特許第6228439号(P6228439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228439
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20171030BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20171030BHJP
   F16K 11/052 20060101ALI20171030BHJP
   F16K 7/14 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F16K7/16 D
   F16K31/06 305M
   F16K11/052 Z
   F16K7/14 A
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-244197(P2013-244197)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-102196(P2015-102196A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】二俣 和夫
(72)【発明者】
【氏名】石丸 毅
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕平
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−144243(JP,A)
【文献】 特表2002−502486(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02123914(DE,A)
【文献】 独国特許出願公開第102012005122(DE,A1)
【文献】 特開2005−163924(JP,A)
【文献】 特開平06−207678(JP,A)
【文献】 特開平09−178005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00−11/24
F16K 17/14−17/16
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けられた凹部と、
前記凹部を覆うことにより前記凹部との間に流体が流れる空間である弁室を形成するダイアフラムと、
前記凹部で開口しかつ前記弁室に流体を流入させる流入ポートと、
前記凹部で開口しかつ前記弁室から流体を流出させる流出ポートと、
前記ダイアフラムを揺動させることにより、前記ダイアフラムを、前記流出ポートの開口がなす弁座に密着又は離隔させることにより、前記流出ポートを閉鎖又は開放するダイアフラム駆動手段とを有する弁装置であって、
前記凹部は、前記弁座側から、前記流入ポートが前記弁室へ連通する流入開口に向かって深さが漸増する傾斜部を有し、
前記弁室は、前記流出ポート及び流入ポートが並ぶ縦方向と、前記縦方向及び前記深さ方向と直交する幅方向を有し、
前記流入開口の幅方向の両側に第1凸部が設けられることにより、前記傾斜部は、前記流入開口から前記弁座に向かって幅が漸増しているテーパー状であることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記第1凸部は、前記弁室の幅方向の両側から前記流入開口に向かって、前記流入開口を通る平面に対する傾きが漸増する請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記流出ポートは、第1流出ポート及び第2流出ポートの2系統が配され、
前記ダイアフラム駆動手段が、前記ダイアフラムを揺動させることにより、前記ダイアフラムを、前記第1流出ポートの開口がなす第1弁座又は前記第2流出ポートの開口がなす第2弁座のいずれか一方に密着させることにより、前記弁室の流体を前記第1流出ポート又は前記第2流出ポートの他方側から流出させ、
前記凹部は、前記第1弁座側から、前記流入ポートが前記弁室へ連通する流入開口に向かって深さが漸増する第1傾斜部と、前記第2弁座側から、前記流入開口に向かって深さが漸増する第2傾斜部とを有し、
前記第1流出ポート、流入ポート及び第2流出ポートは、この順番で配列され、
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記流入開口から前記第1弁座及び第2弁座に向かって幅が漸増している請求項1又は2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記ダイアフラム側から視た平面視において、前記傾斜部は、30〜60度のテーパー角を有している請求項1乃至3のいずれかに記載の弁装置。
【請求項5】
前記凹部の周縁には、前記ダイアフラムと密着して該ダイアフラムを保持する保持面が形成され、
前記第1凸部の前記保持面からの深さは、0mmより大きい請求項1乃至4のいずれかに記載の弁装置。
【請求項6】
前記傾斜部には、前記ダイアフラム側に突出する第2凸部が設けられる請求項1乃至5のいずれかに記載の弁装置。
【請求項7】
前記流入開口の深さは、前記弁座の深さよりも大きい請求項1乃至6のいずれかに記載の弁装置。
【請求項8】
前記流入開口の深さと、前記弁座の深さとの差が0.3mm以上である請求項7記載の弁装置。
【請求項9】
前記弁座は、前記ダイアフラム側に突出する請求項1乃至8のいずれかに記載の弁装置。
【請求項10】
前記傾斜部は、前記流入開口を通る平面に対して、3度〜15度の角度で傾斜している請求項1乃至9のいずれかに記載の弁装置。
【請求項11】
前記ケーシングは、前記凹部が形成された第1ブロックと、前記第1ブロックに固着されて前記ダイアフラムを保持する第2ブロックとを含み、
前記第1ブロックと前記第2ブロックの合わせ面を基準面としたときに、前記弁座の深さDAは、1.5〜2.5mmであり、前記流入開口の深さDBは、2.0〜3.0mmである請求項1乃至10のいずれかに記載の弁装置。
【請求項12】
前記ダイアフラム駆動手段は、コイルと、前記コイルへの通電により前記ダイアフラムに変位を与えるプランジャーとを含む請求項1乃至11のいずれかに記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学検査装置、環境分析装置又は生命工学研究機器などの各種の分析装置に使用される弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記各種の分析装置において、測定精度の向上、検査速度の向上、検体、試薬の極小化、装置の小型化などが重要課題とされており、測定に用いられる流体の流量制御を行う弁装置に対してさらなる性能の向上が求められている。かかる弁装置には、優れた耐薬品性等を実現するために、弁の開閉機構としてダイアフラムが使用されている。ダイアフラムは、弁室を区画する隔壁を構成し、外部から駆動力を受けて流体の流路を切り替える。
【0003】
この種の弁装置にあっては、ハウジングに流入ポートと2つの流出ポートが弁室に連通するように設けられ、ダイアフラムが揺動することにより、いずれか一方の流出ポートを閉鎖すると共に他方の流出ポートを開放し、流体の流路を切り替える。しかしながら、流路切り替え動作時におけるダイアフラムの弾性変形に伴い、弁室の内部容積が変化し、この内部容積の変化量(ポンピングボリューム)に相当する流体が流出ポートへ押し出される。このため、流出量の精度を高めることが困難であった。
【0004】
そこで、従来から、ポンピングボリュームを減少させるために、ダイアフラムの伸縮を司る膜部を縮小する手法が検討されていた。しかしながら、このような手法を用いてもポンピングボリュームの低減は十分とはいえず、さらなるポンピングボリュームの低減策が期待されていた。その一方で、上述した膜部の縮小に伴い、膜部における局所的な伸縮率が増大するため、ダイアフラムの寿命が短くなるという問題が生じ、新たなポンピングボリュームの低減策が期待されていた。
【0005】
このような背景の下、下記特許文献1には、流入ポートの面積が流出ポートの面積の2倍以上に設定された弁装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4252512号公報
【0007】
しかしながら、上述した弁装置において、流入ポートの断面積と流出ポートの断面積とが大きく異なると、流入ポート付近を流れる流体と流出ポート付近を流れる流体との間で流量に差が生ずるため、流入ポートから流入させる流体の流量を制御することにより、流出ポートから流出する流体の流量を精密に管理することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、流入ポートの断面積と流出ポートの断面積とを大きく異ならせることなく、ポンピングボリュームの低減を図り、流出量を精度よく制御可能とする弁装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケーシング内に設けられた凹部と、前記凹部を覆うことにより前記凹部との間に流体が流れる空間である弁室を形成するダイアフラムと、前記凹部で開口しかつ前記弁室に流体を流入させる流入ポートと、前記凹部で開口しかつ前記弁室から流体を流出させる流出ポートと、前記ダイアフラムを揺動させることにより、前記ダイアフラムを、前記流出ポートの開口がなす弁座に密着又は離隔させることにより、前記流出ポートを閉鎖又は開放するダイアフラム駆動手段とを有する弁装置であって、前記凹部は、前記弁座側から、前記流入ポートが前記弁室へ連通する流入開口に向かって深さが漸増する傾斜部を有し、前記弁室は、前記流出ポート及び流入ポートが並ぶ縦方向と、前記縦方向及び前記深さ方向と直交する幅方向を有し、前記流入開口の幅方向の両側に第1凸部が設けられることにより、前記傾斜部は、前記流入開口から前記弁座に向かって幅が漸増しているテーパー状であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る前記弁装置において、前記第1凸部は、前記弁室の幅方向の両側から前記流入開口に向かって、前記流入開口を通る平面に対する傾きが漸増することが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記弁装置において、前記流出ポートは、第1流出ポート及び第2流出ポートの2系統が配され、前記ダイアフラム駆動手段が、前記ダイアフラムを揺動させることにより、前記ダイアフラムを、前記第1流出ポートの開口がなす第1弁座又は前記第2流出ポートの開口がなす第2弁座のいずれか一方に密着させることにより、前記弁室の流体を前記第1流出ポート又は前記第2流出ポートの他方側から流出させ、前記凹部は、前記第1弁座側から、前記流入ポートが前記弁室へ連通する流入開口に向かって深さが漸増する第1傾斜部と、前記第2弁座側から、前記流入開口に向かって深さが漸増する第2傾斜部とを有し、前記第1流出ポート、流入ポート及び第2流出ポートは、この順番で配列され、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記流入開口から前記第1弁座及び第2弁座に向かって幅が漸増していることが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記弁装置において、前記ダイアフラム側から視た平面視において、前記傾斜部は、30〜60度のテーパー角を有していることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記弁装置において、前記凹部の周縁には、前記ダイアフラムと密着して該ダイアフラムを保持する保持面が形成され、前記第1凸部の前記保持面からの深さは、0mmより大きいことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記弁装置において、前記傾斜部には、前記ダイアフラム側に突出する第2凸部が設けられることが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記弁装置において、前記流入開口の深さは、前記弁座の深さよりも大きいことが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記弁装置において、前記流入開口の深さと、前記弁座の深さとの差が0.3mm以上であることが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記弁装置において、前記弁座は、前記ダイアフラム側に突出することが望ましい。
【0018】
本発明に係る前記弁装置において、前記傾斜部は、前記流入開口を通る平面に対して、3度〜15度の角度で傾斜していることが望ましい。
【0019】
本発明に係る前記弁装置において、前記ケーシングは、前記凹部が形成された第1ブロックと、前記第1ブロックに固着されて前記ダイアフラムを保持する第2ブロックとを含み、前記第1ブロックと前記第2ブロックの合わせ面を基準面としたときに、前記弁座の深さDAは、1.5〜2.5mmであり、前記流入開口の深さDBは、2.0〜3.0mmであることが望ましい。
【0020】
本発明に係る前記弁装置において、前記ダイアフラム駆動手段は、コイルと、前記コイルへの通電により前記ダイアフラムに変位を与えるプランジャーとを含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の弁装置は、弁座側から流入開口に向かってダイアフラムからの深さが漸増する傾斜部が凹部に形成されているので、弁室の内部容積が増加する。これにより、弁室の内部容積に対するポンピングボリュームの割合が小さくなり、ダイアフラムの揺動に伴う弁室の内部容積の変動の大部分は、弁室の内部圧力の変動として吸収される。従って、流入ポートの断面積と流出ポートの断面積とを大きく異ならせることなく、ポンピングボリュームを十分に低減しうる。
【0022】
一方、単に弁室の内部容積を大きく設定した場合、弁室の内部に流体が滞留することが懸念される。しかしながら、本発明にあっては、流入開口から弁座側にかけて、流体が円滑に流れるように傾斜部が形成されているので、弁室の内部に流体が滞留することが抑制される。さらに、流入開口の幅方向の両側に第1凸部が設けられることにより、傾斜部は、流入開口から弁座に向かって幅が漸増しているテーパー状である。これにより、流出開口の近傍においても流路の断面積が十分に確保され、流体の円滑な流れが阻害されず、流体の滞留がより一層抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る弁装置を示す断面図である。
図2図1のソレノイドコイルに通電された状態における弁装置を示す断面図である。
図3図1の流路ブロックの斜視図である。
図4図1の流路ブロックのダイアフラム側から視た平面図である。
図5図4のA−A線断面図である。
図6】(a)は図4のB−B線断面図、(b)は図4のC−C線断面図である。
図7】弁室内の流体の流れを示す平面図である。
図8】流路ブロックの変形例をダイアフラム側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1、2は、本実施形態の弁装置1の断面図である。図1は、後述するソレノイドコイル55への通電を遮断している非通電状態であり、図2は、ソレノイドコイル55に通電している通電状態である。
【0025】
図1、2に示されるように、本実施形態の弁装置1は、流体の流路を内包するケーシング2と、ケーシング2に対して揺動可能に設けられた揺動弁4と、揺動弁4を駆動する弁駆動部5(ダイアフラム駆動手段)と、ケーシング2及び弁駆動部5を支持するフレーム6とを具えている。
【0026】
ケーシング2は、流路ブロック20(第1ブロック)と、サブブロック3(第2ブロック)とを具えている。本実施形態では、流路ブロック20は、例えば、樹脂成分として、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)又はPBT(ポリブチレンタフタレート)のうち、いずれか一種類以上を含んでいる樹脂材料によって構成されている。上記樹脂成分の中では、耐熱性、耐薬品性及び製造コストの観点から、特にPPSが好ましい。
【0027】
流路ブロック20は、流体が流れる空間である弁室21を構成する凹部22と、弁室21と連通する流入ポート23(Commonポート)、NC(Normally Close)流出ポート24(第1流出ポート)及びNO(Normally Open)流出ポート25(第2流出ポート)と、揺動弁4を保持する保持面26とを有する。図1に示されるように、流入ポート23は、常時開放されており、流入ポート23から弁室21内に流体が供給される。通常時においては、NC流出ポート24は閉鎖され、NO流出ポート25は、開放されており、流入ポート23から弁室21に流入した流体は、矢印Aに沿って流れ、NO流出ポート25から流出される。
【0028】
サブブロック3は、例えば、樹脂材料によって形成され、揺動弁4及び後述するプランジャー51、52を収容する収容部31と、揺動弁4を保持面26に押圧する押圧部32を有する。サブブロック3は、流路ブロック20の凹部22が形成されている合わせ面27に装着され、ねじ(図示せず)等により流路ブロック20に固着される。
【0029】
揺動弁4は、弾性を有するダイアフラム41と、ダイアフラム41と一体化される揺動部材42と、揺動部材42を揺動自在に支持する軸部材43とを有する。ダイアフラム41は、例えば、ゴム材料によって形成され、凹部22を覆うようにケーシング2に装着されることにより凹部22との間に弁室21を形成する。揺動部材42は、例えば、樹脂材料によって形成され、流入ポート23の上方に配設されている。軸部材43は、例えば、金属材料によって形成されている。軸部材43は、流入ポート23の上方において、流入ポート23に略直交して設けられ、その両端は、サブブロック3に支持されている。
【0030】
軸部材43を回転軸として揺動弁4がシーソー状に揺動することにより、NC流出ポート24又はNO流出ポート25のうちいずれか一方のポートが閉鎖され、他方のポートが開放される。ダイアフラム41は、外側に延出された外周部41aを有する。外周部41aは、流路ブロック20の保持面26とサブブロック3の押圧部32とによって挟み込まれて保持・拘束されることにより流路ブロック20に密着する。これにより、弁室21が密閉され、流体のリークが防止される。
【0031】
弁駆動部5は、第1プランジャー(可動鉄心)51と、第2プランジャー52と、第1コイルばね53と、第2コイルばね54と、ソレノイドコイル55と、固定鉄心56とを有する。第1プランジャー51は、NC流出ポート24の上方に配設されている。第1プランジャー51は、ソレノイドコイル55が巻回されるコイルボビン57の内部に挿入されている。第1コイルばね53は、固定鉄心56に形成されている凹部56aに装填される。第1コイルばね53の一端は、固定鉄心56の凹部56aの底と当接し、他端は、第1プランジャー51の天面と当接する。第1コイルばね53は、第1プランジャー51を揺動部材42の当接部42aの側に押し下げ、これに伴い、第1プランジャー51の先端部51bが、揺動部材42の当接部42aを押圧する。第1コイルばね53のばね荷重は、第2コイルばね54のばね荷重よりも大きく設定されている。
【0032】
第2プランジャー52は、NO流出ポート25の上方に配設されている。第2プランジャー52には、第2コイルばね54が挿入される円筒部52aと、円筒部52aの端縁に形成された鍔状の先端部52bが形成されている。第2コイルばね54の一端は、第2プランジャー52の先端部52bと当接し、他端は、フレーム6の底面と当接する。第2コイルばね54は、第2プランジャー52を揺動部材42の当接部42bの側に押し下げ、これに伴い、第2プランジャー52の先端部52bが、揺動部材42の当接部42bを押圧する。
【0033】
ソレノイドコイル55は、筒状のコイルボビン57の周囲に巻回される。ソレノイドコイル55は、通電により電磁力を発生する。ソレノイドコイル55には、第1コイルばね53の弾性力よりも大きな電磁力を発生するように、所定の電流が流される。
【0034】
フレーム6は、サブブロック3の上部に設けられている。フレーム6は、第1プランジャー51、第1コイルばね52、ソレノイドコイル55、固定鉄心56及びコイルボビン57を収容する。フレーム6によって、ソレノイドコイル55、固定鉄心56及びコイルボビン57が固定されている。第2コイルばね54は、サブブロック3に設けられている凹部に装填される。第2コイルばね54は、サブブロック3の凹部の底と当接し、弾性力を発生する。
【0035】
ソレノイドコイル55への給電等を行うためのケーブル55aは、フレーム6の内部に引き込まれている。
【0036】
以下、弁装置1の開閉動作が説明される。既に述べたように、第1コイルばね53のばね荷重は、第2コイルばね54のばね荷重よりも大きいので、通常時においては、揺動弁4の姿勢は、図1に示されるように、図中反時計回りに回動された姿勢で維持され、NC流出ポート24が閉鎖され、NO流出ポート25が開放される。これに伴い、矢印Aにて示されるように、流入ポート23から弁室21に流れ込んだ流体は、NO流出ポート25から排出される。
【0037】
一方、ソレノイドコイル55に所定の電流が流れると、図2に示されるように、その電磁力によって第1プランジャー51が第1コイルばね53を圧縮する方向に移動する。これに伴い、第2プランジャー52の先端部52bが、揺動部材42の当接部42bを押圧することにより、揺動弁4が図中時計回りに回動され、NO流出ポート25が閉鎖され、NC流出ポート24が開放される。これに伴い、矢印Bにて示されるように、流入ポート23から弁室21に流れ込んだ流体は、NC流出ポート24から排出される。
【0038】
図3乃至6は、流路ブロック20を示している。流路ブロック20には、弁室21を区画する凹部22が形成されている。凹部22は、サブブロック3が接合される合わせ面27から凹んで形成されている。図5に示されるように、合わせ面27とは反対側の裏面からは、NC流出ニップル29b、流入ニップル29a及びNO流出ニップル29cが突出して形成されている。流入ポート23は、凹部22から流入ニップル29aを貫通して形成されている。NC流出ポート24は、凹部22からNC流出ニップル29bを、NO流出ポート25は、凹部22からNO流出ニップル29cをそれぞれ貫通して形成されている。NC流出ポート24、流入ポート23及びNO流出ポート25は、この順番で配列されている。
【0039】
以下、NC流出ポート24、流入ポート23及びNO流出ポート25が並ぶ縦の方向を縦方向Xと、凹部22が形成されている深さの方向を深さ方向Zと、縦方向X及び深さ方向Zと直交する幅の方向を幅方向Yとする。
【0040】
流入ポート23は、凹部22に面して開口する流入開口23aを有している。流入開口23aは、弁室21に連通して形成されている。流入ポート23は、流入開口23aから弁室21に流体を流入させる。NC流出ポート24及びNO流出ポート25も、凹部22に面して開口する流出開口24a、25aを有している。流出開口24a、25aは、弁室21に連通して形成され、NC流出ポート24及びNO流出ポート25は、流出開口24a、25aを介して弁室21から流体を流出させる。
【0041】
NC流出ポート24の流出開口24aには、第1弁座24bが設けられ、NO流出ポート25の流出開口25aには、第2弁座25bが設けられている。第1弁座24b及び第2弁座25bは、ダイアフラム41の側に突出する筒状に形成されている。揺動弁4の揺動に応じてダイアフラム41が第1弁座24b又は第2弁座25bと密着することにより、NC流出ポート24又はNO流出ポート25が閉鎖される。このとき、他方の流出ポートが開放されており、流入ポート23から弁室21に流入した流体は、この開放された流出ポートから弁装置1の外部に排出される。第1弁座24b及び第2弁座25bは、ダイアフラム41の側に突出して形成されているので、ポート閉鎖時における第1弁座24b及び第2弁座25bとダイアフラム41との密閉性が高められる。これにより、NC流出ポート24又はNO流出ポート25が閉鎖されたとき、弁室21からNC流出ポート24又はNO流出ポート25に流体がリークすることを防止しうる。
【0042】
第1弁座24bの先端の座面には、ダイアフラム41の側に隆起する第1隆起部24cが形成されている。第1隆起部24cは、NC流出ポート24の開口側すなわち第1弁座24bの内周部において、周方向に連続して形成されている。第1隆起部24cによって、NC流出ポート24の閉鎖時における第1弁座24bとダイアフラム41との密閉性がより一層高められ、流体のリークが防止される。NO流出ポート25の第2弁座25bについても、同様に、第1隆起部25cが設けられている。
【0043】
保持面26は、凹部22の周縁に設けられている。凹部22の側壁22aを挟んで、保持面26と合わせ面27とは、段違いに形成されている。保持面26の内周部には、ダイアフラム41の側に隆起する第2隆起部26aが形成されている。第2隆起部26aは、周方向に連続して形成されている。第2隆起部26aによって、保持面26とダイアフラム41の外周部41aとの密閉性が高められ、流体のリークが防止される。
【0044】
凹部22の周辺には、流路ブロック20の本体部分20aの略対角状に一対の貫通穴28が形成されている。貫通穴28を貫通するねじによって、流路ブロック20とサブブロック3とが固着される。
【0045】
凹部22は、第1傾斜部81と第2傾斜部82とを有する。第1傾斜部81は、第1弁座24bの側から、流入開口23aに向かってダイアフラム41からの深さが漸増するように形成されている。同様に、第2傾斜部82も、第2弁座25bの側から、流入開口23aに向かってダイアフラム41からの深さが漸増するように形成されている。ここで、ダイアフラム41からの深さとは、ダイアフラム41の外周部41aと密着される保持面26からの深さ方向Zの距離である。
【0046】
このような第1傾斜部81及び第2傾斜部82によって、流入開口23a近傍の容積が増加し、弁室21全体の内部容積も増加する。これにより、弁室21の内部容積に対するポンピングボリュームの割合が小さくなり、ダイアフラム41の揺動に伴う弁室21の内部容積の変動の大部分は、弁室21の内部圧力の変動として吸収され、ポンピングボリュームを十分に低減しうる。また、第1傾斜部81によって流入開口23aから流出開口24aに向かって凹部22のダイアフラム41からの深さが漸減することになるので、流入開口23aから流出開口24aにかけて滑らかな流路が得られる。その結果、弁室21内での流体の流れが円滑となり、流体の滞留が抑制される。
【0047】
かかる第1傾斜部81及び第2傾斜部82が凹部22に形成されていることよって、合わせ面27を基準面とする流入開口23aの深さDBは、第1弁座24b及び第2弁座25bの深さDAよりも大きくなる。本実施形態において、流入開口23aの深さDBと、第1弁座24b及び第2弁座25bの深さDAとの差DB−DAは、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。差DB−DAが0.3mm未満である場合、弁室21の内部容積が十分に増加せず、ポンピングボリュームを低減する効果が小さくなる。
【0048】
第1弁座24b及び第2弁座25bの深さDAは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは1.8mm以上であり、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.2mm以下である。第1弁座24b及び第2弁座25bの深さDAが1.5mm未満である場合、ポンピングボリュームを低減する効果が小さくなる。一方、第1弁座24b及び第2弁座25bの深さDAが2.5mmを超える場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがある。同様に、流入開口23aの深さDBは、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.3mm以上であり、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.7mm以下である。流入開口23aの深さDBが2.0mm未満である場合、ポンピングボリュームを低減する効果が小さくなる。一方、流入開口23aの深さDBが3.0mmを超える場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがある。
【0049】
図5に示される縦方向Xに沿って深さ方向Zにのびる断面において、流入開口23aを通る平面に対する第1傾斜部81及び第2傾斜部82の傾斜角θは、3度〜15度であることが望ましい。傾斜角θが3度未満である場合、弁室21の内部容積が十分に増加せず、ポンピングボリュームを低減する効果が小さくなる。一方、傾斜角θが15度を超える場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがある。
【0050】
凹部22には、ダイアフラム41の側に土手状に隆起する第1凸部83が形成されている。第1凸部83は、流入開口23aの幅方向Yの両側に設けられている。かかる第1凸部83によって、弁室21は、平面視でひょうたん型(ダンベル型)の形状である。第1傾斜部81及び第2傾斜部82は、第1凸部83に向かって、保持面26からの深さが漸減する斜面状に形成されている。凹部22の幅方向Yの両側に第1凸部83が設けられることにより、第1傾斜部81及び第2傾斜部82は、流入開口23aから第1弁座24b及び第2弁座25bに向かって幅が漸増している。すなわち、図4に示されるように、第1傾斜部81及び第2傾斜部82は、ダイアフラム41の側から視た平面視でテーパー状に形成されている。上述したように、第1傾斜部81は、流入開口23aから流出開口24aに向かってダイアフラム41からの深さが漸減するので、流出開口24aの近傍において流路の断面積が不足するおそれがある。しかしながら、本実施形態にあっては、流入開口23aから第1弁座24bに向かって第1傾斜部81の幅が漸増するので、流出開口24aの近傍においても流路の断面積が十分に確保され、流体の円滑な流れが阻害されない。流入開口23aから流出開口24aに向かう流体の流れについても、上記と同様である。
【0051】
第1凸部83の保持面26からの深さは、好ましくは0mmより大きく、より好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.7mm以下である。第1凸部83の保持面26からの深さとは、第1凸部83の幅方向Yの外端と、保持面26の内周端(本実施形態にあっては、第2隆起部26a)との深さ方向Zの距離である。第1凸部83の保持面26からの深さが0.3mm未満である場合、閉弁時に、ダイアフラム41が第1凸部83と接触して摩耗することにより、弁装置1の耐久性が低下するおそれがある。第1凸部83の保持面26からの深さが1.0mmを超える場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがある。
【0052】
図6(a)に示されるように、第1凸部83の流入ポート23側の端部(幅方向Yの内端部)には、弁室21の幅方向の両側から流入ポート23に向かって、保持面26からの深さが漸増する第3傾斜部83aが形成されている。第3傾斜部83aは、弁室21の幅方向の両側から流入ポート23の流入開口23aに向かって、流入開口23aを通る平面に対する角度が漸増するように形成されている。このような第3傾斜部83aによって、ダイアフラム41の第1凸部83との接触に伴う摩耗がより一層抑制され、弁装置1の耐久性が向上する。さらにまた、流入ポート23から流入する流体の流れが円滑となり、流体の滞留が抑制される。
【0053】
ダイアフラム41の側から視た平面視において、第1傾斜部81及び第2傾斜部82のテーパー角αは、30〜60度であることが望ましい。テーパー角αが30度未満である場合、閉弁時に、ダイアフラム41が第1凸部83と接触して摩耗することにより、弁装置1の耐久性が低下するおそれがある。又は、弁室21の内部容積が十分に増加せず、ポンピングボリュームを低減する効果が小さくなる。一方、テーパー角αが60度を超える場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがある。
【0054】
第1傾斜部81及び第2傾斜部82には、ダイアフラム41の側すなわち−Z方向に突出する第2凸部84が設けられている。第2凸部84は、流入開口23aから流出開口24a、25aに向かって第1傾斜部81及び第2傾斜部82からの突出量が漸増する。このような、第2凸部84によって、流入開口23aから流出開口24a、25aにかけて流体の流れが円滑化される。
【0055】
第2凸部84は、図6(b)に示されるように、第1傾斜部81及び第2傾斜部82から階段状に突出する。すなわち、第1傾斜部81及び第2傾斜部82の幅方向Yの中央部から両側に向かって、ダイアフラム41からの深さが段階的に増加する。第2凸部84は、上記形態の他、スロープ状に突出する形態であってもよい。この形態においては、第1傾斜部81及び第2傾斜部82の幅方向Yの中央部から両側に向かってダイアフラム41からの深さが漸増する。
【0056】
第2凸部84の幅方向Yの長さは、0.1mm以上が望ましい。第2凸部84の幅方向Yの長さが0.1mm未満である場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがあると共に、流体の流れを十分に円滑化できないおそれがある。
【0057】
第2凸部84の第1傾斜部81及び第2傾斜部82からの突出量は、0.1mm〜1.0mmであることが望ましい。第2凸部84の突出量が0.1mm未満である場合、弁室21の内部容積が過度に大きくなり、流体の滞留が生ずるおそれがあると共に、流体の流れを十分に円滑化できないおそれがある。第2凸部84の突出量が1.0mmを超える場合、閉弁時に、ダイアフラム41が第1凸部83と接触して摩耗することにより、弁装置1の耐久性が低下するおそれがある。
【0058】
図7(a)は、第1傾斜部81、第2傾斜部82、第1凸部83及び第2凸部84を有する本実施形態の流路ブロック20の弁室21内の流体の流れを示している。一方、図7(b)は、第1傾斜部81、第2傾斜部82、第1凸部83及び第2凸部84を有していない流路ブロック120の弁室121内の流体の流れを示している。
【0059】
ダイアフラム41によって流出開口24aが閉鎖されているときの流体の流れは、実線矢印で示される。流入ポート23の流入開口23aから弁室21内に流れ込んだ流体は、第2傾斜部82側の第2凸部84に沿って流れ、第2弁座25bを乗り越えて、流出開口25aから排出される。このとき、第2凸部84の幅方向Yの両側の第2傾斜部82に沿って流れる流体は、第2弁座25bの周囲を回り込みながら、第2弁座25bを乗り越えて、流出開口25aから排出される。一方、ダイアフラム41によって流出開口25aが閉鎖されているときの流体の流れは、破線矢印で示される。この場合における流体の流れも上記と同様である。
【0060】
図7(a)に示されるように、本実施形態に係る流路ブロック20では、第1傾斜部81、第2傾斜部82、第1凸部83及び第2凸部84によって弁室21内の流路が図7のごとく形成され、流体が円滑に移動できる。これにより、弁室21内での流体の滞留が効果的に抑制される。
【0061】
これに対して、図7(b)に示されるように、第1傾斜部81、第2傾斜部82、第1凸部83及び第2凸部84を有していない流路ブロック120では、流体の円滑な移動が担保されず、特に第1弁座24bの背面領域124及び第2弁座25bの背面領域125にて、流体の滞留が生ずるおそれがある。
【0062】
図3乃至5等では、単一の流入ポート23に対して2系統の流出ポート24、25を有する三方弁の流路ブロック20が示されている。このような流路ブロック20は、流出ポート24、25のうち、いずれか一方、例えば、流出ポート24を常時閉栓することにより、二方弁として使用することも可能である。このような使用形態においても、第2傾斜部82、第1凸部83及び第2凸部84の作用により、上記と同様の効果、すなわちポンピングボリュームの低減効果及び流体の滞留の抑制効果が得られる。他方の流出ポート25を常時閉栓する場合であっても、上記と同様である。
【0063】
図8は、流路ブロック20の変形例である流路ブロック20Aを示している。流路ブロック20Aは、弁室21の両端近傍に流入ポート85及び流出ポート86を有する二方弁として構成されている。
【0064】
流入ポート85は、図3乃至図5に示される流入ポート23と同等であり、凹部22に面して開口する流入開口85aを有している。流出ポート86は、NC流出ポート24又はNO流出ポート25と同等であり、凹部22に面して開口する流出開口86aを有している。流出ポート86の流出開口86aには、弁座86bが設けられている。弁座86bは、ダイアフラム41の側に突出する筒状に形成されている。揺動弁4の揺動に応じてダイアフラム41が弁座86bと密着することにより、流出ポート86が閉鎖され、流体の流出が停止される。ダイアフラム41が弁座86bから離れると、流出ポート86が開放され、流体の流出が再開される。
【0065】
流路ブロック20Aは、凹部22に、傾斜部87を有する。傾斜部87は、弁座86bの側から、流入開口85aに向かってダイアフラム41からの深さが漸増するように形成されている。このような傾斜部87によって、流入開口85a近傍の容積が増加し、弁室21全体の内部容積も増加する。これにより、流路ブロック20と同様に、ポンピングボリュームを十分に低減しうる。また、傾斜部87によって流入開口85aから流出開口86aに向かって凹部22のダイアフラム41からの深さが漸減することになるので、流入開口85aから流出開口86aにかけて滑らかな流路が得られる。その結果、弁室21内での流体の流れが円滑となり、流体の滞留が抑制される。
【0066】
流路ブロック20Aは、さらに、第1凸部83と第2凸部84とを有している。本実施形態では、第1凸部83は、流入ポート85の周囲の大部分を囲んで形成されているが、流入ポート85に対して幅方向Yの両側のみに第1凸部83が形成されていてもよい。流路ブロック20と同様に、第1凸部83には、第3傾斜部83aが設けられている。第2凸部84は、傾斜部87に設けられている。
【0067】
かかる流路ブロック20Aにおいても、第1凸部83、第2凸部84及び傾斜部87の作用により、上記と同様の効果、すなわちポンピングボリュームの低減効果及び流体の滞留の抑制効果が得られる。
【0068】
以上のような構成を有する本実施形態の弁装置1によれば、第1弁座24b側及び第2弁座25b側から流入開口23aに向かってダイアフラム41からの深さが漸増する第1傾斜部81及び第2傾斜部82が凹部22に形成されているので、弁室21の内部容積が増加する。これにより、弁室21の内部容積に対するポンピングボリュームの割合が小さくなり、ダイアフラム41の揺動に伴う弁室21の内部容積の変動の大部分は、弁室21の内部圧力の変動として吸収される。従って、流入ポート23の断面積とNC流出ポート24の断面積及びNO流出ポート25の断面積とを大きく異ならせることなく、ポンピングボリュームを十分に低減しうる。
【0069】
一方、単に弁室21の内部容積を大きく設定した場合、弁室21の内部に流体が滞留することが懸念される。このような弁室21の内部における流体の滞留は、分析装置の測定精度を高めるうえで好ましくない場合がある。しかしながら、本発明にあっては、流入開口23aから第1弁座24b側及び第2弁座25b側にかけて、流体が円滑に流れるように第1傾斜部81及び第2傾斜部82が形成されているので、弁室21の内部に流体が滞留することが抑制される。
【0070】
以上、本発明の弁装置が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0071】
図1の基本構造をなす弁装置が、表1の仕様に基づき試作され、ポンピングボリュームがテストされた。流路ブロックの素材として、PPS(ポリフェニレンサルファイド)が用いられた。切削加工機を用いてPPS製のブロックを所定の形状に加工することにより、各仕様の流路ブロックが試作された。
テスト方法は、以下の通りである。
【0072】
<ポンピングボリューム>
各仕様の流路ブロックが、弁装置に組み込まれ、ポンピングボリュームが測定された。すなわち、全てのポートが水で満たされ、ソレノイドコイルに12Vの電圧が印加され、流出ポートに接続されたチューブ内の水位の変化が測定された。チューブ内の水位の変化をチューブ内の体積に変換した値がポンピングボリュームである。水位の測定には、万能投影機(V12−BS ニコン製)が用いられた。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が小さい程、ポンピングボリュームが小さく、弁装置の動作精度が優れていることを示す。
【0073】
<流体の滞留性>
各仕様の流路ブロックに相当する解析モデルが作成され、コンピュータシミュレーションによって弁室内の流体の滞留性が計算された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が小さい程、流体の滞留が抑制されることを示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1から明らかなように、実施例の弁装置は、比較例に比べてポンピングボリュームが有意に小さく、動作精度の向上に寄与することが確認できた。
【符号の説明】
【0076】
1 弁装置
2 ケーシング
3 サブブロック(第2ブロック)
5 弁駆動部(ダイアフラム駆動手段)
20 流路ブロック(第1ブロック)
20A 流路ブロック(第1ブロック)
21 弁室
22 凹部
23 流入ポート
23a 流入開口
24 NC流出ポート(第1流出ポート)
24b 第1弁座
25 NO流出ポート(第2流出ポート)
25b 第2弁座
41 ダイアフラム
55 ソレノイドコイル
51 第1プランジャー
81 第1傾斜部
82 第2傾斜部
83 第1凸部
84 第2凸部
85 流入ポート
85a 流入開口
86 流出ポート
86b 弁座
87 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8