特許第6228319号(P6228319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228319自動車用電池の熱管理および自動消火システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228319
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】自動車用電池の熱管理および自動消火システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20171030BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20171030BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20171030BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20171030BHJP
   A62C 3/07 20060101ALI20171030BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20171030BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20171030BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20171030BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20171030BHJP
   A62C 13/76 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01M10/6568
   H01M2/10 EZHV
   B60K1/04 Z
   B60K11/06
   A62C3/07 Z
   H01M10/613
   H01M10/615
   H01M2/10 S
   H01M10/625
   H01M10/6556
   A62C13/76 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-549798(P2016-549798)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-512359(P2017-512359A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】CN2014094691
(87)【国際公開番号】WO2015120742
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】201410049698.6
(32)【優先日】2014年2月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516099613
【氏名又は名称】浙江吉利汽車研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY AUTOMOBILE RESEARCH INSTITUTE CO., LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】李書福
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−097836(JP,A)
【文献】 特開2013−062207(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202353190(CN,U)
【文献】 中国実用新案第202366355(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/60− 10/667
A62C 3/07
A62C 13/76
B60K 1/04
B60K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド自動車や電気自動車において自動車用電池を管理するために使用される、自動車用電池の熱管理および自動消火システムであって、
前記自動車用電池に隣接または接触して配置され、消火剤を充填されている、複数の消火パッケージと、
電池パッケージボックス本体に配置される、上部カバーと下部カバーと、
を備え、
前記複数の消火パッケージは、前記自動車用電池の温度が予め設定した温度よりも高い時に開封されるよう構成されており、これにより前記消火剤は、放出されて前記自動車用電池が設置されている空間に充填されることが可能になり、
前記複数の消火パッケージは、各自動車用電池の上面または前記自動車用電池から成る電池モジュールを覆う上方消火パッケージと、各自動車用電池の下面または前記自動車用電池から成る前記電池モジュールを覆う下方消火パッケージと、を含み、
前記上方消火パッケージと前記下方消火パッケージとは、相互に連通しており、
前記上方消火パッケージはポンプと並列接続され、前記上方消火パッケージ内の消火剤は、前記ポンプによって送り出されるものであり、前記電池モジュールを加熱または冷却可能であり、また、前記下方消火パッケージは前記ポンプと並列接続され、前記下方消火パッケージ内の消火剤は、前記ポンプによって送り出されるものであり、前記電池モジュールを加熱または冷却可能であり、
前記上方消火パッケージは、前記上部カバーが開いている時に、前記電池モジュールを覆ったり前記電池モジュールから取り外したりすることが可能であり、前記下方消火パッケージは、前記下部カバーが開いている時に、前記電池モジュールを覆ったり前記電池モジュールから取り外したりすることが可能である
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記上方消火パッケージの少なくとも一部分の材料は、プラスチックまたは樹脂であり、前記自動車用電池の温度が前記予め設定した温度よりも高い時に、前記上方消火パッケージの前記少なくとも一部分が前記自動車用電池によって加熱されて流体状態となり、これにより前記消火剤は、放出されて前記自動車用電池が設置されている空間に充填されることが可能になる
システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、
前記上方消火パッケージの前記少なくとも一部分の材料の融点は、摂氏85度から95度までの範囲内で選択され、前記下方消火パッケージの材料の融点は、前記上方消火パッケージの前記少なくとも一部分の材料の融点よりも高い
システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のシステムであって、
前記プラスチックはEVAプラスチックであり、前記樹脂はABS/PCアロイである
システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシステムであって、
前記消火剤はシリコーン油または変圧器油である
システム。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載のシステムであって、
前記電池モジュール間の回路接続板上、および/または、前記電池モジュールと電気素子との間の接続線上に配置された絶縁層をさらに備える
システム。
【請求項7】
請求項に記載のシステムであって、
前記絶縁層はアクリル樹脂製である
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車や電気自動車における自動車用電池の保護技術に関し、特に、自動車用電池の熱管理および自動消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
純電気自動車やある種のハイブリッド自動車といった、動力のすべてまたは一部が自動車用電池によって供給される自動車にとって、高容量の自動車用電池は、一般的に、自動車内に配置されて十分な瞬時動力と耐久走行距離とを可能な限り長く提供する必要がある。
【0003】
自動車用電池は動作時に熱を発生するものであり、温度が極度に高くなると、電池の動作性能や供給寿命に直接影響が及び、オーバーヒート、電解液過剰、火災、爆発、その他の安全性に関わる事故の潜在的危険を招く。自動車用電池の安全性を確保するために、自動車や電池の製造者は、たとえば、様々な耐衝突構造の設計、難燃性材料の選択、相対的に安全な位置への自動車用電池の配置、制御戦略に基づく自動車用電池の安全性保護など、様々な対策を講じる努力を惜しまない。しかしながら、自動車用電池が一旦出火すると、上記の対策は基本的に効力を失う。したがって、自動車用電池が危険な状態にある時は、いかにして自動車用電池と自動車の安全を確保し、乗員らが避難するのに十分な時間を提供するかが、特に重要である。
【0004】
比較的良好な解決策は、自動車用電池を冷却するための冷却システムを配置し、衝突、短絡、その他の完全には制御できない理由に起因する、自動車用電池のオーバーヒートや火災が起きた場合に、冷却システムを使用して消火することである。しかしながら、この解決策については、冷却システムの冷却液が自動車用電池に対する冷却効果と消火機能とを共に備える必要があるので、冷却液の材料に関する要件が比較的高い。また、冷却システムが自動車用電池に対する冷却効果と消火機能とを共に備える場合、既存の冷却システムを改造する必要があるので、解決策は全体として比較的複雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡便な解決策として、自動車用電池の熱管理および自動消火技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特に、本発明は、ハイブリッド自動車や電気自動車において自動車用電池を管理するために使用される、自動車用電池の熱管理および自動消火システムであって、
前記自動車用電池に隣接または接触して配置され、消火剤を充填されている、消火パッケージを備え、
前記消火パッケージは、前記自動車用電池の温度が予め設定した温度よりも高い時に開封されるよう構成されており、これにより前記消火剤は、放出されて前記自動車用電池が設置されている空間に充填されることが可能になる
システムを提供する。
【0007】
また、前記消火パッケージは、各自動車用電池の上面と前記自動車用電池から成る電池モジュールとを覆う上方消火パッケージと、各自動車用電池の下面と前記自動車用電池から成る前記電池モジュールとを覆う下方消火パッケージと、を備える。
【0008】
また、前記上方消火パッケージの少なくとも一部分の材料は、プラスチックまたは樹脂であり、前記自動車用電池の温度が前記予め設定した温度よりも高い時に、前記上方消火パッケージの前記少なくとも一部分が前記自動車用電池によって加熱されて流体状態となり、これにより前記消火剤は、放出されて前記自動車用電池が設置されている空間に充填されることが可能になる。
【0009】
また、前記上方消火パッケージの前記少なくとも一部分の材料の融点は、摂氏85度から95度までの範囲内で選択され、前記下方消火パッケージの材料の融点は、前記少なくとも一部分の材料の融点よりも高い。
【0010】
また、前記上方消火パッケージと前記下方消火パッケージとは、相互に連通しており、前記上方消火パッケージはポンプと並列接続され、前記上方消火パッケージ内の消火剤は、前記電池モジュールを加熱または冷却するよう前記ポンプによって送り出されることが可能であり、また、前記下方消火パッケージは前記ポンプと並列接続され、前記下方消火パッケージ内の消火剤は、前記電池モジュールを加熱または冷却するよう前記ポンプによって送り出されることが可能である。
【0011】
また、前記プラスチックはEVAプラスチックであり、前記樹脂はABS/PCアロイである。
【0012】
また、前記消火剤はシリコーン油または変圧器油である。
【0013】
また、前記自動車用電池の熱管理および自動消火システムはさらに、電池パッケージボックス本体に配置される、上部カバーと下部カバーとを備える。前記上部カバーが開いている時、前記上方消火パッケージは、前記電池モジュールを覆うよう取り付けたり前記電池モジュールから取り外したりすることが可能であり、前記下部カバーが開いている時、前記下方消火パッケージは、前記電池モジュールを覆うよう取り付けたり前記電池モジュールから取り外したりすることが可能である。
【0014】
また、前記自動車用電池の熱管理および自動消火システムはさらに、前記電池モジュール間の回路接続板上、および/または、前記電池モジュールと電気素子との間の接続線上に配置された絶縁層を備える。
【0015】
また、前記絶縁層はアクリル樹脂製である。
【0016】
本発明の自動車用電池の熱管理および自動消火システムによれば、自動車用電池の温度が予め設定した温度よりも高い時、消火パッケージが開封され、これにより消火パッケージ内に充填された消火剤は、放出されて自動車用電池が設置されている空間に充填されることが可能になる。こうして、衝突や短絡その他の異常な理由により自動車用電池が出火して燃えている時に、消火パッケージ内の消火剤は、放出されて自動車湯御電池が設置されている空間に充填されて消火することができる。これにより、自動車用電池の燃焼を自動的に防止し消火する効果を達成し、自動車用電池と自動車本体を効果的に保護し、乗員が避難する時間をより長く確保し、自動車の安全性を高める。概して、本発明の自動車用電池の熱管理および自動消火システムは、構造的に単純で信頼性があり、低コストで普遍性が高く、既存の自動車用電池の冷却システムを改造することなく自動車に直接搭載可能である。
【0017】
また、本発明の自動車用電池の熱管理および自動消火システムによれば、消火パッケージは自動車用電池または電池モジュールの上面と下面とに配置され、消火パッケージ内の消火剤により提供される消火機能に加え、消火パッケージ自体が自動車用電池や電池モジュールを固定し衝撃などを和らげる。
【0018】
また、本発明の自動車用電池の熱管理および自動消火システムによれば、電池モジュールの上面および下面を覆う上方消火パッケージおよび下方消火パッケージは、消火機能を担うだけではない。上方消火パッケージおよび下方消火パッケージはポンプに並列接続されているので、上方消火パッケージおよび下方消火パッケージ内の消火剤は、ポンプによって送出されて自動車用電池や電池モジュールの温度を調整することが可能であり、電池モジュールを適切な動作温度まで加熱または冷却する。また、並列接続状態であるため、パッケージに予期せぬ亀裂が生じて数個の上方または下方消火パッケージ内の消火剤が流出したとしても、他の消火パッケージの消火機能や温度調節機能は妨げられない。また、要求次第で、上方消火パッケージは上方の消火機能を十分に果たすことが可能であり、下方消火パッケージは温度調節機能だけを果たすことが可能で、消火剤を放出するために割れる必要がない。この状況において、下方消火パッケージの材質に関する要件は大きく軽減可能である。
【0019】
以下に、本発明の具体的な実施形態の詳細な説明を図面とともに行い、これによって当業者は本発明の上記その他の目的、利点および特徴をより理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の具体的な実施形態を、図面を参照して限定的にではなく例示的に以下に説明する。図面において同一の参照符号は、同一または類似の構成要素や部分を示す。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを当業者は理解しなければならない。
図1】本発明の実施形態に係る、自動車用電池の熱管理および自動消火システムにおける、消火パッケージと自動車用電池との位置関係を示す概略図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る、自動車用電池の熱管理および自動消火システムにおける、消火パッケージと電池モジュールとの位置関係を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る、電池パッケージボックス本体を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る、電池モジュール搭載領域における電池モジュールと消火パッケージとの位置関係を示す概略図である。
図5】本発明の実施形態に係る、原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態は、ハイブリッド自動車や電気自動車において自動車用電池10を管理するために使用される、自動車用電池10の熱管理および自動消火システムを提供する。自動車用電池の熱管理および自動消火システムは、消火パッケージ20を含み、消火パッケージ20は、自動車用電池10に隣接または接触しており、消火パッケージ20には消火剤が充填されている。自動車用電池10の温度が予め設定した温度よりも高い時に、消火パッケージ20が開封され、これにより、消火剤が放出されて自動車用電池10が設置されている空間に充填される。ここで、隣接または接触していることは、予め設定された温度に対する消火パッケージの材料の感受性に依る。こうして、自動車用電池10が衝突や短絡その他の異常な理由により出火して燃えると、消火パッケージ20内の消火剤が放出されて自動車用電池10が設置されている空間に充填されて火災を消火する。これにより、自動車用電池10の燃焼を自動的に防止し消火するという効果を達成し、自動車用電池10と自動車全体を効果的に保護し、乗員が避難する時間をより長く確保し、自動車の安全性を高める。本実施形態によれば、本発明の自動車用電池10の熱管理および自動消火システムは、構造的に単純で信頼性があり、低コストで普遍性が高く、既存の自動車用電池の冷却システムから独立しているので、既存の自動車用電池の冷却システムを改造する必要がない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る、消火パッケージ20と自動車用電池10との位置関係を示す概略図であり、本実施形態において、消火パッケージ20は、1つの自動車用電池10の消火のために使用される。こうして、各自動車用電池10は対応する消火パッケージ20を備え、自動車用電池10の温度が予め設定した温度よりも高い時に、対応する消火パッケージ20が開封される。これにより、正確に火災を消火するために、消火剤が放出されて自動車用電池10が設置されている空間に充填される。
【0023】
ハイブリッド自動車や電気自動車において、通常、自動車用電池10は、電池パッケージボックス本体100内に配置され、回路接続板によって相互に接続されて電池モジュールを形成しており、自動車用電池10自体は、1つの電池であっても複数の電池から成る電池パックであってもよい、ということは理解されるだろう。図2は、本発明の他の実施形態に係る、自動車用電池の熱管理および自動消火システムにおける、消火パッケージと電池モジュールとの位置関係を示す概略図であり、本実施形態において、消火パッケージ20は、自動車用電池10から成る電池モジュールの火災を消火するために使用される。図2は、3つの自動車用電池10から成る電池モジュールと、当該電池モジュールに対応する上方消火パッケージおよび下方消火パッケージとを、例示的に示す。電池モジュールに予め設定した温度は、自動車用電池10に設定した温度と同じであってよい。他の実施形態においては、電池モジュールを形成するために、ほほ同数の自動車用電池10が配置されてもよい。あるいは、他の実施形態において、1つの電池モジュールに対応したより多くの消火パッケージ20が配置されてもよく、また、図2とは異なるように配置されてもよく、たとえば、1つの電池モジュールの自動車用電池10の側壁に隣接するよう配置されてもよい。図1図2とを比較すると、本発明の自動車用電池の熱管理および自動消火システムによれば、各自動車用電池10または各電池モジュールは、対応する消火パッケージ20を備え、自動車用電池10または電池モジュールの温度が予め設定した温度よりも高い時に、対応する消火パッケージ20が開封され、これにより、消火剤が放出されて自動車用電池10または電池モジュールが設置されている空間に充填されて、自動車用電池10または電池モジュールの火災を消火する。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る、電池パッケージボックス本体100を示す概略図である。図3において、電池パッケージボックス本体100は、3つの電池モジュール搭載領域40を備え、各電池モジュール搭載領域40は、電池モジュール固定板41と、上部カバー42と、下部カバー(図示せず)とから成る。
【0025】
図4は、電池モジュール搭載領域40における、電池モジュール30と消火パッケージ20との位置関係を示す概略図である。図4に示すように、5つの自動車用電池10から成る電池モジュール30は、電池モジュール搭載領域40内に含まれ、上方消火パッケージ21は、電池モジュール30と上部カバー42との間に直接接続され、下方消火パッケージ22は、電池モジュール30と下部カバーとの間に直接接続されている。ここに配置される上方消火パッケージ21および下方消火パッケージ22は、電池モジュール30の温度を速やかに感知して消火や冷却のために消火剤を放出できるだけではなく、電池モジュール30を効果的に固定したり衝撃などを和らげたりすることができる。これにより、自動車の衝突に起因する電池モジュール30の火災リスクが低減され、また、概して自動車の激しい震動に起因する電池モジュール30の上下動が低減される。設計においては、電池モジュール30の温度が予め設定した温度よりも高い時に、上方消火パッケージ21と下方消火パッケージ22とのうち少なくとも一方が開封されるので、消火パッケージ内の消火剤は、放出されて電池モジュール30全体が配置されている空間に充填される。他の実施形態において、消火パッケージ20は、電池モジュール30の各自動車用電池10と上部カバー42との間、および、電池モジュール30の各自動車用電池10と下部カバーとの間に、直接接続することが可能であり、これにより、対応する自動車用電池10が自動車の激しい震動によって上下動するのを緩和する。自動車用電池10の温度が予め設定した温度よりも高い時に消火パッケージ20が開封され、これにより、消火パッケージ20内の消火剤は放出されて自動車用電池10が設置されている空間に充填されるが、他の消火パッケージ20は消火剤を放出しない。こうして、消火パッケージ20は、温度が予め設定した温度よりも高い1つの自動車用電池10に対して、より正確に消火剤を放出することができる。
【0026】
再び図3において、上部カバー42は1つの電池モジュール30を覆うために使用される。他の実施形態において、上部カバー42の寸法を大きくして、電池パッケージボックス本体100全体の上面を覆うことが可能である。上部カバー42が開いている時に、上方消火パッケージ21を電池モジュール30の上面を覆うように取り付けたり、電池モジュール30の上面から取り外したりすることができる。下部カバーが開いている時に、下方消火パッケージ22を電池モジュール30の下面を覆うように取り付けたり、電池モジュールの下面から取り外したりすることができる。上部カバー42および下部カバーの設計のおかげで、消火パッケージ20を時間内に楽に取り換えることができる。
【0027】
図4に示すような実施形態において、上方消火パッケージ21の自動車用電池10への接触箇所、すなわち、上方消火システム21の底部は、プラスチック製または樹脂製である。また、他の実施形態においては、上方消火パッケージ21全体をプラスチックまたは樹脂で作製することも可能である。プラスチックまたは樹脂をここで選択する理由は、適切なプラスチックおよび樹脂がより低い融点を有するからである。一例として、上方消火パッケージ21の少なくとも一部分の材料がプラスチックである場合、そのプラスチックはEVAプラスチックであり、EVAプラスチックの融点は、適切な添加物を使っておよそ摂氏90度に維持可能である。一例として、上方消火パッケージ21の少なくとも一部分の材料が樹脂である場合、その樹脂はABS/PCアロイである。ABS/PCアロイは、良好な機械的強度と強靭性を有しているため、衝突に起因する上方消火パッケージ21の自己亀裂を防止することが可能である。一方、ABS/PCアロイは、難燃性を有しているため、本発明の上方消火パッケージ21を製造するのに非常に適している。電池モジュール30の温度が予め設定した温度よりも高い時、上方消火パッケージ21の少なくとも一部分、たとえば、図2における上方消火パッケージ21の底部が、電池モジュール30によって加熱されて流体状態となり、これにより消火パッケージ内の消火剤は、放出されて電池モジュール30が設置された空間内に充填される。ここで、予め設定した温度は、自動車用電池10の火災リスクに関する当業者の判断基準に従って設定可能であり、たとえば、摂氏85度から95度までの範囲内で選択可能である。プラスチックや樹脂は、低融点を有する材料として選択され、その融点は、前述の予め設定した温度に従って決定可能である。これにより、プラスチックや樹脂は、電池モジュール30の温度が予め設定した温度を超えた時に、加熱されて流体状態となり、消火剤を流出させることが可能になる。本発明の実施形態において、上方消火パッケージ21の少なくとも一部分の材料の融点は、摂氏85度から95度までの範囲内であるので、電池モジュール30が火災を生じるリスクがある温度に一致する。当然のことながら、他の実施形態において、上方消火パッケージ21の少なくとも一部分の材料の融点を、異なる電池モジュール30が火災を生じるリスクがある温度に従って決定することも可能である。
【0028】
図4および図5に示すような実施形態において、下方消火パッケージ22は主に電池モジュール30を冷却するために使用されるので、ここでは下方消火パッケージ22は比較的高い融点を持つ材料で作製可能である。すなわち、ここでは下方消火パッケージ22は、冷却効果と上方消火パッケージ22のような消火機能とを有し、このとき、下方消火パッケージ22の材料の融点は上方消火パッケージ21の少なくとも一部分の材料の融点よりもわずかに高い。電池モジュール30の温度が予め設定した温度よりも高い時に、上方消火パッケージ21は開封されて消火を行い、下方消火パッケージ22は自動車用電池10を冷却し、そして、温度が下方消火パッケージ22の材料の融点まで継続的に上昇した場合は、下方消火パッケージ22が割れて消火を行う。下方消火パッケージ22の冷却効果については、後に詳細に説明する。
【0029】
シリコーン油や変圧器油は、常温常圧において良好な難燃性と絶縁性とを有するので、本発明において消火剤としての役割を果たすよう選択される。消火剤が不純物を含んでいる場合や、消火剤自体が導電性材料である場合、消火剤が放出されて電池モジュール30が設置されている空間に充填されると、電池モジュール30の短絡に起因する不安定な電力供給や火災が誘発され得る。したがって、消火剤の純度や材料の電気伝導性に関する要件を軽減するため、本発明の好適な実施形態においては、電池モジュール30間の回路接続板上と、電池モジュール30と電気素子との間の接続線上とに、絶縁層が配置される。回路接続板自体に反導電性対策がとられている場合は、接続線上だけに絶縁層を配置してもよく、また、接続線が反導電性機能を持つニス塗り線である場合は、回路接続板上だけに絶縁層を配置してもよい。アクリル樹脂は、非常に良好な温度耐性と、優れた絶縁性能および耐腐食性能を有するので、実施形態において、絶縁層はアクリル樹脂製である。他の実施形態において、絶縁層は、ポリエステルイミド、ポリイミド、あるいは絶縁性能を有する他の材料で作製されてもよい。
【0030】
図5は、本発明の原理を示す概略図である。図5に示すように、本発明の自動車用電池の熱管理および自動消火システムはさらに、冷却ループ110と、ラジエータ120と、ポンプ130とを備えることが可能である。各電池パッケージ50において、冷却ループ110は、上方消火パッケージ21と下方消火パッケージ22とを連通させ、また、冷却ループ110は、他の電池パッケージ50どうしを連通させる。冷却ループ110内の消火剤は、冷却ループ110内を流れて冷却媒体として機能し、これにより、電池モジュール30が放散する熱を吸収して、その熱を放散するために電池パッケージ50の外部へ運んで行く。冷却媒体の温度は、電池モジュール30での熱吸収により上昇する。そこで、冷却媒体は、冷却ループ110によって電池パッケージ50外部にあるラジエータ120へと送られて、熱を空気などの媒体と交換し、これにより、その熱を放散して自身を冷却する。このように、冷却ループ110を通る冷却媒体によって電池モジュール30を再び冷却することが可能である。電池モジュール30の温度の上昇に伴い、ポンプ130は、より高速で動作して上方消火パッケージ21および下方消火パッケージ22内の消火剤の流れを加速させ、電池モジュール30を冷却する。図5に示すような実施形態において、冷却媒体は、ラジエータ120内に保持してポンプ130によって冷却ループ110内に送り出すことが可能であり、そして、冷却媒体は冷却ループ110内を循環して流れる。冷却システム100は、主に電池モジュール30を冷却するために使用される。しかしながら、冷却媒体を加熱するために使用する加熱器を冷却ループ110内に配置して、自動車のコールドスタートその他の状況において可及的速やかに電池モジュール30を適切な動作温度に到達させるよう冷却媒体を加熱することができる、ということは理解可能であろう。
【0031】
好適な実施形態において、本発明に係る自動車用電池の熱管理および自動消火システムはさらに、火災監視装置と制御装置とを備えてもよい。火災監視装置は、電池モジュール30の火災や火災リスクを監視するために使用される。火災監視装置が電池モジュール30の火災や火災リスクを監視する時、制御装置は、下方消火パッケージ22が冷却効果を実行または促進して消火または火災の防止を行うことを可能にする。制御装置は、電池管理システム(BMS)によって実現可能である。電池管理システムは、動作時、電池モジュール30の温度と上方消火パッケージ21内の圧力とを、それぞれ、温度センサと圧力センサとによってリアルタイムで監視する。電池モジュール30の温度が予め設定した温度を超え、上方消火パッケージ21内の圧力が顕著に低下すると、電池管理システムは、電池モジュール30が燃えているか相対的に大きな火災リスクがあると判断し、そして、上方消火パッケージ21は、消火剤を放出するために流体化を開始するかもしれない。この時、電池管理システムは要求信号を全自動車制御装置に送ってもよく、全自動車制御装置はその要求信号に応答して、ポンプ130がより高速で動作するよう制御して下方消火パッケージ22内の消火剤の流れを助長し、これにより電池モジュール30を冷却する。他の実施形態においては、圧力センサか温度センサのどちらかだけを火災監視装置として使用してもよく、またこの時、電池モジュール30が燃えているか否か、あるいは、火災リスクがあるか否かは、電池モジュール30の温度または上方消火パッケージ21内の圧力によって判断してよい。他の実施形態においては、他の適切な監視装置、たとえば、火炎監視装置を、ここでの火災監視装置として使用してもよい。
【0032】
好適な実施形態において、上方消火パッケージ21が1つの自動車用電池10の火災を消火するために使用される場合、温度センサが各自動車用電池10上に配置され、圧力センサが各上方消火パッケージ21内に配置される。他の実施形態において、上方消火パッケージ21が電池モジュール30の火災を消火するために使用される場合、温度センサが各自動車用電池10上に配置され、圧力センサが各上方消火パッケージ21内に配置される。あるいは、温度センサが各電池モジュール30上に配置され、圧力センサは、電池モジュール内の各自動車用電池10の温度を監視するために、各上方消火パッケージ21内に配置される。他の実施形態において、上方消火パッケージ21が電池モジュール30の火災を消火するために使用される場合、2種類の温度センサを備える。2種類のうち1種類は全温度センサであり、電池モジュール内のすべての自動車用電池10の温度を監視するために使用される。もう1種類の温度センサは補助温度センサであり、各センサは対応する自動車用電池10上に配置されて電池モジュール30内の対応する自動車用電池10の温度を監視するために使用される。全温度センサと少なくとも1つの補助温度センサとによって監視されている温度が予め設定された温度を超えた時に限り、電池モジュール30の火災判断基準の1つであるとみなされて、これにより、全温度センサまたな補助温度センサが故障して過度に高い監視温度に達する、という状況を防止してよい。あるいは、全温度センサまたは少なくとも1つの補助温度センサによって監視される自動車用電池10の温度が予め設定された温度を超えた時、自動車用電池10の判断基準の1つであるとみなされて、これにより、全温度センサまたは補助温度センサが故障して動作できない、という状況を防止することが可能である。監視火災基準によれば、上方消火パッケージ21内の圧力の明らかな低下を同時に監視した場合、電池管理システムは、自動車用電池10が燃えている、あるいは、相対的に高い火災リスクがあると判断し、そして、上方消火パッケージ21は消火剤を外部に放出するために流体化を開始するかもしれない。図2において、熱い空気は上方へ移動するので、自動車用電池10の上面に配置された上方消火パッケージ21は、効果的に熱を吸収して主たる消火効果を奏することが可能である。また、大量の消火剤が上方消火パッケージ21内に保持されているので、たとえ前述の火災監視装置や制御装置が正常に動作できなくても、上方消火パッケージ21自体が、大量の消火剤を流体状態にして自己亀裂を生じてから供給し、火災を消火するかある程度まで鎮火することが可能である。
【0033】
図示しない実施形態において、本発明に係る自動車用電池の熱管理および自動消火システムはさらに、放出機構を備えてもよく、上方消火パッケージ21は当該放出機構内に配置されて自動車用電池10または電池モジュール30に隣接する。ここで、「隣接する」とは、図1および図2における消火パッケージ20と自動車用電池10との間の直接的接触とは異なるものであり、放出機構は、上方消火パッケージ21と自動車用電池10または電池モジュール30との間に配置される。上方消火パッケージ21が加熱されて流体状態となると、その中の消火剤が放出されて放出機構に充填されて、放出機構が選択的に開放し、その結果、消火剤が間接的に放出されて自動車用電池10または電池モジュール30が設置されている空間に充填される。
【0034】
ここまで本発明の複数の実施形態を示して詳細に説明したが、本発明の精神や範囲から逸脱しない限り本発明に開示される内容に従って、本発明の原理に合致する他の多くの変更や改良を直接見出したり導き出したりすることも可能であることを、当業者は理解すべきである。したがって、本発明の範囲はこれら他の変更や改良をすべて包含するものと理解され判断されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5