特許第6228351号(P6228351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228351
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】外用抗甲状腺軟膏の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20171030BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 5/16 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A61K31/573
   A61K31/505
   A61K31/4164
   A61P5/16
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K9/06
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61K47/40
   A61K47/24
   A61K47/22
   A61K47/20
   A61K47/16
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K47/02
   A61K47/18
   A61K47/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-522705(P2017-522705)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-524738(P2017-524738A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】CN2015000509
(87)【国際公開番号】WO2016008283
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2017年1月17日
(31)【優先権主張番号】201410338179.1
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517013276
【氏名又は名称】チェン リン
【氏名又は名称原語表記】CHEN, Ling
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン リン
【審査官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1692940(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1085079(CN,A)
【文献】 特表平11−509515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
9/00− 9/72
47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用抗甲状腺軟膏の製造方法であって、
(1)グルココルチコイドと薬物担体材料を混合して、グルココルチコイドを薬物担体材料に均一に分散させる工程と、
(2)抗甲状腺薬、水溶性基剤、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱して均一に混合し、水相を得る工程と、
(3)油性基剤と経皮浸透促進剤を80℃に加熱して溶融し、均一に混合して油相を得る工程と、
(4)80℃に維持した条件下で、工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入して、均一に撹拌し、温度が40℃に降下したとき、工程(1)で製造したグルココルチコイド成分を添加する工程と、
(5)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得る工程とを含み、
前記軟膏において、グルココルチコイドは0.01−10質量%、抗甲状腺薬は1−15質量%、経皮浸透促進剤は0.1−30質量%、油性基剤は10−30質量%、水溶性基剤は4−40質量%であることを特徴とする外用抗甲状腺軟膏の製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)は、
溶融法、溶媒法又は機械分散法によって、グルココルチコイドと、ポリエチレングリコール(1000−10000)、ポビドン類、ポロキサマー188、ポリオキシエチレン、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロースのうちのいずれか1種である薬物担体材料とを固体分散体として製造する方法と、
グルココルチコイドをポリエチレングリコール(400)に加えて均一な懸濁液として粉砕する方法と、
飽和水溶液法、粉砕法、超音波法、凍結乾燥法又は噴霧乾燥法によって、グルココルチコイド、シクロデキストリン及びその誘導体を包接化合物として製造する方法と、
蒸発法、真空乾燥法、凍結乾燥法又は非溶媒沈殿法によって、グルココルチコイドとリン脂質を複合体として製造する方法と、
グルココルチコイドを、固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles、SLN)、ナノ構造を有する脂質担体(nanostmctured lipid carriers、NLC)及び高分子ミセル(polymeric micelles)のうちのいずれか1種を含むコロイド分散系として製造する方法とのうちのいずれか1種によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記グルココルチコイドは、フルオシノロン(fluocinolone)及びその酢酸エステル(acetic ester);トリアムシノロン(triamcinolone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、イソブチラート(isobutyrate)及びスクシナート(succinate);ハロシノニド(halcinonide);ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、ブチラート(butyrate)、酪酸プロピオン酸エステル(butyrate propionate)、シピオネート(cipionate)、酢酸第三ブチル(tertiary butyl acetate)、バレレート(valerate)及びアセポネート(aceponate);デキサメタゾン(dexamethasone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、フルオロりん酸ジイソプロピル(diisopropyl fluoro phosphate ester)、メタスルホベンゾエート(metasulfobenzoate)、酢酸第三ブチル(tert.butylacetate)、2−クロロ−62−フルオロエステル(ハロメタゾン、halometasone)、トリオキソウンデカノエート(trioxoundecanoate)、イソニコチン酸エステル(isonicotinicoate)、バレレート(valerate);フルドロコルチゾン(fludrocortisone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、スクシナート(succinate);トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)及びその酢酸エステル(acetic ester);ベタメタゾン(betamethasone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、ジプロピオネート(dipropionate)、ベタメタゾンアシブタート(betamethasone acibutate)、バレレート(valerate)、スクシナート(succinate)、ベンゾエート(benzoate)、ホスフェート(phosphate)、バレロアセテート(valeroacetate);ベクロメタゾン(beclomethasone)及びそのジプロピオネート(dipropionate);プロピオン酸クロベタゾール(clobetasol propionate);フルランドレノライド(flurandrenolide);プレドニゾン(prednisone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、パルミテート(palmitate);プレドニゾロン(prednisolone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、メタスルホベンゾエート(metasulfobenzoate)、パルミテート(palmitate)、バレレート(valerate)、バレロアセテート(valeroacetate);ジフロラゾン(diflorasone)及びその酢酸エステル(acetic ester);アムシノニド(amcinonide);モメタゾン(mometasone)及びそのフロイト(furoate);メチルプレドニゾロン(methylprednisolon)及びその酢酸エステル(acetic ester)、シピオネート(cipionate)、ホスフェート(phosphate)、スクシナート(succinate);クロベタゾンブチレート(clobetasone butyrate);フルオロメトロン(flurometholone);アルクロメタゾン(alclometasone)及びそのジプロピオネート(dipropionate);ジフルプレドナート(difluprednate);デプロドン(deprodone)及びそのプロピオネート(propionate);フルランドレノライド(fludroxycortide);デソキシメタゾン(desoximetason)のうちのいずれか1種を含み、
前記抗甲状腺薬は、イミダゾール及びチオ尿素系抗甲状腺薬のうちのいずれか1種を含み、イミダゾール系抗甲状腺薬はメチマゾール又はカルビマゾールであり、チオ尿素系抗甲状腺薬はプロピルチオウラシル又はメチルチオウラシルであり、
前記油性基剤は、ワセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、白蝋、蜜蝋、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ジメチルポリシロキサン、トルエンポリシロキサン、エチレングリコールモノステアレート、ラウリン酸、シリコンオイルのうちのいずれか3種又は3種以上を含み、前記水溶性基剤は、ポリエチレングリコール(200-600)、ミリスチン酸イソプロピル、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、グリセリンゼラチン、澱粉グリセリンのうちのいずれか1種以上を含み、
前記経皮浸透促進剤は、アゾン、1−ゲラニル−アゼパン−2−オン、1−ファルネシル−アゼパン−2−オン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、ジメチルスルホキシド、ドデシルメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ヘキサメチレンラウラミド、尿素、オレイン酸のうちのいずれか1種又は2種を含み、
前記乳化剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate、SDS)、ポロキサマー188(poloxamer 188)、ツイーン(tweens)、スパン(spans)、ブライズ(brijs)、セトマクロゴール(cetomacrogol 1000、CMG)、ペレガル(peregals)、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル(AEO)、アルキルフェノールエトキシレート(alkylphenol ethoxylates、lgepon、APE)のうちのいずれか1種又は2種を含み、
前記防腐剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、ベンジルアルコールチモールのうちのいずれか1種以上を含み、
前記酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、システイン、チオグリセロール、チオグリコール、ジチオグリセロール、ジチオオキサミド、チオソルビン酸、チオグルコース、イソアスコルビン酸、ジ−tert−ブチル−p−クレゾールのうちのいずれか1種以上を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記軟膏において、グルココルチコイドは0.02−1質量%、抗甲状腺薬は3−10質量%、経皮浸透促進剤は5−20質量%、油性基剤は12−25質量%、水溶性基剤は10−30質量%であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記軟膏において、ミリスチン酸イソプロピルは6質量%、ステアリン酸は6質量%、ステアリン酸グリセリルは6質量%及びワセリンは4質量%であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外用抗甲状腺軟膏の分野に属し、特に外用抗甲状腺軟膏の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺機能亢進症は一般的な病気であり、過去70年間、イミダゾール及びチオ尿素系抗甲状腺薬(以下は、経口抗甲状腺薬と呼ばれる)を経口投与することは、甲状腺機能亢進症の治療に対して好適且つ主要な治療手段である。かかる方法によって甲状腺機能亢進症を治療すると、効き目が遅く、治療効果が安定せず、全身性副作用を引き起こす可能性があり、薬物中止後に緩和率が低い。そのため、1993年に、陳凌らは、発明特許「外用抗甲状腺クリーム」を開発して出願し、特許番号ZL93111370.9として授権された。この特許には、抗甲状腺薬とグルココルチコイドを含有する水中油型クリームが開示されており、このクリームを甲状腺表面の皮膚に塗布することによって甲状腺機能亢進症を治療した結果、経口抗甲状腺薬に比べて治療効果が高く、著しい全身性副作用がないという結果を取得した。しかしながら、臨床応用において、この外用抗甲状腺クリームを後首に塗布して治療する甲状腺機能亢進症患者は、塗布部位に著しい皮膚有害反応が見られるので、該薬物の応用が深刻に制限されてしまう。
【0003】
従って、陳凌は2005年に発明特許「外用抗甲状腺クリーム及びその製造方法」を出願し特許番号ZL200510070954.0(特許2)として授権された。この特許には、抗甲状腺薬、グルココルチコイド、経皮浸透促進剤、油性基剤、水溶性基剤、防腐剤及び酸化防止剤を原料として含有して製造する水中油型クリームが開示されている。このような製剤は、特許1の製剤に比べて、局所皮膚有害反応を低下させるが、臨床前研究により、主薬の一種であるグルココルチコイドの安定性が悪いので、製剤の治療効果と保存期間に影響を与えることが見出され、また、多くの患者への適用及び長期間の臨床応用によって、局所皮膚有害反応が依然として多く、患者の治療に対するコンプライアンスに影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来の薬物の欠点を克服するために、製剤の安定性が良く、局所皮膚有害反応をより少なくし、治療効果がより高く、著しい全身性副作用がない外用抗甲状腺軟膏の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は以下の対策によって達成される。
本発明は、
(1)グルココルチコイドと薬物担体材料を混合して、グルココルチコイドを薬物担体材料に均一に分散させる工程と、
(2)抗甲状腺薬、水溶性基剤、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱し、均一に混合して水相を得る工程と、
(3)油性基剤及び経皮浸透促進剤を80℃に加熱して溶融し、均一に混合して、油相を得る工程と、
(4)80℃で維持した条件下で、工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入し、均一に撹拌し、温度が40℃に降下したときに、工程(1)で製造したグルココルチコイド成分を加える工程と、
(5)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得る工程とを含み、
前記軟膏において、グルココルチコイドは0.01−10質量%、抗甲状腺薬は1−15質量%、経皮浸透促進剤は0.1−30質量%、油性基剤は10−30質量%、水溶性基剤は4−40質量%であることを特徴とする外用抗甲状腺軟膏の製造方法を開示する。
【0006】
上記本発明の製造方法において、前記工程(1)は、
溶融法、溶媒法又は機械分散法によって、グルココルチコイドと、ポリエチレングリコール(1000−10000)、ポビドン類、ポロキサマー188、ポリオキシエチレン、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロースのうちのいずれか1種である薬物担体材料とを固体分散体として製造する方法と、
グルココルチコイドをポリエチレングリコール(400)に加えて均一な懸濁液として粉砕する方法と、
飽和水溶液法、粉砕法、超音波法、凍結乾燥法又は噴霧乾燥法によって、グルココルチコイド、シクロデキストリン及びその誘導体を包接化合物として製造する方法と、
蒸発法、真空乾燥法、凍結乾燥法又は非溶媒沈殿法によって、グルココルチコイドとリン脂質を複合体として製造する方法と、
グルココルチコイドを、固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles、SLN)、ナノ構造を有する脂質担体(nanostmctured lipid carriers、NLC)及び高分子ミセル(polymeric micelles)のうちのいずれか1種を含むコロイド分散系として製造する方法とのうちのいずれか1種によって実施される。
【0007】
上記本発明の製造方法において、前記グルココルチコイドは、フルオシノロン(fluocinolone)及びその酢酸エステル(acetic ester);トリアムシノロン(triamcinolone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、イソブチラート(isobutyrate)、スクシナート(succinate);ハロシノニド(halcinonide);ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、ブチラート(butyrate)、酪酸プロピオン酸エステル(butyrate propionate)、シピオネート(cipionate)、酢酸第三ブチル(tertiary butyl acetate)、バレレート(valerate)及びアセポネート(aceponate);デキサメタゾン(dexamethasone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、フルオロりん酸ジイソプロピル(diisopropyl fluoro phosphate ester)、メタスルホベンゾエート(metasulfobenzoate)、酢酸第三ブチル(tert.butylacetate)、2−クロロ−62−フルオロエステル(ハロメタゾン、halometasone)、トリオキソウンデカノエート(trioxoundecanoate)、イソニコチン酸エステル(isonicotinicoate)、バレレート(valerate);フルドロコルチゾン(fludrocortisone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、スクシナート(succinate);トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)及びその酢酸エステル(acetic ester);ベタメタゾン(betamethasone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、ジプロピオネート(dipropionate)、ベタメタゾンアシブタート(betamethasone acibutate)、バレレート(valerate)、スクシナート(succinate)、ベンゾエート(benzoate)、ホスフェート(phosphate)、バレロアセテート(valeroacetate);ベクロメタゾン(beclomethasone)及びそのジプロピオネート(dipropionate);プロピオン酸クロベタゾール(clobetasol propionate);フルランドレノライド(flurandrenolide);プレドニゾン(prednisone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、パルミテート(palmitate);プレドニゾロン(prednisolone)及びその酢酸エステル(acetic ester)、メタスルホベンゾエート(metasulfobenzoate)、パルミテート(palmitate)、バレレート(valerate)、バレロアセテート(valeroacetate);ジフロラゾン(diflorasone)及びその酢酸エステル(acetic ester);アムシノニド(amcinonide);モメタゾン(mometasone)及びそのフロイト(furoate);メチルプレドニゾロン(methylprednisolon)及びその酢酸エステル(acetic ester)、シピオネート(cipionate)、ホスフェート(phosphate)、スクシナート(succinate);クロベタゾンブチレート(clobetasone butyrate);フルオロメトロン(flurometholone);アルクロメタゾン(alclometasone)及びそのジプロピオネート(dipropionate);ジフルプレドナート(difluprednate);デプロドン(deprodone)及びそのプロピオネート(propionate);フルランドレノライド(fludroxycortide);デソキシメタゾン(desoximetason)のうちのいずれか1種を含み、
前記抗甲状腺薬は、イミダゾール及びチオ尿素系抗甲状腺薬のうちのいずれか1種を含み、イミダゾール系抗甲状腺薬はメチマゾール又はカルビマゾールであり、チオ尿素系抗甲状腺薬はプロピルチオウラシル又はメチルチオウラシルであり、
前記油性基剤は、ワセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、白蝋、蜜蝋、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ジメチルポリシロキサン、トルエンポリシロキサン、エチレングリコールモノステアレート、ラウリン酸、シリコンオイルのうちのいずれか3種又は3種以上を含み、前記水溶性基剤は、ポリエチレングリコール(200-600)、ミリスチン酸イソプロピル、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、グリセリンゼラチン、澱粉グリセリンのうちのいずれか1種以上を含み、
前記経皮浸透促進剤は、アゾン、1−ゲラニル−アゼパン−2−オン、1−ファルネシル−アゼパン−2−オン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、ジメチルスルホキシド、ドデシルメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ヘキサメチレンラウラミド、尿素、オレイン酸のうちのいずれか1種又は2種を含み、
前記乳化剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate、SDS)、ポロキサマー188(poloxamer 188)、ツイーン(tweens)、スパン(spans)、ブライズ(brijs)、セトマクロゴール(cetomacrogol 1000、CMG)、ペレガル(peregals)、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル(AEO)、アルキルフェノールエトキシレート(alkylphenol ethoxylates、lgepon、APE)のうちのいずれか1種又は2種を含む。
【0008】
前記防腐剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、ベンジルアルコールチモールのうちのいずれか1種以上を含む。
【0009】
前記酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、システイン、チオグリセロール、チオグリコール、ジチオグリセロール、ジチオオキサミド、チオソルビン酸、チオグルコース、イソアスコルビン酸、ジ−tert−ブチル−p−クレゾールのうちのいずれか1種以上を含む。
【0010】
上記本発明の製造方法において、好ましくは、前記軟膏において、グルココルチコイドは0.02−1質量%、抗甲状腺薬は3−10質量%、経皮浸透促進剤は5−20質量%、油性基剤は12−25質量%、水溶性基剤は10−30質量%である。
【0011】
上記本発明の製造方法において、好ましくは、前記軟膏において、ミリスチン酸イソプロピルは6質量%、ステアリン酸は6質量%、ステアリン酸グリセリルは6質量%、ワセリンは4質量%である。
【発明の効果】
【0012】
以下、本発明の効果を説明する。
1.本発明の製造方法は、グルココルチコイドを薬物担体材料に加えて、固体分散体、包接化合物又は複合体として、或いは、グルココルチコイドの固体脂質ナノ粒子、ナノ構造を有する脂質担体又は高分子ミセルとして製造することによって、薬物の安定性及び溶解度を向上させ、薬品の品質、治療効果及び有効期間が確保・強化される。
従来の製造方法では、水中油型軟膏においてグルココルチコイドの化学安定性及び溶解度が悪いため、グルココルチコイドは皮膚を浸透して患部まで作用することが困難であり、それによって、薬物の経皮吸収や治療効果に影響を与える。
本発明の製造方法によって製造される軟膏は、まずグルココルチコイドを薬物担体材料に均一に分散させて分散体として製造することによって、溶解性及び安定性を向上させ、薬品の品質、治療効果及び有効期間が確保・強化される。
【0013】
2.上記方法で製造されるグルココルチコイド含有組成物を低い温度で水中油軟膏のクリーム成分と混合することによって、グルココルチコイドの安定性を更に向上させる。
本発明の製造方法では、水中油軟膏の温度を80℃から40℃に降下させた後、グルココルチコイド組成物を加えることで、グルココルチコイドを加水分解及び酸化から保護し、その品質の安定性を向上させる。
【0014】
3.本発明の製造方法で製造される軟膏は、グルココルチコイドを水中油軟膏に均一に分散させて得るものであり、このように、軟膏を皮膚に塗布すると、グルココルチコイドは迅速且つ効果的に皮膚と接触し、それによって、薬品の経皮吸収効果を大幅に向上させ、薬物の治療効果を強化させる。
【0015】
4.本発明の特許では、ポリエチレングリコール以外、ほかの補助材料成分を調整する。これらの調整は簡単なものと見えるが、長期的且つ頻繁に使用して局所安全性に対する要求が極めて高い製剤にとっては、非常に困難なことである。
本発明は、皮膚刺激性又はアレルギー性を有し、及び皮膚の正常な機能に影響する成分、例えば、特許番号ZL200510070954.0に使用されるカルボマー、ラノリン及び流動パラフィンを除去し、ミリスチン酸イソプロピルを追加するとともに、適当な品質を有する固体油性基剤(ワセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル)を選択することによって、皮膚有害反応を軽減させる。
本発明では、適当な種類と品質の乳化剤を追加することによって、製剤をより安定させ、主薬の経皮吸収性をより良くさせる。
【0016】
5.安定性を研究した結果、本発明の製剤は安定である。サンプル保持観察法と加速試験法によって観察した結果、本発明の製剤は物理・化学的性質が安定で、室温下での有効期間が2年間に達する一方で、特許番号ZL200510070954.0による製剤の有効期間が短い。
【0017】
6.インビトロ経皮吸収試験から、本発明の製剤は、抗甲状腺薬とグルココルチコイドの累積経皮量が特許番号ZL200510070954.0による製剤に比べて有意的に高いことが分かった(P<0.05)。動物薬物動態学により、経口投与方法に比べて、本発明の製剤の皮膚への局所投与の場合は、上記2種の薬物の甲状腺での含有量が有意的に増加するが(P<0.01)、血中濃度が著しい増加はない(P>0.05)。
【0018】
7.臨床試験により、本発明のクリームは、顕著な全身性副作用がなく、更に特許番号ZL200510070954.0の主な欠点、すなわち首の塗布部位での皮膚に対する有害反応を大幅に軽減させ、患者の苦痛を著しく軽減させ、患者の服用コンプライアンスを改善し、更に、甲状腺機能亢進症の治療効果を向上させ、甲状腺機能亢進症患者に、製剤が安定で、安全性が高く、治療効果が高い薬品を提供し、且つ、本発明の量産及び普及に有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的な実施例を使用して本発明の特徴を更に説明する。
【0020】
実施例1−7の原料成分及び質量百分率含有量を表1に示す。
【0021】
【表1】
具体的な製造方法を実施例8−12に示す。
実施例8
本実施例は実施例1の処方を使用して製造される。
(1)プレドニゾロン原薬とその10倍(質量比)のポビドンを、プレドニゾロン原薬とその10倍(質量比)のポビドンの合計の50倍(質量比)のエタノールに投入して、60℃の恒温水浴で撹拌して溶解し、溶媒を揮散させて固体物を収集し、乾燥後に、粉砕して80メッシュの篩にかけて、プレドニゾロン−ポビドン固体分散体粉末を得た。
【0022】
(2)抗甲状腺薬、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱し、均一に混合し、水相を得た。
(3)油性基剤及び経皮浸透促進剤80℃に加熱して溶融し、均一に混合し、油相を得た。
(4)工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入して、80℃に加熱し、均一に撹拌した。
(5)温度が40℃に降下したときに、工程(1)で製造したプレドニゾロン−ポビドン固体分散体粉末を添加した。
(6)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得た。
【0023】
実施例9
本実施例は実施例2の処方を使用して製造される。
(1)β−シクロデキストリン8.0gを秤量して、水100mlを加え、61℃に加熱して飽和溶液として製造した。フルオシノロン原薬に50倍の沸騰エタノールに加えて溶解し、更に薬物と等モルのシクロデキストリン水溶液に緩やかに滴下し、恒温で適当な時間かけて撹拌した。−4℃の冷蔵庫に入れて固体を析出させ、24h後に濾過した。先ず少量のエタノールで析出した固体を3回洗浄し、次に蒸留水で3回洗浄して、吸引乾燥後、60℃で乾燥させて、フルオシノロン−β−シクロデキストリン包接体を得た。
(2)抗甲状腺薬、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱して均一に混合し、水相を得た。
(3)油性基剤及び経皮浸透促進剤を80℃に加熱して溶融し、均一に混合し、油相を得た。
(4)工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入し、80℃に加熱し、均一に撹拌した。
(5)温度が40℃に降下した時に、工程(1)で製造したフルオシノロン−βシクロデキストリン包接体を加えた。
(6)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得た。
【0024】
実施例10
本実施例は実施例3の処方を使用して製造される。
(1)ヒドロコルチゾン原薬を30倍(質量比)の沸騰エタノールに投入し、10倍(質量比)のヒドロコルチゾンのポリグリコール(4000)を水浴で加熱して溶融させ、次に二種の液体を均一に混合し、連続的に撹拌しながら溶媒を蒸発除去し、次に氷水浴に移して冷却させて硬化し、乾燥器内に移して真空乾燥させて脆化し、粉砕し、ヒドロコルチゾン−ポリエチレングリコール固体分散体を得た。
(2)抗甲状腺薬、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱し、均一に混合し、水相を得た。
(3)油性基剤及び経皮浸透促進剤を80℃に加熱して溶融し、均一に混合し、油相を得た。
(4)工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入して、80℃に加熱し、均一に撹拌した。
(5)温度が40℃に降下した時に、工程(1)で製造したヒドロコルチゾン−ポリエチレングリコール固体分散体を加えた。
(6)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得た。
【0025】
実施例11
本実施例は実施例4の処方を使用して製造される。
(1)ヒドロコルチゾン原薬をポリエチレングリコール(400)に加えて粉砕して均一な懸濁液を得た。
(2)抗甲状腺薬、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱し、均一に混合し、水相を得た。
(3)油性基剤及び経皮浸透促進剤を80℃に加熱して溶融し、均一に混合し、油相を得た。
(4)工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入して、80℃に加熱し、均一に撹拌した。
(5)温度が40℃に降下した時に、工程(1)で製造したヒドロコルチゾン懸濁液を加えた。
(6)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得た。
【0026】
実施例12
本実施例は実施例5の処方を使用して製造される。
(1)等モルのモメタゾンと大豆リン脂質を取って所定量のアセトンに溶解し、撹拌して透明になるまで溶解させ、次に37℃で乾固するまで減圧蒸発し、製品を一晩真空乾燥させ、次の日に、取り出して100メッシュの篩にかけて、モメタゾン−大豆リン脂質複合体を得た。
(2)抗甲状腺薬、防腐剤、抗酸化剤及び乳化剤を蒸留水に入れて均一に混合し、80℃に加熱し、均一に混合し、水相を得た。
(3)油性基剤及び経皮浸透促進剤を80℃に加熱して溶融し、均一に混合し、油相を得た。
(4)工程(3)で得られた油相を工程(2)で得られた水相に投入し、80℃に加熱し、均一に撹拌した。
(5)温度が40℃に降下したときに、工程(1)で製造したモメタゾン−大豆リン脂質複合体を加えた。
(6)更に冷却させるまで均一に撹拌して軟膏を得た。
【0027】
実施例13
本実施例は、いくつかの典型的な臨床症例の治療状況を示す。
(1)XXX、女性、24歳。甲状腺機能亢進症に6年間苦んで、プロピルチオウラシルとメチマゾールをそれぞれ経口的に服用することによって治療したが、重度の薬物誘発肝臓障害が発生するため中止した。特許番号ZL200510070954.0による製剤を塗布して甲状腺機能亢進症を治療し、3日間後に、後首の塗布部位に引き締め、焼灼感が発生して、益々深刻になり、7日目に、顕著な刺痛やそう痒によって自分で服用を中止し、他の薬物治療を求めるように診療所に来た。身体を検査した結果、局所皮膚には重度の縮み、落屑、散在した丘疹が発生した。服用を中止して10日後、皮膚損傷が改善するが、甲状腺機能亢進症症状が重くなった。従って、本発明の製剤(実施例8)を使用して治療した。治療後、皮膚は正常になり、28日目に、甲状腺機能亢進症の症状は消え、甲状腺機能及び肝機は正常に回復した。連続的に1年間使用しており、その間、局所の不快感や皮膚損傷、及び他の全身性有害反応がなく、甲状腺機能が安定である。
【0028】
(2)XX、女性、30歳。2ヶ月前に甲状腺機能亢進症に罹り、メチマゾールとプロピルチオウラシルをそれぞれ経口的に服用したが、いずれも重度の好中球減少症を引き起こすため中止した。服用中止後に甲状腺機能亢進症が著しく重くなり、特許番号ZL200510070954.0による製剤を使用して治療した。14日目に、甲状腺機能亢進症症状は明らかに改善し、甲状腺機能は著しく低下し、顆粒球は正常になった。次の日に、首の塗布部位で重度のそう痒が発生し、更に赤く腫れ上がった。皮膚科医師により、「接触性皮膚炎」と診断され、特許番号ZL200510070954.0による製剤の使用を中止して抗アレルギー治療を実施することを推薦された。7日間後、上記皮膚疾患は消えるが、甲状腺機能亢進症は重くなった。患者は本発明の新規製剤(実施例9)を使用して治療することを決めた。治療28日間後、甲状腺機能は正常に回復し、甲状腺機能亢進症の症状は消え、顆粒球は正常であった。続けて8ヶ月使用しており、その間、首の塗布部位及び全身には有害反応がなく、甲状腺機能亢進症の進行が抑えられた。
【0029】
(3)XXX、男性、36歳。メチマゾールとプロピルチオウラシルをそれぞれ経口的に服用して甲状腺機能亢進症を治療したが、急性じんましんを引き起こし、服用を中止して医者に見せに病院へ行った。特許番号ZL200510070954.0による製剤を使用して1ヶ月後、甲状腺機能亢進症の進行は抑えられるが、首の塗布部位に複数の毛嚢炎が発生し、皮膚科医師の意見を受け取って薬物の使用を中止して、局所処理を行うことで、毛嚢炎は徐々に解消した。薬物を中止した後、甲状腺機能亢進症は再発し、本発明の新規製剤(実施例10)を使用して治療することを決めた。10ヶ月治療後、首の塗布部位での皮膚は正常になり、甲状腺機能は正常になり且つ安定し、アレルギーや他の副作用がなかった。
【0030】
実施例14
本発明の特許(実施例11の新規製剤)の臨床治療効果及び有害反応を実証するために、新規製剤と特許番号ZL200510070954.0による製剤(以下、既存製剤と呼ばれる)を臨床治療に用いて比較して観察した。試験方法は無作為化法、単盲検法、平行対照法である。試験対象は新規製剤を使用する試験群と既存製剤を使用する対照群に分けられる。治療時間及び観察時間は6週間であった。
【0031】
受験者の選択標準:年齢:18−65歳、インフォームド・コンセント;Graves’病、結節性甲状腺腫に伴う甲状腺機能亢進症、発症初期又は再発して治療を受けていない甲状腺機能亢進症患者、抗甲状腺薬で治療している患者の場合は、2週間以上服用を中止することが必要であり、更に、遊離トリヨードサイロニン(FT3)と遊離チロキシン(FT4)(以下、甲状腺機能)は正常値の上限より高い。除外標準:橋本病患者、亜急性甲状腺炎による甲状腺機能亢進症患者、及び同位体ヨウ素療法を受けた患者、異所性甲状腺腫患者、妊婦及び授乳中の女性、グルココルチコイド、甲状腺ホルモンを服用している患者、肝機能障害及び白血球/顆粒球減少症がない患者。除去標準:試験時に協力してくれないもの;規定に応じて薬物を服用し又はクールの終わりまでに自分で服用を中止するもの;治療中に、アラニンアミノトランスフェラーゼ及び/又は総ビリルビンが正常値の上限より1倍以上超え、白血球が3.0X109/L(正常な参照範囲4.0-10.0X109/L)より低く及び/又は顆粒球が1.5X109/L(正常な参照範囲2.0-7.0X109/L)より低く、又は、他の重度の全身性有害反応、又は重度の局所有害反応によって薬物の使用を中止しなければならないもの;研究者により被験者として不適だと判断するもの。
【0032】
二群は全て軟膏を使用して治療し、一回に0.3クラム/回、3回/日(朝、昼間、夜のそれぞれに一回)のように、甲状腺表面の皮膚に塗布して、数分間揉んで軟膏を皮膚に浸透させた。高まる甲状腺機能は正常に低下すると、2回/日(朝、夜のそれぞれに1回)に変更し、1−2週間後、1回/日に変更して治療を続けた。治療期間において、二週間おきに1回追跡調査し、6週目に最後の追跡調査を行った。治療時間、及び観察時間は6週間であった。
【0033】
追跡調査内容:(1)質問:甲状腺機能亢進症の症状及びその変化(例えば過食、飢餓感、多飲、痩せ、動悸、高熱不耐性、多汗、疲労、興奮、イライラ、易怒性、震え、不眠、下痢及び呼吸器感染に罹りやすいこと等)、及び全身性有害反応。(2)体格検査:生命及び甲状腺機能亢進症に関する症候、首の塗布部位での皮膚変化等。(3)化学検査:甲状腺機能、甲状腺刺激ホルモン、血液定期検査、肝機能及び血糖。
【0034】
統計学的処理には、SPSS12.0データソフトウェアパッケージを使用して分析し、カウントデータとして、百分率(症例数)で表示する。群間比較には、独立サンプルt検定又は2つの独立したサンプルノンパラメトリック検定を使用する。P<0.05であれば、差異は統計学的に有意である。
【0035】
治療効果評価標準として、中華人民共和国衛生部が公布した『新薬(西洋薬品)の臨床研究指導原則、内分泌系薬物の臨床研究指導原則:抗甲状腺薬、短期効果』を使用する。(1)完全制御:症状の症候は抑えられ、実験室で検査した結果、T3及びT4は正常である。(2)部分的制御:症状は消えるが、症候が存在し、T3及びT4が低下する。(3)無効:症状の症候が改善せず、T3及びT4は著しく低下することがない。
【0036】
合計で257例を選択して、ランダムに試験群128例、対照群129例に分けた。2群のベースライン(年齢、性別、甲状腺機能を含む)には有意的な差異がない(P値はいずれも>0.05である)。治療中に、6例を除去し、試験群からは被験者がドロップアウトする原因で2例除去され、対照群からは4例、具体的には、被験者がドロップアウトする原因で2例、局所有害反応によって薬物治療を中止する原因で2例除去された。合計で251例について試験が完了し、そのうち、試験群は126例、対照群は125例であり、それらは臨床治療効果用の統計に用いる。有害反応の統計には、試験群126例、対照群127例を含む。
【0037】
二群の治療結果を表2、3に示す。
【0038】
【表2】
【表3】
また、対照群では、重度の局所有害反応によって薬物服用を中止した2例の患者のうち、1例は新規製剤を使用した後、顕著な局所副作用が発生しないため使用を続けた。
【0039】
統計的処理の結果から、対照群に比べて、試験群は2、4、6週間目の甲状腺機能亢進症の完全制御率が高く、そのうち、2週間及び4週間目は特に有意的な差異を示すことが明らかであり、新規製剤の短期効果は既存製剤より遥かに優れることが分かった。2種の製剤のいずれにも、顕著な全身性有害反応がなかった。局所皮膚有害反応について、対照群に比べて、試験群の皮膚症状、皮膚病変、皮膚刺激またはアレルギー症状、皮膚感染、異常な汗分泌や局所皮膚副作用による中止率及び永久中止率はいずれも低下し、永久中止以外の6項は、いずれも有意的な差異を示し、既存製剤に比べて、新規製剤の皮膚局所有害反応は大幅に低下することが明らかであった。
【0040】
臨床検証から、既存製剤に比べて、新規製剤は治療効果を大幅に向上させて局所有害反応を軽減させ、更に安全且つ効果的であり、コンプライアンスが高い製剤であることが分かった。