【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1による水素排出装置10を備える放射性廃棄物収納容器50の構成を示す図である。
【0012】
収納容器50は、放射性廃棄物を密閉して保管する容器であり、既存の物を用いることができる。例えば、収納容器50は、金属製であり、セメント系材料で固型化された高線量の放射性廃棄物を内部に収納し、放射性廃棄物を保管、移送、及び埋設処分するときに用いられる。放射性廃棄物からの放射線により収納容器50の内部に存在する水が放射線分解し、収納容器50の内部で水素ガスが発生する。収納容器50には、収納容器50の内部と連通する配管140が接続される。
【0013】
水素排出装置10は、後述するように2つの筒状部材20a、20bと水素透過モジュール30を備え、収納容器50の外側に取り付けられる。筒状部材20aは、配管140に接続され、収納容器50の内部と連通し、収納容器50の内部の水素ガスが流入する。筒状部材20bは、一端が筒状部材20aに他端が配管150に接続され、収納容器50の内部の水素ガスを収納容器50の外部(例えば大気中)へ排出する。筒状部材20aと配管140、及び筒状部材20bと配管150は、それぞれ溶接で接続してもよいし、密閉性の高い連結器で接続してもよい。
【0014】
水素排出装置10は、収納容器50から取り外すことができる。筒状部材20aが配管140と溶接で接続されているときには接続部を切断することで、連結器で接続されているときには連結器の連結を外すことで、水素排出装置10を配管140から切り離して収納容器50から取り外すことができる。また、同様にして、筒状部材20bを配管150から切り離すこともできる。
【0015】
配管140にはバルブ80が設けられ、バルブ80を閉じると、水素排出装置10を収納容器50から取り外しても、収納容器50の密閉性を保つことができる。配管150には水素流量計130が取り付けられる。水素流量計130は、収納容器50から排出した水素の量を測定する。
【0016】
なお、
図1では一例として配管140が収納容器50の上面に接続されているが、配管140は、収納容器50の側面に接続されてもよい。
【0017】
図2は、実施例1による収納容器50が備える水素排出装置10の構成を示す側面図である。水素排出装置10は、収納容器50の密閉性を保ちながら、収納容器50の内部の水素を外部に排出する。水素排出装置10は、外筒20と、外筒20の内部に設置される水素透過モジュール30とを備える。外筒20は、2つの筒状部材20a、20bから構成される。
【0018】
筒状部材20a、20bは、例えば、ステンレス鋼で形成され、円錐状であり、円錐の底部の周囲にフランジ部21a、21bをそれぞれ備え、円錐の頂部に円筒状の接続部22a、22bをそれぞれ備える。筒状部材20aと筒状部材20bは、円錐の底面に相当する部分で互いに接続し、接続部22a、22bでそれぞれ配管140、150(
図1参照)と接続する。本実施例では、筒状部材20aと筒状部材20bは、溶接によりフランジ部21a、21bで互いに接続され、外筒20を構成する。
【0019】
外筒20の内部には、水素透過モジュール30が配置される。より詳しく述べると、筒状部材20aと筒状部材20bのうち少なくとも一方の内部に、水素透過モジュール30が配置される。
図2では、筒状部材20aと筒状部材20bの両方の内部に、水素透過モジュール30が配置されている。水素透過モジュール30は、筒状部材20aと筒状部材20bの一方に溶接されて取り付けられる。
図2に示した例では、水素透過モジュール30は、溶接部160で筒状部材20aに隙間なく溶接されている。
【0020】
水素透過モジュール30には、収納容器50の内部の水素が流入する。後述するように水素透過モジュール30は、水素透過膜を内部に備える複数の水素透過サブモジュールから構成されるので、水素透過モジュール30を取り付けた外筒20は、収納容器50の内部の密閉性を保つことができる。
【0021】
図3は、水素排出装置10の筒状部材20aの構成を示す図であり、円錐状の筒状部材20aを円錐の底面に相当する部分から見た斜視図である。筒状部材20aの内部には、水素透過モジュール30が配置されている。上述したように、水素透過モジュール30は、筒状部材20aに溶接部160で隙間なく溶接されて取り付けられている。筒状部材20aに水素透過モジュール30を取り付けた後、筒状部材20bを筒状部材20aに溶接で接続して、水素排出装置10を形成することができる。
【0022】
水素透過モジュール30は、複数の水素透過サブモジュール40を束ねて互いに接続して形成する。次に、水素透過モジュール30について説明する。
【0023】
図4は、水素透過モジュール30の構成の一例を示す図である。水素透過モジュール30は、複数の管状の水素透過サブモジュール40を束ねて並べて配置し、それらの一端部又は両端部を溶接で互いに接続した構造である。複数の水素透過サブモジュール40は、水素排出装置10の外筒20が収納容器50の内部の密閉性を保つことができるように、溶接部ではそれぞれが互いに隙間なく溶接される。
【0024】
水素透過モジュール30を構成する水素透過サブモジュール40の数は、収納容器50の内部で発生する水素ガスの予測量や、水素透過サブモジュール40が内部に備える水素透過膜の水素透過能力等に応じて定めることができる。一般に、水素透過サブモジュール40の数を増やすと、収納容器50の内部の水素を排出する能力が大きくなる。
【0025】
また、水素透過サブモジュール40の数が異なる水素透過モジュール30を複数用意しておけば、水素透過モジュール30を交換することで水素透過サブモジュール40の数を変えて、水素排出装置10の水素透過能力を調節できる。すなわち、水素透過モジュール30を構成する水素透過サブモジュール40の数を変えることにより、収納容器50の内部の水素を排出する能力(収納容器50の内部圧力を低下させる能力)を調節することができる。
【0026】
水素透過サブモジュール40の長さは、外筒20の大きさや形状に合わせて定めることができる。又は、水素透過サブモジュール40の長さを任意に定め、この長さに合わせて外筒20の大きさや形状を定めてもよい。
【0027】
図5は、水素透過サブモジュール40の構成の一例を示す図である。水素透過サブモジュール40は、管状部材60と、管状部材60の内部に取り付けられた水素透過膜70を備える。
図5には、管状部材60として円管状部材を用いた場合を示している。管状部材60は、例えばステンレス鋼で形成することができ、その内部を収納容器50からの水素が流れる。水素透過膜70は、水素透過モジュール30が収納容器50の内部の密閉性を保つことができるように、管状部材60の内部(中空部)を横断して塞ぐように管状部材60に取り付けられる。水素透過サブモジュール40に流入した水素は、水素透過膜70を透過して、水素排出装置10から排出される。
【0028】
水素透過膜70は、管状部材60の長さ方向の中央部に取り付けるのが望ましい。このような位置に水素透過膜70を取り付けると、水素透過サブモジュール40、水素透過モジュール30、及び水素排出装置10の取り扱い時に、水素透過膜70が他の部材に接触して損傷する可能性を低減させることができる。
【0029】
水素透過膜70を管状部材60の内部に取り付けた水素透過サブモジュール40を製作する方法として、例えば次のような方法がある。管状部材60を構成するための2本の管状部材を用意し、一方の管状部材の一端部の内部に水素透過膜70を取り付け、この一端部にもう一方の管状部材を突合せ溶接することで、水素透過サブモジュール40を製作する方法である。
【0030】
水素透過膜70は、水素ガスを選択的に透過させ、放射性物質を透過させない性質を持つ。水素透過膜70には、既存の物を用いることができ、例えば、銀を含んだパラジウム合金を用いることができる。これ以外にも、水素透過性のある白金、ニッケル、バナジウム、及びニオブのうち少なくともいずれか1種を含む合金や、ポリイミドを主成分として含む高分子膜を用いてもよい。水素透過膜70の厚さや面積(すなわち管状部材60の中空部の横断面積)は、収納容器50の内部で発生する水素ガスの予測量に応じて定めることができる。
【0031】
図1に示すように、収納容器50の内部で発生した水素は、収納容器50の内部の水素分圧により水素排出装置10に流入し、水素排出装置10内の水素透過モジュール30(水素透過サブモジュール40)の水素透過膜70を透過し、配管150を通って気体の状態のまま外部に排出される。配管150には水素流量計130が取り付けられているので、水素流量計130を用いることで、収納容器50から排出した水素の量(収納容器50の内部で発生した水素の量)を容易に測定できる。また、水素流量計130により、収納容器50の内部での水素の発生が止まったことを確認したり、水素排出装置10の密閉性を確認したりすることもできる。
【0032】
水素排出装置10は、水素透過膜70が劣化したり損傷したりした場合や、水素透過モジュール30に目詰まりが発生した場合には、水素排出装置10に必要な機能(密閉性と水素透過能力)が損なわれる。このような場合には、水素排出装置10を交換する必要がある。水素排出装置10を交換する場合には、バルブ80(
図1参照)を閉じ、収納容器50の密閉性を確保した後で、水素排出装置10を収納容器50から取り外して交換する。収納容器50はバルブ80により密閉されているので、放射性物質を飛散させずに、水素排出装置10を交換することができる。
【0033】
水素透過サブモジュール40の数を変えると、水素透過モジュール30の太さ(水素透過サブモジュール40の長さ方向に垂直方向の長さ)も変わる。このため、水素透過サブモジュール40の数を変えると、水素透過モジュール30を内部に配置する筒状部材20a、20bの大きさも変えないと、水素透過モジュール30を筒状部材20a又は20bに溶接部で隙間なく溶接できないように思われる。すなわち、太さの異なる水素透過モジュール30の数に対応して、大きさの異なる外筒20を複数用意しておく必要があるように思われる。しかし、筒状部材20a、20bは円錐状であるので、水素透過モジュール30の太さが変わっても、水素透過モジュール30の配置位置を変えるだけで、水素透過モジュール30を筒状部材20a又は20bに溶接部で隙間なく溶接することができる。
【0034】
図6は、水素透過サブモジュール40の数が減って水素透過モジュール30の太さが
図2の場合よりも細くなった場合の、水素排出装置10の構成を示す側面図である。
図6に示すように、水素透過モジュール30は、
図2の場合よりも筒状部材20aの円錐の頂部に近い位置に配置されており、溶接部161で筒状部材20aに隙間なく溶接されて取り付けられている。水素透過サブモジュール40の数が増えて水素透過モジュール30の太さが
図2の場合よりも太くなった場合には、水素透過モジュール30と筒状部材20aとの溶接部が
図2の場合よりも筒状部材20aの円錐の底部に近くなるように水素透過モジュール30を配置して、筒状部材20aに溶接部で隙間なく溶接すればよい(ただし、水素透過サブモジュール40の長さを短くする必要がある)。
【0035】
このように、筒状部材20a、20bが円錐状であると、様々な太さの水素透過モジュール30を内部に配置することができ、水素透過サブモジュール40の数を変えても容易に対応できるという利点がある。すなわち、水素透過サブモジュール40の数を変えて水素排出装置10の水素透過能力を変えても、筒状部材20a、20bが円錐状であると、1種類(又はより少ない種類)の大きさの筒状部材20a、20bでその変化に対応できる。
【実施例2】
【0036】
本発明の実施例2による放射性廃棄物収納容器50が備える水素排出装置10は、水素透過モジュールが、実施例1と異なるモジュールであり、実施例1とは異なる方法で外筒20を構成する筒状部材20aに取り付けられる。まず、本実施例における水素透過モジュールについて説明する。
【0037】
図7は、本実施例での水素透過モジュール30aの構成を示す図である。本実施例での水素透過モジュール30aは、実施例1に示した水素透過モジュール30の周囲に環状の板状部材170が配置され、これらが溶接部では隙間なく溶接されている構成を備える。すなわち、環状の板状部材170は、水素透過モジュール30aのフランジ部となる。環状の板状部材170は、例えば、ステンレス鋼で形成され、外径が、筒状部材20a、20bの円錐の底部の周囲に設けられたフランジ部21a、21b(
図2、3参照)の外径とほぼ等しいかそれ以上であり、内径が、水素透過モジュール30の外径とほぼ等しい。水素透過モジュール30aは、実施例1に示した水素透過モジュール30を環状の板状部材170の中空部に配置し、水素透過モジュール30の外径部と環状の板状部材170の内径部とを溶接部で隙間なく溶接することで形成される。
【0038】
図8は、本実施例において、水素透過モジュール30aを筒状部材20a、20bへ取り付けた構成を示す図である。本実施例では、水素透過モジュール30aは、溶接ではなく、ボルト180で締められて筒状部材20a、20bに固定される。すなわち、水素透過モジュール30aの環状の板状部材170は、筒状部材20a、20bのフランジ部21a、21bに挟まれ、フランジ部21a、21bにボルト180で締められて固定される。このとき、板状部材170とフランジ部21aとの間にシール部材90を設置して、水素排出装置10の密閉性を確保する。
【0039】
シール部材90は、パッキンやガスケット等の気密性の高い部材であり、水素透過モジュール30aの環状の板状部材170と筒状部材20aのフランジ部21aとの接触面100からの気体の漏洩を防止することができる。
【0040】
本実施例での水素排出装置10では、水素透過モジュール30aは、外筒20(筒状部材20a、20b)に溶接されていないため、外筒20から取り外すことが可能である。したがって、収納容器50から水素排出装置10を取り外した後、水素透過モジュール30aのみを交換し、外筒20を再利用することが可能である。
【実施例4】
【0044】
本発明の実施例4による放射性廃棄物収納容器50が備える水素排出装置10は、外筒20が、実施例1と異なり、2つの円筒状の筒状部材から構成される。
【0045】
図10は、本実施例による収納容器50が備える水素排出装置10の構成を示す側面図である。水素排出装置10は、2つの円筒状の筒状部材25a、25bから構成される外筒20と、外筒20の内部に設置される水素透過モジュール30とを備える。
【0046】
筒状部材25a、25bは、円筒の一方の底部の周囲にフランジ部21a、21bをそれぞれ備え、他方の底面に円筒状の接続部22a、22bをそれぞれ備える。円筒状の接続部22a、22bの直径は、円筒状の筒状部材25a、25bの直径よりも小さい。筒状部材25aと筒状部材25bは、円筒の底面(フランジ部21a、21bを備える方の底面)に相当する部分で互いに接続し、接続部22a、22bでそれぞれ配管140、150(
図1参照)と接続する。本実施例では、筒状部材25aと筒状部材25bは、溶接によりフランジ部21a、21bで互いに接続される。
【0047】
外筒20の内部には、水素透過モジュール30が配置される。本実施例では、
図10に示すように、水素透過モジュール30は、筒状部材25aのみの内部に配置されているものとする。水素透過モジュール30は、実施例1と同様に、溶接部160で筒状部材25aに隙間なく溶接されて取り付けられている。したがって、本実施例による収納容器50が備える水素排出装置10も、収納容器50の内部の密閉性を保つことができる。
【0048】
水素排出装置10を交換する場合には、実施例1と同様に、バルブ80(
図1参照)を閉じ、収納容器50の密閉性を確保した後で、水素排出装置10を収納容器50から取り外して交換する。
【0049】
水素透過モジュール30を構成する水素透過サブモジュール40の数を変えると、一般的には、水素透過モジュール30の太さが変わる。このため、本実施例では、水素透過サブモジュール40の数を変えて収納容器50の内部の水素を排出する能力を調節する場合には、水素透過モジュール30の太さの変化に合わせて筒状部材25a、25bの大きさを変える必要がある。そこで、本実施例では、水素透過サブモジュール40の数を変えるときには、筒状部材25a、25b(すなわち水素排出装置10)を交換する。
【0050】
なお、本実施例では水素透過モジュール30が筒状部材25aのみの内部に配置されている例を説明したが、水素透過モジュール30は、筒状部材25aと筒状部材25bのうち少なくとも一方の内部に配置することができる。また、本実施例では筒状部材25aと筒状部材25bが溶接により互いに接続されている例を説明したが、筒状部材25aと筒状部材25bは、実施例2と同様にボルトで締結することができる。すなわち、水素透過モジュール30の周囲に環状の板状部材170(
図7参照)を配置し、筒状部材25a、25bのフランジ部21a、21bで環状の板状部材170を挟み、環状の板状部材170とフランジ部21a、21bをボルト180で締めて固定する。このとき、環状の板状部材170とフランジ部21aとの間にシール部材90(
図8参照)を設置して、水素排出装置10の密閉性を確保する。