(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
本発明は、金属生産物の抽出および精錬のための装置および方法を提供する。
また、本発明は、TiCl
4のような危険な化学薬品の使用を減じると共に、同時に、CO
2のような温室効果ガスの発生を低減させる、種々のチタン鉱からのチタン生産物の抽出および精錬のための装置および方法も提供する。
【0006】
本発明のさらなる局面および利点は、1部は、以下の説明において示すし、さらに、1部は、その説明から明白であろうし、或いは本発明の実施によって習得し得るであろう。
【0007】
本発明は、下記の工程を含むことを特徴とする、チタン鉱(titanium-bearing ore)からのチタン生産物(titanium product)の抽出方法を提供することによって達成し得る:
チタン鉱と還元剤を含む化学ブレンド(chemical blend)であって、上記チタン鉱対上記還元剤の比(ratio of the titanium-bearing ore to the reducing agent)が、0.9〜2.4の上記チタン鉱中の酸化チタン:上記還元剤中の還元用金属(reducing metal)の質量比に相当する上記化学ブレンドを混合する工程;
上記化学ブレンドを加熱して抽出反応を開始する工程であって、上記化学ブレンドを、1℃〜50℃/分の上昇速度(ramp up rate)で加熱する工程;
上記化学ブレンドを、5分と30分の間の時間、1500〜1800℃の反応温度に維持する工程;
上記化学ブレンドを、1670℃よりも低い温度に冷却する工程;および、
チタン生産物を残留スラグから分離する工程。
【0008】
もう1つの実施態様においては、25質量%と95質量%の間の酸化チタン(TiO
2)と、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種とを含む(質量による)チタン鉱で試験したとき、上記チタン鉱からのチタン生産物中のチタン金属の収率は、質量基準で85%と95%の間の量である。
もう1つの実施態様においては、上記収率は、90%よりも高い。
【0009】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドの加熱は、上記化学ブレンドを10℃/分の上昇速度で加熱することを含む。
もう1つの実施態様においては、上記上昇速度は、5℃/分と10℃/分の間の速度である。
もう1つの実施態様においては、上記上昇速度は、10℃/分である。
【0010】
もう1つの実施態様においては、上記反応温度は、1725℃である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドを、10分と20分の間の時間、上記反応温度に維持する。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドを、12分と18分の間の時間、上記反応温度に維持する。
【0011】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は酸化チタン(TiO
2)を含み、上記還元剤はアルミニウム(Al)を含み、そして、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、0.90〜2.4である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1〜2.2である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.2〜2.1である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.35〜1.9である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.4〜1.85である。
【0012】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、粘性剤(viscosity agent)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、酸化チタン(TiO
2)を含み;上記還元剤は、アルミニウム(Al)を含み;上記粘性剤は、フッ化カルシウム(CaF
2)を含み;そして、チタン鉱対還元剤対粘性剤の比は、次の等式:3TiO
2 + (4 + x)Al + yCaF
2 → 3Ti + xAl + 2Al
2O
3 + yCaF
2に相応し、式中、0 ≦ x ≦3、そして、2 ≦ y ≦ 6である。
もう1つの実施態様においては、0.3 ≦ x ≦ 2、そして、2 ≦ y ≦ 3である。
もう1つの実施態様においては、X = 0.8、そして、y = 2.5である。
【0013】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、90質量%よりも少ない酸化チタン(TiO
2)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、75質量%よりも少ない酸化チタン(TiO
2)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、50質量%よりも少ない酸化チタン(TiO
2)を含む。
【0014】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、30質量%までのカルシウム(Ca)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、20質量%までのマグネシウム(Mg)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、20質量%までのマンガン(Mn)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、35質量%までの鉄(Fe)を含む。
【0015】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、四塩化チタン(TiCl
4)を実質的に含まない。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、硫酸(H
2SO
4)を実質的に含まない。
もう1つの実施態様においては、上記方法は、ガス状生成物の存在しない1種の固形または液体生産物を生成する。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも100ミクロンの粒度を有する。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも500ミクロンの粒度を有する。
【0016】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%のカルシウム(Ca)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%のマグネシウム(Mg)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%のマンガン(Mn)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%の鉄(Fe)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、37ミクロンと2000ミクロンの間の粒度を有する。
【0017】
また、本発明は、上記チタン生産物を、陽極、陰極および電解質を有する反応容器に入れる工程;上記反応容器を600℃〜900℃の温度に加熱して溶融混合物を生成させ、上記陽極と上記陰極の間に電気的差動(electrical differential)を適用してチタンイオンを上記陰極に付着させる工程;および、上記電気的差動を終わらせ、上期溶融混合物を冷却して精錬チタン生産物を生成させる工程を含み、上記精錬チタン生産物の表面積が少なくとも0.1m
2/gであることを特徴とするチタン生産物の精錬方法を提供することによっても達成し得る。
【0018】
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物の表面積は、0.1m
2/gと2.5m
2/gの間である。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物の表面積は、0.4m
2/gと2.0m
2/gの間である。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物の表面積は、1.8m
2/gである。
【0019】
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、繊維状である。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、ウール様形態を有し(チタンウール(titanium wool))、結合剤に頼らないニアネットシェイプ圧粉体(near-net shaped green compact)に圧縮し得る。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、チタンウールを含む。
【0020】
もう1つの実施態様においては、上記方法は、非導電性またはセラミック材料を、上記チタン生産物を加熱して精錬チタン生産物のコーティングを生成させる前に、上記陽極と上記陰極の間に置くことを含む。
もう1つの実施態様においては、上記コーティングは、少なくとも95質量%のチタン金属を含む。
もう1つの実施態様においては、上記コーティングは、少なくとも99質量%のチタン金属を含む。
もう1つの実施態様においては、上記コーティングは、少なくとも99.9質量%のチタン金属を含む。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、少なくとも90%のチタン金属を含む。
【0021】
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、非消耗性である。
もう1つの実施態様においては、上記電気的差動は、0.5ボルトと2.5ボルトの間である。
もう1つの実施態様においては、上記電気的差動は、1.0ボルトと1.8ボルトの間である。
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、メッシュコンテナー(mesh container)の形状であって、上記電気的差動を適用する間、上記チタン生産物を保持する。
【0022】
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、調整可能である。
もう1つの実施態様においては、上記陽極を調整して、1cmと6cmの間の上記陽極と上記陰極間距離を維持する。
もう1つの実施態様においては、上記陽極を調整して、2cmと4cmの間の上記陽極と上記陰極間距離を維持する。
もう1つの実施態様においては、上記陽極を調整して、3cmの上記陽極と上記陰極間距離を維持する。
【0023】
もう1つの実施態様においては、上記チタン生産物は、チタン鉱から抽出する。
もう1つの実施態様においては、上記反応容器の加熱は、上記反応容器を誘導炉内に入れることを含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン生産物は鉄を含み;上記反応容器は、モリブデンを含んで、上記溶融混合物を上記誘導炉によって発生した磁場から保護する。
【0024】
また、本発明は、少なくとも0.1m
2/gの表面積を有するチタンウール生産物を提供することによっても達成し得る。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物は、少なくとも98%のチタンを含み;上記精錬チタン生産物の表面積は、0.1m
2/gと2.5m
2/gの間である。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物は、90〜96%のチタン、4〜9%のAlおよび1%までのOを含み;上記チタンウール生産物の表面積は1.8m
2/gである。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物は、90〜96%のチタン、4〜9%のAlおよび1%までのOから本質的になり;上記チタンウール生産物の表面積は1.8m
2/gである。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物の表面積は1.8m
2/gである。
【0025】
また、本発明は、チタン鉱の熱抽出から得られたチタン生産物を精錬する工程;および、上記チタン生産物を電気化学的分離過程に供して、精錬チタン生産物を生成させる工程を含み、上記チタン鉱が、25質量%と95質量%の間の量の酸化チタン(TiO
2)と、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種とを含むことを特徴とする精錬チタン生産物の製造方法を提供することによっても達成し得る。
【0026】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、50%よりも多い酸化チタン(TiO
2)、1%よりも多いカルシウム(Ca)、1%よりも多いマグネシウム(Mg)、1%よりも多いマンガン(Mn)および少なくとも1質量%の鉄(Fe)の少なくとも1種を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン生産物は、チタン鉱から抽出する。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、チタン生産物から精錬する。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、等級外(off grade)チタンスポンジまたはスクラップチタンから精錬する。
【0027】
また、本発明は、チタン生産物から精錬した、1.8m
2/gの表面積を有する精錬チタン生産物を提供することによっても達成し得る。
【0028】
また、本発明は、チタン生産物を精錬する反応容器;上記反応容器内に配置されて精錬チタン生産物を受け入れる陰極;上記反応容器内に配置されて上記チタン生産物を保持する陽極;上記反応容器を加熱する熱源;および、上記熱源を出力(power)し且つ上記陽極と上記陰極間に0.5ボルトと2.5ボルトの間の電気的差動をもたらす出力源を含み、上記陽極が調整可能であって、2cmと4cmの間の上記陽極と上記陰極間距離を維持することを特徴とするチタン精錬装置を提供することによっても達成し得る。
【0029】
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、非消耗性である。
もう1つの実施態様においては、上記熱源は、誘導炉であり;上記反応容器は、上記溶融混合物を上記誘導炉によって発生する磁場から保護するためのモリブデンサセプタ(susceptor)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記装置は、上記陽極と上記精錬チタン生産物でコーティングさるべき陰極との間に非導電性またはセラミック材料を保持するホルダーをさらに含む。
【0030】
もう1つの実施態様においては、精錬するために試験したとき、少なくとも75質量%のチタンを有する試験チタン生産物は、少なくとも90%のチタンを含み且つ1.8m
2/gの表面積を有する精錬チタン生産物を生成する。
もう1つの実施態様においては、上記試験チタン生産物は、1%よりも多いカルシウム(Ca)、1%よりも多いマグネシウム(Mg)、1%よりも多いマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種以上を含む。
【0031】
本発明のこれらおよび/または他の局面並びに利点は、添付図面と関連して示す各種実施態様の以下の説明から明白となり、より一層容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上記図面は、一定の縮尺に必ずしもよってなく、むしろ、本発明の原理の説明に関しては一般に強調している。さらに、幾つかの特徴は、特定のコンポーネントの詳細を示すために拡大している場合がある。これらの図面/図形は、例示であって、本発明の限定を意図しない。
【0034】
好ましい実施態様の詳細な説明
以下、本発明の各種実施態様を詳細に説明する。これらの実施態様は、以下では、本発明の構成要素、方法および装置のより完全な理解を提供するために説明する。提示する例は、いずれも、例示であって、限定を意図しない。明細書および特許請求の範囲の全体に亘って、下記の各用語は、文脈上他で明白に断らない限り、本明細書において明確に関連付けした意味を有する。語句“幾つかの実施例において”および“1つの実施態様において”は、本明細書において使用するとき、同じ実施態様(1つ以上)を必ずしも表すものではない(そうである場合があるかもしれないが)。さらにまた、語句“もう1つの実施例において”および“幾つかの他の実施態様において”は、本明細書において使用するとき、異なる実施態様を必ずしも表すものではない(そうである場合があるかもしれないが)。以下で説明するように、本発明の各種実施態様は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、容易に組合せ得る。
【0035】
本明細書において使用するとき、用語“もしくは、または、或いは….等 (or)”は、包括的な機能語であって、文脈上明確に他で断らない限り、用語“および/または”と等価である。用語“基づく”とは、排他的ではなく、文脈上他で明白に断らない限り、説明されていないさらなる要素に基づくことを可能にする。さらに、明細書全体に亘って、“1つ、1個、1本…..等 (a、anおよびthe)”の意味は、複数表示を包含する。“中に、内に、おける、おいて……等 (in)”の意味は、“中に、内に、おける、おいて……等 (in)”および“おける、おいて……等 (on)”を包含する。
【0036】
1つの実施態様においては、本発明は、金属鉱の使用、金属鉱からの金属生産物の抽出、および抽出金属生産物の精錬金属生産物への精錬を含む、金属生産物の抽出および精錬のための装置および方法を提供する。例えば、幾つかの実施態様においては、チタン鉱からのチタン生産物の抽出および精錬のための装置および方法を提供する。しかしながら、本発明は、上記チタン生産物の抽出および精錬に限定されるものではなく、本発明の他の実施態様は、限定するものではないが、鉄、クロム、銅、マンガン、ケイ素、ジルコニウム、モリブデン、銀、バナジウム、ニッケル、コバルト、スズ、および希土類金属のような他の金属生産物の抽出および精錬においても使用し得る。
【0037】
本発明の1つの実施態様は、チタン鉱からのチタン生産物の抽出および精錬のための方法を提供する。
図1に示すように、チタン生産物の抽出および精錬のための方法(1)は、チタン鉱の準備工程(100)、チタン鉱からのチタン生産物の抽出工程(200)および抽出チタン生産物の精錬工程(300)を含み得る。他の実施態様においては、上記方法は、チタン生産物の精錬工程(300)へのチタンのリサイクル工程(400)および抽出または生成チタン生産物の最終チタン生産物への加工工程(500)を含み得る。
【0038】
通常の方法と異なり、本発明は、多種多様なチタン鉱からのチタン生産物の経済的で環境的に安全な抽出方法を提供する。通常の方法は高濃度のチタンを含むチタン鉱の使用に限定されているけれども、本発明は、より低級なチタン鉱を使用し得る。例えば、酸化チタン(TiO
2)に関して測定したとき、多くの通常の方法は、初期チタン鉱が少なくとも90%のTiO
2濃度を有することを必要とする。対照的に、幾つかの実施態様において、本発明は、90%よりも低いTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。もう1つの例においては、本発明は、85%よりも低いTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。もう1つの例においては、本発明は、80%よりも低いTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。もう1つの例においては、本発明は、75%よりも低いTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。もう1つの例においては、本発明は、70%よりも低いTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。もう1つの例においては、本発明は、25%と95%の間のTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。さらにもう1つの例においては、本発明は、少なくとも35%のTiO
2濃度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物でもって使用し得る。さらに、多くの通常の方法は、一定の不純物レベルよりも高い或いはチタン粒度の閾値よりも高いチタン鉱を処理することはできない。対照的に、幾つかの実施態様においては、本発明は、30質量%未満のカルシウムまたは20質量%未満の酸素のような高い不純物濃度を有するまたは直径で100ミクロンを越える粒度を有するチタン鉱またはチタン鉱混合物を使用し得る。1つの実施態様においては、本発明は、直径で1000ミクロン未満の粒度を有するチタン鉱またはチタン鉱濃縮物を使用し得る。他の実施態様においては、25質量%と95質量%の間の酸化チタン(TiO
2)、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および少なくとも5質量%の鉄(Fe)を含むチタン鉱を使用し得る。もう1つの実施態様においては、本発明は、0.1質量%よりも多いまたは0.5質量%よりも多いカルシウム(Ca)、0.1質量%よりも多いまたは0.5質量%よりも多いマグネシウム(Mg)、0.1質量%よりも多いまたは0.5質量%よりも多いマンガン(Mn)および0.1質量%よりも多いまたは0.5質量%よりも多い鉄(Fe)を含むチタン鉱を使用し得る。もう1つの実施態様においては、本発明は、50質量%よりも多い酸化チタン(TiO
2)、1質量%よりも多いカルシウム(Ca)、1質量%よりも多いマグネシウム(Mg)、1質量%よりも多いマンガン(Mn)および1質量%よりも多い鉄(Fe)を含むチタン鉱を使用し得る。もう1つの実施態様においては、本発明は、2質量%よりも多いカルシウム(Ca)、2質量%よりも多いマグネシウム(Mg)、2質量%よりも多いマンガン(Mn)および2質量%よりも多い鉄(Fe)を含むチタン鉱を使用し得る。
【0039】
本発明の1つの実施態様においては、チタン鉱からのチタン生産物の抽出および抽出チタン金属生産物の精錬のための方法(1)は、抽出のためにチタン鉱を準備することを含む。本発明の幾つかの実施態様は生状態のチタン鉱を最低の準備でもって使用し得るけれども、殆どのチタン抽出方法は、チタン鉱濃縮物を使用する。チタン鉱は、典型的には、不純物を含み、大地から採鉱するときは凝集している。従って、チタン原鉱は、工程(100)中に清浄化または濃縮処理に供して、工程(200)におけるチタン鉱からのチタン生産物の抽出の前に、脈石鉱物を除去しチタン鉱濃縮物を生成させ得る。例えば、チタン原鉱は、粉砕、より重質またはより軽質な粒子の分離のような物理的濃縮方法に供し得、また、チタン鉱濃縮物を生成させるためのスパイラル選鉱による脈石鉱物の除去に供し得る。1つの実施態様においては、チタン原鉱またはチタン鉱濃縮物は、工程(100)において、50ミクロンと200ミクロンの間の直径の公称粒度範囲に粉砕する。もう1つの実施態様においては、チタン原鉱またはチタン鉱濃縮物は、工程(100)において、1000ミクロン直径までの粒度範囲を有するように処理する。下記の表1は、工程(200)において使用する各種チタン鉱濃縮物の組成を示している。
【0040】
工程(200)においては、チタン生産物は、上記チタン鉱から抽出する。上記チタン鉱は、工程(100)において、チタン鉱濃縮物として前以って調製し得る。本発明の1つの実施態様においては、上記チタン鉱からのチタン生産物の抽出(200)は、熱抽出反応を含む。例えば、1つの実施態様においては、上記チタン鉱を熱抽出に供してチタン生産物を生成させる。幾つかの実施態様においては、上記チタン鉱を他の成分および薬剤と混合して化学ブレンドを生成させ、その後、この化学ブレンドを熱抽出に供する。例えば、上記チタン鉱を1種以上の他の成分、例えば、還元剤、粘性剤および発熱成分と混合して、工程(200)において熱抽出に供する化学ブレンドを生成させ得る。
【0041】
1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、アルミニウム(Al)のような還元剤を含む。一般に、還元させている鉱石中の金属種よりも反応性である金属は、還元剤として使用し得る。しかしながら、低コスト、低溶融温度(660℃)および高沸点(2519℃、チタンの1670℃の融点よりもはるかに高い)のような要因は、還元剤の選択に影響を与え、アルミニウムを還元剤としての良好な選択としている。他の実施態様においては、マグネシウム、カルシウムおよびナトリウムを還元剤として使用し得る。
【0042】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、所望のスラグ粘度を達成するための1種以上の粘性剤を含む。スラグ粘度を調整することによって、金属鋼からの金属の効率的な分離を可能にし、固化および冷却が起った後の金属から除去することのできるスラグが生成される。1つの実施態様においては、上記化学ブレンドおよび得られるスラグの粘度に影響を与えるのみで且つ上記化学ブレンドの加熱に限られた程度しか影響を与えない粘性剤を選択する。フッ化カルシウム(CaF
2)は、そのような粘性剤の1つの例である。CaF
2は、上記チタン鉱と還元剤との化学反応には加わらず、溶融物の粘度の調整を支援するのみである。さらにまた、CaF
2の融点(1418℃)と沸点(2533℃)は、チタンの融点(1670℃)を囲い込み(bracket)、CaF
2を粘性剤としての良好な選択としている。一般に、上記反応に加わらず、スラグの粘度の調整を支援する成分は、有力な候補である。幾つかの実施態様においては、種々のハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アルカリ土類およびある種の酸化物を粘性剤として使用し得る。
【0043】
1つの実施態様においては、上記化学ブレンドにおいて必要な他の成分の量は、上記チタン鉱の組成に相応する。例えば、ルチル(TiO
2)チタン鉱濃縮物においては、他の成分の量は、次の等式:3TiO
2 + (4 + x)Al + yCaF
2 → 3Ti + xAl + 2Al
2O
3 + yCaF
2に相応する。1つの実施態様においては、xおよびyは、次のように変動し得る:0 ≦ x ≦3+、そして、2 ≦ y ≦ 6+。もう1つの実施態様においては、xおよびyの範囲は、0.3 ≦ x ≦ 2および2 ≦ y ≦ 3である。さらにもう1つの実施態様においては、X = 0.8、そして、y = 2.5である。
【0044】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、TiO
2チタン鉱およびアルミニウム(Al)還元剤を含み、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、0.90〜2.4である。これらの実施態様の他の実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1〜2.2である。これらの実施態様のうちのさらに他の実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.2〜2.1である。これらの実施態様のうちの他の実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.35〜1.9である。これらの実施態様のうちのさらに他の実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.4〜1.85である。
【0045】
本発明の複数の実施態様によれば、上記抽出工程(200)は、内的にまたは外的に加熱する。
1つの実施態様においては、抽出工程(200)は、内的に加熱した自続性抽出反応を発生させるように選定した化学成分を使用しての内部加熱反応によって実施する。抽出反応中に発生させた熱は、上記化学ブレンドを溶融状態に保って友好な金属/スラグ分離を可能にするのに十分でなければならない。
【0046】
例えば、内的に加熱した抽出工程(200)においては、チタンを、アルミニウム金属のような還元剤を使用して、上記チタン鉱ブレンドから分離(抽出)してチタン生産物を調製し、下記の等式に従う酸化アルミニウムとチタン金属を生成させる:
3TiO
2 + 4Al → 3Ti + 2Al
2O
3
【0047】
図2は、自己加熱抽出反応から得られたチタン生産物パック(20)およびスラグ(21)を示している。
図2に示す抽出反応生産物は、逆さにしてスラグ(20) (画像の下部)から離れたチタン生産物パック(20) (画像の上部)を示している。他の実施態様においては、得られるチタン生産物パックの組成は、抽出工程(200)において使用するチタン鉱の組成に依存する。例えば、イルメナイト(FeTiO
3)鉱に由来するチタン生産物は、チタン金属と鉄を含むであろう。
【0048】
上記化学ブレンド中のチタン鉱と還元剤が発生させる熱は、それら自体で抽出反応を誘導させるには十分でない可能性がある。即ち、抽出反応を誘導するためには、上記化学ブレンドは、少なくとも1670℃の温度に達して上記化学ブレンド中のチタンを溶融し、その温度を最低の期間維持しなければならない。従って、本発明の幾つかの実施態様においては、上記化学ブレンドは、補助熱を発生させて抽出反応およびチタン生産物のスラグからの分離を誘導するための発熱成分を含む。発熱成分は、抽出反応が終了したとき、スラグと混合している残留生成物となるであろう。硫酸カルシウム、イオウおよび亜塩素酸ナトリウムは、適切な発熱成分の例である。
【0049】
本発明の1つの実施態様においては、自己加熱抽出反応において使用する上記化学ブレンドの成分は、自然発火を阻止する高い熱閾値でもって室温において安定であるように選定する。そのような場合、発火成分は、抽出反応を開始させることを求められ得る。この発火成分は、配置された領域において十分な熱をもたらして熱閾値に亘って抽出反応を促進させなければならない。反応が一旦開始すると、熱は、上記化学ブレンドの残余の全体に亘って広がり、自続性となり得る。発火成分の例としては、グリセリンと混合させたマグネシウム金属片または過マンガン酸カリウム(KMnO
4)がある。
【0050】
本発明のもう1つの実施態様においては、抽出工程(200)は、外的熱源を使用して実施する。例えば、1つの実施態様においては、抽出工程(200)は、外部誘導炉を使用して上記化学ブレンドを加熱する。他の実施態様においては、上記化学ブレンドは、他の外的熱源、例えば、抵抗加熱炉または誘導炉によって加熱する。外的に加熱した抽出反応は、内部自己加熱反応を上回る多くの利点を有し、上述した多くの関連した潜在的問題を回避する。一般に、外的に加熱した抽出反応においては、この外的加熱が、誘導炉温度上昇中の1500℃と1600℃の間の温度抽出過程を開始する。外的に加熱した抽出反応は、反応容器全体を加熱し、上記化学ブレンドが均一且つ十分に混合するのを可能にして、得られるチタン生産物とスラグが良好に分離するのを可能にする。
【0051】
1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、外的に加熱する場合、補助的内部熱を提供する追加の発熱成分を必要としない。従って、得られるスラグの化学性は、あまり複雑ではなく、スラグのより簡単なリサイクルまたは廃棄を可能にする。さらに、上記化学ブレンドの成分を室温で安定であるように或いは自然発火を阻止するように選定する場合、外部熱源は、発火成分を使用することなく抽出反応を開始するように使用し得る。
【0052】
1つの実施態様においては、外的加熱抽出工程(200)は、反応生成物の酸素汚染を阻止するための不活性雰囲気を使用することによって実施し得る。例えば、抽出反応は、アルゴンまたはヘリウム雰囲気下に実施し得る。外的加熱抽出反応は、上記化学ブレンドが発熱することに依存していない。むしろ、外部熱源は、抽出反応を制御する必要熱をもたらす。さらに、外部発熱器を使用する場合、熱は上記ブレンド全体に亘ってより均一に分布し、発火成分を使用する場合のような小さな配置された領域において開始し上記化学ブレンドの残余に広がるのとは対照的である。外的加熱抽出反応は、反応生成物(即ち、金属とスラグ)がより効率的に分離するのを可能にする。さらに、反応温度をより大きな度合で制御して抽出反応を誘導し且つチタン生産物のスラグまたは反応容器との反応を回避するのに十分な熱のみをもたらし得る。例えば、1つの実施態様においては、上記化学ブレンドを誘導炉内に入れ、この誘導炉を、10℃/分の速度で上昇するようにセットする。他の実施態様においては、上記上昇速度は、5℃/分と15℃/分の間である。他の実施態様においては、上記上昇速度は、50℃/分と125℃/分の間である。上記化学ブレンドの温度が1525℃と1600℃の間に達したときに、抽出反応は開始する。誘導炉は1725℃の最終温度まで上昇するので、抽出反応は続き、十分な熱が加熱プロフィールのこの段階において発生してチタン生産物をスラグから分離する。上記チタン生産物およびスラグは、双方ともこの温度では溶融しているので、低い密度を有するスラグは、浮上し、溶融チタン生産物上で“浮遊”している。1つの実施態様においては、温度を、抽出反応の開始から10分と20分の間の時間1725℃に維持する。幾つかの実施態様においては、最終温度は1500℃と1800℃の間であり、反応時間は5分と30分の間である。1つの実施態様においては、最終温度は1700℃と1750℃の間であり、反応時間は12分と18分の間である。幾つかの実施態様においては、上記反応時間範囲は、チタン生産物をスラグから分離し、上記チタン鉱濃縮物中のチタンの総量基準で85%と95%の間のチタン金属収率をもたらす。上記最終温度を8分よりも短く維持した場合或いは上記最終温度が1650℃よりも低い場合、抽出反応は、より低いチタン生産物/スラグ分離を示し低めのチタン金属収率に至る。上記最終温度が1800℃よりも高い場合或いは上記最終温度を30分よりも長く維持した場合、抽出反応は、溶融チタン生産物が反応容器およびスラグと反応するので、より高量の汚染物を含むチタン生産物を生成するであろう。
【0053】
上記反応温度を外部熱源によって調整する能力および上記最終温度における上記持続時間を制御することは、抽出反応における化学物質比および使用する化学成分のタイプを選定する場合に、より大きな柔軟性をもたらす。この柔軟性は、広範囲の原鉱石の上記過程への効率的な投入を可能にし、上記生産過程の全体的効率を改良する。
【0054】
図3〜10は、チタン抽出装置の複数の実施態様を示している。
図3〜10において示すように、1つの実施態様においては、チタン金属の抽出用装置(2)は、反応容器、熱源および電源を含む。
【0055】
1つの実施態様においては、上記熱源は、抵抗加熱素子である。もう1つの実施態様においては、上記熱源は、誘導発電機(31)および格納ハウジング(30)を有する誘導炉である。上記誘導炉は、抽出工程(200)における化学反応を開始し且つ維持するための必要熱量を提供すると共に、迅速な熱放散を可能にする。幾つかの実施態様においては、誘導炉の使用は、以下の利点をもたらす:誘導加熱は、上記化学ブレンド(36)を短時間で上記熱反応閾値温度よりも上に導く;上記化学ブレンド(36)全体に亘っての均一な加熱は、抽出反応の局在化を回避し、良好な金属/スラグ分離をもたらす;さらに、迅速な熱放散は、容器壁およびスラグとの反応によるチタン生産物の汚染を回避する。
【0056】
1つの実施態様においては、格納ハウジング(30)は、サセプタるつぼ(34)および/または抽出容器(37)を収容し、そして、誘電発電機(31)は、誘電加熱用コイル(33)を使用することによって誘電電界を発生させて抽出工程(200)における化学ブレンド(36)を加熱する。1つの実施態様においては、サセプタるつぼ(34)は、化学ブレンド(36)とは直接接触しておらず、誘電電界と良好に接続する種々の材料から製造し得る。例えば、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)のような耐火金属並びにグラファイト(C)は、サセプタるつぼ(34)として良好に機能する。他の実施態様においては、抽出容器(37)は、上記誘電炉内に化学ブレンド(36)を含み、化学ブレンド(36)と両立性であるまたはこのブレンドに対して不活性であると同時に高温(例えば、チタンの融点 およそ1670℃)に耐え得る材料から構築し得る。耐火金属、グラファイトおよびセラミック材料は、抽出容器(37)用に使用し得る。さらに、他の実施態様においては、抽出容器(37)用の材料は、上記誘導電界に対して透過性であって、化学ブレンド(36)中の金属が上記誘導電界と直接接続するのを可能にし、従って、反応のための熱をもたらすように選定し得る。さらにまた、幾つかの実施態様においては、上記誘導炉によって発生した磁界は、化学ブレンド(36)中の反応物を攪拌するのに有効に使用し得る。さらに、幾つかの実施態様においては、絶縁体(35)を使用して、サセプタるつぼ(34)および/または抽出容器(37)を絶縁し得る。
【0057】
例えば、
図3〜4に示しているように、上記外部熱源は、格納ハウジング(30)、誘導発電機(31)および直流(DC)電源(32)を有する外部誘導ヒーターとして具現化し得る。
図5〜6に示しているように、誘導加熱用コイル(33)は、セラミック絶縁シリンダー(35)を取囲んでおり、セラミック絶縁シリンダー(35)内部のサセプタるつぼ(34)および抽出容器(37)を加熱するのに使用する。
【0058】
1つの実施態様においては、内的に加熱した抽出反応は外部熱源を使用せず、抽出工程(200)は、
図7に示しているように、化学ブレンド(37)を含む抽出容器(37)のみを必要とする。
【0059】
図8〜9は、化学ブレンド(36)を含む外的加熱抽出装置の平面図を示す。
図8〜9に示しているように、化学ブレンド(36)は、抽出容器(37)内に含まれている。抽出容器(37)は、サセプタるつぼ(34)およびセラミック絶縁スリーブ(35)によって囲まれている。幾つかの実施態様においては、さらなる絶縁体材料(38)を、サセプタるつぼ(34)とセラミック絶縁スリーブ(35)の間に配置する。セラミック絶縁スリーブ(35)は、誘電コイル(33)に囲まれている。
【0060】
図10は、
図5〜9の誘導抽出装置の断面図である。
図10に示しているように、誘導コイル(33)は、サセプタるつぼ(34)内で渦電流を誘発して抽出容器(37)を加熱する。サセプタるつぼ(34)内で発生した熱を抽出容器(37)内の化学ブレンド(36)に移行させて抽出工程(200)に関連する化学反応を開始させて維持する。幾つかの実施態様においては、サセプタるつぼ(34)は、金属またはグラファイトであり得る。例えば、サセプタるつぼ(34)は、モリブデン(Mo)るつぼ34からなり得る。抽出容器(37)および誘導は熱用コイル(33)を有するサセプタるつぼ(34)は、格納ハウジング(30)内に収容して抽出工程(200)中の反応雰囲気を制御し得る。幾つかの実施態様においては、チタン生産物が鉄のような磁性金属を含む場合、サセプタるつぼ(34)は、モリブデン(Mo)を使用して上記化学ブレンドを上記誘導炉によって発生した磁界から保護し得る。
【0061】
図11は、外的加熱抽出工程(200)の生成物を例示している抽出容器(37)の断面切断図であり、抽出容器底部(40)、チタン生産物(41)およびスラグ(42)を示している。チタン生産物(41)は、反応容器(37)の底部に、頂部上に堆積しているスラグ(42)と一緒に融合していることに注目されたい。当業者であれば、この方法を如何に利用して、限定するものではないが、鉄、クロム、銅、マンガン、ケイ素、ジルコニウム等のような他の金属を生成させるかは承知しているであろう。各種金属の鉱石は、注意深く整合させた還元剤、粘度調節成分および発熱成分(自己加熱反応において使用する場合)との適合させたブレンド中に混合して所望金属生産物を生成させ得る。
【0062】
上記誘導炉は、10KHz、50KW Ajax‐Tocco誘導酸素をKから発電機および
図5〜10に示しているような5回折返し銅コイルをベースとし得る。キャパシタンスおよび電力設定値を調整して短時間量で所望温度を達成するようにする。サセプタるつぼ(34)はコイル(33)の内側にあり、サセプタるつぼ(34)は、熱を発生させる渦電流を発生する誘導電界と接続している。この熱は、抽出反応容器(37)および化学ブレンド(36)に移行させる。グラファイトは、抽出反応容器37用に使用し得る。グラファイトは比較的安価であり、金属表面積に付着し得る幾分かの炭素は、ビーズブラスト除去して清浄金属表面積を残し得る。
【実施例1】
【0063】
本発明の1つの実施例においては、チタン生産物を、チタン鉱から、次にようにして抽出した。鉱石 10濃縮物をボールミル内で粉砕して200メッシュ標準ふるい(< 74μm)に通した。化学ブレンドを、425gの上記で製造した粉砕鉱石 10の鉱石濃縮物、230gのアルミニウム粉末および346gのフッ化カルシウムをジャーミル内で30〜45分間ブレンドして均一な化学ブレンド(36)を得ることによって製造した。その後、化学ブレンド(36)をシリンダー状グラファイト反応容器(9.22cm (3.63”) d × 13.97cm (5.5”) h) (37)に装入した。その後、上記化学ブレンド(36)を含むグラファイト反応容器(37)を、その後、10KHz、50KW Ajax‐Tocco誘導発電機(31)の5回折返し銅誘導コイル(33)内のグラファイトサセプタるつぼ(10.80cm (4.25”) d × 12.07cm (4.75”) h) (34)内に入れ、格納ハウジング(30)に入れた。格納ハウジング(30)を閉じ、アルゴンガスで掃気して酸素を系から置換した。その後、上記不活性ガス流を1340標準リットル/時(50標準立方フィート/時(SCFH))の流量に設定し、抽出工程(200)の残り全体に亘って維持した。その後、誘導発電機(31)を始動させて、化学ブレンド(36)を10℃/分の上昇速度にて
~1725℃に加熱し、この温度に15分間保持した。その後、誘導炉を室温に冷却し、反応生成物を取出し、分析用に用意した。
図11は、実施例1も鉱石‐10から抽出したチタン生産物を示している(化学組成に関しては下記の表1および2を参照されたい)。
【実施例2】
【0064】
もう1つの実施例においては、チタン金属生産物を、高カルシウム含有量を有するチタン鉱から次のようにして抽出した。鉱石‐19濃縮物をボールミル内で粉砕して200メッシュ標準ふるい(< 74μm)に通した。化学ブレンドを、439gの上記で製造した粉砕鉱石‐19濃縮物、237gのアルミニウム粉末および358gのフッ化カルシウムをジャーミル内で30分間ブレンドして均一な化学ブレンド(36)を得ることによって製造した。その後、化学ブレンド(36) (
~1kg)をシリンダー状グラファイト反応容器(9.22cm (3.63”) d × 13.97cm (5.5”) h) (37)に装入した。その後、上記化学ブレンド(36)を含むグラファイト反応容器(37)を、その後、10KHz、50KW Ajax‐Tocco誘導発電機(31)の5回折返し銅コイル(33)内のグラファイトサセプタるつぼ(10.80cm (4.25”) d × 12.07cm (4.75”) h) (34)内に入れ、格納ハウジング(30)の内側に入れた。格納ハウジング(30)を閉じ、アルゴンガスで掃気して酸素を系から置換した。その後、上記不活性ガスを1416リットル/時(50標準立方フィート/時(SCFH))の流量に設定し、抽出工程(200)の残り全体に亘って維持した。その後、誘導発電機(31)を始動させた。10℃/分の温度上昇速度を使用して上記化学ブレンド(36)を
~1700℃に加熱した。上記反応容器および化学ブレンドをこの温度に20分間保持した。その後、上記誘導炉を室温に冷却し、反応生成物を取出し、分析用に用意した。表1および2は、鉱石 19濃縮物およびこの濃縮物から得られたチタン生産物についての組成データを含んでいる。
【0065】
表1は、抽出工程(200)を使用してチタン生産物を抽出するのに使用した種々のチタン鉱濃縮物を列挙している。表1は、上記チタン鉱濃縮物中の各種酸化物の含有量(蛍光X線分光法(XRF)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX)による質量%)を含む。表1に示しているように、抽出工程(200)において使用した濃縮物の多くは、これら濃縮物を通常のチタン抽出方法においては不適切としている不純物レベルおよびTiO
2レベルを含有している。
【0066】
表1
注:元素データを使用して上記表のEDX分析における等価の酸化物成分を算出した。
ND:検出されず。
【0067】
表2は、表1のチタン鉱からの抽出工程(200)によって得られたチタン生産物に関する元素分析データを要約している。誘導結合プラズマ(ICP)、間隙ガス融合(Inter Gas Fusion) (IGF)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX)の各方法を使用して、鉱石濃縮物サンプルと抽出工程(200)によって得られたチタン生産物のサンプルを比較した。
【0068】
表2
ND:検出せず;
他の元素:元素類(例えば、Na、Mg、K、P、Cr、Ca、Sn、Th、希土類元素等)の総和。
【0069】
表2に示しているように、高濃度のチタンを含むチタン生産物を、抽出工程(200)によって生成させた。抽出工程(200)からのチタン生産物は、航空宇宙級チタンとしての資格を得るに必要なチタンレベルを有し得ないものの、他の用途には良好に適している。例えば、自動車、オートバイ、医療機器、骨インプラント、手工具および甲装メッキ(armor plating)は、表1に列挙したチタン濃度を有するチタン生産物を使用する。さらにまた、これらのチタン生産物を精錬工程(300)に供することにより、これらチタン生産物のチタンレベルは航空宇宙級に上昇する。
【実施例3】
【0070】
図2に示しているように、本発明の1つの実施態様においては、チタン生産物を、以下のような内的加熱抽出反応(200)によりチタン鉱から抽出した。アナターゼ(TiO
2)鉱濃縮物を、Alfa Aesar社(製品#36199)から、< 325メッシュの標準ふるいサイズで入手した。化学ブレンドを、240gのアナターゼ(TiO
2)鉱濃縮物、162gのアルミニウム粉末、106gの亜塩素酸ナトリウムおよび157gのフッ化カルシウムをジャーミル内で30分間ブレンドして均一な化学ブレンドを得ることによって製造した。その後、上記化学ブレンドをおおよその寸法(7.62cm (3”) h × 11.43cm (4.5”) h)を有するシリンダー状セラミック反応容器に装入した。次いで、上記化学ブレンドを含むセラミック反応容器を、陶製のヒートシンク中に、その表面のほぼ2.54cm(1”)上の上記容器の頂部を1部残して埋め込んだ。5グラムのKMnO
4粉末を、上記ブレンドの上部の中心近くの1箇所に置き、その後、約2mLのグリセリンを上記KMnO
4上に注いだ。約20秒後、KMnO
4/グリセリン混合物は、燃焼し始め、引続き、抽出反応を開始させた。容器が数時間冷却した後、チタン生産物をスラグから取出し、分析用に用意した。
図2は、実施例3において生成させたチタン生産物を示している。アナターゼ鉱濃縮物に関する分析データの証明書は、極めて少量(< 0.001質量%)の以下の不純物:Al、Cd、Cu、K、Mg、Pb、V、Ca、Cr、Fe、Li、NaおよびSiを含む主としてTiO
2である組成を記載している。上記アナターゼ鉱濃縮物から抽出したチタン生産物のEDX分析からのデータは、71.2%のTi、16.1%のO、12.1%のアルミニウムおよび0.6%のMnの質量パーセントを示している。
【0071】
高チタンレベルを必要としない用途においては、工程(200)において抽出したチタン生産物は、工程(500)における最終製品としてさらに加工し得る。より高いチタンレベルを必要とする用途においては、抽出工程(200)からのチタン生産物は、工程(300)におけるさらなる精錬に供し得る。
【0072】
本発明の1つの実施態様においては、工程(200)において抽出したチタン生産物は、工程(300)において、さらに精錬して望ましくない元素を除去しおよび/またはチタンレベルを増進させることができる。もう1つの実施態様においては、他の資源からのチタンを、精錬工程(300)を使用して精錬し得る。もう1つの実施態様においては、他の資源からのチタンを、精錬工程(300)において、工程(200)において抽出したチタン生産物と混合し得る。1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、他の資源からのチタンスクラップを取入れる(リサイクル工程400)。例えば、1つの実施態様においては、本発明は、25%と95%の間のチタン含有量と20%までの酸素含有量を有するチタン金属およびスクラップを加工する。もう1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、6%までの酸素含有量を有するチタンスクラップを加工し得る。例えば、1つの実施態様においては、等級外チタンスポンジを、工程(300)自体の精錬過程における供給材料として、或いは工程(200)において得られたチタン生産物に加えて、リサイクル工程400において使用し得る。精錬工程(300)から出てくる精錬チタン生産物は、供給材料と対比して改良されたチタンレベルを有する。酸素、鉄、炭素およびケイ素のような不純物は、使用するチタン供給材料から、精錬工程(300)において除去される。
【0073】
本発明の1つの実施態様においては、工程(300)におけるチタン生産物の精錬は、電気化学精錬によって実施する。例えば、1つの実施態様においては、工程(300)において、抽出工程(200)によって得られたおよび/または他の資源(工程500)から得られたチタン生産物を、陰極と陽極を有する反応容器に入れる。チタンイオンを溶解することのできる電解質を、上記反応容器に入れ、加熱して、上記チタン生産物を工程(300)における電気精錬過程に供する。本発明の1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、不活性雰囲気下に実施する。もう1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、バッチにおいて実施する。
【0074】
本発明の1つの実施態様においては、上記陽極は、非消耗性陽極である。もう1つの実施態様においては、上記陽極と陰虚の距離は、精錬工程(300)中に調整可能である。上記陰極と陽極の距離を調整することによって、陽極‐陰極が、チタンイオンを陰極上に析出させるときに短絡するのを阻止し、さらに、上記陰極と陽極間の最適距離の精錬工程(300)の全体に亘っての維持管理を可能にする。精錬工程(300)において使用する電解質は、600℃〜900℃の範囲内の化学溶融物を生成するアルカリ金属またはアルカリ土類金属または双方の組合せのハライド塩を含み得る。上記化学溶融物の温度が900℃よりも高いと、上記電解質の蒸発速度が高過ぎ得る。
【0075】
本発明の1つの実施態様においては、抵抗素子炉または誘導炉を使用して上記電解質を加熱し得る。もう1つの実施態様においては、工程(200)において使用した外部熱源を使用して工程(300)における電解質を加熱してもよい。
【0076】
とは言え、誘導加熱は、誘導磁界が電極間の電界を干渉し或いは化学溶融物中の金属成分に影響を与え得るという懸念ごと故に、電気化学過程を加熱するのには典型的に使用されない。例えば、チタン生産物が、鉄を含むチタン鉱に由来する場合、上記化学溶融物中の鉄イオンは、精錬工程(300)において発生した磁界によって引き付けられ得る。しかしながら、本発明者等は、誘導加熱を、本発明の複数の実施態様に従う精錬工程(300)において、目立った影響なしに使用し得ることを見出した。
【0077】
上記精錬工程(300)は、高酸素量故に通常の方法においては不適切であるとみなされているよりも低い等級のチタン生産物を使用し得る。チタンをリサイクル(スクラップ)するとき、その酸素含有量は、各々の再溶融時に増大し、最終的には、高チタンレベルを必要とする用途(例えば、航空宇宙産業)において使用するのは不適格であるとみなされる。1つの実施態様においては、上記精錬工程(300)は、チタンスクラップまたは等級外チタンスポンジから、酸素量を減少させて高チタンレベルの生産物を製造することができる。例えば、本発明の1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、20質量%よりも低い酸素を含むチタン生産物またはスクラップを処理し得る。もう1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、6質量%よりも低い酸素を含むチタン生産物またはスクラップを処理し得る。
【0078】
1つの実施態様においては、精錬工程(300)は、環境的に安全で且つ低コストである。精錬工程(300)は、有害な化学物を使用しないし、或いはCO
2のような温室ガスを発生させない。
精錬工程(工程300)の後、得られた精錬チタン生産物は、工程(500)において、最終製品としてさらに加工し得る。
【0079】
本発明の1つの実施態様によれば、精錬工程(300)は、微細構造型の樹状形態を有する精錬チタン生産物を生成させる。例えば、上記チタン生産物は、電気精錬工程(300)において陰極上に析出したチタン晶子含み得る。
図18〜19は、樹状形状を有する精錬チタン生産物(チタンウール)を示している。
図18は、拡大していないデジタル像を示し、
図19は精錬チタン生産物のSEM顕微鏡写真を示している。上記チタン生産物の微細樹状構造は、チタン市場にとって新規であり、水力圧縮およびその後の結合剤の助けなしの焼結によるニアネットシェイプ部品のための経路を独自に提供している。例えば、1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、少なくとも0.1m
2/gの表面積を有する。もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、0.1m
2/gと2.5m
2/gの間の表面積を有する。もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、0.4m
2/gと2.0m
2/gの間の表面積を有する。もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、1.8m
2/gの表面積を有する。
【0080】
上記精錬チタン生産物の小サイズおよび繊細な性質故に、ニアネットシェイプ生産物は、工程(500)におけるさらなる加工において圧縮し得る。例えば、1つの実施態様においては、樹状形の上記精錬チタン生産物(チタンウール)は、水圧を使用して圧縮し得る。このことを達成するには、チタンウールを所望形状の圧縮モールドに入れる。その後、上記モールドを、5.425〜10.075トン/cm
2 (35〜65トン/in
2)を適用する水圧プレスに入れる。この手順により、ニアネットシェイプチタン部品を製造し得、これらの部品は、その後、焼結させ、真空アーク再溶融(VAR)法における消耗性電極として使用し、生産物用途に応じて溶融またはさらに加工し得る。
図22および23は、それぞれ、本発明の複数の実施態様に従う抽出工程(200)および精錬工程(300)によって製造した樹状チタンウールの水力圧縮により形成したチタン生産物パックおよびチタン生産物シリンダー(圧粉体)を示している。
図22および23に示しているように、チタンウールを圧縮することによって成形したチタン生産物パックおよびシリンダーは、意図する形状に一致している。伝統的なチタン粉末と異なり、幾つかの実施態様においては、精錬工程(300)から生成させたチタンウールは、結合剤の助けなしで圧縮し得る。他の実施態様においては、上記圧縮チタンウールは、焼結させてその密度を高め得る。例えば、圧粉体(green compact) (焼結させてないチタンウールの圧縮体)は、チタンの完全密度(4.5g/cm
3)の85%〜88%の密度を有する。抽出工程(200)および1220℃〜1350℃の温度での精錬工程(300)から生成させたチタンウールの圧粉体を焼結させた後、得られた圧縮体の密度は、完全密度の95%〜97%の範囲にある。
図24は、プレスし、焼結させ、研磨しているチタンパックの一片である。
図24において示しているように、本発明は、チタン鉱をチタンウールとして抽出し精錬し、圧縮およびその後の焼結手順によってニアネットシェイプ部品を製造する方法を提供している。
【0081】
さらに、本発明の他の実施態様によれば、精錬工程(300)は、高表面積(1.8m
2/g)を有する精錬チタン生産物を生成する。従って、この精錬チタン生産物は、用途が高表面積を必要とする(例えば、電極触媒反応を実施する)高表面積電極を製造するのに使用し得る。
【0082】
図13〜17は、本発明の複数の実施態様に従う精錬装置の例を示している。
図13〜15に示しているように、1つの実施態様においては、精錬装置は、反応容器(50)、陰極(51)および陽極(52)を含み得る。陽極(52)は、抽出工程(200)からおよび/または工程(400)により加わったチタン金属(例えば、等級外チタンスポンジ)から得られたチタン生産物を保持するための石英またはチタンよりも貴の金属(例えば、ニッケルまたは鉄)から製造した有孔バスケット/コンテナーとして具現化し得る。反応容器(50)は、陰極(51)、陽極(52)、および上記チタン生産物を電気精錬過程に供するのに使用する電解質(53)を保持している。
【0083】
図16および17は、本発明の1つの実施態様に従う精錬装置のもう1つの例を示している。
図16および17に示しているように、もう1つの実施態様においては、精錬装置は、反応容器(56)、陰極(54)および陽極(55)を含み得る。陽極(55)は、抽出工程(200)および/または工程(400)により加わったチタン金属(例えば、等級外チタンスポンジ)から得られたチタン生産物を保持するためのニッケル、鉄、またはチタンよりも貴の金属から製造した移動可能な有孔バスケット/コンテナーである。反応容器(56)は、底部の陰極(54)、陰極(54)の上に吊り下げられている陽極(55)、および上記チタン生産物を電気精錬過程に供するのに使用する電解質(53)を保持している。陰極(54)と陽極(55)間の距離を調整する能力を有することによって、チタンイオンを陰極上に析出させ、樹状物が成長するときの陽極‐陰極短絡を阻止し、陰極と陽極間の最適距離の精錬工程(300)の全体に亘っての維持管理を可能にしている。例えば、1つの実施態様においては、陰極(54)対陽極(55)の距離は2cmと4cmの間である。
【0084】
精錬工程(300)において使用する電解質(53)は、600℃〜900℃の範囲内の溶融物を生成させるためのアルキル金属またはアルキル土類金属のハライド塩或いは双方の組合せを含み得る。抵抗素子炉または誘導炉を使用して上記電解質を加熱し得る。本発明においては、両タイプの炉(抵抗素子および誘導)を使用する。1つの実施態様においては、誘導炉を使用する場合、モリブデンサセプタるつぼ(34)を使用して誘導電界と接続し、電解質ブレンド伝送する熱を発生させた。例えば、本発明の1つの実施態様においては、工程(200)において使用した誘電炉(31)を、工程(300)において使用し得る。抽出工程(200)からのチタン生産物、チタンスクラップまたは精錬すべき他の金属片を、有孔バスケット内に入れ、導線を電源(32)のような電力源の正(+)側に接続することによって電子回路の陽極(52)として使用する。1つの実施態様においては、金属ホイルを反応容器(50)の内側の周りに置き、このホイルを電力源の負(−)側に接続することによって陰極(51)として使用し得る。1つの実施態様においては、工程(300)において、不純チタン金属は酸化(イオン化)され、チタンイオンが陰極(51)に移行し、そこで、チタンイオンが還元されて、上記精錬チタン生産物を構成するチタン金属結晶または濃密チタン層を形成する。幾つかの実施態様においては、不純物は、陽極バスケット(52)内で濃縮される(取り残される)かまたは溶融電解質(53)中に残存する。
【0085】
また、もう1つの実施態様においては、金属プレートの形の陰極(54)を、上記プレート(54)上に吊り下がっている陽極バスケット(55)を有する反応容器の底部に平行に配置し得る。この形態においては、陰極プレート(54)と陽極バスケット(55)間の最適距離は、上記陽極バスケットを精錬工程(300)の全体に亘って垂直に移動させることによって維持し得る。陰極(54)は、導線(57)によって、電源の負(−)側に接続し、陽極(55)は電源の正(+)側に接続する。1つの実施態様においては、陰極(54)対陽極(55)の距離は2cmと4cmの間である。
図13〜17は電気精錬セルの複数の実施態様を例示しているものの、本発明はこれらの実施態様に限定されず、電気精製セルのための他の形態も可能である。
【実施例4】
【0086】
工程(200)によって得られたチタン金属生産物を、以下のように、精錬工程(300)によって精錬した:160gのチタン生産物を、有孔100ml石英陽極バスケット(52)内部に入れた。その後、チタン生産物片を含む陽極バスケット(52)を、44:56 NaCl:KCl質量パーセント比の塩化ナトリウム(NaCl)と塩化カリウム(KCl)のアルカリハライド塩ブレンド(53)の650gで充たし且つモリブデン(Mo)製の金属ホイル陰極(51)によって囲い込まれた石英製の反応容器(50) (容量:800ml)の中央に入れた(
図13および15参照)。アルカリハライド塩の上記混合物をほぼ650℃の温度でブレンドして溶融
塩電解質(53)を生成させた。精錬装置を格納ハウジング(30)に入れ、各電極を電源(32)と接続した。
格納ハウジング(30)をアルゴンガスで掃気し、約850℃に加熱した。
【0087】
電気精錬を、1.3ボルトの印加DC電位を使用することにより、約750℃の温度で実施した。幾つかの実施態様においては、精錬過程を、上記塩ブレンドの融点よりも100℃高い温度で実施して、完全溶融物を確保し且つ蒸発からの塩損減による融点の変化を回避する。他の実施態様においては、上記電気的差動(electrical differential)は、0.5ボルトと2.5ボルトの間または1.0ボルトと1.6ボルトの間である。9時間後、精錬容器(50)を室温に冷却した。算出した平均陰極電流密度は、0.03A/cm
2であった。凍結電解質塩を、精錬チタン生産物から、脱イオン水で洗浄することによって除去した実施例4は、85%の理論収率を示す34.0gの精錬チタン生産物(チタンウール)を生成していた。その後、最終生産物を乾燥させ、分析およびさらなる加工ために準備した。IGF分析は、精錬チタン生産物の酸素量が100万分の2000 (2000ppm)程で低かったことを示している。
【0088】
下記の表3は、抽出工程(200)から得られた各種チタン生産物の精錬工程(300)の前および後の組成結果を要約している。表3に示しているように、元素不純物は、ルチルのようなTiO
2を含むチタン鉱濃縮物から得られたチタン金属生産物からの精錬工程(300)中に除去即ち有意に低減されている。
【0089】
表3
【0090】
本発明の幾つかの実施態様においては、精錬工程(300)後に残存している唯一の不純物はアルミニウムであり、このアルミニウムは、抽出工程(200)において、還元剤として導入された。しかしながら、今日の航空宇宙および多くの他の工業において最も一般的に使用されるチタン含有金属はTi−6Al−4Vと称するアルミニウム含有合金であることから、アルミニウムを含むチタン生産物は、今日の工業においてはすぐに使用可能である。例えば、Ti−6Al−4Vは、90質量%のチタン(Ti)、6質量%のアルミニウム(Al)および4質量%のバナジウム(V)を含有する。表3からのデータは、幾つかの実施態様において、精錬工程(300)から得られたチタン生産物は、バナジウムを上記チタン生産物中に混入させたとした場合、Ti−6Al−4Vを製造するためのベース金属として使用し得ることを示唆している。
【0091】
本発明の他の実施態様においては、精錬工程(300)は、石英(SiO
2)およびアルミナ(Al
2O
3)のような非導電性材料表面上でのチタンコーティングも、上記非導電材料を陰極(51)と陽極(52)との間に配置することによって提供することができる。
図20〜21は、精錬工程(300)において形成されたチタンコーティングを示している。
図20は石英基体上に付着させたチタンコーティングを示しており、
図21はアルミナチューブ上に付着させたチタンコーティングを示している。
【0092】
下記の表4は、工程(300)の種々の実施中に石英基体上に付着させたコーティングのチタンレベルを説明するEDXデータを示している。表4における塩素レベルは、精錬チタン生産物からの電解質の不完全洗浄のためである。
【0093】
表4
【0094】
本発明の特定の実施態様を詳細に説明してきたけれども、当業者であれば、それらの詳細に対する種々の修正および代替策を上記の開示の全体的教示に照らして展開し得ることは承知しているであろう。従って、開示した特定の配置は、例示のみであって、本発明の範囲に関する限定を意味するものではない;本発明の範囲は、特許請求の全体的範囲およびそのあらゆる等化物を与えられるべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕下記の工程を含むことを特徴とする、チタン鉱からのチタン生産物の抽出方法:
チタン鉱と還元剤を含む化学ブレンドであって、前記チタン鉱対前記還元剤の比が、0.9〜2.4の前記チタン鉱中の酸化チタン成分:前記還元剤中の還元用金属の質量比に相当する前記化学ブレンドを混合する工程;
前記化学ブレンドを加熱して抽出反応を開始する工程であって、前記化学ブレンドを、1℃〜50℃/分の上昇速度で加熱する工程;
前記化学ブレンドを、5分と30分の間の時間、1500〜1800℃の反応温度に維持する工程;
前記化学ブレンドを、1670℃よりも低い温度に冷却する工程;および、
チタン生産物を、残留スラグから分離する工程。
〔2〕25質量%と95質量%の間の酸化チタン(TiO2)と、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種とを含むチタン鉱で試験したとき、前記チタン鉱からのチタン生産物中のチタン金属の収率が質量基準で85%と95%の間の量である、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕前記収率が、90%よりも高い、前記〔2〕記載の方法。
〔4〕前記化学ブレンドの加熱が、前記化学ブレンドを10℃/分の上昇速度で加熱することを含む、前記〔1〕記載の方法。
〔5〕前記上昇速度が、5℃/分と10℃/分の間の速度である、前記〔4〕記載の方法。
〔6〕前記上昇速度が、10℃/分である、前記〔5〕記載の方法。
〔7〕前記反応温度が、1725℃である、前記〔6〕記載の方法。
〔8〕前記化学ブレンドを、前記反応温度に10分と20分の間の時間維持する、前記〔7〕記載の方法。
〔9〕前記化学ブレンドを、前記反応温度に12分と18分の間の時間維持する、前記〔8〕記載の方法。
〔10〕前記チタン鉱が酸化チタン(TiO2)を含み、前記還元剤がアルミニウム(Al)を含む、前記〔1〕記載の方法。
〔11〕前記化学ブレンド中のTiO2:Alの質量比が、0.90〜2.4である、前記〔10〕記載の方法。
〔12〕前記化学ブレンド中のTiO2:Alの質量比が、1〜2.2である、前記〔11〕記載の方法。
〔13〕前記化学ブレンド中のTiO2:Alの質量比が、1.2〜2.1である、前記〔12〕記載の方法。
〔14〕前記化学ブレンド中のTiO2:Alの質量比が、1.35〜1.9である、前記〔13〕記載の方法。
〔15〕前記化学ブレンド中のTiO2:Alの質量比が、1.4〜1.85である、前記〔14〕記載の方法。
〔16〕前記化学ブレンドが、粘性剤を含む、前記〔1〕記載の方法。
〔17〕前記チタン鉱が酸化チタン(TiO2)を含み、前記還元剤がアルミニウム(Al)を含み、前記粘性剤がフッ化カルシウム(CaF2)を含み、そして、チタン鉱対還元剤対粘性剤の比が下記の等式に相応する、前記〔16〕記載の方法:
3TiO2 + (4 + x)Al + yCaF2 → 3Ti + xAl + 2Al2O3 + yCaF2
(式中、0 ≦ x ≦3、そして、2 ≦ y ≦ 6である)。
〔18〕0.3 ≦ x ≦ 2、そして、2 ≦ y ≦ 3である、前記〔17〕記載の方法。
〔19〕X = 0.8、そして、y = 2.5である、前記〔18〕記載の方法。
〔20〕前記チタン鉱が、90質量%よりも少ない酸化チタン(TiO2)を含む、前記〔10〕記載の方法。
〔21〕前記チタン鉱が、75質量%よりも少ない酸化チタン(TiO2)を含む、前記〔20〕記載の方法。
〔22〕前記チタン鉱が、50質量%よりも少ない酸化チタン(TiO2)を含む、前記〔20〕記載の方法。
〔23〕前記チタン鉱が、30質量%までのカルシウム(Ca)を含む、前記〔22〕記載の方法。
〔24〕前記チタン鉱が、20質量%までのマグネシウム(Mg)を含む、前記〔23〕記載の方法。
〔25〕前記チタン鉱が、20質量%までのマンガン(Mn)を含む、前記〔24〕記載の方法。
〔26〕前記チタン鉱が、35質量%までの鉄(Fe)を含む、前記〔25〕記載の方法。
〔27〕前記化学ブレンドが、四塩化チタン(TiCl4)を実質的に含まない、前記〔1〕記載の方法。
〔28〕前記化学ブレンドが、硫酸(H2SO4)を実質的に含まない、前記〔27〕記載の方法。
〔29〕前記方法が、ガス状生成物の存在しない1種の固形または液体生産物を生成する、前記〔28〕記載の方法。
〔30〕前記チタン鉱が、少なくとも100ミクロンの粒度を有する、前記〔1〕記載の方法。
〔31〕前記チタン鉱が、少なくとも500ミクロンの粒度を有する、前記〔1〕記載の方法。
〔32〕前記チタン鉱が、少なくとも1質量%のカルシウム(Ca)を含む、前記〔23〕記載の方法。
〔33〕前記チタン鉱が、少なくとも1質量%のマグネシウム(Mg)を含む、前記〔24〕記載の方法。
〔34〕前期チタン鉱が、少なくとも1質量%のマンガン(Mn)を含む、前記〔25〕記載の方法。
〔35〕前記チタン鉱が、少なくとも1質量%の鉄(Fe)を含む、前記〔26〕記載の方法。
〔36〕前記チタン鉱が、37ミクロンと2000ミクロンの間の粒度を有する、前記〔1〕記載の方法。
〔37〕チタン生産物を、陽極、陰極および電解質を有する反応容器に入れる工程;
前記反応容器を600℃〜900℃の温度に加熱して溶融混合物を生成させ、前記陽極と陰極の間に電気的差動を適用してチタンイオンを前記陰極に付着させる工程;および、
前記電気的差動を終了し、前記溶融混合物を冷却して精錬チタン生産物を生成させる工程;
を含み、前記精錬チタン生産物の表面積が少なくとも0.1m2/gであることを特徴とするチタン生産物の精錬方法。
〔38〕前記精錬チタン生産物の表面積が、0.1m2/gと2.5m2/gの間である、前記〔37〕記載の方法。
〔39〕前記精錬チタン生産物の表面積が、0.4m2/gと2.0m2/gの間である、前記〔38〕記載の方法。
〔40〕前記精錬チタン生産物の表面積が、1.8m2/gである、前記〔39〕記載の方法。
〔41〕前記精錬チタン生産物が、繊維状である、前記〔40〕記載の方法。
〔42〕前記精錬チタン生産物が、ウール様形態を有し(チタンウール)、結合剤に頼らないニアネットシェイプ圧粉体に圧縮し得る、前記〔37〕記載の方法。
〔43〕前記精錬チタン生産物が、チタンウールを含む、前記〔37〕記載の方法。
〔44〕下記の工程をさらに含む、前記〔37〕記載の方法:
非導電性またはセラミック材料を、前記チタン生産物を加熱して精錬チタン生産物のコーティングを生成させる前に、前記陽極と陰極の間に置く工程。
〔45〕前記コーティングが、少なくとも95質量%のチタン金属を含む、前記〔44〕記載の方法。
〔46〕前記コーティングが、少なくとも99質量%のチタン金属を含む、前記〔45〕記載の方法。
〔47〕前記コーティングが、少なくとも99.9質量%のチタン金属を含む、前記〔46〕記載の方法。
〔48〕前記精錬チタン生産物が、少なくとも90%のチタン金属を含む、前記〔35〕記載の方法。
〔49〕前記陽極が、非消耗性である、前記〔37〕記載の方法。
〔50〕前記電気的差動が、0.5ボルトと2.5ボルトの間である、前記〔37〕記載の方法。
〔51〕前記電気的差動が、1.0ボルトと1.8ボルトの間である、前記〔37〕記載の方法。
〔52〕前記陽極が、メッシュコンテナーの形状であって、前記電気的差動を適用する間、前記チタン生産物を保持する、前記〔51〕記載の方法。
〔53〕前記陽極が、調整可能である、前記〔49〕記載の方法。
〔54〕前記陽極を調整して、1cmと6cmの間の前記陽極と前記陰極間距離を維持する、前記〔53〕記載の方法。
〔55〕前記陽極を調整して、2cmと4cmの間の前記陽極と前記陰極間距離を維持する、前記〔54〕記載の方法。
〔56〕前記陽極を調整して、3cmの前記陽極と前記陰極間距離を維持する、前記〔55〕記載の方法。
〔57〕前記チタン生産物を、前記〔1〕記載のチタン鉱から抽出する、前記〔37〕記載の方法。
〔58〕前記反応容器の加熱が、前記反応容器を誘導炉内に入れることを含む、前記〔37〕記載の方法。
〔59〕前記チタン生産物が鉄を含み、前記反応容器がモリブデンを含んで前記溶融混合物を前記誘導炉によって発生した磁場から保護する、前記〔58〕記載の方法。
〔60〕少なくとも0.1m2/gの表面積を有するチタンウール生産物。
〔61〕前記チタンウール生産物が少なくとも98%のチタンを含み、前記精錬チタン生産物の表面積が0.1m2/gと2.5m2/gの間である、前記〔60〕記載のチタンウール生産物。
〔62〕前記チタンウール生産物が90〜96%のチタン、4〜9%のAlおよび1%までのOを含み、前記チタンウール生産物の表面積が1.8m2/gである、前記〔60〕記載のチタンウール生産物。
〔63〕前記チタンウール生産物が90〜96%のチタン、4〜9%のAlおよび1%までのOから本質的になり、前記チタンウール生産物の表面積が1.8m2/gである、前記〔60〕記載のチタンウール生産物。
〔64〕前記チタンウール生産物の表面積が1.8m2/gである、前記〔61〕記載のチタンウール生産物。
〔65〕チタン鉱の熱抽出から得られたチタン生産物を精錬する工程;および、
前記チタン生産物を電気化学的分離過程に供して、精錬チタン生産物を生成させる工程を含み、前記チタン鉱が、25質量%と95質量%の間の量の酸化チタン(TiO2)と、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種とを含むことを特徴とする精錬チタン生産物の製造方法。
〔66〕前記チタン鉱が、50%よりも多い酸化チタン(TiO2)、1%よりも多いカルシウム(Ca)、1%よりも多いマグネシウム(Mg)、1%よりも多いマンガン(Mn)および少なくとも1質量%の鉄(Fe)の少なくとも1種を含む、前記〔65〕記載の方法。
〔67〕前記チタン生産物を、前記〔1〕記載のチタン鉱から抽出する。前記〔66〕記載の方法。
〔68〕前記精錬チタン生産物を、前記〔30〕記載のチタン生産物から精錬する、前記〔67〕記載の方法。
〔69〕前記精錬チタン生産物を等級外チタンスポンジまたはスクラップチタンから精錬する、前記〔66〕記載の方法。
〔70〕前記〔30〕記載のチタン生産物から精錬した、1.8m2/gの表面積を有する精錬チタン生産物。
〔71〕チタン生産物を精錬する反応容器;
前記反応容器内に配置されて精錬チタン生産物を受け入れる陰極;
前記反応容器内に配置されて前記チタン生産物を保持する陽極;
前記反応容器を加熱する熱源;および、
前記熱源を出力し且つ前記陽極と前記陰極間に0.5ボルトと2.5ボルトの間の電気的差動をもたらす出力源;
を含み、前記陽極が調整可能であって、2cmと4cmの間の前記陽極と前記陰極間距離を維持することを特徴とする、チタン精錬装置。
〔72〕前記陽極が、非消耗性である、前記〔71〕記載の装置。
〔73〕前記熱源が誘導炉であり、前記反応容器が、前記溶融混合物を前記誘導炉によって発生する磁場から保護するためのモリブデンサセプタを含む、前記〔72〕記載の装置。
〔74〕前記陽極と前記精錬チタン生産物でコーティングされる陰極との間に非導電性またはセラミック材料を保持するホルダーをさらに含む、前記〔73〕記載の装置。
〔75〕精錬するために試験したとき、少なくとも75質量%のチタンを有する試験チタン生産物が、少なくとも90%のチタンを含み且つ1.8m2/gの表面積を有する精錬チタン生産物を生ずる、前記〔74〕記載の装置。
〔76〕前記試験チタン生産物が、1%よりも多いカルシウム(Ca)、1%よりも多いマグネシウム(Mg)、1%よりも多いマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種以上を含む、前記〔75〕記載の装置。