(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る停車制御装置10について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[1.停車制御装置10の構成]
図1を用いて停車制御装置10の構成を説明する。停車制御装置10は、情報検知部(12、14、16、18)と、情報検知部から出力される情報に基づいて自動停車制御に関する処理を行う緊急時車両制御部20と、緊急時車両制御部20から出力される指示に応じて被制御機器の制御を行う各種制御部(24、26、28、30)と、緊急通報を行う緊急通信部32とを有する。
【0016】
[1−1.情報検知部12、14、16、18]
スイッチ操作検知部12は、車室内(例えばルーフ)に設置される緊急停車スイッチSWが操作されているか否かを検知する。緊急停車スイッチSWは、緊急事態が発生したときに車両の乗員が停車を意図する場合に操作されるスイッチである。乗員は、緊急停車スイッチSWを操作することにより、車両に対して停車意図を示すことができる。
【0017】
運転操作検知部14は、運転操作子(アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール)が操作されているか否かを検知するアクセル操作検知部34と、ブレーキ操作検知部36と、ステアリング操作検知部38とを有する。
【0018】
アクセル操作検知部34は、乗員によりアクセル操作が行われているか否かを検知する。アクセル操作検知部34は、例えばストロークセンサのようにアクセルペダルの操作量そのものを検知するものであってもよいし、ドライブバイワイヤにおいて発生する電気信号を検知するものであってもよい。
【0019】
ブレーキ操作検知部36は、乗員によりブレーキ操作が行われているか否かを検知する。ブレーキ操作検知部36は、例えばストロークセンサのようにブレーキペダル及び/又はブレーキレバーの操作量そのものを検知するものであってもよいし、ブレーキバイワイヤにおいて発生する電気信号を検知するものであってもよい。
【0020】
ステアリング操作検知部38は、乗員によりステアリング操作が行われているか否かを検知する。ステアリング操作検知部38は、例えばトルクセンサのようにステアリングシャフトの加えられる操舵力を検知するものであってもよいし、タッチセンサのようにステアリングホイールが乗員により把持されていることを検知するものであってもよい。
【0021】
車速検知部16は、車両の走行速度V(以下、車速Vという。)を検知する。車速検知部16は、例えば各車輪の回転数から車速Vを演算する。
【0022】
周辺情報検知部18は、車両前方の情報(レーンマーク、障害物、車両、歩行者等)を検知する。周辺情報検知部18には、各種カメラ(単眼カメラ、ステレオカメラ、赤外線カメラ等)及び/又は各種レーダ(ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザレーダ等)を使用可能である。カメラから得られた情報とレーダから得られた情報を統合するフュージョンセンサを使用することも可能である。
【0023】
[1−2.緊急時車両制御部20]
緊急時車両制御部20はECUにより構成される。ECUは、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、ROM(EEPROMも含む。)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置等を有する。ECUは、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部、例えば各種制御部、演算部、及び処理部等として機能する。本実施形態において、緊急時車両制御部20を構成するECUは、プログラムを実行することにより、停車意図検知部42、運転不能状態検知部44及び自動停車制御部46として機能する。また、ROMは、記憶部48を備える。ECUは複数に分割されていてもよく、又は、他のECUと統合されてもよい。なお、これらの機能は、ハードウエアにより実現することもできる。
【0024】
停車意図検知部42は、ブレーキ操作以外の停車意図を検知又は推定するように構成される。ここでは、停車意図検知部42は、スイッチ操作検知部12が緊急停車スイッチSWのON信号を検知したときに、乗員が停車意図を示しているものと推定する。
【0025】
運転不能状態検知部44は、運転者が運転不能状態であることを検知又は推定するように構成される。ここでは、運転不能状態検知部44は、アクセル操作検知部34、ブレーキ操作検知部36及びステアリング操作検知部38が共に操作信号を所定時間以上検知しないときに、運転者が運転不能状態にあるものと推定する。
【0026】
自動停車制御部46は、減速度設定部52、制御時間判定部54、オーバーライド制御部56、減速指示部58及び操舵指示部60として機能する。減速度設定部52は、停車意図検知部42及び運転不能状態検知部44の検知又は推定結果に基づいて、自動停車制御における減速度を設定するように構成される。制御時間判定部54は、停車意図検知部42で停車意図が検知又は推定され、且つ、運転不能状態検知部44で運転不能状態が検知又は推定されない場合に、自動停車制御の制限時間Tb1thを設定するように構成される。オーバーライド制御部56は、アクセルオーバーライドに関わる自動停車制御を実行するように構成される。減速指示部58は、減速度設定部52、制御時間判定部54及びオーバーライド制御部56で設定又は要求される減速度を制動制御部24に指示するように構成される。操舵指示部60は、周辺情報検知部18により得られる情報に基づいて、自動停車制御中に車両が車線逸脱しないような操舵量を設定し、設定した操舵量で自動操舵制御を実行するように構成される。
【0027】
記憶部48は、減速度記憶部62と時間記憶部64とを有する。減速度記憶部62は、自動停車制御を実行する際に制動制御部24に対して指示する第1減速度G1と第2減速度G2とを記憶する。第1減速度G1は特定値であってもよいし、
図2で示すような車速V−第1減速度G1のマップM1で記憶されてもよい。
図2で示すマップM1では、車速Vが大きくなるほど対応する第1減速度G1は大きくなっている。更に、所定車速V1以上に対応する第1減速度G1maxは一定である。第2減速度G2は第1減速度G1よりも十分に大きい値である。なお、第1減速度G1及び第2減速度G2は、車両が停車可能な制動力を発生させる大きさである必要がある。例えば、トルクコンバータ型のAT車の場合に、減速度が小さいと、クリープにより停車できない場合がある。本実施形態で設定される第1減速度G1及び第2減速度G2は、クリープを抗して停車可能な制動力を発生させる大きさである。時間記憶部64は、自動停車制御中に実行される各種判別処理で使用される各種所定時間を記憶する。このうち、制御時間判定処理(
図7参照)において使用される第1所定時間(制限時間Tb1th)は特定時間であってもよいし、
図3で示すような車速V−第1所定時間(制限時間Tb1th)のマップM2で記憶されてもよい。
図3で示すマップM2では、車速Vが大きくなるほど対応する第1所定時間(制限時間Tb1th)は大きくなっている。更に、所定車速V2以上に対応する第1所定時間(制限時間Tb1thmax)は一定である。
【0028】
[1−3.その他の各種制御部24、26、28、30]
制動制御部24は、摩擦ブレーキや電動パーキングブレーキ等のブレーキ装置と、ブレーキ装置を制御するブレーキECUとを有する。ブレーキECUはプログラムの実行により各種機能実現部として機能する。ブレーキECUは、車速検知部16で検知される車速V及び図示しない舵角センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサで検知される舵角、ヨーレート、加減速度等に基づいて、車両が安定して停車できるように自動停車制御を行う。ブレーキECUは、自動停車制御部46から出力される減速指示(第1減速度G1又は第2減速度G2)に応じて各車輪の最適なブレーキ圧を求める。そして、摩擦ブレーキ装置のブレーキアクチュエータを制御する。更に、車両が停車した場合には、電動パーキングブレーキを作動させる。
【0029】
操舵制御部26は、電動パワーステアリング装置と、電動パワーステアリング装置を制御するステアリングECUとを有する。ステアリングECUはプログラムの実行により各種機能実現部として機能する。ステアリングECUは、図示しない舵角センサで検知される舵角と、周辺情報検知部18により取得されるレーンマーク情報に基づいて、車線維持制御及び路外逸脱抑制制御を行う。すなわち、ステアリングECUは、周辺情報検知部18により取得されるレーンマーク情報に基づき、車両とレーンマークとの距離を所定範囲内に維持すべく適切な操舵量を演算する。そして、電動パワーステアリング装置のステアリングアクチュエータを制御する。また、ステアリングECUは、レーンマークと自車両との距離が近づいた場合に、ステアリングホイールが警告動作(振動等)を行うように、ステアリングアクチュエータを制御する。
【0030】
報知制御部28は、スピーカやディスプレイ等の報知装置と、報知装置を制御する報知ECUとを有する。報知ECUはプログラムの実行により各種機能実現部として機能する。報知ECUは、自動停車制御が実行される場合に、自動停車制御が実行されていることを報知するために、スピーカ及び/又はディスプレイを制御する。
【0031】
計器制御部30は、メータパネルやハザードランプ等の電飾装置と、計器ECUとを有する。計器ECUはプログラムの実行により各種機能実現部として機能する。計器ECUは、自動停車制御が実行される際に、当該制御が実行中であることの状態表示をメータパネルを用いて行うと共に、ハザードランプを点滅させる。
【0032】
[1−4.緊急通信部32]
緊急通信部32は、車室内の通信端末、及びこの通信端末を専用回線又は公衆回線を介して外部機関、本実施形態では救急救命センター、の通信端末と接続する接続装置を有する。緊急通信部32は、スイッチ操作検知部12により緊急停車スイッチSWの操作が検知されるに応じて、車室内の通信端末と救急救命センターの通信端末との間で通信回線を設定する。
【0033】
[2.本実施形態で行われる各処理]
[2−1.基本的な処理]
図4を用いて停車制御装置10で行われる基本的な処理を説明する。
図4で示す処理は、車両のイグニッションがオン操作された場合、又は、所定のタイミングで開始される。
【0034】
ステップS1にて、停車意図検知部42は、乗員の停車意図の有無を示す停車意図判定フラグ(以下、FLG1という。)を初期化する。また、運転不能状態検知部44は、運転者が運転不能状態であるか否かを示す運転不能状態判定フラグ(以下、FLG2という。)を初期化する。
【0035】
ステップS2にて、各情報検知部(スイッチ操作検知部12、運転操作検知部14、車速検知部16、周辺情報検知部18)は、各情報を検知する。なお、各情報の検知は、車両の走行中に常時又は定期的(ミリ秒単位毎)に実行される。
【0036】
緊急事態の発生時に、乗員は緊急停車スイッチSWを操作することにより停車意図を示す。このとき、スイッチ操作検知部12は緊急停車スイッチSWのスイッチ操作を検知する。本実施形態において、スイッチ操作検知部12が緊急停車スイッチSWのスイッチ操作を検知した場合に、停車意図検知部42は停車意図ありと判定する。ステップS3にて、停車意図ありの場合(ステップS3:YES)、処理はステップS4に移行する。ステップS4にて、停車意図検知部42はFLG1を1にし、処理はステップS5に移行する。一方、ステップS3にて、停車意図なしの場合(ステップS3:NO)、処理はそのままステップS5に移行する。
【0037】
運転者が運転不能状態に陥ると、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等の運転操作子に対する操作がなくなる。本実施形態において、アクセル操作検知部34、ブレーキ操作検知部36及びステアリング操作検知部38の全てが、その時点から遡って所定時間(不操作所定時間Tath)の間に操作信号を検知していない場合に、運転不能状態検知部44は運転不能状態であると判定する。ステップS5にて、運転不能状態である場合(ステップS5:YES)、処理はステップS6に移行する。ステップS6にて、運転不能状態検知部44はFLG2を1にし、処理はステップS7に移行する。一方、ステップS5にて、運転不能状態でない場合(ステップS5:NO)、処理はそのままステップS7に移行する。
【0038】
なお、ここではステップS3及びステップS4の処理の後にステップS5及びステップS6の処理が行われるように説明したが、実際にはステップS3及びステップS4の処理とステップS5及びステップS6の処理は並行して行われる。
【0039】
ステップS7にて、FLG1とFLG2が共に0である場合(ステップS7:FLG1=0、FLG2=0)、すなわち、乗員に停車意図がなく、且つ、運転者が運転不能状態でない場合に、自動停車制御は行われない。ステップS7にて、FLG1とFLG2のいずれか一方が1である場合(ステップS7:FLG1=1、FLG2=0、又は、FLG1=0、FLG2=1)、すなわち、乗員に停車意図があるか、又は、運転者が運転不能状態である場合に、処理はステップS8に移行する。ステップS8にて、減速度設定部52は第1減速度G1を設定し、減速指示部58は制動制御部24に対して第1減速度G1の減速指示を出力する。制動制御部24は、減速指示に基づいてブレーキアクチュエータを制御して、第1減速度G1による自動停車制御を行う。ステップS7にて、FLG1とFLG2が共に1である場合(ステップS7:FLG1=1、FLG2=1)、すなわち、乗員に停車意図があり、且つ、運転者が運転不能状態である場合に、処理はステップS9に移行する。ステップS9にて、減速度設定部52は第2減速度G2を設定し、減速指示部58は制動制御部24に対して第2減速度G2の減速指示を出力する。制動制御部24は、減速指示に基づいてブレーキアクチュエータを制御して、第2減速度G2による自動停車制御を行う。
【0040】
ステップS10にて、車速検知部16により検知される車速Vが0である場合(ステップS10:YES)、自動停車制御部46は、制動制御部24に対して車両固定指示を出力する。制動制御部24は、車両固定指示に基づいて電動パーキングブレーキを制御して、車両を固定する。一方、ステップS10にて、車速検知部16により検知される車速Vが0でない場合(ステップS10:NO)、ステップS2以降の処理が繰り返される。
【0041】
次に、上記
図4で示す基本的な処理のうちの一部処理の具体例、及び、一部処理と同時に実行可能な処理について、
図5〜
図8を用いて説明する。
【0042】
[2−2.不操作判定処理]
図5で示す不操作判定処理は、運転不能状態か否かを判定する処理(
図4で示すステップS5及びステップS6)の一例である。この処理を実行する主体は運転不能状態検知部44である。
図5で示す処理が常時又は定期的(ミリ秒単位毎)に実行されてもよい。
【0043】
ステップS21にて、運転不能状態検知部44は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等の運転操作子の不操作時間を計時するためのカウンタTaを初期化する。
【0044】
ステップS22にて、各運転操作子が不操作状態である場合(ステップS22:YES)、すなわち、アクセル操作検知部34、ブレーキ操作検知部36及びステアリング操作検知部38の全てが操作信号を検知していない場合、処理はステップS23に移行する。一方、ステップS22にて、いずれかの運転操作子が操作状態である場合(ステップS22:NO)、すなわち、アクセル操作検知部34、ブレーキ操作検知部36及びステアリング操作検知部38のうち少なくとも一つが操作信号を検知している場合、不操作判定処理は終了する。
【0045】
ステップS23にて、カウンタTaが0である場合(ステップS23:YES)、すなわち、カウンタTaにより不操作時間が未だ計時されていない場合、処理はステップS24に移行する。ステップS24にて、運転不能状態検知部44はカウンタTaにより計時を開始し、処理はステップS25に移行する。一方、ステップS23にて、カウンタTaが0でない場合(ステップS23:NO)、すなわち、カウンタTaにより既に計時されている場合、そのまま処理はステップS25に移行する。
【0046】
ステップS25にて、カウンタTaが不操作所定時間Tath以上である場合(ステップS25:YES)、すなわち、各運転操作子が不操作所定時間Tath以上操作されていない場合、処理はステップS26に移行する。ステップS26にて、運転不能状態検知部44はFLG2を1にする。一方、ステップS25にて、カウンタTaが不操作所定時間Tath未満である場合(ステップS25:NO)、ステップS22以降の処理が繰り返される。
【0047】
[2−3.第1減速度設定処理]
図6で示す第1減速度設定処理は、第1減速度G1による自動停車制御処理(
図4で示すステップS8)の一例である。この処理を実行する主体は自動停車制御部46(主として減速度設定部52と減速指示部58)である。
【0048】
ステップS31にて、減速度設定部52は、車速Vに応じた第1減速度G1を決定する。減速度設定部52は、停車意図検知部42により停車意図が検知されたときに、車速検知部16で検知された車速Vを取得する。更に、減速度記憶部62で記憶される車速V−第1減速度G1のマップM1(
図2参照)に基づいて、車速Vに対応する第1減速度G1を決定する。
【0049】
ステップS32にて、減速度設定部52は第1減速度G1を設定し、減速指示部58は制動制御部24に対して第1減速度G1の減速指示を出力する。制動制御部24は、減速指示に基づいてブレーキアクチュエータを制御して、第1減速度G1による自動停車制御を行う。
【0050】
なお、ステップS31、ステップS32の処理のように、車速Vに応じた第1減速度G1により自動停車制御を実行するのではなく、車速Vに関わらず特定の第1減速度G1により自動停車制御を実行することも可能である。
【0051】
[2−4.制御時間判定処理]
図7で示す制御時間判定処理は、第1減速度G1による自動停車制御(
図4で示すステップS8)と同時に実行可能な処理である。この処理を実行する主体は停車意図検知部42と運転不能状態検知部44と自動停車制御部46(主として制御時間判定部54)である。
図7で示す処理が常時又は定期的(ミリ秒単位毎)に実行されてもよい。
【0052】
この処理は、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定されて第1減速度G1による自動停車制御が行われる場合に実行される。この処理では、停車意図が検知又は推定されてから制限時間(第1所定時間)Tb1th以内に、運転操作子が不操作所定時間(第2所定時間)Tb2th以上の不操作状態である場合に、第2減速度G2による自動停車制御を行うようにしている。一方で、この処理では、停車意図が検知又は推定されてから制限時間(第1所定時間)Tb1th以内に、運転操作子が不操作所定時間(第2所定時間)Tb2th以上の不操作状態でない場合に、自動停車制御を解除するようにしている。更に、制限時間(第1所定時間)Tb1thを、停車意図が検知されたときの車速Vに応じて決定し、車速Vが大きくなるほど長くするようにしている。以下で、処理の流れを説明する。
【0053】
ステップS41にて、制御時間判定部54は、第1減速度G1による自動停車制御の実行時間を計時するためのカウンタTb1を初期化する。
【0054】
ステップS42にて、FLG1が1である場合(ステップS42:YES)、すなわち、乗員に停車意図がある場合、処理はステップS43に移行する。一方、ステップS42にて、FLG1が0である場合(ステップS42:NO)、すなわち、乗員に停車意図がない場合、制御時間判定処理は終了する。
【0055】
ステップS43にて、制御時間判定部54は、車速Vに応じた制限時間Tb1thを決定する。制御時間判定部54は、停車意図検知部42により停車意図が検知されたときに、車速検知部16で検知された車速Vを取得する。更に、時間記憶部64で記憶される車速V−制限時間Tb1thのマップM2(
図3参照)に基づいて、車速Vに対応する制限時間Tb1thを決定する。車速V−制限時間Tb1thのマップM2は、車速Vが大きくなるほど制限時間Tb1thが長くなるように設定されている。
【0056】
ステップS44にて、制御時間判定部54は、カウンタTb1により計時を開始する。
【0057】
ステップS45にて、カウンタTb1が制限時間Tb1th未満である場合(ステップS45:YES)、すなわち、自動停車制御の実行時間が制限時間Tb1th未満である場合、処理はステップS46に移行する。ステップS46にて、制御時間判定部54は、運転操作子が不操作所定時間Tb2th以上の不操作状態か否かを判定する不操作判定処理を行う。ここでは、
図5で示す不操作判定処理が行われる。
図5で示す不操作判定処理においては、カウンタTa及び不操作所定時間Tathに代えて、カウンタTb2及び不操作所定時間Tb2thが使用される。
【0058】
ステップS47にて、FLG2が1である場合(ステップS47:YES)、すなわち、ステップS46の不操作判定処理で不操作所定時間Tb2th以上の不操作状態と判定された場合、処理はステップS48に移行する。ステップS48にて、減速度設定部52は第2減速度G2を設定し、減速指示部58は制動制御部24に対して第2減速度G2の減速指示を出力する。制動制御部24は、減速指示に基づいてブレーキアクチュエータを制御して、第2減速度G2による自動停車制御を行う。一方、ステップS47にて、FLG2が0である場合(ステップS47:NO)、ステップS45以降の処理が繰り返される。
【0059】
ステップS45にて、カウンタTb1が制限時間Tb1th以上である場合(ステップS45:NO)、すなわち、自動停車制御の実行時間が制限時間Tb1th以上である場合、処理はステップS49に移行する。ステップS49にて、停車意図検知部42と運転不能状態検知部44はFLG1とFLG2を初期化する。ステップS50にて、減速指示部58は制動制御部24に対する減速指示を中止する。制動制御部24は自動停車制御を解除する。
【0060】
[2−5.オーバーライド処理]
図8で示すオーバーライド処理は、自動停車制御(
図4で示すステップS8及びステップS9)と同時に実行可能な処理である。この処理を実行する主体は自動停車制御部46(主としてオーバーライド制御部56。)である。
図8で示す処理が常時又は定期的(ミリ秒単位毎)に実行されてもよい。
【0061】
この処理では、自動停車制御中にアクセルペダルが操作される場合に自動停車制御を中断し、更に、アクセルペダルが所定時間(オーバーライド所定時間Tcth)以上継続して操作される場合に自動停車制御を解除するようにしている。以下で、処理の流れを説明する。
【0062】
ステップS81にて、オーバーライド制御部56は、アクセルペダルの操作時間を計時するためのカウンタTcを初期化する。
【0063】
ステップS82にて、アクセル操作がある場合(ステップS82:YES)、すなわち、アクセル操作検知部34が操作信号を検知している場合、処理はステップS83に移行する。一方、アクセル操作がない場合(ステップS82:NO)、すなわち、アクセル操作検知部34が操作信号を検知していない場合、オーバーライド処理は終了する。
【0064】
ステップS83にて、オーバーライド制御部56は、その時点で実行されている自動停車制御を中断する。このとき、減速指示部58は制動制御部24に対する第1減速度G1又は第2減速度G2の減速指示を中断する。すると、制動制御部24はブレーキアクチュエータの制御を中断する。
【0065】
ステップS84にて、オーバーライド制御部56は、カウンタTcにより計時を開始する。
【0066】
ステップS85にて、カウンタTcがオーバーライド所定時間Tcth未満である場合(ステップS85:YES)、すなわち、アクセルペダルの操作時間がオーバーライド所定時間Tcth未満である場合、処理はステップS86に移行する。
【0067】
ステップS86にて、アクセルペダルの操作が継続している場合(ステップS86:YES)、ステップS85以降の処理が繰り返される。一方、ステップS86にて、アクセルペダルの操作が終了している場合(ステップS86:NO)、処理はステップS87に移行する。ステップS87にて、オーバーライド制御部56は、自動停車制御を再開する。このとき、減速指示部58は制動制御部24に対する第1減速度G1又は第2減速度G2の減速指示を再開する。すると、制動制御部24はブレーキアクチュエータの制御を再開する。
【0068】
ステップS85にて、カウンタTcがオーバーライド所定時間Tcth以上である場合(ステップS85:NO)、すなわち、アクセルペダルの操作時間がオーバーライド所定時間Tcth以上である場合、処理はステップS88に移行する。
【0069】
ステップS88にて、停車意図検知部42と運転不能状態検知部44はFLG1とFLG2を初期化する。ステップS89にて、減速指示部58は制動制御部24に対する第1減速度G1又は第2減速度G2の減速指示を中止する。制動制御部24は自動停車制御を解除する。
【0070】
[3.本実施形態のまとめ]
停車制御装置10は、ブレーキ操作以外の停車意図を検知又は推定する停車意図検知部42と、運転者が運転不能状態であることを検知又は推定する運転不能状態検知部44と、ブレーキを利用して自動停車制御を行う自動停車制御部46と、を備える。
図4で示すように、自動停車制御部46(減速度設定部52及び減速指示部58)は、車両の走行中に、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定されるか、又は、運転不能状態検知部44により運転不能状態が検知又は推定される場合に、第1減速度G1で自動停車制御を行う。また、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定され、且つ、運転不能状態検知部44により運転不能状態が検知又は推定される場合に、第1減速度G1よりも大きい第2減速度G2で自動停車制御を行う。
【0071】
停車制御装置10によれば、車両の走行中に、停車意図又は運転不能状態が検知又は推定される場合に、第2減速度G2(強減速)よりも小さい第1減速度G1(弱減速)で自動停車制御が行われる。例えば、運転者が運転不能状態となり、乗員が緊急停車スイッチSWを操作する等により停車意図を示しているにも関わらず、何らかの理由で運転不能状態であることが検知又は推定されなかったとする。このような場合でも、第1減速度G1(弱減速)による自動停車制御が実行される。その結果、第2減速度G2(強減速)による自動停車制御時と比較して時間を要するものの、確実に停車させることができる。また、例えば、運転者に停車意図がないにも関わらず、誤操作又は誤判定により停車意図と運転不能状態のいずれか一方が検知又は推定されたとする。このような場合は、第1減速度(弱減速)による自動停車制御が実行されるに留まる。このため、自動停車制御を解除して通常運転に復帰させる際に過剰な加速は不要である。以上のように、本実施形態によれば、乗員の意図に応じた自動停車制御を行うことができる。
【0072】
停車制御装置10は、車両の運転操作子が操作されているか否かを検知する運転操作検知部14を更に備える。運転不能状態検知部44は、運転操作検知部14により運転操作子が所定時間以上操作されていないことが検知される場合に、運転不能状態であることを推定する。運転者が運転不能状態になると、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等の運転操作子が操作されなくなる。運転操作子が操作されているかを検知することにより、運転者が運転不能状態であるか否かを推定することができる。
【0073】
停車制御装置10は、車速を検知する車速検知部16を備える。自動停車制御部46は、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定されたとき、又は、運転不能状態検知部44により運転不能状態が検知又は推定されたときに、車速検知部16により検知される車速Vが大きいほど、第1減速度G1を大きくする(
図2参照)。停車制御装置10によれば、車速Vが大きいほど第1減速度G1を大きくするため、高速走行する車両において第1減速度G1による自動停車制御を実行する場合に、停車に至るまでの時間を短縮することができる。つまり、車速Vに応じた自動停車制御が可能になる。
【0074】
自動停車制御部46は、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定されてから制限時間(第1所定時間)Tb1th以内に、運転操作検知部14により運転操作子が不操作所定時間(第2所定時間)Tb2th以上の不操作状態であることが検知される場合に、第2減速度G2で自動停車制御を行う。その一方、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定されてから制限時間(第1所定時間)Tb1th以内に、運転操作検知部14により運転操作子が不操作所定時間(第2所定時間)Tb2th以上の不操作状態であることが検知されない場合に、自動停車制御を解除する。更に、自動停車制御部46は、停車意図検知部42により停車意図が検知又は推定されたときに、車速検知部16により検知される車速Vが大きいほど、制限時間(第1所定時間)Tb1thを長くする(
図3参照)。停車制御装置10によれば、自動停車制御に制限時間Tb1thを設定する場合に、車速Vが大きいほど制限時間Tb1thを長くするため、高速走行する車両を自動停車制御により停車させることができる。つまり、車速に応じた自動停車制御が可能になる。
【0075】
停車制御装置10は、車両のアクセルペダルが操作されているか否かを検知するアクセル操作検知部34を備える。自動停車制御部46は、自動停車制御を行っているときに、アクセル操作検知部34によりアクセルペダルが操作されていることが検知される場合に、自動停車制御を中断する。更に、アクセル操作検知部34によりアクセルペダルがオーバーライド所定時間Tcth以上継続して操作されていることが検知される場合に、自動停車制御を解除する。停車制御装置10によれば、アクセルペダルにより自動停車制御が中断され、オーバーライド所定時間Tcth以上のアクセル操作により自動停車制御が解除されるため、誤って自動停車制御が実行されたとしても、容易に通常運転に復帰させることが可能である。
【0076】
[4.別実施形態]
上記実施形態では、乗員が操作する緊急停車スイッチSWの操作により乗員の停車意図を検知する。しかし、別の手段を使用することも可能である。例えば、運転者の顔面を撮影して、運転者が瞼を閉じたことを判定するようにしてもよい。また、運転者の姿勢が悪化したことを判定するようにしてもよい。また、車内の乗員の声(音量や音域)を判定するようにしてもよい。
【0077】
また、緊急停車スイッチSWは、乗員が緊急時車両制御部20に対して自動停車制御の実行及び実行取り消しを指示する装置であり、且つ、救急救命センターとの通信の開始を指示する装置でもある。つまり、緊急停車スイッチSWには、走行中の車両の自動停車制御の実行及び実行取り消しに関する乗員の意思表示機能の他に、車外との通話を開始する機能が割り当てられている。緊急停車スイッチSWには車外との通話を開始する機能が割り当てられてなくてもよく、その他の機能が割り当てられていてもよい。