(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)ポリスチレン系複合樹脂粒子
本発明のポリスチレン系複合樹脂粒子(以下「複合樹脂粒子」ともいう)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対してポリスチレン系樹脂100〜500重量部を含むポリスチレン系複合樹脂粒子であり、
前記ポリスチレン系複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させ、予備発泡させて得られた予備発泡粒子をテトラヒドロフランに24時間浸漬させて得られた抽出液Aと、該予備発泡粒子をその中心で1/2に切断した半分カット品をテトラヒドロフランに24時間浸漬させて得られた抽出液BとをそれぞれGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)測定したときに、
前記抽出液A及び抽出液Bのクロマトグラムから得られる重量平均分子量(Mw)10万〜50万の前記ポリスチレン系樹脂のピークであって、
前記抽出液Aのクロマトグラムのピークトップ強度Psと前記抽出液Bのクロマトグラムのピークトップ強度Piとの比Ps:Piが1:10以上であるか、もしくは
前記抽出液Aのクロマトグラムのピーク面積Ssと前記抽出液Bのクロマトグラムのピーク面積Siとの比Ss:Siが1:10以上である
ことを特徴とする。
【0018】
抽出液A及びBのRI検出器を使用して得られたクロマトグラムのピーク強度及び面積は、本発明の複合樹脂粒子に含まれるポリスチレン系樹脂のテトラヒドロフランへの溶出濃度に依存する。すなわち、クロマトグラムのピーク強度が強いほど、抽出液中のポリスチレン系樹脂の含有割合が多いことを意味する。
GPC測定については、実施例において詳述する。
【0019】
本発明者らは、予備発泡粒子の抽出液Aのクロマトグラムが複合樹脂粒子の表面付近のポリスチレン成分の量及び分散、分岐状態を表し、半分カット品の抽出液Bのクロマトグラムが複合樹脂粒子の全体のポリスチレン成分の量を近似的に表すことが出来るのではないかと考えた。
予備発泡粒子の抽出液Aのクロマトグラムのピーク強度及び面積が大きければ、それだけ表面付近のポリスチレン成分が抽出され易い状態であり、量的な問題もさることながらグラフトや架橋の影響を受けるものと考えている。
予備発泡粒子の抽出液Aと半分カット品の抽出液Bのクロマトグラムとのピークトップ強度及び面積を対比することで、複合樹脂粒子中におけるポリスチレン成分の表面から内部に至る分布状態と、表面付近のポリスチレン成分の抽出され易さを表すことができ、発泡剤の含浸時及び予備発泡時における合着の要因の指標とすることができるのではないかと考えた。
【0020】
予備発泡粒子を半分にカットすることにより、テトラヒドロフランに接触する表面積が増加するために予備発泡粒子を浸漬したものよりもポリスチレン成分の溶出量は多くなることは安易に予想することができる。
しかし、驚くべきことに本発明の樹脂粒子合着を低減することができた複合樹脂粒子は、後述する実施例及び比較例の結果からも明らかなように、予想以上に抽出されるポリスチレン成分の割合に大きな差があることを見出した。
【0021】
また、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸して発泡性複合樹脂粒子を得る際に、発泡剤の可塑効果により粒子表面付近からポリスチレン系樹脂成分が抽出され、バインダーとなることで合着を起こし易くなるが、本発明の複合樹脂粒子では、このような合着も低減できる。
更に、発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る際に、水蒸気などの加熱で樹脂を軟化させることから、合着を引き起こし易い状態であるにもかかわらず本発明の複合樹脂粒子は合着を低減できる。
【0022】
(a)予備発泡粒子のクロマトグラムのピークトップ強度及びピーク面積比
上記のように予備発泡粒子のクロマトグラムのピークトップ強度及びピーク面積比は、本発明のポリスチレン系複合樹脂粒子のポリスチレン系樹脂分布の傾斜構造および抽出されるポリスチレン量を規定するものと考えられる。
本発明では、得られるクロマトグラムにおいて重量平均分子量(Mw)が10万〜50万のピークを基準とする。それ以外のピークに関しては本発明では採用しない。合着に起因するポリスチレン系樹脂成分は上記に該当するピークに起因すると考えている。
発泡剤含浸時及び予備発泡の際に低分子成分に関して、仮に抽出されても粉末などになって系外へ分離されることなどから多量の合着の要因になりにくいと考えている。
なお、クロマトグラムのピークがポリスチレン系樹脂のものであることは、ガスクロマトグラフィーなどの公知の方法により確認することができる。
【0023】
予備発泡粒子の抽出液Aのクロマトグラムのピークトップ強度Psと半分カット品の抽出液Bのクロマトグラムのピークトップ強度Piとの比Ps:Piは、1:10以上であるか、もしくは
予備発泡粒子の抽出液Aのクロマトグラムのピーク面積Ssと半分カット品の抽出液Bのクロマトグラムのピーク面積Siとの比Ss:Siは、1:10以上である。
本発明者らは、ピークトップ強度比とピーク面積比とが相関関係を有することを確認している。
比Ps:Piは、例えば、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95及び1:100であり、好ましくは1:30以上、より好ましくは1:35以上である
比Ss:Siは、例えば、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95及び1:100であり、好ましくは1:30以上、より好ましくは1:35以上である
【0024】
(b)ポリスチレン系樹脂(PS)
ポリスチレン系複合樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体を主成分とする樹脂であれば特に限定されず、スチレン又はスチレン誘導体の単独又は共重合体が挙げられる。
スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0025】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を併用したものであってもよい。
ビニル系単量体としては、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステルや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
また、単量体を併用する場合、その含有量は、スチレン系単量体が主成分となる量(例えば、50重量%以上)になるように設定されることが好ましい。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0026】
(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
ポリスチレン系複合樹脂粒子を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であれば、その重量割合等は特に限定されない。
例えば、エチレン85〜99重量%と酢酸ビニル1〜15重量%との共重合体が挙げられ、具体的には、実施例において用いているような市販品が挙げられる。
【0027】
本発明の複合樹脂粒子は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対してポリスチレン系樹脂100〜500重量部を含む。
ポリスチレン系樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して100重量部未満であると、発泡性、成形加工性が不十分になることがある。
一方、ポリスチレン系樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して500重量部を超えると、耐衝撃性や柔軟性が不十分になることがある。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対するポリスチレン系樹脂(重量部)は、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490及び500である。
好ましいポリスチレン系樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して120〜450重量部であり、更に好ましくは130〜410重量部である。
【0028】
(d)複合樹脂粒子の粒子径
複合樹脂粒子は、0.5〜3.0mmの平均粒子径を有するのが好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径が0.5mm未満では、高い発泡性を得られないことがある。
一方、複合樹脂粒子の平均粒子径が3.0mmを超えると、成形加工時の予備発泡粒子の充填性が不十分になることがある。
複合樹脂粒子の平均粒子径(mm)は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5及び3.0である。
より好ましい複合樹脂粒子の平均粒子径は、0.5〜2.0mmである。
【0029】
(2)ポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法
本発明の複合樹脂粒子は、例えば、
(A)水性媒体中に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる核粒子を分散させ、スチレン系単量体を吸収させた後、昇温し重合させる第1の重合工程と、
(B)次いで、スチレン系単量体を吸収させながら重合させる第2の重合工程と、
(C)100℃以上に昇温し、残存する単量体を処理しかつ架橋させる架橋工程と
を経る本発明のポリスチレン系複合樹脂粒子の製造方法であって、
工程(A)の昇温する際に系内を90℃未満で密閉することを特徴とするスチレン系複合樹脂粒子の製造方法により製造することができる。
【0030】
工程(A)の第1の重合工程は、実質的に重合しない温度でスチレン系単量体を吸収させた後、昇温させ重合させる。
この昇温させる際、90℃未満にて系内を密閉し単量体を重合させる。密閉はスチレン系単量体を吸収させた後に実施することから、密閉温度の下限はスチレン系単量体を吸収させる温度である。スチレン系単量体を吸収させた温度以下で密閉するには一旦系内を冷却し、再度加熱する必要があることから生産性を悪化させると共に、多量のエネルギーを消費し効率的でない。
密閉温度、つまりスチレン系単量体をエチレン−酢酸ビニル共重合体へ吸収させる温度が例えば常温の25℃未満であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体への吸収が効率的に進まず、時間を要すことや、昇温時に多量のエネルギーが必要であることから生産性を悪化させることがある。
一方、密閉温度が90℃以上では、以下に述べる実施例及び比較例のとおり、複合樹脂粒子の発泡剤の含浸時及び予備発泡時の際に多量の合着粒子が発生する。
密閉温度(℃)は、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80及び85である。
また、密閉する温度は30℃以上90℃未満であることが好ましく、50℃以上90℃未満であることが更に好ましい。更に好ましい上限範囲としては、85℃以下である。
【0031】
工程(A)では、100℃以上でエチレン−酢酸ビニル共重合体に吸収させたスチレン系単量体を重合させる。選択する重合開始剤にもよるが、110℃〜140℃であることが好ましい。この際、系内の圧力(大気圧基準)は0.05〜0.5M
Pa程度である。
重合が完了した後、冷却して工程(B)へ移行する。この際、冷却時に反応器内が減圧にならないように、系内の圧力が0.0M
Paになるようであれば、一旦系内を開放する。
【0032】
工程(B)における単量体の重合は、例えば、80〜95℃で、スチレン系単量体を系内に導入し、複合樹脂粒子に吸収させながら重合させる。
また、工程(B)を密閉条件下で行うのが好ましい。この理由としては、定かではないがスチレン系単量体の吸収速度及び効率が良くなるのではないかと発明者らは考えている。そのとき、系内の圧力は0.0〜0.1M
Paである。
【0033】
工程(C)における温度条件は、100℃以上であり、例えば、130〜145℃である。工程(C)は工程(B)にて反応仕切れていない単量体を強制的に重合して処理することや、架橋させる処理を実施する工程である。この際の系内の圧力は0.05〜0.6M
Pa程度である。
また、各昇温及び降温(冷却)の速度は外気温により変動するが、開始温度から目的温度に到達するまでの区間全体で換算すると0.3〜3.0℃/minで実施することが好ましく、0.4〜2.5℃/minが更に好ましい。
【0034】
(a)核樹脂粒子(「種粒子」ともいう)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、核樹脂粒子として機能し、例えば、押出機で原料樹脂を溶融混練後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットする方法や水中カット法により得ることができる。
【0035】
所定の大きさの核樹脂粒子を得るためのダイスは、その樹脂吐出孔の直径は0.2〜1.0mmが好ましい。押出機から押出されてくる樹脂のダイス入口での樹脂温度は200〜300℃に調整されることが好ましい。
押出機やスクリュー構造、ダイス、押出条件、水中カット条件を組み合わせることで所望の核樹脂粒子が得られる。
また、上記核樹脂粒子は本発明の効果を損なわない限り、相容化剤、気泡調整剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を含有することができる。
【0036】
核樹脂粒子の粒子径は、複合樹脂粒子の平均粒子径などに応じて適宜調整でき、好ましい粒子径は、0.4〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは0.4〜1.0mmの範囲であり、その平均重量は30〜90mg/100粒である。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。
【0037】
(b)重合開始剤
上記の製造方法では、重合開始剤を用いるのが好ましく、このような重合開始剤としては、従来からスチレン系単量体の重合に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いられても、併用されてもよいが、10時間の半減期を得るための分解温度が60〜130℃にある複数種類の重合開始剤を併用することが好ましい。
【0038】
(c)懸濁安定剤
更に、上記の製造方法では、スチレン系単量体の液滴及び核樹脂粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。このような懸濁安定剤としては、従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。
また、難溶性無機化合物を用いる場合には、通常アニオン界面活性剤が好適に併用される。
【0039】
このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0040】
(d)他の成分
なお、複合樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、可塑剤、気泡調整剤、架橋剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤等の添加剤を添加してもよい。
【0041】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペート等のアジピン酸エステル、ヤシ油等の可塑剤が挙げられる。
可塑剤の複合樹脂粒子中における含有量は、0.1〜3.0重量%が好ましい。
【0042】
気泡調整剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサンなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0043】
難燃剤としては、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などが挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0044】
着色剤としては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などのカーボンブラック、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などのクロム酸塩、紺青などのフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、鉄黒、紅殻などの酸化物、群青のようなケイ酸塩、酸化チタンなどの無機系の顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの多環式顔料などの有機系の顔料が挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0045】
(e)撹拌
重合容器の形状及び構造としては、従来からスチレン系単量体等の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。
また、攪拌翼は、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。
具体的には、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内、パドル翼が好ましく、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼がより好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。
また、攪拌翼の大きさについても、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。撹拌所要動力は0.06〜0.8kw/m
3となるように調整された攪拌条件が好ましい。
更に、重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
【0046】
(3)発泡性複合樹脂粒子
発泡性複合樹脂粒子は、複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含み、公知の方法により、複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させることにより製造できる。
例えば、スチレン系単量体の重合が完了した複合樹脂粒子が水性媒体中に分散している重合容器内に発泡剤を圧入して含浸させる方法や、複合樹脂粒子を密閉、加温可能な耐圧回転式混合器に供給し、発泡剤を圧入して含浸させる方法などがある。
複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる温度としては、低いと、含浸に時間を要し、発泡性複合樹脂粒子の製造効率が低下することがある一方、高いと、発泡性複合樹脂粒子同士の合着が多量に発生することがあるので、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
また、複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる際には必要に応じて結合防止剤、帯電防止剤、融着促進剤などの表面処理剤や可塑剤、滑剤、着色剤などを添加してもよい。
【0047】
(a)発泡剤
揮発性発泡剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン等炭素数5以下の脂肪族炭化水素等の揮発性発泡剤が挙げられ、特にブタン系発泡剤、ペンタン系発泡剤が好ましい。なお、ペンタンは可塑剤としての作用も期待できる。
【0048】
揮発性発泡剤の発泡性複合樹脂粒子中における含有量は、通常2〜12重量%の範囲とされ、3〜10重量%の範囲が好ましく、3〜8重量%の範囲が特に好ましい。
揮発性発泡剤の含有量が少なく、例えば2重量%未満では、発泡性複合樹脂粒子から低密度の発泡成形体を得ることができないことがあると共に、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が得られないために、発泡成形体の外観が低下することがある。一方、揮発性発泡剤の含有量が多く、例えば12重量%を超えると、発泡性複合樹脂粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなり生産性が低下することがある。
【0049】
(b)発泡助剤
発泡性複合樹脂粒子には、発泡剤と共に発泡助剤を含有させることができる。
発泡助剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤が挙げられる。
【0050】
発泡助剤の発泡性複合樹脂粒子中における含有量は、通常0.3〜2.5重量%の範囲とされ、0.4〜2重量%の範囲が好ましい。
発泡助剤の含有量が少なく、例えば0.3重量%未満では、ポリスチレン系樹脂の可塑化効果が発現しないことがある。一方、また、発泡助剤の含有量が多く、2.5重量%を超えると、発泡性複合樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形体に収縮や融けが発生して外観が低下する、あるいは発泡性複合樹脂粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなることがある。
【0051】
(4)予備発泡粒子
予備発泡粒子は、公知の方法により、発泡性複合樹脂粒子を所定の嵩倍数に予備発泡させることにより得られ、蒸気を導入するバッチ式発泡や連続発泡、加圧下からの放出発泡が挙げられる。
本発明の予備発泡粒子は、5〜70倍の嵩倍数を有するのが好ましい。
予備発泡粒子の嵩倍数が70倍より高いと、発泡成形体が収縮し易く外観を損なうことがある。
一方、予備発泡粒子の嵩倍数が5倍未満では、発泡成形体として軽量化のメリットが損なわれることがある。
予備発泡粒子の嵩倍数(倍)は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65及び70である。
予備発泡においては、必要に応じて発泡する際にスチームと同時に空気を導入してもよい。蒸気を導入する発泡方法では、通常ゲージ圧0.005〜0.03M
Pa程度の水蒸気を導入して予備発泡させる。
【0052】
(5)発泡成形体
発泡成形体は、公知の方法、例えば、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることにより得られる。
本発明の発泡成形体は、5〜70倍の
発泡倍数を有するのが好ましい。
発泡成形体の
発泡倍数(倍)は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65及び70である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
実施例及び比較例においては、得られた複合樹脂粒子および予備発泡粒子を次のようにして評価した。
【0054】
「予備発泡粒子のクロマトグラムのピークトップ強度比及びピーク面積比」
GPC測定
得られた予備発泡粒子と同様の予備発泡粒子をその中心で1/2に切断した半分カット品を準備する。
容量50mLの三角フラスコに、発泡性複合樹脂粒子全体と半分カット品をそれぞれ0.02g入れ、さらに常温のテトラヒドロフラン20mLを予備発泡粒子が浸潤するように注加し、常温にて24時間放置する。
24時間放置後、各テトラヒドロフラン溶液を非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過し、粒子全体の抽出液A及び半分カット品の抽出液Bを得る。
【0055】
得られた抽出液A及び抽出液Bを下記の条件でGPC測定する。
・装置:高速GPC装置
・商品名:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSEC-WorkStation(RI検出器内蔵)
・分析条件
カラム:TSKgel SuperHZM−H×2本(4.6mmI.D×15cmL×2本)
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperHZ−H×1本(4.6mmID×2cmL)
流量:サンプル側0.175ml/min、リファレンス側0.175ml/min
検出器:内蔵RI検出器
注入量:50μL
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
【0056】
EcoSEC-WorkStation(東ソー株式会社製)の解析ソフトを使用し、抽出液A及びBのGPC測定により得られたクロマトグラムのピーク解析を実施する。
対象とするピークはリテンションタイムが22min以下でピークトップを確認できるピークを対象とする。
重量平均分子量(Mw)は予め作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から算出する。
【0057】
(標準ポリスチレンの検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、500、2630、9100、37900、102000、355000、3840000、及び5480000である標準ポリスチレン試料と、昭和電工社製商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1030000である標準ポリスチレン試料を用いる。
【0058】
検量線の作成方法は以下の通りである。
まず、上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1030000のもの)、グループB(重量平均分子量が500、9100、102000及び3480000のもの)及びグループC(重量平均分子量が2630、37900、355000及び5480000のもの)にグループ分けする。
グループAに属する重量平均分子量が1030000である標準ポリスチレン試料を5mg秤量した後にTHF20mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。
【0059】
グループBに属する重量平均分子量が500、9100、102000及び3480000である標準ポリスチレン試料をそれぞれ10mg、5mg、5mg、及び5mg秤量した後にTHF50mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。
グループCに属する重量平均分子量が2630、37900、355000及び5480000である標準ポリスチレン試料をそれぞれ5mg、5mg、5mg、及び1mg秤量した後にTHF40mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。これら標準ポリスチレン試料の保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC−WS)にて作成し、これをポリスチレン換算重量平均分子量測定の検量線として用いる。
【0060】
(クロマトグラムのピーク強度及び面積の算出)
ピークトップ強度および面積の算出の際、クロマトグラムのベースラインは、図に記載のとおり、リテンションタイムが22min以下の部分で、ピーク面積が最大限広くなるようにベースラインを設定し、算出する。
ピーク面積比は得られた抽出液Aのクロマトグラムのピーク面積Ssと抽出液Bのクロマトグラムのピーク面積Siとの比Ss:Siから求める。
ピーク強度比も同様にして得られた抽出液Aのクロマトグラムのピークトップ強度Ps(mV)と、抽出液Bのクロマトグラムのピークトップ強度Pi(mV)との比Ps:Piを求める。
クロマトグラムにてピークが2つ以上確認される場合は判定基準をピーク面積比を評価の指標とし、ピーク強度を採用しない。
さらに、ピークが確認できない場合はほぼポリスチレン系樹脂が抽出されなかったと想定されるので、ピーク比算出による便宜上、ピーク強度は0.1(mV)、ピーク面積は10.0(mV×sec)と仮に設定する。
【0061】
「発泡剤含浸時の合着量(%)」
発泡剤含浸後の発泡性複合樹脂粒子を100g採取し、2個以上の発泡性複合樹脂粒子が合着した粒子の重量を測定しその重量%を求める。
【0062】
「予備発泡時の合着量(%)」
予備発泡した後予備発泡粒子を300g採取し、2個以上の発泡性複合樹脂粒子が合着した粒子の重量を測定し重量%を求める。
【0063】
(実施例1)
(核樹脂粒子の作製)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA、日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックEVA LV−115」、融点108℃)を、押出機で加熱溶融して押出し、水中カット方式により造粒ペレット化した(樹脂粒子は100粒当たり70mgに調整した)。
【0064】
(複合樹脂粒子の作製)
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる核樹脂粒子12.0kgを、撹拌機付きの容量100リットルのオートクレーブに入れ、更に水性媒体としての純水41kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム360g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.2gを加えた。得られた混合物を、攪拌することで水性媒体の懸濁液とし、10分間常温に保持し、その後60℃に昇温した。
次いで、懸濁液に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド7gを溶解させて調製しておいたスチレン5kgを30分間掛けて滴下した。滴下終了後、撹拌下で30分間、60℃に保持し、核樹脂粒子にスチレンを吸収(含浸)させた。
次いで、懸濁液を130℃に昇温し、同温度で2時間攪拌を続けた。このとき、昇温開始前60℃の時点で反応系(オートクレーブ)内を密閉にした。
【0065】
次いで、懸濁液を90℃程度まで降温(冷却)した。このとき、冷却時にオートクレーブの内圧が0MPaになったところで一旦開放させ、90℃で再度密閉した。懸濁液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ15gを加えた。その後、懸濁液に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド100g、ベンゾイルパーオキサイド45.3gおよびt−ブチルパーオキサイド4.2gを溶解させて調製しておいたスチレン7.5kgを徐々に添加し、90℃で2時間重合を行なった。
次いで、懸濁液に、スチレン14.9kg、アクリル酸ブチル0.6kgおよびエチレンビスステアリン酸アミド120gを混合し調製したものをさらに2時間掛けて添加し、2時間重合を行った。
【0066】
次いで、懸濁液を90℃で1時間保持し、次に140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させた。その後、常温まで冷却した。
オートクレーブから内容物を取り出し、20%塩酸400mlを添加してピロリン酸マグネシウムを分解し、洗浄後、内容物を遠心分離機で脱水し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去して、EVA樹脂100重量部に対してスチレン系単量体(PS)を233重量部使用した複合樹脂粒子(EVA/PS=30/70)を得た。
【0067】
(発泡性複合樹脂粒子の作製)
得られた複合樹脂粒子15kgを、加温密閉可能な容量50リットルの耐圧回転式混合機に投入した。さらに、複合樹脂粒子100重量部に対してジイソブチルアジペート0.5重量部及び水0.1重量部を投入し撹拌した。複合樹脂粒子を撹拌させながら、複合樹脂粒子100重量部に対して発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)16重量部を圧入し、70℃に昇温させ2時間撹拌を続けた。その後、20℃まで冷却して混合機から取り出し、発泡性複合樹脂粒子を得た。
発泡剤含浸後の発泡性複合樹脂粒子の合着量(%)を測定した。
【0068】
(予備発泡粒子の作製)
得られた発泡性複合樹脂粒子1kgを直ちに、容量33リットルのバッチ式発泡機に投入し、撹拌しながらゲージ圧0.01M
Paの水蒸気を導入しながら加熱して嵩倍数30倍の予備発泡粒子を得た。
予備発泡時の予備発泡粒子の合着量(%)を測定した。
また、得られた予備発泡粒子及び半分カット品についてGPC測定し、得られたクロマトグラムから、そのピークが重量分子量(Mw)10万〜50万のポリスチレン系樹脂のピークに相当することを確認し、ピークトップ強度及びピーク面積を求め、それぞれの比を求めた(
図1参照)。
以下の実施例についても同様に実施した。
【0069】
(発泡成形体の作製)
得られた嵩倍数30倍の予備発泡粒子を、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの内寸の成形用金型内に充填し、0.08M
Paの水蒸気を導入して加熱し、冷却することで、発泡倍数約30倍の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を30℃の乾燥室で8時間程度乾燥させた。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
図1は、実施例1の予備発泡粒子のクロマトグラム、(a)粒子及び(b)カット品である。
【0070】
(実施例2)
(核樹脂粒子の作製)
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA、日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックEVA LV−115」、融点108℃)を、押出機で加熱溶融して押出し、水中カット方式により造粒ペレット化した(樹脂粒子は100粒当たり40mgに調整した)。
【0071】
(複合樹脂粒子の作製)
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる核樹脂粒子14.0kgを、撹拌機付きの容量100リットルのオートクレーブに入れ、更に水性媒体としての純水41kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム403g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.3gを加えた。得られた混合物を、攪拌することで水性媒体の懸濁液とし、10分間常温に保持し、その後60℃に昇温した。
次いで、懸濁液に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド7.8gを溶解させて調製しておいたスチレン6kgを30分間掛けて滴下した。滴下終了後、撹拌下で30分間、60℃に保持し、核樹脂粒子にスチレンを吸収(含浸)させた。
次いで、懸濁液を130℃に昇温し、同温度で2時間攪拌を続けた。このとき、昇温開始時60℃の時点で反応系(オートクレーブ)内を密閉にした。
【0072】
次いで、懸濁液を90℃程度まで降温(冷却)した。このとき、冷却時にオートクレーブの内圧が0MPaになったところで一旦開放させ、90℃で再度密閉した。懸濁液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ15gを加えた。その後、懸濁液に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド98g、ベンゾイルパーオキサイド46.3gおよびt−ブチルパーオキサイド4.7gを溶解させて調製しておいたスチレン6.6kgを徐々に添加し、90℃で2時間重合を行なった。
次いで、懸濁液に、スチレン13.1kg、アクリル酸ブチル0.3kgおよびエチレンビスステアリン酸アミド120gを混合し調製したものを2時間掛けて添加し、2時間重合を行った。
【0073】
次いで、懸濁液を90℃で1時間保持し、次に140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させた。その後、常温まで冷却した。
オートクレーブから内容物を取り出し、20%塩酸400mlを添加してピロリン酸マグネシウムを分解し、洗浄後、内容物を遠心分離機で脱水し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去して、EVA樹脂100重量部に対してスチレン系単量体(PS)を183重量部使用した複合樹脂粒子(EVA/PS=35/65)を得たこと以外は、実施例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
複合樹脂粒子の作製の工程(A)における密閉温度を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0075】
(実施例4)
複合樹脂粒子の作製の工程(A)における密閉温度を80℃としたこと以外は、実施例2と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0076】
(実施例5)
複合樹脂粒子の作製の工程(A)における密閉温度を80℃とし、工程(B)において系内を解放した状態で重合反応を実施し、工程(C)における昇温開始時点(90℃)で系内を再度密閉したこと以外は、実施例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0077】
(実施例6)
複合樹脂粒子の作製の工程(B)において系内を解放した状態で重合反応を実施し、工程(C)における昇温開始時点(90℃)で系内を再度密閉したこと以外は、実施例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0078】
(比較例1)
実施例1と同様にしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる核樹脂粒子を得た。
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる核樹脂粒子9.6kgを、撹拌機付きの容量100リットルのオートクレーブに入れ、更に水性媒体としての純水48kg、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム382g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ7.65gを加えた。得られた混合物を攪拌することで水性媒体の懸濁液を得た。
次いで、懸濁液に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド92.2g、ベンゾイルパーオキサイド58.2gを溶解させて調製しておいたスチレン4.8kgを投入後、撹拌下で30分間、70℃に保持し、核樹脂粒子にスチレンを吸収(含浸)させた。
【0079】
次いで、懸濁液を85℃まで昇温し、スチレン17.6kgを3時間40分掛けて反応系中に滴下し、同温度で1時間保持した。その後、懸濁液を140℃に昇温する際に系内の温度が90℃を示した時点で系内を密閉した。140℃で3時間保持した後、冷却させて複合樹脂粒子(EVA/PS=30/70)を取出した。
これ以降は実施例1と同様にして、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表2に示す。
図2は、比較例1の予備発泡粒子のクロマトグラム、(a)粒子及び(b)カット品である。
【0080】
(比較例2)
EVA/PS=35/65としたこと以外は、比較例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表2に示す。
【0081】
(比較例3)
複合樹脂粒子の作製の工程(A)における密閉温度を90℃とし、工程(B)において系内を解放した状態で重合反応を実施し、工程(C)における昇温開始時点(90℃)で系内を再度密閉したこと以外は、実施例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表2に示す。
【0082】
(比較例4)
複合樹脂粒子の作製の工程(A)におけて密閉温度を90℃としたこと以外は、実施例1と同様にして複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得、測定・評価した。それらの結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1及び2の結果から、本発明の実施例1〜6の予備発泡粒子は、GPC測定におけるポリスチレン系樹脂に関するピークトップ強度比Ps:Piが1:10以上で、粒子表面に合着の原因となるポリスチレン系樹脂の抽出量が少ないことから、発泡剤含浸時及び予備発泡時において樹脂粒子同士の合着が低減されているものと考えられる。
一方、比較例1〜4の従来の予備発泡粒子は、GPC測定におけるポリスチレン系樹脂に関するピークトップ強度比Ps:Piが1:10未満で、発泡剤含浸時及び予備発泡時において合着量が多いことがわかる。
【0086】
比較例1及び2の結果から、特に第1の重合工程が無く、密閉温度が90℃である場合には、ピークトップ強度比Ps:Piが1:10未満になり、発泡剤含浸時及び予備発泡時において比較例3及び4よりも樹脂粒子同士の合着が非常に多いことがわかる。
比較例3の結果から、第1の重合工程を有しても、工程(A)における密閉温度が90℃でありかつ工程(B)にて系内を開放した状態で実施した場合、満足できる領域には達しないことがわかる。
比較例4の結果から、第1の重合工程を実施しかつ工程(B)の重合中に系内を開放しなくても、密閉温度が90℃である場合には、ピークトップ強度比Ps:Piが1:10未満になり、発泡剤含浸時及び予備発泡時において樹脂粒子同士の合着が多くなることがわかる
【0087】
以上のことから、製造方法として第1の重合工程(工程(A))において昇温時の密閉温度が90℃よりも低くすることにより、予備発泡粒子をTHFに浸漬させた場合のクロマトグラムから得られるピーク強度比Ps:Pi及び面積Ss:Siが10
以上になる。また、ピーク強度比Ps:Pi及び面積Ss:Siが10
以上である場合、発泡剤含浸時及び予備発泡時における合着量を低減することが可能となることがわかる。
更に、実施例5及び6の結果から、工程(B)における密閉温度を90℃より低い温度で実施しても、工程(B)において開放したまま進めると、実施例1〜4と比較してピーク強度Ps:Pi及び面積Ss:Siが低くなる傾向にあり、それに伴い合着量も増加傾向にあることから、工程(B)は開放しない方が好ましいことがわかる。