特許第6228536号(P6228536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228536
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】建設プラント型の重車両用タイヤビード
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20171030BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20171030BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60C15/06 F
   B60C15/00 B
   B60C9/08 E
   B60C15/06 B
   B60C15/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-514049(P2014-514049)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-516010(P2014-516010A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】EP2012060650
(87)【国際公開番号】WO2012168273
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】1154932
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ボンデュ リュシアン
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−332813(JP,A)
【文献】 特開2009−113715(JP,A)
【文献】 特表2013−513509(JP,A)
【文献】 特開2007−230515(JP,A)
【文献】 特開昭61−287804(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/085647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設プラント型重車両用のタイヤであって、リム(5,25)に接触するようになった2つのビードと、金属補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層(1,21)を含むカーカス補強材とを有し、前記カーカス補強材層は前記タイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ(2,22)回りに巻かれており、前記タイヤの内壁に沿って延びる主要部分(1a,21a)と、前記主要部分(1a,21a)の前記タイヤの軸方向に外側に位置する巻き上げ部(1b,21b)とを有し、前記巻き上げ部(1b,21b)と前記主要部分(1a,21a)との間の距離(d)は、前記ビードワイヤ(2,22)から最小距離(d1)まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離(d2)まで連続的に増加し、各ビードは、前記ビードワイヤの外側に向かう半径方向延長部としての充填要素(3,23)を有し、前記充填要素は、少なくとも2つのポリマー充填材料で作られ、第1のポリマー充填材料(3a,23a)は、半径方向最も内側寄りに位置すると共に前記ビードワイヤと接触状態にあり、第2のポリマー充填材料(3b,23b)は、第1のポリマー充填材料の半径方向外側に位置すると共に前記第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有する、タイヤにおいて、ポリマー移行材料で作られている移行要素(24)が設けられ、前記移行要素(24)は、そのタイヤ軸方向内面が前記第1のポリマー充填材料(23a)と接触状態にあると共にそのタイヤ軸方向外面が第2のポリマー充填材料(23b)と接触状態にあり、前記ポリマー移行材料(24)の10%伸び率における弾性率は、第1のポリマー充填材料(23a)及び前記第2のポリマー充填材料(23b)のそれぞれの10%伸び率における弾性率の算術平均の0.9倍以上であり、且つ、1.1倍以下であり、前記移行要素(24)の厚さ(e)は、前記巻き上げ部(21b)の端(E21)と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の0.1倍以上、かつ、0.5倍以下である、建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項2】
前記移行要素(24)の前記タイヤ軸方向内面は前記移行要素(24)と前記主要部分(21a)の間の半径方向最も内側の接触箇所である第1の接触箇所(E24)と前記移行要素(24)の半径方向最も外側の箇所である最後の接触箇所(E′24)との間で前記主要部分(21a)と連続的接触状態にある、請求項1に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項3】
前記第1の接触箇所(E24)と、前記主要部分(21a)との前記移行要素(24)の前記タイヤ軸方向内面の前記最後の接触箇所(E′24)との間の距離(a)は、前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)以上である、請求項1又は2のいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項4】
前記第1の接触箇所(E24)と、前記主要部分(21a)との前記移行要素(24)の前記軸方向内面の前記最後の接触箇所(E′24)との間の距離(a)は、前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の3倍以下である、請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項5】
前記巻き上げ部(21b)と前記主要部分(21a)との間の最大距離(d2)は、前記巻き上げ部(21b)と前記主要部分(21a)との間の最小距離(d1)の1.1倍以上である、請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項6】
請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リム(25)とを有する設置組立体であって、前記タイヤは、前記リム(25)に取り付けられ、前記タイヤは、前記主要部分(21a)の軸方向外側の最小距離(d1)のところに且つ前記リム(25)の基準線(S)の半径方向外側の距離(HA)のところに位置する前記巻き上げ部(21b)上の箇所Aを有し、前記リム(25)の半径方向最も外側の箇所Fが前記リム(25)の基準線(S)の半径方向内側の距離(HF)のところに位置している、設置組立体において、前記主要部分(21a)の軸方向外側の前記最小距離(d1)のところに位置した前記巻き上げ部(21b)の前記箇所Aから前記リム(25)の前記基準線(S)までの距離(HA)は、前記リム(25)の前記半径方向最も外側の箇所Fから前記リム(25)の前記基準線(S)までの距離(HF)の1.25倍以上であり、且つ、2.5倍以下である、設置組立体。
【請求項7】
請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リム(25)とを有する設置組立体であって、前記タイヤは、前記リム(25)に取り付けられ、前記タイヤは、前記主要部分(21a)の軸方向外側の最大距離(d2)のところに且つ前記リム(25)の基準線(S)の半径方向外側の距離(HB)のところに位置する前記巻き上げ部(21b)の箇所Bを有し、前記リム(25)の半径方向最も外側の箇所Fが前記リム(25)の基準線(S)の半径方向外側の距離(HF)のところに位置している、設置組立体において、前記主要部分(21a)の軸方向外側の前記最大距離(d2)のところに位置した前記巻き上げ部(21b)の前記箇所Bから前記リム(25)の前記基準線(S)までの距離(HB)は、前記リム(25)の前記半径方向最も外側の箇所Fから前記リム(25)の前記基準線(S)までの距離(HF)の2倍以上であり、且つ、4倍以下である、設置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設プラント型の重車両に取り付けられるようになったラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、この種の用途には限定されないが、特に採石場又は露天掘り鉱山から掘り出される物体を運搬する車両であるダンプ車(ダンパとも呼ばれる)に取り付けられるようになったラジアルタイヤに関して本発明を説明する。かかるタイヤのリムの公称直径は、欧州タイヤ及びリム技術協会、即ちETRTOにより提供されている意味の範囲内において、最小25インチ(63.5cm)である。
【0003】
以下の説明において、次の定義が用いられている。
‐「子午面(又は子午線平面)」は、タイヤの回転軸線を含む平面である。
‐「赤道面」は、タイヤのトレッド表面(踏み面)の中央を通ると共にタイヤの回転軸線に垂直な平面である。
‐「半径方向」は、タイヤの回転軸線に垂直な方向である。
‐「軸方向」は、タイヤの回転軸線に平行な方向である。
‐「円周方向」は、子午面に垂直な方向である。
‐「半径方向距離」は、タイヤの回転軸線に垂直に且つタイヤの回転軸線から測定された距離である。
‐「軸方向距離」は、タイヤの回転軸線に平行に且つ赤道面から測定された距離。
‐「半径方向」は、半径の方向である。
‐「軸方向」は、軸線の方向である。
‐「〜の半径方向内側」又は「〜の半径方向外側」は、それぞれ、短い半径方向距離のところ又は長い半径方向距離のところに位置することを表している。
‐「〜の軸方向内側」又は「〜の軸方向外側」は、それぞれ、短い軸方向距離のところ又は長い軸方向距離のところに位置することを表している。
【0004】
タイヤは、タイヤとタイヤが取り付けられるリムとの間の機械的連結部を提供する2つのビードを有し、これら2つのビードは、それぞれ、2つのサイドウォールによって、トレッド表面を介して路面に接触するようになったトレッドに接合されている。
【0005】
ラジアルタイヤは、具体的に説明すると、トレッドの半径方向内側に位置したクラウン補強材及びクラウン補強材の半径方向内側に位置したカーカス補強材を含む補強材を有している。
【0006】
建設プラント型重車両用ラジアルタイヤのカーカス補強材は、ポリマー被覆材料で被覆されている金属補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層を有する。金属補強要素は、互いに実質的に平行であり且つ円周方向と85°〜95°の角度をなしている。カーカス補強材層は、2つのビードを互いに接合し、各ビード内においてビードワイヤ回りに巻かれた主要部分を有する。ビードワイヤは、通常金属で作られていて、少なくとも1種類の材料で包囲された円周方向補強要素を有し、かかる材料は、ポリマー又はテキスタイルで作られるのが良いが、これらには限定されない。ビードワイヤ回りのカーカス補強材層は、端を有する巻き上げ部を形成するようタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ回りに巻かれる。各ビード内における巻き上げ部により、カーカス補強材層をこのビードのビードワイヤに繋留することができる。
【0007】
各ビードは、ビードワイヤの半径方向外方の延長部としてのフィラー又は充填要素を更に有する。充填要素は、少なくとも1種類のポリマー充填材料で作られている。充填要素は、子午線に沿って任意の子午面と交差した接触面に沿って接触状態にある少なくとも2つのポリマー充填材料の半径方向スタックで作られる場合がある。充填要素は、主要部分を巻き上げ部から軸方向に分離している。
【0008】
ポリマー材料は、硬化後、引張り試験によって決定される引張り応力‐変形特性が優れているという機械的特性を有する。この引張り試験は、公知の方法に従って、例えば、国際規格ISO37に従って且つ国際規格ISO471によって定められた通常の温度(23±2℃)及び通常の湿度(50±5%相対湿度)下において試験片について当業者によって実施される。試験片の10%伸び率について測定された引張り応力は、ポリマー配合物の10%伸び率における弾性率と呼ばれており、メガパスカル(MPa)で表される。
【0009】
ポリマー材料は又、硬化後、その硬度が優れているという機械的特性を有する。硬度は、特に、ASTM・D2240‐86に従って定められたショアAスケール硬度によって定められる。
【0010】
車両が走行しているとき、リムに取り付けられていて、インフレートされて車両の荷重を受けて圧縮された状態のタイヤは、特にそのビード及びそのサイドウォールのところで曲げサイクルを受ける。
【0011】
ビードが、曲がる際に、外側軸線及び内側軸線がそれぞれ主要部分及び巻き上げ部であるビードのように機械的に挙動するとみなすと、曲げサイクルを受ける巻き上げ部は、ビードの疲労破壊を招き、したがってビードの耐久性の減少及びタイヤの寿命の短縮を招く恐れのある圧縮変形を受ける。
【0012】
欧州特許第2216189号明細書は、ビードが使用中、リム上で撓むときに巻き上げ部の圧縮変形を減少させることによって耐久性を向上させたタイヤビードを記載している。この目的は、巻き上げ部と主要部分との間の距離がビードワイヤから最小距離まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離まで連続的に増加するような巻き上げ部によって達成される。巻き上げ部は、巻き上げ部と主要部分との間の最大距離に対応した巻き上げ部の箇所の半径方向外側で延びる。
【0013】
曲げサイクルは、特に、主として剪断及び圧縮の際にリムフランジ上のビードの曲げにより、ポリマー充填材料中に応力及び変形を生じさせる。
【0014】
特に、2つのポリマー充填材料相互間の接触面のところでは、曲げサイクルが亀裂を開始させ、これら亀裂は、半径方向最も外側に位置するポリマー充填材料中を広がり、経時的に、タイヤの劣化を招く恐れがあり、タイヤを交換する必要が生じる。
【0015】
本発明者によれば、亀裂は、ビードワイヤと接触状態にある半径方向最も内側のポリマー充填材料とその半径方向外側に且つ接触面に沿って隣接して位置するポリマー充填材料との間の剛性の勾配の結果として始まる。これら2つのポリマー充填材料相互間のこれらの接触面に沿う結合不良は、亀裂発生を開始させる一要因である。
【0016】
亀裂の広がり速度は、第1に、応力及び歪変形サイクルの振幅及び周期数に依存すると共に第2にポリマー充填材料のそれぞれの剛性に依存する。一例を挙げると、ビードワイヤと接触状態にある半径方向最も内側のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率は、このポリマー充填材料の半径方向外側に且つこれに隣接して位置するポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率の3倍に等しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第2216189号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者は、ビードワイヤと接触状態にある半径方向最も内側の第1のポリマー充填材料と第1のポリマー充填材料の半径方向外側に位置した第2のポリマー充填材料との接触面のところで始まる亀裂の広がり速度を減少させることにより建設プラント型重車両用ラジアルタイヤのビードの耐久性を向上させるという目的の達成に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、この目的は、
‐建設プラント型重車両用のタイヤであって、リムに接触するようになった2つのビードと、金属補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層を含むカーカス補強材とを有し、
‐カーカス補強材層は、巻き上げ部を形成するよう各ビード内においてタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ回りに巻かれている主要部分を有し、
‐巻き上げ部と主要部分との間の距離は、ビードワイヤから最小距離まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離まで連続的に増加し、
‐各ビードは、ビードワイヤの外側に向かう半径方向延長部としての充填要素を有し、
‐充填要素は、少なくとも2つのポリマー充填材料で作られ、第1のポリマー充填材料は、半径方向最も内側寄りに位置すると共にビードワイヤと接触状態にあり、
‐第2のポリマー充填材料は、第1のポリマー充填材料の半径方向外側に位置すると共に第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有し、
‐ポリマー移行材料で作られている移行要素が設けられ、移行要素は、その半径方向内面が第1のポリマー充填材料と接触状態にあると共にその半径方向外面が第2のポリマー充填材料と接触状態にあり、
‐ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率と第2のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にあることを特徴とする建設プラント型重車両用タイヤによって達成された。
【0020】
本発明によれば、ポリマー移行材料で作られている移行要素が設けられ、移行要素は、その半径方向内面が第1のポリマー充填材料と接触状態にあると共にその半径方向外面が第2のポリマー充填材料と接触状態にあると有利である。
【0021】
移行要素は、第1のポリマー充填材料と第2のポリマー充填材料との間に介在して位置する要素である。
【0022】
移行要素は、通常、単一のポリマー移行材料で構成される。しかしながら、この要素は、10%伸び率における弾性率が第1及び第2のポリマー充填材料のそれぞれの10%伸び率における弾性率相互間にあると共にポリマー移行材料の半径方向距離が増大するにつれて減少するポリマー移行材料の半径方向スタックで構成されるのが良い。
【0023】
移行要素の厚さは、カーカス補強材の主要部分及びカーカス補強材の巻き上げ部とのそれぞれの接触ゾーンから遠ざかったところで測定された移行要素の厚さを意味し、かかる主要部分及び巻き上げ部では、移行要素は、移行要素の半径方向外側の端及び半径方向内側の端までテーパしている。移行要素の厚さは、実質的に一定である場合が多いが、均等例として変化していても良い。ポリマー移行材料の半径方向スタックで構成されている移行要素の場合、移行要素の厚さは、ポリマー移行材料の半径方向における厚さにおけるスタックの全厚である。
【0024】
移行要素は、この移行要素の半径方向内面が第1のポリマー充填材料の半径方向外面と幾何学的に一致している場合、主要部分と接触状態にある移行要素の半径方向内面の軸方向内側部分を除き、その半径方向内面を介して第1のポリマー充填材料と接触状態にあると呼ばれる。
【0025】
移行要素は、この移行要素の半径方向外面が第2のポリマー充填材料の半径方向内面と幾何学的に一致している場合、巻き上げ部と接触状態にある移行要素の半径方向外面の軸方向外側部分を除き、その半径方向外面を介して第2のポリマー充填材料と接触状態にあると呼ばれる。
【0026】
ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、有利には、第1の被覆ポリマー材料の10%伸び率における弾性率と第2のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にあり、第2のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率は、第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率よりも低い。第1の被覆ポリマー材料からポリマー移行材料、更に第2のポリマー充填材料に進む際の10%伸び率における弾性率の漸減により、減少すると共に緩やかな剛性勾配の実現が可能であり、かかる勾配により、第1のポリマー充填材料と第2のポリマー充填材料との間の移行ゾーンの応力及び変形量を局所的に減少させ、したがって亀裂の広がりを遅らせることができる。
【0027】
第1及び第2のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率が大きければ大きいほど、中間ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率により得られる利点はそれだけ一層顕著になる。一例を挙げると、本発明のタイヤでは、第1のポリマーフィラー又は充填材料の10%伸び率における弾性率は、第2のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率の約2.9倍に等しい。
【0028】
移行要素の厚さ(e)は、有利には、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の0.1倍以上である。
【0029】
巻き上げ部の端と主要部分との間の距離は、巻き上げ部の端を通ると共に主要部分に垂直である直線に沿って、巻き上げ部の補強要素の軸方向内側の母線と主要部分の補強要素の軸方向外側の母線との間で測定した距離である。
【0030】
移行要素のこの最小厚さにより、最小の剛性勾配を定めることができ、それにより亀裂の広がり速度を減少させることができる。
【0031】
また、移行要素の厚さは、有利には、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の0.5倍以下である。
【0032】
具体的に言えば、ポリマー移行材料の熱放散量は、その高い10%伸び率における弾性率に鑑みて第2のポリマー充填材料の熱放散量よりも多い。その結果、移行要素の最大厚さを超えると、基準タイヤに関し、第2のポリマー充填材料の何割かに代えて移行要素を用いた場合、ポリマー移行材料の体積が多すぎることにより、その寿命にとって有害なビード温度の増大が生じ、それ故、移行要素の厚さに上限を課すことが必要である。
【0033】
さらに、本発明者は、局所的に亀裂発生に影響を及ぼすために移行要素の厚さを制限すると同時に移行要素がビードの曲げ剛性に及ぼす影響を制限するよう選択を行った。移行要素の目的は、ビードの曲げ剛性の変化を生じさせることがなく、第1のポリマー充填材料と第2のポリマー充填材料との間の亀裂の広がり速度に影響を及ぼすことにある。換言すると、リムフランジ上におけるビードの全体的曲げは、移行要素のあるなしにかかわらず同一である。
【0034】
さらに、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、第1のポリマー充填材料及び第2のポリマー充填材料のそれぞれの10%伸び率における弾性率の算術平均の0.9倍以上であり、且つ、1.1倍以下であることが有利である。ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率に関する値のこの範囲は、第1の被覆ポリマー材料からポリマー移行材料に、次に第2のポリマー充填材料に広がる際に、最小限に抑えられた剛性の勾配を保証し、それ故、亀裂の広がり速度を著しく減少させることができる。
【0035】
移行要素の半径方向内面は、有利には、第1の接触箇所と移行要素の半径方向最も外側の箇所である最後の接触箇所との間で主要部分と連続的接触状態にある。主要部分と移行要素との間のこの連続接触面により、亀裂の広がり速度を減少させることができ、かかる亀裂は、この接触ゾーンにおいて、主要部分の軸方向外面上で始まり、第2のポリマー充填材料中を通って軸方向外方に広がる。
【0036】
また、第1の接触箇所と、主要部分との移行要素の半径方向内面の最後の接触箇所との間の距離(a)は、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離以上であり、且つ、その3倍以下であることが有利である。
【0037】
この距離は、主要部分に垂直であり且つ主要部分との移行要素の半径方向内面の第1及び最後の接触箇所をそれぞれ通る2本の直線相互間の距離である。
【0038】
この距離により、移行要素と主要部分との間の接触ゾーンが主要部分の最大曲率ゾーン内に位置することが保証され、なお、主要部分の軸方向外面は、亀裂発生の開始が最も起こりそうなゾーンである。巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の関数として定められるこの距離に関する値の範囲は、移行要素が主要部分の軸方向外面上で亀裂が始まる可能性のあるゾーン全体中に存在することを保証する。
【0039】
有利には、巻き上げ部と主要部分との間の最大距離は、巻き上げ部と主要部分との間の最小距離の1.1倍以上である。この結果、巻き上げ部と主要部分との間に軸方向に位置する充填要素は、幅が狭くなった部分を有し、その結果、巻き上げ部と主要部分が互いに近くなり、それにより巻き上げ部をタイヤが駆動されているときに圧縮下に置かれないようにすることができる。
【0040】
最後に、主要部分の軸方向外側の最小距離のところに位置した巻き上げ部の箇所からリムの基準線までの距離は、リムの半径方向最も外側の箇所からリムの基準線までの距離の1.25倍以上であり、且つ、2.5倍以下であり、また、主要部分の軸方向外側の最大距離のところに位置した巻き上げ部の箇所からリムの基準線までの距離は、リムの半径方向最も外側の箇所からリムの基準線までの距離の2倍以上であり、且つ、4倍以下であると有利である。リムの基準線は、通常、当業者によれば、受座直径に該当している。リムの半径方向最も外側の箇所からリムの基準線までの距離は、リムフランジの高さを定める。これら値の範囲内において主要部分に最も近い巻き上げ部の箇所及び主要部から最も遠くに位置する巻き上げ部の箇所を半径方向に位置決めすることにより、張力が最適化されると共に巻き上げ部に圧縮状態が生じないようになる。
【0041】
本発明の特徴は、添付の図1及び図2の説明の助けにより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】先行技術の建設プラント型重車両用タイヤのビードの子午面断面図である。
図2】本発明の建設プラント型重車両用タイヤのビードの子午面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1及び図2を理解しやすいようにするため、図1及び図2は、縮尺通りには描かれていない。
【0044】
図1は、先行技術の建設プラント型重車両用タイヤのビードを示しており、このタイヤは、
‐金属補強要素で構成される少なくとも1つのカーカス補強材層1を含むカーカス補強材を有し、
‐カーカス補強材層は、巻き上げ部1bを形成するようタイヤの内側から外側に向かって各ビード内においてビードワイヤ2回りに巻かれた主要部分1aを有し、
‐巻き上げ部1bと主要部分1aとの間の距離dは、ビードワイヤ2から最小距離d1まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離d2まで連続的に増加し、
‐各ビードは、ビードワイヤの半径方向外方の延長部としての充填要素3を有し、
‐充填要素は、2つのポリマー充填材料(3a,3b)で作られ、
‐第1のポリマー充填材料3aは、半径方向最も内側に位置すると共にビードワイヤと接触状態にあり、
‐第2のポリマー充填材料3bは、第1のポリマー充填材料3aの半径方向外側に位置すると共に第1のポリマー充填材料3aの10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有する。
【0045】
図2は、本発明の建設プラント型重車両用タイヤのビードを示しており、このタイヤは、
‐金属補強要素で構成されたカーカス補強材層21を含むカーカス補強材を有し、
‐カーカス補強材層は、巻き上げ部21bを形成するようタイヤの内側から外側に向かって各ビード内においてビードワイヤ22回りに巻かれた主要部分21aを有し、
‐ビードは、ビードワイヤの半径方向外方の延長部としての充填要素23を有し、
‐巻き上げ部21bと主要部分21aとの間の距離dは、ビードワイヤ22から最小距離d1まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離d2まで連続的に増加し、
‐充填要素は、2つのポリマー充填材料(23a,23b)で作られ、
‐第1のポリマー充填材料23aは、半径方向最も内側に位置すると共にビードワイヤと接触状態にあり、
‐第2のポリマー充填材料23bは、第1のポリマー充填材料23aの半径方向外側に位置すると共に第1のポリマー充填材料23aの10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有し、
‐ポリマー移行材料で作られている厚さeの移行要素24を有し、移行要素は、その半径方向内面24aが第1のポリマー充填材料23aと接触状態にあると共にその半径方向外面24bが第2のポリマー充填材料23bと接触状態にあり、
‐ポリマー移行材料24の10%伸び率における弾性率は、第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率と第2のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にある。
【0046】
巻き上げ部21bの幾何学的形状は、巻き上げ部21bの箇所Aが主要部分21aの軸方向外側の最小距離d1のところに且つリム22の基準線Sの半径方向外側の距離HAのところに位置すること及び巻き上げ部21bの箇所Bが主要部分21aの軸方向外側の最大距離d2のところに且つリム22の基準線Sの半径方向外側の距離HBのところに位置することを特徴としている。箇所A,Bのそれぞれの位置は、リム22の半径方向最も外側の箇所Fに対して定められ、この半径方向最も外側の箇所Fは、リム22の基準線Sの半径方向外側の距離HFのところに位置する。
【0047】
移行要素24は、全体として一定であるが、主要部分及び巻き上げ部のそれぞれとの接触ゾーンから遠ざかってそうである必要はない厚さeを有し、かかるゾーン内において、移行要素は、移行要素24の半径方向内面24aと半径方向外面24bが交わる移行要素のそれぞれの半径方向の外側の端E′24及び半径方向内側の端I24までテーパしている。
【0048】
移行要素24の半径方向内面24aは、巻き上げ部23bと接触状態にあるその半径方向最も内側の箇所I24及び主要部分21aと接触状態にあるその半径方向最も外側の箇所E′24によって画定されている。
【0049】
移行要素24の半径方向外面24bは、巻き上げ部23bと接触状態にあるその半径方向最も内側の箇所I24及び主要部分21aと接触状態にあるその半径方向最も外側の箇所E′24によって画定されている。
【0050】
移行要素24と主要部分21aとの間の連続接触ゾーンは、移行要素24の半径方向内面24aに沿って達成されると共に半径方向最も内側の第1の接触箇所E24及び移行要素24の半径方向外側の端でもある半径方向最も外側の最後の接触箇所E′24によって半径方向に画定されている。
【0051】
移行要素24と巻き上げ部21bの主要部分との間の連続接触ゾーンは、移行要素24の半径方向外面24bに沿って作られると共に半径方向最も外側の第1の接触箇所I′24及び移行要素の半径方向内側の端でもある半径方向最も内側の最後の接触箇所I24によって半径方向に画定されている。
【0052】
巻き上げ部21bの端E21と主要部分21aとの間の距離d3は、巻き上げ部21bの端E21を通ると共に主要部分21aに垂直な直線Dに沿って、巻き上げ部21b中の補強要素の軸方向内側の母線と主要部分21a中の補強要素の軸方向外側の母線との間で測定された距離である。
【0053】
移行要素24の半径方向内面24aと主要部分21aの第1及び最後の接触箇所相互間の距離aは、E24及びE′24のところで主要部分21aに垂直な直線D′,D″相互間で測定された距離である。
【0054】
本発明を特にサイズ59/80R63のダンプ車型の重車両用タイヤの場合について研究した。ETRTO規格によれば、かかるタイヤの公称使用条件は、6barのインフレーション圧力、99トンの静荷重及び毎時16〜32kmの走行距離である。
【0055】
59/80R63型タイヤは、図2に概略的に示されているように本発明に従って設計されたものであった。
【0056】
巻き上げ部21bの幾何学的形状に関する限り、巻き上げ部21bの箇所Aは、主要部分21aの軸方向外側の18mmに等しい最小距離d1のところに且つリム22の基準線Sの半径方向外側の200mmに等しい距離HAのところに位置する。巻き上げ部21bの箇所Bは、主要部分21aの軸方向外側の27mmに等しい最大距離d2のところに且つリム22の基準線Sの半径方向外側の390mmに等しい距離HBのところに位置する。箇所A,Bのそれぞれの位置は、リム22の半径方向最も外側の箇所Fに対して定められ、この半径方向最も外側の箇所Fは、リム22の基準線Sの半径方向外側の127mmに等しい距離HFのところに位置する。
【0057】
移行要素24の厚さeは、一定であり且つ4.5mmに等しく、即ち、15mmに等しい巻き上げ部の端E21と主要部分21aとの間の距離dの0.3倍である。
【0058】
第1のポリマー充填材料、ポリマー移行材料及び第2のポリマー充填材料のそれぞれの10%伸び率における弾性率は、それぞれ、10MPa、6.5MPa及び3.5MPaに等しい。その結果、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、第1及び第2のポリマー充填材料のそれぞれの10%伸び率における弾性率相互間にあり、第1及び第2のポリマー充填材料のそれぞれの10%伸び率における弾性率の算術平均の0.96倍に等しい。
【0059】
主要部分21aとの移行要素24の半径方向内面24aの第1の接触箇所E24と最後の接触箇所E′24との間の距離aは、22.5mm以上であり、即ち、巻き上げ部21bの端E21と主要部分21aとの間の距離d3の1.5倍である。
【0060】
図1に示されている基準タイヤ及び図2に示されている本発明のタイヤについてそれぞれ有限要素解析計算シミュレーションを実施した。基準タイヤの場合、第2のポリマー充填材料3bのその半径方向内面の付近における伸び率は、第1のポリマー充填材料3aのその半径方向外面の付近における伸び率の2.5倍に等しい。本発明のタイヤの場合、ポリマー移行材料24のその半径方向内面24aの付近の伸び率は、第1のポリマー充填材料23aのその半径方向外面の付近の伸び率の1.5倍に等しい。同様に、本発明のタイヤの場合、第2のポリマー充填材料23aの半径方向内面24aの付近における第2のポリマー充填材料23aの伸び率は、ポリマー移行材料23aのその半径方向外面の付近の伸び率の1.5倍に等しい。
【0061】
その結果、本発明の場合において亀裂が第1のポリマー充填材料23aからポリマー移行材料24まで広がり、次にポリマー移行材料24から第2のポリマー充填材料23bまで広がる速度は、基準タイヤの場合において亀裂が第1のポリマー充填材料3aから第2のポリマー充填材料3bまで広がる速度よりも遅い。というのは、ポリマー移行材料24の伸び率と第1のポリマー充填材料23aの伸び率の比及び第2のポリマー充填材料23bの伸び率とポリマー移行材料24の伸び率の比は、第2のポリマー充填材料3bの伸び率と第1のポリマー充填材料3aの伸び率の比よりも小さいからである。
【0062】
本発明は、図2に示されている例に限定されるものと解されてはならず、例えば第1のポリマー充填材料と第2のポリマー充填材料との間に半径方向にスタックを構成するポリマー移行材料の数又は充填要素を構成する3つ以上の充填材料の数に関して他の変形実施形態(これらには限定されない)で実施できる。
図1
図2