(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置SDが用いられる電気機器の機能ブロック図である。本実施形態に係る半導体装置SDは、電力制御回路OPCに制御信号を印加するための装置である。電力制御回路OPCは、負荷LD、例えばモータに入力する電力を制御する。すなわち半導体装置SDは、電力制御回路OPCを介して負荷LDを制御している。
【0014】
電力制御回路OPCは、例えばプレーナ型の高耐圧MOSトランジスタ、縦型のMOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を複数有している。本図に示す例では、電力制御回路OPCは、第1トランジスタHMのソース及び第2トランジスタLMのドレインを直列に接続し、かつ第1トランジスタHMと第2トランジスタLMの間に出力端子を設けたものである。なお、第1トランジスタHMのドレインは電力用電源配線(電圧はHV)に接続しており、第2トランジスタLMのソースは電力用接地配線GNDに接続している。
【0015】
半導体装置SDは、信号処理回路LGC(第2回路)、レベルシフト回路LSC、ハイサイド駆動回路HDC(第1回路)、及びローサイド駆動回路LDCを備えている。ハイサイド駆動回路HDCは電力制御回路OPCの第1トランジスタHMのゲート電極に接続しており、ローサイド駆動回路LDCは第2トランジスタLMのゲート電極に接続している。そしてハイサイド駆動回路HDC及びローサイド駆動回路LDCは、信号処理回路LGCによって制御されている。言い換えると、信号処理回路LGCは、ハイサイド駆動回路HDC及びローサイド駆動回路LDCを介して、電力制御回路OPCを制御している。
【0016】
信号処理回路LGCはロジック回路であり、外部から入力される信号を処理して、電力制御回路OPCを制御するための制御信号を生成する。この制御信号は、ローサイド駆動回路LDCを制御する信号と、ハイサイド駆動回路HDCを制御する信号を含んでいる。
【0017】
ローサイド駆動回路LDCの電源電圧は信号処理回路LGCの電源電圧V
CCとほぼ等しいため、ローサイド駆動回路LDCを制御する信号は、信号処理回路LGCからローサイド駆動回路LDCに直接入力される。これに対して、ハイサイド駆動回路HDCの電源電圧V
B(第1電圧)は、信号処理回路LGCの電源電圧V
CC(第2電圧)よりも高い。このため、ハイサイド駆動回路HDCを制御する信号は、レベルシフト回路LSCを介してハイサイド駆動回路HDCに入力される。なお、レベルシフト回路LSCは接続用トランジスタTRを有している。接続用トランジスタTRの詳細については後述する。
【0018】
ハイサイド駆動回路HDCの電源電圧V
Bは、信号処理回路LGCの電源電圧V
CCから生成されている。電源電圧V
Bの生成には、電源電圧V
CC、整流素子HRD、電力制御回路OPC、及び容量素子BSCが用いられている。容量素子BSCは、例えばブートストラップコンデンサである。容量素子BSCの一方の端子は電力制御回路OPCの出力端子に接続しており、容量素子BSCの他方の端子はハイサイド駆動回路HDCの電源配線VINC2に接続されている。
【0019】
電源配線VINC2と信号処理回路LGCの電源配線VINC1の間には、整流素子HRDが設けられている。整流素子HRDには、電圧制御回路PCCが接続している。電圧制御回路PCCは、整流素子HRDに信号を入力する。整流素子HRD及び電圧制御回路PCCの詳細については、後述する。
【0020】
なお、信号処理回路LGCには第1トランジスタHMを制御するための制御信号HIN及び第2トランジスタLMを制御するための制御信号LINが入力される。信号処理回路LGCは、制御信号HINに基づいてハイサイド駆動回路HDCを制御し、かつ制御信号LINに基づいてローサイド駆動回路LDCを制御する。
【0021】
また、制御信号LINは電圧制御回路PCCにも入力される。電圧制御回路PCCは、制御信号LINに基づいて整流素子HRDに信号を入力する。このため、整流素子HRDに入力される信号を、第2トランジスタLMのオンオフと同期させることができる。ここで、制御信号LINの代わりに制御信号HINを用いてもよい。この場合、整流素子HRDに入力される信号を、第1トランジスタHMのオンオフと同期させることができる。
【0022】
なお、
図1において、整流素子HRDが有する抵抗は、後述する第2導電型層LDR2による抵抗を示している。
【0023】
図2は、半導体装置SDの構成を示す平面図である。半導体装置SDは、第1回路領域HSR、分離領域SPR、第2回路領域LSR、及び接続用トランジスタTRを有している。
【0024】
第1回路領域HSRはハイサイド駆動回路HDCを有しており、第2回路領域LSRはローサイド駆動回路LDC、信号処理回路LGC、及び電圧制御回路PCCを有している。
【0025】
第1回路領域HSRは、分離領域SPRによって周囲を囲まれている。言い換えると、第1回路領域HSRと第2回路領域LSRとは、分離領域SPRによって分離されている。これにより、異なる電源電位を有する回路を一つの基板SUBに形成することができる。
【0026】
また、分離領域SPRの最外周には、第1導電型領域IDFが形成されている。第1導電型領域IDFは、後述するように、基板SUBに形成されている。そして分離領域SPRのうち第1導電型領域IDFよりも内側の領域には、フィールドプレート電極FPE及び整流素子HRDが形成されている。これらの断面構造の詳細については、後述する。
【0027】
また、分離領域SPRには、接続用トランジスタTRが形成されている。本図に示す例では、第1回路領域HSRは矩形であるため、分離領域SPRも矩形の縁に沿った形状を有している。本図に示す例では、接続用トランジスタTRは、分離領域SPRが描く矩形の長辺に位置している。ただし、接続用トランジスタTRの位置は本図に示す例に限定されない。接続用トランジスタTRは、第1導電型領域IDFによって囲まれている。なお、上記した整流素子HRDは、分離領域SPRのうち接続用トランジスタTRが形成されている領域を除いた部分に形成されている。一方、フィールドプレート電極FPEは、分離領域SPRの上に位置し、第1回路領域HSRの全周を繰り返し囲んでいる。ここでフィールドプレート電極FPEが折り返されている場合、フィールドプレート電極FPEは、折り返し点を除いて第1回路領域HSRの全周を囲んでいる。
【0028】
ここで、接続用トランジスタTRのドレイン及びソースの導電型を、第2導電型(例えばn型)とする。また、基板SUBのうち、分離領域SPRに位置する部分並びに第1回路領域HSR及び第2回路領域LSRに位置する部分も、第2導電型になっている。
【0029】
なお、本図に示す例では、基板SUBもほぼ矩形である。第1回路領域HSRは、基板SUBの一つの角に近接して配置されている。そして、第1回路領域HSRの一方の長辺(本図に示す例では上側の辺)及び一方の短辺(本図に示す例では左側の辺)と、基板SUBのうちこれらの辺に最も近い辺との間には、他の回路が配置されていない。ただし、第1回路領域HSRの位置は本図に示す例に限定されない。
【0030】
図3は、
図2のA−A´断面図である。本図に示す例において、基板SUBは、ベースとなる第1導電型(例えばp型)の基板BSE(例えばシリコン基板)上に、第2導電型(例えばn
−型)のエピタキシャル層EPI(例えばシリコン層)をエピタキシャル成長させたものである。また、基板SUBのうち第1回路領域HSRにする領域には、第2導電型(例えばn
+型)の埋込拡散層BDFが形成されている。埋込拡散層BDFは、基板SUBの厚さ方向において、基板BSEの上部からエピタキシャル層EPIの底部にかけて設けられている。
【0031】
上記したように、接続用トランジスタTRの周囲は第1導電型領域IDFによって囲まれている。
図3に示すように、深さ方向において、第1導電型領域IDFはエピタキシャル層EPIの全体に形成されている。このため、第1導電型領域IDFの下端は、基板SUBに接続している。
【0032】
また、接続用トランジスタTRは、第2導電型のソースSO及びドレインDR、並びにゲート電極GEを有している。ソースSO、ゲート電極GE、及びドレインDRは、第1回路領域HSRの縁に交わる方向(例えば直交する方向)に並んでいる。具体的には、第1回路領域HSRから第2回路領域LSRに向けて、ドレインDR、ゲート電極GE、及びソースSOがこの順に並んでいる。
【0033】
本図に示す例において、接続用トランジスタTRはドレインオフセット型のトランジスタであり、エピタキシャル層EPIを用いて形成されている。
【0034】
詳細には、ドレインDRとゲート電極GEの間には、素子分離膜EI1が形成されている。ゲート電極GEは、一部が素子分離膜EI1の上に位置している。また、ソースSOは、第1導電型領域IDFのうち分離領域SPRの外周に位置する部分の中に、形成されている。そして、エピタキシャル層EPIのうち素子分離膜EI1の下に位置する部分(すなわち平面視でドレインDRとゲート電極GEの間に位置する部分)は、第2導電型(例えばn
−型)のドリフト領域LDR1となっている。
【0035】
また、ゲート電極GEとドレインDRの間の素子分離膜EI1の上には、フィールドプレート電極FPEが形成されている。そして、素子分離膜EI1のうちドレインDR側の縁は、フィールドプレート電極FP1によって覆われている。ゲート電極GE、フィールドプレート電極FPE、及びフィールドプレート電極FP1は、いずれも同一工程で形成されている。このため、これらは互いに同一の材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。ただし、ゲート電極GE、フィールドプレート電極FPE、及びフィールドプレート電極FP1の少なくとも一つは、他とは異なる工程で形成されていても良い。
【0036】
そして、基板SUBの上方には、ドレイン電極DRE、ソース電極SOE、及びゲートプレート電極GPが形成されている。これらの電極と基板SUBの間には、少なくとも一層の層間絶縁膜INSL1が形成されている。また、これらの電極は、例えばAlなどの金属によって形成されており、互いに同一の工程で形成されている。
【0037】
ドレイン電極DREは、コンタクトDCNTを介してドレインDRに接続しており、コンタクトFCNT1を介してフィールドプレート電極FP1に接続しており、また、コンタクトFECNTを介してフィールドプレート電極FPEに接続している。
【0038】
ゲートプレート電極GPは、コンタクトGCNTを介してゲート電極GEに接続している。ソース電極SOEは、コンタクトSCNTを介してソースSOに接続している。またソース電極SOEは、コンタクトCNT2を介して、第1導電型領域IDFに形成された第1導電型の拡散層DF1に接続している。これにより、第1導電型領域IDFにはソース電位(例えば接地電位)が印加される。
【0039】
なお、ドレイン電極DREと同層には、電極EL1も形成されている。電極EL1は、コンタクトCNT1を介して、第1回路領域HSRに位置する第2導電型の拡散層DF2に接続している。これにより、第1回路領域HSRに位置する第2導電型層LDFは、電極EL1を介して第1回路領域HSRの電源電位が印加される。
【0040】
図4は、
図2のB−B´断面図である。本図に示すように、整流素子HRDは、第2導電型層LDR2、第1の高濃度第2導電型領域HDF1、第2の高濃度第2導電型領域HDF2、素子分離膜EI2、第1絶縁層CGINS、及び第1導電膜CGを備えている。第2導電型層LDR2は基板SUBに形成されており、エピタキシャル層EPIのうち不純物が導入されていない領域の一部である。第1の高濃度第2導電型領域HDF1及び第2の高濃度第2導電型領域HDF2は第2導電型層LDR2に形成されている。第1の高濃度第2導電型領域HDF1及び第2の高濃度第2導電型領域HDF2は、互いに離れている。素子分離膜EI2は、エピタキシャル層EPIに形成されており、第1の高濃度第2導電型領域HDF1と第2の高濃度第2導電型領域HDF2の間に位置している。そして素子分離膜EI2は、第2の高濃度第2導電型領域HDF2から離れている。第1絶縁層CGINSは、エピタキシャル層EPIのうち第2の高濃度第2導電型領域HDF2と素子分離膜EI2の間に位置する領域の上に形成されている。第1導電膜CGは、第1絶縁層CGINSの上に形成されている。
【0041】
第1の高濃度第2導電型領域HDF1には第1コンタクトCON1が接続しており、第2の高濃度第2導電型領域HDF2には第2コンタクトCON2が接続しており、第1導電膜CGには第3コンタクトCON3が接続している。これらのコンタクトは、層間絶縁膜INSL1に埋め込まれている。そして、第1コンタクトCON1、第2コンタクトCON2、及び第3コンタクトCON3は、互いに分離している。本実施形態では、第1コンタクトCON1は電源配線VINC2に接続しており、第2コンタクトCON2は電源配線VINC1に接続している。そして第3コンタクトCON3は電圧制御回路PCCに接続している。
【0042】
また、第1導電型領域IDFは、エピタキシャル層EPIを上下に貫いている。このため第1導電型領域IDFの底面は基板BSEに接続している。また、第1導電型領域IDFには第4コンタクトCON4の下端が接続している。なお、第4コンタクトCON4の上端は、接地配線に接続している。第1導電型領域IDFの表層のうち第4コンタクトCON4が接続している領域には、第1導電型の拡散層DF1が形成されている。拡散層DF1は、第1導電型領域IDFよりも不純物濃度が高い。
【0043】
また、第1導電型領域IDFの下部BIDFは、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の下方に向けて張り出している。平面視において、下部BIDFは、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の一部と重なっていても良いし、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の全部と重なっていても良い。下部BIDFが第2の高濃度第2導電型領域HDF2に向けて張り出すことにより、第2導電型層LDR2のうち下部BIDFの上方に位置する第2導電型層LDR2には空乏層ができやすくなる。この効果は、下部BIDFと第2の高濃度第2導電型領域HDF2の重なりが多くなるにつれて大きくなる。
【0044】
次に、半導体装置SDの製造方法を説明する。まず、基板BSEを準備する。次いで、基板BSE上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして基板BSEに第2導電型の不純物をイオン注入する。これにより、基板BSEには埋込拡散層BDFが形成される。
【0045】
その後、レジストパターンを除去する。次いで、基板BSE上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして基板BSEに第1導電型の不純物をイオン注入する。これにより、第1導電型領域IDFの下部BIDFの一部が形成される。
【0046】
その後、レジストパターンを除去する。次いで、基板BSE上にエピタキシャル層EPIを成長させる。次いで、エピタキシャル層EPI上にレジストパターン(図示せず)を形成し、エピタキシャル層EPIに第1導電型の不純物を注入する。これにより、エピタキシャル層EPIには第1導電型領域IDFの残りの部分が形成される。
【0047】
そして、基板BSE及びエピタキシャル層EPIを熱処理する。これにより、エピタキシャル層EPIに導入した不純物が活性化する。また、不純物はエピタキシャル層EPI内を拡散する。これにより、下部BIDF及び埋込拡散層BDFはエピタキシャル層EPIの底部に広がる。
【0048】
次いで、LOCOS酸化法を用いて素子分離膜EI1,EI2を形成する。なお、素子分離膜EIはトレンチアイソレーション法を用いて形成されてもよい。
【0049】
次いで、エピタキシャル層EPIを熱酸化する。これにより、接続用トランジスタTRのゲート絶縁膜が形成される。この工程において、第1絶縁層CGINSも形成される。次いで、ゲート絶縁膜上、第1絶縁層CGINS上、及び素子分離膜EI1,EI2上に導電膜(例えばポリシリコン膜)を形成し、この導電膜を選択的に除去する。これにより、ゲート電極GE、第1導電膜CG、フィールドプレート電極FPE、及びフィールドプレート電極FP1が形成される。
【0050】
次いで、エピタキシャル層EPI上および素子分離膜EI1,EI2上にレジストパターン(図示せず)を形成し、エピタキシャル層EPIに第2導電型の不純物を注入する。これにより、エピタキシャル層EPIには第1の高濃度第2導電型領域HDF1、第2の高濃度第2導電型領域HDF2、ソースSO、ドレインDR、及び拡散層DF2が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0051】
次いでエピタキシャル層EPI上にレジストパターンを形成し、エピタキシャル層EPIに第1導電型の不純物を注入する。これにより、エピタキシャル層EPIには拡散層DF1が形成される。
【0052】
その後、エピタキシャル層EPI上及び素子分離膜EI1,EI2上に層間絶縁膜INSL1(例えば酸化シリコン膜)を形成する。次いで、層間絶縁膜INSL1に上記した各コンタクトを埋め込むとともに、層間絶縁膜INSL1上に、ソース電極SOE、ゲートプレート電極GP、及びドレイン電極DREを形成する。これらは、例えばAlにより形成されるが、他の導電材料により形成されてもよい。
【0053】
次に、
図5、
図1、及び
図4を用いて、半導体装置SDの動作を説明する。
図5は、半導体装置SDの動作を示すタイミングチャートである。半導体装置SDには、
図5(b),(c)に示すように、制御信号HINと制御信号LINが交互に入力される。
【0054】
制御信号LINが半導体装置SDに入力されている間、ハイサイド駆動回路HDCは第1トランジスタHMをオフにしている。またローサイド駆動回路LDCは、第2トランジスタLMをオンにして、容量素子BSCの一方の端子に接地電位を印加する。この状態で、電圧制御回路PCCは、
図5(d)に示すように、整流素子HRDの第1導電膜CGに電圧V
ccを印加する。すると、第2導電型層LDR2のうち第1導電膜CGの下に位置する領域には多数キャリアが集まり、第2導電型層LDR2のうち第2の高濃度第2導電型領域HDF2と第1の高濃度第2導電型領域HDF1の間に位置する部分は空乏化していない状態になる。これにより、第2の高濃度第2導電型領域HDF2から第1の高濃度第2導電型領域HDF1に電流が流れ、その結果、容量素子BSCに電荷が蓄積される。なお、整流素子HRDがオンするときに集まるキャリアは多数キャリアであるため、整流素子HRDがオンするときの応答速度は速い。
【0055】
なお、本図に示す例において、第1導電膜CGに電圧V
Lが印加され始めるタイミングは、制御信号LINの入力から少し遅れている。これは、容量素子BSCの一方の電極が接地された後に、容量素子BSCの他方の電極に電源電圧V
CCを印加するためである。
【0056】
そして、
図5(a)に示すように、容量素子BSCに電荷が蓄積されていくにつれて、容量素子BSCに加わる電圧すなわち電源配線VINC2の電圧V
Bは徐々に上昇していき、最終的に信号処理回路LGCの電源電圧V
ccになる。
【0057】
そして、制御信号LINがオフになり、その代わりに制御信号HINがオンになる。
【0058】
制御信号LINがオフになると、電圧制御回路PCCは、
図5(d)に示すように、整流素子HRDの第1導電膜CGに接地電圧GNDを印加する。すると、第2導電型層LDR2のうち第1導電膜CGの下に位置する領域にはキャリアが集まらなくなる。一方、第2導電型層LDR2の底面には第1導電型の基板BSEが接合している。このため、第2導電型層LDR2の底面から空乏層が広がり、最終的に第2導電型層LDR2の全体が空乏化される。その結果、第1の高濃度第2導電型領域HDF1と第2の高濃度第2導電型領域HDF2の間には電流が流れなくなる。すなわち、整流素子HRDはオフになる。
【0059】
本実施形態では、第1導電型領域IDFの下部BIDFが第2の高濃度第2導電型領域HDF2の下方に張り出しているため、第2導電型層LDR2のうち第2の高濃度第2導電型領域HDF2の周囲に位置する領域は特に空乏化しやすくなる。従って、整流素子HRDは素早くオフになる。
【0060】
また、第2トランジスタLMはオフになり、かつ第1トランジスタHMがオンになる。従って、容量素子BSCの一方の端子には電圧HVが加わる。そのため、容量素子BSCの他方の端子、すなわち電源配線VINC2の電圧V
Bも持ち上がり、最終的にHV+V
ccになる。
【0061】
なお、上記したように整流素子HRDはオフになっているため、電源配線VINC2の電圧がHV+V
ccになっても、電源配線VINC2から電源配線VINC1に電流は流れない。
【0062】
その後、ハイサイド駆動回路HDCは、容量素子BSCが蓄積している電力を使用して動作する。このため、
図5(a)に示すように、電源配線VINC2の電圧V
Bは徐々に低下していく。
【0063】
そして、制御信号HINがオフになり、その代わりに制御信号LINがオンになる。すると、整流素子HRDがオンになり、
図5(a)に示すように、電源配線VINC2の電圧V
Bは低下する。その後、電圧制御回路PCCは、整流素子HRDの第1導電膜CGに電圧V
Lを印加する。このような動作が繰り返される。
【0064】
以上、本実施形態によれば、電源配線VINC2と電源配線VINC1は、整流素子HRDによって分離されている。整流素子HRDは、第2導電型層LDR2、第1の高濃度第2導電型領域HDF1、第2の高濃度第2導電型領域HDF2、素子分離膜EI2、第1絶縁層CGINS、及び第1導電膜CGによって形成されているため、整流素子HRDの電流経路にはpn接合が介在していない。従って、電源配線VINC2の電圧V
Bを生成する際に、pn接合に起因した電圧のロスは生じなくなる。また、整流素子HRDは分離領域SPRに設けられているため、半導体装置SDは大型化しない。
【0065】
また、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の電圧が高くなっても、第2導電型層LDR2と基板BSEからなるダイオードにとっては逆方向電圧となるため、基板BSEにリークする電流はほとんどない。
【0066】
なお、本実施形態において、電圧制御回路PCCは、制御信号LINに同期せずに、第1導電膜CGに固定電位を印加しても良い。この場合、電圧制御回路PCCが第1導電膜CGに印加する電圧は、例えば接地電圧以上電源電圧V
CC以下である。その理由は、
図8を用いて後述する。
【0067】
第1の高濃度第2導電型領域HDF1に印加される電圧が高くなる(電源電圧V
Bの電位が高くなる)と、第1導電膜CGに与えられた固定電位に起因した電界により、第2導電型層LDR2のうち第2の高濃度第2導電型領域HDF2の周囲に位置する領域から、キャリアが押し出され、第2導電型層LDR2のうち少なくとも第2の高濃度第2導電型領域HDF2の周囲に位置する部分は空乏化する。これにより、整流素子HRDはオフになる。このため、pn接合を用いなくても、第1回路領域HSRから第2回路領域LSRに電流は流れなくなる。
【0068】
ただし、電圧制御回路PCCが
図5に示した動作を行うほうが、
図8を用いて説明するように、整流素子HRDの整流特性を確実に得られるため、好ましい。
【0069】
本実施形態の効果を、
図6に示す比較例を用いて説明する。
図6に示す半導体装置SDは、整流素子HRD及び電圧制御回路PCCの代わりに、ダイオードDIOを有している。ダイオードDIOは半導体装置SDに対して外付けの場合(比較例1)と、半導体装置SDに内蔵されている場合(比較例2)の2通りがある。なお、
図6はダイオードDIOが半導体装置SDに内蔵されている場合を示している。
【0070】
図7は、比較例1,2に係る半導体装置SDと、本実施形態に係る半導体装置SDのそれぞれにおける、電源配線VINC1と電源配線VINC2の電位差(Vcc−VB)と、容量素子BSCに流れる電流Iccの関係を示している。比較例に係る半導体装置SDにおいては、電位差(Vcc−VB)を0.6V程度にするまで電流Iccは流れないが、実施形態に係る半導体装置SDは、電位差(Vcc−VB)が0Vを超えると電流Iccは流れ始めている。
【0071】
図8は、電圧制御回路PCCが第1導電膜CGに印加する電位Vgと整流素子HRDでロスされる電圧(Vccロス電圧)の関係を示している。また
図8は、電位Vgと第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位の関係を示している。
【0072】
図8から、電位Vgが高くなるにつれて、整流素子HRDでロスされる電位が小さくなることが分かる。一方、電位Vgが高くなるにつれて、第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位も高くなっている。第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位がV
ccよりも高くなると、電流は整流素子HRDを逆流するため、第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位がV
ccよりも高くならないようにする必要がある。このためには、電圧制御回路PCCが第1導電膜CGに印加する電圧は、電源電圧V
CC以下であることが好ましい。
【0073】
図9は、第1導電型領域IDFの下部BIDFを第1の高濃度第2導電型領域HDF1に向けて拡張させたことの効果を説明するための図である。本図において、幅W
bdif1は下部BIDFの幅W
bdif(
図4参照)の好ましい範囲の下限値であり、幅W
bdif2は幅W
bdifの好ましい範囲の上限値である。
【0074】
詳細には、
図9(a)は、下部BIDFの幅W
bdif(
図4参照)と、整流素子HRDでロスされる電圧(Vccロス電圧)の関係を示している。本図に示すように、下部BIDFの幅W
bdifをある程度広げると、比較例2および実施形態のいずれも、Vccロス電圧が発生している。これは、下部BIDFの幅W
bdifを広げると、下部BIDFに起因した空乏層が第2導電型層LDR2内を広がるためである。このため、下部BIDFの幅W
bdifを、Vccロス電圧が発生し始める幅W
bdif2以下にするのが好ましい。ただし、実施形態に係る半導体装置SDのほうが、Vccロス電圧は小さい。
【0075】
図9(b)は、幅W
bdifと、第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位の関係を示している。本図に示すように、下部BIDFの幅W
bdifを広げると、比較例2および実施形態のいずれも、第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位は低くなる。ただし、実施形態に係る半導体装置SDのほうが、第1の高濃度第2導電型領域HDF1の電位は小さい。
【0076】
図9(c)は、幅W
bdifと、整流素子HRDがオフしている間に整流素子HRDを逆流する電流の関係を示している。本図に示すように、本実施形態の場合、下部BIDFの幅W
bdifをある値(W
bdif1)未満にすると、整流素子HRDを逆流する電流が増加してしまう。このため、下部BIDFの幅W
bdifを、幅W
bdif1以上にするのが好ましい。
【0077】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る半導体装置SDの構成を説明するための断面図であり、第1の実施形態における
図3に対応している。本実施形態に係る半導体装置SDは、第3の高濃度第2導電型領域AFを有している点を除いて、第1の実施形態に係る半導体装置SDと同様の構成である。
【0078】
第3の高濃度第2導電型領域AFは第2導電型層LDR2のうち第1絶縁層CGINSの下に位置する部分に形成されており、第2導電型層LDR2よりも不純物濃度が高い。ただし、第3の高濃度第2導電型領域AFの不純物濃度は、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の不純物濃度よりも低いのが好ましい。
【0079】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第3の高濃度第2導電型領域AFを設けているため、電圧制御回路PCCが第1導電膜CGに接地電位とは異なる電位を与えたときに、第2導電型層LDR2のうち第1導電膜CGのすぐ下の領域にはキャリアが集まりやすい。従って、整流素子HRDがオンしやすくなり、と整流素子HRDでロスされる電圧(Vccロス電圧)が発生しにくくなる。
【0080】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係る半導体装置SDの構成を説明するための断面図であり、1の実施形態における
図3に対応している。本実施形態に係る半導体装置SDは、以下の点を除いて、第2の実施形態に係る半導体装置SDと同様の構成である
【0081】
まず、第1導電型領域IDFの下部BIDFは、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の下方に向けて突出していない。その代わりに、第1導電型領域IDFの全体が、第2の高濃度第2導電型領域HDF2に向けて張り出している。その結果、第2の高濃度第2導電型領域HDF2及び第3の高濃度第2導電型領域AFは、第1導電型領域IDFに囲まれており、第1導電型領域IDFの中に形成されていることになる。そして、第2導電型層LDR2と第2の高濃度第2導電型領域HDF2は、第3の高濃度第2導電型領域AFを介して互いに接続されている。
【0082】
本実施形態によっても、第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、第2の高濃度第2導電型領域HDF2と第2導電型層LDR2は直接接続しておらず、第3の高濃度第2導電型領域AFを介して互いに接続している。また、第3の高濃度第2導電型領域AFは、第2の高濃度第2導電型領域HDF2よりも薄い。このため、第2導電型層LDR2の不純物濃度を濃くしても、整流素子HRDがオフしているとき(すなわち第1の高濃度第2導電型領域HDF1に印加されている電位が高くなったとき)に第2の高濃度第2導電型領域HDF2の電位は高くなりにくい。なお、第2の高濃度第2導電型領域HDF2の電位が高くなって電源電位V
CCを超えてしまうと、基板SUBおよび第2回路領域LSRに電流が流れてしまう。
【0083】
また、整流素子HRDをオフにするためには、第3の高濃度第2導電型領域AFのうち第1導電型領域IDFと重なっている部分を空乏化すればよい。このため、第2導電型層LDR2を濃くしても、第1導電膜CGに印加する電位を制御することにより、整流素子HRDをオフにすることができる。
【0084】
そして、第2導電型層LDR2を濃くすることにより、第2導電型層LDR2の抵抗を低くして、整流素子HRDのオン電流を大きくすることができる。そして、これにより、容量素子BSCへの充電効率を高くすることができる。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。