【文献】
DESAI, S. S. et al.,On studies of 3He and isobutane mixture as neutron proportional counter gas,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A,2005年12月19日,Vol. 557, Issue 2,p. 607-614
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、中性子位置検出装置10は、中性子位置検出器11、高圧電源12、および処理回路13を備える。処理回路13は、プリアンプ14a,14b、AD変換器15、および演算器16等を備える。
【0012】
そして、中性子位置検出器11は、一次元位置敏感型の中性子検出用比例計数管(PSD)である。この中性子位置検出器11は、管状の外囲器20、この外囲器20の軸心に配置される陽極21、外囲器20の両端に設けられた端子部22a,22b、および外囲器20内に封入されたガス23を備えている。
【0013】
外囲器20は、円管状で、軸方向に長く、両端が閉塞されている。外囲器20の内部には密閉空間24が設けられている。
【0014】
陽極21は、単位長さあたりに一定の抵抗値を有する抵抗性芯線である。陽極21は、外囲器20内の軸心に沿って配置され、両端が端子部22a,22bに連結されているとともに電気的に接続されている。
【0015】
端子部22a,22bは、外囲器20に対して絶縁状態で、外囲器20の両端に配設されている。端子部22a,22bに陽極21の両端が連結されるとともに電気的に接続されている。
【0016】
ガス23は、外囲器20の密閉空間24に封入されている。ガス23は、
3Heガスおよび添加ガスを含む。
3Heガスの分圧は、中性子の検出効率の仕様に応じて任意に設定されるもので、概ね5〜20atmの範囲に設定される。添加ガスはCF
4ガス、CO
2ガス、CH
4ガス等が使用される。一般的に比例計数管ではクエンチングガスとして分子性のガスが添加されるが、本実施形態では、中性子と
3Heガスの核反応により生じる陽子と三重水素のガス23中での飛程が短くなるように、添加ガスの分圧を従来製品よりも高くしている。そして、ガス23の組成は、陽子と三重水素のガス23中での飛程の合計が2.0〜2.7mmの範囲となるように、
3Heガスの分圧および添加ガスの分圧が設定されている。
【0017】
また、高圧電源12は、陰極である外囲器20と陽極21との間に動作電圧を印加する。動作電圧は、陽極21からの出力電荷が従来製品よりも高い2〜5pCとなるように設定されている。従来製品では、出力電荷が約1pCとなるように、動作電圧が1.3〜1.8kVに設定されているが、本実施形態では、前述の通り、添加ガスの分圧が従来製品よりも高く設定されること、および出力電荷が高くなるように動作電圧が設定されることから、動作電圧が2.0〜2.5kVの範囲に設定されている。
【0018】
また、処理回路13のプリアンプ14a,14bは、中性子位置検出器11の両端(以下、検出器両端という)からの出力電荷をそれぞれ電気信号に変換して出力する。プリアンプ14a,14bは、中性子位置検出器11に印加されている高電圧成分をカットするカップリングコンデンサ30a,30b、および高電圧成分がカットされた出力電荷を所定の電気信号に変換するオペアンプ31a,31b等を備えている。
【0019】
また、AD変換器15は、プリアンプ14a,14bから出力される検出器両端の電気信号(アナログ信号)をデジタル信号(波形信号)にそれぞれ変換する。AD変換器15には、分解能が14bit以上の素子が用いられる。例えば、AD変換器15には、分解能が16bitの素子を用いてもよい。
【0020】
また、演算器16は、AD変換器15でデジタル化された検出器両端の電気信号の波形データから波高をそれぞれ求め、これら波高の比に基づいて、中性子位置検出器11の軸方向における中性子の入射位置を演算する。
【0021】
そして、中性子位置検出装置10の動作を説明する。
【0022】
高圧電源12によって、陰極である外囲器20と陽極21との間に動作電圧を印加する。
【0023】
そして、
図2(a)(b)に示すように、中性子nが外囲器20内に入射すると、中性子nと
3Heガスとが核反応を起こし、陽子pと三重水素Tが発生する。なお、
図2(b)に示すAは、核反応が起きた位置であるとともに、陽子pおよび三重水素Tが発生した位置である。
【0024】
図2(c)に示すように、陽子pは約574keVのエネルギを持ち、三重水素Tは191keVのエネルギを持ち、これら陽子pおよび三重水素Tが互いに反対方向へ向けてガス23中に飛び出し、周囲のガス23の原子・分子との衝突で徐々にエネルギを失って停止する。陽子pおよび三重水素Tとガス23とが衝突する際、陽子pおよび三重水素Tのエネルギの一部をガス23に与えて電離させ、電荷eを発生させる。
【0025】
発生した電荷eは、陰極である外囲器20と陽極21との間に形成される電場によって陽極21に収集される。これにより、陽極21の両端からは、陽極21における電荷eの収集位置から陽極21の両端までの各距離に応じた比の出力電荷がそれぞれ出力される。なお、電荷eが陽極21に再結合する際に、中性子位置検出器11の動作に悪影響を及ぼす紫外線を発生するが、添加ガスによって紫外線を吸収し、中性子位置検出器11の動作を安定させる。
【0026】
検出器両端(陽極21の両端)からの出力電荷をプリアンプ14a,14bで電気信号に変換し、プリアンプ14a,14bから出力される検出器両端の電気信号をAD変換器15でデジタル信号(波形信号)に変換する。
【0027】
演算器16では、AD変換器15でデジタル化された検出器両端の電気信号の波形データから波高をそれぞれ求め、これら波高の比に基づいて、中性子位置検出器11の軸方向における中性子の入射位置を演算する。
【0028】
そして、中性子位置検出装置10では位置分解能の向上が望まれている。なお、位置分解能は、中性子位置検出器11の1点に多数の中性子が入射したとして求めた位置分布の広がり幅である。
【0029】
図2(c)に示したように、電荷eは、陽子pおよび三重水素Tが発生した位置Aから停止するまでの範囲で発生する。陽子pおよび三重水素Tは、質量およびエネルギが同じではないため、核反応が起きた位置Aから停止するまでの飛程がそれぞれ異なっている。そのため、
図3に示すように、陽子pおよび三重水素Tによって作られた電荷eの重心は、核反応が起きた位置Aよりも陽子p側に寄る。したがって、核反応が起きた位置Aと電荷eの重心とはずれることになる。また、陽子pと三重水素Tが飛び出す方向はランダムである。
【0030】
このことから、多数の中性子が中性子位置検出器11の1点に入射したと仮定した場合でも、ガス23中にできる電荷eの重心は、1点とはならず、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程と相関のある範囲に広がることとなる。
【0031】
中性子位置検出器11を用いた中性子位置検出装置10では、中性子の入射位置を検出するのに電荷eの重心を求めているため、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程が大きいほど、中性子の入射位置の検出精度、つまり位置分解能に影響が生じることとなる。
【0032】
そのため、位置分解能を向上させるには、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程を短くすることが好ましい。シミュレーションを実施した結果、中性子位置検出器11の位置分解能を2mm以下に向上させるためには、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計が2.7mm以下にならないと、中性子位置検出器11の位置分解能を2mm以下に向上させることができないことが判明した。
【0033】
陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程を短くするには、添加ガスの分圧を増やす方法がある。添加ガスの分圧を増やすほど、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程を短くすることができるが、添加ガスの分圧を増やすほど、中性子位置検出器11に必要な動作電圧が高くなる。なお、添加ガスであるCF
4の分圧を1atm増やすと、中性子位置検出器11からの出力電荷が同じ場合、動作電圧は概ね500〜600V高くなる。
【0034】
しかし、中性子位置検出器11の動作電圧が高くなると、外囲器20と陽極21との間で放電が発生するおそれや、処理回路13に用いられる素子の耐電圧を超えるおそれがあるなど、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧の問題が発生する。
【0035】
さらに、位置分解能を向上させるには、中性子位置検出器11の両端からの出力電荷は大きい方がよい。これは、抵抗性芯線で構成される陽極21が比較的大きな熱雑音を発生するためであり、出力電荷が小さいと、S/N比が低く、位置分解能の向上が難しい。
【0036】
そこで、本実施形態では、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計が2.0〜2.7mmの範囲となるように
3Heガスおよび添加ガスの分圧を設定するとともに、中性子位置検出器11からの出力電荷が2〜5pCとなるように動作電圧を2.0〜2.5kVの範囲に設定し、中性子位置検出器11の位置分解能を2mm以下にする。このように構成することにより、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧を考慮したうえで、位置分解能の向上を図ることができる。
【0037】
図4には本実施形態の中性子位置検出装置10の特性と比較例の特性を示す。なお、
図4中には中性子位置検出器11をPSDと記載する。また、比較例の各構成については該当する符号を括弧書きで記載して説明する。
【0039】
中性子位置検出器(11)の
3Heガスの分圧は5〜20atm(中性子の検出効率の仕様に応じて任意に設定される)、添加ガスであるCF
4の分圧は0.2〜0.9atm(
3Heガスの分圧が6atmの場合であり、この場合でも0.9atm未満である)、中性子位置検出器(11)の動作電圧は1.3〜1.8kV、中性子位置検出器(11)からの出力電荷は約1pC、中性子位置検出器(11)の耐電圧は動作電圧+300V以上である。また、AD変換器(15)は、分解能が12bitの素子を用い、AD変換に使用される実質bit数は10bit(分解能=1024)である。処理回路(13)には耐電圧2〜2.5kVの素子が用いられる。
【0040】
このように構成された比較例では、中性子位置検出器(11)の位置分解能は4mm以上となっている。
【0041】
比較例を例1、例2および例3に示す。例1、例2および例3の中性子位置検出器(11)の径および有感長、
3Heガスの分圧、添加ガスであるCF
4の分圧、動作電圧は、それぞれ異なるが、例1、例2および例3とも中性子位置検出器(11)からの出力電荷が約1pCとなるように調整されている。
【0042】
例1、例2および例3とも、添加ガスであるCF
4の分圧は0.2〜0.9atm(0.9atm未満)の範囲内にあり、中性子位置検出器(11)の動作電圧は1.3〜1.8kVの範囲内にある。この場合、陽子pおよび三重水素Tのガス(23)中での飛程の合計は2.9mm以上(例2の2.903mmが最も短い)となり、中性子位置検出器(11)からの出力電荷は約1pCとなる。
【0043】
そして、陽子pおよび三重水素Tのガス(23)中での飛程が長いこと、中性子位置検出器(11)からの出力電荷が小さくS/N比が低いことにより、実際の位置分解能は5mm以上となっている。
【0044】
次に、本実施形態の中性子位置検出装置10について説明する。
【0045】
中性子位置検出器11の
3Heガスの分圧は5〜20atm(中性子の検出効率の仕様に応じて任意に設定される)、添加ガスであるCF
4の分圧は0.9〜2.3atm(添加ガスであるCF
4の分圧は、
3Heガスの分圧を元に、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計が2.0〜2.7mmの範囲となるように設定される)、中性子位置検出器11の動作電圧は2.0〜2.5kV、中性子位置検出器11からの出力電荷は2〜5pC、中性子位置検出器11の耐電圧は2.9kV以下である。また、AD変換器15は、分解能が14bitの素子が用いられ、AD変換に使用される実質bit数は12bit(分解能=4096)である。処理回路13には耐電圧3kVの素子が用いられる。
【0046】
このように構成された本実施形態の中性子位置検出装置10では、中性子位置検出器11の位置分解能が2mm以下に向上した。
【0047】
本実施形態の中性子位置検出器11の具体的な構成を例4、例5および例6に示す。例4、例5および例6の
3Heガスの分圧、CF
4の分圧、動作電圧が異なるが、例4、例5および例6とも出力電荷が約3pCとなるように調整されている。
【0048】
例4、例5および例6とも、添加ガスであるCF
4の分圧は0.9〜2.3atmの範囲内にあり、中性子位置検出器11の動作電圧は2.0〜2.5kVの範囲にある。この場合、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計は2.0〜2.7mmの範囲(例5の2.656mmが最も長い)にあり、中性子位置検出器11からの出力電荷は約3pCとなった。
【0049】
なお、シミュレーションを実施した結果、核反応が起きた位置Aから電荷eの重心までの距離が従来よりも短くなり、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程による位置分解能への寄与分(影響分)が従来よりも少なくなった。
【0050】
そして、添加ガスであるCF
4の分圧は従来よりも高い0.9〜2.3atmの範囲内にあり、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計は2.0〜2.7mmの範囲に短くできた。これにより、実際の位置分解能は2mm以下の1.6mmに向上できた。
【0051】
また、
図4に示す本実施形態には、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計を2.7mm以下、中性子位置検出器11からの出力電荷を2pC以上とするために、添加ガスであるCF
4の分圧を0.9atm以上、中性子位置検出器11の動作電圧を2.0kV以上としたが、位置分解能のさらなる向上のためには、添加ガスであるCF
4の分圧をさらに高くするとともに、中性子位置検出器11の動作電圧をさらに高くすればよい。
【0052】
ただし、添加ガスであるCF
4の分圧を高くし過ぎると、中性子位置検出器11の動作電圧が高くなり過ぎてしまい、外囲器20と陽極21との間で放電が発生するおそれや、処理回路13に用いられる素子の耐電圧を超えるおそれがあるなど、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧の問題で実現が難しくなる。
【0053】
そのため、このような中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧を考慮した現実的な動作電圧の上限は、中性子位置検出器11の耐電圧2.9kVに対する裕度を0.4kVとした場合、2.5kV程度が好ましい。
【0054】
中性子位置検出器11の動作電圧の上限から、
3Heガスおよび添加ガスであるCF
4の分圧の上限が決まって陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計の下限は2.0mmとなり、さらに、中性子位置検出器11からの出力電荷の上限は5pCとなる。
【0055】
したがって、位置分解能の向上と中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧とを総合的に考慮して、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計は2.0〜2.7mmの範囲、中性子位置検出器11の動作電圧は2.0〜2.5kVの範囲、中性子位置検出器11からの出力電荷は2〜5pCの範囲が好ましい。
【0056】
陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計は、2.0mmよりも短いと、
3Heガスおよび添加ガスであるCF
4の分圧をより高くしなければならないために、動作電圧が高くなって中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧の問題が生じ、また、2.7mmよりも長いと、中性子位置検出器11の位置分解能を2mm以下に向上させることができない。そのため、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計は2.0〜2.7mmの範囲が好ましい。
【0057】
中性子位置検出器11の動作電圧は、2.0kVよりも小さいと、中性子位置検出器11から十分に大きい出力電荷が得られず、S/N比が低くなるため、位置分解能を向上できず、また、2.5kVよりも大きいと、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧の問題が生じる。そのため、中性子位置検出器11の動作電圧は2.0〜2.5kVの範囲が好ましい。
【0058】
また、
図5は
3HeガスおよびCF
4ガスの分圧と、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計との関係を示すグラフである。なお、
図5中に示す丸数字は上述した例1〜6にそれぞれ対応している。
【0059】
図5に示すように、飛程2.0〜2.7mmの範囲(破線の範囲)は、
3Heガスの分圧とCF
4ガスの分圧との組み合わせによるガス組成によって設定されている。すなわち、飛程2.0〜2.7mmとなるガス23のガス組成は、
3Heガスの分圧5atmおよび添加ガスの分圧1.6atmの第1ガス組成点P1と、
3Heガスの分圧5atmおよび添加ガスの分圧2.3atmの第2ガス組成点P2と、
3Heガスの分圧20atmおよび添加ガスの分圧0.6atmの第3ガス組成点P3と、
3Heガスの分圧20atmおよび添加ガスの分圧1.3atmの第4ガス組成点P4とで囲まれる範囲内にある。そして、飛程2.0〜2.7mmの範囲内に本実施形態の例4〜6が入り、飛程2.0〜2.7mmの範囲よりも飛程が長い領域に従来の例1〜3が存在する。
【0060】
また、
図6は、
3HeガスおよびCF
4ガスの分圧と、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計と、2〜5pCの出力電荷が得られる動作電圧との関係を示すグラフである。
図6には、飛程2.0〜2.7mmが得られる範囲(破線の範囲)と、2.0〜2.5kVの範囲中の所定の動作電圧で2〜5pCの出力電荷が得られる範囲(一点鎖線の範囲)とを示している。なお、
図6には、出力電荷が1pCの例1〜3のガス組成の位置、および出力電荷が3pCの例4〜6のガス組成の位置も参考のために示している。
【0061】
そして、ガス23の組成つまり
3HeガスおよびCF
4ガスの分圧は、飛程2.0〜2.7mmが得られる範囲で、かつ、動作電圧2.0〜2.5kVで出力電荷2〜5pCが得られる範囲となる範囲(実線の範囲)Rが得られるように設定されている。
【0062】
以上のように、中性子位置検出器11によれば、陽子pおよび三重水素Tのガス23中での飛程の合計が2.0〜2.7mmの範囲となるように、
3Heガスおよび添加ガスの分圧を設定するため、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧を考慮したうえで、位置分解能の向上を図ることができる。
【0063】
そして、添加ガスの分圧は
図6に示すように0.6〜2.3atmであることが好ましく、この範囲は、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧を考慮したうえで、位置分解能の向上を図るのに好ましい。
【0064】
あるいは、飛程2.0〜2.7mmとなるガス23のガス組成は、
3Heガスの分圧5atmおよび添加ガスの分圧1.6atmの第1ガス組成点P1と、
3Heガスの分圧5atmおよび添加ガスの分圧2.3atmの第2ガス組成点P2と、
3Heガスの分圧20atmおよび添加ガスの分圧0.6atmの第3ガス組成点P3と、
3Heガスの分圧20atmおよび添加ガスの分圧1.3atmの第4ガス組成点P4とで囲まれる範囲内にあることが好ましく、この範囲は、中性子位置検出器11や処理回路13の耐電圧を考慮したうえで、位置分解能の向上を図るのに好ましい。
【0065】
しかも、中性子位置検出器11からの出力電荷は2〜5pCに大きくすることから、S/N比が改善し、位置分解能を2mm以下に向上できる。
【0066】
この出力電荷が2〜5pCの範囲での動作電圧は2.0〜2.5kVの範囲であり、放電で中性子位置検出器11が破損する耐電圧の問題も生じることはない。
【0067】
また、この中性子位置検出器11を用いた中性子位置検出装置10によれば、中性子位置検出器11に2.0〜2.5kVの動作電圧を印加する高圧電源12、および中性子位置検出器11からの2〜5pCの出力電荷を処理する処理回路13を備えるため、耐電性の問題が生じることなく、位置分解能を向上できる。
【0068】
また、AD変換器15については、12bitの素子を用いた場合、4分の1までの範囲を使用して表わすことができる数値は1024までであり、位置分解能の1digitは約0.1%に相当する。従来は、位置分解能が0.5%程度であったため、5倍の裕度があったが、1mの有感長に対して位置分解能が2mm以下、すなわち0.2%の位置分解能が得られる本実施形態の中性子位置検出装置10では、12bitでは十分な分解能ではない。そこで、AD変換器15には、分解能が14bitの素子を用いることにより、0.2%の位置分解能が得られる中性子位置検出装置10に対応できる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。