(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に掻込リール、刈刃、オーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を設ける汎用コンバインおいて、前記脱穀部はフィーダによって搬送されてきた穀稈を投入する扱室と、扱室の下方に設ける選別室とを備え、前記扱室に設けた扱胴と受網によって穀稈を脱粒させ、前記受網から漏下した処理物を選別室に設けた揺動選別体とファンの選別風によって穀粒と塵埃に選別するように構成すると共に、前記揺動選別体上に落下した処理物の有無又は層厚を層厚センサで検出し、この検出結果に基づいて制御装置が選別制御、或いは選別状態の報知を行うように構成し、前記層厚センサは、ポテンショメータの回転軸に取り付けた作動片の回動角度によって処理物の有無又は層厚を検出するように受網と揺動選別体との間に設け、また、前記受網から漏下した処理物がポテンショメータとその回転軸に直接的に衝突しないように、その上方側を少なくとも保護した状態で配設するにあたり、前記層厚センサの上方に保護カバーを設け、該保護カバーにより層厚センサの上方側を覆って処理物が直接的に層厚センサに衝突しないようにし、前記層厚センサの作動片を垂下した検出姿勢と回動させて上方に持ち上げた退避状態で保持した格納姿勢に変更可能に構成すると共に、前記保護カバーを作動片の検出姿勢のみならず格納姿勢においても、その上方側を覆う幅と長さを備えるものとすることを特徴とする汎用コンバイン。
前記保護カバーを層厚センサを取り付けるブラケットに一体的に形成すると共に、前記層厚センサを扱室の受網を取り付ける下部フレームの側面にブラケットを介して取り付け、前記保護カバーと下部フレームとブラケットによって層厚センサの上方側、前方側、及び側方側を覆うことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の汎用コンバイン。
【背景技術】
【0002】
一般に、汎用コンバインは、走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に掻込リール、刈刃、オーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を設けている。また、脱穀部はフィーダによって搬送されてきた穀稈を投入する扱室と、扱室の下方に設ける選別室とを備え、扱室に設けた扱胴と受網によって穀稈を脱粒させ、受網から漏下した処理物を選別室に設けた揺動選別体とファンの選別風によって穀粒と塵埃に選別するように構成している。
【0003】
また、扱室に設けた扱胴は、円筒状に形成したロータとロータの外周に取り付けた螺旋状になしたスクリューとスクリューの外周に所定ピッチで取り付けた複数の扱歯を備えており、扱室に投入された穀稈をスクリューによって後方に搬送しながら、高速回転するロータの外周上にてスクリューや扱歯によって穀稈を受網に擦り付けて脱粒処理する。そのため、自脱型コンバインのように低速回転する扱胴に設けた扱歯で穂先側の穀粒を扱き落として脱粒処理し、また、脱粒した穀粒を受網から漏下させるものに比較して、受網から漏下して揺動選別体上に落下する処理物の速度が速くなる。さらに、汎用コンバインでは刈り取った穀稈の全体を扱室に投入するため、揺動選別体上に落下する処理物に藁屑や泥等が多量に混じり、全体に処理物の量も多くなる。
【0004】
そして、自脱型コンバインにおいては、上記揺動選別体とファンの選別風によって穀粒と塵埃に選別する処理を高精度に行うために、揺動選別体上に落下した処理物の層厚をセンサで検出し、この検出結果に基づいてチャフシーブの開度や唐箕ファンの送風量を自動制御することが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1並びに特許文献2に示された自脱型コンバインの選別制御を、汎用コンバインに適用する場合には、次のような課題が提起される。即ち、汎用コンバインでは、受網から漏下して揺動選別体上に落下する処理物の速度が速く、また、処理物の量も多くなる。そのため層厚センサをポテンショメータで構成する場合、処理物がポテンショメータに衝突する際の衝撃力が大きく、また、ポテンショメータに繰り返し衝突するから、これによりポテンショメータが早期に故障する虞がある。また、処理物中に藁屑や泥等が多量に混じっていることから、層厚センサにこれらが巻き付いて正確な層厚を検出することが出来なかったり、これを回避するために頻繁に層厚センサのメンテナンスを行わなければならず、能率的に作物の収穫作業を行うことができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、汎用コンバインにおいて選別制御を行うにあたり、層厚センサをポテンショメータで構成する場合に、このポテンショメータの故障を防止して層厚センサの寿命を延ばし、長期に亘って揺動選別体上の処理物の層厚を精度良く検出することができる汎用コンバインを提供することを課題とする。また、上記ポテンショメータの故障は、処理物がポテンショメータに衝突した際の衝撃力によって発生する微振動や、本体ケースやカプラの摩耗が進んで内部に塵埃が侵入することによるブラシと抵抗素子との間の摺動部摩耗、それによって生ずる接触不良が考えられる。さらに、ポテンショメータの作動片が衝撃力によって変形して正確な層厚の検出が不能となる作動不良が考えられる。そのため、本発明は具体的には、ポテンショメータやその回転軸、或いは作動片に処理物が直接的に衝突しないように保護することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために第1に、走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に掻込リール、刈刃、オーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を設ける汎用コンバインおいて、前記脱穀部はフィーダによって搬送されてきた穀稈を投入する扱室と、扱室の下方に設ける選別室とを備え、前記扱室に設けた扱胴と受網によって穀稈を脱粒させ、前記受網から漏下した処理物を選別室に設けた揺動選別体とファンの選別風によって穀粒と塵埃に選別するように構成すると共に、前記揺動選別体上に落下した処理物の有無又は層厚を層厚センサで検出し、この検出結果に基づいて制御装置が選別制御、或いは選別状態の報知を行うように構成し、前記層厚センサは、ポテンショメータの回転軸に取り付けた作動片の回動角度によって処理物の有無又は層厚を検出するように受網と揺動選別体との間に設け、また、前記受網から漏下した処理物がポテンショメータとその回転軸に直接的に衝突しないように、その上方側を少なくとも保護した状態で配設する
にあたり、前記層厚センサの上方に保護カバーを設け、該保護カバーにより層厚センサの上方側を覆って処理物が直接的に層厚センサに衝突しないようにし、前記層厚センサの作動片を垂下した検出姿勢と回動させて上方に持ち上げた退避状態で保持した格納姿勢に変更可能に構成すると共に、前記保護カバーを作動片の検出姿勢のみならず格納姿勢においても、その上方側を覆う幅と長さを備えるものとすることを特徴とする。
【0009】
本発明は、第2に
、層厚センサと保護カバーを扱室の受網を取り付ける下部フレームに取り付けると共に、上記保護カバーを受網との間に所定の隙間をもって配設することを特徴とする。そして、本発明は、第
3に、保護カバーを層厚センサを取り付けるブラケットに一体的に形成すると共に、前記層厚センサを扱室の受網を取り付ける下部フレームの側面にブラケットを介して取り付け、前記保護カバーと下部フレームとブラケットによって層厚センサの上方側、前方側、及び側方側を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汎用コンバインによれば、揺動選別体上に落下した処理物の有無又は層厚を検出する層厚センサは、ポテンショメータの回転軸に取り付けた作動片の回動角度によって処理物の有無又は層厚を検出するように受網と揺動選別体との間に設け、また、受網から漏下した処理物がポテンショメータとその回転軸に直接的に衝突しないように、その上方側を少なくとも保護した状態で配設するから、ポテンショメータやその回転軸に受網から漏下して揺動選別体上に落下する処理物が直接的に衝突することがなく、ポテンショメータに処理物が衝突して発生する微振動や塵埃の侵入に起因したブラシと抵抗素子との間の摺動部摩耗、それによって生ずる接触不良によるポテンショメータの故障を防止することができ、層厚センサSの寿命を延ばして長期に亘って揺動選別体上の処理物の層厚を精度良く検出することができる。
【0011】
また、本発明の汎用コンバインによれば、層厚センサの上方に保護カバーを設け、該保護カバーにより層厚センサの上方側を覆って処理物が直接的に層厚センサに衝突しないようにすることにより、層厚センサを処理物の有無又は層厚を正確に検出できるように揺動選別体上の受網との間に設けても、保護カバーによって層厚センサの上方側を簡単に覆うことができ、層厚センサに処理物が直接的に衝突したり、処理物が回転軸等に巻き付いたり、或いは作動片が衝撃力によって変形する、といったことを効果的に防止することができる。
【0012】
さらに、本発明の汎用コンバインによれば、層厚センサの
作動片を垂下した検出姿勢と回動させて上方に持ち上げた退避状態で保持した格納姿勢に変更可能に構成すると共に、保護カバーを作動片の検出姿勢のみならず格納姿勢においても、その上方側を覆う幅と長さを備えるものとすることにより、層厚センサを使用しない場合や揺動選別体を引き出してメンテナンスを行う場合に作動片を格納姿勢に変更することにより、揺動選別体上の処理物の後送を作動片が妨げたり、処理物が作動片に巻き付いたり、或いは揺動選別体の接当によって層厚センサが損傷するといった不具合を防止することができ、しかも、格納姿勢においても作動片は保護カバーによって覆われているから、作動片に処理物が衝突してポテンショメータに間接的に振動を与えたり、衝撃力によって変形することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の汎用コンバインによれば、層厚センサと保護カバーを扱室の受網を取り付ける下部フレームに取り付けると共に、上記保護カバーを受網との間に所定の隙間をもって配設することにより、層厚センサと保護カバーを取り付けるためのステー等を別途、設ける必要がなく、層厚センサを揺動選別体の左右方向の中央寄りの処理物の層厚を検出するための最適な位置に設けることができる。また、受網から漏下する処理物が保護カバー上方の隙間を通って保護カバーの周囲に分散され、その後に揺動選別体上に落下するから、受網からの処理物の漏下を保護カバーが阻害することがなく、必要な受網の漏下面積を十分に確保することができる。
【0014】
そして、本発明の汎用コンバインによれば、保護カバーを層厚センサを取り付けるブラケットに一体的に形成すると共に、層厚センサを扱室の受網を取り付ける下部フレームの側面にブラケットを介して取り付け、保護カバーと下部フレームとブラケットによって層厚センサの上方側、前方側、及び側方側を覆うから、保護カバーとブラケットを別々に設ける場合に比較して、部品点数を少なくして、その管理費用、並びに保護カバーとブラケットの取り付け工数を削減でき、しかも、下部フレームに取り付ける際のボルト等の取付け部品数を少なくしてコストダウンを図ることができる。また、保護カバーと下部フレームとブラケットを有効に利用して、層厚センサの上方側、前方側、及び側方側を覆うことができるから、層厚センサの故障、並びに処理物の巻き付き等を防止して、能率的に作物の収穫作業を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように汎用コンバインは、左右のクローラ式走行装置1と走行装置1のトラックフレーム2の上方に設ける四角枠形状の機体フレーム3によって機体が構成され、機体フレーム3に対して左右の走行装置1は、図示しない姿勢制御用の油圧シリンダによって昇降自在に取り付けられている。また、機体フレーム3の進行方向左側には作物の脱穀及び選別処理を行う脱穀部4を設け、右側には操縦部5と穀粒を蓄えるグレンタンク6を前後に設けている。さらに、脱穀部4と操縦部5の前方には作物を刈取って脱穀部4に搬送するヘッダ部7を設けている。なお、操縦部5とグレンタンク6の間にはエンジンを搭載し、エンジンはクローラ式走行装置1、脱穀部4、ヘッダ部7等を駆動する動力源となる。
【0017】
ここで、各部の構成をより詳細に説明すると、機体の前方側に設けるヘッダ部7は、フィーダハウス8とオーガーフレーム9とリールフレーム10を一体的に連結して構成している。この内、オーガーフレーム9には、鉄板を湾曲させて形成するプラットホーム11を設け、プラットホーム11上には、左右方向に延びる円柱状のオーガ12(プラットホームオーガ)を回転駆動可能に軸架している。また、オーガーフレーム9の前部には、左右のデバイダ13とレシプロ式の刈刃14を設けている。さらに、箱枠状に形成したフィーダハウス8内には、駆動軸15に取り付けた後部の駆動スプロケット16と前部のドラム17間に左右の搬送チェン18を巻回すると共に、左右の搬送チェン18間に所定間隔を有して複数のスラット19を横架したフィーダFを設けている。
【0018】
また、リールフレーム10には、掻込リールRを設けており、掻込リールRはリールフレーム10の左右先端部に回転自在に軸支した駆動軸と、この駆動軸と一体回転する側面視多角形状(実施例では6角形状)の左右の回転支持体20とを備えている。さらに、左右の回転支持体20の頂点部には、左右方向に伸延する複数のタイン取付け杆21が回転自在に架設されていて、各タイン取付け杆21には所定間隔毎にバネ式のタイン22が垂下状に取り付けられている。そして、上記回転支持体20の一方の横外側には、上記駆動軸の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転する姿勢保持用回転体23が設けられ、姿勢保持用回転体23の各頂点に設けた枢支体24とタイン取付け杆21の一側端とをリンクを介して連結することにより、タイン22が回転支持体20の回転にかかわらず常時下方を向くように姿勢保持される。
【0019】
なお、リールフレーム10は、オーガーフレーム9の上部に回動自在に枢支した左右の揺動アーム25の先端に後部が回動自在に枢支され、フィーダハウス8に一端を取り付けた前後移動用の油圧シリンダ26を伸縮作動させることによって、掻込リールRを揺動アーム25を介してオーガーフレーム9に対して前後に位置調節することができる。また、リールフレーム10の中ほどとオーガーフレーム9との間には、昇降用の油圧シリンダ27が設けてあり、この油圧シリンダ27を伸縮作動させることによって、掻込リールRをオーガーフレーム9に対して上下に位置調節することができる。
【0020】
そして、以上のように構成するヘッダ部7は、前記フィーダFの駆動軸15を中心として機体フレーム3の前部に回動自在に支承されると共に、フィーダハウス8と機体フレーム3との間に設けた昇降用油圧シリンダ28の伸縮作動によって、ヘッダ部7の前部側を下降させた作業状態と上昇させた非作業状態に姿勢変更することができる。さらに、エンジンから図示しない脱穀クラッチ及び刈取クラッチを介して、フィーダFの駆動軸15に伝達された動力は、フィーダFに伝達されて搬送チェン18が駆動されると共に、駆動軸15から更に図示しないスプロケット、チェン、刈刃・リールクラッチ、無段変速装置等の伝動装置を介して、プラットホームオーガ12、刈刃14、掻込リールRに伝達されて、これによりヘッダ部7の各部は駆動される。
【0021】
従って、ヘッダ部7を下降させた作業状態として機体を走行させると、圃場の植立穀稈が左右のデバイダ13によって刈取対象と非刈取対象とに分草され、その内、刈取対象の植立穀稈が掻込リールRによってプラットホーム11内に掻き込まれながら刈刃14で刈取られる。また、プラットホーム11内に掻き込まれた穀稈は、プラットホームオーガ12によってフィーダハウス8の前方に横送りされ、さらに、フィーダハウス8に横送りされた穀稈は、搬送チェン18に取り付けたスラット19に係止されながらフィーダハウス8の下部を通過して、刈取られた穀稈の全体が脱穀部4に投入される。
【0022】
なお、ヘッダ部7には、リールフレーム10の前端に前照灯29が取り付けられていると共に、方向指示器30とバックミラー31がオーガーフレーム9から立設したステー32に取り付けられている。また、33はプラットホーム11の側方を覆うカバー、34は掻込リールRの伝動部を覆うカバーである。さらに、フィーダハウス8の後部側の側方には、機体フレーム3からハシゴ35を立設している。
【0023】
また、脱穀部4は、ヒンジを介して上方に開閉自在なロータカバー36と、側方に開閉自在なロータサイドカバー37と、着脱自在な脱穀カバー(前カバー38、後カバー39)によって上方及び左側方を覆い、後方は前後に開閉自在な排塵カバー40で覆っている。さらに、グレンタンク6の後方には、グレンタンク6に貯留した穀粒を機外に排出するオーガー41を設けている。そして、操縦部5には座席42と、座席42の前方に設けたフロントパネル43と、フロントパネル43から突出するマルチステアリングレバー44(ヘッダ部7の昇降と機体の操向を行う)と、座席42の側方に設けたサイドパネル45と、サイドパネル45に設けた静油圧式無段変速装置を操作する走行変速レバー46等を設ける他、メータパネルやモニタ、自動制御及び手動制御用のスイッチやボリューム、各種の操作レバー等の操作具を集中して設けている。
【0024】
次に、脱穀部4の詳細について説明すると、
図2及び
図3に示すように脱穀部4はフィーダFによって搬送されてきた穀稈が投入される扱室47と、扱室47の下側に形成された選別室48とを備える。この内、扱室47内には機体の前後方向軸芯周りに回転する扱胴Rが軸架してあり、この扱胴Rは、その前部が円錐状で後部が円筒状に形成したロータ49と、ロータ49の外周に取り付けた螺旋状になしたスクリュー50と、スクリュー50の外周に所定ピッチで取り付けた複数の超硬扱歯51と、ロータ49の終端部外周に取り付けた送塵体52を備えている。また、扱胴Rの下方には、前記フィーダFによって搬送されてきた穀稈を受け入れる入口受板53が設けられ、さらに、入口受板53に引き続いて扱胴Rの下部周辺を覆うように円弧状の受網54が着脱可能に周設されている。
【0025】
上記受網54は、扱室47の左右方向と前後方向において各二分割して、合わせて4枚の単体としての受網で構成している。また、各受網54は
図10及び
図11にも示すように、網枠54aと複数の網押え54bにクリンプ網54cが取り付けられ、網枠54aの上端の二箇所に設けたピン54dを扱室47の上部フレーム55,56に設けた挿入孔に差し込むと共に、網枠54aの下端を扱室47の下部フレーム57に複数のボルト58で固定することにより、各受網54が扱室47に取り付けられる。さらに、扱室47の上部を覆う開閉自在なロータカバー36には、ロータ49の上側に臨む6枚の送塵弁59が枢着してあり、この送塵弁59は下面が円弧状のプレートで構成され、ロータ49の回転軸芯に対する角度を個別に設定可能に構成され、或いは脱穀負荷により送塵弁59の角度を自動調節することによって、脱穀負荷を適度に逃がしながら穀稈を後方にスムーズに搬送することができる。そして、扱室47に投入された穀稈はスクリュー50と送塵弁59によって機体後方側に揉み解されながら搬送され、また、スクリュー50と超硬扱歯51によってロータ49の外周上を周回する間に受網54に擦り付けられて脱粒処理が行われる。
【0026】
また、扱室47の下側に形成した選別室48には揺動選別体60が設けられ、この揺動選別体60は、その前後をリンク61aと駆動リンク61b等で構成される揺動機構によって前後揺動自在に支持されている。また、揺動選別体60の下方には、揺動選別体60に向かう選別風を発生させる唐箕ファン62とターボファン63を設けている。上記揺動選別体60は、上下二段構造となっており、上段のフィードパン64、チャフシーブ65、ストローラック66と、下段のグレンシーブ67、チャフシーブ68、ストローラック69とからなり、これらが前後に揺動することで処理物が比重選別される。なお、揺動選別体60は上記揺動機構との連結を解除することにより、扱室47の側壁に沿って後方に引き出してメンテナンスを行うことができるように構成してある。
【0027】
さらに、前記フィードパン64は波板状の移送板であって、受網54から漏下して落下する処理物を受け止めて後方に向けて移送する。また、チャフシーブ65,68はそれぞれ前後方向に所定間隔を存して並設される複数のフィン65a,68aからなり、上段のチャフシーブ65のフィン65aは図示しないフィン駆動モータによって開度が変更可能に構成され、下段のチャフシーブ68のフィン68aは所定の開度で固定されている。そして、フィードパン64の後端に達した処理物は上段のチャフシーブ65上に送られて、唐箕ファン62の選別風によって風選されながら漏下選別され、更に所定の目合の網からなるグレンシーブ67を漏下した穀粒は、一番流板70に流下案内されて一番物として一番螺旋71上に落下する。また、上段のストローラック66と下段のチャフシーブ68及びストローラック69上に移送された処理物は、唐箕ファン62やターボファン63の選別風によって風選されると共に、これらを漏下した二番物は二番流板72に流下案内されて二番螺旋73上に落下する。
【0028】
そして、ストローラック66,69の終端まで移送された藁屑等の塵埃は、受網54の後端部まで搬送された排藁等と共に、機体後部に設けた排出口74から機外に排出される。この場合、藁屑及び排藁等は選別室48の後端部に設けた流し板75に複数固着した排塵ガイド板76によって機体中央側に放出案内されるため、未刈地側に藁屑等が排出されることが防止され、スムーズに刈取り作業を行うことができ、しかも、上記排出口74は刈取り作業を行わないときには排塵カバー40を閉じて閉鎖しておくことができる。なお、揺動選別体60の上段のフィードパン64とチャフシーブ65上には、寄せ板77a,77b,77c,77dが
図4に示すように左右両側に各4枚設けてあり、これら寄せ板77a,77b,77c,77dは、後端側ほど揺動選別体60の左右中央寄りになるように傾斜させて配置し、揺動選別体60の左右端近くに滞留しがちな処理物を中央側に寄せて、処理物が揺動選別体60上に均一な層となるように分散させることにより選別性能を高めるものである。
【0029】
また、一番螺旋71によって横送りされた穀粒は、図示しないバケットコンベアと上方横螺旋によってグレンタンク6内に揚送されると共に、二番螺旋73によって横送りされた二番物は、図示しないスラットコンベアと還元横螺旋78によって扱室47の前部に還元して、再度脱粒処理を行うか、又は還元横螺旋筒79の中途に設けた蓋80を開いて、二番物をフィードパン64上に再び落下させて、再選別処理を行うことができる。
【0030】
そして、以上のように構成する脱穀部4は、エンジンから図示しない脱穀クラッチを介してカウンター軸に動力が伝達され、また、カウンター軸の一端部からプーリ、ベルト、及び歯車を介して還元横螺旋78が駆動され、同じく扱胴Rがカウンター軸から変速装置と後部に設けたプーリ81を介して回転駆動され、更にカウンター軸の他端部からプーリ、ベルトを介して唐箕ファン62と二番螺旋73が、また、二番螺旋軸から一番螺旋71とターボファン63と揺動選別体60の揺動機構が駆動され、さらに、二番螺旋軸からスラットコンベアが、一番螺旋軸からバケットコンベアと上方横螺旋が駆動され、ヘッダ部7で刈取られて搬送されてきた穀稈を脱穀・選別処理する。
【0031】
次に、本発明の層厚センサS、及びその取付構造について説明すると、
図5乃至
図9に示すように層厚センサSは、回転角度を検出して電圧に変換するポテンショメータ(ロータリーポテンショメータ)82と、その回転軸82aにナット83で取り付ける作動片84から構成している。上記作動片84は、回転軸82aに取り付ける基部84aから略直角に折曲すると共に、その先端部を左右方向に広幅で後方に向けて湾曲させたそり状の接当面84bを形成している。また、層厚センサSは、自らを取り付けるブラケット85を備えている。
【0032】
上記ブラケット85は、後部寄りに設けたセンサ取付部85aと、センサ取付部85aから略直角に折曲した前方保護部85bと、前方保護部85bから更に略直角に折曲してブラケット85自体を検出箇所に取り付ける取付部85cとを備えたプレートから構成し、上記センサ取付部85aには、ポテンショメータ82の本体ケース82bの端面に形成した位置決め筒部82cに嵌合する孔と、該孔を挟んで上下に設けたボルト挿通孔と、後述するストッパ86を係止する突起85dを備える。また、前方保護部85bはポテンショメータ82の本体ケース82bの前方側を略覆うように広幅にしている。さらに、取付部85cにはボルト挿通孔を穿設している。そして、ブラケット85に層厚センサSを取り付ける際には、ブラケット85のセンサ取付部85aに設けた孔にポテンショメータ82の位置決め筒部82cを嵌めて、ポテンショメータ82の左右のフランジ82dに設けた長孔とボルト挿通孔にボルト87を通してナット88で固定する。
【0033】
また、層厚センサSは、その上方側を覆う保護カバー89を備える。この保護カバー89は、ポテンショメータ82の本体ケース82b、本体ケース82bの側面に一体に突設したカプラ82e、このカプラ82eに結合する相手側カプラ90、回転軸82a、及び作動片84の回動領域の上方側全域を覆う幅と長さを有し、回転軸82aの上方を頂点89aとして折曲することにより前後に下降傾斜面89b,89cを備える。また、保護カバー89の前部側の端面を折曲してストッパ86の取付部89dを設けている。なお、保護カバー89は、前記ブラケット85のセンサ取付部85aと前方保護部85bの上端面に溶接して一体的に形成している。
【0034】
さらに、層厚センサSは、上記保護カバー89の取付部89dにボルト91とナット92を用いてストッパ86を取り付けている。上記ストッパ86はねじりコイルばねで構成され、ばねの一端86aは保護カバー89の下面で受けさせ、ばねの多端86bは、その先端を折曲してストッパの作用部86cを構成する。従って、ストッパ86の作用部86cの先端側を、前記ブラケット85の突起85dに係止すると、作用部86cは作動片84の垂下位置から前方側への回動を作動片84の接当面84bとの当接によって阻止し、作動片84の回動初期位置を設定する。また、ブラケット85の突起85dからストッパ86の作用部86cの先端側を外すと、ねじりモーメントによってストッパ86の作用部86cは後方に回動して作動片84を上方に持ち上げ、それにより作動片84を検出姿勢から格納(退避)姿勢に変更する。
【0035】
そして、以上のように構成する層厚センサSは、
図2乃至
図11に示すように脱穀部4の揺動選別体60上を後方に向かって移送される処理物に作動片84が接当して、その回動角度によって処理物の有無、或いは処理物の量(層厚)を検出することができるように受網54の下方に配置している。具体的には、受網54を取り付けてこれを支持する下部フレーム57は、揺動選別体60の始端から終端に亘って延設され、また、揺動選別体60の左右方向略中央の上方に位置し、この下部フレーム57に層厚センサSを取り付けることにより、層厚センサSを取り付けるための専用のステー等を不要にしてコストダウンを図っている。より詳細には、層厚センサSを取り付けたブラケット85の取付部85cを、溝形鋼とZ形鋼を突き合わせて角パイプ状に形成した下部フレーム57の一方の側面に重ね合わせてボルト93で取り付け、また、カプラ90から延びるワイヤーハーネス94を下部フレーム57に形成した開口57aから内部に通して、終端側を扱室47後端の扱室後部フレーム95に取り付けたクランプ96を用いて、脱穀部4外に設けたマイクロコンピューターユニットまで導いている。
【0036】
これにより、層厚センサSは、前記保護カバー89によってポテンショメータ82(本体ケース82b、カプラ82e,90、回転軸82a)及び作動片84の回動領域の上方側全域が覆われ、ポテンショメータ82の本体ケース82bの前面側がブラケット85の前方保護部85bによって覆われ、ポテンショメータ82の左右方向の一側が下部フレーム57の側面によって覆われ、また、ポテンショメータ82の本体ケース82bの他側がブラケット85のセンサ取付部85aによって覆われ、しかも、ワイヤーハーネス94が下部フレーム57の内部を通して配索される。従って、層厚センサSは下方及び後方を除いて周囲をこれらによって保護され、受網54から漏下して揺動選別体60上に落下する処理物との直接的な衝突が未然に防止されるから、ポテンショメータ82の微振動や塵埃の侵入に起因するブラシと抵抗素子との間の摺動部摩耗、それによって生ずる接触不良によるポテンショメータ82の故障や、作動片84の変形による作動不良が防止され、層厚センサSの寿命を延ばすことができる。
【0037】
なお、層厚センサSの上方を覆う保護カバー89は、受網54の下方に所定の隙間(空間)をもって設けているから、保護カバー89の上方の受網54から漏下する処理物がこの隙間を通って保護カバー89の周囲に分散されて揺動選別体60上に落下するから、受網54の漏下面積を保護カバー89によって減少させることが防止されると共に、保護カバー89の下降傾斜面89b,89cによって処理物の滑落を推進して堆積を防止することができる。また、層厚センサSは、揺動選別体60の左右方向の中央寄りに設けられ、寄せ板77a,77b,77c,77dによって均一な層となった処理物を検出対象とするから、処理物の層厚を正確に検出することができる。
【0038】
さらに、実施例では層厚センサSを揺動選別体60上に4個設けている。即ち、第一のセンサS1はフィードパン64の後部寄りに、第二のセンサS2と第三のセンサS3はチャフシーブ65の前部寄りと後部寄りに、また、第四のセンサS4はストローラック66の後部寄りに設けている。そして、これらのセンサS1〜S4は、何れも揺動選別体60上を後送される処理物によって揺動されて、処理物の有無及び各地点での層厚を検出し、図示しないマイクロコンピューターユニットで構成する制御装置に信号を送る。さらに、制御装置はセンサS1〜S4の検出結果に基づきチャフシーブ65のフィン65aの角度を変更するようにフィン駆動モータに指令し、適切に揺動選別を行える処理物の層厚になるように自動制御する(チャフシーブ制御)。また、制御装置は上記自動制御できる範囲を超えて揺動選別体60上に処理物が投入された場合には、脱穀部4の詰まりや脱穀・選別損失が増大するので、これを警報ブザー又はランプで報知したり、エンジンを停止して刈取り作業を中断させる制御を行う(オーバーフロー制御)。
【0039】
即ち、チャフシーブ制御では、例えば第一のセンサS1が処理物の無い状態から有る状態に変わった刈り始めであることを検出すると、チャフシーブ65のフィン65aの角度を予め設定した初期開度になるように制御が行われる。また、刈取り中において第三のセンサS3が検出した処理物の層厚が適切に揺動選別を行える所定層厚の範囲内であれば、フィン65aの開度を維持し、層厚が薄い場合は開度を下げ、逆に層厚が厚い場合は開度を上げ、さらに、第二のセンサS2が検出した処理物の層厚が所定判定値以上であれば開度を上げ、また、所定判定値未満であれば開度を維持する制御が行われる。そして、オーバーフロー制御では、フィン65aの開度が最大となってフィン65aが全開されているにも拘らず、第四のセンサS4が検出した処理物の層厚が所定判定値以上であれば、脱穀・選別損失が増大する虞がある旨を警報ブザーとランプを用いて報知し、さらに、この状態が一定時間以上続いた場合にはエンジンを停止する制御が行われる。
【0040】
なお、前記チャフシーブ制御は稲・麦の刈取りで専ら使用され、その他の作物の刈取りの際にはオーバーフロー制御のみが使用される。また、これらの制御を全く行わず手動でチャフシーブ65のフィン65aの角度を調節することも可能であり、その場合は層厚センサSは不要となり、そのまま検出姿勢にしておくこともできるが、層厚センサSの作動片84が処理物の後送を妨げたり、処理物が層厚センサSに巻き付き層厚センサSが損傷する虞がある。従って、層厚センサSを使用しない場合は、ロータサイドカバー37を開くと受網54の側方が解放されてストッパ86に手が届くので、ブラケット85の突起85dとの係合を解除して層厚センサSの作動片84を検出姿勢から格納(退避)姿勢に変更しておくことが望ましい。同様に揺動選別体60をメンテナンスのために後方に引き出したり元の位置に戻すときに、揺動選別体60が層厚センサSに接当して損傷する虞があるが、この場合も層厚センサSの作動片84を検出姿勢から格納(退避)姿勢に変更しておくことが望ましい。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の層厚センサSは受網54の下部フレーム57に取り付ける替わりに、揺動選別体60の側枠からステーを介して取り付けてもよく、層厚センサSの上方を覆う保護カバー89はブラケット85と別体としてもよく、また、受網54の網枠54aを部分的にクリンプ網54c側に張り出させて保護カバー89としての作用をもたせてもよい。さらに、層厚センサSは4個用いてチャフシーブ制御及びオーバーフロー制御を行うように構成したが、各センサS1〜S2の役割を他のセンサで兼用させてセンサの数を減らしたり、個々のセンサS1〜S2の取り付け箇所を揺動選別体60上において変更することも考えられ、本発明は、前記実施形態に限定するものではない。