(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228277
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】輸送車両用、具体的にはレール車両用のパワートレイン、および同パワートレインを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20171030BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
B60L9/18 A
H02P27/08
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-157408(P2016-157408)
(22)【出願日】2016年8月10日
(62)【分割の表示】特願2011-168243(P2011-168243)の分割
【原出願日】2011年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-192900(P2016-192900A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】1056370
(32)【優先日】2010年8月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】313011906
【氏名又は名称】アルストム トランスポート テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・デスポート
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・シペルス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ジャコモーニ
【審査官】
武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−072954(JP,A)
【文献】
特開2010−130726(JP,A)
【文献】
特開2008−086082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H02P 4/00−31/00
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- シャフト、固定子、および前記シャフトの軸のまわりで回転可能な可動回転子を備える電動機と、
- 直流入力電圧を受け取って前記電動機に多相電圧を送出する電力供給システムであって、前記電動機の各相の電圧振幅を前記直流入力電圧で割ったものに等しい変調度を有する電力供給システムと、
- 前記回転子の回転速度を表す信号のセンサと
を備えるレール車両用のパワートレインであって、
前記パワートレインが、前記変調度を変化させるための手段であって、前記センサが測定した信号によって表される前記回転子の前記回転速度が所定の遷移値を下回る値の第1の区間に属するとき、前記回転速度のアフィン関数であるとともに0%から100%まで変化する第1の変調度に対して前記変調度を減少するように適合され、前記センサが測定した信号によって表される前記回転子の前記回転速度が前記所定の遷移値を上回る値の第2の区間に属するとき、前記第1の変調度に対して前記変調度を増加するように適合される手段を含むことを特徴とするレール車両用のパワートレイン。
【請求項2】
前記回転子が、適切な磁気回転子磁界を第1の磁気方位に生成し、かつ別の磁界を通過させるように適合され、磁気回転子磁界が、前記適切な磁気回転子磁界と前記別の磁界との和であり、前記適切な磁気回転子磁界が、前記回転子を通る適切な回転子磁界の流れを生成し、前記パワートレインが、前記回転子を通る前記磁気回転子磁界の流れを変化させるための手段であって、前記回転子の前記回転速度が前記第1の区間に属するとき、前記適切な回転子磁界の流れに対して前記磁気回転子磁界の流れを減少するように適合され、前記回転子の前記回転速度が前記第2の区間に属するとき、前記適切な回転子磁界の流れに対して前記磁気回転子磁界の流れを増加するように適合された手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項3】
前記電力供給システムが、前記第1の磁気方位とは別の第2の磁気方位に配向された主固定子磁界を生成するために、前記固定子に給電するように意図された、主多相電流を生成するための第1の手段と、実質的に前記第1の磁気方位に配向された2次固定子磁界を生成するために前記固定子に給電するように意図された、前記主電流に対して位相がずれた追加の電流を生成するための第2の手段とを備え、前記追加の電流が、適切な回転子磁界の流れに対して前記磁気回転子磁界の流れを減少する第1の符号、および前記第1の符号とは反対の前記適切な回転子磁界の流れに対して前記磁気回転子磁界の流れを増加する符号を有することを特徴とする請求項2に記載のパワートレイン。
【請求項4】
前記パワートレインが、電動機トルクを表す信号を取得するための手段を含み、前記追加の電流の強度が前記電動機トルクの値に左右されることを特徴とする請求項3に記載のパワートレイン。
【請求項5】
前記追加の電流の強度の絶対値が、前記電動機トルクの高い値に関するものの方が、前記電動機トルクの低い値に関するものより小さいことを特徴とする請求項4に記載のパワートレイン。
【請求項6】
前記パワートレインが、電動機トルクを表す信号を取得するための手段を含み、前記変調度が前記電動機トルクの値に左右されることを特徴とする請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項7】
前記所定の遷移値が、50%に等しい前記第1の変調度に対応する前記回転子の前記回転速度の値より大きいことを特徴とする請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項8】
前記パワートレインが、電動機トルクを表す信号を取得するための手段を含み、前記所定の遷移値が前記電動機トルクの値に左右されることを特徴とする請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項9】
前記所定の遷移値が、高い電動機トルク値に関するものの方が低い電動機トルク値に関するものより小さいことを特徴とする請求項8に記載のパワートレイン。
【請求項10】
前記第1の区間と前記第2の区間の結合が接続されることを特徴とする請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項11】
前記電動機が同期電動機であることを特徴とする請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項12】
前記同期電動機が永久磁石同期電動機であることを特徴とする請求項11に記載のパワートレイン。
【請求項13】
請求項1に記載のパワートレインを備えることを特徴とするレール車両。
【請求項14】
シャフト、固定子、および前記シャフトの軸のまわりで回転可能な可動回転子を備える電動機を備える、レール車両用のパワートレインを制御する方法であって、
- 直流入力電圧を受け取って前記電動機に多相電圧を送出する電力供給システムであって、各相の電圧振幅を前記直流入力電圧で割ったものに等しい変調度を有する電力供給システムを使用して前記電動機に前記多相電圧を供給するステップと、
- 前記回転子の回転速度を測定するステップとを含み、
前記方法が、
- 前記測定された前記回転子の前記回転速度が所定の遷移値を下回る値の第1の区間に属するとき、前記回転速度のアフィン関数であるとともに0%から100%まで変化する第1の変調度に対して前記変調度を減少するステップと、
- 前記測定された前記回転子の前記回転速度が前記所定の遷移値を上回る値の第2の区間に属するとき、前記第1の変調度に対して前記変調度を増加するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記回転子が、適切な磁気回転子磁界を第1の磁気方位に生成し、かつ別の磁界を通過させるように適合され、磁気回転子磁界が、前記適切な磁気回転子磁界と前記別の磁界との和であり、前記適切な磁気回転子磁界が、前記回転子を通る適切な回転子磁界の流れを生成する方法であって、
- 前記回転子の前記回転速度が前記第1の区間に属するとき、前記適切な回転子磁界の流れに対して前記回転子を通る前記磁気回転子磁界の流れを減少するステップと、
- 前記回転子の前記回転速度が前記第2の区間に属するとき、前記適切な回転子磁界の流れに対して前記磁気回転子磁界の流れを増加するステップとを含むことを特徴とする請求項14に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送車両用、具体的にはレール車両用のパワートレインであって、
- シャフト、固定子、およびシャフトの軸のまわりで回転可能な可動回転子を備える電動機と、
- 直流入力電圧を受け取って電動機に多相電圧を送出する電力供給システムであって、電動機の各相の電圧振幅を直流入力電圧で割ったものに等しい変調度を有する電力供給システムと、
- 回転子の回転速度を表す信号のセンサとを備えるパワートレインに関する。
【0002】
本発明はまた、輸送車両、具体的にはこのようなパワートレインを装備したレール車両に関する。
【0003】
本発明はまた、輸送車両用、具体的には、シャフト、固定子、およびシャフトの軸のまわりで回転可能な可動回転子を備えた電動機を備えるレール車両用のパワートレインを制御する方法に関し、この方法は、
- 直流入力電圧を受け取って電動機に多相電圧を送出する電力供給システムであって、電動機の各相の電圧振幅を直流入力電圧で割ったものに等しい変調度を有する電力供給システムを使用して、この電動機に前記多相電圧を供給するステップと、
- 回転子の回転速度を測定するステップとを含む。
【背景技術】
【0004】
輸送車両用パワートレインの電動機は、一般に、電力供給システムによって多相電圧で電力が供給される。この多相電圧はパルス幅で変調される。この電源電圧の高調波が、回転子における高調波電流の原因となる。
【0005】
しかし、生起された高調波電流により、回転子ではジュールおよびフーコーの効果によって損失が生じ、回転子の顕著な加熱の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジュールおよびフーコーの効果による回転子の損失を低減することを可能にするパワートレインを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的のために、本発明は前述のタイプのパワートレインに関する。このパワートレインはまた、変調度を変化させるための手段であって、回転子の回転速度が所定の遷移値を下回る値の第1の区間に属するとき、変調度を変化させるための手段がない状態の変調度に対して変調度を減少するように適合され、また、回転子の回転速度が所定の遷移値を上回る値の第2の区間に属するとき、変調度を変化させるための手段がない状態の変調度に対して変調度を増加するように適合される手段を含む。
【0008】
他の実施形態によれば、前記パワートレインは、単独で、またはすべての技術的に可能な組合せによって検討された、以下の1つまたは複数の特徴を備える。
- 回転子は、適切な磁気回転子磁界を第1の磁気方位に生成し、かつ別の磁界を通過させるように適合され、磁気回転子磁界は、適切な磁気回転子磁界とこの別の磁界との和であり、適切な磁気回転子磁界が、回転子を通る適切な回転子磁界の流れ(rotor flow)を生成し、また、前記パワートレインは、回転子を通る磁気回転子磁界の流れを変化させるための手段であって、回転子の回転速度が第1の区間に属するとき、適切な回転子磁界の流れに対して磁気回転子磁界の流れを減少するように適合され、回転子の回転速度が第2の区間に属するとき、適切な回転子磁界の流れに対して磁気回転子磁界の流れを増加するように適合された手段を含む。
- 電力供給システムは、第1の磁気方位とは別の第2の磁気方位に配向された主固定子磁界を生成するために、固定子に給電するように意図された主多相電流を生成するための第1の手段と、実質的に第1の磁気方位に配向された2次固定子磁界を生成するために固定子に給電するように意図された、主電流に対して位相がずれた追加の電流を生成するための第2の手段とを備え、この追加の電流は、適切な回転子磁界の流れに対して磁気回転子磁界の流れを減少する第1の符号、および適切な回転子磁界の流れに対して磁気回転子磁界の流れを増加する、第1の符号とは反対の符号を有し、
- パワートレインは、電動機トルクを表す信号を取得するための手段を含み、追加の電流の強度は電動機トルクの値に左右され、
- 追加の電流の強度の絶対値は、高い電動機トルク値に関するものの方が、低い電動機トルク値に関するものより小さく、
- パワートレインは、電動機トルクを表す信号を取得するための手段を含み、変調度が電動機トルクの値に左右され、
- 所定の遷移値は、変調度を変化させるための手段がない状態で、50%に等しい変調度に対応する回転子の回転速度値より大きく、
- パワートレインは、電動機トルクを表す信号を取得するための手段を含み、所定の遷移値は電動機トルクの値に左右され、
- 所定の遷移値は、高い電動機トルク値に関するものの方が、低い電動機トルク値に関するものより小さく、
- 第1の区間と第2の区間の結合が接続され、
- 電動機は同期電動機であり、
- 同期電動機は永久磁石の同期電動機である。
【0009】
本発明はまた、輸送車両、具体的には上記で定義されたパワートレインを備えるレール車両に関する。
【0010】
本発明はまた、前述のタイプの制御方法に関する。この制御方法はまた、
- 回転子の回転速度が所定の遷移値を下回る値の第1の区間に属するとき、変調度を変化させるための手段がない状態の変調度に対して変調度を減少するステップと、
- 回転子の回転速度が所定の遷移値を上回る値の第2の区間に属するとき、変調度を変化させるための手段がない状態の変調度に対して変調度を増加するステップを含む。
【0011】
別の実施形態によれば、前記制御方法は以下の特徴を備える。
回転子は、適切な磁気回転子磁界を第1の磁気方位に生成し、かつ別の磁界を通過させるように適合され、磁気回転子磁界は、適切な磁気回転子磁界とこの別の磁界との和であり、適切な磁気回転子磁界が、回転子を通る適切な回転子磁界の流れを生成し、また、この制御方法は、
- 回転子の回転速度が第1の区間に属するとき、適切な回転子磁界の流れに対して、回転子を通る磁気回転子磁界の流れを減少するステップと、
- 回転子の回転速度が第2の区間に属するとき、適切な回転子磁界の流れに対して磁気回転子磁界の流れを増加するステップとを含む。
【0012】
本発明のこれらの特徴および利点は、単に例示として提供され、添付図面を参照して行なわれる以下の説明を読み取ることにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による輸送車両用パワートレインの図である。
【
図2】本発明による、パワートレインを制御する方法を示す流れ図である。
【
図3】
図1のパワートレインの電動機の回転子の高調波損失曲線、
図1の一連の電力供給システムの変調度、および回転子の回転速度の関数としての追加の位相ずれ電流の図である。
【
図4】0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクの基準値に対して、
図3の追加の位相ずれ電流の変遷を回転子の回転速度の関数として示す1組の曲線である。
【
図5】0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクの基準に対して、
図3の変調度の変遷を回転子速度の関数として示す1組の曲線である。
【
図6】0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクの基準に対して、現時点での最高技術水準のパワートレインの高調波損失を回転子の回転速度の関数として示す1組の曲線である。
【
図7】0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクの基準に対して、
図2の高調波損失を回転子の回転速度の関数として示す1組の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示されたレール車両用パワートレイン10は、電動機12と直流入力電源の電圧バス16に接続された電動機用電力供給システム14とを備える。直流入力電圧は電圧U
DCを有する。
【0015】
パワートレイン10はまた、例えば所望の電動機トルクCの基準信号である電動機トルクを表す信号を取得するための手段18、および回転子の回転速度Vrotorを測定するためのセンサ20を含んでいる。
【0016】
電動機12は、駆動軸22、固定子24、およびシャフト22に固定されてシャフト22の軸のまわりに回転するように適合された回転子26を含んでいる。電動機12は、例えば3相同期電動機である。あるいは、電動機12は非同期電動機である。
【0017】
センサ20は、具体的には電動機のシャフト22上に配置された光センサ、あるいは電動機12の制御電子回路における、電動機の速度情報、具体的には電動機の速度基準を読み取るセンサである。
【0018】
シャフト22は、電動機12の対称軸に沿って延びる。
【0019】
固定子24は、例えば3つの電磁コイル28を備える。各コイル28は、磁心のまわりにワイヤを巻きつけることにより作製される。固定子24は、主3相電流とも称される適合された供給電流Ipの働きの下で、主磁気固定子磁界とも称される回転磁界Hs1を生成するように適合される。
【0020】
回転子26は、例えば、シャフト22の軸と結合した対称軸を有する永久磁石であり、電動機12は永久磁石同期電動機である。あるいは、回転子26は、直流で給電される1つまたは複数の電磁コイルを含む。
【0021】
回転子26の磁石は、回転子26に対して固定された第1の磁気方位DM1に沿って配向された適切な磁気回転子磁界Hprを生成するように意図されている。あるいは、直流が供給される回転子26の(1つまたは複数の)電磁コイルは、適切な回転子磁界Hprを第1の磁気方位DM1に生成するように適合される。
【0022】
適切な磁気回転子磁界Hprは、回転子26を通して、回転子26の横断面を1秒間通過する、適切な磁気回転子磁界Hprの量と等しい適切な回転子磁界の流れΦprを生成する。回転子磁界の流れΦprは、磁気回転子磁界Hprのベクトルと回転子26の横断面に対応する表面ベクトルのスカラー積の形で、次式で表される。
【0024】
電力供給システム14は、電動機12に電力を供給するように適合された電圧インバータ30およびインバータを制御するためのデバイス32を備える。
【0025】
電圧インバータ30は、入力バス16を循環する直流入力電流を、電動機12に送出される3相出力電圧に変換するように適合される。インバータ30は、各出力相に対して、直流電圧を交流電圧に変換するように意図された少なくとも2つの制御可能なスイッチを含んでいる。インバータ30の各スイッチは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0026】
制御デバイス32は、所望の電動機トルクCの基準信号を受け取るためのデータ収集手段18および回転子の回転速度Vrotorに関する測定信号を受け取るための測定センサ20に接続される。制御デバイス32は、インバータ30の少なくとも2つのスイッチを制御するための信号33を送出するようにインバータ30に接続される。
【0027】
制御デバイス32は、例えばデータプロセッサ34によって形成されてメモリ36に接続される情報処理ユニットを含む。メモリ36は、主3相電流Ipを生成するための第1のソフトウェア38および追加の位相ずれ電流Idを生成するための第2のソフトウェア40を含む。
【0028】
あるいは、第1の生成手段38および第2の生成手段40は、プログラマブル論理素子の形態または専用集積回路の形態で作製される。
【0029】
第1の手段38によって生成される主3相電流Ipの相のそれぞれが固定子のそれぞれの電磁コイル28に給電して磁気コイル磁界を生成するように意図され、3つのコイル磁界の和が主磁気固定子磁界Hs1を形成する。主磁気固定子磁界Hs1は、電動機のシャフト22のまわりを回転するともに、第1の磁気方位DM1と別の第2の磁気方位DM2に配向された回転磁界である。主磁気固定子磁界Hs1の配向は、それぞれの電磁コイル28の供給電圧次第である。第1の磁気方位DM1は、第2の磁気方位DM2に対して角度θをなし、電動機トルクはこの角度に左右される。
【0030】
第2の手段40によって生成され、主電流Ipに対して位相がずれている追加の電流Idは、実質的に第1の磁気方位DM1に配向された2次磁気固定子磁界Hs2を生成するために固定子24に給電するように意図される。2次磁気固定子磁界Hs2は、適切な磁気回転子磁界Hprの強度より低強度である。
【0031】
磁気回転子磁界Hrは、適切な磁気回転子磁界と、同一の第1の磁気方位DM1に配向された2次磁気固定子磁界Hs2とのベクトル和であり、次式で表される。
【0033】
換言すれば、適切な磁気回転子磁界Hprと2次磁気固定子磁界Hs2とが反対の方向であるとき、磁気回転子磁界Hrの強度は、適切な回転子磁界Hprの強度と2次磁気固定子磁界Hs2の強度の間の差である。適切な磁気回転子磁界Hprと2次磁気固定子磁界Hs2が同一方向であるとき、磁気回転子磁界Hrの強度は、適切な回転子磁界Hprの強度と2次磁気固定子磁界Hs2の強度の和である。
【0034】
磁気回転子磁界Hrは、回転子26の横断磁界を1秒間通過する、磁気回転子磁界Hrの量と等しい、回転子磁界の流れとも称される磁気回転子磁界の流れΦrを生成する。回転子磁界の流れΦrは、磁気回転子磁界Hrのベクトルと回転子26の横断面に対応する表面ベクトルのスカラー積の形で、次式で表される。
【0036】
変調度Tmodは、3相電流の各相の電圧振幅を直流入力電圧の電圧U
DCで割ったものに等しい。変調度Tmodは電動機12の供給電圧に左右され、電動機12の供給電圧はParkの式に従って回転子磁界の流れΦrに左右される。
【0037】
図2は、パワートレイン10の制御方法を示す。
【0038】
ステップ200で、パワートレインの測定センサ20は、回転子速度Vrotorに関する測定信号を受け取る。
【0039】
ステップ210で、制御デバイス32は、回転子速度Vrotorの測定値が所定の遷移値Vtを下回る値の第1の区間INT1に属するかどうか判断する。ステップ220で、変調度Tmodを変化させるための手段は、必要に応じて、変調度を変化させるための手段がない状態の変調度に対して変調度Tmodを減少する。変調度Tmodの相対的減少は、例えば、磁気回転子磁界の流れΦrを変化させるための手段によって達成される。換言すれば、回転子速度Vrotorが第1の区間INT1に属するとき、磁界の流れを変化させるための手段は、適切な回転子磁界の流れΦprに対して磁気回転子磁界の流れΦrを減少する。次いで、磁気回転子磁界の流れΦrは適切な回転子磁界の流れΦprより小さくなる。
【0040】
回転子速度Vrotorの関数としての変調度Tmodの変化が、
図3に示されている。回転子速度Vrotorは、回転子の回転速度または電動機の回転速度とも称され、回転子26は電動機12の可動部である。回転子の回転速度Vrotorは、毎分回転数で示される。破線の曲線は、変調度の変化に対応し、実線の曲線は、第1の区間INT1および第2の区間INT2に関して、変調度を変化させるための手段の実施を伴う、所定の遷移値Vtより大きな値の変調度Tmodの変化に対応する。
【0041】
破線の曲線は、変調度Tmodが回転子の回転速度Vrotorのアフィン変換の関数であって変調度が0%から100%まで変化する第1の部分50と、変調度Tmodが、実質的に一定であって、回転子の回転速度Vrotorが全波形値Vpoより大きい場合の100%と等しい第2の部分52とを含む。第2の部分52は、全波形部分とも称され、全波形定格の電動機12の動作に対応する。
【0042】
実線の曲線は、実質的に、第1の区間INT1および第2の区間INT2に属さない回転子の回転速度Vrotorの値に関する破線の曲線と組み合わせられる。区間INT1に属する回転子の回転速度Vrotorの値については、変調度Tmodは、変調度Tmodが実質的に一定で、破線の曲線の第1の部分50に対応する値を下回るデフラクシング(defluxing)部分54を有する。
【0043】
換言すれば、ステップ220はデフラクシング部分54に対応する。
【0044】
回転子の回転速度Vrotorの測定値が第1の値の区間INT1に属さない場合、制御デバイス32はステップ230へ進み、そこで、回転子の回転速度Vrotorの値が所定の遷移値Vtより大きな値の第2の区間INT2に属するかどうか判断する。ステップ240で、適用可能であれば、変調度Tmodを変化させるための手段は、変調度を変化させるための手段がない状態の変調度に対して変調度Tmodを増加する。変調度Tmodの相対的増加は、例えば、磁気回転子磁界の流れΦrを変化させるための手段によって達成される。換言すれば、回転子速度Vrotorが第2の区間INT2に属するとき、磁界の流れを変化させるための手段は、適切な回転子磁界の流れΦprに対して磁気回転子磁界の流れΦrを増加する。よって、磁気回転子磁界の流れΦrは適切な回転子磁界の流れΦprより大きくなる。
【0045】
ステップ240は、変調度Tmodが実質的に一定であって破線の曲線の第1の部分50の対応する値より大きい実線の曲線のオーバーフラクシング部分56に対応する。
【0046】
回転子の回転速度Vrotorの測定値が第2の値の区間INT2に属さない場合、制御デバイス32は、変調度Tmodを変更せず、ステップ200に戻る。
【0047】
デフラクシング部分54および
図3の実線の曲線のオーバーフラクシング部分56は、実質的に直線状で垂直の接続部分58によって互いに接続される。接続部分58は、回転子の回転速度の所定の遷移値Vtに対応する。
【0048】
所定の遷移値Vtは、変調度を変化させるための手段がない状態で、50%に等しい変調度に対応する回転子の回転速度値V
50%_sansより大きい。
【0049】
適切な回転子磁界の流れΦprに対して回転子磁界の流れΦrを減少するために、第2の手段40は、生成される2次磁気固定子磁界Hs2が適切な回転子磁界Hprの反対方向になるような第1の符号を有する追加の電流Idを生成するように適合される。磁気回転子磁界Hrの強度は、適切な回転子磁界Hprの強度および2次磁気固定子磁界Hs2とは異なり、その結果、回転子磁界の流れΦrは、適切な回転子磁界の流れΦprより小さい。
【0050】
適切な回転子磁界の流れΦprに対して回転子磁界の流れΦrを増加するために、第2の手段40は、生成される2次磁気固定子磁界Hs2と適切な回転子磁界Hprが同一方向になるような、第1の符号と反対の符号を有する追加の電流Idを生成するように適合される。磁気回転子磁界Hrの強度は、適切な回転子磁界Hprの強度と2次磁気固定子磁界Hs2の強度との和であり、その結果、回転子磁界の流れΦrは、適切な回転子磁界の流れΦprより大きい。
【0051】
換言すれば、追加の電流Idは、第1の区間INT1に属する回転子速度Vrotorの値に対して第1の符号を有し、第2の区間INT2に属する回転子Vrotorの回転速度の値に対して第1の符号とは反対の符号を有する。
図3の実施形態では、第1の符号は負の符号である。
【0052】
第1の区間INT1と第2の区間INT2の結合は、例えば接続される。あるいは、第1の区間INT1は第2の区間INT2から分離される。
【0053】
回転子の回転速度Vrotorの関数としての回転子26における高調波損失Pertes_harmの変化が
図3に示されており、破線の曲線は、変調度を変化させるための手段が実施されない高調波損失の変化に対応し、実線の曲線は、変調度を変化させるための手段が実施された高調波損失の変化に対応する。
【0054】
高調波損失Pertes_harmに関する破線の曲線は、全波形値Vpoを下回る回転子の回転速度Vrotorの値に対して実質的に放物線形状の第1の部分60を示し、第2の部分62は、実質的に直線状であり、全波形値Vpoより大きな回転子の回転速度Vrotorの値に対して減少している。第1の部分60は、対応する変調度Tmodが実質的に50%に等しくなるところで最大値Pertes_max_sansを有する。
【0055】
高調波損失Pertes_harmに関する実線の曲線は、実質的に、INT1およびINT2に属さない回転子の回転速度Vrotorの値に関する破線の曲線と組み合わせられる。実線の曲線は、区間INT1およびINT2に属する回転子の回転速度Vrotorの値に対応する流れの変化部分64を含んでいる。流れの変化部分64は実質的に直線状に減少しており、破線の曲線の対応する部分60より小さい値を有する。実線の曲線は、区間INT1の下限に対応する回転子の回転速度Vrotorの値に関する最大値Pertes_max_avecを有する。実線の曲線の最大値Pertes_max_avecは、破線の曲線の最大値Pertes_max_sansより小さい。
【0056】
図4で、曲線70から80は、0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクCの基準値に対して、回転子の回転速度Vrotorの関数として位相ずれ電流Idの変遷を示す。したがって、曲線70、71、72、73、74、75、76、77、78、79および80は、それぞれ0.5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%および100%に等しい所望の電動機トルクCの基準値に対応する。
【0057】
追加の電流Idの強度は、所望の電動機トルクCの基準値次第である。追加の電流Idの強度の絶対値は、高い電動機トルクCの値に関するものの方が、低い電動機トルクCの値に関するものより小さい。
【0058】
所定の遷移値Vtは、所望の電動機トルクCの基準値次第である。所定の遷移値Vtは、高い電動機トルクCの値に関するものの方が、低い電動機トルクCの値に関するものより小さい。所定の遷移値Vtは、100%に等しい所望の電動機トルクCの値に関する最小値Vt_minと、所望の電動機トルクCが0.5%に等しいときの最大値Vt_maxとの間で変化する。最小値Vt_minは実質的に1100rpmに等しく、最大値Vt_maxは実質的に1800rpmに等しい。換言すれば、所望の電動機トルクCの値が0.5%から100%まで増加するとき、所定の遷移値Vtは1800rpmから1100rpmまで減少する。所望の電動機トルクCの値が90%に等しいときおよび100%に等しいとき、追加の電流Idがこの回転速度範囲ではゼロであるので、
図4では所定の遷移値Vtが見られない。
【0059】
全波形値Vpoは、所望の電動機トルクCの基準値と実質的に無関係であり、実質的に2800rpmに等しい。
【0060】
第1の区間INT1は実質的に0rpmと1500rpmの間の値に対応し、第2の区間INT2は実質的に1500rpmから3300rpmまでの区間の値に対応する。
【0061】
図5で、曲線90から100は、0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクCの基準値に対して、回転子の回転速度Vrotorの関数として百分率で表された変調度Tmodの変遷を示す。したがって、曲線90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100は、それぞれ0.5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%および100%に等しい所望のエンジントルクの基準値に対応する。
【0062】
変調度Tmodは、所望の電動機トルクCの基準値次第である。デフラクシング部分の傾斜は、所望の電動機トルクCの大きな基準値に関するものより、所望の電動機トルクCの小さな基準値に関するもの方が小さい。具体的には、曲線90から98のデフラクシング部分は実質的に平行であって小さな傾斜を有し、500rpmと1500rpmの間から成る回転子の回転速度Vrotorの値の区間については変調度Tmodの変化が小さい。曲線99から100については、変調度Tmodの曲線のデフラクシング部分は、実質的に回転子の回転速度Vrotorのアフィン変換の関数であり、変調度Tmodは、500rpmと1500rpmの間の回転子の回転速度Vrotorの値の区間において、曲線90から98の場合よりかなり変化する。これは、1500rpm未満の速度範囲で曲線99および100についてはゼロである追加の電流Idに関連することである。
【0063】
図4と同様に、所定の遷移値Vtは、100%に等しい所望の電動機トルクCの値に関して実質的に1100rpmに等しい最小値Vt_minと、0.5%に等しい所望の電動機トルクCの値に関して実質的に1800rpmに等しい最大値Vt_maxとの間で変化する。
【0064】
曲線90から100のそれぞれは、
図3のデフラクシング部分56から分離された水平部分102を示し、これに関して、変調度Tmodの値は実質的に一定であって95%に等しい。この水平部分102により、インバータ30のスイッチング損失によって決まる温度制限を守ることが可能になる。曲線90から98については、水平部分102は、約1900rpmと2700rpmの間の回転子の回転速度Vrotorの値に対応する。曲線99については、水平部分102は、約2000rpmと2700rpmの間の回転子の回転速度Vrotorの値に対応する。曲線100については、水平部分102は、約2300rpmと2700rpmの間の回転子の回転速度Vrotorの値に対応する。
【0065】
曲線90から100のそれぞれは、全波形部分52を含み、これに関して、変調度Tmodの値は実質的に一定であって100%に等しい。全波形値Vpoは、所望の電動機トルクCのすべての基準値に対して実質的に同一であり、実質的に2800rpmに等しい。
【0066】
図6で、曲線110から120は、0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクCの基準値に対して、現時点での最高技術水準の電動機の回転子の、回転速度Vrotorの関数としてkWで表された高調波損失Pertes_harmの変遷を示す。したがって、曲線110、111、112、113、114、115、116、117、118、119および120は、それぞれ0.5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%および100%に等しい所望の電動機トルクCの基準値に対応する。
【0067】
高調波損失Pertes_harmに関するそれぞれの曲線110から120は、回転子の回転速度の5つの別個の値Vs1、Vs2、Vs3、Vs4およびVs5に関する実質的に垂直の部分を含んでいる。これらの垂直の部分は、特に回転子の回転速度の値Vs3、Vs4およびVs5に関する高調波損失Pertes_harmのかなりの変化に対応する。電動機に送出される3相電圧は、例えばパルス幅で変調される。回転子の回転速度の5つの別個の値Vs1、Vs2、Vs3、Vs4およびVs5は、それぞれが、あるパルス幅変調から別のパルス幅変調への変化に対応する。
【0068】
曲線110から120は、互いに実質的に接近しており、最端の曲線110と120の間の高調波損失の最大の乖離は、2000rpm未満の回転子の回転速度のあらゆる値に対して実質的に2kW未満である。2000rpmと2500rpmの間では、最端の曲線110と120の間の高調波損失の最大の乖離は、実質的に2kWと3kWの間にある。2500rpmを超えると、最端の曲線110と120の間の高調波損失の最大の乖離は、2kWから徐々に減少し、3350rpmを超えると乖離が実質的にゼロになる。
【0069】
Vs3とVs4の間の回転子の回転速度の値に対して、高調波損失は、実質的に、曲線110については2.5kWと3.5kWの間にあり、曲線120については実質的に4.5kWと5.75kWの間にある。
【0070】
Vs4とVs5の間の回転子の回転速度の値に対して、高調波損失は、実質的に、曲線110については5kWであり、曲線120については7kWである。
【0071】
Vs5に等しい回転子の回転速度の値に対して、高調波損失は、曲線110の8.25kWと曲線120の10kWの間の最大値を通る。
【0072】
変調度を変化させるための手段が実施されないとき、全波形値Vpoは、所望の電動機トルクCの基準値次第である。全波形値Vpoは、100%に等しい所望の電動機トルクCの基準値に対する約2600rpmと、0.5%に等しい所望の電動機トルクCの基準値に対する約3350rpmとの間にある。最大の全波形値Vpoより大きな回転子の回転速度の値については、曲線110から120は、実質的に組み合わせられ、2kW未満の高調波損失値Pertes_harmを有する。
【0073】
図7で、曲線130から140は、0.5%から100%まで10%のピッチで変化する所望の電動機トルクCの基準値に対して、電動機の回転子26の、回転速度Vrotorの関数としてkWで表された高調波損失Pertes_harmの変遷を示す。したがって、曲線130、131、132、133、134、135、136、137、138、139および140は、それぞれ0.5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%および100%に等しい所望の電動機トルクCの基準値に対応する。
【0074】
図4および
図5と同様に、所定の遷移値Vtは、100%に等しい所望の電動機トルクCの値に関して実質的に1100rpmに等しい最小値Vt_minと、0.5%に等しい所望の電動機トルクCの値に関して実質的に1800rpmに等しい最大値Vt_maxとの間で変化する。全波形値Vpoは、すべての曲線130から140に関して実質的に2800KWに等しい。
【0075】
それぞれの曲線130から140に関して、遷移値Vtは、対応する高調波損失曲線の変曲点に対応する。回転子の回転速度Vrotorが遷移値Vtより大きいとき、高調波損失Pertes_harmは、それぞれの曲線130から140に関してかなり減少する。
【0076】
図6と同様に、それぞれの高調波損失曲線130から140のPertes_harmは、それぞれが別のパルス幅変調へのパルス幅変調の変化に対応する回転子の回転速度の5つの別個の値Vs1、Vs2、Vs3、Vs4およびVs5に関して実質的に垂直の部分を含む。これらの垂直の部分は、特に回転子の回転速度の値Vs4およびVs5に関する高調波損失Pertes_harmのかなりの変化に対応する。
【0077】
最端の曲線130と140の間の最大の高調波損失の乖離は、Vs3とVt_maxの間の回転子の回転速度のあらゆる値に関して実質的に3kWより大きい。全波形値Vpoより大きな回転子の回転速度の値については、曲線130から140は、実質的に組み合わせられ、2kW未満の高調波損失値Pertes_harmを有する。
【0078】
Vs3とVs4の間の回転子の回転速度の値に対して、高調波損失は、曲線130については実質的に2kWであり、曲線140については実質的に4.5kWと5.75kWの間にある。
【0079】
Vs4とVs5の間の回転子の回転速度の値に対して、高調波損失は、実質的に、曲線130については2.25kWと3kWの間にあり、曲線140については7kWである。
【0080】
高調波損失は、Vt_maxに等しい回転子の回転速度の値に対する曲線130の4kWとVs5に等しい回転子の回転速度の値に対する曲線140の10kWとの間の最大値を通る。
【0081】
曲線120および140に対応する高調波損失は、回転子の回転速度のすべての値に関して実質的に同一である。
【0082】
曲線130に対応する高調波損失は、曲線110に対応する高調波損失より非常に小さい。
【0083】
したがって、電動機トルクの基準値がより小さいとき、変調度を変化させるための手段の実施を伴う高調波損失はより小さい。変調度を変化させるための手段の実施を伴う高調波損失は、変調度を変化させるための手段を実施しない高調波損失と比較すると、電動機トルクの小さい基準値の場合に、電動機トルクの大きな基準値の場合よりも非常に小さい。
【0084】
したがって、本発明によるパワートレイン10により、回転子Vrotorの回転速度が第1の区間INT1に属するとき、適切な回転子磁界の流れΦprに対して磁気回転子磁界の流れΦrを減少することが可能になる。回転子磁界の流れΦrのこの減少は、電動機の供給電圧の減少をもたらす。電動機12の供給電圧のこの減少は、デフラクシング部分54の変調度Tmodのよりゆっくりした変遷をもたらす。このデフラクシング部分54では、変調度Tmodの値は50%未満であり、このことによって高調波損失Pertes_harmを低減することが可能になる。実際、50%に等しい変調度Tmodは、実質的に、最も大きな高調波損失を生成する値である。
【0085】
また、本発明によるパワートレイン10により、回転子Vrotorの回転速度が所定の遷移値Vtより大きい値の第2の区間INT2に属するとき、適切な回転子磁界の流れΦprに対して磁気回転子磁界の流れΦrを増加することが可能になる。回転子磁界の流れΦrのこの増加が、供給電圧の増加をもたらし、その結果、オーバーフラクシング部分56の変調度Tmodのより高速の変遷をもたらす。オーバーフラクシング部分56が、変調度の値が50%に等しいデフラクシング部分54に追従し、それに対応する最大の高調波損失が回避されているので、変調度Tmodのこのより大きな変遷は、高調波損失Pertes_harmの増加をもたらすことがない。
【0086】
したがって、本発明によるパワートレインにより、回転子におけるジュールおよびフーコーの効果によってもたらされる損失の低減が可能になる。
【0087】
当業者なら、本発明が、多相電動機12に給電するように適合された多相電圧インバータ30に対して、より広く適用することを理解するであろう。
【符号の説明】
【0088】
10 レール車両用パワートレイン
12 電動機
14 電動機用電力供給システム
16 電圧バス
18 信号を取得するための手段
20 センサ
22 シャフト
24 固定子
26 回転子
28 電磁コイル
30 電圧インバータ
32 制御デバイス
34 データプロセッサ
36 メモリ
38 第1のソフトウェア
40 第2のソフトウェア
50 第1の部分
52 第2の部分
54 デフラクシング部分
56 オーバーフラクシング部分
58 接続部分
60 第1の部分
62 第2の部分
64 流れの変化部分
70 所望の電動機トルクの0.5%基準値に対応する位相ずれ電流
71 所望の電動機トルクの10%基準値に対応する位相ずれ電流
72 所望の電動機トルクの20%基準値に対応する位相ずれ電流
73 所望の電動機トルクの30%基準値に対応する位相ずれ電流
74 所望の電動機トルクの40%基準値に対応する位相ずれ電流
75 所望の電動機トルクの50%基準値に対応する位相ずれ電流
76 所望の電動機トルクの60%基準値に対応する位相ずれ電流
77 所望の電動機トルクの70%基準値に対応する位相ずれ電流
78 所望の電動機トルクの80%基準値に対応する位相ずれ電流
79 所望の電動機トルクの90%基準値に対応する位相ずれ電流
80 所望の電動機トルクの100%基準値に対応する位相ずれ電流
90 所望の電動機トルクの0.5%基準値に対応する変調度
91 所望の電動機トルクの10%基準値に対応する変調度
92 所望の電動機トルクの20%基準値に対応する変調度
93 所望の電動機トルクの30%基準値に対応する変調度
94 所望の電動機トルクの40%基準値に対応する変調度
95 所望の電動機トルクの50%基準値に対応する変調度
96 所望の電動機トルクの60%基準値に対応する変調度
97 所望の電動機トルクの70%基準値に対応する変調度
98 所望の電動機トルクの80%基準値に対応する変調度
99 所望の電動機トルクの90%基準値に対応する変調度
100 所望の電動機トルクの100%基準値に対応する変調度
102 水平部分
100、130 所望の電動機トルクの0.5%基準値に対応する高調波損失
111、131 所望の電動機トルクの10%基準値に対応する高調波損失
112、132 所望の電動機トルクの20%基準値に対応する高調波損失
113、133 所望の電動機トルクの30%基準値に対応する高調波損失
114、134 所望の電動機トルクの40%基準値に対応する高調波損失
115、135 所望の電動機トルクの50%基準値に対応する高調波損失
116、136 所望の電動機トルクの60%基準値に対応する高調波損失
117、137 所望の電動機トルクの70%基準値に対応する高調波損失
118、138 所望の電動機トルクの80%基準値に対応する高調波損失
119、139 所望の電動機トルクの90%基準値に対応する高調波損失
120、140 所望の電動機トルクの100%基準値に対応する高調波損失