPLC純度:81.9%)。
【0030】
実施例1
工程1:フルボキサミンL−酒石酸塩の製造
粗フルボキサミン遊離塩基(122g、0.385mol)をアセトン(1,933g)に溶解させた。別容器において、精製水(86g)にL−(+)−酒石酸(57.7g、0.385mol)を溶解させ、得られた溶液を前記粗フルボキサミン遊離塩基のアセトン溶液に加えた。反応液を約42℃に加温し、1時間撹拌した後、室温で1時間さらに撹拌し、沈殿物を生成させた。反応混合物を濾過し、得られた固体をアセトン(412g)で洗浄した。得られた固体をアセトン(995g)に入れ、室温で1時間スラリー化した後、濾過し、得られた固体をアセトン(212g)で洗浄した後、約40℃で真空乾燥してフルボキサミンL−酒石酸塩156.5gを得た(収率:87%、HPLC純度:98.9%)。
工程2:フルボキサミン遊離塩基の製造
前記で得られたフルボキサミンL−酒石酸塩(112g、0.239mol)を酢酸エチル(404g)でスラリー化した後、水酸化ナトリウム(28.7g)を水(207kg)に溶解させて得られた溶液を加え、1時間撹拌した。有機層を分取し、精製水で1回洗浄した後、濃縮してフルボキサミン遊離塩基72.2gを得た(収率:95%、HPLC純度:99.5%)。
工程3:フルボキサミンマレイン酸塩の製造
精製水(493g)にマレイン酸(33.3g、0.287mol)を溶解させ、得られた溶液を前記濃縮したフルボキサミン遊離塩基に添加し、室温で2時間撹拌した。生成した固体を濾過し、約10℃に冷却した精製水(34g)で洗浄した後、約30℃の熱風循環乾燥器で乾燥し、フルボキサミンマレイン酸塩93.5gを得た(収率:95%、HPLC純度:99.9%)。
【0031】
実施例2
L−(+)−酒石酸の代わりにD−(−)−酒石酸(57.7g、0.385mol)を使用したことを除いては、実施例1の工程1と同様の方法で反応を行い、フルボキサミンD−酒石酸塩144.3gを得た(収率:80%、HPLC純度:98.1%)。
また、前記で得られたフルボキサミンD−酒石酸塩(112g、0.239mol)を使用し、実施例1の工程2および3と同様の方法で反応を行い、フルボキサミン遊離塩基69.6g(収率:91.5%、HPLC純度:98.8%)およびフルボキサミンマレイン酸塩90.3g(収率:91.6%、HPLC純度:99.1%)を得た。
【0032】
実施例3
L−(+)−酒石酸の代わりにDL−酒石酸(57.7g、0.385mol)を使用したことを除いては、実施例1の工程1と同様の方法で反応を行い、フルボキサミンDL−酒石酸塩155.1gを得た(収率:86%、HPLC純度:98.6%)。
また、前記で得られたフルボキサミンDL−酒石酸塩(112g、0.239mol)を使用して実施例1の工程2および3と同様の方法で反応を行い、フルボキサミン遊離塩基68.8g(収率:90.5%、HPLC純度:99.0%)およびフルボキサミンマレイン酸塩91.9g(収率:93.2%、HPLC純度:99.6%)を得た。
【0033】
比較例1.米国特許第4,085,225号の実施例6による製造
ジメチルホルムアミド(12.5ml)に、5−メトキシ−4’−トリフルオロメチルバレロフェノンオキシム(5.0mmol、1.3g)、2−クロロエチルアミン塩酸塩(5.2mmol、0.60g)、および水酸化カリウム(0.7g)を10℃で撹拌しながら順に加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した後、真空濃縮してジメチルホルムアミドを除去した。得られた残渣を水に入れ、pH3になるまで2N塩酸を加えた。エーテルを用いて残留するオキシムを除去した後、水層に2N水酸化ナトリウムを加えた。得られた溶液をエーテルで3回抽出し、有機層を合わせて5%重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、真空濃縮した。得られた残渣を無水エタノールに溶解させ、等モル量のマレイン酸を加えた。清澄な溶液が得られるまで反応混合物を還流撹拌した後、真空濃縮してエタノールを除去した。得られた残渣をアセトニトリルから再結晶化し、フルボキサミンマレイン酸塩1.3gを得た(収率:63.4%、HPLC純度:97.3%)。
【0034】
比較例2.
精製水(493g)にマレイン酸(33.3g、0.287mol)を溶解させ、得られた溶液を粗フルボキサミン遊離塩基(72.2g、0.227mol)に添加し、室温で2時間撹拌した。生成した固体を濾過し、約10℃に冷却した精製水(34g)で洗浄した後、約30℃の熱風循環乾燥器で乾燥して、フルボキサミンマレイン酸塩91.1gを得た(収率:92.4%、HPLC純度:94.7%)。