【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題の1つまたはいくつかを克服するために、独立クレーム1に従う薬剤送達装置が提供される。
【0007】
さらなる局面、改善およびバリエーションが、従属クレーム、図および説明に開示される。
【0008】
本出願において、「遠位」という用語を用いるとき、用量送達部位から離れた方向を示
す方向を指す。「遠位部分/端」という用語を用いるとき、薬剤送達装置の使用下で、用量送達部位から最も離れて位置する薬剤送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。それに応じて、「近位」という用語を用いるとき、用量送達部位を示す方向を指す。「近位部分/端」という用語を用いるとき、薬剤送達装置の使用下で、用量送達部位の最も近くに位置する薬剤送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。さらに、「縦方向」という用語は、「軸」を伴っていてもいなくても、装置または部品の最も長い延びの方向の、装置またはその部品を通る方向または軸を指す。同様に、「交差」という用語は、「軸」を伴っていてもいなくても、縦方向に対しておおむね垂直な方向の、装置またはその部品を通る方向または軸を指す。さらに、別段の記載がない限り、装置の機械的構造およびその部品の機械的相互接続を説明する以下の説明においては、装置は、初期の非始動状態または非作動状態にある。
【0009】
発明は、近位端および遠位端を有するハウジングを有する薬剤送達装置を提供する。中空ピストンプランジャは、ハウジング内に配置される。ピストンプランジャは、薬剤送達装置の縦方向におおむね相当する縦軸を有する。
【0010】
さらに、伸縮式用量ドラムは、ハウジングとピストンプランジャとの間に同心円状に配置される。伸縮式用量ドラムは、用量を設定し、用量を送達するとき、ハウジングに対して、かつピストンプランジャに対しての二方向に移動可能である。
【0011】
薬剤送達装置は、中空ピストンプランジャを近位端に向けて駆動するためのピストンプランジャ駆動手段も備える。ピストンプランジャ駆動手段は、中空ピストンプランジャ内に移動可能に配置され、かつ伸縮式用量ドラムに固定して接続された中空駆動ドラムスリーブを備える。中空駆動ドラムスリーブおよび中空ピストンプランジャは、取外し自在に互いに連結可能である。ピストンプランジャ駆動手段はさらに、中空駆動ドラムスリーブ内に移動可能に配置された縦方向ロッドを有する弾性スピン要素を備える。縦方向ロッドおよび中空駆動ドラムスリーブは、互いに取外し自在に連結可能であることにより、用量が設定された後、弾性スピン要素が近位端に向かって軸方向に移動することにより、縦方向ロッドおよび中空駆動ドラムスリーブが互いに連結され、これにより、中空駆動ドラムスリーブおよび中空ピストンプランジャも互いに連結され、これにより、中空ピストンプランジャおよび伸縮式用量ドラムが、設定された用量を送達するために近位端に向かってずらされ、さらに、設定された用量が送達された後、弾性スピン要素が遠位端に向かって軸方向に移動することにより、縦方向ロッドおよび中空駆動ドラムスリーブが分離され、これにより、中空駆動ドラムスリーブおよび中空ピストンプランジャも、新たな用量を設定するために分離される。
【0012】
弾性スピン要素は、ユーザによる用量の設定の間、中空駆動ドラムスリーブの遠位部分から軸方向に離間され、かつ、設定された用量の送達の間、中空駆動ドラムスリーブの遠位部分に対して当接するように構成されてもよい。
【0013】
伸縮式用量ドラムは、好ましくは、互いに対して摺動可能に配置された第1の部分(遠位部分)および第2の部分(近位部分)を備える。
【0014】
薬剤送達装置は、遠位端に用量設定ノブをさらに備えてもよい。用量設定ノブは、第1の方向に回転されているときに、用量を設定するためにユーザにより把持されるように構成されてもよい。
【0015】
薬剤送達装置の一実施形態に従うと、用量設定ノブは、遠位端で用量ドラムの第1の部分と接続され、好ましくは固定して接続される、個別の部品である。別の実施形態に従うと、用量設定ノブは、伸縮性用量ドラムの第1の部分と一体的である。伸縮性用量ドラム
の第1の部分は、用量設定ノブによる用量設定の間、ハウジングに対して第1の方向に遠位に回転移動するように構成されてもよい。
【0016】
代替的な実施形態に従うと、用量設定ノブは、遠位端で駆動ドラムスリーブと接続され、好ましくは固定して接続される、個別の部品である。代替的には、用量設定ノブは、駆動ドラムスリーブと一体的である。駆動ドラムスリーブは、用量設定ノブによる用量設定の間、ハウジングに対して第1の方向に遠位に回転移動するように構成されてもよい。
【0017】
薬剤送達装置は、薬剤容器を受けるように適合された薬剤容器ホルダをさらに備えてもよい。
【0018】
ピストンプランジャの外側円周表面の一部は、ねじ切りされていることが好ましい。たとえば、ピストンプランジャの近位部分は、ねじ切りされた構造を備えてもよい。しかしながら、発明は、ピストンプランジャの全表面がねじ切りされていることも包含する。外側表面上に、ピストンプランジャは少なくとも1つの縦方向溝、たとえば2つの溝を備えてもよい。さらに、ピストンプランジャの近位端は、ワッシャーおよびストッパを有するように配置されてもよい。ピストンプランジャの近位端のストッパは、薬剤容器内部に移動可能に受けられることを目的としてもよい。
【0019】
薬剤送達装置は、用量を設定する間、ピストンプランジャの遠位方向の移動を防止するための一方向手段をさらに備えてもよい。
【0020】
第1の好ましい実施形態に従うと、一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有するインサートを備える。通路には、ピストンプランジャの外側円周表面のねじ山と噛み合うねじ山が設けられ、インサートは、薬剤送達装置の初期位置では、ピストンプランジャの近位端に位置する。インサートは、中心縦方向通路と同軸の中心ボアを遠位側にさらに備えてもよい。中心ボアは、第1の直径より大きい第2の直径を有してもよい。さらに、ボアの内側表面には、円周方向に延びるラチェットが設けられてもよい。インサートは、ハウジングに固定して接続された個別の部品であってもよく、または、ハウジングに一体的な部品であってもよい。
【0021】
この実施形態の一方向手段は、逆回転阻止要素をさらに備えてもよく、逆回転阻止要素は、円周方向に延び、かつ半径方向に可撓性の少なくとも1つのアームをその円周表面に備える。1以上のアームは、インサートのラチェットに相補的な形状を有する突起を備えてもよい。突起を備える少なくとも1つのアームは、薬剤送達の間、ラチェットに当たる逆回転阻止要素の回転が可聴フィードバックを生じるように、弾性であってもよい。
【0022】
逆回転阻止要素は、少なくとも1つの半径方向に内側に向けられた突出部を有する縦方向中心通路を備えてもよい。少なくとも1つの突出部は、ピストンプランジャの外側表面上の対応する縦方向溝内にそれぞれ受けられてもよい。この構造は、ピストンプランジャの回転ロックを設けるが、ピストンプランジャの縦方向の移動は可能にする。
【0023】
別の実施形態に従うと、一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有するインサートを備え、中心縦方向通路は、少なくとも1つの半径方向に内側に向けられた突出部を有し、少なくとも1つの突出部は、ピストンプランジャの外側表面上の対応する縦方向溝内にそれぞれ受けられる。この構造は、ピストンプランジャの回転ロックを設けるが、ピストンプランジャの縦方向の移動は可能にする。インサートは、中心縦方向通路と同軸の中心ボアをその遠位側にさらに備えてもよい。中心ボアは、第1の直径より大きい第2の直径を有してもよく、ボアの内側表面には、円周方向に延びるラチェットが設けられる。
【0024】
この実施形態では、一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有する逆回転阻止要素をさらに備え、中心縦方向通路には、ピストンプランジャの外側円周表面のねじ山と噛み合うねじ山が設けられる。逆回転阻止要素は、薬剤送達装置の初期位置では、ピストンプランジャの近位端に位置してもよい。逆回転阻止要素は、円周方向に延び、かつ半径方向に可撓性の少なくとも1つのアームをその円周表面に備えてもよく、少なくとも1つのアームは、インサートのラチェットに相補的な形状を有する突起を備える。
【0025】
ラチェットは、ラチェットと少なくとも1つのアームとの相互作用により、ピストンプランジャが一方向に連結されるように急峻な正面エッジおよび傾斜路形状のトレーリングエッジを備えてもよい。
【0026】
またさらなる実施形態に従うと、一方向手段は、インサートとピストンプランジャとの間のねじ切りされた噛み合いの間に自己ロッキングねじ山接続を備える。
【0027】
ピストンプランジャの内側円周表面は、複数の縦方向に延びるスプラインを備えてもよく、駆動ドラムスリーブは、ピストンプランジャの複数の縦方向に延びるスプラインと取外し自在に係合するように構成された少なくとも1つの可撓性アームを備える。弾性スピン要素の縦方向ロッドは、弾性スピンボタンの近位方向への軸方向の移動により、少なくとも1つの可撓性アームが、ピストンプランジャの複数の縦方向に延びるスプラインと係合するように、中空駆動ドラムスリーブと作動可能に接続される。
【0028】
好ましい実施形態の薬剤送達装置では、弾性スピン要素は、その軸方向の移動の間、回転不動のままとなるように構成される。
【0029】
伸縮式用量ドラムの第1の部分の外側円周表面は、ハウジングの内側円周表面上の噛み合い構造に螺合によって接続されてもよい。伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面は、ピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面に螺合によって接続されてもよい。伸縮式用量ドラムの第1の部分とハウジングの内側円周表面との間のねじ切りされた接続は、伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面とピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面とのねじ切りされた接続のピッチと異なるピッチを有する。
【0030】
より詳細には、遠位部分は、その外側表面上に螺旋状または渦巻状に延びる溝を備えてもよい。溝は、用量ドラムの近位端から遠位部分の遠位端までの全体に延びてもよい。溝は、用量ドラムがハウジングに回転接続されるように、ハウジングの内側表面上に配置された少なくとも1つの突出部または渦巻状に延びる突起セグメントと協働することを目的とし、これにより、相互回転がこれらの部品の縦方向の移動を引起す。さらに、用量ドラムの第1の部分の遠位端領域は、ロッキング構造を有するように配置され、ロッキング構造は、薬剤送達装置の組立ての間、駆動ドラムスリーブがピストンプランジャ内へと移動されるとき、駆動ドラムスリーブのロッキング構造と係合する。
【0031】
伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面は、ピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面に螺合によって接続されてもよい。特に、第2の部分の近位端は、ねじ切りされた構造を備えてもよい。伸縮式用量ドラムの第1の部分とハウジングの内側円周表面との間のねじ切りされた接続は、伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面とピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面とのねじ切りされた接続のピッチと異なるピッチを有する。
【0032】
ピストンプランジャは、設定された用量が薬剤容器内に残存する用量と同等であるとき、伸縮式用量ドラムおよび駆動ドラムスリーブの回転を阻害するための停止特徴をその外
側表面に備えてもよい。
【0033】
駆動ドラムスリーブは、おおむね筒状の形状であってよく、ピストンプランジャ内部に半径方向に配置される。駆動ドラムスリーブには、駆動ドラムスリーブの縦軸に交差する遠位端壁が設けられてもよい。遠位端壁は中心孔を有し、駆動ドラムスリーブは、弾性スピン要素をその中に受けるために中空である。駆動ドラムスリーブの近位端は、1つ以上、たとえば2つの、近位方向に延びる可撓性アームを備えてもよい。アームは、半径方向の力が加えられると、それらの近位端が半径方向に反らされ得るという意味で可撓性である。各可撓性アームの外側表面は、ピストンプランジャの内側表面上の縦方向スプラインまたはリブと選択的に係合するための半径方向に突出したピストンプランジャ係合突出部を備えてもよい。突出部の形状は、ピストンプランジャ上の円周方向に配置されたリブの形状におおむね相当してもよい。各可撓性アームの内側表面は、中空駆動ドラムスリーブ内に位置する弾性スピン要素と選択的に係合するための半径方向係合突出部を備えてもよい。
【0034】
遠位端壁は、2つの近位に延びるロッキングアームにより連結要素を形成してもよい。ロッキングアームは、各それぞれの外側表面に、駆動ドラムスリーブを用量ドラムの内側表面にロックするためのロッキング構造を備える。
【0035】
弾性スピン要素は、縦方向ロッドおよび遠位押しボタンを備えてもよい。押しボタンは、薬剤送達の間、ユーザの指に対する接触表面として作用することを目的とする。上述のように、弾性スピン要素の縦方向ロッドは中空駆動ドラムスリーブ内に収容される。その近位端で、縦方向ロッドは、係合構造を備えてもよく、係合構造は、縦方向ロッドの直径より大きい直径を有する第1の円周方向環状突出部と、縦方向ロッドの直径より大きい直径を有する第2の円周方向環状突出部とを備える。第2の突出部は、好ましくは、縦方向ロッドの近位端に位置し、第1の突出部は、第2の突出部から遠位に位置する。第1の突出部および第2の突出部は、その間に円周方向溝が形成されるように互いから軸方向に離間される。溝のサイズおよび縦方向溝上の配置は、駆動ドラムスリーブの可撓性アーム上の半径方向に内側に向けられた突出部が、初めに溝内に受けられるようにされる。このような初期段階では、可撓性アームは半径方向に外側に反らされていないが、張力のない状態にある。
【0036】
駆動ドラムスリーブと比較した弾性スピン要素の軸方向長さは、好ましくは、薬剤送達装置の初期状態、すなわち、係合突出部が溝内に受入れられた状態で、押しボタンの近位表面が間隙により連結要素の遠位表面から離間されるようにされる。この間隙はユーザによって用量が設定されるときに維持され、用量ドラムの第1の部分、駆動ドラムスリーブおよび弾性スピン要素は、遠位に移動される。しかしながら、押しボタンが近位方向に押されるとすぐに、押しボタンがまず間隙を跨ぐことにより、縦方向ロッドを駆動ドラムスリーブに対して近位方向に移動させる。このような相対的な変位により、遠位に位置する第1の環状突出部が可撓性アーム上の係合突出部に押し当てられることにより、アームが外側に反らされ、ピストンプランジャの内側表面上の縦方向スプラインと係合される。
【0037】
薬剤送達装置は注射装置、好ましくはペン型注射器、であってもよい。
他の局面、特徴、および利点は、上記の概要、ならびに図および請求項を含む、以下の説明により明らかになるであろう。
【0038】
以下の図面は、もっぱら例示目的で発明の実施形態を開示する。特に、図中の開示は、発明の保護の範囲を限定することを意図していない。示される実施形態は、請求項の範囲内でさまざまに変更されてもよい。