(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイアフラムは、ゴム成分として、エチレン−プロピレン−ジエン、フッ素系ゴム、水素化ニトリルゴム、ブチレン系ゴム又はシリコーンゴムの1種以上を含んでいる請求項1乃至4のいずれかに記載の弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、小型化を図りつつ、ダイアフラムのシール能力と耐久性とを両立可能とする弁装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流体が流れるポートを少なくとも一つ具えた弁室を区画する弁本体と、前記ポートを開閉する弁体と、前記弁体を駆動して前記ポートを開閉する駆動手段とを備え、前記ポートは、周囲に弁座が形成された開口を有し、前記弁体は、前記弁室を覆うように配され、かつ前記弁座に着座又は離間して前記ポートを開閉するダイアフラムを有する弁装置であって、前記ダイアフラムは、JIS−K6253のデュロメータA硬さがA50〜A85の弾性材料からなり、前記着座中の前記ダイアフラムの前記弁座に対する圧力が0.5〜1.0N/mm
2であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る前記弁装置において、前記ダイアフラムは、JIS−K6253のデュロメータA硬さがA60〜A80であることが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記弁装置において、前記ダイアフラムは、ゴム成分として、エチレン−プロピレン−ジエン、フッ素系ゴム、水素化ニトリルゴム、ブチレン系ゴム又はシリコーンゴムの1種以上を含んでいることが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記弁装置において、前記ダイアフラムは、充填剤として、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、タルク又はカーボンブラックの1種以上を含んでいることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記弁装置において、前記ポートは、前記弁室に流体を流入させる流入ポートと、前記弁室から流体を流出させる流出ポートとを有し、前記ダイアフラムは、前記流入ポート又は前記流出ポートのうち、少なくとも一方を開閉することが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記弁装置において、前記ポートは、前記弁室に流体を流入させる流入ポートと、前記弁室から流体を流出させる流出ポートとを有し、前記流出ポートは、第1流出ポート及び第2流出ポートの2系統が配され前記ダイアフラムは、第1流出ポート及び第2流出ポートを開閉することが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記弁装置において、前記ダイアフラムは、前記第1流出ポートと前記第2流出ポートとを交互に開閉するものであり、前記第1流出ポートの弁座に着座中の前記ダイアフラムの前記圧力と、前記第2流出ポートの弁座に着座中の前記ダイアフラムの前記圧力との差が0.40N/mm
2以下であることが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記弁装置において、前記弁体は、前記駆動手段に駆動されて揺動し、前記ポートを開閉することが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記弁装置において、前記弁体は、軸部材によって回動自在に支持されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の弁装置のダイアフラムは、JIS−K6253のデュロメータA硬さがA50〜A85の弾性材料からなり、着座中のダイアフラムの弁座に対する圧力が0.5〜1.0N/mm
2である。このように、ダイアフラムの硬度と着座圧力とが改善されることにより、着座時におけるダイアフラムの過度な変形が抑制され、ダイアフラムの耐久性を高めることができる。また、ダイアフラムは、弁座に対して適度に変形し、十分なシール能力が得られる。さらには、過度に大きな荷重でダイアフラムを押圧する必要がないため、駆動手段を小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の弁装置1の断面図である。
図1に示されるように、本実施形態の弁装置1は、流体が流れるポートを具え、弁室を区画する弁本体2と、ポートを開閉する弁体3と、弁体3を駆動してポートを開閉する駆動手段4とを有している。
【0021】
弁本体2は、流路ブロック20とサブブロック5とを具えている。流路ブロック20は、例えば、樹脂材料によって形成され、流体が流れる空間である弁室21を構成する凹部22と、弁室21と連通する流入ポート23(Commonポート)、NC(Normally Close)流出ポート24(第1流出ポート)及びNO(Normally Open)流出ポート25(第2流出ポート)と、弁体3を保持する保持面26とを有する。
図1に示されるように、流入ポート23は、常時開放されており、流入ポート23から弁室21内に流体が供給される。通常時においては、NC流出ポート24は閉鎖され、NO流出ポート25は開放されており、流入ポート23から弁室21に流入した流体は、矢印Aに沿って流れ、NO流出ポート25から流出される。
【0022】
弁体3は、弁室21を覆うように配されたダイアフラム6と、弁本体2に対して揺動可能に設けられた揺動部材7とを有している。
【0023】
ダイアフラム6は、例えば、ゴム材料によって形成されている。ダイアフラム6は、凹部22を覆うように弁本体2に装着されることにより、凹部22との間に弁室21を形成する。ダイアフラム6は、外側に延出された外周部6aを有する。
【0024】
揺動部材7は、ダイアフラム6と一体化されている。揺動部材7は、揺動部材7を回動自在に支持する軸部材71を有する。揺動部材7は、例えば、樹脂材料によって形成され、流入ポート23の上方に配設されている。軸部材71は、例えば、金属材料によって形成されている。軸部材71は、流入ポート23の上方において、流入ポート23に略直交して設けられ、その両端は、サブブロック5に支持されている。
【0025】
軸部材71を回転軸として揺動部材7がシーソー状に回動することにより、NC流出ポート24又はNO流出ポート25のうちいずれか一方のポートが閉鎖され、他方のポートが開放される。これにより、各ポートが交互に開閉される。
【0026】
駆動手段4は、揺動部材7を駆動する弁駆動部40と、弁駆動部40を支持するフレーム8とを有している。駆動手段4は、揺動部材7を押圧することにより、ダイアフラム6をNC流出ポート24又はNO流出ポート25の弁座に着座又は離間させてポートを開閉する。本実施形態に係る弁装置1は、駆動手段4が発生する電磁力によってダイアフラム6を駆動し、ポートを開閉するいわゆる電磁弁である。
【0027】
サブブロック5は、例えば、樹脂材料によって形成され、揺動部材7等を収容する収容部51と、ダイアフラム6を保持面26に押圧する押圧部52とを有する。サブブロック5は、流路ブロック20の凹部22が形成されている合わせ面27に装着され、ねじ(図示せず)等により流路ブロック20に固着される。ダイアフラム6の外周部6aは、流路ブロック20の保持面26とサブブロック5の押圧部52とによって挟み込まれて保持・拘束されることにより流路ブロック20に密着する。これにより、弁室21が密閉され、流路ブロック20の外部への流体のリークが防止される。
【0028】
サブブロック5の上部には、フレーム8が設けられている。フレーム8は、弁駆動部40を収容する。
【0029】
弁駆動部40は、第1プランジャー(可動鉄心)41と、第2プランジャー42と、第1コイルばね43と、第2コイルばね44と、ソレノイドコイル45と、固定鉄心46とを有する。第1プランジャー41は、NC流出ポート24の上方に配設されている。第1プランジャー41は、ソレノイドコイル45が巻回されるコイルボビン47の内部に挿入されている。固定鉄心46には、第1コイルばね43が装填される凹部46aが形成されている。第1コイルばね43の一端は、固定鉄心46の凹部46aの底と当接し、他端は、第1プランジャー41の天面と当接する。第1コイルばね43は、第1プランジャー41を揺動部材7の第1当接部7aの側に押し下げ、これに伴い、第1プランジャー41の先端部41bが、揺動部材7の第1当接部7aを押圧する。第1コイルばね43のばね荷重は、第2コイルばね44のばね荷重よりも大きく設定されている。
【0030】
第2プランジャー42は、NO流出ポート25の上方に配設されている。第2プランジャー42には、第2コイルばね44が挿入される円筒部42aと、円筒部42aの端縁に形成された鍔状の先端部42bとが形成されている。第2コイルばね44の一端は、第2プランジャー42の先端部42bと当接し、他端は、サブブロック5の凹部の底と当接する。第2コイルばね44は、第2プランジャー42を揺動部材7の第2当接部7bの側に押し下げ、これに伴い、第2プランジャー42の先端部42bが、揺動部材7の当接部7bを押圧する。
【0031】
ソレノイドコイル45は、筒状のコイルボビン47の周囲に巻回される。ソレノイドコイル45は、通電により電磁力を発生する。ソレノイドコイル45には、第1コイルばね43の荷重と第2コイルばね44の荷重の差よりも大きな電磁力を発生するように、所定の電流が流される。ソレノイドコイル45への給電等を行うためのケーブル45aは、フレーム8の内部に引き込まれている。第1プランジャー41、第1コイルばね43、ソレノイドコイル45、固定鉄心46及びコイルボビン47は、フレーム8に収容されている。ソレノイドコイル45、固定鉄心46及びコイルボビン47は、フレーム8に固定されている。
【0032】
以下、弁装置1の開閉動作が説明される。既に述べたように、第1コイルばね43のばね荷重は、第2コイルばね44のばね荷重よりも大きいので、第1コイルばね43が発生する弾性力は、第2コイルばね44が発生する弾性力よりも大きい。そのため、通常時においては、ダイアフラム6の姿勢は、
図1に示されるように、図中反時計回りに回動された姿勢で維持され、NC流出ポート24が閉鎖され、NO流出ポート25が開放される。これに伴い、矢印Aにて示されるように、流入ポート23から弁室21に流れ込んだ流体は、NO流出ポート25から排出される。
【0033】
図2は、ソレノイドコイル45に通電された状態の弁装置1を示している。ソレノイドコイル45に所定の電流が流れると、その電磁力によって第1プランジャー41が第1コイルばね43を圧縮する方向に移動する。このとき、第2プランジャー42の先端部42bが揺動部材7の第2当接部7bを押圧しているので、ダイアフラム6が時計回りに回動され、NO流出ポート25が閉鎖され、NC流出ポート24が開放される。これに伴い、矢印Bにて示されるように、流入ポート23から弁室21に流れ込んだ流体は、NC流出ポート24から排出される。
【0034】
図3及び
図4は、流路ブロック20を示している。流路ブロック20には、弁室21を区画する凹部22が形成されている。凹部22は、サブブロック5が接合される合わせ面27から凹んで形成されている。
図4に示されるように、合わせ面27とは反対側の裏面からは、NC流出ニップル29b、流入ニップル29a及びNO流出ニップル29cが突出して形成されている。流入ポート23は、凹部22から流入ニップル29aを貫通して形成されている。NC流出ポート24は、凹部22からNC流出ニップル29bを、NO流出ポート25は、凹部22からNO流出ニップル29cをそれぞれ貫通して形成されている。NC流出ポート24、流入ポート23及びNO流出ポート25は、この順番で配列されている。
【0035】
流入ポート23は、凹部22に面して開口する流入開口23aを有している。流入開口23aは、弁室21に連通して形成されている。流入ポート23は、流入開口23aから弁室21に流体を流入させる。NC流出ポート24及びNO流出ポート25も、凹部22に面して開口する流出開口24a、25aを有している。流出開口24a、25aは、弁室21に連通して形成され、NC流出ポート24及びNO流出ポート25は、流出開口24a、25aを介して弁室21から流体を流出させる。
【0036】
NC流出ポート24の流出開口24aには、第1弁座24bが設けられ、NO流出ポート25の流出開口25aには、第2弁座25bが設けられている。第1弁座24b及び第2弁座25bは、ダイアフラム6の側に突出する筒状に形成されている。揺動部材7の揺動に応じてダイアフラム6が第1弁座24b又は第2弁座25bと密着することにより、NC流出ポート24又はNO流出ポート25が閉鎖される。このとき、他方の流出ポートが開放されており、流入ポート23から弁室21に流入した流体は、この開放された流出ポートから弁装置1の外部に排出される。第1弁座24b及び第2弁座25bは、ダイアフラム6の側に突出して形成されているので、ポート閉鎖時における第1弁座24b及び第2弁座25bとダイアフラム6との密閉性が高められる。これにより、NC流出ポート24又はNO流出ポート25が閉鎖されたとき、弁室21からNC流出ポート24又はNO流出ポート25に流体がリークすることを防止しうる。
【0037】
第1弁座24bの先端の座面には、ダイアフラム6の側に隆起する第1隆起部24cが形成されている。第1隆起部24cは、NC流出ポート24の開口側すなわち第1弁座24bの内周部において、周方向に連続して形成されている。第1隆起部24cによって、NC流出ポート24の閉鎖時における第1弁座24bとダイアフラム6との密閉性がより一層高められ、流体のリークが防止される。NO流出ポート25の第2弁座25bについても、同様に、第1隆起部25cが設けられている。
【0038】
保持面26は、凹部22の周縁に設けられている。凹部22の側壁22aを挟んで、保持面26と合わせ面27とは、段違いに形成されている。保持面26の内周部には、ダイアフラム6の側に隆起する第2隆起部26aが形成されている。第2隆起部26aは、周方向に連続して形成されている。第2隆起部26aによって、保持面26とダイアフラム6の外周部6aとの密閉性が高められ、流体のリークが防止される。
【0039】
凹部22の周辺には、流路ブロック20の本体部分20aの略対角状に一対の貫通穴28が形成されている。貫通穴28を貫通するねじによって、流路ブロック20とサブブロック5とが固着される。
【0040】
図5には、ダイアフラム6が装着された揺動部材7が示されている。揺動部材7の中央部には、軸部材71(
図1参照)が挿入される貫通穴7cが設けられている。貫通穴7cは、揺動部材7を水平方向に貫通して形成されている。貫通穴7cは、第1当接部7aと第2当接部7bとの間に設けられ、貫通穴7cから第1当接部7aに至る距離と、貫通穴7cから第2当接部7bに至る距離とは等しい。揺動部材7の下部には、ダイアフラム6が装着されている。ダイアフラム6の外周部6aの内側には、ダイアフラム6において最も肉厚の薄い膜部6bが設けられている。膜部6bは、ダイアフラム6の全周に亘って形成されている。膜部6bのさらに内側には、ポート閉鎖時に第1弁座24b又は第2弁座25bに着座する底面6cが設けられている。揺動部材7の揺動に追従して、ダイアフラム6の膜部6bが弾性変形することにより、流路ブロック20とダイアフラム6との間で弁室21が維持される。
【0041】
本発明にあっては、ダイアフラム6のシール能力と耐久性とを両立させるために、ダイアフラム6を構成する弾性材料の硬度が規定されている。すなわち、ダイアフラム6を構成する弾性材料のJIS−K6253のデュロメータA硬さは、好ましくはA50以上であり、より好ましくはA60以上、さらに好ましくはA65以上であり、好ましくはA85以下であり、より好ましくはA80以下、さらに好ましくはA75以下である。ダイアフラム6を構成する弾性材料の上記デュロメータA硬さがA50未満である場合、第1弁座24b又は第2弁座25bにダイアフラム6の底面6cが着座しているポート閉鎖時において、ダイアフラム6の底面6cの変形が過度に大きくなり、ダイアフラム6を構成する弾性材料の疲労が加速され、ダイアフラム6の寿命が短くなるおそれがある。一方、ダイアフラム6を構成する弾性材料の上記デュロメータA硬さがA85を超える場合、第1弁座24b又は第2弁座25bの外形に沿ってダイアフラム6の底面6cが変形しづらくなり、十分なシール能力が得られないおそれがある。
【0042】
本実施形態においては、例えば、ゴム成分として、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)、フッ素系ゴム(FKM、FPM、FFKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチレン系ゴム(IIR)又はシリコーンゴム(VMQ)の1種以上を含んでいる弾性材料によってダイアフラム6が構成されている。ポリマー主鎖に二重結合を含むゴム材料を用いた場合、長期間にわたる使用の際に、ポリマー主鎖が切断され、ダイアフラム6の耐久性能が維持できなくなるおそれがある。上記ゴム成分の中では、ガスバリア性、耐熱性、耐薬品性及び製造コストの観点から、特にエチレン−プロピレン−ジエンが好ましい。
【0043】
ダイアフラム6は、弾性変形と第1弁座24b又は第2弁座25b等との接触が繰り返される動的に使用される部品であるため、長期間にわたる使用に伴い、徐々に摩耗する。そのため、ダイアフラム6の耐摩耗性を向上させるために、上記弾性材料に充填剤を添加して、硬度を上述した範囲に調整することが望ましい。充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、タルク等の無機充填材又はカーボンブラックの1種以上を含んでいることが望ましい。ダイアフラム6の耐久性の観点から、充填材の量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、好ましくは80重量部以下より好ましくは70重量部以下である。ゴム成分100重量部に対する充填材の量が10重量部未満である場合、耐摩耗性が不十分であり、ダイアフラム6の寿命が短くなる。ゴム成分100重量部に対する充填材の量が80重量部を超えるとダイアフラム6の耐屈曲疲労性が低下し、やはりダイアフラム6の寿命が短くなる。
【0044】
ダイアフラム6の膜部6bの厚さは、0.2〜1.0mmが望ましい。ダイアフラム6の膜部6bの厚さが0.2mm未満である場合、長期間にわたる使用によって膜部6bが破れ、NC流出ポート24又はNO流出ポート25が閉鎖されている状態で、ポートへの流体のリークが生ずるおそれがある。ダイアフラム6の膜部6bの厚さが1.0mmを超える場合、揺動部材7の揺動に必要な力が大きくなるため、ソレノイドコイル45等が大型化するおそれがある。
【0045】
本発明にあっては、ダイアフラム6のシール能力と耐久性とを両立させるために、第1弁座24b又は第2弁座25bに着座中のダイアフラム6の第1弁座24b又は第2弁座25bに対する圧力が規定されている。すなわち、ダイアフラム6の第1弁座24b等に対する圧力は、0.5〜1.0N/mm
2が望ましい。ダイアフラム6の第1弁座24b等に対する圧力が0.5N/mm
2未満である場合、第1弁座24b等の外形に沿ってダイアフラム6の底面6cが変形しづらくなり、十分なシール能力が得られないおそれがある。一方、ダイアフラム6の第1弁座24b等に対する圧力が1.0N/mm
2を超える場合、着座中のダイアフラム6の底面6cの変形が過度に大きくなり、ダイアフラム6を構成する弾性材料の疲労が加速され、ダイアフラム6の寿命が短くなるおそれがある。上記ダイアフラム6の第1弁座24bに対する圧力は、ダイアフラム6が第1弁座24bを押す力をダイアフラム6と第1弁座24bとの接触面積S1で除することにより算出される。同様に、ダイアフラム6の第2弁座25bに対する圧力は、ダイアフラム6が第2弁座25bを押す力をダイアフラム6と第2弁座25bとの接触面積S2で除することにより算出される。
【0046】
NC流出ポート24の第1弁座24bに着座中のダイアフラム6の圧力と、NO流出ポート25の第1弁座25bに着座中のダイアフラム6の圧力との差は、好ましくは0.02N/mm
2以上、より好ましくは0.04N/mm
2以上であり、好ましくは0.40N/mm
2以下、より好ましくは0.2N/mm
2以下である。上述したダイアフラム6の第1弁座24bに対する圧力と、第2弁座25bに対する圧力との差が0.02N/mm
2未満である場合、十分なシール能力が得られないおそれがある。一方、ダイアフラム6の第1弁座24bに対する圧力と、第2弁座25bに対する圧力との差が0.40N/mm
2を超える場合、上記圧力が大きい側のダイアフラム6の摩耗が集中し、ダイアフラム6の寿命が短くなるおそれがある。
【0047】
着座中のダイアフラム6の第1弁座24b又は第2弁座25bに対する圧力を上記の範囲に収めるために、本実施形態においては、弁駆動部40が揺動部材7を介してダイアフラム6に付与する荷重は、以下の範囲内に規定されている。
【0048】
図6には、ダイアフラム6によってNC流出ポート24が閉鎖されている状態の弁装置1の主要部が示されている。ダイアフラム6が第1弁座24bに着座している状態、すなわち、ソレノイドコイル45に第1プランジャー41を上昇させるための電気信号が供給されない場合における、揺動部材7がダイアフラム6の第1弁座24b側を押圧する荷重L1は、好ましくは、2.9N以上、より好ましくは3.2N以上であり、好ましくは、4.0N以下、より好ましくは3.8N以下である。かかる状態においては、第1プランジャー41及び第2プランジャー42の両方が揺動部材7と当接し、第1プランジャー41及び第2プランジャー42によって揺動部材7に伝達される力が打ち消される。従って、揺動部材7がダイアフラム6の第1弁座24b側を押圧する荷重L1は、長さがα1における第1コイルばね43による荷重Lα1と長さがβ1における第2コイルばね44による荷重Lβ1との差によって算出される。揺動部材7がダイアフラム6の第1弁座24b側を押圧する荷重L1が、2.9N未満である場合、第1弁座24b等の外形に沿ってダイアフラム6の底面6cが変形しづらくなり、十分なシール能力が得られないおそれがある。一方、揺動部材7がダイアフラム6の第1弁座24b側を押圧する荷重L1が4.0Nを超える場合、第1弁座24bに着座中のダイアフラム6の底面6cの変形が過度に大きくなり、ダイアフラム6を構成する弾性材料の疲労が加速され、ダイアフラム6の寿命が短くなるおそれがある。
【0049】
さらに、このダイアフラム6によってNC流出ポート24が閉鎖されている状態において、第1コイルばね43単体による荷重は5.8N〜8.0Nが望ましく、第2コイルばね44単体による荷重は2.9N〜4.0Nが望ましい。第1コイルばね43単体による荷重が5.8N未満である場合、及び第2コイルばね44単体による荷重が2.9N未満である場合は、第2弁座25b等の外形に沿ってダイアフラム6の底面6cが変形しづらくなり、十分なシール能力が得られないおそれがある。一方、第1コイルばね43単体による荷重が8.0Nを超える場合、及び第2コイルばね44単体による荷重が4.0Nを超える場合は、ソレノイドコイル45が大型化し、弁装置1の小型化を図ることが困難となる。
【0050】
図7には、ダイアフラム6によってNO流出ポート25が閉鎖されている状態の弁装置1の主要部が示されている。ダイアフラム6が第2弁座25bに着座している状態、すなわち、ソレノイドコイル45に第1プランジャー41を上昇させるための電気信号が供給されている場合における、揺動部材7がダイアフラム6の第2弁座25b側を押圧する荷重L2は、好ましくは、2.4N以上、より好ましくは2.7N以上であり、好ましくは、3.5N以下、より好ましくは3.3N以下である。かかる状態においては、第1プランジャー41は、揺動部材7から離間しているため、第1プランジャー41によって揺動部材7に力が伝達されない。従って、揺動部材7がダイアフラム6の第2弁座25b側を押圧する荷重L2は、長さがβ2における第2コイルばね44及び重力等による荷重Lβ2と等しくなる。揺動部材7がダイアフラム6の第2弁座25b側を押圧する荷重L2が、2.4N未満である場合、第2弁座25b等の外形に沿ってダイアフラム6の底面6cが変形しづらくなり、十分なシール能力が得られないおそれがある。一方、揺動部材7がダイアフラム6の第2弁座25b側を押圧する荷重L2が3.5Nを超える場合、第2弁座25bに着座中のダイアフラム6の底面6cの変形が過度に大きくなり、ダイアフラム6を構成する弾性材料の疲労が加速され、ダイアフラム6の寿命が短くなるおそれがある。さらにこの場合でも、第1コイルばね43のばね荷重を、第2コイルばね44のばね荷重よりも高める必要がある。このため、ソレノイドコイル45が発生する電磁力を高める必要が生ずる。その結果、ソレノイドコイル45の大型化を招来し、駆動手段4ひいては弁装置1の小型化を図ることが困難となる。
【0051】
さらに、このダイアフラム6によってNO流出ポート25が閉鎖されている状態において、第2コイルばね44単体による荷重は2.4N〜3.5Nが望ましい。第2コイルばね44単体による荷重が2.4N未満である場合は、第2弁座25b等の外形に沿ってダイアフラム6の底面6cが変形しづらくなり、十分なシール能力が得られないおそれがある。一方、第2コイルばね44単体による荷重が3.5Nを超える場合は、第1コイルばね43単体による荷重をそれ以上に高める必要がある。その結果、上記と同様に、駆動手段4ひいては弁装置1の小型化を図ることが困難となる。
【0052】
以上のように、本発明の弁装置1によれば、ダイアフラム6が、JIS−K6253のデュロメータA硬さがA50〜A85の弾性材料からなり、着座中のダイアフラム6の第1弁座24b又は第2弁座25bに対する圧力が0.5〜1.0N/mm
2である。このように、ダイアフラム6の硬度と着座圧力とが改善されることにより、着座時におけるダイアフラム6の過度な変形が抑制され、ダイアフラム6の耐久性を高めることができる。また、ダイアフラム6は、第1弁座24b又は第2弁座25bに対して適度に変形し、十分なシール能力が得られる。さらには、過度に大きな荷重でダイアフラム6を押圧する必要がないため、ソレノイドコイル45等の弁駆動部40を小型化することができる。
【0053】
図3乃至4等では、単一の流入ポート23に対して2系統の流出ポート24、25を有する三方弁の流路ブロック20が示されている。このような流路ブロック20は、流出ポート24、25のうち、いずれか一方、例えば、流出ポート24を常時閉栓することにより、二方弁として使用することも可能である。このような使用形態においても、ダイアフラム6の硬度と着座圧力とが改善されることにより、上記と同様の効果が得られる。他方の流出ポート25を常時閉栓する場合であっても、上記と同様である。
【0054】
さらに、流路ブロック20からいずれか一方の流出ポートが省略されている構成であっても、上記と同様に二方弁として使用することが可能であり、上記と同様の効果が得られる。この場合、流入ポート23は、弁室21の中央部に配置されている必要はなく、省力された流出ポートの側に配置されていてもよい。
【0055】
以上、本発明の弁装置が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0056】
図1の基本構造をなす弁装置が、表1の仕様に基づき試作され、ダイアフラムのシール性能及び耐久性能が評価された。各仕様のダイアフラムは、プレス機を用いた架橋成形により試作された。硬度の測定においては、JIS K 6253−3に準拠するタイプAデュロメータ硬度が測定された。
テスト方法は、以下の通りである。
【0057】
<シール性能>
各仕様のダイアフラムが、弁装置に組み込まれ、シール性能が測定された。すなわち、流入ポートから0.3MPaの空気が流入され、3分後の空気の圧力が測定された。結果は、実施例1を100とする指数であり、数値が大きい程、ダイアフラムのシール性能が優れていることを示す。
【0058】
<耐久性能>
各仕様のダイアフラムが組み込まれた弁装置が、気温20゜Cの室内にて5Hzの周波数で1000万回空作動され、その後、流入ポートから0.3MPaの空気が流入され、3分後の空気の圧力が測定された。結果は、実施例1を100とする指数であり、数値が大きい程、ダイアフラムの疲労が少なく、耐久性が優れていることを示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、実施例の弁装置は、比較例に比べてシール性能及び耐久性能が有意に優れていることが確認できた。