特許第6228549号(P6228549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228549
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/05 20130101AFI20171030BHJP
   B62K 21/16 20060101ALI20171030BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B62K5/05
   B62K21/16
   B62K5/08
【請求項の数】6
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-543352(P2014-543352)
(86)(22)【出願日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2013078867
(87)【国際公開番号】WO2014065381
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-235605(P2012-235605)
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 和久
(72)【発明者】
【氏名】山崎 茂人
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102010052716(DE,A1)
【文献】 特開2010−184508(JP,A)
【文献】 特開2005−313876(JP,A)
【文献】 特開2011−195099(JP,A)
【文献】 特開2006−160254(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第1040389(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/05
B62K 5/08
B62K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並べて配置された右前輪および左前輪と、
下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右緩衝装置と、
下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左緩衝装置と、
前記右緩衝装置の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回転可能に支持する右サイド部材と、前記左緩衝装置の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回転可能に支持する左サイド部材と、前記右サイド部材の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる上右軸線回りに回転可能に支持し、前記左サイド部材の上部を左端部に前記上右軸線に平行な上左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記上右軸線および前記上左軸線に平行な上中間軸線回りに回転可能に支持される上クロス部材と、前記右サイド部材の下部を右端部に前記上右軸線に平行な下右軸線回りに回転可能に支持し、前記左サイド部材の下部を左端部に前記上左軸線に平行な下左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記上中間軸線と平行な下中間軸線回りに回転可能に支持される下クロス部材とを含むリンク機構と、
前記車体フレームの左右方向における前記右サイド部材と前記左サイド部材の間で前記車体フレームに支持され、上端部が前記下中間軸線よりも前記車体フレームの上下方向における上方に設けられ、前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回転可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの上端部に設けられたハンドルと、
前記ハンドルの操作に応じた前記ステアリングシャフトの回転を前記右緩衝装置と前記左緩衝装置に伝達する回転伝達機構と、
前記上クロス部材および前記下クロス部材の前記車体フレームに対する回転動作に対して付与される抵抗力を変更する抵抗力変更機構と、
を備え、
前記抵抗力変更機構は、相対的に変位可能であり、かつ相対的な変位に対する抵抗力が変更可能な第1部および第2部と、を含み、
前記第1部は、
前記リンク機構に含まれる前記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材のいずれか一つの部材に支持され、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が前記一つの部材と常に重なる位置に設けられ、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向に関して、前記一つの部材および前記ステアリングシャフトの前方または後方のいずれか一つの方向に並べて設けられ、
前記第2部は、
前記第1部が支持される前記一つの部材に対して相対的に変位する記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材のいずれか一つの他の部材に支持され、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が前記一つの他の部材と常に重なる位置に設けられ、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向に関して、前記第1部の前記一つの部材および前記ステアリングシャフトに対する前記一つの方向と同じ方向に前記一つの他の部材と並べて設けられる、車両。
【請求項2】
前記第1部が、前記右サイド部材が前記下クロス部材を支持する位置よりも下方で前記右サイド部材に支持されている、または、前記左サイド部材が前記下クロス部材を支持する位置よりも下方で前記左サイド部材に支持されている、請求項に記載の車両。
【請求項3】
前記抵抗力変更機構は、前記第1部と前記第2部のいずれか一方に設けられ、前記第1部と前記第2部のいずれか他方に対して摩擦力を付与する摩擦付与部を有し、
前記抵抗力変更機構は、前記摩擦付与部による摩擦力を調整して、前記第1部および前記第2部の互いの相対移動に対する抵抗力を変更可能とする、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記抵抗力変更機構は、
前記第1部と前記第2部の相対移動に応じて容積が変化する第1液室と、前記第1液室と連通路を介して連通する第2液室と、を有し、
前記連通路の開閉度合いを調節して前記第1液室と前記第2液室との間の流体の移動を制限することにより、前記第1部および前記第2部の互いの相対移動に対する抵抗力を変更可能とする、請求項1または2に記載の車両。
【請求項5】
前記上クロス部材または前記下クロス部材の前記車体フレームに対する回転に応じて、前記第1部と前記第2部との距離が変化し、
前記抵抗力変更機構は、前記第1部と前記第2部との距離の変化に対する抵抗力を変更する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記上クロス部材または前記下クロス部材の前記車体フレームに対する回転に応じて、前記第1部と前記第2部との回転角度が変化し、
前記抵抗力変更機構は、前記第1部と前記第2部との回転角度の変化に対する抵抗力を変更する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコーナリング時に左右方向に傾斜する車体フレームと、その車体フレームの左右方向に並べて設けられた2つの前輪とを備えた車両が知られている(例えば、特許文献1、2、3、および非特許文献1を参照)。
【0003】
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両は、リンク機構を備えている。リンク機構は、上クロス部材と下クロス部材を含んでいる。またリンク機構は、上クロス部材と下クロス部材の右端部を支持する右サイド部材、および上クロス部材と下クロス部材の左端部を支持する左サイド部材を含んでいる。上クロス部材と下クロス部材の中間部は、ステアリングシャフトの前方で車体フレームに支持される。上クロス部材と下クロス部材は、車体フレームのほぼ前後方向に延びる軸線回りに回転可能に車体フレームに支持されている。車体フレームの傾斜に連動して、上クロス部材と下クロス部材は車体フレームに対して回転し、車体フレームの上下方向における2つの前輪の相対位置は変化する。なお、上クロス部材と下クロス部材は、車体フレームが直立状態において、2つの前輪よりも車体フレームの上下方向の上方に設けられている。
【0004】
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両は、右前輪を車体フレームの上下方向に移動可能に支持する右緩衝装置と、左前輪を車体フレームの上下方向に移動可能に支持する左緩衝装置とを備えている。右緩衝装置は、右サイド部材の軸線回りに回転可能に右サイド部材に支持されている。左緩衝装置は、左サイド部材の軸線回りに回転可能に左サイド部材に支持されている。特許文献1および2に記載の車両は、ハンドル、ステアリングシャフト、および回転伝達機構をさらに備えている。ハンドルは、ステアリングシャフトに固定されている。ステアリングシャフトは、車体フレームに対して回転可能に支持されている。ハンドルを回転させると、ステアリングシャフトも回転する。回転伝達機構は、ステアリングシャフトの回転を右緩衝装置と左緩衝装置に伝達する。
【0005】
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両は、ステアリングシャフトの周囲に多くの車両搭載部品を備えている。車両搭載部品は、ヘッドライトなどの灯火器、ラジエーター、リザーバータンク、ホーンなどの電装部品、車両のメインスイッチ、収納ボックス、収納ポケットなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特許出願公開2005−313876号公報
【特許文献2】独国特許出願公開10 2010 052 716号公報
【特許文献3】米国意匠特許D547,242S公報
【非特許文献1】Catalogo partidi ricambio, MP3 300 ie LT Mod. ZAPM64102, Piaggio社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に記載の車両は、抵抗力変更機構をさらに備えている。抵抗力変更機構は、リンク機構の作動に対する抵抗力を大きくすることにより、車体フレームの傾斜、および車体フレームの上下方向における2つの前輪の相対位置の変化を抑制する。
【0008】
特許文献1に記載の車両において、抵抗力変更機構は、ブレーキディスクとキャリパーを含んでいる。ブレーキディスクは、リンク機構を構成する上クロス部材に固定されている。キャリパーは、ブレーキディスクとの間の摩擦力を調整することにより、リンク機構の作動に対する抵抗力を変更する。キャリパーは、上クロス部材よりも上方の車体フレームに取り付けられている。抵抗力変更機構による抵抗力がゼロまたは小さい場合、リンク機構は作動する。抵抗力変更機構による抵抗力が大きい場合、リンク機構の作動は抑制または停止される。抵抗力変更機構による抵抗力がゼロまたは小さい場合、ブレーキディスクと上クロス部材は、車体フレームに対して一体的に動く。
【0009】
特許文献2に記載の車両において、抵抗力変更機構は、ロッドと、ロッドの一端に設けられたピストンと、ピストンが移動するシリンダを含んでいる。抵抗力変更機構は、ピストンがシリンダ内を移動することにより、ロッドがシリンダに対して伸縮する。ピストンのシリンダ内での移動を停止することにより、ロッドがシリンダに対して固定される。ロッドの他端は、左サイド部材に支持されている。シリンダは、上クロス部材よりも上方の車体フレームに支持されている。抵抗力変更機構は、シリンダ内でのピストンの移動状態を変更することにより、リンク機構の作動に対する抵抗力を変更する。抵抗力変更機構による抵抗力がゼロまたは小さい場合、リンク機構は作動する。抵抗力変更機構による抵抗力が大きい場合、リンク機構の作動は抑制または停止される。抵抗力変更機構による抵抗力がゼロまたは小さい場合、リンク機構の作動に連動してロッドとシリンダも動く。
【0010】
特許文献1および2に記載の車両は、ステアリングシャフトの周囲に車体フレームの傾斜に連動して動くリンク機構を備えている。また当該車両は、車体フレームの傾斜とリンク機構の作動に連動して動く抵抗力変更機構を、ステアリングシャフトの周囲に備えている。そのため、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両においては、リンク機構の可動範囲と抵抗力変更機構の可動範囲が干渉しないように抵抗力変更機構を設ける必要がある。さらに車両搭載部品を設ける際は、リンク機構の可動範囲と抵抗力変更機構の可動範囲の両方を避ける必要がある。そのため、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両においては、ステアリングシャフトの周囲の構造が大きくなりやすい。
【0011】
本発明は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両にリンク機構の作動を抑制する機能を設けても、2つの前輪よりも上方のステアリングシャフト周囲の構造の大型化を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明がとりうる態様(1)は、車両であって、
車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並べて配置された右前輪および左前輪と、
下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右緩衝装置と、
下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左緩衝装置と、
前記右緩衝装置の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回転可能に支持する右サイド部材と、前記左緩衝装置の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回転可能に支持する左サイド部材と、前記右サイド部材の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる上右軸線回りに回転可能に支持し、前記左サイド部材の上部を左端部に前記上右軸線に平行な上左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記上右軸線および前記上左軸線に平行な上中間軸線回りに回転可能に支持される上クロス部材と、前記右サイド部材の下部を右端部に前記上右軸線に平行な下右軸線回りに回転可能に支持し、前記左サイド部材の下部を左端部に前記上左軸線に平行な下左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記上中間軸線と平行な下中間軸線回りに回転可能に支持される下クロス部材とを含むリンク機構と、
前記車体フレームの左右方向における前記右サイド部材と前記左サイド部材の間で前記車体フレームに支持され、上端部が前記下中間軸線よりも前記車体フレームの上下方向における上方に設けられ、前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回転可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの上端部に設けられたハンドルと、
前記ハンドルの操作に応じた前記ステアリングシャフトの回転を前記右緩衝装置と前記左緩衝装置に伝達する回転伝達機構と、
前記上クロス部材および前記下クロス部材の前記車体フレームに対する回転動作に対して付与される抵抗力を変更する抵抗力変更機構と、
を備え、
前記抵抗力変更機構は、相対的に変位可能であり、かつ相対的な変位に対する抵抗力が変更可能な第1部および第2部と、を含み、
前記第1部は、
前記リンク機構に含まれる前記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材のいずれか一つの部材に支持され、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が前記一つの部材と常に重なる位置に設けられ、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向に関して、前記一つの部材および前記ステアリングシャフトの前方または後方のいずれか一つの方向に並べて設けられ、
前記第2部は、
前記第1部が支持される前記一つの部材に対して相対的に変位する前記車体フレーム、前記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材のいずれか一つの他の部材に支持され、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が前記一つの他の部材と常に重なる位置に設けられ、
前記車体フレームに対して前記上クロス部材が回転する前記上中間軸線の方向に関して、前記第1部の前記一つの部材および前記ステアリングシャフトに対する前記一つの方向と同じ方向に前記一つの他の部材と並べて設けられる。
【0013】
上記の構成(1)によれば、抵抗力変更機構は、相対的に変位可能であり、かつ相対的な変位に対する抵抗力が変更可能な第1部および第2部と、を含む。
第1部は、リンク機構に含まれる右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材のいずれか一つの部材に支持される。第1部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が一つの部材と常に重なる位置に設けられる。第1部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向に関して、一つの部材およびステアリングシャフトの前方または後方のいずれか一つの方向に並べて設けられる。
第2部は、第1部が支持される一つの部材に対して相対的に変位する車体フレーム、右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材のいずれか一つの他の部材に支持される。第2部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が一つの他の部材と常に重なる位置に設けられる。第2部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向に関して、第1部の一つの部材およびステアリングシャフトに対する一つの方向と同じ方向に一つの他の部材と並べて設けられる。
【0014】
上記の構成(1)によれば、第1部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が一つの部材と常に重なる位置に設けられる。第2部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向から見て、少なくともその一部が一つの他の部材と常に重なる位置に設けられる。つまり、上中間軸線の方向から見て、抵抗力変更機構の可動範囲がリンク機構の可動範囲の内側に位置する。このため、抵抗力変更機構を車両に設けても、上中間軸線の方向からみて、車両が大型化しない。
【0015】
また、上記構成(1)によれば、リンク機構は、右サイド部材の上部を右端部に車体フレームの前後方向に延びる上右軸線回りに回転可能に支持し、左サイド部材の上部を左端部に上右軸線に平行な上左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が車体フレームに上右軸線および上左軸線に平行な上中間軸線回りに回転可能に支持される上クロス部材と、右サイド部材の下部を右端部に上右軸線に平行な下右軸線回りに回転可能に支持し、左サイド部材の下部を左端部に上左軸線に平行な下左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が車体フレームに上中間軸線と平行な下中間軸線回りに回転可能に支持される下クロス部材を有する。このため、車体フレーム、右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材は、いずれも上中間軸線に平行な軸線回りに回転し、上中間軸線に直交する面上を相対変位する。
また、第1部は、リンク機構に含まれる右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材のいずれか一つの部材に支持される。第2部は、第1部が支持される一つの部材に対して相対的に変位する車体フレーム、右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材のいずれか一つの他の部材に支持される。このため、第1部および第2部は、上中間軸線に直交する面上を相対変位する。
車体フレーム、右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材の移動方向と、第1部および第2部の移動方向が揃えられているため、抵抗力変更機構がリンク機構と干渉しにくい。
さらに、第1部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向に関して、一つの部材およびステアリングシャフトの前方または後方のいずれか一つの方向に並べて設けられる。第2部は、車体フレームに対して上クロス部材が回転する上中間軸線の方向に関して、第1部の一つの部材およびステアリングシャフトに対する一つの方向と同じ方向に一つの他の部材と並べて設けられる。抵抗力変更機構をなす部材とリンク機構をなす部材がともに上中間軸線と直交する面上を移動するため、上中間軸線の方向に関して、抵抗力変更機構をリンク機構と並べて、互いに接近して配置することができる。このため、抵抗力変更機構の可動範囲とリンク機構の可動範囲を合わせた可動範囲を、車両の側方から見て、コンパクトに構成できる。
以上のように、上中間軸線の方向から見て抵抗力変更機構とリンク機構の可動範囲をコンパクトに構成でき、かつ、車両を側方から見て抵抗力変更機構とリンク機構の可動範囲をコンパクトに構成できる。このため、抵抗力変更機構を車両に搭載しても、2つの前輪よりも上方のステアリングシャフトの周囲の構造の大型化を抑制できる。つまり、リンク機構の作動を抑制する機能を設けても、2つの前輪よりも上方のステアリングシャフトの周囲の構造の大型化を抑制できる。
【0016】
上記の目的を達成するために本発明は、(2)前記第1部は、前記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材のいずれか一つに支持され、
前記第2部は、前記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材の残りの一つに支持される態様としてもよい。
【0017】
上記の目的を達成するために本発明は、(3)前記第1部は、前記右サイド部材、前記左サイド部材、前記上クロス部材、前記下クロス部材のいずれか一つに支持され、前記第2部は、前記車体フレームに支持される態様としても良い。
【0018】
(3)の態様によれば、上クロス部材および下クロス部材が車体フレームに対して回転すると、右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材はいずれも車体フレームに対して相対変位する。このため、第一部を右サイド部材、左サイド部材、上クロス部材、下クロス部材のいずれにも支持させることができ、設計の自由度が高い。このため、他の部材との干渉を避けやすい位置に第一部の支持位置を設けることができ、2つの前輪よりも上方のステアリングシャフトの周囲の構造の大型化を抑制できる。
【0019】
上記の目的を達成するために本発明は、(4)前記第1部が、前記右サイド部材が前記下クロス部材を支持する位置よりも下方で前記右サイド部材に支持されていてもよい。または、前記第1部が、前記左サイド部材が前記下クロス部材を支持する位置よりも下方で前記左サイド部材に支持されていてもよい。
【0020】
右サイド部材または左サイド部材が下クロス部材を支持する位置よりも上方の空間は、他の車両搭載部品を配置するために利用されやすい空間である。
そこで、(4)の態様によれば、第1部が、この空間を避けて右サイド部材が下クロス部材を支持する位置よりも下方で右サイド部材に支持されている。または、第1部が、左サイド部材が下クロス部材を支持する位置よりも下方で左サイド部材に支持されている。このため、他の車両搭載部品との干渉を考慮せずに抵抗力変更機構を設けやすく、抵抗力変更機構を設けても車両の大型化を抑制できる。
【0021】
上記の目的を達成するために本発明は、(5)抵抗力変更機構は、第1部と第2部のいずれか一方に設けられ、第1部と第2部のいずれか他方に対して摩擦力を付与する摩擦付与部を有し、抵抗力変更機構は、摩擦付与部による摩擦力を調整して、第1部および第2部の互いの相対移動に対する抵抗力を変更可能とする態様であってもよい。
【0022】
上記の目的を達成するために本発明は、(6)抵抗力変更機構は、第1部と第2部の相対移動に応じて容積が変化する第1液室と、第1液室と連通路を介して連通する第2液室と、を有し、連通路の開閉度合いを調節して第1液室と第2液室との間の流体の移動を制限することにより、第1部および第2部の互いの相対移動に対する抵抗力を変更可能とする態様であってもよい。
【0023】
上記の目的を達成するために本発明は、(7)上クロス部材または下クロス部材の車体フレームに対する回転に応じて、第一部と第二部との距離が変化し、抵抗力変更機構は、第一部と第二部との距離の変化に対する抵抗力を変更する態様であってもよい。
【0024】
上記の目的を達成するために本発明は、(8)上クロス部材または下クロス部材の車体フレームに対する回転に応じて、第一部と第二部との回転角度が変化し、抵抗力変更機構は、第一部と第二部との回転角度の変化に対する抵抗力を変更する態様であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る三輪車両の全体を示す左側面図である。
図2】車体カバーを外した状態での三輪車両の全体を示す正面図である。
図3図1の三輪車両における第2前輪と第2緩衝装置の関係を示す左側面図である。
図4図1の三輪車両の一部を示す左側面図である。
図5図1の三輪車両が傾斜した状態を示す正面図である。
図6図1の三輪車両における操作力伝達機構を拡大して示す正面図である。
図7図6の操作力伝達機構の動作を模式的に示す図である。
図8図1の三輪車両における第2ブラケットと第2前輪の動作を模式的に示す図である。
図9図1の三輪車両における抵抗力変更機構を示す図である。
図10図9に示した抵抗力変更機構の側面図である。
図11図9に示した抵抗力変更機構の動作を説明するための模式図である。
図12】車両を傾斜させたときの図9に示した抵抗力変更機構を示す図である。
図13】第2の実施形態に係る車両の一部を前方から見た図である。
図14】第2の実施形態に係る車両の一部を側方から見た図である。
図15】第3の実施形態に係る車両の一部を前方から見た図である。
図16】第3の実施形態に係る車両の一部を側方から見た図である。
図17】第4の実施形態に係る車両の一部を前方から見た図である。
図18】第4の実施形態に係る車両の一部を側方から見た図である。
図19】第5の実施形態に係る車両の一部を前方から見た図である。
図20】第6の実施形態に係る車両の一部を側方から見た図である。
図21】第7の実施形態に係る車両の一部を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態に係る車両の一種である三輪車両について、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1から図12を参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る車両1について説明する。同一または相当する要素には同一符号を付してその部材についての説明は繰り返さない。以下、図中の矢印Fは、車両1の前方向を示す。図中の矢印Rは、車両1の右方向を示す。図中の矢印Lは、車両1の左方向を示す。矢印Uは、鉛直上方向を示す。車幅方向外方とは車幅方向中央から左方または右方に向かう方向を意味している。
【0028】
〈全体構成〉
図1は、車両1の全体側面図である。なお、以下の説明において前後左右と方向を示す場合、車両1を運転する乗員から見た前後左右の方向を意味するものとする。
【0029】
車両1は、車体本体2、前輪3、および後輪4を備えている。車体本体2は、車体フレーム21、車体カバー22、ハンドル23、シート24、およびパワーユニット25を備えている。
【0030】
車体フレーム21は、パワーユニット25やシート24などを支持する。パワーユニット25は、エンジン、およびミッション装置などを含んでいる。図1では車体フレーム21は破線で示されている。
【0031】
車体フレーム21は、ヘッドパイプ211と、ダウンフレーム212と、リアフレーム213とを含んでいる。ヘッドパイプ211は、車両の前部に配置されている。ヘッドパイプ211の周囲には、リンク機構5が配置されている。ヘッドパイプ211には、ステアリングシャフト60が回転自在に挿入されている。ステアリングシャフト60は略上下方向(中間操舵軸線の方向)に延びている。ステアリングシャフト60の上端部には、ハンドル23が設けられている。ダウンフレーム212は、前端から後方に向かって下方に傾斜する。リアフレーム213は、シート24、およびテールランプなどを支持する。ハンドル23にはスイッチ23aが取り付けられている。
【0032】
車体フレーム21は、車体カバー22によって覆われている。車体カバー22は、フロントカバー221、フロントフェンダー223、およびリアフェンダー224を含んでいる。
【0033】
フロントカバー221は、シート24の前方に位置している。フロントカバー221は、ヘッドパイプ211、およびリンク機構5を覆っている。
【0034】
フロントフェンダー223は、左右一対の前輪3の上方にそれぞれ配置されている。フロントフェンダー223は、フロントカバー221の下方に配置されている。リアフェンダー224は、後輪4の上方に配置されている。
【0035】
前輪3は、ヘッドパイプ211、およびリンク機構5よりも下方に位置している。前輪3は、フロントカバー221の下方に配置されている。後輪4は、車体カバー22の下方に配置されている。
【0036】
〈三輪車両の前部の構成〉
図2は、車体カバー22を外した状態において車両1を示す全体正面図である。図2では、ダウンフレーム212などは省略している。
【0037】
車両1は、ハンドル23、ステアリングシャフト60、ヘッドパイプ211、左右一対の前輪3、第1緩衝装置33、第1回転防止機構340、第2緩衝装置35、第2回転防止機構360、リンク機構5、操作力伝達機構6、および抵抗力変更機構7を備えている。
【0038】
前輪3は、車体フレーム21の左右方向に並べて配置された第1前輪31、および第2前輪32を含んでいる。右前輪の一例としての第1前輪31は、車幅方向中央に対して右方に配置されている。第1前輪31の上方には、第1フロントフェンダー223aが配置されている。左方前輪の一例としての第2前輪32は、車幅方向中央に対して左方に配置されている。第2前輪32の上方には、第2フロントフェンダー223bが配置されている。第2前輪32は、車体フレーム21の左右方向について、第1前輪31と対称に配置されている。本明細書において「車体フレーム21の左右方向」とは、車両1の正面視でヘッドパイプ211の軸方向に直交する方向を指す。
【0039】
右緩衝装置の一例としての第1緩衝装置33は、下部に第1前輪31を支持し、上部に対する第1前輪31の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する。第1緩衝装置33は、第1緩衝器330と第1回転防止機構340を備えている。本明細書において「車体フレーム21の上下方向」とは、車両1の正面視でヘッドパイプ211の軸方向に沿う方向を指す。
【0040】
左緩衝装置の一例としての第2緩衝装置35は、下部に第2前輪32を支持し、上部に対する第2前輪32の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する。第2緩衝装置35は、第2緩衝器350と第2回転防止機構360を備えている。
【0041】
図3は、第2前輪32と第2緩衝装置35の関係を示す左側面図である。
【0042】
第2緩衝器350は、第2支持部材321を備えている。第2支持部材321は、第2第2外筒322、第2支持軸323、および第2内筒326を含んでいる。第2外筒322の内周側には、第2内筒326の一部が挿入されている。第2内筒326は、第2外筒322の上方に配置されている。第2内筒326は、第2外筒322の延びる方向において、第2外筒322に対して相対移動可能である。第2緩衝器350は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器である。
【0043】
第2回転防止機構360は、第2外筒322の第2内筒326に対する回転を防止する。第2回転防止機構360は、第2ガイド325、第2回転防止ロッド361、および第2ブラケット327を含んでいる。第2ガイド325は、第2回転防止ロッド361の移動方向をガイドしている。第2ガイド325は、第2ガイド筒325bを含んでいる。第2ガイド筒325bの内周側には、第2回転防止ロッド361が挿入されている。第2回転防止ロッド361は、第2ガイド筒325bに対して相対移動可能である。第2回転防止ロッド361は、第2前輪32が第2内筒326に対して相対回転することを防止する。第2回転防止ロッド361は、第2緩衝器350と平行に配置されている。第2回転防止ロッド361の上端と第2内筒326の上端は、第2ブラケット327に固定されている。これにより、第2回転防止ロッド361は、第2内筒326に対して相対移動不能である。
【0044】
図2に示すように、第2前輪32は、第2支持部材321に支持されている。第2前輪32は、第2支持部材321の下部に接続されている。第2支持軸323は、第2外筒322の下端に設けられ、第2前輪32を支持している。第2ガイド325は、第2プレート325aを含んでいる。第2プレート325aは、第2フロントフェンダー223bの上方まで延びている。第2前輪32は、第2中心軸Yを中心に回転して向きを変えることができる。第2中心軸Yは、第2プレート325aと第2接続点325cで交わっている。
【0045】
第1緩衝器330は、第1支持部材331を備えている。第1支持部材331は、第1外筒332、第1支持軸334、および第1内筒336を含んでいる。第1緩衝器330は、図3を参照して説明した第2緩衝器350と同様の構成を有している。すなわち、第1外筒332の内周側には、第1内筒336の一部が挿入されている。第1内筒336は、第1外筒332の上方に配置されている。第1内筒336は、第1外筒332の延びる方向において、第1外筒332に対して相対移動可能である。第1緩衝器330は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器である。
【0046】
第1回転防止機構340は、第1外筒332の第1内筒336に対する回転を防止する。第1回転防止機構340は、図3を参照して説明した第2回転防止機構360と同様の構成を有している。すなわち、第1回転防止機構34は、第1ガイド333、第1回転防止ロッド341、および第1ブラケット335を含んでいる。第1ガイド333は、第1回転防止ロッド341の移動方向をガイドしている。第1ガイド333は、第1ガイド筒333bを含んでいる。第1ガイド筒333bの内周側には、第1回転防止ロッド341が挿入されている。第1回転防止ロッド341は、第1ガイド筒333bに対して相対移動可能である。第1回転防止ロッド341は、第1前輪31が第1内筒336に対して相対回転するのを防止する。第1回転防止ロッド341は、第1緩衝器330と平行に配置されている。第1回転防止ロッド341と第1内筒336の上端は、第1ブラケット335に固定されている。これにより、第1回転防止ロッド341は、第1内筒336に対して相対移動不能である。
【0047】
第1前輪31は、第1支持部材331に支持されている。第1前輪31は、第1支持部材331の下部に接続されている。第1支持軸334は、第1外筒332の下端に設けられ、第1前輪31を支持している。第1ガイド333は、第1プレート333aを含んでいる。第1プレート333aは、第1フロントフェンダー223aの上方まで延びている。第1前輪31は、第1中心軸Xを中心に回転して向きを変えることができる。第1中心軸Xは第1プレート333aと第1接続点333cで交わっている。
【0048】
<リンク機構>
リンク機構5は、ハンドル23の下方に配置されている。リンク機構5は第1前輪31、および第2前輪32の上方に配置されている。リンク機構5は、ヘッドパイプ211に接続されている。リンク機構5は、第1クロス部材51(上クロス部材の一例)、第2クロス部材52(下クロス部材の一例)、第1サイド部材53(右サイド部材の一例)、および第2サイド部材54(左サイド部材の一例)を含んでいる。
【0049】
図4に示すように、第1クロス部材51は、一対の板状の部材512を含んでいる。第1クロス部材51は、車体フレーム21の左右方向に延びている。一対の板状の部材512は、車体フレーム21の前後方向においてヘッドパイプ211を挟んでいる。本明細書において「車体フレーム21の前後方向」とは、車両1の前後方向と一致する方向を指す。本明細書において「車体フレーム21の左右方向に延びる」とは、車体フレーム21の左右方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの上下方向および前後方向と比較して左右方向に近い傾きで延びることを指す。
【0050】
図2に示すように、第1クロス部材51の中間部は、支持部Aによって車体フレーム21(ヘッドパイプ211)に支持されている。第1クロス部材51の中間部は、支持部Aにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる上中間軸線AAを中心として回転可能に車体フレーム21に支持されている。ハンドル23の回転に伴ってステアリングシャフト60が回転した場合であっても、第1クロス部材51は、ステアリングシャフト60の回転軸線回りには回転しない。本明細書において「車体フレーム21の前後方向に延びる」とは、車体フレーム21の前後方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの上下方向および左右方向と比較して前後方向に近い傾きで延びることを指す。
【0051】
図2に示すように、第1クロス部材51の右端部は、接続部Bによって第1サイド部材53の上部に接続されている。第1サイド部材53の上部は、第1クロス部材51の右端部により、接続部Bにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる上右軸線を中心に回転可能に支持されている。第1クロス部材51の左端部は、接続部Cによって第2サイド部材54の上部に接続されている。第2サイド部材54の上部は、第1クロス部材51の左端部により、接続部Cにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる上左軸線を中心に回転可能に支持されている。上中間軸線AA、上右軸線、上左軸線は、互いに平行である。
【0052】
図4に示すように、第2クロス部材52は、一対の板状の部材522を含んでいる。第2クロス部材52は、車体フレーム21の左右方向に延びている。一対の板状の部材522は、車体フレーム21の前後方向においてヘッドパイプ211を挟んでいる。第2クロス部材52は、車体フレーム21の直立状態において、第1クロス部材51よりも下方かつ第1緩衝装置33と第2緩衝装置35よりも上方に配置されている。
【0053】
第2クロス部材52の中間部は、支持部Dによって車体フレーム21(ヘッドパイプ211)に支持されている。第2クロス部材52の中間部は、支持部Dにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる下中間軸線を中心として回転可能に車体フレーム21に支持されている。支持部Dにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる回転軸線は、支持部Aにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる回転軸線と平行である。ハンドル23の回転に伴ってステアリングシャフト60が回転した場合であっても、第2クロス部材52は、ステアリングシャフト60の回転軸線回りには回転しない。
【0054】
図2に示すように、第2クロス部材52の右端部は、接続部Eによって第1サイド部材53の下部に接続されている。第1サイド部材53の下部は、第2クロス部材52の右端部により、接続部Eにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる下右軸線を中心に回転可能に支持されている。第2クロス部材52の左端部は、接続部Fによって第2サイド部材54の下部に接続されている。第2サイド部材54の下部は、第2クロス部材52の左端部により、接続部Fにおいて車体フレーム21の前後方向に延びる下左軸線を中心に回転可能に支持されている。
上中間軸線AA、上右軸線、上左軸線、下中間軸線、下右軸線、下左軸線は、互いに平行である。
【0055】
本実施形態では、第1クロス部材51、および第2クロス部材52は、左右方向に延びる前後一対の板状部材を含む構成であるが、第1クロス部材51、および第2クロス部材52は、それぞれヘッドパイプ211から右方向に延びる部材と、ヘッドパイプ211から左方向に延びる部材とを含む構成であってもよい。
【0056】
第1サイド部材53は、ヘッドパイプ211の右方に配置されている。第1サイド部材53は、ヘッドパイプ211とステアリングシャフト60の延びる方向と略平行な方向に延びている。第1サイド部材53は、第1前輪31と第1緩衝装置33の上方に配置されている。第1サイド部材53は、第1緩衝装置33の上部を、第1中心軸X(右軸線の一例)を中心に回転可能に支持している。
【0057】
第2サイド部材54は、ヘッドパイプ211の左方に配置されている。第2サイド部材54は、ヘッドパイプ211とステアリングシャフト60の延びる方向と略平行な方向に延びている。第2サイド部材54は、第2前輪32と第2緩衝装置35の上方に配置されている。第2サイド部材54は、第2緩衝装置35の上部を、第2中心軸Y(左軸線の一例)を中心に回転可能に支持している。
【0058】
ステアリングシャフト60は、車体フレーム21の左右方向における第1サイド部材53と第2サイド部材54の間で車体フレーム21に支持されている。ステアリングシャフト60の上端部は、第2クロス部材52の支持部Dにおける回転軸線よりも車体フレーム21の上下方向における上方に設けられている。ステアリングシャフト60は、車体フレーム21(ヘッドパイプ211)の上下方向に延びる中間操舵軸線Zを中心に回転可能とされている。本明細書において「車体フレーム21の上下方向に延びる」とは、車体フレーム21の上下方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの前後方向および左右方向と比較して上下方向に近い傾きで延びることを指す。
【0059】
図5は、車体フレーム21が角度Tだけ左方に傾斜した状態を示す正面図である。車体フレーム21の上方を矢印UFで示している。車両1の直立状態においては、車体フレーム21の上方UFと鉛直上方Uは一致している。車両1が傾斜した状態においては、車体フレーム21の上方UFと鉛直上方Uは相違する。
【0060】
車体フレーム21が左右方向に傾斜すると、リンク機構5は変形する。乗員が車両1を角度Tだけ左方に傾斜させようとすると、車体フレーム21(ヘッドパイプ211)が直立状態における姿勢から左方に傾斜する。これに伴い、第1クロス部材51と第2クロス部材52は、ヘッドパイプ211、第1サイド部材53、および第2サイド部材54に対して回転する。このとき第1クロス部材51と第2クロス部材52の延びる方向は、正面視で略平行である。ヘッドパイプ211の左方への傾斜に伴って第1クロス部材51の左端部は第2クロス部材52の左端部よりも左方に移動する。これにより、第2サイド部材54が直立状態における姿勢から左方へ傾斜する。このとき、第2サイド部材54の延びる方向は、正面視でヘッドパイプ211の延びる方向と略平行である。第2サイド部材54と同様に、第1サイド部材53も直立状態における姿勢から左方へ傾斜する。第1サイド部材53の延びる方向は、正面視でヘッドパイプ211の延びる方向に対して平行である。上記のようなリンク機構5の変形に伴い、第2前輪32は、第1前輪31よりも車体フレーム21の上方向(UF方向)に変位し、車両1の左方への傾斜が許容される。
【0061】
同様にして、乗員が車両1を右に傾斜させようとすると、車体フレーム21(ヘッドパイプ211)が直立状態における姿勢から右方に傾斜する。これに伴い、第1クロス部材51と第2クロス部材52は、ヘッドパイプ211、第1サイド部材53、および第2サイド部材54に対して回転する。このとき第1クロス部材51と第2クロス部材52の延びる方向は、正面視で略平行である。ヘッドパイプ211の右方への傾斜に伴って第1クロス部材51の左端部は第2クロス部材52の左端部よりも右方に移動する。これにより、第2サイド部材54が直立状態における姿勢から右方へ傾斜する。このとき、第2サイド部材54の延びる方向は、正面視でヘッドパイプ211の延びる方向と略平行である。第2サイド部材54と同様に、第1サイド部材53も直立状態における姿勢から右方へ傾斜する。第1サイド部材53の延びる方向は、正面視でヘッドパイプ211の延びる方向に対して平行である。上記のようなリンク機構5の変形に伴い、第1前輪31は、第2前輪32よりも車体フレーム21の上方向に変位し、車両1の右方への傾斜が許容される。
【0062】
<操作力伝達機構>
回転伝達機構の一例としての操作力伝達機構6は、ハンドル23の操作に応じたステアリングシャフト60の回転を第1緩衝装置33と第2緩衝装置35に伝達し、第1緩衝装置33と第2緩衝装置35を、それぞれ第1中心軸Xと第2中心軸Yを中心に回転させる。操作力伝達機構6の一部は、第2クロス部材52の下方に配置されている。操作力伝達機構6は、第1前輪31、および第2前輪32よりも上方に配置されている。
【0063】
図2に示すように、第1サイド部材53の下端部は、第1ブラケット335に接続されている。第1ブラケット335は、第1サイド部材53に対して第1中心軸Xを中心に回転可能に取り付けられている。操作力伝達機構6は、ステアリングシャフト60の下端部と第1ブラケット335を連結している。操作力伝達機構6は、ハンドル23の回転操作に伴うステアリングシャフト60の回転を第1ブラケット335に伝達する。これにより第1ブラケット335は、第1サイド部材53に対して第1中心軸Xを中心に回転する。第1サイド部材53は、ハンドル23が回転操作されても、車体フレーム21に対して回転しない。
【0064】
第2サイド部材54の下端部は、第2ブラケット327に接続されている。第2ブラケット327は、第2サイド部材54に対して第2中心軸Yを中心に回転可能に取り付けられている。操作力伝達機構6は、ステアリングシャフト60の下端部と第2ブラケット327を連結している。操作力伝達機構6は、ハンドル23の回転操作に伴うステアリングシャフト60の回転を第2ブラケット327に伝達する。これにより第2ブラケット327は、第2サイド部材54に対して第2中心軸Yを中心に回転する。第2サイド部材54は、ハンドル23が回転操作されても、車体フレーム21に対して回転しない。
【0065】
図6は、操作力伝達機構6を拡大して示す正面図である。操作力伝達機構6は、ステアリングシャフト60、第1伝達プレート61、第2伝達プレート62、第3伝達プレート63、第1伝達部材67、第1ブラケット335、および第2ブラケット327を含んでいる。
【0066】
第1伝達プレート61は、ステアリングシャフト60の下端部に接続されている。第1伝達プレート61は、ステアリングシャフト60に対して回転不能である。ハンドル23をヘッドパイプ211に対して回転させると、ステアリングシャフト60がヘッドパイプ211に対して回転する。ステアリングシャフト60の回転に伴って、第1伝達プレート61は回転する。
【0067】
第2伝達プレート62は、第1緩衝装置33の第1ブラケット335に固定され、第1サイド部材53に対して第1ブラケット335とともに回転可能とされている。第2伝達プレート62は、第1ブラケット335よりも下方に位置している。
【0068】
第3伝達プレート63は、正面視において、第1伝達プレート61を中心として第2伝達プレート62と対称に配置されている。第3伝達プレート63は、第2緩衝装置35の第2ブラケット327に固定され、第2サイド部材54に対して第2ブラケット327とともに回転可能とされている。第3伝達プレート63は、第2ブラケット327よりも下方に位置している。
【0069】
本明細書においては、第1緩衝装置33に対して固定され、第1緩衝装置33とともに回転可能な部位は、第1緩衝装置33の一部とする。したがって、操作力伝達機構6の第2伝達プレート62は、第1緩衝装置33の一部でもある。同様に、第2緩衝装置35に対して固定され、第2緩衝装置35とともに回転可能な部位は、第2緩衝装置35の一部とする。したがって、操作力伝達機構6の第3伝達プレート63は、第2緩衝装置35の一部でもある。
【0070】
第1伝達部材67は、ステアリングシャフト60から伝達された操作力を第1ブラケット335、および第2ブラケット327に伝達する。第1伝達部材67は、車体フレーム21の左右方向に延びている。操作力をステアリングシャフト60から第1ブラケット335、および第2ブラケット327に伝達する詳細な構成については後述する。
【0071】
図7は、操作力伝達機構6の構成を示す概略平面図である。図7は、操作力伝達機構6を上方から見ており、リンク機構5やブラケットなどの構成はすべて省略している。図7において、二点鎖線は、ステアリングシャフト60を矢印Aの方向に回転させた状態を示している。
【0072】
操作力伝達機構6は、第1ジョイント64、第2ジョイント65、および第3ジョイント66をさらに含んでいる。
【0073】
第1伝達プレート61の前部は、第1伝達プレート61の後部よりも狭い幅になっている。第1伝達プレート61の前部には第1ジョイント64が配置されている。
【0074】
第2伝達プレート62の前部の幅は、第2伝達プレート62の後部の幅よりも狭い。第2伝達プレート62の前部には第2ジョイント65が配置されている。第2伝達プレート62は、第1伝達プレート61の右方に配置されている。
【0075】
第3伝達プレート63の前部の幅は、第3伝達プレート63の後部の幅よりも狭い。第3伝達プレート63の前部には第3ジョイント66が配置されている。第3伝達プレート63は、第1伝達プレート61の左方に配置されている。
【0076】
第1ジョイント64は、第1軸受641、第1軸642、および第1フロントロッド643を含んでいる。第1軸642は、第1軸受641に対して相対回転可能である。第1軸受641は、第1軸642を支持する。第1軸受641は、第1伝達プレート61に支持されている。第1伝達プレート61は、第1軸642を支持する第1支持孔641bを含んでいる。第1軸642は、第1支持孔641bに嵌入されている。第1軸受641は、第1軸642に固定されている。第1軸642は、第1伝達プレート61の前端に配置されている。
【0077】
第1フロントロッド643は、第1軸受641から前方に延びている。第1フロントロッド643は、第1軸受641が第1伝達プレート61に対して回転することで、第1軸642を中心に左右方向に相対回転可能である。第1フロントロッド643は、第1軸受641に固定されている。
【0078】
第2ジョイント65は、第2軸受651、第2軸652、および第2フロントロッド653を含んでいる。第2軸受651は、第1軸受641と同様の構成である。第2軸652は、第1軸642と同様の構成である。第2フロントロッド653は、第1フロントロッド643と同様の構成である。
【0079】
第3ジョイント66は、第3軸受661、第3軸662、および第3フロントロッド663を含んでいる。第3軸受661は、第1軸受641と同様の構成である。第3軸662は、第1軸642と同様の構成である。第3フロントロッド663は、第1フロントロッド643と同様の構成である。
【0080】
第1伝達部材67は、第1リング671、第2リング672、第3リング673を含んでいる。第1リング671には、第1フロントロッド643が挿入されている。第1リング671は、第1伝達部材67の左右方向中央に設けられている。第2リング672は、第1リング671の右方に配置されている。第2リング672には、第2フロントロッド653が挿入されている。第3リング673は、第1リング671の左方に配置されている。第3リング673には、第3フロントロッド663が挿入されている。
【0081】
図8は、第2前輪32、および第2ブラケット327の平面図である。図8の二点鎖線は、第2前輪32が旋回した状態を示す。なお、第2フロントフェンダー223bは図示を省略されている。
【0082】
第2ブラケット327は、上述のように、第2サイド部材54に接続されている。第2ブラケット327には、第3伝達プレート63が取り付けられている。
【0083】
ステアリングシャフト60が回転すると、ステアリングシャフト60の回転に伴って第1伝達プレート61が回転する。ここでは、例えば、ステアリングシャフト60が図7の矢印Aの方向に回転すると、第1伝達プレート61の回転に伴って、第1ジョイント64が右後方に移動する。このとき、第1軸受641に対して第1軸642が回転し、第1伝達部材67の姿勢を維持しながら第1伝達部材67を右後方に移動させる。第1伝達部材67の右方向への移動に伴って第2フロントロッド653、および第3フロントロッド663が右後方に移動する。第2フロントロッド653、および第3フロントロッド663が右後方に移動すると、第2軸受651、および第3軸受661は右後方に移動する。第2軸受651、および第3軸受661の右後方への移動に伴って、第2伝達プレート62、および第3伝達プレート63は、それぞれ第1サイド部材53、および第2サイド部材54を中心として、矢印Aの方向に回転する。これにより、図7における二点破線で示す状態となる。第2伝達プレート62の回転中心は、第1中心軸Xと一致している。第3伝達プレート63の回転中心は、第2中心軸Yと一致している。
【0084】
第3伝達プレート63が第3サイド部材54を中心に回転すると、第3伝達部材69を介して第2ブラケット327が図8の矢印Bの方向に回転する。第2ブラケット327が矢印Bの方向に回転すると、第2緩衝器350を介して第2前輪32が図8の矢印Cの方向に回転する。前輪32は、第2中心軸Yを中心として右方へ回転する。このとき、前輪32は、図8の二点鎖線で示す状態となる。第1前輪31は、第2前輪32と同様にして第1中心軸Xを中心として右方へ回転する。このように、ハンドル23を車体フレーム21の左右方向に操作することで、第1前輪31、および第2前輪32が車体フレーム21の左右方向に回転する。
【0085】
<抵抗力変更機構>
次に、図9から図12を用いて、抵抗力変更機構7を説明する。抵抗力変更機構7は、リンク機構5の変形を抑制する。具体的には、抵抗力変更機構7は、第1クロス部材51と第2クロス部材52の車体フレーム21に対する回転動作に対して付与される抵抗力を変更可能に構成されている。
【0086】
図9は、抵抗力変更機構7を説明するための図である。図9では、車体カバー22などを省略して示している。図9の(a)は、抵抗力変更機構7を搭載した車両1の一部を示す正面図である。図9の(a)は、上中間軸線AAの方向の前方から車両1の一部を見た図である。図9の(b)は、図9の(a)を車体フレーム21の上方から見た図である。
【0087】
抵抗力変更機構7は、いわゆるテレスコピック要素である。このテレスコピック要素に類似の構造は、ドイツ国特許出願公開DE102010052716A1号公報などにより知られている。
図9に示すように、抵抗力変更機構7は、インナロッド11(第1部の一例)およびアウタロッド12(第2部の一例)を備えている。インナロッド11は、長尺の部材である。アウタロッド12は、長尺の部材である。インナロッド11の一方の端部は、アウタロッド12の一方の端部に開口する孔部に挿入されている。インナロッド11のアウタロッド12への挿入長さは、変更可能とされている。
【0088】
インナロッド11の他方の端部には、インナ支持部11aが設けられている。インナ支持部11aは、第1サイド部材53の上右軸部53aに回転可能に取り付けられている。上右軸部53aは、第1サイド部材53から上右軸線を通って上右軸線の方向に前方に突き出した軸部である。
アウタロッド12の他方の端部には、アウタ支持部12aが設けられている。アウタ支持部12aは、第2サイド部材54の下左軸部54aに回転可能に取り付けられている。下左軸部54aは、第2サイド部材54から下左軸線を通って下左軸線の方向に前方に突き出した軸部である。
抵抗力変更機構7は、インナロッド11のアウタロッド12への挿入長さを変化させることにより、インナ支持部11aとアウタ支持部12aとを相対的に変位させることができる。
【0089】
本実施形態に係る抵抗力変更機構7において、インナ支持部11aは、第1サイド部材53の上右軸部53aに支持されている。このため、図9の(a)に示すように、上中間軸線AAの方向の前方から見て、インナ支持部11aを含むインナロッド11の一部が、第1サイド部材53と常に重なる位置に設けられている。
同様に、アウタ支持部12aは、第2サイド部材54の下左軸部54aに支持されている。このため、図9の(a)に示すように、上中間軸線AAの方向の前方から見て、アウタ支持部12aを含むアウタロッド12の一部が、第2サイド部材54と常に重なる位置に設けられている。
【0090】
(アウタロッドの取付構造)
次に、図10を用いてアウタロッド12の取付構造を説明する。図10の(a)は、図9に示した車両1の一部を左側方から見た側面図である。図10の(b)は、図10の(a)の一部(B部)を拡大し、第2クロス部材52とアウタ支持部12aの断面を示した図である。
【0091】
図10の(b)に示すように、下左軸部54aが、第2サイド部材54から車体フレーム21の前後方向の前方に延びている。この下左軸部54aと第2クロス部材52との間に第1軸受71が設けられている。第1軸受71の内輪71aは、下左軸部54aに固定されている。第1軸受71の外輪71bは、第2クロス部材52に固定されている。第2サイド部材54は、第1軸受71を介して、第2クロス部材52を回転可能に支持している。
【0092】
第1軸受71の内輪71aの前方には、円筒状のカラー72が設けられている。このカラー72の前方には、第2軸受73の内輪73aが設けられている。
第2軸受73の内輪73aの前方には、ワッシャ74が設けられている。ワッシャ74の前方にはナット75が設けられている。ナット75は、第2クロス部材52および第2サイド部材54を貫通して延びているボルト76に締結される。ナット75をボルト76に締めこむことにより、第2軸受73の内輪73a、カラー72、第1軸受71の内輪71a、下左軸部54aが互いに相対回転不能となる。つまり、ナット75とボルト76とが締結されることで、第1軸受71の内輪71a、カラー72、第2軸受73の内輪73aが、下左軸部54aと一体とされている。
【0093】
第2軸受73の外輪73bはアウタ支持部12aに固定されている。アウタ支持部12aは、第2軸受73を介して、下左軸部54aに回転可能に支持される。第2軸受73の内輪73aは下左軸部54aと一体とされている。
【0094】
図10の(a)に示したように、アウタ支持部12aは、上中間軸線AAの方向に関して、ステアリングシャフト60の前方であり、第2サイド部材54の前方に、配置されている。また、アウタ支持部12aは、上中間軸線AAの方向に関して、第2サイド部材54の前方に第2サイド部材54に並べて配置されている。
【0095】
なお、インナ支持部11aの第1サイド部材53への取付構造も、上述のアウタ支持部12aの第2サイド部材54への取付構造と同様なため、その説明を省略する。
【0096】
(抵抗力を変更する構造)
次に、図11を用いて、抵抗力変更機構7が、インナロッド11とアウタロッド12との相対変位に対する抵抗力を変更可能とする構造を説明する。
図11は、抵抗力変更機構7の動作を説明するための模式図である。図11に示すように、アウタロッド12の内部には、流体が充填された液室が設けられている。この液室は、アウタロッド12の長手方向に移動可能な隔壁15によって、第1液室13と第2液室14とに区画されている。隔壁15は、液室の内壁に液密に接触している。
第1液室13と第2液室14は、連通路16を介して接続されている。この連通路16には、バルブ17が設けられている。バルブ17の開度を調整することにより、この連通路16を流れる流体へ抵抗力を付与することができる。バルブ17の開度は、操作部を操作することにより、調節することができる。操作部は、例えば、操作レバーや操作ボタン、操作スイッチなどとすることができる。操作部は、例えばハンドル23に設けることができる。
隔壁15は、インナロッド11に接続されている。バルブ17を開放した状態で、インナロッド11を長手方向に移動させると、流体が連通路16を流れて、第1液室13と第2液室14の容積が変化する。インナロッド11をアウタロッド12から遠ざけるように長手方向に移動すると、第1液室13の容積が減少し、第2液室14の容積が増大する。インナロッド11をアウタロッド12に近づけるように長手方向に移動すると、第1液室13の容積が増大し、第2液室14の容積が減少する。
【0097】
バルブ17を完全に閉じると、第1液室13と第2液室14との間で流体が移動不可能となる。このため、第1液室13と第2液室14はその容積を変更できず、隔壁15に接続されたインナロッド11はアウタロッド12に対して相対移動が不可能となる。
バルブ17の開度を調節することにより、インナロッド11をアウタロッド12に対して相対移動させるために要する力を変更できる。つまり、本実施形態においては、バルブ17の開度を調節することにより、インナロッド11とアウタロッド12の相対変位に対する抵抗力を変更可能とされている。
【0098】
(抵抗力変更機構の動作)
次に、図12を用いて、車体フレーム21が傾斜したときの抵抗力変更機構7の動作を説明する。図12は、車体フレームが右方に傾斜したときの図9に対応する図である。図12の(a)は、上中間軸線AAの方向の前方から車両1の一部を見た図である。図12の(b)は、車体フレーム21の上方から車両1の一部を見た図である。
図12に示したように、バルブ17が開いた状態において、図12に示したように、車体フレーム21が右方に傾斜すると、第1クロス部材51および第2クロス部材52が車体フレーム21に対して回転する。これに伴い、車体フレーム21の上下方向に関して、第1サイド部材53は上方へ移動し、第2サイド部材54は下方へ移動する。つまり、車体フレーム21が傾斜すると、第1サイド部材53は、第2サイド部材54に対して相対的に変位する。このため、第1サイド部材53の上右軸部53aと第2サイド部材54の下左軸部54aとが相対変位する。
下左軸部54aの上右軸部53aに対する相対角度の変化に対して、インナ支持部11aが上右軸部53a回りに回転し、アウタ支持部12aが下左軸部54a回りに回転することにより、抵抗力変更機構7はリンク機構5の該角度の変化に追従する。
下左軸部54aの上右軸部53aに対する相対距離の変化に対して、インナロッド11のアウタロッド12への挿入長さが変化することにより、抵抗力変更機構7はリンク機構5の該距離の変化に追従する。本実施形態の抵抗力変更機構7は、バルブ17の開度を変更することにより、下左軸部54aの上右軸部53aに対する相対距離の変化に対する抵抗力を変更する。
抵抗力変更機構7のバルブ17を完全に閉じると、インナロッド11のアウタロッド12への挿入長さが変更不可能になる。これにより、インナロッド11のインナ支持部11aが支持される上右軸部53aと、アウタロッド12のアウタ支持部12aが支持される下左軸部54aとの距離が一定に保持される。このため、第1サイド部材53と第2サイド部材54との相対移動が阻止されて、リンク機構5は変形が不可能となる。つまり、車体フレーム21が傾斜した姿勢を維持することができる。例えば、抵抗力変更機構7が、車体フレーム21が左方に傾斜した姿勢を維持することにより、左方が上方に傾斜した斜面に車両を駐車させやすい。
【0099】
<効果>
本実施形態に係る車両1によれば、第1クロス部材51および第2クロス部材52の車体フレーム21に対する回転動作に対して付与される抵抗力を変更する抵抗力変更機構7を備えている。抵抗力変更機構7は、相対的に変位可能であり、かつ相対的な変位に対する抵抗力が変更可能なインナロッド11(第一部)およびアウタロッド12(第二部)と、を含んでいる。
インナロッド11は、リンク機構5に含まれる第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52のいずれか一つの部材(第1サイド部材53)に支持されている。インナロッド11の少なくとも一部が、車体フレーム21に対して第1クロス部材51が回転する上中間軸線AAの方向から見て、一つの部材(第1サイド部材53)と常に重なる位置に設けられている。インナロッド11は、車体フレーム21に対して第1クロス部材51が回転する上中間軸線AAの方向に関して、一つの部材(第1サイド部材53)およびステアリングシャフト60の前方または後方のいずれか一つの方向(前方)に並べて設けられている。
アウタロッド12は、インナロッド11が支持される一つの部材(第1サイド部材53)に対して相対的に変位する車体フレーム21、第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52のいずれか一つの他の部材(第2サイド部材54)に支持されている。アウタロッド12は、車体フレーム21に対して第1クロス部材51が回転する上中間軸線AAの方向から見て、少なくともその一部が一つの他の部材(第2サイド部材54)と常に重なる位置に設けられている。アウタロッド12は、車体フレーム21に対して第1クロス部材51が回転する上中間軸線AAの方向に関して、インナロッド11の一つの部材(第1サイド部材53)およびステアリングシャフト60に対する一つの方向(前方)と同じ方向に一つの他の部材(第1サイド部材53)と並べて設けられている。
【0100】
(上中間軸線AA方向から見た大きさ)
本実施形態に係る抵抗力変更機構7を上中間軸線AAの方向から見ると、インナロッド11の少なくとも一部は第1サイド部材53と常に重なる位置で支持されており、アウタロッド12の少なくとも一部は第2サイド部材54と常に重なる位置で支持されている。より具体的には、インナ支持部11aの右端部は第1サイド部材53の右端部よりも左側に位置し、アウタ支持部12aの左端部は第2サイド部材54の左端部よりも右側に位置する。このため、車体フレーム21が右方に最大限傾斜した、抵抗力変更機構7の可動範囲が最も大きいときでも、この抵抗力変更機構7の可動範囲はリンク機構5の可動範囲よりも内側に位置する。このため、上中間軸線AAの方向から見たときに、抵抗力変更機構7を設けても、抵抗力変更機構7の可動範囲とリンク機構5の可動範囲を合せた可動範囲が、リンク機構5の可動範囲よりも大きくならない。
【0101】
なお、抵抗力変更機構7の可動範囲とは、車体フレーム21を左方に最大限傾斜させた状態から右方に最大限傾斜させたときに、第1部(インナロッド11)および第2部(アウタロッド12)が通過する軌跡の占める仮想的な空間である。
本実施形態においては、車体フレーム21を左方に最大限傾斜させた状態では、インナ支持部11aとアウタ支持部12aとの間の距離が最も短くなり、抵抗力変更機構7の可動範囲が最も小さくなる。一方で、車体フレーム21を右方に最大限傾斜させた状態では、インナ支持部11aとアウタ支持部12aとの間の距離が最も長くなり、抵抗力変更機構7の可動範囲が最も大きくなる。
リンク機構5の可動範囲とは、車体フレーム21を左方に最大限傾斜させた状態から右方に最大限傾斜させたときに、第1クロス部材51、第2クロス部材52、第1サイド部材53、第2サイド部材54が通過する軌跡の占める仮想的な空間である。
【0102】
(車両の側方から見た大きさ)
本実施形態に係る車両1によれば、上右軸線、上中間軸線AA、上左軸線、下右軸線、下中間軸線、下左軸線は互いに平行である。このため、リンク機構5をなす、第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52は、互いに平行な軸線回りに回転する。
本実施形態において、抵抗力変更機構7のインナロッド11はアウタロッド12に対して相対的に移動する。インナロッド11は、第1サイド部材53に支持されている。アウタロッド12は、第2サイド部材54に支持されている。第1サイド部材53および第2サイド部材54は上中間軸線AAに直交する平面上を移動するので、インナロッド11とアウタロッド12も上中間軸線AAに直交する平面上を移動する。また、リンク機構5の第1クロス部材51、第2クロス部材52、第1サイド部材53、第2サイド部材54はいずれも、上中間軸線AAに直交する平面上を移動する。このため、リンク機構5とチルトロック機構との干渉が抑制されている。
また、インナロッド11は、上中間軸線AAの方向に関して、第1サイド部材53より前方かつステアリングシャフト60より前方で、第1サイド部材53と隣り合うように並べられている。アウタロッド12は、第2サイド部材54より前方かつステアリングシャフト60より前方で、第2サイド部材54と隣り合うように並べられている。つまり、インナロッド11とアウタロッド12との間にリンク機構5およびステアリングシャフト60が設けられていない。このため、リンク機構5と抵抗力変更機構7との干渉が回避されている。
さらに、インナロッド11は、上中間軸線AAの方向に関して、第1サイド部材53より前方かつステアリングシャフト60より前方で、第1サイド部材53と隣り合うように並べられている。アウタロッド12は、第2サイド部材54より前方かつステアリングシャフト60より前方で、第2サイド部材54と隣り合うように並べられている。上述のように、抵抗力変更機構7のインナロッド11とアウタロッド12の移動方向と、リンク機構5をなす各部材の移動方向とが揃えられているため、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7をリンク機構5と隣り合うように配置しても、抵抗力変更機構7とリンク機構5とが互いに干渉しない。つまり、車両1を側方から見たときに、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7とリンク機構5とを接近させて並べて配置することができ、抵抗力変更機構7の可動範囲とリンク機構5の可動範囲とを合せた可動範囲が小さくすることができる。
本実施形態では、車両を側方から見たとき、抵抗力変更機構7の可動範囲はインナロッド11とアウタロッド12の通過する略矩形状の空間であり、リンク機構5の可動範囲の空間も略矩形状である。この二つの矩形状の空間が上中間軸線AAの方向に並んで配列されているため、ステアリングシャフト60の周囲の空間が効率的に使われている。つまり、本実施形態によれば、抵抗力変更機構7の移動方向をリンク機構5の移動方向と揃えたので、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7とリンク機構5との間隔を詰めて両者を配置できる。
なお、「上中間軸線AAの方向に並んで配列されている」とは、上中間軸線AAの方向に関して、インナロッド11とリンク機構5を構成する部材(第1クロス部材51)との間に、多少の空間を設けた態様も含みうる。もっとも、本実施形態のように、インナロッド11とリンク機構5を構成する部材(第1クロス部材51)との間に他の部材を介在させずに、両者を配置することが好ましい。
【0103】
以上の理由により、本実施形態に係る車両1によれば、車両1を側方から見たとき、および、車両1を上中間軸線AAの方向から見たとき、のいずれの場合においても、リンク機構5の可動範囲と抵抗力変更機構7の可動範囲を合わせた可動範囲が大型化することを抑制できる。このため、リンク機構5やステアリングシャフト60との干渉を避けて抵抗力変更機構7を車両1に搭載しても、ステアリングシャフト60の周囲が大型化しにくい。
【0104】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態から第7の実施形態を説明する。第2の実施形態から第7の実施形態は、上述した第1の実施形態から抵抗力変更機構のみを変更した例であるため、抵抗力変更機構を主に説明する。第1の実施形態と同一または同様の構成を有する要素は、図示を省略するか同じ番号を付し、繰り返しとなる説明を省略する。
14は、第2の実施形態に係る車両の一部を、左方から見た側面図である。
【0105】
本実施形態において、抵抗力変更機構、いわゆるディスクブレーキの構造を備えている。この構造に類似の構造は、例えば、日本国特許出願公開特開2005-313876号公報などにより知られている。抵抗力変更機構、半円状のディスク(第1部)11Aと、摩擦付与部12A(第2部)とを備えている。
ディスク11Aは、第2クロス部材52の前面に固定されている。ディスク11Aの法線方向が第2クロス部材52の下中間軸線の方向を向く姿勢で、ディスク11Aは第2クロス部材52に固定されている。半円状のディスク11Aの直線部分が第2クロス部材52に固定されている。半円状のディスク11Aの円弧部分が第2クロス部材52から上方に突き出している。
【0106】
摩擦付与部12Aは、第1クロス部材51の前方で、車体フレーム21の一部であるヘッドパイプ211に固定されている。摩擦付与部12Aは、ヘッドパイプ211から第1クロス部材51を貫通して前方に延びる貫通支持部固定されている。貫通支持部、上中間軸線AAに沿って延びている。摩擦付与部12Aは、キャリパブレーキと同様の構造を有する。摩擦付与部12Aは、ディスク11Aと対向する位置に摩擦パッドを備えている。摩擦パッドは、リンク機構5が動作して第2クロス部材52が貫通支持部対して相対的に変位しても、常にディスク11Aの外周部に対向する。
【0107】
摩擦付与部12Aが一対の摩擦パッドでディスク11Aを挟み込むことにより、摩擦付与部12Aとディスク11Aとの相対変位を抑制することができる。抵抗力変更機構、摩擦パッドでディスク11Aを挟み込む力を調節することにより、摩擦付与部12Aとディスク11Aとの相対変位に対する抵抗力が変更可能とされている。
【0108】
(抵抗力変更機構の動作)
リンク機構5が動作すると、第2クロス部材52は、車体フレーム21に対して下中間軸線回りに回転する。抵抗力変更機構ディスク11Aは第2クロス部材52に支持され、摩擦付与部12Aは車体フレーム21に支持されている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、第2クロス部材52の車体フレーム21に対する回転に応じて、ディスク11Aと摩擦付与部12Aの相対角度が変化する。摩擦付与部12Aがディスク11Aに摩擦力を作用させることにより、ディスク11Aと摩擦付与部12Aの相対角度の変化に対する抵抗力を変更できる。
【0109】
(上中間軸線AA方向から見た大きさ)
中間軸線AAの方向から見て、ディスク11Aは第2クロス部材52に固定されているので、ディスク11Aの少なくとも一部は第2クロス部材52に常に重なる位置に設けられている。同様に、摩擦付与部12Aはヘッドパイプ211に固定されているので、摩擦付与部12Aの少なくとも一部はヘッドパイプ211に常に重なる位置に設けられている。このため、上中間軸線AAの方向から見て、抵抗力変更機構可動範囲がリンク機構5の可動範囲の内側に位置する。
【0110】
(側方から見た大きさ)
図14に示すように、ディスク11Aは、上中間軸線AAに関して、ステアリングシャフト60の前方かつ、第2クロス部材52の前方に配置されている。ディスク11Aは、上中間軸線AAの方向に関して、ステアリングシャフト60および第2クロス部材52と並んで配置されている。
摩擦付与部12Aは、上中間軸線AAに関して、ステアリングシャフト60の前方かつ、ヘッドパイプ211の前方に配置されている。摩擦付与部12Aは、上中間軸線AAの方向に関して、ステアリングシャフト60および第2クロス部材52と並んで配置されている。
【0111】
ディスク11Aは第2クロス部材52に固定され、摩擦付与部12Aは車体フレーム21に対して固定されているため、摩擦付与部12Aはディスク11Aに対して下中間軸線回りに相対的に回転する。つまり、ディスク11Aと摩擦付与部12Aとの相対変位の方向が、リンク機構5の相対変位の方向と揃えられている。このため、抵抗力変更機構リンク機構5との干渉が抑制されている。
さらに、ディスク11Aおよび摩擦付与部12Aは、ステアリングシャフト60の前方、かつ、第2クロス部材52の前方に設けられている。このため、ディスク11Aおよび摩擦付与部12Aがステアリングシャフト60および第2クロス部材52と干渉しない。
【0112】
このため、図14に示すように、ディスク11Aおよび摩擦付与部12Aを、上中間軸線AAの方向に関して、ステアリングシャフト60および第2クロス部材52と並んで配置することができる。つまり、抵抗力変更機構リンク機構5と干渉しないように構成したので、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構可動範囲をリンク機構5の可動範囲に接近させて配置することができる。これにより、車両を側方から見て、リンク機構5と抵抗力変更機構をコンパクトに配置することができる。
【0113】
以上の理由により、抵抗力変更機構設けても、前輪31,32より上方のステアリングシャフト60の周囲が大型化しない車両を提供できる。
【0114】
[第3の実施形態]
図15は、第3の実施形態に係る車両の一部を示す正面図である。図15は、上中間軸線AAの方向の前方から車両の一部を示している。図15の(a)は、車体フレーム21が直立状態の車両1を示している。図15の(b)は、車体フレーム21が左方へ傾斜した状態の車両1を示している。図15の(c)は、車体フレーム21が右方へ傾斜した状態の車両1を示している。図16は、第2の実施形態に係る車両の一部を、左方から見た側面図である。
【0115】
本実施形態において、抵抗力変更機構7Bは、上中間軸線AA方向から見て湾曲した湾曲プレート(第1部)11Bと、摩擦付与部12B(第2部)とを備えている。
湾曲プレート11Bは、車体フレーム21の左右方向に延びる長尺の板状部材である。湾曲プレート11Bの根元部は、第2サイド部材54の上左軸部54bに回転可能に支持されている。第2サイド部材54の上左軸部54bは、上左軸線に沿って前方に延びている。湾曲プレート11Bは、根元部から、上方に向かって湾曲しながら第1サイド部材53に向かって延びている。
【0116】
摩擦付与部12Bは、車体フレーム21の一部であるヘッドパイプ211から第2クロス部材52を貫通して前方に延びる下中間軸部52aに固定されている。下中間軸部52aは、下中間軸線と平行に延びている。摩擦付与部12Bは、湾曲プレート11Bを車体フレーム21の左右方向に挿通させるガイド孔を有している。摩擦付与部12Bは、キャリパブレーキと同様の構造を有する。摩擦付与部12Bは、湾曲プレート11Bと対向する位置に摩擦パッドを備えている。
【0117】
摩擦付与部12Bが一対の摩擦パッドで湾曲プレート11Bを挟み込むことにより、摩擦付与部12Bと湾曲プレート11Bとの相対変位を抑制することができる。摩擦パッドで湾曲プレート11Bを挟み込む力を調節することにより、摩擦付与部12Bと湾曲プレート11Bとの相対変位に対する抵抗力が変更可能とされている。
【0118】
リンク機構5が動作すると、第2サイド部材54は、車体フレーム21の下中間軸線に対して相対的に移動する。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、第2クロス部材52の車体フレーム21に対する回転に応じて、第2サイド部材54の上左軸部54bと第2クロス部材52の下中間軸部52aとが相対変位する。
上中間軸線AAの方向の前方から見たときの上左軸部54bと下中間軸部52aのなす角度の相対変化に対して、抵抗力変更機構7Bは、湾曲プレート11Bの根元部が上左軸部54bに対して回転することにより、追従する。上中間軸線AAの方向の前方から見たときの上左軸部54bと下中間軸部52aとの相対距離の変化に対して、湾曲プレート11Bの摩擦付与部12Bへの挿しこみ長さを変更することにより、抵抗力変更機構7Bは該距離の変化に追従する。
【0119】
例えば、図15の(b)に示したように、車体フレーム21が左方に傾斜すると、第2サイド部材54の上左軸部54bと第2クロス部材52の下中間軸部52aとが相対変位する。抵抗力変更機構7Bは、湾曲プレート11Bは根元部で上左軸部54b回りに回転し、湾曲プレート11Bの摩擦付与部12Bへの挿しこみ長さが大きくなる。摩擦付与部12Bは、湾曲プレート11Bの先端に近い部位に対向する。
逆に、図15の(c)に示したように、車体フレーム21が右方に傾斜すると、湾曲プレート11Bは根元部で上左軸部54b回りに回転し、また、第2サイド部材54の上左軸部54bと第2クロス部材52の下中間軸部52aとの相対距離が大きくなる。このため、湾曲プレート11Bが摩擦付与部12Bから引き出される。摩擦付与部12Bは、湾曲プレート11Bの上左軸部54bに近い部位に対向する。
摩擦付与部12Bで湾曲プレート11Bに作用させる摩擦力を変更することにより、抵抗力変更機構7Bは、湾曲プレート11Bと摩擦付与部12Bとの相対変位に対する抵抗力を変更し、車体フレーム21の傾斜のさせやすさを変更することができる。
【0120】
本実施形態においても、湾曲プレート11Bの根元部が第2サイド部材54の上左軸部54bに支持されている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、湾曲プレート11Bの根元部を含む少なくとも一部は、第2サイド部材54と常に重なる位置に設けられている。
また、摩擦付与部12Bは、ヘッドパイプ211の下中間軸部52aに固定されている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、摩擦付与部12Bの少なくとも一部は、常にヘッドパイプ211と重なる位置に設けられている。
このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、抵抗力変更機構7Bの可動範囲はリンク機構5の可動範囲よりも小さくされている。
【0121】
(側方から見た大きさ)
また、本実施形態においても、湾曲プレート11Bは、上中間軸線AAと平行な上左軸線の方向に延びる上左軸部54bに回転可能とされている。摩擦付与部12Bは、ヘッドパイプ211に固定されている。このため、抵抗力変更機構7Bは上中間軸線AAと直交する面上を移動する。リンク機構5を構成する、第1クロス部材51、第2クロス部材52、第1サイド部材53、第2サイド部材54も、上中間軸線AAと直交する面上を移動する。このため、抵抗力変更機構7Bをなす部材の移動方向とリンク機構5をなす部材の移動方向が揃えられているので、これらが互いに干渉しにくい。
【0122】
さらに、湾曲プレート11Bは、図16に示すように、ステアリングシャフト60の前方で、かつ、第2サイド部材54の前方に配置されている。車両1の側方から見て、上中間軸線AAの方向に関して、湾曲プレート11Bは、第2サイド部材54、第1クロス部材51(または第2クロス部材52)と並んで配置されている。
摩擦付与部12Bも、ステアリングシャフト60の前方で、かつ、第2サイド部材54の前方に配置されている。摩擦付与部12Bは、ヘッドパイプ211、第2クロス部材52と並んで配置されている。
抵抗力変更機構7Bをなす部材の移動方向とリンク機構5をなす部材の移動方向が揃えられているので、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7Bとリンク機構5とを近付けて配置することができる。これにより、車両1を側方から見て、コンパクトに構成できる。
【0123】
以上の理由により、本実施形態に係る車両においても、車両に抵抗力変更機構7Bを設けても、ステアリングシャフト回りの大きさが大型化しにくい。
【0124】
[第4の実施形態]
次に、図17および図18を用いて、第4の実施形態に係る車両を説明する。
図17は、第4の実施形態に係る車両の一部を示す正面図である。図17は、上中間軸線AAの方向の前方から見た車両の一部を示している。図17の(a)は、車体フレーム21が直立状態の車両1を示している。図17の(b)は、車体フレーム21が左方へ傾斜した状態の車両1を示している。図18は、第4の実施形態に係る車両の一部を、左方から見た側面図である。
【0125】
本実施形態は、上述した第1の実施形態から、インナロッドのインナ支持部とアウタロッドのアウタ支持部を変更した例である。本実施形態において、インナロッド11Cのインナ支持部11Caは、第1サイド部材53に設けられている。インナ支持部11Caは、第1サイド部材53の下軸部53cに回転可能に支持されている。第1サイド部材53の下軸部53cは、第1サイド部材53の下右軸線より下方で、下右軸線と平行な方向で前方に突き出している。
アウタロッド12Cのアウタ支持部12Caは、車体フレーム21の一部であるヘッドパイプ211に設けられている。アウタ支持部12Caは、ヘッドパイプ211の上中間軸部211aに回転可能に支持されている。上中間軸部211aは、上中間軸線AAに沿って前方に突き出し、第1クロス部材51を貫通している。
【0126】
本実施形態においても、インナロッド11Cのインナ支持部11Caを含む少なくとも一部は、第1サイド部材53と常に重なる位置に設けられている。また、アウタロッド12Cのアウタ支持部12Caを含む少なくとも一部は、ヘッドパイプ211と常に重なる位置に設けられている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、抵抗力変更機構7Cをコンパクトに構成できる。
【0127】
また、本実施形態においても、インナロッド11Cとアウタロッド12Cは、上中間軸線AAに直交する面上を移動する。また、リンク機構5の第1クロス部材51、第2クロス部材52、第1サイド部材53、第2サイド部材54も、上中間軸線AAに直交する面上を移動する。抵抗力変更機構7Cの部材とリンク機構5の部材との移動方向が揃えられているため、互いに干渉しにくい。
【0128】
さらに、図18に示すように、インナロッド11Cはステアリングシャフト60の前方、かつ、第1サイド部材53の前方に配置されている。インナロッド11Cは、上中間軸線AAの方向に関して、第1サイド部材53と並んで配置されている。
アウタロッド12Cは、ステアリングシャフト60の前方、かつ、第1クロス部材51および第2クロス部材52の前方に配置されている。アウタロッド12Cは、上中間軸線AAの方向に関して、第1クロス部材51および第2クロス部材52と並んで配置されている。
抵抗力変更機構7Cの部材の移動方向とリンク機構5の移動方向とが揃えられているため、抵抗力変更機構7Cとリンク機構5とを近接させて配置することができ、車両を側方からみて、コンパクトに構成できる。
以上の理由により、本実施形態に係る車両によっても、抵抗力変更機構7Cを車両に搭載しても、2つの前輪31,32よりも上方のステアリングシャフト60の周囲の構造の大型化を抑制できる。
【0129】
また、本実施形態に係る車両によれば、第2部であるアウタロッド12Cは車体フレーム21の一部であるヘッドパイプ211に支持されている。第1部であるインナロッド11Cは、リンク機構5をなしてヘッドパイプ211に対して相対移動する部材の一つである、第1サイド部材53に支持されている。
リンク機構5をなす部材である、第1クロス部材51、第2クロス部材52、第1サイド部材53、第2サイド部材54は、いずれも車体フレーム21に対して相対変位する。このため、抵抗力変更機構の第2部を車体フレーム21に支持すると、第1部をリンク機構5をなす部材のいずれか(第1クロス部材51、第2クロス部材52、第1サイド部材53、第2サイド部材54)に支持すればよい。つまり、第1部を支持させるリンク機構をなす部材を自在に選択できるので、抵抗力変更機構の設計の自由度が高まる。ステアリングシャフト60周りに配置する他の車両搭載部品のレイアウトを考慮しながら、ステアリングシャフト60周りの空間を効率よく使って、抵抗力変更機構を配置できる。このため、抵抗力変更機構を車両に搭載しても、ステアリングシャフト60の周囲の構造が大型化しにくい。
【0130】
ところで、第1サイド部材53が第2クロス部材52を支持する位置よりも上方の空間には、第1クロス部材51が配置されたり、灯火器などの車両搭載部品が配置され、該空間は他の車両搭載部品を配置するために利用されやすい空間である。
本実施形態においては、第1部であるインナロッド11Cは、第1サイド部材53が第2クロス部材52を支持する位置よりも下方で第1サイド部材53に支持されている。本実施形態においては、該空間を避けて、第1サイド部材53が第2クロス部材52を支持する位置よりも下方で第1サイド部材53に第1部を支持させて、他の部材との干渉を抑制している。このため、他の部材との干渉を考慮せずに抵抗力変更機構7Cを設けやすく、抵抗力変更機構7Cを設けても車両の大型化を抑制できる。なお、第1部であるインナロッド11Cが、第2サイド部材54が第2クロス部材52を支持する位置よりも下方で第2サイド部材54に支持されていてもよい。このような構成によっても、同様の効果が得られる。
【0131】
[第5の実施形態]
次に、図19を用いて本発明の第5の実施形態に係る車両を説明する。
図19に示すように、本実施形態は、上述した第2の実施形態から、ディスクと摩擦付与部を設ける位置を変更した例である。本実施形態においては、抵抗力変更機構7Dのディスク11Dは第2サイド部材54に固定されている。摩擦付与部12Dは第2クロス部材52に固定されている。
車体フレーム21が傾斜すると、第2サイド部材54は第2クロス部材52に対して、下左軸線回りに回転する。ディスク11Dは第2サイド部材54に固定され、摩擦付与部12Dは第2クロス部材52に対して固定されている。このため、リンク機構5が動作すると、ディスク11Dと摩擦付与部12Dの相対位置が変化する。本実施形態では、半円状のディスク11Dの中心である下左軸線回りに、摩擦付与部12Dが回転する。
摩擦付与部12Dがディスク11Dに摩擦力を付与することにより、ディスク11Dと摩擦付与部12Dとの相対変位を抑制し、車両の傾斜のしやすさを調節できる。
【0132】
本実施形態においても、上中間軸線AAの方向の前方から見て、ディスク11Dの少なくとも一部は第2サイド部材54と常に重なる位置に設けられている。摩擦付与部12Dの少なくとも一部は第2クロス部材52と常に重なる位置に設けられている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、抵抗力変更機構7Dの可動範囲はリンク機構5の可動範囲よりも小さい。
【0133】
また、ディスク11Dは第2サイド部材54に固定され、ディスク11Dは第2サイド部材54と一体に動く。摩擦付与部12Dは第2クロス部材52に固定され、摩擦付与部12Dは第2クロス部材52と一体に動く。抵抗力変更機構7Dをなすディスク11Dおよび摩擦付与部12Dの移動方向と、リンク機構5をなす部材の移動方向とが揃えられているため、抵抗力変更機構7Dはリンク機構5と干渉しにくい。
ディスク11Dは、ステアリングシャフト60より前方に設けられ、かつ、第2サイド部材54より前方に設けられている。摩擦付与部12Dは、ステアリングシャフト60より前方に設けられ、第2クロス部材52より前方に設けられている。
抵抗力変更機構7Dをなす部材(ディスク11D、摩擦付与部12D)の移動方向とリンク機構5をなす部材の移動方向とが揃えられているため、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7Dとリンク機構5とを接近させて配置することができる。このため、車両を側方から見て、抵抗力変更機構7Dの可動範囲とリンク機構5の可動範囲を合わせた可動範囲をコンパクトに構成できる。
以上の理由により、抵抗力変更機構7Dを車両に搭載しても、2つの前輪31,32よりも上方のステアリングシャフト60の周囲の構造の大型化を抑制できる。
【0134】
[第6の実施形態]
次に、図20を用いて、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した第3実施形態から、湾曲プレートを取り付ける位置を変更した例である。
【0135】
図20に示すように、湾曲プレート11Eの根元部は、第2サイド部材54の下軸部54cに回転可能に支持されている。下軸部54cは、第2サイド部材54の下左軸線より下方に位置する。下軸部54cは、下左軸線と平行な方向で前方に突き出している。
摩擦付与部12Eは、ヘッドパイプ211に固定されている。摩擦付与部12Eは、ヘッドパイプ211の下中間軸部211bに固定されている。下中間軸部211bは、ヘッドパイプ211からヘッドパイプ211の下中間軸線の方向に前方に突き出している。下中間軸部211bは第2クロス部材52を貫通して前方に突き出している。
【0136】
本実施形態において、湾曲プレート11Eの根元部は第2サイド部材54の下軸部54cに支持されている。摩擦付与部12Eはヘッドパイプ211の下中間軸部211bに固定されている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、湾曲プレート11Eの少なくとも一部は常に第2サイド部材54と常に重なる位置に設けられ、摩擦付与部12Eの少なくとも一部は常に第2クロス部材52と常に重なる位置に設けられている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、抵抗力変更機構7Eの可動範囲はリンク機構5の可動範囲より小さい。
【0137】
湾曲プレート11Eは左サイド部材の下軸部54cに、上中間軸線AAと平行な回転軸線回りに回転可能に支持されている。摩擦付与部12Eはヘッドパイプ211に固定されている。このため、抵抗力変更機構7Eをなす部材の移動方向と、リンク機構5のなす部材の移動方向とが揃えられている。
湾曲プレート11Eは、ステアリングシャフト60より前方に配置され、かつ、第2サイド部材54より前方に配置されている。摩擦付与部12Eは、ステアリングシャフト60より前方に配置され、かつ、ヘッドパイプ211より前方に配置されている。抵抗力変更機構7Eをなす部材の移動方向と、リンク機構5のなす部材の移動方向とが揃えられているので、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7Eとリンク機構5とを接近させて配置することができる。これにより、抵抗力変更機構7Eの可動範囲とリンク機構5の可動範囲を合わせた可動範囲を、上中間軸線AAの方向に関して、小さくできる。
以上の理由により、抵抗力変更機構7Eを車両に搭載しても、2つの前輪31,32よりも上方のステアリングシャフト60の周囲の構造の大型化を抑制できる。
【0138】
[第7の実施形態]
次に、図21を用いて、本発明の第7の実施形態について説明する。図21の(a)は、上中間軸線AAの方向の前方から見た第7の実施形態に係る車両の一部を示す図である。図21の(b)は、車体フレーム21の上方から見た第7の実施形態に係る車両の一部を示す図である。
【0139】
本実施形態の抵抗力変更機構7Fは、いわゆる磁性流体ブレーキ機構である。磁性流体ブレーキ機構は、例えば日本国特開2010-167999号公報などにより知られている。
抵抗力変更機構7Fは、外筒12Fと、外筒12Fの内部に回転可能に設けられた中心軸部11Fと、外筒12Fと中心軸部11Fとの間に設けられた液室13に充填された磁性流体と、コイル18とを備えている。磁性流体とは、磁場によって粘性特性が変化する流体である。外筒12Fおよび中心軸部11Fは、上中心軸線と平行な回転軸回りに相対回転可能である。抵抗力変更機構7Fは、コイル18によって磁性流体に磁場を作用させて磁性流体の粘性を変更し、外筒12Fと中心軸部11Fとの相対回転に対する抵抗力を変更可能である。
【0140】
本実施形態の抵抗力変更機構7Fにおいて、中心軸部11Fは第2クロス部材52に固定されている。外筒12Fは第2サイド部材54に固定されている。車体フレーム21が傾斜すると、第2サイド部材54は第2クロス部材52に対して上左軸線回りに回転する。このため、外筒12Fは中心軸部11Fに対して回転する。抵抗力変更機構7Fは、コイル18によって磁性流体の粘性を変更して外筒12Fと中心軸部11Fとの相対回転に対する抵抗力を変更することによって、車体フレーム21の傾斜のしやすさを変更することができる。
【0141】
本実施形態においても、上中間軸線AAの方向の前方から見て、中心軸部11Fは第2クロス部材52と常に重なる位置に設けられ、外筒12Fは第2サイド部材54と常に重なる位置に設けられている。このため、上中間軸線AAの方向の前方から見て、抵抗力変更機構7Fの可動範囲はリンク機構5の可動範囲より小さい。
【0142】
中心軸部11Fは第2クロス部材52に固定されている。外筒12Fは第2サイド部材54に固定されている。第2クロス部材52は、第2サイド部材54に対して下左軸線回りに相対回転する。中心軸部11Fも外筒12Fに対して下左軸線回りに相対回転する。つまり、同一の下左軸線回りに回転するので、抵抗力変更機構7Fとリンク機構5とが干渉しない。
さらに、車両の側方から見て、上中間軸線AAの方向に関して、中心軸部11Fは、ステアリングシャフト60より前方に設けられ、かつ、第2クロス部材52より前方に設けられている。外筒12Fは、ステアリングシャフト60より前方に設けられ、かつ、第2サイド部材54より前方に設けられている。つまり、抵抗力変更機構7Fとリンク機構5とが干渉しないので、上中間軸線AAの方向に関して、抵抗力変更機構7Fとリンク機構5とを接近して配置できる。このため、車両の側方から見て、抵抗力変更機構7Fを車両に搭載しても、ステアリングシャフト60周りが大型化しにくい。
以上の理由により、抵抗力変更機構7Fを車両に搭載しても、2つの前輪31,32よりも上方のステアリングシャフト60の周囲の構造の大型化を抑制できる。
【0143】
[他の実施形態]
上述の実施形態においては、抵抗力変更機構の第1部がステアリングシャフト60より前方かつ第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52の前方に配置され、かつ、抵抗力変更機構の第2部がステアリングシャフト60より前方かつ第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52、車体フレーム21の前方に配置された例を説明したが、本発明はこれに限られない。抵抗力変更機構の第1部がステアリングシャフト60より後方かつ第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52の後方に配置され、かつ、抵抗力変更機構の第2部がステアリングシャフト60より後方かつ第1サイド部材53、第2サイド部材54、第1クロス部材51、第2クロス部材52、車体フレーム21の後方に配置されても、上述の第1から第7実施形態と同様の効果が得られる。
【0144】
上記の実施形態においては、リンク機構5の一部がヘッドパイプ211に支持されている。しかしながら、リンク機構5の一部が車体フレーム21に支持されている限りにおいて、例えば、ダウンフレーム212がリンク機構5の一部を支持する構成であってもよい。
【0145】
上記の実施形態においては、第1緩衝装置33と第2緩衝装置35がテレスコピック式の緩衝器を備えている。しかしながら、第1緩衝装置33と第2緩衝装置35は、ボトムリンク式の緩衝器を備える構成としてもよい。
【0146】
上記の各実施形態において、リンク機構5の変形を抑制するために相対変位する抵抗力変更機構の一部(第1部と第2部に対応)の相対的な変位に対する抵抗力を変更する手法は、必要に応じて適宜に変更可能である。各実施形態を参照して示した各手法は相互に置換え可能である。
【0147】
本発明は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備える車両である限りにおいて、例えばスクータ形式の鞍乗型車両などにも適用可能である。
【0148】
本出願は、2012年10月25日に提出された日本国特許出願2012−235605に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【0149】
なお上記の日本特許出願の明細書に記載された「右側」、「左側」、「上側」、「下側」、および「外側」という語は、本願明細書における「右方」、「左方」、「上方」、「下方」、および「外方」という語に対応する。
【0150】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
【0151】
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
【0152】
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載した。本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。そのような実施形態は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、この開示において、「好ましくは」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
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図20
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