(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構造では、少なくともキャビネットの側板に設けるガイド部材と、引出し側に設ける被ガイド部材の2部材が必須となり、その分、部品点数が増加してしまう。
【0007】
また、引出しがガイド部材と被ガイド部材が係合しない位置まで引き出された状態(いわゆる引出しが半開きの状態)では、引出しが上記他方のキャビネット側レールへ押圧されない。従って、この状態では、回転ローラーが当該他方のキャビネット側レールから脱落してしまい、引出しをキャビネット本体に対してスムーズに前後移動させることができない虞があった。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、部品点数の削減を図りつつ、引出しをスムーズに移動させることができる収納キャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る収納キャビネットは、前後方向に延伸する互いに平行な左右一対のレールが内部に配設されたキャビネット本体と、一対のレールそれぞれに懸架される回転ローラーを有し、回転ローラーそれぞれをレール上で転動させることにより、前方へ引き出すことが可能な引出しと、を備える。左右一対のレールのいずれか一方には、回転ローラーがレールから脱落するのを防止する脱落防止片が延伸方向に亘って設けられ、引出しの他方側面における、左右一対のレールの一方に懸架された回転ローラーよりも前方に当接することにより、引出しの他方側部分が、当該回転ローラーを中心として後方に回転移動するのを規制する移動規制部材がキャビネット本体に設けられている。
また、前記移動規制部材は、基端部が前記キャビネット本体の内面における前記左右一対のレールの下方に固定され、先端部が前記引出しの他方側面における前記左右一対のレールの下方に直接当接する部材よりなる。
また、前記キャビネット本体は、左右の側壁を有する矩形箱状であり、前記一対のレールが、前記左右の側壁に取り付けられており、前記移動規制部材は、前記左右の側壁のうち、前記脱落防止片が設けられた一方のレールとは異なる他方のレールが取り付けられた側壁の前端部に取り付けられた支持部材と、前記支持部材に上下方向の回転軸回りに回転自在に支持された移動規制用回転ローラーと、を有し、前記移動規制用ローラーの前記回転軸は、他方側の前記回転ローラーが転動可能に載置される前記他方のレールの突出片と交差する位置に配置されている。
【0010】
ここにおいて、例えば、引出しが引き出された状態で、ユーザが引出しにおける脱落防止片が設けられた一方とは異なる他方のレール側をキャビネット本体の後方に向かって押圧したとする。引出しには、脱落防止片が設けられた一方のレールに懸架された一方の回転ローラーを中心として後方に回転移動される方向に力が加わる。
【0011】
これに対して、本構成によれば、引出しの他方側面における、一対のレールの一方に懸架された回転ローラーよりも前方に当接することにより、引出しが当該回転ローラーを中心として後方に回転移動するのを規制する移動規制部材が設けられている。これにより、引出しが引き出された状態において上記力が加わっても、移動規制部材が、引出しが上記一方のレールに懸架された回転ローラーを中心として後方に回転移動するのを規制する。従って、引出しが引き出された状態において上記力が加わった場合に、上記他方の回転ローラーのレールからの脱落を抑制することができるので、引出しをスムーズに移動させることができる。
【0012】
また、移動規制部材は、キャビネット本体に設けるだけでよいので、キャビネット本体および引出しの両方にガイド部材と被ガイド部材を設けてこれらを係合させることにより、引出しの回転移動を規制する構成に比べて、部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
(2)また、本発明に係る収納キャビネットは、上記移動規制部材が、回転軸が上下方向を向いている移動規制用回転ローラーと、上記キャビネット本体に取り付けられ、当該移動規制用回転ローラーを回転自在に支持する支持部材と、を有し、移動規制用回転ローラーが、上記引出しの上記側板の外面に略当接した状態で配置されているものであってもよい。
本構成によれば、移動規制用回転ローラーが、引出しの側板の外面に当接した状態で配置されている。これにより、引出しをキャビネット本体に対して移動させる際の円滑性を維持しつつ、引出しが、脱落防止片が設けられたレールに懸架された一方の回転ローラーを中心として回転移動することを抑制できる。
【0014】
(3)また、本発明に係る収納キャビネットは、上記移動規制部材が、上記キャビネット本体の外側に突出しないよう配置されているものであってもよい。
本構成によれば、移動規制用部材がキャビネット本体の外側に突出しないよう配置されていることにより、外部から収納キャビネットを見た場合に移動規制部材が目立たないので、収納キャビネットの意匠性向上を図ることができる。
【0015】
(4)また、本発明に係る収納キャビネットは、上記キャビネット本体が、左右の側壁を有する矩形箱状であり、上記一対のレールが、前記左右の側壁に取り付けられており、上記移動規制部材が、上記左右の側壁のうち、上記脱落防止片が設けられた一方のレールとは異なる他方のレールが取り付けられた側壁の前端部に設けられているものであってもよい。
本構成によれば、移動規制部材がキャビネット本体の側壁の前端部に設けられているので、回転ローラーの脱落防止効果を大きくすることができる。また、例えば移動規制部材が、キャビネット本体の前端部よりも後方に設けられている構成に比べて、移動規制部材を比較的容易に取り付けることができる。従って、キャビネット本体に対する移動規制部材の取り付けが比較的容易になる。
【0016】
(5)また、本発明に係る収納キャビネットは、上記キャビネット本体が、左右の側壁を有する矩形箱状であり、上記一対のレールが、上記左右の側壁それぞれに取り付けられており、上記引出しが、左右の側板を有する矩形箱状に形成され、前記左右の側板それぞれが前記レールに対向した状態で配置され、上記移動規制部材が、上記引出しの上記側板が上記レールと平行な状態にある場合、その先端部が引出しの側板の外面から離間した突起部材から構成されているものであってもよい。
本構成によれば、移動規制部材の構造が簡素化されているので、移動規制部材の製造が容易であるという利点がある。また、移動規制部材の先端部が、引出しの側板の外面から離間しているので、キャビネット本体に対して引出しを移動させる際、引出しの側板が移動規制部材の先端部に引っ掛りにくくなっている。これにより、引出しをスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品点数の削減を図りつつ、引出しをスムーズに移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
<1>構成
図1は、本実施形態に係るキッチンユニット100の斜視図である。なお、以下の説明において、「前後左右上下」方向は、
図1〜
図4に矢印で示した方向を意味するものとする。
キッチンユニット100は、3つの収納キャビネット1A,1B,1Cと、収納キャビネット1A,1B,1Cの上方に取り付けられたカウンタートップ103と、を備える。ここで、収納キャビネット1Aの上側には、ガスコンロ104が設置されている。また、収納キャビネット1Cの上側には、流し台105が設置されている。以下、収納キャビネット1Bを採りあげて説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る収納キャビネット1(1B)の斜視図である。以下、
図1における収納キャビネット1Bを「収納キャビネット1」として説明する。
収納キャビネット1は、キャビネット本体2と、上段引出し3Aと、中段引出し3Bと、下段引出し3Cと、を備える。
キャビネット本体2は、矩形箱状に形成されている。キャビネット本体2の左右両側壁2a,2bの内側には、前後方向に延伸するキャビネット側レール6A,6Bが取り付けられている。これらのキャビネット側レール6A,6Bは、例えば螺子等により側壁2a,2bに取り付けることができる。
【0021】
引出し3A(3B,3C)は、矩形板状の底板3aと、底板3aの前端部に設けられた矩形板状の前板3bと、底板3aの後端部から底板3aの厚み方向における上面側に立設された矩形板状の後板3cと、を有する。また、引出し3A(3B,3C)は、底板3aの左右両端部それぞれから底板3aの厚み方向における上面側に立設された矩形板状の側板3d,3eを有する。即ち、引出し3A(3B,3C)は、底板3a、前板3b、後板3cおよび側板3d,3eとからなり、前面に開口2cを有する矩形箱状に形成されている。なお、前板3bの高さは、後板3cおよび側板3d,3eの高さよりも高く設定されている。
引出し3A(3B,3C)は、対向配置された2つの側板3d,3eそれぞれの一部がキャビネット側レール6A,6Bに対向した状態で配置される。
【0022】
また、引出し3A〜3Cそれぞれには、取手31が取り付けられている。ユーザは、取手31を持って各引出し3A〜3Cをキャビネット本体2から前後方向に移動させることができる。
【0023】
更に、引出し3A(3B,3C)の側板3d,3eにおける上端部には、前後方向に延伸する引出し側レール5A,5Bが取り付けられている。この引出し側レール5A,5Bは、例えば螺子等により側板3d,3eに取り付けることができる。
【0024】
図3は、本実施形態に係るキャビネット側レール6A,6Bおよび引出し3Aの一部を示す斜視図である。また、
図4は、本実施形態に係る収納キャビネットを前方から見た断面図である。なお、引出し3B,3Cに関する引出し構造は、引出し3Aと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
引出し側レール5Aは、引出し3Aの側板3dの上端縁から左側に張り出した細長の突出片から構成されている。この引出し側レール5Aは、側板3dの上端縁における後端側の一部を除く部分に連続している。
【0025】
引出し側レール5Bは、細長であり、引出し3Aの側板3eの上端部から右側に張り出している。この引出し側レール5Bは、側板3eの上端縁における後端側の一部を除く部分に連続している。
【0026】
また、側板3d,3eの上記後端側の一部それぞれにおける外面側には、回転ローラー51が取り付けられている。ここで、引出し3A(3B,3C)は、キャビネット本体2内部に収納された状態から、2つの回転ローラー51それぞれを後述のキャビネット側レール6A,6Bで転動させることにより、前方へ引出すことが可能となっている。
【0027】
キャビネット側レール6Aは、平面視で細長の矩形状であり、固定片61aと、上突出片61bと、下突出片61cと、を備える。ここで、固定片61aは、キャビネット本体2の側壁2aに螺子等で固定される。上突出片61bは、固定片61aの上端縁から右側へ突出している。下突出片61cは、固定片61aの下端縁から右側へ突出している。また、キャビネット側レール6Aにおける前端部には、固定片61aの厚み方向を回転軸として回転可能なキャビネット側回転ローラー61dが設けられている。
【0028】
キャビネット側レール6Bは、平面視で細長の矩形状であり、固定片62aと、上突出片62bと、下突出片62cと、脱落防止片62eと、を備える。ここで、固定片62aは、キャビネット本体2の側壁2aに螺子等で固定される。上突出片62bは、固定片62aの上端縁から左側へ突出している。下突出片62cは、固定片62aの下端縁から左側へ突出している。また、キャビネット側レール6Bにおける前端部には、固定片62aの厚み方向を回転軸として回転可能なキャビネット側回転ローラー62dが設けられている。そして、脱落防止片62eは、上突出片62bの先端縁から下方に突出している。
以上のように、左側のキャビネット側レール6Aは、脱落防止片を有していないが、右側のキャビネット側レール6Bは、脱落防止片62eを有している。
【0029】
ここで、
図3の矢印で示すように、引出し3Aは、左右の引出し側レール5A,5Bが、キャビネット側レール6A,6Bの上突出片61b,62bと、下突出片61c,62c間に嵌め込むとする。
この場合、
図4に示すように、引出し3Aの回転ローラー51が、キャビネット側レール6A,6Bの下突出片61c,62c上に転動可能に載置される。また、キャビネット側レール6A,6Bのキャビネット側回転ローラー61d,62d上には、引出し側レール5Aおよび引出し側レール5Bが載置される。
【0030】
そして、キャビネット側レール6A,6Bのキャビネット側回転ローラー61d,62dが回転するとともに、引出し3A側の回転ローラー51が転動することにより、引出し側レール5A,5Bは、キャビネット側レール6A,6Bに対して前後方向に移動することができる。これにより、引出し3Aは、キャビネット本体2に対して前後方向に開閉可能となる。
【0031】
ところで、
図4に示すように、収納キャビネット1では、キャビネット本体2の左側の側壁2aの前端部に、引出し3Aがキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51を中心として回転移動するのを規制する移動規制部材8が設けられている。
この移動規制部材8は、移動規制用回転ローラー81と、当該移動規制用回転ローラー81を回転自在に支持するローラー支持部材82と、を有する。ここで、移動規制用回転ローラー81は、その回転軸Jが上下方向を向いている。また、ローラー支持部材82は、キャビネット本体2の側壁2aに螺子や接着剤等により取り付けられている。なお、ローラー支持部材82は、例えばキャビネット本体2の側壁2aと一体に設けられているものであってもよい。
【0032】
ここにおいて、移動規制用回転ローラー81の半径と、キャビネット本体2の側壁2bの内面から回転軸Jまでの距離との和は、引出し3Aの側板3dの外面と、キャビネット本体2の側壁2bの内面との間の距離に略等しくなっている。これにより、移動規制用回転ローラー81が、引出し3Aの側板3dの外面に当接した状態で配置される。
【0033】
これにより、引出し3Aをキャビネット本体2に対して移動させる際の円滑性を維持できる。また、引出し3Aが外部に引き出された位置に存在する場合において、引出し3Aが、脱落防止片62eが設けられたキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51を中心として後方に回転移動することを抑制できる。
【0034】
図5は、本実施形態に係る収納キャビネット1の一部を示し、(a)は引出し3Aを取り外した状態、(b)は引出し3Aを引き出した状態を示す図である。
図5(a)に示すように、移動規制部材8は、キャビネット本体2の左側の側壁2aにおける前端部に取り付けられている。そして、
図5(b)に示すように、収納キャビネット1は、移動規制用回転ローラー81が引出し3Aの側板3dの外側面に当接した状態で使用される。
【0035】
以上説明したように、移動規制部材8がキャビネット本体2の左側の側壁2aにおける前端部に設けられている。これにより、回転ローラー51の脱落防止効果を大きくすることができる。また、例えば移動規制部材がキャビネット本体2の前端部よりも後方に設けられている構成に比べて、移動規制部材8を比較的容易に取り付けることができる。従って、キャビネット本体2に対する移動規制部材8の取り付けが比較的容易になる。
【0036】
<2>回転ローラーの脱落防止効果について
次に、本実施形態に係る収納キャビネット1における回転ローラーの脱落防止効果について比較例と比較しながら説明する。
図6は、比較例に係る収納キャビネット1001の模式図である。
比較例に係る収納キャビネット1001は、移動規制部材8が設けられていない点が実施形態に係る収納キャビネット1と相違する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
比較例に係る収納キャビネット1001も、実施形態に係る収納キャビネット1と同様に、左側のキャビネット側レール6Aに脱落防止片が設けられていない。従って、
図6(a)に示すように、引出し3Aは、右側のキャビネット側レール6Bに保持された回転ローラー51を軸として側板3dがキャビネット本体2の側壁2aにおける前端部T1に当接するまで角度θだけ回転させることができる。このとき、引出し3Aの左側の回転ローラー51の中心位置P1は、前後方向から見た場合、右側へずれることになる。
【0037】
このときのずれ量をΔWとし、引出し3Aの2つの回転ローラー51の間隔をD、引出し3Aの傾き角度をθとすると、下記式(1)の関係式が成立する。
【数1】
そして、角度θは、引出し3Aの右側の回転ローラー51の位置P0と、キャビネット本体2の側壁2aにおける前端部T1との間の距離D2が短くなるほど、角度θが大きくなり、ずれ量ΔWも大きくなる。
【0038】
そして、
図6(b)に示すように、引出し3Aの右側の回転ローラー51の位置P0がキャビネット本体2の側壁2bにおける前端部T2近傍に存在する場合に、側壁2aの前端部T1と、回転ローラー51の位置P0との間の距離D2が最も短くなる。このとき、ずれ量ΔWが最も大きくなる。
ここにおいて、ずれ量ΔWが、引出し3Aが傾いていない場合における引出し3Aの左側の回転ローラー51の中心位置P1とキャビネット側レール6Aの右側の端縁との間の距離W2(
図6(a)参照)よりも大きくなると、引出し3Aの左側の回転ローラー51が脱落する。
従って、
図6(b)に示すように、ユーザが引出し3Aの左側を押圧して引出し3Aをキャビネット本体2内部へ移動させようとしたとする(
図6(b)中の矢印AR1参照)。この場合、引出し3Aの右側の回転ローラー51の中心位置P0を中心として引出し3Aが回転移動される方向への力が加わり、引出し3Aが回転移動する(
図6(b)中の矢印AR2参照)。そして、ずれ量ΔWが、距離W2よりも大きい場合、引出し3Aの右側の回転ローラー51が脱落してしまう。
【0039】
一方、本実施形態に係る収納キャビネット1では、キャビネット本体2の側壁2aの前端部に、引出し3Aがキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51を中心として回転移動するのを規制する移動規制部材8が設けられている。
【0040】
図7は、本実施形態に係る収納キャビネット1の模式図である。
本実施形態に係る収納キャビネット1では、キャビネット本体2の側壁2aに移動規制部材8が設けられている。この移動規制部材8は、引出し3Aの側板3dの外面に当接している(
図7中の点PC参照)。つまり、移動規制部材8は、引出し3Aにおけるキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51(中心位置P0)よりも前方に位置している(
図7中の一点鎖線L0参照)。そして、引出し3Aが、引出し3Aの右側の回転ローラー51を回転軸として回転しようとする場合、移動規制部材8が当該回転を規制するように働く。従って、収納キャビネット1では、引出し3Aの右側の回転ローラー51の位置P0とキャビネット本体2の側壁2aにおける前端部T1との間の距離に関わらず、引出し3Aが引出し3Aの右側の回転ローラー51を中心として回転移動するのを抑制できる。これにより、引出し3Aの左側の回転ローラー51がキャビネット側レール6Aから脱落するのを抑制できる。
【0041】
また、
図7に示すように、本実施形態に係る収納キャビネット1では、移動規制部材8が、キャビネット本体2の外側に突出しないよう配置されている。
【0042】
これにより、外部から収納キャビネット1を見た場合に移動規制部材8が目立たないので、収納キャビネット1の意匠性向上を図ることができる。
【0043】
<3>まとめ
例えば、引出し3A(3B,3C)が引き出された状態で、ユーザが引出し3A(3B,3C)における脱落防止片62eが設けられた一方とは異なる他方のキャビネット側レール6A側をキャビネット本体2の後方に向かって押圧したとする。引出し3A(3B,3C)には、脱落防止片62eが設けられた一方のキャビネット側レール6Bに懸架された一方の回転ローラー51を中心として後方に回転移動される方向に力が加わる。また、引出し3A(3B,3C)が引き出された状態では、2つの回転ローラー51がキャビネット本体2の左側の側壁2aにおける前端部に位置しており、引出し3A(3B,3C)の回転半径が最も小さくなる。この場合、移動規制部材を備えない構成(比較例に係る構成)では、引出し3A(3B,3C)の傾き角度θが最も大きくなる。
【0044】
これに対して、本実施形態に係る収納キャビネット1では、キャビネット本体2に、引出し3A(3B,3C)がキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51を中心として回転移動するのを規制する移動規制部材8が設けられている。この移動規制部材8は、引出し3A(3B,3C)におけるキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51よりも前方に当接することにより、引出し3A(3B,3C)の回転移動を規制する。これにより、引出し3A(3B,3C)が引き出された状態において、後方に回転移動される方向への力が加わっても、移動規制部材8が、引出し3A(3B,3C)のキャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51を中心とした後方への回転移動を規制する。従って、引出し3A(3B,3C)が引き出された状態において、回転移動させる方向への力が加わった場合に、キャビネット側レール6Aに懸架された回転ローラー51のキャビネット側レール6Aからの脱落を抑制することができる。これにより、引出し3A(3B,3C)をスムーズに移動させることができる。
【0045】
また、移動規制部材8は、キャビネット本体2に設けるだけでよい。従って、例えばキャビネット本体2および引出し3A(3B,3C)の両方にガイド部材と被ガイド部材を設けてこれらを係合させることにより、引出しの回転移動を規制する構成に比べて、部品点数の削減を図ることができる。
【0046】
<変形例>
(1)実施形態では、移動規制部材8が、移動規制用回転ローラー81を有する構成について説明したが、必ずしも移動規制用回転ローラー81を有する構成に限定されるものではない。例えば、引出し3A(3B,3C)が引き出された状態で所定の角度以上回転するのを防止する突起部材から構成されるものであってもよい。
【0047】
図8は、本変形例に係る収納キャビネット201の一部を示す斜視図である。なお、実施形態と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
収納キャビネット201では、キャビネット本体202の側壁2aの前端部に突起部材から構成される移動規制部材208が設けられている。この移動規制部材208は、螺子等や接着剤等により側壁2aに取り付けられるものであってもよいし、或いは、キャビネット本体202と一体に形成されているものであってもよい。
【0048】
図9は、本変形例に係る収納キャビネット201の模式図である。
図9に示すように、移動規制部材208は、突起部材から構成されている。そして、移動規制部材208は、引出し3Aの側板3d(3e)がキャビネット側レール6A(6B)と平行な状態にある場合(
図9の破線部分参照)、その先端部T3が引出し3Aの側板3dの外面から規定距離W3だけ離間している。なお、引出し3B,3Cに関する引出し構造についてもこの引出し3Aに関する引出し構造と同様の構成とすることができる。
【0049】
ここにおいて、キャビネット側レール6Aに懸架されている回転ローラー51の中心位置P1と、キャビネット側レール6Aにおける側壁2a側とは反対側の端縁との間の距離をW2とする。この場合、引出し3Aが引き出された位置に存在する場合において、距離W2について下記式(2)の関係式が成立する。
【数2】
ここにおいて、D1は、2つの回転ローラー51それぞれの中心位置P0,P1同士の間隔を示す。D3は、キャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51の中心位置P0と移動規制部材208の先端部T3との間の最短距離である。
φは、第1直線L1と第2直線L2とのなす角度を示す。ここで、第1直線L1は、キャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51の中心位置P0と、規定位置C1とを結ぶ直線に相当する。ここで、規定位置C1は、引出し3Aの側板3d(3e)がキャビネット側レール6Aと平行な状態における、側板3dの外面における回転ローラー51の中心位置P0から距離D3だけ離間した部位の位置に相当する。
第2直線L2は、移動規制部材208の先端部T3と、キャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51の中心位置P0とを結ぶ直線に相当する。
【0050】
引出し3Aが引き出された状態では、脱落防止片62eが設けられたキャビネット側レール6Bに懸架されている回転ローラー51が、キャビネット本体2の左側の側壁2aにおける前端部に位置している。
【0051】
そして、
図9に示すように、キャビネット側レール6Bに懸架された回転ローラー51がキャビネット本体2の左側の側壁2aにおける前端部に位置しているときに、引出し3Aがその側板3dに移動規制部材208の先端部が当接する形で傾いたとする。このとき、引出し3Aの傾き(角度φ)は最大となる。この場合でも、キャビネット側レール6Aに懸架された回転ローラー51の中心位置P1は、キャビネット側レール6Aにおける側壁2a側とは反対側の端縁よりも側壁2a側に存在する。従って、キャビネット側レール6Aに懸架された回転ローラー51は、引出し3Aの位置に関わらず、引出し3Aが傾くことによりキャビネット側レール6Aから脱落することはない。
【0052】
以上説明した収納キャビネット201によれば、移動規制部材208の構造が簡素化されているので、移動規制部材208の製造が容易であるという利点がある。また、移動規制部材208の先端部T3が、引出し3A(3B,3C)の側板3dの外面から離間している。これにより、キャビネット本体2に対して引出し3A(3B,3C)を移動させる際、引出し3A(3B,3C)の側板3dが移動規制部材208の先端部T3に引っ掛りにくくなっている。これにより、引出し3A(3B,3C)をスムーズに移動させることができる。
【0053】
また、前述のように、移動規制部材208の大きさを式(2)の関係式に基づいて決定することにより、移動規制部材208の大きさを的確に決定することができる。
【0054】
(2)実施形態や前述の変形例(1)では、移動規制部材8,208が、螺子等や接着剤によりキャビネット本体2の側壁2aに取り付けられる例について説明した。但し、移動規制部材8,208のキャビネット本体2への取付構造はこれらに限定されるものではない。例えば、移動規制部材8,208およびキャビネット本体2の側壁2aのいずれか一方に係合爪が設けられ、他方に当該係合爪が係合する係合孔が設けられた構成であってもよい。
【0055】
本構成によれば、例えば螺子等により移動規制部材をキャビネット本体に取り付ける構成に比べて、移動規制部材8,208をキャビネット本体に取り付ける作業の簡素化を図ることができる。従って、収納キャビネットの組み立て作業の負荷を軽減することができる。
【0056】
(3)実施形態や前述の各変形例では、右側のキャビネット側レール6Bのみに脱落防止片62eが設けられている例について説明したが、左側のキャビネット側レール6Aのみに脱落防止片が設けられている構成であってもよいことは言うまでもない。