特許第6228246号(P6228246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228246エテンのオリゴマー化に使用される不均一系触媒の再生
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228246
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】エテンのオリゴマー化に使用される不均一系触媒の再生
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/56 20060101AFI20171030BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20171030BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20171030BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20171030BHJP
   B01J 23/94 20060101ALI20171030BHJP
   C07C 2/24 20060101ALI20171030BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20171030BHJP
   C07C 9/12 20060101ALI20171030BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   B01J38/56
   B01J38/02
   B01J38/00 301R
   B01J23/755 Z
   B01J23/94 Z
   C07C2/24
   C07C5/03
   C07C9/12
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-35721(P2016-35721)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-190231(P2016-190231A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】15157358.1
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】グイード ストッフニオル
(72)【発明者】
【氏名】ステファン パイツ
(72)【発明者】
【氏名】ディートリッヒ マッシュメイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレネ リーカー
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−513353(JP,A)
【文献】 特表2006−512198(JP,A)
【文献】 特表2013−537566(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0207751(US,A1)
【文献】 特開2005−254236(JP,A)
【文献】 特開平09−094460(JP,A)
【文献】 特開昭50−105588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−61/00,63/00−63/04
C07C1/00−409/44
C07B61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一系触媒を使用してエテンをオリゴマー化すると共に前記触媒を再生する方法であって、
a)前記オリゴマー化を、オリゴマー化工程において、少なくとも部分的に液体溶媒に溶解したエテンを前記不均一系触媒に接触させることによって実施し、
b)前記再生を、再生工程において、エテン、水素及び酸素の非存在下において前記触媒を液体洗浄媒体によって洗浄することによって実施し、
c)前記オリゴマー化工程及び前記再生工程を、所定時間のオリゴマー化工程の後に所定時間の再生工程を実施し、その後に所定時間のオリゴマー化工程を実施するように、時間的に交互に実施し、
d)前記不均一系触媒を、前記オリゴマー化工程と前記再生工程の両方を実施する同一の場所に常に配置した状態で実施し、
e)前記触媒を設定温度とするために、前記触媒が配置された場所に熱エネルギーを供給し(ただし、前記触媒の実際の温度は、時間的及び空間的に制限された状態で前記設定温度から逸脱し得る)、
f)前記オリゴマー化工程における前記設定温度が20〜130℃であり、前記再生工程における前記設定温度が80〜150℃であり、前記再生工程における前記設定温度が、前記オリゴマー化工程における前記設定温度よりも高いことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶媒と前記洗浄媒体の両方が、炭素原子数が3〜12のアルケン又は炭素原子数が3〜10のアルン又はそれらの混合物(シクロアルケン及びシクロアルカンを含む)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒と前記洗浄媒体が同一であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒及び前記洗浄媒体が、プロパン、イソブタン、ペンタン、シクロンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン及びシクロヘプタンのいずれか又はこれらの物質の2以上の混合物であることを特徴とする、請求項3に記載の方法
【請求項5】
前記オリゴマー化工程を以下の条件下で実施し、
圧力:1×10〜50×10Pa
WHSV:2〜50h−1
溶液全体のエテン含有量:1〜50重量%
前記再生工程を以下の条件下で実施する、
圧力:1×10〜50×10Pa
WHSV:2〜50h−1
溶液全体のエテン含有量:0〜1重量%
ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記再生工程の継続時間が、先行する前記オリゴマー化工程の継続時間よりも短く、前記再生工程の継続時間が、先行する前記オリゴマー化工程の継続時間の20%未満であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が配置され、前記オリゴマー化工程と前記再生工程を実施する前記場所が、熱エネルギーを供給するために温度調節媒体を通過させる反応器であり、前記温度調節媒体の供給温度を調節することによって前記設定温度に設定することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記洗浄媒体を前記再生工程において循環させ、前記触媒が配置された前記場所から離れた場所において分離装置を使用して浄化して前記洗浄媒体に溶解している成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離装置が、フィルター、膜又はコールドトラップ又はこれらの分離装置の2以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄媒体が、炭素原子数が3〜12のアルケン又はこれらのアルケンの2種以上の混合物又はこれらのアルケンの1種以上と炭素原子数が3〜7の少なくとも1種のアルカンの混合物であり、前記再生工程において、前記触媒が配置された前記場所から前記洗浄媒体を排出し、再生させる前記触媒から離れた場所にある第2の不均一系触媒に供給し、前記第2の触媒を使用して前記洗浄媒体内に存在する少なくとも1種のアルケンの化学反応、第2のオリゴマー化、異性化、エーテル化又は酸化的脱水素化を実施することを特徴とする、請求項2〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄媒体が、炭素原子数が3〜7のアルカン又はこれらのアルカンの2種以上の混合物であり、前記再生工程において、前記触媒が配置された前記場所から前記洗浄媒体を排出し、再生させる前記触媒から離れた場所にある第2の不均一系触媒に供給し、前記第2の触媒を使用して前記洗浄媒体内に存在する少なくとも1種のアルカンの化学反応、アルコール及び/又は酸誘導体を生成する脱水素化を実施することを特徴とする、請求項2〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記不均一系触媒が、少なくとも2つの成分を含み、第1の成分が、Ni、Cr、Fe及びTiから選択される少なくとも1種の元素を含むと共に金属及び/又は酸化物及び/又は水素化物として存在し、第2の成分が、Al、SiO、TiO及びZrOから選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む固体であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴマー化工程において、前記エテンの5重量%未満を、炭素原子数が16以上のエテンのオリゴマー又はポリマーに転化させることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記オリゴマー化工程においてエテンの転化率を連続的に測定し、エテンの転化率が95〜100%の範囲の値に低下した時に前記オリゴマー化工程から前記再生工程への切り替えを行うことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エテンの液相オリゴマー化に使用される不均一系触媒の再生に関する。
【背景技術】
【0002】
エテン(同義語:エチレン)は最も単純なオレフィン(アルケン)である。エテンは実験式:Cで表され、2個の炭素原子を有し、Cオレフィンとも呼ばれる。エテンは高い反応性を有するため、化学工業においては重要な合成単位である。
【0003】
これまで大量のエテンの重合によってポリエチレンが製造されている。ポリエチレンは、最も広く使用されているバルクポリマーの1つであり、通常は包装フィルムとして使用されている。ポリエチレンは、多くのエテンモノマー[−CH−CH−]を繰り返し単位として含む鎖状ポリマーである。従って、ポリエチレン鎖状ポリマーは、96個をはるかに超える非常に多くの炭素原子を含む。
【0004】
また、炭素原子数が4、6又は8の他のオレフィンをエテンから製造することもできる。これらのオレフィンは、オリゴマー化によって製造される。エテンのオリゴマー化では、エテンは実質的に互いに反応して炭素原子数が2よりも大きいオレフィン(オリゴマー)を生成する。例えば、2個のエテン分子が反応してブテン分子(炭素原子数が4のオレフィン(Cオレフィン))を生成する。この反応は二量体化とも呼ばれ、ブテンはエテンの二量体である。また、3個のエテン分子がヘキセン(Cオレフィン)を生成し(三量体化)、4個のエテン分子がCオレフィンをオリゴマーとして生成する(四量体化)。上記反応と並行して、エテンから生成した2個のブテンがオクテンを生成する。これは、オリゴマー化時には複数の反応が同時に並行して進行するためである。一次反応は、エテン同士の反応である。二次反応は、エテンと生成したエテンオリゴマーとの間又はオリゴマー間で進行する。
【0005】
オリゴマー化では、重合と比較してはるかに炭素原子数が少ない分子が得られる。炭素原子数の上限は16に設定することができる。オリゴマー化の別の重要な特徴は、飽和鎖ではなく、オレフィンから新たなオレフィンを生成することである。
【0006】
本発明に関連して使用するエテンのオリゴマー化という用語は、炭素原子数が4〜16のオレフィンを生成するエテンの化学反応を意味する。
【0007】
エテンのオリゴマー化は、工業的にはC、C及びCオレフィンを製造するために使用されている。これらのオレフィンは、高級アルコール、カルボン酸及びエステル等のより複雑な化学物質を製造するための反応物質として使用される。
【0008】
化学工学的観点から、オリゴマー化プロセスは、気相で行われるオリゴマー化プロセスと液相で行われるオリゴマー化プロセスに分類される。また、非均一系触媒によるオリゴマー化プロセスと均一系触媒によるオリゴマー化プロセスが存在する。
【0009】
気相プロセスでは、エテンが気体として存在する条件下でオリゴマー化を実施する。得られるオリゴマーは、気体又は液体である。
【0010】
液相プロセスでは、エテンを液体状態で反応器に導入する。エテンは非常に高い圧力下においてのみ液体として存在するため、エテンの液相オリゴマー化では、気体状態のエテンを液体溶媒中に溶解させ、液体溶媒中でオリゴマー化を実施する。得られるオリゴマーも溶媒中に存在する。気相オリゴマー化に対する液相オリゴマー化の利点は、反応器の容量を良好に利用でき、溶媒によって反応熱を良好に除去することができることである(オリゴマー化は発熱性が高い)。全体として、液相オリゴマー化は気相オリゴマー化よりも良好なプロセス強度(process intensity)を実現することができる。
【0011】
液相オリゴマー化の欠点は、溶媒が必要であると共に、生成物(オリゴマー)を取り出すことが困難なことである。生成物は、所望のオリゴマーと、転化されていないエテンと、溶媒と、触媒と、を含む反応混合物から取り出すことになる。均一系触媒を使用する場合には、触媒は、反応物質及びオリゴマー化生成物(oligomerizate)と同一の相に溶解している。触媒が生成物混合物に残留していることが望ましくない場合には、触媒を除去することが必要となる。これにより、化学工学的観点から複雑度が増すことになる。
【0012】
一方、触媒が反応物質とは異なる相(通常は固相(固体))に存在する非均一系触媒を使用するプロセスでは、より容易に触媒を除去することができる。非均一系触媒を使用する液相オリゴマー化及び非均一系触媒を使用する気相オリゴマー化では、固体触媒を反応器内に残留させ、液体反応混合物を反応器から排出する。
【0013】
不均一系触媒を反応器内に残留させる場合には、不均一系触媒を再使用することができる。しかしながら、触媒は使用期間が増加するに従って活性を失い、望ましくない副生成物を生成するようになる。これは、触媒の活性部位が堆積物で覆われ、エテンと接触しないようになるためであると考えられる。これらの堆積物は、低分子量ポリエチレン及び/又はN、O又はS原子含有分子からなる触媒毒等の長鎖副生成物であると考えられる。また、オリゴマー化時に触媒中の活性金属が酸化され、活性を失う場合もある。
【0014】
ただし、不均一系オリゴマー化触媒は再活性化させることができる。例えば、触媒を再活性化させることにより、触媒は初期性能を実質的に取り戻す。
【0015】
先行技術には、オリゴマー化用触媒の再活性化方法が開示されている。例えば、特許文献1は、酸化ニッケル、二酸化ケイ素及び二酸化アルミニウムからなる不均一系触媒の再生を開示している。上記不均一系触媒は、C〜Cオレフィンへのオリゴマー化に使用される。高温の酸素ガス流による燃焼によって有機堆積物を除去する。燃焼はオーブン内において実施する。この方法の欠点は、触媒を反応器から取り出し、再活性化のためにオーブン内に入れなければならないことである。また、再生完了後には、触媒を反応器に戻す必要がある。これにより、比較的多くの手作業が必要となると共に、オリゴマー化プラントの停止時間が長くなる。
【0016】
特許文献2は、C及びCオレフィンの混合オリゴマー化に使用される不均一系ゼオライト触媒をより簡便に再生させる方法を開示している。特許文献2では、in situ(触媒の通常の配置位置(すなわち、反応器内))で再生を実施する。再生時には、触媒へのオレフィンの供給を停止し、触媒が存在する反応器を高温の酸化ガスでパージする。in situでの再生は、触媒を反応器から取り出して再生を行う必要がないという重要な利点を有する。特許文献2に開示されたプロセスの欠点は、高温の再生用ガスに十分に耐え得る熱安定性を有するように反応器を設計しなければならないことである。また、特許文献2のように反応器が気相オリゴマー化用に設計されている場合には、コストの増加は許容範囲である。一方、液相オリゴマー化のために最適化された反応器を高温ガスによる再生に耐えることができるように設計する場合には、コストが大きく増加する。また、特許文献2の実施例ではゼオライト系触媒のみを再生しているため、高温ガスによってあらゆる不均一系触媒を再生できるか否かについても疑問がある。特に、活性金属としてニッケル、クロム、鉄又はチタンを含む触媒は、オリゴマー化において酸化アルミニウムと酸化シリコンのみからなるゼオライトとは全く異なる反応を示す。従って、そのような触媒には異なる再生方法が必要になると予想される。
【0017】
特許文献3は、エテンの液相オリゴマー化に使用されるクロム系触媒の再生を開示している。しかしながら、特許文献3は、ex situ(反応器の外部)で再生させる均一系触媒系に関する発明である。
【0018】
また、特許文献4及び特許文献5は、エテンの液相オリゴマー化に使用される触媒のin situ再生を開示しているが、これらの触媒は均一系触媒である。
【0019】
すなわち、エテンの液相オリゴマー化に使用される不均一系触媒のin situ再生はこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102009027408A1号
【特許文献2】欧州特許第0136026B1号
【特許文献3】国際公開第2014082689A1号
【特許文献4】国際公開第2011112184A1号
【特許文献5】国際公開第2010110801A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明が解決しようとする課題は、液相プロセスの利点を有すると共に、複雑な処理を必要とすることなく再生することができる再利用可能な不均一系触媒を使用する、エテンのオリゴマー化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は、不均一系触媒を使用してエテンをオリゴマー化すると共に前記触媒を再生する方法であって、
a)前記オリゴマー化を、オリゴマー化工程において、少なくとも部分的に液体溶媒に溶解したエテンを前記不均一系触媒に接触させることによって実施し、
b)前記再生を、再生工程において、エテン、水素及び酸素の非存在下において前記触媒を液体洗浄媒体によってパージすることによって実施し、
c)前記オリゴマー化工程及び前記再生工程を、所定時間のオリゴマー化工程の後に所定時間の再生工程を実施し、その後に所定時間のオリゴマー化工程を実施するように、時間的に交互に実施し、
d)前記不均一系触媒を、前記オリゴマー化工程と前記再生工程の両方を実施する同一の場所に常に配置した状態で実施し、
e)前記触媒を設定温度とするために、前記触媒が配置された場所に熱エネルギーを供給し(ただし、前記触媒の実際の温度は、時間的及び空間的に制限された状態で前記設定温度から逸脱し得る)、
f)前記再生工程における前記設定温度が、前記オリゴマー化工程における前記設定温度よりも高いことを特徴とする方法によって達成される。
【0023】
本発明の方法は、不均一系触媒を同一の場所(具体的には反応器)に常に配置した状態で実施するため、本発明に係る再生は、反応器内での触媒のin situ再生である。これにより、触媒を反応器から取り出す必要がないという利点が得られる。
【0024】
本発明の別の重要な特徴は、オリゴマー化と再生の両方を液相で実施することである。これは、触媒から堆積物を除去し、反応器から排出させる液体洗浄媒体を使用して再生を行うためである。触媒から堆積物を除去するために、洗浄媒体はオリゴマー化温度よりも高い温度で供給する。そのため、反応器は高い熱安定性を有していなければならない。しかしながら、高温ガスによって浄化を行う必要がある液相反応器と比較して、関連する追加装置コストはわずかである。
【0025】
また、本発明の重要な特徴は、エテンの非存在下において再生を実施することである。すなわち、オリゴマー化工程時には再生を実施せず、オリゴマー化工程とは異なる時点(再生工程)で再生を実施する。具体的には、本発明によれば、オリゴマー化工程と再生工程を交互に実施する。これらの2つの工程モードは、交互の時相に対応する。
【0026】
また、再生は、水素及び酸素の非存在下において実施する。そのため、触媒及び堆積物が酸化されることはない。上述したように、エテンは高圧下においてのみ液化させることができる。エテンを低圧下において液相で処理するために、本質的に気体であるエテンを、低圧下において液体である溶媒に溶解させる。原則として、不活性溶媒又は反応性溶媒を使用することができる。不活性溶媒とは、エテンのオリゴマー化において不活性な挙動を示す(化学的に反応しない)溶媒を意味する。反応性溶媒は、オリゴマー化において反応する溶媒である。有用な不活性溶媒としては、1分子あたりの炭素原子数が3〜10のアルカン(パラフィン)が挙げられる。これらのアルカンはエテンよりも高い沸点を有し、所望のオリゴマー化条件下において液体である。また、これらのアルカンはエテン及びオリゴマーと沸点が異なるため、エテン及びオリゴマーから良好に分離することができる。オリゴマーとの関連で選択される溶媒の正確な沸点に関しては、欧州特許出願第15151624.2号及び欧州特許出願第15151621.8号(出願日2015年1月19日、本願の出願日の時点では未公開)を参照されたい。
【0027】
なお、炭素原子数が3〜10の環状アルカン(シクロアルカン)も溶媒として適しており、2種以上のアルカン/シクロアルカンの混合物を溶媒として使用することもできる。
【0028】
有用な反応性溶媒としては、炭素原子数が3〜12のオレフィン(アルケン)及びそれらの混合物が挙げられる。これらのオレフィンはオリゴマー化において反応し、より広範な生成物を含むオリゴマー化生成物が得られる。これは、コオリゴマー化(co−oligomerization)と呼ばれる。また、溶媒は、反応性物質と不活性物質の混合物であってもよい。
【0029】
上記基準は洗浄媒体の選択にも当てはまる。予期せぬことに、溶媒として適した物質を使用して触媒を再生させることができることが判明した。従って、本発明の一実施形態では、同一の物質又は同一の混合物を溶媒及び洗浄媒体として使用する。その場合、オリゴマー化工程ではエテンを溶媒中に溶解させ、再生工程ではエテンの非存在下において溶媒を洗浄媒体としてより高い温度で使用する。同一の物質又は同一の混合物を溶媒及び洗浄媒体として使用する場合には、オリゴマー化工程から再生工程への切り替え時にエテンの供給を停止し、温度を上昇させるだけでよいという利点が得られる。従って、運転状態の切り替えが非常に簡単となる共に、運転状態の切り替えを自動化することができる。
【0030】
プロパン、イソブタン、ペンタン、シクロベンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン及びそれらの混合物は、溶媒と洗浄媒体の両方として特に適していることが判明している。
【0031】
本発明では、再生工程における設定温度がオリゴマー化工程における設定温度よりも高いことが重要である。オリゴマー化工程では、設定温度を20〜130℃の範囲内とし、再生工程では、設定温度を80〜150℃の範囲内とする。オリゴマー化工程と再生工程がオーバーラップする場合であっても、再生工程における設定温度はオリゴマー化工程における設定温度よりも高くする。すなわち、上記2つの範囲から任意の温度を組み合わせることはできない。
【0032】
設定温度に関してさらに説明する。上述したように、エテンのオリゴマー化はかなりの発熱を伴う。そのため、オリゴマー化時には設定温度よりも高い温度に達する場合がある。そのような場合には、オリゴマー化工程時に、オリゴマー化を実施する場所(すなわち、反応器)を設定温度まで冷却する必要がある。それでも、反応器内や、反応器内の一部において130℃を超える温度ピークが生じる場合がある。そのため、実際の反応温度は設定温度と異なる場合もある。
【0033】
不活性洗浄媒体を使用する場合には、再生工程時には明らかな反応は発生せず、再生工程における設定温度とするために加熱が必要である。一方、ブテン等の反応性洗浄媒体を使用する場合には、パージ中にオリゴマー化が生じるため、再生工程における設定温度とするために洗浄媒体からの反応熱を利用することができる。
【0034】
運転条件は、好ましくは以下のように選択される。
【0035】
オリゴマー化工程:
圧力:1×10〜50×10Pa
WHSV:2〜50h−1
溶液全体のエテン含有量:1〜50重量%
再生工程:
圧力:1×10〜50×10Pa
WHSV:2〜50h−1
溶液全体のエテン含有量:0〜1重量%
【0036】
圧力は、溶媒又は洗浄媒体が液体状態となるように、反応器内の温度を考慮して選択する。
【0037】
オリゴマー化工程では、エテン含有量は、圧力及び温度に応じて、エテンが液相に完全に溶解されるように選択することが好ましい。あるいは、エテンの一部が液相に溶解され、残りが溶媒内に溶解されずに気相を形成するようにエテンを供給することもできる。
【0038】
圧力及び重量空間速度(weight hourly space velocity(WHSV))は、運転状態の切り替え時に負荷の変化が生じないように同一とすることが好ましい。このオプションは、特に、洗浄媒体と溶媒が同一である場合に採用する。この場合、オリゴマー化工程と再生工程との実際の相違点は、液体中のエテン含有量と設定温度のみである。
【0039】
また、触媒は、失活が生じるまでの時間よりも迅速に再活性化させることができる。そのため、再生工程(段階)の継続時間は、製造工程(段階)の継続時間よりもはるかに短くすることができる。本発明に係る方法を実際に実施する場合には、再生工程(段階)の継続時間は、生成工程(段階)の継続時間の20%未満、好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満とする。再生時間は、再生工程において特に高い設定温度を選択することによって短縮することができる。ただし、洗浄媒体が沸騰するような高い温度は選択してはならない。液体パージが確実に行われるように温度を選択する必要がある。
【0040】
触媒が配置され、オリゴマー化工程と再生工程を実施する場所は、最も広義な意味における反応器(周囲環境との制御された物質移動及び熱伝達を可能とする装置)である。工業的には、通常は、並列に接続された複数の反応器を含むシェル−チューブ型反応器を使用する。また、複数の反応器は直列に接続することもできる。本発明では、単一の装置又は複数の装置を反応器として使用することができる。重要なことは、周囲環境との制御された物質移動及び熱伝達を可能とする、同一の隔絶した場所に触媒が常に存在することである。ただし、反応領域と再生領域において周囲環境との同一の物質移動及び熱伝達が生じる限りにおいて、触媒は上記場所内で移動(例えば、反応領域と再生領域との間で前後方向に移動)してもよい。また、並列に接続された2つ又は3つの反応器を1つの場所に設け、これらの反応器の1つを再生工程に使用し、別の反応器をオリゴマー化工程に同時に使用することも可能である。第3の反応器は待機運転させることができる。運転状態の切り替え時には、各反応器の機能をリボルビング式に切り換える。
【0041】
なお、再生工程における物質移動とは、触媒を未使用の洗浄媒体とin situで接触させ、触媒との接触後に洗浄媒体を触媒領域から排出することを意味する。従って、触媒は洗浄媒体のみと接触する。より具体的には、洗浄媒体には水素及び酸素が存在しないため、触媒は水素及び酸素とは接触しない。そのため、再生時に触媒が酸化されることはない。触媒のパージは連続的又は回分式に行なうことができるが、連続的に再生を実施することが好ましい。
【0042】
また、オリゴマー化工程における物質移動とは、固体触媒を液体エテン又は液体溶媒に溶解させたエテンと接触させ、触媒を排出することなく、触媒が配置された場所からオリゴマーを排出することを意味する。従って、触媒はエテン又は溶媒又はオリゴマー化生成物のみと接触する。オリゴマー化工程は連続的又は回分式に行なうことができるが、連続的にオリゴマー化工程を実施することが好ましい。
【0043】
本発明によれば、再生工程では設定温度を上昇させるため、触媒が配置された場所と周囲環境との間の熱伝達の制御はプロセスの成功に非常に重要である。オリゴマー化工程では触媒が配置された場所から熱を除去する必要があり、再生工程では熱を供給する必要があるため、触媒が配置された場所の温度を制御する最も簡単な方法は温度調節媒体を流すことであり、温度調節媒体の供給温度を調節して設定温度に設定する。温度調節媒体の設定温度の選択に応じて、触媒が配置された場所には正の熱エネルギー又は負の熱エネルギーが供給される(すなわち、触媒が配置された場所が加熱又は冷却される)。伝達される熱エネルギー及び温度調節媒体の熱容量に応じて、温度調節媒体の流量を適切に調節する。温度調節媒体としては、高い熱容量を有する液体の水、有機オイル又はシリコーンオイルを使用することができる。スチームを使用した加熱によって再生を実施することもできる。温度調節媒体と反応物質との間では物質移動が生じることはなく、熱伝達のみが生じる。そのため、反応器には、反応物質と温度調節媒体との間で熱エネルギーを交換する熱交換器を設ける。
【0044】
また、溶媒又は洗浄媒体によって反応器に熱エネルギーを導入し、反応器から排出することも可能である。この場合、反応器への導入前に溶媒又は洗浄媒体を冷却又は加熱する。反応性溶媒又は洗浄媒体を使用する場合には、必要な熱エネルギーを触媒に直接放出させるか、溶媒又は洗浄媒体の化学反応によって吸収させることができる。
【0045】
加熱は電気的手段を使用して実施することもできるが、エネルギーの点で採用は難しい。
【0046】
総合的な観点からは、温度を制御するための最も効果的かつ効率的な方法は温度調節媒体の使用である。
【0047】
本発明の方法の好ましい実施形態では、洗浄媒体を再生工程において循環させ、触媒が配置された場所から離れた場所において分離装置を使用して浄化して洗浄媒体に溶解している成分の少なくとも一部を除去する。これにより、洗浄媒体を再利用することができるという利点が得られる。反応性洗浄媒体は触媒によって消費されるため、循環モードは不活性洗浄媒体を使用する場合に特に適している。循環モードを採用する場合には、炭素原子数が3〜10のアルカン又はシクロアルカン又はそれらの混合物が洗浄媒体として好適である。
【0048】
分離装置としては、フィルター、膜又はコールドトラップ又はこれらの分離装置の2以上の組み合わせが好ましい。このような分離装置は一般的に入手可能であると共に、触媒から除去された不純物を洗浄媒体から取り除くために適しており、浄化された洗浄媒体をリサイクルすることができる。コールドトラップは通常の不純物を特に効率的に除去することができるため、特に好ましい。また、コールドトラップは、フィルターや膜のように容易に閉塞することはない。コールドトラップは、75℃未満の温度で作動させることが好ましい。これは、80℃を超える温度では堆積物を除去することができないためである。作動温度の下限は、大気温度(20℃)に設定することができる。堆積物のほとんどは約70℃で洗浄媒体から析出(沈殿)するため、コールドトラップをさらに冷却しても意味がない。
【0049】
分離装置を設ける場合には、分離装置は反応器の下流方向において反応器に隣接して配置することが賢明である。これにより、溶解した堆積物が下流の製造装置内に入り、製造装置内において沈殿することを防止することができる。また、オリゴマー化工程時であっても、反応器からの排出物(オリゴマー化生成物)を分離装置に供給する(分離装置内を通過させる)ことも検討すべきである。すなわち、オリゴマー化生成物中に溶解した物質が触媒やプラントのその他の構成要素に堆積する可能性も排除できないためである。オリゴマー化工程における反応器からの排出物を浄化することにより、次に再生を実施するまでの時間を延ばすことができる。
【0050】
上述したように、不活性洗浄媒体を使用する場合には、循環モードで再生を実施することができる。少なくとも部分的に反応性を有する洗浄媒体を使用する場合には、触媒の再生後に洗浄媒体を別の反応に使用する。洗浄媒体が、炭素原子数が3〜12のアルケン又はこれらのアルケンの2種以上の混合物又はこれらのアルケンの1種以上と炭素原子数が3〜7の少なくとも1種のアルカンの混合物である、本発明に係る方法の対応する実施形態では、再生工程において、触媒が配置された場所から洗浄媒体を排出し、必要に応じて浄化を行った後、再生させる触媒から離れた場所にある第2の不均一系触媒に供給し、第2の触媒を使用して洗浄媒体内に存在する少なくとも1種のアルケンの化学反応を実施する。すなわち、洗浄媒体をCオリゴマー化に使用される触媒にリサイクルせず、第2の反応において第2の触媒に対して使用する。そのため、第2の触媒を使用する第2の反応は、洗浄媒体内に存在する不純物にダメージを与えることなく、洗浄媒体を転化させることができなければならない。洗浄媒体内に溶解した再生後の触媒の堆積物は第2の触媒を汚染する可能性があるため、使用済みの洗浄媒体は、第2の反応に供給する前に浄化する必要がある。浄化は、循環プロセスにおける洗浄媒体の浄化と同様に、例えば、コールドトラップ又はその他の分離装置を使用して行うことができる。洗浄媒体がオレフィン系洗浄媒体である場合には、第2の反応は、特に、第2のオリゴマー化、異性化、エーテル化又は酸化的脱水素化とすることができる。例えば、洗浄媒体がブテンを含む混合物である場合には、Cオリゴマー化に使用する触媒の再生完了後に、ブテンをメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)にエーテル化させるか、1,3−ブタジエンに酸化的脱水素化させるか、ブテンのオリゴマー化に適した触媒を使用してオリゴマー化させてC又はC12オレフィンを生成することができる。
【0051】
アルケンと比較して反応性の高いアルカンは、オリゴマー化では実質的に不活性である。それでも、アルカンが反応性を示し、パラフィン系洗浄媒体の使用が適している化学反応も存在する。そのような化学反応としては、特に、アルカンからアルケンへの熱分解脱水素化及び開裂(分解(クラッキング)と呼ばれる)が挙げられる。別の工程において、アルケンに水を添加してアルコールを得、アルコールをカルボン酸に酸化させることも可能である。また、パラフィン系洗浄媒体は燃焼させ、熱的に使用することができる。洗浄媒体が、炭素原子数が3〜7のアルカン又はこれらのアルカンの2種以上の混合物である、本発明に係る方法の一実施形態では、再生工程において、触媒が配置された場所から洗浄媒体を排出し、再生させる触媒から離れた場所にある第2の不均一系触媒に供給し、第2の触媒を使用して洗浄媒体内に存在する少なくとも1種のアルカンの化学反応を実施する。
【0052】
本発明に係る方法において使用する触媒は、液体反応相ではなく、不均一系である。より具体的には、触媒は、液体反応混合物が周囲を流れる固体である。エテンのオリゴマー化のための適当かつ再生可能な触媒としては、少なくとも2つの成分からなり、第1の成分が、Ni、Cr、Fe及びTiから選択される少なくとも1種の元素を含むと共に金属及び/又は酸化物及び/又は水素化物として存在し、第2の成分が、Al、SiO、TiO及びZrOから選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む触媒が挙げられる。このような触媒の例は、米国特許第2,581,228号に開示されている。
【0053】
オリゴマー化は、エテンの5重量%未満を、炭素原子数が16以上のエテンのオリゴマー又はポリマーに転化させるように実施することが好ましい。すなわち、二量体(Cオレフィン)、三量体(Cオレフィン)及び四量体(Cオレフィン)が主として生成され、少量のC10及びC12種が生成されるようにオリゴマー化を実施することが好ましい。C、C及びCオレフィンは、合計で90%を超える選択性で生成されることが好ましい。エテンのより高次のオリゴマー又はポリエチレンの鎖状分子は、望ましくない副生成物である。Cオリゴマー化は、より長い分子鎖長を得ることを目的とし、オレフィンが生成されないポリエチレンの製造とは上記点において異なっている。
【0054】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、オリゴマー化工程におけるエテンの転化率を連続的に測定し、エテンの転化率が95〜100%の範囲の値に低下した時にオリゴマー化工程から再生工程への切り替えを行う。
【0055】
すなわち、触媒が大きく失活した時点で再生を実施するのではなく、収率の低下が検出された比較的初期の段階において再生工程に切り替える。「初期」とは、エテンの転化率が100%から95〜100%の範囲の値に低下した時点を意味する。エテンの転化率が約97%の時点で再生工程に切り替えることが最適である。初期の段階において再生工程に切り替える場合には、パルス再生工程(比較的頻繁かつ短時間の再生工程(段階))を実施することになる。長期実験によれば、パルス再生工程を実施した場合には、触媒の使用可能時間がはるかに長くなり、より長い期間にわたってほぼ100%の転化率で工程を行うことができた。
【0056】
以下、本発明の工業的な実施について、プロセスフロー図及び実験結果を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、第1の実施形態Iのプロセスフロー図(オリゴマー化工程)である。
図2図2は、第1の実施形態Iのプロセスフロー図(再生工程)である。
図3図3は、第2の実施形態IIのプロセスフロー図(オリゴマー化工程)である。
図4図4は、第2の実施形態IIのプロセスフロー図(再生工程)である。
図5図5は、イソブタン/ラフィネートIIIを使用した反応及び再生工程(段階)(実施例1)を示す。
図6図6は、純粋なイソブタンを使用した反応及び再生工程(段階)(実施例2)を示す。
図7図7は、パルス式の反応及び再生工程(段階)(実施例3)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の第1の実施形態Iのプロセスフロー図を図1(オリゴマー化工程)及び図2(再生工程)に示す。第1の実施形態Iは、溶媒及び洗浄媒体の循環モードを特徴とする。
【0059】
オリゴマー化工程(図1)では、混合器1内において気体エテンC2を溶媒SOLVと混合して原料混合物C2,SOLVを得る。溶媒は、例えばn−ヘプタン(Cアルカン)である。エテンは、原料混合物C2,SOLVが完全に液体となり、原料混合物C2,SOLV内にエテンガスの気泡が形成されないように、溶媒中に完全に溶解させる。混合器1では、エテン源(図示せず)からの未使用のエテンと、エテンリサイクルライン2からのリサイクルされたエテンを混合する。溶媒SOLVは、溶媒循環路3から供給される。
【0060】
原料混合物C2,SOLVは、不均一系触媒が充填された反応器4に供給される。反応器内では、溶媒中において触媒によるエテンのオリゴマー化が生じる。これにより、エテンの二量体C、三量体C及び四量体Cを主に含む液体オリゴマー化生成物C2,C4,C6,C8,SOLVが得られる。また、オリゴマー化生成物C2,C4,C6,C8,SOLVは、未転化のエテンC2及び未転化の溶媒SOLVも含む。未転化のエテンC2が含まれるのは、原料混合物中にはエテンC2が過剰に存在し、反応器4内での滞留時間が非常に短いためである。溶媒は不活性であるため、転化されない。また、オリゴマー化生成物C2,C4,C6,C8,SOLVは、極少量の炭素原子数が8よりも大きいオリゴマー及びポリマーも含む。これらのオリゴマー及びポリマーの含有量は5%未満である。
【0061】
次に、オリゴマー化生成物C2,C4,C6,C8,SOLVは第1の(蒸留)カラム5に供給され、過剰のエテンC2が塔頂から除去され、エテンリサイクルライン2を介して混合器1にリサイクルされる。従って、過剰のエテンが無駄になることはない。第1のカラム5の底部には、炭素原子数が3よりも大きいオレフィンC2+及び溶媒SOLVが残留する。
【0062】
第2のカラム6では、蒸留により、第1のカラムからのボトムが、C4及びC6オレフィンを含む塔頂生成物と、溶媒及びC8成分を含む塔底生成物とに分離される。
【0063】
二量体C4及び三量体C6は、C2オリゴマー化によって得られた有用な生成物であり、さらに処理される(図示せず)。
【0064】
第3のカラム7では、蒸留により、第2のカラムからの塔底生成物から溶媒SOLVが(塔頂から)除去され、溶媒循環路3に導入される。溶媒SOLVは、コールドトラップ8を通過して混合器1に戻される。
【0065】
第3のカラムのボトムには、四量体(C8)と、少量のより高次のオリゴマーが含まれる。必要に応じて、第3のカラム7からの塔底生成物をさらに処理することができる。塔底生成物内に存在するC8オレフィンは、二量体C4及び三量体C6以外の第3の目的生成物である場合もある。
【0066】
反応器4内に存在する触媒は、時間の経過と共に失活する。触媒を再生させるために、エテンの供給を停止し、反応器4の設定温度を上昇させる。溶媒SOLVは、コールドトラップ8を介して溶媒循環路3を循環させるが、カラム5、6及び7はバイパスさせる。そして、図2に示す再生工程を実施する。
【0067】
再生工程では、溶媒SOLVとして使用しているn−ヘプタンを洗浄媒体として使用する。洗浄媒体は触媒から堆積物COKEを除去し、堆積物COKEを反応器から排出する。堆積物COKEは、コールドトラップ8内において洗浄媒体SOLVから除去され、コールドトラップ8内に残留する。浄化された洗浄媒体SOLVは、反応器4にリサイクルされる。再生が完了すると、システムは図1に示すオリゴマー化工程を実施するように切り替えられる。堆積物COKEはコールドトラップから除去される。
【0068】
第1の実施形態Iの変形例(図示せず)として、n−ヘプタンとは異なる沸点を有する溶媒SOLVを使用することができる。この場合には、カラムの配置を変更する必要がある。例えば、プロパンを溶媒として使用する場合には、塔頂から排出することになる。
【0069】
別の変形例では、オリゴマー化工程においてコールドトラップ8をバイパスさせる(図1を参照)代わりに、オリゴマー化工程においても、リサイクルされた溶媒をコールドトラップを介して溶媒循環路3を循環させることができる。この場合には、製造中に生じた堆積物を溶媒から除去することができるという利点がある。ただし、コールドトラップにおいて熱損失が生じるという欠点がある。上記欠点は、非熱分離装置(例えば、膜)を使用することによって改善することができる。ただし、温度が低いため、オリゴマー化工程時に溶媒によって触媒から除去される堆積物は再生工程時よりもはるかに少ないことが予想される。図1及び図2に示す実施形態とは異なり、オリゴマー化工程時にも堆積物がカラム5、6及び7に入らないようにするために、コールドトラップ8を反応器4の下流方向において反応器4に隣接して配置することも考えられる。ただし、この場合には熱損失が生じるため、コールドトラップの配置の経済的実施可能性については慎重に検討する必要がある。
【0070】
本発明の第2の実施形態IIを図3(オリゴマー化工程)及び図4(再生工程)に示す。
【0071】
第2の実施形態IIでは、第1の実施形態Iと同様に、原料混合物C2,SOLVを得るための混合器1と、C2オリゴマー化のための反応器4と、エテン循環路2を介してリサイクルされる過剰のエテンC2を除去するための第1のカラム5と、第2のカラム6と、を使用する。
【0072】
ただし、第2の実施形態IIで使用する溶媒SOLVはイソブタンとn−ブテンの混合物であるため、混合器1に接続された溶媒循環路3は第2のカラム6の上部に接続されている。物質C4は、第2のカラム6の塔頂で蒸留される。第2のカラムからのボトムに含まれるより高次のオリゴマーC6及びC8は、第2の製造ラインで処理される。
【0073】
第2の実施形態IIで使用する溶媒は不活性なイソブタンと反応性を有するn−ブテンの混合物であるため、溶媒の一部は反応器中での反応によって絶えず消費され、第2の製造ラインに供給されるより高次のオレフィン(C8、C12、C16)が得られる。
【0074】
ただし、未使用のエテンの二量体化によって反応器4内においてn−ブテンが生成するため、溶媒中のn−ブテンの割合を原則として一定に維持することができる。従って、オリゴマー化工程(段階)の終了時には溶媒中のn−ブテン含有量をほぼ0%とすることもできる。
【0075】
第2の実施形態IIにおいてn−ブテンを溶媒の少なくとも一部として使用する理由は、Cオリゴマー化と並行して第2の反応器9内でCオリゴマー化を実施するためである。Cオリゴマー化では、Cオリゴマー化に使用する触媒と同一又は異なる不均一系触媒を使用してn−ブテンC4を液相で転化させる。
【0076】
オリゴマー化によって第2のオリゴマー化生成物C4,C8,C12,C16が得られ、第2のオリゴマー化生成物は第3のカラム7及び第4のカラム10において蒸留によって処理される。カラム7及び10は、第2のカラム6の塔底生成物も処理する。第2のカラム6の塔底生成物は、第2の混合器11内において第2のオリゴマー化生成物と混合される。
【0077】
第2の実施形態IIにおける再生工程では、第1の反応器4内に存在するCオリゴマー化用の触媒を、第2の反応器9でのCオリゴマー化の原料混合物としても使用するn−ブテンC4と接触させる(図4)。すなわち、反応性洗浄媒体を使用してC2触媒を洗浄すると共に、洗浄媒体として使用するn−ブテンは触媒によってオリゴマー化される。発生する反応熱は、再生工程において第1の反応器4の設定温度を上昇させるために使用することができる。再生とCオリゴマー化の組み合わせにより、第1の反応器4内では第3のオリゴマー化生成物C4,C8,C12,C16,COKEが生成する。第3のオリゴマー化生成物C4,C8,C12,C16,COKEは、第2のオリゴマー化生成物C4,C8,C12,C16と成分は同じだが、溶解した堆積物COKEをさらに含む。使用済の洗浄媒体(第3のオリゴマー化生成物C4,C8,C12,C16,COKE)は、コールドトラップ8を介して第2の混合器11に供給されて類似した組成を有する第2のオリゴマー化生成物C4,C8,C12,C16と混合され、カラム7及び10を使用して処理される。Cオリゴマー化用の触媒から除去された堆積物COKEは、コールドトラップ8によって集められ、第2の反応器9に入ることはない。
【0078】
再生(図4)が完了すると、オリゴマー化工程(図3)に切り替えられる。この場合、Cラインには少量のn−ブテンC4が残留しており、溶媒SOLVの一部として使用される。
【実施例】
【0079】
実施例1:エテンのイソブタンへのオリゴマー化及び高温イソブタン/ラフィネートIII混合物による触媒の再生
【0080】
355gのニッケル及びシリカアルミナからなる不均一系触媒(米国特許第2,581,228号を参照)を、熱電対を備えた外部オイル加熱・冷却式管型反応器(長さ:2m、内径:2.1cm)に入れた。次に、エテン(2〜10重量%)とイソブタンの混合物を、30〜80℃の設定温度において触媒に供給した(直線パス、総流量:0.96〜1.97kg/h)(WHSV=2.7〜5.6h−1)。圧力は、一定(30×10Pa)に維持した。692時間の処理後、エテンの供給を停止し、80重量%のラフィネートIIIと20重量%のイソブタンの供給を開始した(総流量:1.38kg/h)。洗浄媒体の正確な組成を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
洗浄媒体を使用して、触媒を100℃で短時間加熱した後、90℃で119時間加熱した(図5における丸く囲まれた部分を参照)。次に、エテン(8重量%)とイソブタンを再び供給し(総流量:1.18kg/h)、89%の転化率を得た。正確な工程区間を図5に示す。図5において、「●」はエテンの転化率を示し、「Δ」は設定温度(オイルの供給温度)を示し、実線は反応混合物におけるエテンの割合を示す。
【0083】
図5に示すように、692時間の処理時に触媒が失活してエチレンからC〜C16オリゴマーへの転化率が93%から8%に低下した後、イソブタンとラフィネートIIIの混合物によって反応器を90℃で119時間加熱することにより、転化率は89%まで回復した(触媒の再生を行うことができた)。
【0084】
実施例2:エテンのイソブタンへのオリゴマー化及び高温イソブタンによる触媒の再生
【0085】
215gのニッケル及びシリカアルミナからなる不均一系触媒(米国特許第2,581,228号を参照)を、熱電対を備えた外部オイル加熱・冷却式管型反応器(長さ:2m、内径:2.1cm)に入れた。次に、15重量%のエテンと85重量%のイソブタンの混合物を、30℃の設定温度において触媒に供給した(直線パス、総流量:1kg/h)(WHSV=4.7h−1)。圧力は、一定(30×10Pa)に維持した。所定の時間が経過した後、エテンの供給を停止し、洗浄時間を変更しながら、純粋なイソブタン(流量:1kg/h)によって高温で触媒を洗浄した。20μmのフィルターを使用することにより、17gの白い粉末状物質を単離した(使用したエテンの全量は約202kg)。粉末状物質は、低分子量分布を有するポリエチレンだった。反応及び再生工程(段階)の詳細を図6に示す。図6において、「●」はエテンの転化率を示し、「Δ」は設定温度を示し、実線は反応混合物におけるエテンの割合を示す。再生工程は丸く囲んである。データを表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表2から明らかなように、840時間の処理により、エチレンからC〜C16オリゴマーへの転化率は98%から80%に低下した。イソブタンによる90℃で48時間の1回目の再生により、エテン転化率は99%に上昇した。その後、30℃で624時間の処理により、エテン転化率は99%から73%に低下した。イソブタンによる110℃で6時間の2回目の再生により、エテン転化率は100%に上昇した。その後、168時間の処理により、エテンからC〜C16オリゴマーへの転化率は100%から88%に低下した。その後、イソブタンによって110℃で32時間の再生を行うことにより、エテン転化率は99%に上昇した。
【0088】
実施例3:パルス再生工程
【0089】
別の実験では、263gのニッケル及びシリカアルミナからなる不均一系触媒を、熱電対を備えた外部オイル加熱・冷却式管型反応器(長さ:2m、内径:2.1cm)に入れた。次に、13重量%のエテンと87重量%のイソブタンの混合物を、35〜70℃の設定温度において触媒に供給した(直線パス、総流量:1kg/h)(WHSV=3.8h−1)。圧力は、一定(30×10Pa)に維持した。
【0090】
所定の時間が経過した後、エテンの供給を停止し、純粋なイソブタン(流量:0.87kg/h)によって110〜120℃で触媒を洗浄した。この際、オリゴマー化工程と再生工程の間隔(期間)を短くした。切り替えは、オリゴマー化工程におけるエテン転化率(=(原料中のエテン−消費されずに排出されたエテン)/原料中のエテン)をモニタリングして行った。すなわち、オリゴマー化において連続的に測定中のエテンの転化率が97%に低下した直後に短い再生段階を実施した。最初に幾分長い再生工程(段階)を実施した後、上記反応条件下では12時間で十分であることが判明した。なお、12時間は最適化された値を意味するものではない。クリープ変化をより良く解釈するために、より良好に比較できるように再生時間は一定に維持した。
【0091】
工程の切り替えを図7に示す。図7において、「●」はエテンの転化率を示し、「Δ」は設定温度を示し、実線は反応混合物におけるエテンの割合を示す。
【0092】
図7に示すように、オリゴマー化工程をパルス再生工程で頻繁に中断した。転化率は長い時間にわたってほぼ100%に保つことができ、不可逆的な失活は長時間であっても発生しなかった。20μmのフィルターを使用することにより、約2gの白い粉末状物質を単離した(使用したエテンの全量は約150kg)。粉末状物質は、低分子量分布を有するポリエチレンだった。ポリエチレンの量は実施例2と比較して明らかに少ないため、パルス運転モードでは触媒ははるかに長い耐用寿命を示すと予想される。
【0093】
結論
再生工程を実施しない場合には、エテンからC〜C16オリゴマーへの転化率は時間の経過と共に直線的に低下する。触媒を所定の間隔で再生させない場合には、転化率は80%よりもかなり低い値に低下すると思われる。実施例によれば、エテンの供給を停止し、高温の溶媒で洗浄するだけで、コストがかかると共に煩雑な触媒の取り出しを行うことなく、触媒を再活性化させることができることが分かった。反応器全体において溶媒を均一に高温とすることが、失活の原因となる毒作用成分の除去に非常に重要である。パルス再生工程により、触媒の長期安定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0094】
I 第1の実施形態
II 第2の実施形態
1 混合器
2 エテンリサイクルライン
3 溶媒循環路
4 (第1の)反応器(C2−Oli)
5 第1のカラム
6 第2のカラム
7 第3のカラム
8 コールドトラップ
9 第2の反応器(C4−Oli)
10 第4のカラム
11 第2の混合器
C2 エテン
C2,C4,C6,C8,SOLV(第1の反応器におけるC2−Oliからの)オリゴマー化生成物
C2,SOLV 原料混合物
C2+ 炭素原子数が2よりも大きいオレフィン
C4 n−エテン/ブテンの二量体
C4+ 炭素原子数が4よりも大きいオレフィン
C4,C6,C8,C16(第2の反応器におけるC4−Oliからの)第2のオリゴマー化生成物
C4,C8,C12,C16,COKE(第1の反応器におけるC4−Oliからの)第3のオリゴマー化生成物
C6 エテンの三量体
C8 エテンの四量体/n−ブテンの二量体
C12 n−ブテンの三量体
C16 n−ブテンの四量体
COKE 堆積物
SOLV 溶媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7