特許第6228432号(P6228432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6228432-伸縮性編み地及び衣服 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228432
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】伸縮性編み地及び衣服
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/20 20060101AFI20171030BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20171030BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20171030BHJP
   A41D 31/00 20060101ALI20171030BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20171030BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   D04B1/20
   D04B21/16
   D01F8/14 Z
   A41D31/00 D
   A41D31/00 501A
   A41D31/00 502D
   A41D31/00 503G
   A41D19/015
   A41D13/06
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-234096(P2013-234096)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-94044(P2015-94044A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕司
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/004747(WO,A1)
【文献】 特開2001−295165(JP,A)
【文献】 特開2011−195970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00−13/12
20/00
31/00−31/02
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維からなる伸縮糸と該伸縮糸以外の非弾性糸とからなる伸縮性編み地であって、該伸縮糸の含有量が30〜100g/m2、下記式で求められる編み地充填率が15〜30%、該編み地を80%まで伸長後元の長さに戻した際の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力の応力比(復路応力(N)/往路応力(N))が0.40〜0.80、および経緯少なくとも一方向の伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とする伸縮性編み地。
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・Hn×Kn)×100
(上式において、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cm時の編み地の厚み(cm)であり、 Mは編み地の単位面積当たりの重量(g/cm)であり、 H1、H2・・Hnは編み地の含有繊維1、2・・n各々の比重であり、 K1、K2・・Knは編み地の含有繊維1、2・・n各々の混率(%)である。)
【請求項2】
編み地が緯編み地であって、タックループ又はウェルトループが編み地中の全ループの20〜60%であり、かつ、下記(a)及び/又は(b)の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の伸縮性編み地。
(a)タックループ又はウェルトループが伸縮糸で構成されること。
(b)タックループ又はウェルトループが編成されるコースにおいて、該タックループ又はウェルトループの前後の少なくともいずれかのニットループが伸縮糸により構成されること。
【請求項3】
編み地が経編み地であって、少なくとも伸縮糸が開き目により編成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性編み地。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の編み地を含み、身体に密着し、かつ、少なくとも関節部を覆うことを特徴とする衣服。
【請求項5】
衣服がボトム類、トップス類、レッグ類、サポーター類及び手袋からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸長時瞬間的に温度が上昇する、伸縮糸を含有する編み地、及び該編み地からなる衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保温衣料等、着用時に温度が上昇する衣服として、セルロース等の吸湿発熱繊維を混合した布帛により衣服を製造し、着用時の人体からの不感蒸泄や発汗により発熱させる衣服が知られている(例えば下記特許文献1参照)。しかしながら、吸湿発熱繊維は、繊維の吸湿量が飽和に達すればそれ以上発熱することは無く、発熱時間が短いばかりでなく、吸湿量が飽和に達した後は、繊維中の水分により冷感を感じることさえあった。さらに、吸湿発熱以外の発熱布帛や発熱衣服として、面状発熱体や線状発熱体などのヒーターを衣服に組み込むことなどが知られているが、いずれも、電気により発熱するもので、衣服とした際は重くなり、電極も必要で動きにくい衣服となる。
【0003】
また、最近では着用動作時の編地伸長時に発熱するという、これまでと全く違った発熱機能を持つ編地が提案されている(例えば下記特許文献2および3参照)。
しかしながら、これらの編み地は、確かに伸長時発熱して暖かいが、弾性糸の含有量が多くなる事により、編み地重量が増し、重い衣服となり、動き難く、また、弾性糸の含有量が多いために高コストとなりがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227043号公報
【特許文献2】特開2011−195970号公報
【特許文献3】特開2012−112078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、伸縮性を有する編み地において、伸長時瞬間的に温度が上昇し、編み地の伸縮を繰り返せば持続的に伸長時発熱し、かつ、伸長発熱が効率よく達成され、しかも、動き易い衣服であると共に、低コストで製造できる編み地の提供、並びに、該編み地をインナー、スポーツウェアなどの衣服に縫製することにより、保温性、伸長部位の筋肉や関節を暖めることによる怪我の防止、及び脂肪燃焼効果を期待できる衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、編み地を伸張時発熱させるには、弾性糸の伸長による発熱を利用しなくても、非弾性糸である伸縮糸を使用し、編み地を伸長することによる糸と糸との摩擦による発熱を利用すればよい事、さらに伸縮糸の含有量等を最適な範囲にすることにより本発明の上記課題を達成でき、弾性糸を含有していないにもかかわらず、伸長時の瞬間発熱温度が1.0℃以上となることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0007】
[1]少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維からなる伸縮糸と該伸縮糸以外の非弾性糸とからなる伸縮性編み地であって、該伸縮糸の含有量が30〜100g/m2、下記式で求められる編み地充填率が15〜30%、該編み地を80%まで伸長後元の長さに戻した際の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力の応力比(復路応力(N)/往路応力(N))が0.40〜0.80、および経緯少なくとも一方向の伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とする伸縮性編み地。
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・Hn×Kn)×100
(上式において、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cm時の編み地の厚み(cm)であり、Mは編み地の単位面積当たりの重量(g/cm)であり、H1、H2・・Hnは編み地の含有繊維1、2・・n各々の比重であり、K1、K2・・Knは編み地の含有繊維1、2・・n各々の混率(%)である。)
[2]編み地が緯編み地であって、タックループ又はウェルトループが編み地中の全ループの20〜60%であり、かつ、下記(a)及び/又は(b)の条件を満足することを特徴とする上記[1]に記載の伸縮性編み地。
(a)タックループ又はウェルトループが伸縮糸で構成されること。
(b)タックループ又はウェルトループが編成されるコースにおいて、該タックループ又はウェルトループの前後の少なくともいずれかのニットループが伸縮糸により構成されること。
[3]編み地が経編み地であって、少なくとも伸縮糸が開き目により編成されていることを特徴とする上記[1]に記載の伸縮性編み地。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の編み地を含み、身体に密着し、かつ、少なくとも関節部を覆うことを特徴とする衣服。
[5]衣服がボトム類、トップス類、レッグ類、サポーター類及び手袋からなる群から選ばれることを特徴とする上記[4]に記載の衣服。
【発明の効果】
【0008】
本発明の伸縮性編み地が配された衣服は、膝や腕の曲げ伸ばしにより該編み地が1.0℃以上発熱して暖かく、保温性に優れると共に、軽くて動き易く、伸長部位の筋肉を暖めることにより怪我の防止効果や脂肪燃焼効果を有する衣服であり、さらに低コストで製造される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の伸縮性編み地の編成組織の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、上述したように、編み地を伸長時発熱させるには、ポリウレタン系又はポリエーテルエステル系の弾性糸の伸長による発熱を利用するのみでは弾性糸の含有量が多くなり、重たく動き難い衣服となるため、衣服、つまり編み地の軽量化を行いつつ編み地の伸長による発熱を低下させない方法について鋭意検討の結果、編み地を伸長発熱させるためには、編み地を伸長することによる糸と糸との摩擦による発熱を利用すればよく、弾性糸を含有する編地によって得られる高い伸長発熱温度を必要としない場合は、特定の伸縮糸を用いることにより、必ずしも弾性糸を用いなくても良い事を見出した。
【0011】
すなわち、非弾性糸(本明細書では、以後、上述の伸縮糸及び弾性糸以外の繊維を非弾性糸と称す)からなる編み地を大きく伸長させるほど発熱する事は知られているが、伸長量が大きくなると糸と糸との摩擦による発熱以外に、繊維の延伸による発熱が大きくなり、弾性糸は大きな伸長でも伸長回復して元の長さに復帰するが、非弾性糸を大きく伸長すると繊維そのものが延伸され、ひずみが生じて元の長さに復帰しなくなる。そこで、本発明は、衣服の着用伸長程度、すなわち、非弾性糸が延伸されることなく、繊維のひずみも生じない伸長領域でも十分発熱させるために、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維からなる伸縮糸の使用により、糸と糸との摩擦熱を最大限に利用可能とすることを提案するもので、これにより、軽量化と低コスト化が図れ、しかも暖かい衣服とすることが可能となったものである。
【0012】
本発明において、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維(以降、本明細書では単に伸縮糸とも称す)とは少なくとも二種のポリエステル成分で構成され、好ましくはサイドバイサイド型又は偏芯鞘型に接合されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比および接合面形状は特に限定されず、複合比は好ましくは質量%で70/30〜30/70の範囲内であり、接合面形状は好ましくは直線又は曲線形状である。又、総繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
【0013】
本発明で用いられる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることに特徴があり、具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものである。即ち、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は1.00〜2.00が好ましく、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は鞘ポリマーが3倍以上速いことが好ましい。具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)、並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリフブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0014】
このように本発明で用いられる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を構成するポリエステル成分の少なくとも一方はポリトリメチレンテレフタレートである。上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0015】
さらに本発明においては、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであると好ましく、さらに好ましくは20〜30cN/dtex、特に好ましくは20〜27cN/dtexである。尚、10cN/dtex未満のものは製造困難である。又、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であると好ましく、さらに好ましくは10〜80%、特に好ましくは10〜60%である。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、さらに好ましくは85〜100%、特に好ましくは85〜97%である。
【0016】
さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、特に好ましくはに0.1〜0.3cN/dtexである。100℃における熱収縮応力は、布帛の精錬、染色工程において捲縮を発現させるための重要な要件である。すなわち、布帛の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましい。
【0017】
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、特に好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
【0018】
上述のような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.50(dl/g)であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.45(dl/g)、特に好ましくは0.15〜0.45(dl/g)である。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、さらに好ましくは0.85〜1.0(dl/g)、特に好ましくは0.9〜1.0(dl/g)である。
【0019】
また、この複合繊維自体の固有粘度即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)が好ましく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、最も好ましくは0.9〜1.1(dl/g)である。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0020】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位が約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%未満、好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは20モル%未満、特に好ましくは10モル%未満の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0021】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロン等を別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は質量%で50%以上である。
【0022】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0023】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0024】
本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸については、例えば上記の各種特許公報に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用しても良い。
【0025】
又、繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角型、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平型(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0026】
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、単糸デニールが0.1〜5デニール程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等が挙げられる。
【0027】
尚、本発明の目的を損なわない範囲内、通常50重量%以下の範囲内で、天然繊維、合成繊維等他の繊維例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート等のセルロース系繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリウレタン、ナイロン、アクリル等の各種合成繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は、例えば沸水収縮率15〜30%程度高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0028】
本発明に用いる非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレート、通常のポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、並びにポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、さらに、キュプラ、レーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらのブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等を任意に使用でき、繊維の断面形状についても、丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意の断面形状の繊維が使用可能であり、繊維の形態についても特に限定されず、原糸、仮撚等の捲縮加工糸が使用できる。非弾性糸の太さは20〜110dtexが好ましく、さらに好ましくは、30〜90dtexである。さらに、長繊維でも紡績糸でもよく、また、2種以上の繊維を撚糸、カバーリング、エアー混繊等により混合した複合糸の使用も可能である。さらには、繊維自体での混合ではなく、編機上での2種以上の繊維の混合も無論可能である。
【0029】
本発明に用いる非弾性糸が、特に、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、セルロース系繊維の場合には、無機物質を0.3〜5重量%含有していることが好ましい。無機物質を含有することにより、伸縮性編み地の発熱時、保温効果をより効果的に発揮することが可能となる。なお、無機物質は、少ないと保温効果が小さく、多すぎると紡糸時や伸長時に糸切れすることがあるため、0.5〜5重量%の含有がより好ましく、さらに好ましくは0.4〜3重量%の含有である。
【0030】
本発明の伸縮性編み地では、非弾性糸にセルロース等の吸湿発熱する素材を使用すれば、着用時吸湿により発熱し、運動することによっても発熱することになり、本発明の効果をより高めることが可能である。さらに、紡績糸の使用や起毛により発熱した熱を逃がし難くでき、保温効果を高めることも可能である。
【0031】
本発明の伸縮性編み地は、伸縮糸を使用した伸縮性編み地であって、緯編み地では釜径30〜40インチ程度の大口径のシングル丸編機またはダブル丸編機、釜径4インチ程度のストッキング編機および釜径13〜17インチの小寸編機等の26〜40ゲージ程度の丸編機、及び、ハイゲージの横編機により製造される非弾性糸と伸縮糸とからなる緯編み地であり、経編み地では、26〜40ゲージの複数筬の経編機により製造される非弾性糸と伸縮糸とからなる経編み地である。これらの編み地は、伸縮糸の含有量が30〜100g/m2とし、加えて編み地充填率が15〜30%となるように編み地の設計を行う。特に、伸長発熱は編み地中の糸と糸との摩擦を活かせば高い伸長発熱温度が得られるため、編み地充填率が重要であり、編み地充填率を15〜30%とすれば、効果的に糸と糸との摩擦が生じて好ましい。本発明でいう編み地充填率とは、布帛の外側を直線でつないで形成される体積のうち、繊維が占める体積をいい、編み地充填率が15%未満では、糸と糸との摩擦による発熱が小さく、逆に、編み地充填率は大きくなると伸び難い編地となり、編み地充填率が30%より大きくなるとほとんど伸びない編み地となり、伸長発熱しない編み地となるばかりでなく、衣服に加工した場合に着用時動き難い衣服となる。従い編み地充填率は15〜30%、より好ましくは、18〜28%とすればよい。
【0032】
また、糸と糸の摩擦熱を大きくするためには、仮撚り等の加工糸の使用、紡績糸の使用、撚糸の使用、2種以上の繊維の混繊糸の使用、被覆弾性糸の使用等、繊維表面の摩擦が大きい方が、糸と糸との摩擦熱が高くなる。従って、編み地充填率が低い場合は、これらの繊維の使用を考慮すればよい。
【0033】
なお、編み地充填率の求め方は、標準状態(20℃65%RH)の環境下で、編み地の目付と厚みを測定し、下記式にて編み地充填率を求める。
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・Hn×Kn)×100
上式において、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cmでの編み地の厚み(cm)であり、Mは編み地の単位面積当たりの重量(g/cm)であり、H1、H2・・Hnは編み地の含有繊維1、2・・n各々の比重であり、K1、K2・・Knは編み地の含有繊維1、2・・n各々の混率(%)である。なお、繊維の比重については、繊維便覧(丸善)による繊維の比重を使用し、比重に幅がある繊維については中間値を使用し、編み地の混率の数値につては例えば混率80%の場合は0.80を使用する。また、充填率は、得られた数値の小数点以下一桁目を四捨五入し整数で示す。
【0034】
本発明の編み地中の伸縮糸の含有量は30〜100g/m、好ましくは40〜90g/mである。伸縮糸の含有量が30g/m未満では、編み地中の糸と糸の摩擦が大きくても高い伸長発熱温度が得られない。また、伸縮糸の含有量が100g/mより多いと、衣服に加工した場合、伸びにくくて動き難い衣服となるため本発明の目的を達成できない。
【0035】
さらに、本発明の伸縮性編み地について、より伸長発熱する編み地設計について検討した結果、本発明者は、伸縮糸の含有量に加え、後述する方法で測定した伸縮編み地の応力比により目的を達成できる事を見出した。
応力比については、最適な条件があり、すなわち、伸縮時の応力比は0.40〜0.80であることが極めて重要である。一般の編み地の応力比は0.80超であるが、応力比が0.80より大きいと伸長時発熱しても伸長緩和時に吸熱現象が生じ、結果として発熱が小さくなりやすい。また、応力比が0.40未満の場合は、伸長時発熱は高くなるが、衣服とした際、肘や膝の関節部を曲げ伸ばしした後に編み地が変形して衣服が型崩れして好ましくなく、さらに、応力比が高すぎる場合には、伸長発熱温度そのものが低くなる。従って、応力比は、0.45〜0.75が好ましく、0.45〜0.70がさらに好ましい。なお、経方向と緯方向で応力比が異なる場合は両方向とも上記の範囲に入っていることが好ましいが、伸長発熱性能を発揮させたい方向のみ、応力を上記範囲とすることも可能で、ただしこの場合、衣服を縫製して着用した際に、動作により編み地が伸長される方向が上記範囲であることが好ましい。応力比のコントロールは伸縮糸の含有量、伸縮糸そのものの応力比(伸縮糸の80%伸長時における伸長50%での往復の応力性能比)、伸縮糸と非弾性糸との繊度比、編み地充填率、編み地の滑り性等により、応力比のコントロールが可能である。
【0036】
応力比のコントロールの例として、応力比を小さくするには、伸縮糸と非弾性糸との繊度比(非弾性糸の繊度/伸縮糸の繊度)を0.7〜2.0とする、加工糸、紡績糸または複合糸等の使用、小さい応力比の伸縮糸を使用しての編み地作製、さらに、編み地充填率を高くする等の方法があり、また、仕上げによっても応力比のコントロールが可能で、編み地が滑りやすくなるように仕上げれば応力比が小さくなり易い。仕上げ剤で具体的に示すと、シリコン系の平滑剤は使用しないことが好ましく、例えば、ポリエステル系の仕上げ剤や、仕上げ剤を使用しないで仕上げる等の方法が可能で、応力比のコントロールは、これらの方法より製造しようとする目標編み地に応じて1種以上選定すればよい。
【0037】
本発明でいう応力比は、編み地を80%まで伸長後元の長さに戻し、伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を求め、下記式により、少数点以下3桁目を四捨五入して求める。
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
尚、編み地を80%まで伸長して伸縮途中の応力で応力比を求めるが、編み地伸度が低くて80%まで伸長困難な場合は、60%まで伸長して伸長後元の長さに戻し、伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力から応力比を求める。
【0038】
なお、応力比を伸長、及び、回復50%時点での応力により求めるのは、50%時点の応力比が編み地伸長時に発熱した温度と、伸長回復時に吸熱する温度との差を捉えやすいことを見出したからである。すなわち、応力比が小さいほど弾性糸の伸長緩和時の吸熱温度が低く、高い伸長発熱温度が得られ、編み地の伸長時の発熱に対して、伸長緩和時の吸熱を最小限に抑える指標とすることが可能となる。
【0039】
本発明の伸縮性編み地は、経緯少なくとも一方向の伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であることを特徴とするが、本発明における瞬間発熱温度とは、伸縮以外に外部からのエネルギー供給がなく、風による伸長発熱温度が変化しない条件下で、編み地を60〜100%伸長し、次いで緩和してもとの長さに戻す工程を1回とする繰り返し伸縮を100回行う間に編み地が示す最高温度をサーモグラフィで測定し、試験開始前の編み地温度との差から算出された値である。
【0040】
100回の60〜100%伸縮中又は伸縮完了直後に、編み地温度が試験開始前編み地温度より高くなれば、瞬間発熱していることを示す。本発明の編み地は、この方法により測定した瞬間発熱温度が1.0℃以上あることが必要である。1.0℃未満の瞬間発熱温度では、ほとんど発熱を感じられない。瞬間発熱温度は好ましくは1.5℃以上、より好ましくは2.0℃以上である。瞬間発熱温度が高いほど好適であり、人体に悪影響を与えない範囲であれば上限は特に限定されないが、瞬間発熱温度を高くするために、糸と糸との摩擦を大きくする等の編み地の設計により発熱温度が高くなりすぎると編み地がハイパワーとなって衣服として動き難くなるため、瞬間発熱温度は10℃以下であることが好ましい。また、編み地経緯方向のうち、少なくとも一方向の60〜100%伸長時の瞬間発熱温度が1.0℃以上であればよく、編み地の経方向と緯方向の両者とも瞬間発熱温度が1.0℃以上の編み地の場合は、製品縫製時の型入れ方向を特に考慮しなくてもよいが、一方向のみ瞬間発熱する編み地の場合は、人体の関節で特に皮膚伸びが大きい方向を、瞬間発熱が大きい編み地の方向と一致させれば、運動動作時暖かい衣服を製造することができる。
【0041】
なお、伸長発熱温度測定時の伸長量設定は、初期長10.0cm、幅2.5cmの編み地の9.8N荷重下での編み地伸度により設定し、編み地伸度が100%以上の場合の伸長量は100%、編み地伸度が60%以上100%未満の場合の伸長量は、9.8N荷重下の伸度に0.9倍した値の伸長量とし、例えば、9.8N荷重下の編み地伸度が80%の場合の伸長量は80×0.9=72%として設定する。9.8N荷重下の編み地伸度が経方向又は緯方向のいずれか一方の編み地伸度が60%以上となるよう設計することが必要であり、経方向と緯方向の両方とも伸度が60%未満の場合は、衣服に加工した場合、衣服着用時の突っ張り感が強過ぎて動き難く、肌に密着する衣服に適さないといえる。9.8N荷重下の編み地伸度の測定法、発熱温度の測定法は、以下の実施例において具体的に説明する。
【0042】
弾性糸を含有する従来の編み地は、編み地に伸縮性を持たせ衣服着用時に心地よいフィット感を付与するもので、これにより、スリムな審美性の衣服を得たり、運動機能を向上させたりするものであった。これに対し本発明は、伸縮により発熱をする編み地を得るものであり、従来品とは全く異なる発想の編地である。60〜100%伸長時の瞬間発熱温度を1.0℃以上とするには、伸縮糸の含有量、編み地充填率、伸縮糸と非弾性糸との繊度比、ループ数、編み地の応力比等を適正な範囲とすること、すなわち、糸使い、ループ構造等の編み地設計と、伸長発熱を効率的に発揮するための加工法を含めた編み地製造方法とが重要である。本発明により初めて60〜100%伸長時の瞬間発熱温度が1.0℃以上である編み地が得られ、衣服として着用した時に、着用時の人体関節の伸長量である僅か30〜50%の伸長でも高く発熱し、着用時に発熱が実感できるようになったものである。
【0043】
本発明の伸縮性編み地では、編み地充填率、応力比に加え、編み地の経方向密度(コース/インチ)と編み地の緯方向密度(ウェール/インチ)との積である編み地のループ数も重要であり、ループ数を特定の範囲内に入れることにより、伸長発熱と編み地の応力とのバランスを最適化できる。本発明による伸縮性編み地が緯編み地の場合は、ループ数が3000〜8000の範囲内が好ましく、ループ数が3000未満では編み地の伸度が小さく、また、伸長発熱温度も低く、ループ数が8000より多い場合は編み地が高応力となり、衣服とした際に動き難い衣服となる。特に、ループ数が3000未満の場合は、衣服とした際に突っ張り感が高いとともに、編み地の通気性も高くなることがあり、編み地の伸長発熱温度そのものが低いことに加え、伸長発熱しても通気性が高い事より外気の流入が多く暖かく感じない。これらより、ループ数は好ましくは3000〜8000とし、より好ましくは3500〜7500とすればよい。これらループ数のコントロールは、繊度、編機のゲージとともに、染色加工時の性量コントロールにより可能で、ループ数を大きくするには、繊度を小さくする、編機ゲージを密にする、染色加工で編み地を幅入れ、追い込み加工すること等により達成し易い。特に、編み地のウェールを40〜70ウェール/インチとなるよう設計するのが好ましい。また、さらに重要なことは、伸縮糸の編成時、通常の編込み長よりも短くして編成することである。また、伸縮糸と非弾性糸との編成方法は、プレーティング(添え糸編)や、伸縮糸のみでのループ形成が好ましく、この場合、例えば、伸縮糸と非弾性糸とを1本交互に編成する等により編成できる。
【0044】
本発明による伸縮性編み地が経編み地の場合は、ループ数が5000〜12000の範囲内が好ましく、ループ数が5000未満では編み地の伸度が小さく、また、伸長発熱温度も低く、ループ数が12000より多い場合は編み地が高応力となり、衣服とした際に動き難い衣服となる。特に、ループ数が5000未満の場合は、衣服とした際に突っ張り感が高いとともに、編み地の通気性も高くなることがあり、編み地の伸長発熱温度そのものが低いことに加え、伸長発熱しても通気性が高い事より外気の流入が多く暖かく感じない。これらより、ループ数は好ましくは5000〜12000とし、より好ましくは5500〜11500とすればよい。これらループ数のコントロールは、繊度、編機のゲージとともに、染色加工時の性量コントロールにより可能で、ループ数を大きくするには、繊度を小さくする、編機ゲージを密にする、染色加工で編み地を幅入れ、追い込み加工すること等により達成し易い。特に、編み地のウェールを50〜80ウェール/インチとなるよう設計するのが好ましい。また、伸縮糸の編成は、非弾性糸と別筬で編成するのが好ましいが、同じ筬で伸縮糸と非弾性糸とを配置することも可能で、例えば、1本おきに伸縮糸と非弾性糸を配置する等の方法も行える。
【0045】
本発明の伸縮性編み地の製造において、染色加工時、通常よりも伸縮性編み地を伸長気味に仕上げることが好ましく、目安としては生機とほぼ同密度で仕上げるようにする。これにより、編み地の伸度は低下するが、編み地を引っ張った場合、編み地ループの変形が少なく、糸と糸の摩擦を最大限に発揮することが可能になる。また、これらの編み地を伸長してセットする目安としては、初期長10.0cm、幅2.5cmにサンプリングした編み地の9.8N荷重下での編み地伸度を、最大でも150%以内となるよう設定することが好ましい。
【0046】
本発明の伸縮性編み地は、緯編み地の場合、パンスト編機等の筒編編機、小寸の釜径編機を含むシングル丸編機またはダブル丸編機により製造可能であり、編組織については、天竺組織、スムース組織等のニットループ主体の編組織による編成が可能である。また、スムース組織の場合は、伸縮糸と非弾性糸とをプレーティング(添え糸編)して編成するのが好ましく、スムース組織では着用動作時に動き易いようにするために、伸縮糸のプレーティングをすべてのコースに行うのではなく、1コース毎にプレーティングする等の方法により目的が達成可能である。より伸張発熱効果が高める為に、タックループ、ウェルトループ(ミスループとも称されるが、本願ではウェルトループと称す)を編地中にさらに配することは、これらのループが多くなるほど伸長発熱温度が高くなるため、好ましい。タックループ、ウェルトループの使用法については、伸縮糸でタックループ又はウェルトループを形成するのが最も伸長発熱に効果的であるが、タックループ又はウェルトループは非弾性糸とし、該タックループ又はウェルトループの前後の少なくともいずれかのニットループを伸縮糸で形成することも可能で、さらに、伸縮糸でタックループ又はウェルトループを形成し、該タックループ又はウェルトループの前後の少なくともいずれかのニットループも伸縮糸で形成すれば、高い伸長発熱温度が得られ、いずれも、伸縮糸が伸ばされたループが形成され、伸長発熱温度を高くできて好ましいループ構造となる。また、これらタックループやウェルトループが多くなると伸度が低下し、伸びにくい編み地となる傾向であるため、タックループ又はウェルトループをコース方向(編地経方向)に連続して組織するのは2コース以内とするのが好ましく、3コース以上連続すると編み地伸度が極端に低下するため、低伸度を目的とする以外は避けるべきである。したがって、タックループ又はウェルトループの連続は2コース以内とするのが好ましいが、この場合、タックループとウェルトループの組み合わせでも2コース以内の連続とするのが好ましい。なお、タックループ又はウェルトループの連続は2コース以内とするが、斜め方向への連続は制限なく、また、ウェール方向(緯方向)への連続も制限なく、編成可能な範囲での連続が可能である。さらに、タックループ又はウェルトループは、伸縮糸と非弾性糸とのプレーティングや、伸縮糸のみでの編成であっても構わない。
【0047】
また、タックループ又はウェルトループを編み地中に組織することが好ましいが、これらタックループ又はウェルトループは、単独又は組み合わさって組織されていてもよく、組み合わせの例としてウェール方向にニットループとタックループ又はウェルトループとを交互に又は任意な繰返し単位で配置した組織、あるいは、コース方向に、ニットループとタックループ又はウェルトループとを交互に又は任意な繰返し単位で配置した組織が使用できる。
【0048】
ニットループと、タックループ及び/又はウェルトループとの編み地中の比率については、少なくとも編み地片面のタックループ及び/又はウェルトループ数が編み地表面の全ループ数の20〜60%となるよう調整する。タックループ及び/又はウェルトループが20%未満では伸長発熱効果が小さく発熱し難い編み地となり、60%より多いと伸長発熱温度は高いが伸びにくい編み地となり、衣服にした際に衣服として着用時に動き難い製品となり好ましくない。従い、タックループ及び/又はウェルトループの比率は20〜60%とし、好ましくは25〜50%とすればよい。なお、編み地中のタックループ及び/又はウェルトループの割合は、編組織の一完全組織内のニットループ、タックループ、及びウェルトループのそれぞれのループ数より計算する。無論、編み地中にニットループのみの部分が大きな面積を占めていて、タックループやウェルトループが組み込まれている部分が縞状、あるいは島状に存在している設計も可能であるが、この場合、ニットループの部分の伸張発熱温度は低いので、膝や肘部など伸縮する部位にタックループやウェルトループが組織されている部分となるよう製品で配置すればよい。
【0049】
なお、これらタックループ及び/又はウェルトループの配置は、ダブル丸編機の場合、シリンダー又はダイアルの少なくとも一方の組織内で配置されていることが重要で、シリンダーとダイアルは、それぞれ独立しているとみなし、それぞれの側に組織されているループ形状で判断する。また、タックループ及び/又はウェルトループは、伸縮糸と非弾性糸両方で形成されているのが好ましいが、伸縮糸のみ又は非弾性糸のみで形成されていてもよい。
【0050】
本発明による伸縮性編み地が経編み地の場合、通常のシングルトリコット編機、ダブルトリコット編機、シングルラッセル編機、ダブルラッセル編機により編成可能であり、編組織については、通常の組織により編成が可能であるが、挿入組織の連続は2コース以下が好ましい。特に、シングルトリコット編機、シングルラッセル編機による伸縮糸の組織において、開き目によるニットループを形成するのが好ましく、これにより、着用動作時に効率よく発熱することが可能となる。開き目組織の例として、01/21、01/32、01/12/32等、ニットループ全てが開き目であることが好ましい。なお、これらの開き目は伸縮糸については好ましいが、非弾性糸については開き目、閉じ目、開き目と閉じ目の組み合わせ等を任意に選択できる。
【0051】
本発明の伸縮性編み地は、編組織や、糸使いを変更したり、樹脂プリント等を施したりすることにより、点状、直線状、曲線状等の部分的にパワーが異なる高パワー部と低パワー部とを混在させてもよい。この場合、編み地中の一部分でも本性能を満足すればよい。例えば、膝など伸長発熱効果が欲しい部分のみ高伸長発熱編み地を配し、膝回り等は高パワーの低伸長編み地を配置することも可能で、この場合、膝の動きで暖かくなり、また、低伸長部で膝関節の保護等を狙った製品とすることが可能となる。
【0052】
本発明の伸縮性編み地の染色仕上げ方法としては、通常の染色仕上げ工程を使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機も液流染色機、ウインス染色機およびパドル染色機など任意であり、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤や、保温性を高める加工剤の使用も可能である。
【0053】
本発明の伸縮性編み地は、スパッツ、スポーツタイツ、コンプレッションタイツ、ガードル等のスポーツ、インナー用等ボトム類、肌着、スポーツシャツ、コンプレッションシャツ等のトップス類、パンティーストッキング、ソックス、タイツ、レギンス等のレッグ類、肘サポーター、膝サポーター、腰サポーター、足首カバー、アームカバー、レッグカバー、ニーカバー、エルボーカバー等のサポーター類、手袋等の、着用動作時に編地が伸長される関節部を覆う衣服に縫製すれば、日常の動作、運動により暖かい衣服となる。
【0054】
特に、コンプレッションウェアやコンプレッションシャツ、すなわち、ジョギング、各種ゲーム、ウォ−キング等、主に運動時に肌に密着させて着用し、運動機能の向上、怪我の防止や保温を狙った長袖又は半袖等の袖付きシャツ、膝上、膝下又は足首までのスパッツ等では、目付けが150〜300g/m程度の編み地からなり、伸縮糸を40〜100g/m2含有し、編み地充填率が20〜30%、応力比が0.50〜0.80程度の編み地とし、この編み地を肘、膝、股下、足首等の関節部へ使用すれば、特に高い発熱効果が得られるため、これら関節部に少なくとも本発明の編み地が使用される様に縫製することが好ましい。より関節保護効果等を高める為に、関節部近傍に低伸度の部位を設けることも可能であり、低伸度部位の製造方法としては、編み地編成時に組織で伸びなくする方法、製品縫製前に伸びにくいテープ状物を縫合又は接着により組み合わせる方法、縫い目で止める方法等があり、これらの方法により、関節保護等の機能が付加される。
【0055】
また、タイツ、レギンス、ソックス等の薄手のレッグ衣料、釜径が24〜38インチ程度の丸編機、8〜20インチ程度の小寸丸編機、4インチ程度のパンスト編機、ソックス編機等の丸編機により製造されるボトム衣料等においても、本発明の伸縮性緯編地を使用すれば、日常の動作及び運動により暖かい衣服となる。さらに、伸縮糸を40〜80g/m2含有し、編み地充填率が15〜25%、応力比が0.40〜0.60程度の編み地とすれば、ボトム衣料として、保温性に優れ、伸長部位の筋肉や関節を暖めることによる怪我の防止に効果を発揮する。これらの製品の場合も、より関節保護、ヒップアップ等の目的に、関節部近傍等に低伸度の部位を設けることも可能で、低伸度部位の製造方法としては、編み地編成時に組織で伸びなくする方法、伸びにくいテープ状物を縫合又は接着により組み合わせる方法、縫い目で止める方法等があり、これらの方法により、関節保護、ヒップアップ等の機能が付加される。
【0056】
さらに、肌着等の薄手のインナーは、釜径が24〜38インチ程度の丸編機、8〜20インチ程度の小寸丸編機により製造可能で、本発明の編み地を適用し衣服として着用すれば日常の動作により暖かい衣服となる。さらに、伸縮糸を30〜70g/m2含有し、編み地充填率が15〜20%、応力比が0.40〜0.50程度の編み地とすれば、肌着として動き易く、保温性にも優れ、特に、吸湿発熱素材等の発熱素材と組み合わせることにより、動作しない時でも暖かく、動作でより暖かくなる肌着が得られる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例における評価は以下の方法により行なった。
(1)サンプリング
以下の測定を行う場所は基本的にランダムで数箇所行なうが、編組織、糸使い、樹脂プリントの有無等によって布帛性能が部分的に異なる編み地においては、本発明の性能を満たす部分が確認できない場合、本発明の性能が発現する可能性が高い箇所を優先して測定することができ、経方向と緯方向それぞれの測定を行えるようサンプリングすればよい。
編組織、糸使い、樹脂プリントの有無等が均一である編み地においては、サンプリング箇所はランダムでよく、経方向と緯方向それぞれの測定を行えるようサンプリングすればよい。
【0058】
(2)瞬間発熱温度
瞬間発熱温度の測定は、下記の繰り返し伸縮試験機を使用し、伸長及び緩和(戻し)を規定速度で規定回数繰り返す間の最も高い試料表面温度を測定して求め、編み地経方向、及び、緯方向の瞬間発熱温度を測定し、高い方向を瞬間発熱温度とする。
繰り返し伸縮機:デマッチャー試験機((株)大栄科学精器製作所製)
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅60mm
測定環境:温度20℃、湿度65%RHの恒温恒湿条件。伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない状態で測定する。
伸長量:2.5cm幅の編地の9.8N荷重下での編み地伸度により設定し、編み地伸度が100%以上の場合の伸長量は、100%、編み地伸度が60%以上100%未満の場合の伸長量は、9.8N荷重下の伸度と同じとする。
繰り返し伸縮サイクル:2回/秒
発熱温度測定:繰り返し伸長100回中、及び伸長終了後の試料表面温度を連続的にサーモグラフィで測定する。サーモグラフィの放射率は1.0に設定する。
発熱温度評価:測定する試料表面が最高温となったときの温度を読み取り、伸縮前の温度と比べ上昇した温度を瞬間発熱温度とする。
編地伸度:長さ100mm(把持部除く)、幅25mmでテンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)を使用し、下記条件で伸長し、9.8N荷重下での伸度を測定する。
初荷重:0.1N
引張り速度及び回復速度:300mm/分
引張り長:9.8N荷重まで伸長
測定:上記条件で伸長し、9.8N荷重での経方向および緯方向それぞれの伸度を求める。
なお、編み地の伸度が60%未満の場合は、伸長発熱しないため、実施例における伸長発熱評価では×印で示す。
【0059】
(3)伸縮糸含有量
伸縮性編み地中の伸縮糸含有量(g/m2)を次の方法により求め、小数点一桁を四捨五入する。
所定面積の編み地を解いて伸縮糸と非弾性糸を抜き出し、伸縮糸の重量を測定し、伸縮糸含有量を求め、単位面積当たりの重量に換算する。経編み地等の解き難い編み地の場合は、解く面積を縮小するか、または、非弾性糸を溶解し、伸縮糸を溶解しない溶剤がある場合は、所定面積の編み地の非弾性糸を溶解し、伸縮糸の重量を求め、単位面積当たりの重量に換算する。
【0060】
(4)編み地充填率
編み地充填率は下記式により算出した。
充填率(%)=(M/L)÷(H1×K1+H2×K2+・・Hn×Kn)×100
上式において、LはKES圧縮試験機で測定した荷重6g/cmでの編み地の厚み(cm)であり、Mは編み地の単位面積当たりの重量(g/cm)であり、H1、H2・・Hnは編み地の含有繊維1、2・・n各々の比重であり、K1、K2・・Knは編み地の含有繊維1、2・・n各々の混率(%)である。なお、繊維の比重については、繊維便覧(丸善)による繊維の比重を使用し、比重に幅がある繊維については中間値を使用し、編み地の混率の数値につては例えば混率80%の場合は0.80を使用する。また、充填率は、得られた数値の小数点以下一桁目を四捨五入し整数で示す。
【0061】
(5)応力比
応力比は次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ100mm(把持部除く)、幅25mm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機((株)オリエンテック製 RTC−1210A)
初荷重:0.1N
引張り速度、及び回復速度:300mm/分
引張り長及び測定:80%伸長まで伸長し、同じ速度で伸長後元の長さに戻し(回復させ)、この条件で伸長、回復を3回繰り返し、3回目の伸縮途中の50%時点での往路応力と復路応力を求め、下記式により小数点以下3桁目を四捨五入して求める。
応力比=(50%時点の復路応力(N))/(50%時点の往路応力(N))
なお、上記(2)の瞬間発熱温度測定時に測定した伸度が60〜80%の編み地の場合は、80%伸長まで伸長せずに、60%伸長までの伸長を3回繰り返す。
【0062】
[参考例:潜在捲縮発現性ポリエステル繊維(伸縮糸)の製造]
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。次いでホットロール温度を55℃、ホットプレート温度を140℃、延伸速度を400m/分、延伸倍率を延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。同様にして、33dtex/7fおよび84dtex/18fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。
【0063】
[実施例1]
28ゲージのシングル丸編機を使用し、図1に示すタック組織が部分的に入った並カノコ組織を編成するに際し、伸縮糸として参考例で得られた56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントと、非弾性糸として56dtex/36fのポリエステル1ヒーター加工糸とを使用し、これらをプレーティング編みにより編成した。
編成された編み地を連続精練機でリラックス及び精練を行い、次いで170℃で60秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でポリエステルの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で150℃60秒間仕上げセットを行い編み地とした。
得られた編み地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。実施例1の本発明の編み地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
【0064】
[実施例2〜5、比較例1]
実施例1を基準として、実施例1より密度を粗く幅出しセットして編み地充填率を下げた編み地(実施例2)、伸縮糸の繊度を変更し、それに伴い編み条件を変更した編み地(実施例3、4)、実施例3より密度を粗く幅出しセットした編地(比較例1)、実施例1で伸縮糸をすべてのコースでプレーティング編成した編み地(実施例5)を作成した。
得られた編み地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。
【0065】
[実施例6]
28ゲージのダブル丸編機を使用し、スムース組織を編成するに際し、伸縮糸として参考例で得られた56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントと、非弾性糸として56dtex/36fのポリエステル1ヒーター加工糸とを使用し、これらをプレーティング編みにより編成した。
編成された編み地を連続精練機でリラックスおよび精練を行い、次いで170℃で60秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でポリエステルの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で150℃60秒間仕上げセットを行い編み地とした。
得られた編み地の性能を評価した結果を以下の表1に示すが、実施例6の本発明の編地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
【0066】
[実施例7]
28ゲージのシングルトリコット編機を使用し、フロント筬に非弾性糸として56dtex/36fのポリエステル糸と、バック筬に伸縮糸として参考例で得られた56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントとを使用し、次に示す開き目のハーフ組織にて編成した。
フトント 01/32
バック 21/01
編成された編み地を連続精練機でリラックス及び精練を行い、次いで170℃で60秒間ほぼ生機の巾でプレセットを行い、その後、液流染色機でポリエステルの染色を行った。染色後にポリエステル系の吸水柔軟仕上げ剤を付与して、染色後とほぼ同密度で150℃60秒間仕上げセットを行い編み地とした。
得られた編地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。実施例7の本発明の編み地では、伸長時瞬間発熱温度が1.0℃以上であり、衣服とした場合、動き易い衣服とすることができた。
【0067】
[比較例2]
実施例7において、ランナーを短くして充填率を上げた編地を作成した。得られた編地の性能を評価した結果を以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の伸縮性編み地は、着用動作時に伸長時瞬間的に温度上昇する編地であり、この編み地をスポーツタイツ、スパッツ、コンプレッションタイツ、ガードル等の等ボトム類、肌着、シャツ、コンプレッションシャツ等のトップス類、パンティーストッキング、ソックス、タイツ、レギンス等のレッグ類、また、膝サポーター、肘サポーター、アームカバー、レッグカバー、ニーカバー、エルボーカバー等のサポーター類、手袋など、関節部を覆う衣服に縫製することにより、着用運動時に編み地が発熱し、動き易くて暖かい衣服となる。
【符号の説明】
【0070】
1〜6 編順を示す。
図1