(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】バクロフェン及びアカンプロセートの組み合わせは、試験した濃度(表1参照)がどのようなものであれ、処置期間に関係なく(試験前の7日間(濃い灰色の棒)又は試験の2時間前(淡い灰色の棒))、マウスの学習及び作業記憶能力(T字型迷路交替行動タスクにおける)を有意に改善するのに効果的である;黒い棒グラフ:ビヒクルを投与された動物;
*:ビヒクルとは有意に異なる、ANOVA及びダネット検定。
【
図2】バクロフェン及びアカンプロセートを配合し、試験の僅か2時間前に1回投与した場合に、相乗的に作用して、学習及び作業記憶能力(T字型迷路交替行動タスクにおける)を改善する。バクロフェン(BCL)及びアカンプロセート(ACP)の組み合わせの有意な正の効果が非常に低い用量で観察され(濃い灰色の棒グラフ)、このような濃度においては単独で使用された場合にはどの単一の分子にも有意な改善は観察されない。(
*:ビヒクルの投与された動物とは有意に異なる(黒い棒グラフ)、スチューデントT検定;ns:ビヒクルと有意に異ならない)。黒い棒グラフ:ビヒクルの投与された動物。
【
図3】本発明の組成物は、慢性的な投与計画(試験前の7日間の処置)において、スコポラミンにより誘発された健忘症モデルにおける学習及び作業記憶能力を改善する。記憶喪失は、ビヒクルの投与されたスコポラミンで処置された動物(濃い灰色の棒グラフ)と比較して、11%から37%(淡い灰色の棒グラフ)防がれる。黒い棒グラフ:ビヒクルの投与された動物。
【
図4】スコポラミンにより誘発された健忘症における記憶能力の改善。作業記憶は、ビヒクルの投与されたスコポラミンで処置された動物(濃い灰色の棒グラフ)と比較して、試験の前日からのみ処置された動物において有意に増加している。スコポラミンで処置された動物における学習及び記憶能力の低下は、バクロフェン−アカンプロセートの組み合わせを投与された場合に(淡い灰色の棒グラフ)、14%から44%に減少している。黒い棒グラフ:ビヒクルの投与された動物。
【
図5】若年被験者は、検出タスク試験(DET)において高齢者よりも成績が良い。若年コホート(黒い四角)及び高齢コホート(黒い丸)(どちらもプラセボを投与された)のDETの生データスコア(Lmn、行動速度)が、実験日程の関数としてプロットされている。最善の成績は最低のスコアをもたらす。予期された通り、若年被験者における認知能力は、高齢者より高い。
【
図6】バクロフェン−アカンプロセートの組み合わせは、健康な被験者の認知機能を改善させる。バクロフェン−アカンプロセート(黒い四角、実線)又はプラセボ(白い四角、点線)の投与された、若年コホートにおけるDETにおける基線からの変化のスコア(Lmn、行動速度、減少は能力の改善に相当する)が、実験日程の関数としてプロットされている。バクロフェン−アカンプロセートの組み合わせの投与された被験者は、プラセボの投与された被験者よりも良好な成績を示す。能力の改善が、全ての処置期間中、処置されたコホートにおいて観察される。
【
図7】Cogstate(登録商標)認知検査の成績は、混合化合物の血漿中濃度に相関する。被験者の血液試料中の薬物投与から5時間後10日目のアカンプロセートの血漿中濃度(横目盛り)と、薬物投与から6時間後10日目の認知検査の複合スコア(縦目盛り)との間に正の相関(r、ピアソン相関検定)が観察される。
【
図8】ERPデータは、混合化合物の血漿中濃度と相関する。薬物投与から1.5時間後10日目のバクロフェンの血漿中濃度と、薬物投与から6時間後10日目のERP複合スコアとの間に正の相関(r、ピアソン相関検定)が観察される。
【
図9】ERPデータは、混合化合物の血漿中濃度と相関する。薬物投与から1.5時間後10日目のアカンプロセートの血漿中濃度と、10日目のERP複合スコア(ERP測定値は薬物投与から6時間後に集める)との間に正の相関(r、ピアソン相関検定)が判明する。
【
図10】バクロフェン−アカンプロセートの組み合わせは、スコポラミンにより誘発された認知障害を効果的に低減させる。グロトン迷路学習試験(GMLT)の生データスコアを縦目盛りに沿ってプロットする。スコアの増加は、GMLTにおける能力の障害に対応する。スコポラミン(3時間目に投与)は、プラセボ処置被験者(丸、点線)において認知能力の急速な低下を誘発するが、これはスコポラミン注射から約6時間(9時間目)続く。バクロフェン−アカンプロセート混合物(四角、灰色の線)は、認知能力に対するスコポラミンの有害な作用を減少させるのにこの期間に及び効果的である。認知スコアの有意な改善が、バクロフェン及びアカンプロセートのより高い血漿中濃度に対応する時間枠で観察される(横目盛りの下の陰影のある棒グラフ、濃い:より高い血漿中濃度、淡い:より低い血漿中濃度)。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、被験者における記憶及び関連した精神機能を改善又は刺激するための組成物及び方法に関する。より特定すると、本発明は、哺乳動物における記憶及び関連した精神機能を改善するのに効果的である向知剤としての、少なくとも
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
の組み合わせを含む組成物の使用を開示する。
【0018】
記憶(又はより正確には学習及び記憶現象)は、複雑な脳のプロセスについての総称であり、これにより、脳によって知覚された様々な情報が保存され、コード化されかつ想起される。記憶は、生物の受けとめる全種類の情報(運動、言語、視覚、感情、臭気など)の保存から発生する。生理学的には、これらのプロセスは、シナプス応答の増強に(シナプス強度の調節及びシナプス形成現象(長期増強と呼ばれる)を通して)、及び、神経連絡の創造を通したニューロンネットワークの高密度化に起因する。科学者は、短期記憶(ワーキングメモリとも呼ばれる)と長期記憶の区別をする。短期記憶は、短期間の情報の保持であり(数分間から数時間続く)、その容量は限られている。長期記憶は、はるかにより多い情報の保存を可能とし、これを無限の期間に及び可能とする(一生などの長い期間)。長期記憶は、しばしば相互に関連した異なるサブタイプの記憶からそれ自体が構成されることが判明した。2種類の記憶の間の遷移は、記憶固定と呼ばれ、異なる脳領域間の連絡の強化、及びこれらの異なる領域から派生する情報の統合の強化の結果である。短期記憶から長期記憶への遷移は、通常、ニューロンの反復刺激から起こる。海馬は、固定化プロセスにおいて中心的な役割を果たしていることが示された:アルコール依存症患者に観察される海馬の容量の変化が、彼らがしばしば経験する認知障害及び記憶障害に相関している。
【0019】
記憶喪失は、通常、刺激をあまり受けていない又はより活性ではないニューロンのシナプスの強度の活性依存的な減少が原因である。前シナプスの強化又は新しいシナプスの創造を必要とする過剰な新たな情報もまた、他の古い情報を弱める可能性があり、これにより、以前に保存された情報の忘却が必要とされる。逆に、さらに他の情報を保存することができないことは、過剰な古い情報に起因する可能性がある。従って、保存又は対処すべき大流量のデータのような環境要因もまた、記憶及び関連した精神機能に影響を及ぼし得る。
【0020】
睡眠不足、ストレス、感情の状態、精神病、薬物乱用、又は薬物摂取のような他の要因が、特に、シナプスを弱めるか又は強化することによって、情報の保存に対して作用を及ぼすことによって、記憶及び関連した精神機能に影響を及ぼすことが知られている。
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、バクロフェン、アカンプロセート、シナカルセト、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドの組合せから選択された少なくとも2つの薬物を含む組成物が、インビボにおいて、短期又は長期記憶並びに関連した精神機能を必要とする種々のタスクの記憶能力を増強するために特に効果的であることを発見した。
【0022】
本発明の脈絡において、「記憶」という用語は、短期及び長期記憶を包含する。
【0023】
本発明の脈絡において、「精神機能」という用語は、記憶プロセス(例えば集中力、覚醒、注意力、学習、推理力、又は言語処理)に関係する又はそれを維持することのできる認知タスクを含む。
【0024】
本発明の組成物は、任意の哺乳動物における記憶及び/又は精神機能を改善することを目的に使用され得るが、このような改善は、優れた能力の要求に直面しているか、その能力及びその認知の健康を進んで改善又は維持したい健常人において特に望ましくあり得ると考えられるべきである。このような人々は、例えば、学生、介護者、パイロットという職業のようにその記憶、学習又は覚醒能力を期日通りに又は慢性的に上げる必要がある人々、あるいはより一般的には、精神的疲労、睡眠不足、日々の精神的ストレス、職業的ストレスに直面しなければならない人々、あるいは複数のタスク活動に対処しなければならない人々である。別の言葉で言えば、本発明の組成物は、社会職業的な負担に直面しなければならない人々を目的とする。それはまた、記憶の愁訴を有する他の人々、例えば、妊娠、出産後、閉経周辺期又は閉経後などのホルモン変化又はホルモン不均衡の変化の最中の記憶喪失を経験している女性にも関し得る。認知能力の僅かな比率の増大でさえも、機能的成果の有意な改善をもたらし得ることが一般的に認められている(英国医学アカデミー(英国)の「Brain science, addiction and drugs」の報告、2008を参照)。そうした人々は健常人であるので、血管性認知症、老人性認知症、加齢性記憶障害、アルツハイマー病、レビー小体認知症又は軽度認知障害を患っていない。
【0025】
このような刺激又は改善を必要とする他の人々は、その記憶及び/又は記憶に関連した精神機能を損なう容態を経験しているか、あるいは経験するリスクがある人々である。従って、本発明の目的は、前記の記憶障害容態の病因学的原因を処置することではなく、その記憶及び/又は記憶に関連した機能を改善することを通して、その健康の改善を、このような容態又は疾患を経験しているか、又は経験するリスクがある人々に提供することである。
【0026】
このような人々は、例えば:
− 物質乱用(例えばコカイン、ヘロイン、大麻、アンフェタミンなど)、重金属への曝露(例えば鉛、アルミニウム又は水銀など)、薬物、例えばバルビツレート、ベンゾジアゼピン、抗コリン作用薬(例えばスコポラミン)、麻酔薬(例えばプロポフォール)、スタチン(例えばアトルバスタチン、ロスバスタチン、又はシンバスタチン)、又はいくつかの抗癲癇薬(例えばカルバマゼピン)、第一世代抗ヒスタミン作用薬などの記憶に対して負の作用を及ぼす処置を受けたか又は毒物に曝された人々(記憶消失を誘発すると記載された薬物のいくつかは、特に、Tannenbaum et al. [14]によって列挙されている)、
− 薬物禁断症状を経験している人々、
− 甲状腺機能低下症又は甲状腺機能亢進症、好ましくは甲状腺機能低下症に至る甲状腺の容態を有する人々、
− 精神遅滞に関連し、かつルビンシュタイン・テイビ症候群、グレイグ症候群、アペール症候群、アンジェルマン症候群、コフィン・ローリー症候群、レット症候群、脆弱X症候群又はウイリアムズ症候群から選択された疾患に患う人々、
− 例えば計算力障害、つづり字障害又はディスレクシアなどの、学習、言語、計算及び/又は読字の病的困難を患う人々、特に小児、
− うつ病、精神病(例えば自閉症又は統合失調症)、注意欠陥多動性障害、不安症又は強迫性障害などの精神疾患を患う人々、
− 食事障害(例えば、肥満外科手術、栄養不良又は栄養失調、不十分な非経口栄養、利尿療法、薬物摂取から生じた)に患うか、又は代謝性欠乏症、例えば鉄欠乏症、ビタミン欠乏症、例えばチアミン(ビタミンB1)欠乏症(例えばコルサコフ症候群、ウェルニッケ脳症)、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、もしくは遺伝性代謝性欠乏症(例えば、精神遅滞を起こすフェニルケトン尿症)の原因となる慢性疾病(例えば感染、慢性的下痢、セリアック病、クローン病)に患う人々。
【0027】
本明細書において使用されるような、このような人々は、血管性認知症、老人性認知症、加齢性記憶障害、アルツハイマー病、レビー小体認知症、又は軽度認知障害を患っていない。
【0028】
本明細書において使用されるような「改善」という用語は、以前の尺度又は基準データと比較して、記憶及び/又は関連した精神機能の能力の増大を意味する。記憶及び/又は記憶に関連した精神機能におけるこのような能力は、当技術分野において周知のいくつかの記憶及び認知検定を使用して測定され得る。前記の「改善」はまた、さもなければ、前記の記憶及び/又は関連した精神機能の能力が弱まることが予期され得る、上記の容態又は活性のいずれかを経験している被験者における、以前のレベルと比較した前記の能力の維持でもあり得ると考えられるべきである。
【0029】
認知障害容態又は疾患を患っている又は患ったことのある被験者における本明細書において使用される記憶障害の「処置」は、上記に定義されているようなそれを必要とする被験者における記憶障害及び/又は記憶に関連した精神機能の欠損の治療、防止、予防、遅延又は減少を含む。
【0030】
本発明の脈絡において、特定の薬物又は化合物の呼称は、特に命名された分子だけでなく、任意の化学的純度の任意の薬学的に許容されるその塩、水和物、誘導体、異性体、ラセミ体、コンジュゲート、プロドラッグ又は誘導体も含むことを意味する。
【0031】
「組合せ又は併用処置/療法」という用語は、化合物(群)及び/又は薬物が被験者に同時投与されて、生物学的効果を引き起こす処置を示す。本発明による併用療法において、少なくとも2つの薬物が一緒に又は別々に、同時に又は順次投与され得る。また、本発明の化合物(群)及び/又は薬物(群)は、異なる経路及びプロトコールを通して投与されてもよい。結果として、それらは一緒に処方されてもよいが、組み合わせの薬物はまた別々に処方されてもよい。
【0032】
本明細書において使用される「プロドラッグ」という用語は、本発明の化合物の任意の機能的誘導体(又は前駆体)を指し、これは生物学的系に投与されると、例えば自発的化学反応(群)、酵素により触媒される化学反応(群)、及び/又は代謝化学反応(群)の結果として前記化合物を生じる。プロドラッグは、典型的には、X−薬物という構造を有し、Xは不活性担体部分であり、薬物は活性化合物である。通常、プロドラッグは活性を欠失しているか、又は薬物よりも活性が低く、薬物はインビボで担体から放出される。プロドラッグは、通常、不活性であるか又は生じる薬物よりも活性が低く、例えば、薬物の物理化学的特性を改善するために、薬物を特定の組織に標的化するために、薬物の薬物動態特性及び薬力学特性を改善するために、及び/又は望ましくない副作用を減少させるために使用することができる。プロドラッグ設計を受け入れられるいくつかの一般的な官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン基、リン酸基/ホスホン酸基、及びカルボニル基が挙げられるがそれらに限定されるわけではない。これらの基の修飾を介して典型的に産生されるプロドラッグとしては、エステル、カーボネート、カルバメート、アミド及びホスフェートが挙げられるがそれらに限定されるわけではない。適切なプロドラッグの選択のための具体的な技術的指針は、一般常識である[15〜19]。さらに、プロドラッグの調製は、当業者には公知の慣用的な方法によって実施され得る。他のプロドラッグを合成するために使用され得る方法は、その問題に関する多くの概説に記載されている[15、20〜25]。例えば、アルバクロフェンプラカルビルは、ChemID plus Advanceデータベース(website: chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/)に列挙され、アルバクロフェンプラカルビルはバクロフェンの周知のプロドラッグ[26、27]である。
【0033】
化合物の「誘導体」という用語は、前記化合物に機能的及び/又は構造的に関連した任意の分子、例えば、このような化合物の酸、アミド、エステル、エーテル、アセチル化された変種、ヒドロキシル化された変種、又はアルキル化(C1〜C6)された変種を含む。誘導体という用語はまた、上記に列挙されているような1つ以上の置換基を欠失した、構造的に関連した化合物を含む。例えば、ホモタウリンは、アカンプロセートの脱アセチル化誘導体である。化合物の好ましい誘導体は、公知の方法によって決定されたような、前記化合物に対してかなりの類似度を有する分子である。親分子に対して類似した化合物がその類似性係数と共に、PubChem(http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/search/)又はDrugBank (http://www.drugbank.ca/)などの数多くのデータベースに見出され得る。より好ましい態様において、誘導体は、親薬物に対して0.4を超える、好ましくは0.5を超える、より好ましくは0.6を超える、さらにより好ましくは0.7を超える谷本類似性係数を有するべきである。谷本類似性係数は、2分子間の構造類似度を測定するために広く使用されている。谷本類似係数は、オンライン(http://www.ebi.ac.uk/thornton-srv/software/SMSD/)で利用可能なSmall Molecule Subgraph Detector[28、29]などのソフトウェアによってコンピューター計算され得る。好ましい誘導体は、親化合物と構造的及び機能的の両方において関連しているべきであり、すなわち、それらはまた、親薬物の活性の少なくとも一部を保持するべきである。
【0034】
誘導体という用語はまた、薬物の代謝産物、すなわち、例えば、生物への投与後に、通常、特殊な酵素系を通しての前記薬物の(生化学的)修飾又は加工からもたらされ、かつ薬物の生物学的活性を提示又は保持した分子を含む。代謝産物は、親薬物の治療作用の多くに関与すると開示されている。特定の態様において、本明細書において使用される「代謝産物」は、親薬物の活性の少なくとも一部を保持した、修飾又は加工された薬物を示す。
【0035】
「塩」という用語は、本発明の化合物の薬学的に許容され比較的無毒性な無機又は有機酸付加塩を指す。薬学的な塩の形成は、酸性、塩基性又は双イオン性の薬物分子と、対イオンとが対を形成し、これにより塩形の薬物が作られることからなる。多種多様な化学種を、中和反応に使用することができる。従って、本発明の薬学的に許容される塩としては、塩基として機能する主化合物を、無機酸又は有機酸と反応させて、塩を、例えば、酢酸、硝酸、酒石酸、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、又はクエン酸の塩を形成することによって得られたものが挙げられる。本発明の薬学的に許容される塩としてはまた、主化合物が酸として機能し、これを適切な塩基と反応させて、例えば、ナトリウム塩を、カリウム塩を、カルシウム塩を、マグネシウム塩を、アンモニウム塩を、又はコリン塩を形成するようなものが挙げられる。所与の活性成分の大半の塩は生物学的に同等であるが、いくつかは、とりわけ、高い溶解度又はバイオアベイラビリティ特性を有し得る。塩の選択は、現在、H. Stahl及びC.G Wermuthによってそのハンドブックに教義されているように、薬物開発プロセスにおいて一般的で標準的な操作である[30]。
【0036】
好ましい態様において、化合物の呼称は、化合物それ自体、並びに、任意の薬学的に許容されるその塩、水和物、異性体、ラセミ体、エステル又はエーテルを指摘することを意味する。
【0037】
より好ましい態様において、化合物の呼称は、具体的に呼称された化合物それ自体、並びに、その薬学的に許容される塩を指摘することを意味する。
【0038】
特定の態様において、化合物の持続放出製剤が使用される。
【0039】
上記に考察されているように、本発明は、記憶プロセスに関与する記憶及び関連した精神機能に対する強力で予期せぬ効果を及ぼす特定の薬物組成物に関する。それ故、これらの組み合わせは、それを必要とする被験者における記憶を改善するための新規なアプローチを示す。より具体的には、本発明は、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を含み、インビボにおいて記憶及び記憶に関連した精神機能の能力に対して有意かつ相乗的な効果を与える、組成物を開示する。
【0040】
実際、実験部において示されているように、本発明の併用療法は、実質的に、被験者の学習及び記憶能力を改善する。特に、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の組み合わせが、健康な被験者又は認知障害容態を経験している被験者のいずれかにおいて短期及び長期記憶に対して強力で予期せぬ正の効果を及ぼすことを発見した。本発明者らは、また、薬物により誘発された健忘症のためのこのような効果も示す。単独でも本発明者らによって見い出された用量において効果的であるが、実施例はまた、本発明の併用療法が、非常に低い用量でも効果的であり得ることを示し、この用量では単独の薬物では、学習及び記憶の能力における改善を全く付与しない。これらの結果は顕著であり、特に有益である。なぜなら、このような低い用量では、任意の起こり得る副作用(あるならば)が回避されそうであるからである。
【0041】
上記に引用された薬物の例示的なCAS番号を、以下の表1に提供する。表1はまた、非制限的に、本発明の組成物に使用されるこれらの化合物の一般的な塩、ラセミ体、プロドラッグ、代謝産物、又は誘導体を引用する。
【0042】
【表1】
【0043】
バクロフェンプロドラッグの具体例は、CNS標的化にとって特に興味深いものとしてバクロフェンエステル及びエステルカルバメートを示したHanafi et al., 2011[31]に示されている。従って、このようなプロドラッグは、本発明の組成物にとって特に適している。前述されているようなアルバクロフェンプラカルビルも周知のプロドラッグであり、従って、本発明の組成物においてバクロフェンの代わりに使用され得る。バクロフェンについての他のプロドラッグは、以下の特許出願に見出すことができる:WO2010102071、US2009197958、WO2009096985、WO2009061934、WO2008086492、US2009216037、WO2005066122、US2011021571、WO2003077902、WO2010120370。
【0044】
アカンプロセートの有用なプロドラッグ、例えばアカンプロセートのネオペンチルスルホニルパントイン酸エステル、ネオペンチルスルホニルエステルプロドラッグ、又は遮蔽されたネオペンチルスルホニルカルボン酸エステルプロドラッグが、特に、WO2009033069、WO2009033061、WO2009033054、WO2009052191、WO2009033079、US2009/0099253、US2009/0069419、US2009/0082464、US2009/0082440及びUS2009/0076147に列挙されている。
【0045】
1つの態様において、本発明は、必要とされる被験者における、記憶及び/又は記憶に関連した精神機能を改善するための医薬品の製造のための、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物の使用に関する。
【0046】
特定の態様において、本発明は、必要とされる被験者における、記憶及び関連した精神機能を改善するために使用するための、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を含む組成物に関する。
【0047】
別の態様において、本発明は、必要とされる被験者における、記憶及び/又は精神に関連した機能を改善するための方法に関し、このような方法は、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を前記被験者に投与することを含む。
【0048】
好ましい態様において、本発明は、必要とされる被験者における、記憶、学習、注意力、推理力、集中力、言語処理又は覚醒の能力を高めるための、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を含む組成物の使用に関する。
【0049】
別の好ましい態様において、本発明は、必要とされる被験者における、短期及び/又は長期記憶を改善するための、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を含む組成物の使用に関する。
【0050】
別の態様において、本発明は、上記に定義されているような認知障害容態又は疾患を患っているか、患ったことがあるか、又は患うリスクのある被験者における、記憶及び精神機能を改善するために使用するための、シナカルセト、バクロフェン、アカンプロセート、メキシレチン、スルフィソキサゾール、及びトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を含む組成物に関する。
【0051】
特定の態様において、本発明は、必要とされる被験者における、記憶及び精神機能を改善するための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物の使用に関する。
【0052】
特定の態様において、本発明は、必要とされる被験者における、短期及び/又は長期記憶を改善するための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物の使用に関する。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、必要とされる被験者における、記憶、学習、注意力、推理力、集中力、言語処理又は覚醒の能力を高めるための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物の使用に関する。
【0054】
別の態様において、本発明は、甲状腺機能低下症又は甲状腺機能亢進症に至る甲状腺の容態を患っている被験者における、記憶及び/又は精神機能障害の予防又は治療に使用するための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物の使用に関する。
【0055】
別の態様において、本発明は、うつ病、精神疾患(例えば自閉症又は統合失調症)、注意欠陥多動性障害、不安症、又は強迫性障害から選択された精神疾患を患っているか、患ったことがあるか、又は患うリスクのある被験者における、記憶及び/又は精神機能障害の予防又は治療に使用するための
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物に関する。
【0056】
別の態様において、本発明は、精神遅滞に関連し、かつルビンシュタイン・テイビ症候群、グレイグ症候群、アペール症候群、アンジェルマン症候群、コフィン・ローリー症候群、レット症候群、脆弱X症候群又はウイリアムズ症候群から選択された疾患を患っている被験者における、記憶及び/又は精神機能障害の予防又は治療に使用するための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物に関する。
【0057】
別の態様において、本発明は、処置を受けているか又は毒物に曝された、食事性又は代謝性欠乏症を患っている被験者における、記憶及び/又は精神機能障害の予防又は治療に使用するための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物に関する。
【0058】
本発明はまた、例えば計算力障害、つづり字障害又はディスレクシアなどの、学習、言語、計算及び/又は読字の病的困難を患っている被験者における、記憶及び/又は精神機能障害の予防又は治療に使用するための、
− バクロフェン及びアカンプロセート、
− メキシレチン及びシナカルセト、
− バクロフェン及びトラセミド、又は
− スルフィソキサゾール及びトラセミド
から選択された少なくとも1つの組み合わせを含む組成物に関する。
【0059】
上記組成物は、単独で使用されても、又は追加の化合物とさらに組み合わせてもよい。これに関して、特定の態様において、本発明の組成物はさらに、メチマゾール、プリロカイン、ジフィリン、キナクリン、カルベノキソロン、アミノカプロン酸、カベルゴリン、ジエチルカルバマジン、シナカルセト、シンナリジン、エプレレノン、フェノルドパム、レフルノミド、レボシメンダン、スロデキシド、テルビナフィン、ゾニサミド、エトミデート、フェンホルミン、トリメタジジン、メキシレチン、イフェンプロジル、モキシフロキサシン、
ブロモクリプチン、又はトラセミドから選択された少なくとも1つの化合物を含み得る。これらの各化合物の例示的なCAS番号を、非制限的に、以下の表2に提供する。
【0060】
【表2】
【0061】
従って、本発明の組成物は、2、3、4、5又はそれ以上の活性化合物を含み得、これは、1つの剤形で、被験者に同時に、別々に、又は順次投与されて、より実質的な効果を付与することができる。実験項で示されているように、記憶及び関連した精神機能の改善は、本発明の組成物の注射後の最初の1時間以内にさえ認められる。
【0062】
上記の組成物はまた、さらに、被験者の記憶及び/又は記憶に関連した精神機能に対して任意の有益な効果を及ぼすことが知られるか又は及ぼすと疑われる、追加の化合物と組み合わせ得る。これらの追加の化合物は、改善された植物性の抽出物(例えばイチョウ(Gingko biloba)抽出物)、天然化合物(例えばビタミン、脂肪酸、イソフラボン)、ラセタムなどの認知疾患を処置するために初めて開発された薬物(例えばレベチラセタム、ピラセタム、プラミラセタム、アニラセタム、又はオキシラセタム)、又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)であり得る。
【0063】
それ故、本発明の組成物は、記憶能力に対して任意の有益な効果を及ぼすことが知られるか又は及ぼすことが疑われる、1、2、3、4、5又はそれ以上の追加の成分、抽出物又は薬物を含み得る。以前に記載されているように、組成物の化合物は1つの剤形で、被験者に同時に、別々に、又は順次投与されて、より実質的な効果を付与することができる。
【0064】
より好ましくは、1つの前記の追加の化合物は、レベチラセタム、ピラセタム、プラミラセタム、アニラセタム、又はオキシラセタムから選択されたラセタムである。さらにより好ましくは、ラセタムは、レベチラセタム又はピラセタムから選択される。
【0065】
その点で、本発明の1つの好ましい態様は、必要とされる被験者における記憶及び精神機能の改善に使用するための、少なくともレベチラセタム又はピラセタムと組み合わせた、バクロフェン、アカンプロセート、シナカルセト、メキシレチン、スルフィソキサゾール、又はトラセミドから選択された少なくとも2つの薬物を含む組み合わせである。
【0066】
本発明の好ましい態様は、より特定すると、レベチラセタム又はピラセタムから選択された少なくとも1つの化合物と組み合わせた、バクロフェン及びアカンプロセートを含む組成物に関する。
【0067】
別の特に好ましい態様において、前記の追加の化合物は、ドネペジル、リバスチグミン又はガランタミンから選択されたアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の中でドネペジルが特に好ましい。
【0068】
結果として、好ましい態様において、本発明は、必要とされる被験者における記憶及び/又は精神機能障害の予防又は治療に使用するための、ドネペジルと組み合わせた、バクロフェン、アカンプロセート、シナカルセト、メキシレチン、スルフィソキサゾール、又はトラセミドから選択された少なくとも2つの化合物を含む組成物に関する。
【0069】
これらの各化合物の例示的なCAS番号を、非制限的に、以下の表3に提供する。
【0070】
【表3】
【0071】
記憶リハビリテーショントレーニングセッションは、短期記憶欠損に対抗することを、又は損傷した脳領域を補うために無傷の脳領域を使用して記憶プロセスを再編成することを目的とした集中的な記憶及び/又は認知トレーニング運動である。このような処置は、脳損傷又は脳手術を経験した被験者の記憶及び記憶に関連した精神機能を改善するために特に使用される。その点で、本発明の組成物は、これらの運動中にトリガーされたシナプスプロセスを安定化及び強化する目的に特に適している。従って、特定の態様において、本発明はこのようにして、前記の記憶リハビリテーショントレーニングセッションの効力を増強するための本発明の組成物の使用に関する。より特定の態様において、本発明の組成物は、前記のトレーニングセッションの直前に、又はリハビリテーション期間の最初からずっと慢性的に投与される。
【0072】
記憶能力に対する毒物又は薬物の起こり得る有害な効果を防ぐ特定の態様において、本発明の組成物の被験者への投与は、前記の毒物(群)又は薬物(群)への曝露の少なくとも2時間前、好ましくは24時間前に実施される。別の態様において、本発明の組成物の投与は、前記の毒物(群)又は薬物(群)への曝露の最初からずっと、一定の間隔で続けられ、これにより被験者における前記組成物の活性化合物の有効レベルが維持される。
【0073】
本発明の処置を受けている被験者のニーズに応じて、前記処置は、在宅、医院、診療所、病院の外来診療部門、又は病院で提供され得、よって医師は治療の効果を綿密に観察することができ、必要とされるあらゆる調整を行なうことができる。
【0074】
処置の期間は、被験者のニーズ、被験者の年齢及び容態、並びにどのように患者が処置に応答するかに依存する。組み合わせの各成分の投与量、投与頻度及び投与形態は、独立して制御され得る。例えば、ある薬物は経口投与され得、一方、第二の薬物は筋肉内に投与され得る。併用療法は、休止期間を含む断続的なサイクルで与えられ得、よって患者の身体は、あらゆる今までのところ予期できない副作用から回復する機会が与えられる。薬物はまた、1回の投与で全ての薬物が送達されるように一緒に処方されていてもよい。
【0075】
組み合わせの各薬物の投与は、他の成分と組み合わせて、被験者の記憶及び関連した精神機能の能力を寛解することのできる薬物の濃度がもたらされるような任意の適切な手段により得る。
【0076】
薬物又は組み合わせを、純粋な化学物質として投与することも可能であるが、それらを薬学的組成物(この文脈においては薬学的製剤とも称される)として提示することが好ましい。可能な組成物としては、経口、直腸、局所(経皮、頬側及び舌下を含む)、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適したものが挙げられる。
【0077】
より一般的にはこれらの薬学的製剤は、1つのパッケージ、通常ブリスターパックで個別の処置期間中に使用するための投与単位数又は一定単位量の投与のための他の手段を含む、「患者用パック」で被験者に処方される。「患者用パック」は、薬剤師がバルク供給物から患者への医薬品の供給分を分けていた従来の処方を上回る利点を有し、患者は、通常は従来の処方では欠落していた、患者用パックに含まれる添付文書を常に利用できる。添付文書の包含は、医師の指示に対する患者のコンプライアンスを改善することが示されている。従って、本発明はさらに、前記製剤に適したパッケージング材料と組み合わせた、本明細書において前記されているような、薬学的製剤を含む。このような患者用パックにおける、併用処置のための製剤の使用目的は、説明書、施設、支給物、適応及び/又は製剤の使用を処置に最も適したものとすることを助ける他の手段によって推論され得る。このような措置により、患者用パックは、本発明の組み合わせを用いての処置に使用するのに特に適したかつ適応したものとなる。
【0078】
薬物は、任意の適切な量で、任意の適切な担体物質に含まれ得る。薬物は、組成物の全重量の99重量%までの量で存在し得る。前記組成物は、経口、非経口(例えば静脈内、筋肉内)、直腸、皮膚、鼻腔内、膣内、吸入、皮膚(パッチ)、又は眼内投与経路に適した剤形で提供され得る。従って、前記組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤(ハイドロゲルを含む)、ペースト剤、軟膏、クリーム剤、硬膏、ドレンチ剤(drench)、浸透圧性送達装置、坐剤、浣腸、注射剤、埋込剤、噴霧剤、又はエアゾール剤の剤形であり得る。
【0079】
薬学的組成物は、慣用的な薬学的慣行に従って処方され得る(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.), ed. A. R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照されたい)。
【0080】
本発明による薬学的組成物は、投与時に直ちに又は投与から任意の予め決定された時間後又は期間後に活性薬物を放出するように処方され得る。
【0081】
徐放性製剤は、(i)長時間かけて体内で薬物の実質的に一定の濃度を作る製剤;(ii)予め決定された遅延時間の後に長時間かけて体内で薬物の実質的に一定の濃度を作る製剤;(iii)活性薬物の血漿中レベルの変動に伴う望ましくない副作用を同時に最小限としつつ、体内において比較的一定で有効な薬物レベルを維持することによって、予め決定された期間中に薬物作用を維持する製剤;(iv)例えば、罹患組織又は臓器の近くに又は罹患組織又は臓器に徐放性組成物を空間的に配置することによって、薬物作用を局部にとどめる製剤;及び(v)担体又は化学物質誘導体を使用して薬物を特定の標的細胞型へと送達することによって薬物作用を標的化する製剤、を含む。
【0082】
徐放性製剤の剤形の薬物の投与は、薬物が(i)狭い治療指数(すなわち、有害な副作用又は毒性反応をもたらす血漿中濃度と、治療効果をもたらす血漿中濃度との差が小さい;一般的に、治療指数TIは、半致死量(LD50)と半有効量(ED50)の比と定義される);(ii)消化管における狭い吸収ウィンドウ;又は(iii)非常に短い生物学的半減期(よって、治療レベルの血漿レベルを維持するために1日のうちに頻繁な投薬が必要とされる)を有する場合に特に好ましい。
【0083】
多くの戦略のいずれかを探究して、放出速度が問題の薬物の代謝速度を上回るような徐放性を得ることができる。例えば様々な種類の徐放性組成物及びコーティングをはじめとする、様々な製剤パラメーター及び成分を適切に選択することによって徐放性を得ることができる。従って、薬物を適切な賦形剤を用いて処方して、投与時に薬物を制御された様式で放出する薬学的組成物とする(単一又は複数の単位の錠剤又はカプセル剤の組成物、油剤、懸濁剤、乳剤、マイクロカプセル剤、ミクロスフィア、ナノ粒子、パッチ及びリポソーム)。
【0084】
経口使用のための固体剤形
経口使用のための製剤としては、無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に本発明の組成物を含む錠剤が挙げられる。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤又は増量剤(例えばスクロース、微結晶セルロース、デンプン(ジャガイモデンプンを含む)、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えばセルロース誘導体(微結晶セルロースを含む)、デンプン(ジャガイモデンプンを含む)、クロスカルメロースナトリウム、アルギネート、又はアルギン酸);結組み合わせ(例えばアカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール);及び潤滑剤、滑沢剤、及び粘着防止剤(例えばステアリン酸、シリカ、又はタルク)であり得る。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、芳香剤、可塑剤、湿潤剤、緩衝化剤などであり得る。
【0085】
錠剤はコーティングされていなくても、又は公知の技術によってコーティングされることにより、場合により消化管における崩壊及び吸収を遅延させ、それにより、より長い期間に及び持続した作用を与えてもよい。コーティングは、予め決定されたパターンで活性薬物を放出するように適応させても(例えば、徐放性製剤を得るために)、又は、胃の通過後まで活性薬物物質を放出しないように適応させてもよい(腸溶性コーティング)。コーティングは、糖衣、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンに基づく)、又は腸溶性コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック及び/又はエチルセルロースに基づく)であり得る。遅延材料、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルも使用され得る。
【0086】
固形錠剤組成物は、望ましくない化学変化(例えば、活性薬物の放出前の化学分解)から組成物を防御するように適応されたコーティングを含み得る。コーティングは、Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されているのと同じような方法で固体剤形に施され得る。
【0087】
薬物は、錠剤において一緒に混合されても、又は分割されていてもよい。例えば、第1の薬物は錠剤の内側に含まれ、第2の薬物は外側にあり、よって、第2の薬物のかなりの部分が、第1の薬物の放出前に放出される。
【0088】
経口使用のための製剤は、咀嚼可能な錠剤として、又は硬ゼラチンカプセル剤として(活性成分は不活性な固形希釈剤(例えばジャガイモデンプン、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合されている)、又は軟ゼラチンカプセル剤として(活性成分は、水又は油媒体、例えば流動パラフィン又はオリーブ油と混合されている)提示され得る。散剤及び顆粒剤は、錠剤及びカプセル剤について上記された成分を使用して、慣用的に調製され得る。
【0089】
経口使用のための徐放性組成物は、例えば、活性薬物の溶出及び/又は拡散を制御することによって、活性薬物を放出するように構築され得る。
【0090】
溶出又は拡散の制御された放出は、薬物の錠剤、カプセル剤、ペレット剤、もしくは顆粒製剤の適切なコーティングによって、又は薬物を適切なマトリックスに取り込むことによって達成され得る。徐放性コーティングは、上記された1つ以上のコーティング物質、及び/又は例えばシェラック、蜜ロウ、グリコワックス(glycowax)、カスターワックス、カルナウバロウ、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ステアリン酸グリセロール、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl−ポリ乳酸、酢酸酪酸セルロース、ポリ塩化ビニル、酢酸ポリビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートハイドロゲル、1,3ブチレングリコール、メタクリル酸エチレングリコール、及び/又はポリエチレングリコールを含み得る。徐放性マトリックス製剤において、マトリックス材料はまた、例えば、水和メチルセルロース、カルナウバロウ、及びステアリルアルコール、カルボポール934、シリコン、トリステアリン酸グリセリル、アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、及び/又はハロゲン化フルオロカーボンを含み得る。
【0091】
特許請求された組み合わせの薬物の1つ以上を含む徐放性組成物はまた、浮遊錠又はカプセル剤(すなわち、経口投与時に一定期間の間、胃内容物の上面に浮遊する、錠剤又はカプセル剤)の剤形であり得る。薬物(群)の浮遊錠製剤は、薬物(群)の混合物を賦形剤及び20〜75%w/wの親水コロイド、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて造粒することによって調製され得る。その後、得られた顆粒を圧縮して錠剤とすることができる。胃液と接触すると、錠剤はその表面の周囲に実質的に水に不透過性のゲルバリアを形成する。このゲルバリアは、1未満の密度を維持することに関与し、これにより、錠剤は胃液中に浮遊したままでいることができる。
【0092】
経口投与のための液剤
水の添加による水性懸濁液の調製に適した散剤、分散性散剤、又は顆粒剤は、経口投与のための慣用的な剤形である。懸濁剤としての製剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1つ以上の保存剤との混合物中の活性成分を提供する。適切な懸濁化剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0093】
非経口用組成物
経口投与が特に好ましいが、薬学的組成物はまた、患者の健康状態により非経口的に投与されてもよい。慣用的で無毒性の薬学的に許容される担体及び補助剤を含む、剤形の製剤で、又は適切な送達装置又は埋込剤を介した、注射液、点滴液又は埋込剤(静脈内、筋肉内、皮下など)が可能である。このような組成物の処方及び調製は医薬製剤の分野の技術者には周知である。
【0094】
非経口使用のための組成物は、単位投与形で(例えば1回量アンプルで)、又は数回分の投与量を含むバイアルで(これには適切な保存剤が添加されていてもよい(以下参照))提供され得る。前記組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、注入装置、又は埋込用の送達装置の形態であり得るか、又は使用前に水もしくは別の適切なビヒクルを用いて復元される乾燥粉末として提示されてもよい。活性薬物とは別に、前記組成物は、適切な非経口的に許容される担体及び/又は賦形剤を含み得る。活性薬物は、徐放のためにミクロスフィア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに取り込まれ得る。前記組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、及び/又は分散剤を含み得る。
【0095】
本発明による薬学的組成物は、無菌注射に適した剤形であり得る。このような組成物を調製するために、適切な活性薬物を、非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解又は懸濁する。使用され得る許容されるビヒクル及び溶媒には、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム又は適切な緩衝液の添加によって適切なpHに調整された水、1,3−ブタンジオール、リンガー液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤はまた、1つ以上の保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル又はn−プロピル)を含み得る。薬物の1つが水中にやや溶けにくい又は溶けにくい場合、溶出増強剤又は可溶化剤を加えてもよいか、又は溶媒は10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0096】
徐放性非経口組成物は、水性懸濁剤、ミクロスフィア、マイクロカプセル、磁気ミクロスフィア、油剤、油性懸濁剤、又は乳剤の剤形であり得る。あるいは、活性薬物(群)を、生体適合性担体、リポソーム、ナノ粒子、埋込剤、又は注入装置に取り込んでもよい。ミクロスフィア及び/又はマイクロカプセルの調製に使用される材料は、例えば、生分解性/生浸食性ポリマー、例えばポリガラクチン、ポリ−(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタミン)である。徐放性非経口製剤を処方する場合に使用され得る生体適合性担体は、炭水化物(例えばデキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン)、リポタンパク質、又は抗体である。埋込剤に使用される材料は、非生分解性(例えばポリジメチルシロキサン)又は生分解性(例えばポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)又はポリ(オルトエステル))であり得る。
【0097】
代替的な経路
あまり好ましくなくかつあまり簡便でもないが、他の投与経路、及びそれ故に他の製剤も考えられ得る。それらは、例えば、化合物の経口投与が、被験者の全体的な健康状態の点で困難である場合にも使用され得る。これに関して、直腸適用では、組成物の適切な剤形としては、坐剤(乳剤又は懸濁剤のタイプ)及び直腸ゼラチンカプセル剤(液剤又は懸濁剤)が挙げられる。典型的な坐剤製剤では、活性薬物を、適切な薬学的に許容される坐剤基剤、例えばココアバター、エステル化脂肪酸、グリセリン化ゼラチン、及び様々な水溶性又は分散性基剤、例えばポリエチレングリコールと合わせる。様々な添加剤、増強剤、又は界面活性剤も取り込み得る。
【0098】
薬学的組成物はまた、慣用的で無毒性の薬学的に許容される担体及び賦形剤を含む剤形又は製剤で(ミクロスフィア及びリポソームを含む)経皮吸収のために皮膚上に局所投与され得る。前記製剤としては、クリーム剤、軟膏、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、ハイドロゲル剤、液剤、懸濁剤、スティック剤(stick)、噴霧剤、ペースト剤、硬膏剤、及び他の種類の経皮薬物送達システムが挙げられる。薬学的に許容される担体又は賦形剤としては、乳化剤、抗酸化剤、緩衝化剤、保存剤、湿潤剤、浸透増強剤、キレート剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、香料、及び皮膚保護剤が挙げられ得る。
【0099】
保存剤、湿潤剤、浸透増強剤は、パラベン、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、及び塩化ベンズアルコニウム、グリセリン、プロピレングリコール、尿素などであり得る。
【0100】
皮膚上への局所投与のために上記された薬学的組成物はまた、処置しようとする生体の一部の上に又は生体の一部の近くへの局所投与に関連して使用され得る。前記組成物は、直接的な適用のために、あるいは特殊な薬物送達装置、例えば包帯又は代替的には絆創膏、パッド、スポンジ、ストリップ、又は他の形状の適切な柔軟性材料を用いての適用のために適応させ得る。
【0101】
投与量及び処置期間
組み合わせの薬物は、同じ又は異なる薬学的製剤のいずれかで同時に又は順次投与され得ると理解される。順次投与されるのであれば、第2の(又は追加の)活性成分の投与の遅延は、活性成分の組合せの効果的な作用の利点を失わないようなものとすべきである。本記載による組み合わせの最低限度の必要条件は、前記組み合わせが、活性成分の組合せの効果的な作用の利点を有する併用を目的とすべきであることである。組み合わせの使用目的は、施設、支給物、適応及び/又は本発明による組み合わせの使用を助ける他の手段によって推論され得る。
【0102】
本発明の組み合わせにおける薬物の治療有効量は、例えば、学習及び記憶能力を増強するのに、又はこれらの能力の低下を防止もしくは低減するのに効果的である量を含む。
【0103】
本発明の活性薬物は分割投与量で、例えば1日2回又は3回投与され得るが、組み合わせでの各薬物の1日1回投薬が好ましく、単一の薬学的組成物(単位投与剤形)での全ての薬物の1日1回投薬が最も好ましい。
【0104】
投与は、1日1回から数回、数日間から数年間かけられ得、患者の生涯におよぶ場合さえあり得る。大半の症例において慢性又は少なくとも周期的に繰り返される投与の必要が示される。
【0105】
「単位投与形」という用語は、ヒト被験者のための単位投与量として適した物理的に個別の単位(例えばカプセル剤、錠剤又は充填されたシリンジシリンダー)を指し、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された予め決定された量の活性材料又は材料群を、必要とされる薬学的担体と共に含む。
【0106】
好ましい単位投与量組成物における各薬物の量は、投与法、患者の体重及び年齢、被験者のニーズ、前記被験者の全般的な健康状態を考慮した見込まれる副作用のリスクをはじめとするいくつかの因子に依存する。さらに、特定の患者に関する薬理ゲノミクス(治療薬の薬物動態、薬力学、又は効力プロファイルに対する遺伝子型の効果)情報は、使用される投与量に影響を及ぼし得る。
【0107】
特により高用量が必要とされ得る状況に対して応答する場合を除いて、組み合わせ中の各薬物の好ましい投与量は、長期間の維持処置のために通常処方される又は第3相臨床試験において安全であることが判明した投与量を超えない、投与量の範囲内に通常存する。
【0108】
本発明の1つの顕著な利点は、各化合物を組合せ療法において低用量で使用することができる一方で、組み合わせて、被験者に実質的に臨床的な恩恵がもたらされることである。併用療法は、化合物が個々には低い効果を有するか又は効果を全く有さない投与量でも実際に効果的であり得る。従って、本発明の特定の利点は、各化合物の至適以下の用量、すなわち、通常処方される治療量よりも低い投与量、好ましくは治療量の1/2、より好ましくは治療量の1/3、1/4、1/5、又はさらにはより好ましくは治療量の1/10を使用できることにある。特定の例において、治療量の1/20、1/30、1/50、1/100又はさらにより低い投与量が使用される。
【0109】
このような治療量以下の投与量では、前記化合物は全く副作用を示さない一方で、本発明による組み合わせは、上記に定義されているような記憶及び関連した精神機能を改善するのに完全に効果的である。
【0110】
好ましい投与量は、長期間の維持処置のために通常処方される量の1%から50%までの量に相当する。
【0111】
最も好ましい投与量は、長期間の維持処置のために通常処方される量の0.1%から10%までの量に相当し得る。
【0112】
本発明において使用するための薬物の投与量(使用される塩に関係なく、実際の活性部分に言及)の具体例を以下に提供する:
− 0.1〜500mg/日、好ましくは250mg/日未満、より好ましくは100mg/日未満、さらにより好ましくは10mg/日未満のアカンプロセート、このような投与量が経口投与に特に適している
− 0.01〜200mg/日、好ましくは150mg/日未満、より好ましくは70mg/日未満、さらにより好ましくは35mg/日未満のバクロフェン、このような投与量が経口投与に特に適している
− 約6〜120mg/日、好ましくは60mg/日未満、より好ましくは30mg/日未満のメキシレチン(経口)、このような投与量が経口投与に特に適している
− 約0.05〜4mg/日、好ましくは2mg/日未満、より好ましくは1mg/日未満のトラセミド(経口)、このような投与量が経口投与に特に適している
− 約20〜800mg/日、好ましくは400mg/日未満、より好ましくは200mg/日未満のスルフィソキサゾール(経口)、このような投与量が経口投与に特に適している
− 約0.3〜36mg/日、好ましくは20mg/日未満、より好ましくは10mg/日未満のシナカルセト、このような投与量が経口投与に特に適している
− 約0.1g〜2.4g/日のアミノカプロン酸(経口)、
− 約0.01〜10mg/日のブロモクリプチン(経口)、
− 約0.6〜600mg/日のジエチルカルバマジン(経口)、
− 約1〜10μg/日のカベルゴリン(経口)、
− 約0.6〜23mg/日のシンナリジン(経口)、
− 約9〜320mg/日のジフィリン(経口)、
− 約0.25〜10mg/日のエプレレノン(経口)、
− 約0.4〜6mg/日のイフェンプロジル(経口)、
− 約0.1〜10mg/日のレフルノミド(経口)、
− 約0.04〜0.8mg/日のレボシメンダン(経口)、
− 約4〜40mg/日のモキシフロキサシン(経口)、
− 約0.25〜15mg/日のフェンホルミン(経口)、
− 約1〜30mg/日のキナクリン(経口)、
− 約0.05〜40mg/日のスロデキシド(経口)、
− 約2.5〜25mg/日のテルビナフィン(経口)、
− 約0.4〜6mg/日のトリメタジジン(経口)、
− 約0.5〜50mg/日のゾニサミド(経口)。
【0113】
前記組成物が活性成分としてバクロフェン及びアカンプロセートのみを含む場合、これらの2つの化合物は、種々の比で、例えば0.05対1000(w/w)、好ましくは0.05対100(w/w)、より好ましくは0.05対50(w/w)のアカンプロセートカルシウム/バクロフェンの重量比で使用され得る。好ましい態様において、アカンプロセートカルシウム/バクロフェンの比は1/15である。別の態様において、アカンプロセートカルシウム/バクロフェンの比は4/3又はさらには8/3である。
【0114】
1つの態様において、1mgのアカンプロセートカルシウムが1日量として与えられる。別の態様において、40mgのアカンプロセートが1日量として与えられる。さらに別の態様において、このような1日量は80mgである。
【0115】
実際に投与される薬物の量は、処置される容態又は容態群、投与される正にその組成物、個々の患者の年齢、体重及び応答、患者の症状の重篤度、並びに選択された投与経路を含む、関連した環境を鑑みて医師によって決定されることが理解されるだろう。それ故、上記の投与量範囲は、本明細書の教義についての一般的な指針及びサポートを提供することを意図とするが、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0116】
以下の実施例は、説明の目的で示されており、制限するために示されているのではない。
【0117】
実施例
全ての動物手順は、既存の法律及び規則を順守して実施された(1987年10月19日の法令番号87−848:1988年4月に施行され、指令86/609/ECがフランスの法律に取り込まれ、2001年5月29日の法令番号2001−464によって及び2001年6月20日の決議によって改正)。
【0118】
I.動物における記憶の改善
健康な動物における短期及び長期記憶を、学習及び記憶能力の測定のために一般的に使用される種々の試験を使用して評価する。
【0119】
A.健康な動物における短期及び長期記憶の増強
11か月令のC57Bl/6マウスを使用する。それらを群れで飼い(1ケージあたり5〜10匹のマウス)、制御された温度(21〜22℃)及び逆転した明暗サイクル(12時間/12時間;点灯:17:30から05:30;消灯:05:30から17:30)を有し、食物と水を自由にとれる部屋に維持した。
【0120】
1)化合物の投与
薬物を水に溶解し、胃管栄養法又は腹腔内投与の各々の直前に新たに調製され、撹拌下で保たれる。
【0121】
本発明の薬物の用量を表4に例示する。アカンプロセートカルシウムに関して、指定された用量は、分子の塩の用量を指す。
【0122】
【表4】
【0123】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるドネペジルを、内部陽性対照として使用した。それは通常、記憶試験の30分前に1回腹腔内投与される。
【0124】
試験前の7日間におよぶ化合物の慢性投与
0日目から7日目まで、組み合わせ又はビヒクル溶液を、1日2回投与した(午前8:00及び午後6:00)。1つの動物群が午前8:00にドネペジル(基準化合物0.3mg/kg)を、午後6:00にビヒクルを受ける。
【0125】
8日目に、全ての動物を、組み合わせ又はビヒクル溶液の投与の2時間後に、T字型迷路試験における交替行動能力%について試験した。
【0126】
試験の1日前の化合物の投与
試験の前日、組み合わせ又はビヒクル溶液を、午前8:00及び午後6:00に投与した。1つの動物群は午前8:00にドネペジル(基準化合物0.3mg/kg)を、午後6:00にビヒクルを受けた。試験日に、動物に、試験を実施する2時間前に組み合わせ又はビヒクルを投与した。
【0127】
化合物の急性投与:試験の2時間前に1回
試験日に、動物に、1用量の組み合わせ、単独の薬物、又はビヒクルを、試験を実施する2時間前に投与した。
【0128】
2)短期記憶の改善:
T字型迷路試験における交替行動%
自発的な交替行動は、一連の連続疾走をしながらT字型迷路において自由な選択肢を行き来するげっ歯類の生得的な傾向である[32]。この連続的な手順は、短期記憶に依拠する。
【0129】
短期記憶に対する組み合わせの投与の効果を、種々の処置期間(試験前の7日間、試験前の1日間、試験の2時間前)について評価した。
【0130】
実験を、赤色光条件下で午前8:00から午後3:00まで実施した。なぜなら、マウスは逆転した光サイクルに保たれているからである。試験中、動物の取扱い及び操作者の視界は、できるだけ最小限とした。
【0131】
T字型迷路の装置は、灰色のプレキシガラスで製造され、基部(長さ55cm×幅10cm×高さ20cm)、及び基部に対して90°の角度に位置する2つのアーム(長さ30cm×幅10cm×高さ20cm)を有する。スタートボックス(長さ15cm×幅10cm)はスライディングドアによって基部から隔てられている。スライディングドアはまた、強制選択交替行動タスクの最中に特定のアームを閉めるために備えられている[33]。
【0132】
実験プロトコールは1つのセッションからなり、これは1つの「強制選択」試験から始まり、14回の「自由選択」試験が続く。最初の「強制選択」試験において、動物はスタートアームに5秒間閉じ込められ、その後、解放されるが、その間に左又は右のいずれかのゴールアームが、スライディングドアを閉じることによって遮断される。その後、動物は、壁のないアームを探索し、スタートアームに戻る。この時点で、動物は強制選択試験を完了した。動物がスタート位置に戻った直後、左又は右のゴールドアを開き、動物を左のゴールアームか右のゴールアームを自由に選択させる(「自由選択」試験)。動物がゴールアームを選択した度に、逆のアームを閉じて、動物はスタートアームに戻ることを余儀なくさせる。一旦動物がスタートアームに戻ったら、全てのゴールドアを開いて、別の回の自由選択試験の開始が可能となるようにする。動物は、アームにその4つの足を置いた場合に、選択アームに進入したと判断される。セッションを終了し、14回の自由選択試験が実施されたらすぐに、又はどのような事象が最初に起ころうと15分間が経過したら、動物を迷路から取り出す。
【0133】
各動物の間に、装置をアルコール(70°)を使用して清潔にした。尿及び糞便を迷路から除去した。
【0134】
結果
自発的交替行動の比率は、自発的交替行動の数を、自由選択試験の数で割ったものとして計算された。交替行動は、連続的な選択に関して、2つの異なるアームが続くこととして定義される(例えば、右−左−右の順序は、2回の交替行動を示す)。
【0135】
結果データに対する分散分析(ANOVA)が実施された。ダネット検定又はスチューデント検定を適用して、有意差を決定した。
【0136】
本発明の組み合わせは、投薬した動物における自発的な交替行動を改善するのに効果的である(表5)。
【0137】
【表5】
【0138】
図1は、本発明の組み合わせが、バクロフェン及びアカンプロセートの組み合わせの任意の試験用量で(表4参照)、動物の記憶能力を改善するのに効果的であることを明瞭に示す。慢性的処置については62%以下の、急性処置を受けさせたマウスについては57%の学習及び記憶能力の有意な増強が観察される。
【0139】
さらに、バクロフェン及びアカンプロセートを含む組成物は、
図2で示されているように、混組み合わせの用量4及び5という非常に低い用量において、マウスの学習及び記憶能力を改善するのに効果的である。
【0140】
本発明の組み合わせが非常に迅速に作用することは注目に値する。なぜなら、記憶能力の改善が、薬物が、試験の2時間前に1回、用量5(0.0128mg/kgのアカンプロセートカルシウム及び0.192mg/kgのバクロフェン、
図2)ほどに低い濃度で投与された場合にさえ認められるからである。
【0141】
驚くべきことに、薬物間の重要な相乗作用が、非常に低い用量でさえ観察され(
図2)、一方、薬物はこれらの用量では、単独投与された場合には、動物の能力に対して全く有意な正の効果を及ぼさない。
【0142】
水迷路における遅延場所合わせ(空間的ワーキングメモリ):
同じ薬物投与スキームを適用する。全ての動物を、学習及び空間的短期記憶について試験する。
【0143】
水迷路は円形のプールである(直径140cm、高さ40cm)。各アッセイについて水温23±1℃、光強度、部屋内の外部の手掛かり(流し、明暗のあるポスター、棚)、及び水不透明度が厳密に再現される。獲得中には、透明なプレキシガラスの滑りにくいプラットフォーム(直径10cm)を水表面下に浸漬する。この試験は、プール外の基準に応じて学習した情報(これはプラットフォームの場所である)を想起及び保持する動物の能力を測定する。
【0144】
遊泳を、ビデオトラックソフトウェア(Viewpoint, Champagne-au-Mont-d’Or, France)を使用して記録し、軌道は潜時及び距離として分析される。ソフトウェアは、プールを4つの四分円に分ける。
【0145】
空間ワーキングメモリを、プラットフォームの場所を毎日変更することによって、及び2分間のトレーニングの試験間隔を使用することによって特異的にアッセイする。トレーニングは、1日に4回の3日間の遊泳からなり、2分間の試験間隔である。四分円の間の各境界に設定されたスタート位置を無作為に選択し、各動物を90秒間泳がせて、プラットフォームを見つけさせる。一旦動物がそれを見つけたら、動物を20秒間の間その上に放置する。各遊泳試験について3日間かけての平均潜時を計算する。それは、動物の学習及び空間短期記憶能力を示す。
【0146】
本発明の組成物で処置された動物の空間ワーキングメモリの能力に関して正の結果が認められる。
【0147】
3)長期記憶の増強:
a)
水迷路における場所の学習(参照記憶、[33])
動物の飼育及び薬物投与スキームは以前に詳述したのと同じである。水迷路は円状プールである(直径140cm、高さ40cm)。水温(23±1℃)、光強度、部屋内の外部の手掛かり(流し、明暗のあるポスター、棚)、及び水不透明度(炭酸カルシウム懸濁液を使用して得られた)が厳密に再現される。4つのスタート位置が、プールの中心点に定められる(N、E、S、W)。獲得中に、透明なプレキシガラスで滑りにくいプラットフォーム(直径10cm)を水表面下に浸漬することもできる。それを、全ての参照記憶手順の間にNW四分円の中心に配置する。トレーニングは、1日3回の5日間の遊泳からなり、20分間の試験間隔を有する。動物を10個の個体のバッチ(1つのケージに相当する)によって試験する。スタート位置を各日に無作為に選択し、動物を90秒間遊泳させてプラットフォームを見つけさせる。遊泳期間を、ストップウォッチを使用して測定する。一旦動物がそれを見つけたら、動物を20秒間プラットフォーム上に放置する。動物が90秒間以内にプラットフォームに到達しない場合には、前記動物をその上に優しく置き、20秒間その上に留まらせる。各トレーニング日についての潜時の中央値が計算され、全処置群について平均値±標準誤差として表現される。
【0148】
動物の学習及び長期記憶能力を決定するために、プローブテストを最後の遊泳から24時間後に実施する。プラットフォームを除去し、各動物を60秒間自由に遊泳させる。それらは、ビデオトラッキングによって検出されるように、頭上に黒い無毒性の染みのスポットを受けた。遊泳は、ビデオトラックソフトウェア(Viewpoint, Champagne-au-Mont-d’Or, France)を使用して記録され、軌道は潜時及び距離として分析される。ソフトウェアは、スタート位置に従ってプールを4つの四分円に分ける。各マウスは、均衡した順序でプラットホームの場所から遠い2つの位置の1つからスタートする。各四分円で費やされる時間が決定される。獲得中にプラットホームを含んだ四分円で費やされる時間は、動物の長期記憶能力の尺度である。
【0149】
長期記憶の改善が、本発明の組成物について観察される。
【0150】
【表6】
【0151】
b)
ステップスルー潜時試験
ステップスルー潜時試験は、学習及び記憶を評価するために使用される恐怖悪化試験である。この試験においては、被験体は、嫌悪刺激(例えばフットショック)が以前に伝達された環境を回避することを学習する。保持試験は、トレーニング(学習)セッションから24時間後に実施されるので、それは、動物の長期記憶能力の指標である。
【0152】
装置は2コンパートメント(15×20×高さ15cm)のボックスであり、一方は白いポリ塩化ビニル壁で明るくされており、他方は黒いポリ塩化ビニル及び格子床で暗くされている。ギロチン型のドアが各コンパートメントを分離する。装置の40cm上に位置する60Wのランプは、実験中に白いコンパートメントに明かりをともす。スクランブルフットショック(0.3mAで3秒間)が、ショックジェネレーター・スクランブラ(Lafayette Instruments, Lafayette, USA)を使用して格子床に送達され得る。ギロチン型ドアはトレーニングセッション中には最初は閉じられている。各マウスを白いコンパートメントに入れる。5秒後、ドアを上げる。マウスが暗コンパートメントに進入し、格子床上にその全ての足を置いた時に、ドアを閉め、フットショックを3秒間送る。ステップスルー潜時、すなわち、暗コンパートメントに進入するのに費やされる潜時及び啼鳴の数を記録する。保持試験はトレーニングから24時間後に実施する。各マウスを再び白いコンパートメントに入れる。5秒後にドアを上げ、ステップスルー潜時及び逃避潜時、すなわち、白いコンパートメントに戻るのに費やされる時間を、300秒まで記録する。
【0153】
暗コンパートメントに進入する潜時は、動物の学習及び記憶能の尺度として解釈される。
【0154】
c)結果
バクロフェン及びアカンプロセート処置動物について正の結果が観察され、このことは、本発明の組成物が長期記憶を増強するのに効果的であることを示す。
【0155】
B.薬物により誘発された健忘症の最中における記憶の改善
薬物により誘発された健忘症は、強力な健忘症薬であるスコポラミンをマウスに注射することによって誘起される。この薬物は、一過性の健忘症を誘発した:薬物の活性窓の最中における記憶は、永久に失われるか、又は少なくとも実質的に減少するが、一旦薬物が消失すると、記憶はもはや影響を受けない。
【0156】
本発明の組成物が、スコポラミンにより誘発された健忘症から短期記憶を保護する能力を、本質的に上記したように、4〜5週令のCD−1マウスを用いてT字型迷路試験の代替行動%で試験した。
【0157】
試験を実施して、慢性的な用量(
図3、試験前1日2回で7日間、及び試験2時間前)及びより短期間の予防的用量(試験前日に2回、及び試験2時間前;
図4)での、誘発された健忘症に対する組み合わせの防御効果を評価した。
【0158】
スコポラミンは0.1mg/mLの濃度で食塩水中で調製され、10ml/kgの用量で腹腔内注射された。これにより1mg/kgの用量が生じる。この用量は、塩形の薬物(すなわちスコポラミン塩酸塩)の用量を指し、命名された分子それ自体の用量ではない。
【0159】
試験日に、動物に、試験の2時間前に本発明の組み合わせを投与する。試験を実施する30分前に、スコポラミンを動物に投与する。
【0160】
結果
自発的交替行動の比率は、以前に記載されているように計算される。結果を以下の表7並びに
図3及び4に報告する。
【0161】
【表7】
【0162】
結果は、本発明の組み合わせが、スコポラミンで処置されかつ慢性的に(表7、
図3)又は健忘症の誘発の前日(表7、
図4)のいずれかに投薬された動物の能力を増加するのに効果的であることを示す。
【0163】
さらに、能力の改善は、バクロフェン−アカンプロセートの組み合わせの全ての試験濃度について認められる。
【0164】
II.ヒト被験者における記憶及び認知検査
本発明の組成物は、健康なヒト被験者における記憶を改善するのに効果的である。記憶又は記憶に関連した精神機能の改善におけるバクロフェン及びアカンプロセート組み合わせの効力は、現在、臨床試験を通して評価されている。試験は、欧州医薬品庁ICH−E6(R1)ガイドラインの推奨、及び保健法に関する2004年8月9日のフランスの法令番号2004−806に従って実施される。
【0165】
A.健康な被験者における認知機能の測定
試験を、18〜45才(「若年コホート」)の12人の健康な若年男性の試験志願者のコホートで実施する。コホートを無作為化して、活性薬物下に8人の被験者、及びプラセボ下に4人の被験者を置くようにする。
【0166】
プラセボを投与された4人の高齢被験者のコホート(「高齢コホート」)を使用して、実験設定を検証する。
【0167】
1)投与スケジュール
処置期間は10日間であった。バクロフェン及びアカンプロセートを、併用療法として同時に経口投与する。
【0168】
通常の治療量と比較して低用量で本明細書において試験したが、毎日送達されるバクロフェンの用量を徐々に増加させ、よって起こり得るバクロフェンにより誘発される副作用がなさそうでも、それらを制限するために、漸増投与スケジュールが望ましい。
【0169】
その後、投与治療処方計画として、各被験者に、経口経路によって以下の処置が投与される:
− 1日目:薬物もプラセボも全く投与せず
− 1日目:朝に6mgのバクロフェン及び0.4mgのアカンプロセート、又はプラセボ
− 2日目:1日2回(朝及び夕)6mgのバクロフェン及び0.4mgのアカンプロセート、又はプラセボ
− 3日目:朝に6mgのバクロフェン及び0.4mgのアカンプロセート、又はプラセボ、並びに夕に12mgのバクロフェン及び0.8mgのアカンプロセート、又はプラセボ
− 4日目:1日2回(朝及び夕)12mgのバクロフェン及び0.8mgのアカンプロセート、又はプラセボ
− 5日目から9日目:1日2回(朝及び夕)15mgのバクロフェン及び1mgのアカンプロセート、又はプラセボ
− 10日目:朝に15mgのバクロフェン及び1mgのアカンプロセート、又はプラセボ
【0170】
2)認知検定及び電気生理学的測定
以下に提示された試験は、被験者の記憶に対する本発明の組成物の効果を評価することを可能とする。この試験の最初から最後まで、Cogstate(登録商標)によって開発された4つの認知検定及び認知事象関連電位(ERP)の電気生理学的測定を使用する。これらの試験を、−1日目(薬物及びプラセボ投与なし)、1日目(投与から6時間後)、9日目(投与前)、及び10日目(投与から6時間後)に実施した。認知検定に関して、結果は、基線と試験の各時点との間の能力の変化の平均として表現される。このような試験は、パソコンで容易に実施され得る。
【0171】
a)覚醒状態及び視覚的注意能力の評価:同定試験
予備段階タスクである画面上の指示が「カードは赤色ですか」と尋ねる。試験監督者は、試験監督者のスクリプトから被験者への全ての指示を読む。タスクを開始するために、試験監督者又は被験者は、「エンター」キーを押さなければならない。トランプが、画面の中心に提示される。カードがひょいと返され表向きになる。表向きになるとすぐに、被験者は、カードが赤色か否かを決定しなければならない。もしそれが赤色であれば、彼らは「はい」を押すべきであり、それが赤色でないならば、彼らは「いいえ」を押すべきである。
【0172】
被験者は、必要とされる応答数に達するまで、又は練習期間が終了するまで練習する。その後、画面上に本試験のための指示が提示される。試験監督者又は被験者は本試験を始めるために「エンター」キーを押さなければならない。
【0173】
被験者は、できるだけ迅速に、かつできるだけ正確に作業することが促される。例えば、被験者は、カードがひょいと返る前に「はい」又は「いいえ」のいずれかのキーを押さないように努めるべきである。彼らが間違えれば、エラー音を聞くことになるだろう。正しい応答の比率が決定される。
【0174】
b)視覚学習及び記憶:1つのカードによる学習試験
予備段階タスクである画面上の指示が「このタスクで以前にこのカードを見たことがありますか」と尋ねる。試験監督者は、試験監督者のスクリプトから被験者への全ての指示を読む。タスクを開始するために、試験監督者又は被験者は、「エンター」キーを押さなければならない。トランプが、画面の中心に提示される。そうするとすぐに、被験者は同じカードをこのタスクで以前に見たことがあるか否かを決定しなければならない。それ故、最初の答えはいつも「いいえ」である。
【0175】
カードが明らかになる度に、被験者は、このタスクで以前にカードを示したことがあるかどうかを決定し、かつ「はい」又は「いいえ」のキーを押すことによって応答しなければならない。不正確な応答をすると(例えばカードが以前に提示されたことがある場合に「いいえ」を押す)、エラー雑音が聞こえる。
【0176】
一旦練習が完了すると(必要数の応答又は時間切れ)、画面上の指示及び試験監督者は、被験者に、本試験が今から始まることを告げる。試験監督者又は被験者は本試験を開始するために「エンター」キーを押さなければならない。
【0177】
被験者はできるだけ迅速に、かつできるだけ正確に作業することが促される。例えば、被験者は、カードがひっくり返る前に「はい」又は「いいえ」のいずれかのキーを押さないように努めるべきであり、このタスクで提示される全てのカードを覚えるように努めるべきである。彼が間違えれば、エラー音が聞こえるだろう。
【0178】
正しい応答の比率が決定される。
【0179】
c)精神運動機能及び処理速度:検出タスク(DET)
予備段階タスクである画面上の指示が「カードがひっくり返りましたか」と尋ねる。試験監督者は、試験監督者のスクリプトから被験者への全ての指示を読む。タスクを開始するために、試験監督者又は被験者は、「エンター」キーを押さなければならない。トランプが、画面の中心に提示される。カードはひょいと返って表向きになる。そうするとすぐに、被験者は「はい」キーを押さなければならない。カードは一団の後ろに入り、被験者は次のカードがひょいと返るとすぐに「はい」キーを押さなければならない(以下同様)。
【0180】
被験者は、必要とされる応答数に達するまで、又は練習期間が終了するまで練習する。その後、画面上に本試験のための指示が提示される。試験監督者又は被験者は本試験を始めるために「エンター」キーを押さなければならない。
【0181】
被験者はできるだけ迅速に、かつできるだけ正確に作業することが促される。例えば、彼は、カードがひょいと返る前に「はい」のキーを押さないように努めるべきである。被験者がそうしたり、又は時間内にひょいと返ったカードに対して応答しないならば、彼はエラー音を聞くだろう。
【0182】
結果は、行動速度の平均として表現される(Lmn、正しい応答についての反応時間をLog10変換したものの平均)。
【0183】
d)実行機能及び空間的問題解決能力:グロトン迷路学習タスク(GMLT)
被験者にコンピュータータッチスクリーン上に10×10の格子のタイルを示す。これらの100個の可能な場所の中に28ステップの経路が隠されている。スタートは、左上の青色のタイルによって示され、ゴールの場所は、格子の右下に赤色の丸を有するタイルである。被験者は、スタートの場所から1ステップ動くことを教示され、その後、1回に1つのタイルで、最後(右下)まで続ける。
【0184】
被験者は、その現在の場所の次のタイルをタッチペンで触れることによって移動する。各移動がなされた後に、コンピューターは、緑色のチェックマークを示すことによってこれは正しい(すなわちこれは経路における次のステップである)、又は赤色のバツ印を示すことによって間違っている(すなわち、これは経路における次のステップではない、又は被験者は原則を破った、以下参照)ことを示す。選択が間違っていれば(すなわち赤色のバツ印が示される)、被験者は最後の正しい場所(すなわち示された最後の緑色のチェックマーク)に触れて、その後、異なるタイルを選択して、ゴールまで進まなければならない。
【0185】
隠された迷路を通して移動している間に、被験者は2つの原則を順守しなければならない。第一に、被験者は対角線上に移動することはできないか、又は同じタイルを2回連続して触れることはできない。第二に、被験者は経路に沿って後方に移動(例えば、緑色のチェックマークを示すが、以前にそこから移動してきた場所へと逆行)することができない。
【0186】
被験者が、隠された経路の一部ではないタイルを選択するが、そのタイル選択は原則内である場合、これは、異なるタイプの間違い(例えば規則破りではない)として記録される。これは、偶然に起因し得るか(迷路全体において初回)、又はその後の試みで経路を間違って記憶していたことに起因し得る。
【0187】
被験者は、この試験及びエラーフィードバックに基づいて、迷路全体における28ステップの経路を学習する。一旦完了したら、彼らはスタートの場所に戻り、タスクを、通常4回以上繰り返し、ちょうど完了した経路を覚えようと努める。
【0188】
このタスクに対して20個のよく一致した代替形が存在し、これらは疑似ランダム的に選択されるので、どの被験者も、試験全体を通していずれかの2つの異なる試験セッションで同じ隠された経路を完了することはないだろう。
【0189】
本研究のためにGMLT試験を用いて測定される基準は以下である:
− 能力の効率:mps
− タスク持続期間:dur
− 間違いの総数:ter
・ per(固執誤り)
・ rer(原則を破る誤り)
・ ler(法的な誤りの数)
− 正しい動きの数:cmv
− 先頭に戻るという誤り:rth。
【0190】
これらの4つの認知検定(a、b、c、dを参照)からのデータを各々独立的に分析するか、又は「複合」Cogstate(登録商標)スコアで共にプールする。
【0191】
e)注意力を反映する感覚事象:事象関連電位(ERP)
ERPは、認知プロセスの評価において多くの用途を有する。なぜなら、結果は、使用される刺激とは独立し、なぜなら、それらは、行動の変化が全く知覚できない場合でさえ刺激処理に対する情報を与えるからである。それらはしばしば、行動認知検定と比較した場合に、より公平な試験と考えられる。
【0192】
3つの頭皮から導き出された記録(前頭部:Fz、中心部:Cz、頭頂部:Pz)を、国際的な10/20標準に従って、基準電極として右耳たぶ及び左耳たぶ(A1−A2)に付着させた2つの連結させた電極を用いて集める。認知タスクは、オッド刺激に対して注意を払うことを必要とし、それらを特定のプロトコールに従って計数する。
【0193】
被験者は無作為な順序の音刺激を受け、ERPはオッドボールによって惹起されるP300波(N200及びP300の小成分の潜時及び振幅を含む)を測定し、これは注意力を反映する。認知障害を有する被験者は、より小さい振幅の遅延したシグナルを示す。
【0194】
これらの3つの導出物についてのデータを要約するスコアを、ERP「複合」スコアとして示す。
【0195】
3)結果
a)検証試験
認知行動試験の実験設定は、処置されていない高齢コホート及び若年コホートにおいて得られた結果を比較することによって確認された。若年コホートと高齢コホートとの間の認知行動の明瞭な差異が認められ、これは、
図5に提示されたDET試験において例証されている。若年コホートは、高齢コホートと比較してより高い認知能力を示し、これは、通常の加齢に関連した認知力の低下に一致する。
【0196】
b)本発明の組み合わせは、健康な若年被験者における認知能力を改善するのに効果的である
認知検定における能力の改善
本発明の組み合わせは、処置されていない被験者と比較して、処置された健康な若年のヒト被験者における認知機能を改善するのに効果的であることが判明した。バクロフェン−アカンプロセートで処置された被験者は、
図6のDET試験で示されているようにその認知能力の改善を示し;この改善は、処置の間中ずっと続く。
【0197】
記憶及び記憶関連精神機能の改善は、薬物の血漿中濃度に相関する
バクロフェン及びアカンプロセートの薬物動態は、臨床試験の枠組みにおいて確立された。「最大血漿中濃度が起こる時間」(Tmax)は、アカンプロセートの投与から1.5〜2時間後及びバクロフェンについては1.5時間後に起こると決定された。従って、組み合わせのTmaxは、各薬物の併用投与から1.5〜2時間後であると判断することができる。
【0198】
10日目に組み合わせが投与され、Cogstate(登録商標)試験が薬物の投与から6時間後に実施された。
図7に示されているように、アカンプロセートの血漿中濃度(薬物の投与から5時間後)と、若年コホートにおいて登録された複合Cogstate(登録商標)スコアのレベルとの間に正かつ有意な相関(ピアソン相関検定)が観察される(
図7、相関係数=0.706;p値=0.003)。
【0199】
このような相関はまた、記憶及び関連した精神機能の電気生理学的成分に注目した場合にも観察される。実際に、
図8及び9に報告されているように、投与から1.5時間後(およそTmaxに相当する)のバクロフェン及びアカンプロセートの血漿中濃度(ピアソン相関検定)と、それぞれのERP潜時複合スコア(薬物の投与から6時間後に測定)との間に特に有意な相関が、10日目に観察され:両方の薬物の血漿中濃度は、ERPのより短い潜時と正に相関する(アカンプロセートについては
図9、相関係数=0.735;p値=0.002;バクロフェンについては
図8、相関係数=0.57;p値=0.027)。最善の成績を示した被験者は、より高い血漿中濃度が1.5時間後に観察されたものである。
【0200】
これらの相関は、処置された健康な若年被験者の認知能力の改善が、実際に本発明の組成物に関連するという事実を強調する。
【0201】
従って、上記の結果は、健康な若年被験者における認知能力の改善におけるバクロフェン及びアカンプロセート組み合わせの効力を示す。
【0202】
B.化学的に誘導された認知障害にかけられたヒトにおける記憶及び関連機能の改善
スコポラミンにより誘発された認知力低下は、いくつかの物質に曝露された場合に誘発され得る認知欠損を模倣するために使用されたモデルである。動物について上記されているように、この薬物は、試験志願者に投与された場合に一過性かつ可逆性の認知障害を誘発する[34]。
【0203】
被験体の認知能力を、A部で説明されているような認知グロトン迷路学習タスク試験を使用して試験する。
【0204】
1)投与スケジュール
20〜45才の20人の健康な若年男性試験志願者が試験に登録される。
【0205】
二重盲検2-wayクロスオーバー無作為化プラセボ対照試験を実施する。試験は2つの明確に異なる部分を有し、各々は40時間の入院からなり、かつ休薬期間として互いに7日間の間隔をあける。バクロフェン及びアカンプロセートは同時に経口投与される。
【0206】
投与治療処方計画として、各被験者は、以下の処置に従って経口経路によって投与される:
− 各被験者は、バクロフェン(6mg)及びアカンプロセート(0.4mg)の混組み合わせ又はプラセボを、経口で、亜急性の投与で、1日目には1日2回、及び、試験日(2日目)の3時間目に1回量を、スコポラミンの注射前に受ける。
− 2日目の、3時間目に、0.5mgのスコポラミンの皮下注射が実施される。
【0207】
2)実験設計
障害された認知能に対する効果を、GMLT試験で以下の特徴を測定することによって探索する:
− 能力の効力:mps
− 間違いの総数:ter
− タスクの持続期間:dur。
【0208】
認知グロトン迷路学習タスク試験を1日目(トレーニング)、2日目の0時間目、2.5時間目、4時間目、5.5時間目、7時間目及び9時間目及び3日目の24時間目に実施する。
【0209】
3)バクロフェン及びアカンプロセート組み合わせは、スコポラミンによって誘発された認知欠損を改善する
GMLT試験のmps、ter及びdurの各成分について類似のデータが得られる。グロトン迷路学習試験(GMLT)からのデータを「複合」GMLTスコアで共にプールし、これを
図10に提示する。
【0210】
スコポラミンは、その投与から早くも30分後に作用することが知られており、その効果は約6時間続く。そのTmaxは約3時間であることが知られている[34]。これらのデータは、処置されていない被験者において観察されたGMLT試験における一過性の能力の崩壊に相当する(
図10の丸、点線)。
【0211】
認知能力の改善が、プラセボを投与された被験者と比較して、バクロフェン−アカンプロセートで処置された被験者において観察される。この改善は、約5.5時間目の期間において特に有意であり、これは、バクロフェン及びアカンプロセートのTmaxに相当する(
図10、灰色の領域)。
【0212】
従って、バクロフェン及びアカンプロセート組み合わせは、スコポラミンにより誘発された認知障害を打ち消すのに効果的である。
【0213】
従って、本発明の組み合わせは、記憶を障害する毒物又は薬物への提示から生じた記憶障害を逆行するのに効果的である。
【0214】
【表8】