(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6228328
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】脱粒性小粒種子作物の収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 45/00 20060101AFI20171030BHJP
A01D 46/26 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
A01D45/00 Z
A01D46/26
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-23718(P2017-23718)
(22)【出願日】2017年2月13日
【審査請求日】2017年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】717000894
【氏名又は名称】北郷 俊明
(72)【発明者】
【氏名】北郷 俊明
【審査官】
小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0319930(US,A1)
【文献】
特開平09−154368(JP,A)
【文献】
特公昭48−035219(JP,B1)
【文献】
特開昭48−090827(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0181807(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0250852(US,A1)
【文献】
米国特許第4562693(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0271359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 45/00
A01D 45/16
A01D 46/00
A01D 46/20−46/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列植・植立状態の脱粒性小粒種子作物を、刈り取らずに倒さないで走行移動して使用する脱粒性小粒種子作物の収穫機において、
作物を搖動・叩打する脱穀棒と、
作物列の上面・左右側面・底面を覆うと共に、作物列が通過する前後面と走行方向に延びる底面中心線は開口されている飛散防止覆いと
前記脱穀棒と前記飛散防止覆いを固定・支持する支持フレームとを具備し、
前記脱穀棒は、前記支持フレームとの接続基部に搖動自在に支持する支持バネを備えることを特徴とする脱粒性小粒種子作物の収穫機。
【請求項2】
前記支持フレームと前記飛散防止覆いとが、全体的にあるいは一部が一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の脱粒性小粒種子作物の収穫機。
【請求項3】
前記脱穀棒および支持バネは、前記支持フレームとの間に平行四辺形に変形して設置角度を保ちながら作物枝幅の変化に追従する四節リンク状の枝幅追従バネ枠を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱粒性小粒種子作物の収穫機。
【請求項4】
前記飛散防止覆いは、前記底面中心線開口帯の両側に連続的に配された、種子の落下を防止するとともに前記底面への集積を案内する底面集積ブラシを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱粒性小粒種子作物の収穫機。
【請求項5】
前記飛散防止覆いは、前記前後開口部を覆って前記種子の前後方向への飛散を防止する飛散防止幕を前後に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱粒性小粒種子作物の収穫機。
【請求項6】
前記飛散防止覆いは、前記底面中心線を基準にして、左右の底面が内側から外側に下向きに傾斜して前記種子を集積する形状となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の脱粒性小粒種子作物の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熟すと種子が落ちやすい脱粒性を持ち、かつ種子が小粒の作物に対して、当該作物が列植・植立状態で、走行移動して使用する脱粒性小粒種子作物の収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エゴマ・ゴマ等の脱粒性作物は、完熟するとわずかな衝撃で種子が落ちてしまうため、米・麦などの難脱粒性作物と同様の収穫ができない。そのため、完熟直前に刈り取り、運搬・乾燥した後、脱穀する、という収穫方法が従来行われている。
上記収穫方法では、完熟直前の限られた期間に刈り取らなければならない。その際、熟度が高いと衝撃による脱粒が多く、機械収穫が困難である。乾燥作業に際しては、雨滴による衝撃と濡れ蒸れを防ぐ雨除け処置を伴った相応の空間を占有する。また、脱穀に際しては、種子の小ささ・軽さに対応する適切な機械がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2007−252259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の収穫方法では、機械化の困難さと乾燥場所確保の必要性、および、刈り取り期間の制限があり、省力化・効率化の大きな改善が難しいことが問題点である。
【0005】
また、従来の方法では、完熟前の種子が多くなることが、問題点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、列植・植立状態の脱粒性小粒種子作物を、刈り取らずに倒さないで走行移動して使用する脱粒性小粒種子作物の収穫機において、
作物を搖動・叩打する脱穀棒と、
作物列の上面・左右側面・底面を覆うと共に、作物列が通過する前後面と走行方向に延びる底面中心線は開口されている飛散防止覆いと
前記脱穀棒と前記飛散防止覆いを固定・支持する支持フレームとを具備する。
【0007】
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、前記支持フレームと前記飛散防止覆いとが、全体的にあるいは一部が一体形成されていることを特徴とすることができる。
【0008】
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、前記脱穀棒は、前記支持フレームとの接続基部に搖動自在に支持する支持バネを備えることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、前記脱穀棒および支持バネは、前記支持フレームとの間に平行四辺形に変形して設置角度を保ちながら作物枝幅の変化に追従する四節リンク状の枝幅追従バネ枠を備えることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、前記飛散防止覆いは、前記底面中心線開口帯の両側に連続的に配された、種子の落下を防止するとともに前記底面への集積を案内する底面集積ブラシを備えることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、前記飛散防止覆いは、前記前後開口部を覆って前記種子の前後方向への飛散を防止する飛散防止幕を前後に備えることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明にかかる脱粒性小粒種子作物の収穫機の一形態によれば、前記飛散防止覆いは、前記底面中心線を基準にして、左右の底面が内側から外側に下向きに傾斜して前記種子を集積する形状となっていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の収穫機は、従来の収穫作業における刈り取りと、運搬・乾燥の作業を要しないことと、脱穀作業が機械化されることにより、より短時間・少労力で収穫できるという利点がある。
【0014】
本発明の収穫機は、完熟した実の脱粒性を利用しているので、完熟した実を収穫できるという利点がある。また、刈り取らずに収穫するので、複数回の収穫作業によって、完熟時期のばらつきに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は脱粒性小粒種子作物の収穫機を俯瞰した説明図である。
【
図2】
図2は脱粒性小粒種子作物の収穫機の代表的な使用形態を示した俯瞰図である。
【
図3】
図3は脱粒性小粒種子作物の収穫機を走行移動装置の片側に吊り下げ設置した使用例を示した正面図である。
【
図4】
図4は脱粒性小粒種子作物の収穫機を走行移動装置の両側に吊り下げ設置した使用例を示した正面図である。
【
図5】
図5は脱粒性小粒種子作物の収穫機を門型の走行移動装置に内設した使用例を示した正面図である。
【
図6】
図6は支持バネを備えた脱穀棒の作動原理を示した平面図(実施例1)であり、(a)は当該脱穀棒が脱粒性小粒種子作物の茎枝に押されて当該支持バネが弾性変形する状態を、(b)は走行移動に伴って当該脱穀棒が脱粒性小粒種子作物の茎枝から外れて弾性変形が復元して隣接する脱粒性小粒種子作物の茎枝を叩打する状態を示す。
【
図7】
図7は四節リンク状の枝幅追従バネ枠および支持バネを備えた脱穀棒が脱粒性小粒種子作物の茎枝の大きさに応じた動作を示した平面図(実施例1)であり、(a)は前記茎枝が小さい状態(b)前記茎枝が大きい状態を示す。
【
図8】
図8は底面集積ブラシの設置状況を示した正面図である(実施例2)。
【
図9】
図9は前後幕の設置状況を示した正面図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の脱粒性小粒種子作物の収穫機(
図1・
図2)は、列植・植立状態の脱粒性小粒種子作物を覆い、移動させて使用する。移動させることによって、脱穀棒(1)が対象作物の茎枝を搖動・叩打して脱穀し、種子は飛散防止覆い(2)の中に集められる。
移動方法は、少なくとも、走行装置に吊り下げ設置する方法(
図3・
図4)のほか、門型の走行装置に内設する方法(
図5)がある。さらに、張設したワイヤー・レールに沿って走行させても良い。
【実施例1】
【0017】
図6は、本発明装置の脱穀棒(1)に支持バネ(7)を利用した場合の作動原理図であって、本発明装置の走行移動に伴い、対象作物の茎枝に弾かれた脱穀棒(1)が隣の対象作物の茎枝を叩く原理を示している。当該支持バネ付脱穀棒の使用によって、能動的に脱穀できる機構である。脱穀棒は、左右の支持フレームに複数配され、本形態例に示されるような直棒状の形状に限定されるものではない。
【0018】
図7は、上記支持バネ付脱穀棒に四節リンク状の枝幅追従バネ枠(8)を備えた場合の動作を示した図であって、対象作物の茎枝の大きさの変化に追従する状況を示している。当該枝幅追従バネ枠を備えた脱穀棒の使用によって、さまざまな大きさの対象作物の茎枝に対応することができる。
【実施例2】
【0019】
図8は、本発明装置の飛散防止覆い(2)の底面中心線開口部両側に、段差を設けた底面集積ブラシ(9)を使用した状況を示す図であって、脱粒した種子が飛散防止覆い(2)の底面中心線開口部からこぼれるのを防止する機構である。
また、本形態例の脱穀棒(1)は、
図8に示すように、先端が下方に傾斜した状態に装着されている。これによれば、作物の枝に沿って前記脱穀棒の先端が対象作物の茎枝奥まで侵入しやすく、脱穀効率を向上できる。
【実施例3】
【0020】
図9は、本発明装置の飛散防止覆い(2)の前後開口部付近に、前後飛散防止幕(10)を設置した状況を示す図であって、脱粒した種子が飛散防止覆い(2)の前後開口部から飛散することを抑止する機構である。
当該前後飛散防止幕は、
図9に示すように、取り付け対象部材として前記脱穀棒(1)を転用することができ、さらに前記支持バネ(7)および前記枝幅追従バネ枠(8)の構造を転用して併設することができる。ただし、当該前後飛散防止幕は、対象作物の茎枝に衝撃を与えることなく茎枝の隙間を塞ぐことが目的であるので、前記支持バネ(7)および前記枝幅追従バネ枠(8)の構造に用いるバネは、弾性を弱くすることが好ましい。また、小さな隙間を防ぐために、当該前後飛散防止幕には切れ込みを設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0021】
1 脱穀棒
2 飛散防止覆い
3 支持フレーム
4 脱粒性小粒種子作物の収穫機
5 走行移動装置
6 脱粒性小粒種子作物
7 支持バネ
8 枝幅追従バネ枠
9 底面集積ブラシ
10 前後飛散防止幕
【要約】
【課題】列植・植立状態の脱粒性小粒種子作物を刈り取らずに倒さないで脱穀収穫することによって、収穫作業の省力化・効率化を可能にするとともに、完熟状態での収穫を可能とする。
【解決手段】列植・植立状態の脱粒性小粒種子作物を覆い、少なくとも対象作物の茎枝を搖動・叩打して脱穀する脱穀棒と種子の飛散を防いで集積する飛散防止覆いを備えた装置を走行移動させて、収穫する。 移動方法は、少なくとも、走行装置に吊り下げ設置する方法のほか、門型の走行装置に内設する方法がある。さらに、張設したワイヤー・レールに沿って走行させても良い。
【選択図】
図2