特許第6228625号(P6228625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228625
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A61M5/315 550P
   A61M5/315 550N
   A61M5/315 510
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-78848(P2016-78848)
(22)【出願日】2016年4月11日
(62)【分割の表示】特願2014-537025(P2014-537025)の分割
【原出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2016-128071(P2016-128071A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年4月11日
(31)【優先権主張番号】61/547,917
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1150961-9
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】503211493
【氏名又は名称】エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビーゼルブラッド,アンデシュ
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/068531(WO,A1)
【文献】 特表2011−520537(JP,A)
【文献】 特表2002−501790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置であって、
近位端(11)および遠位端(12)を有するハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)内に配置された中空ピストンプランジャ(20)と、
前記ハウジング(10)と前記ピストンプランジャ(20)との間に同心円状に配置された伸縮式用量ドラム(40)とを備え、前記伸縮式用量ドラム(40)は、用量を設定し、用量を送達するときに、前記ハウジングに対して、かつ前記ピストンプランジャに対しての二方向に移動可能であり、
前記伸縮性用量ドラム(40)は、互いに対して摺動可能に配置された第1の遠位部分(41)および第2の近位部分(42)を備え、
前記伸縮式用量ドラム(40)の前記第1の遠位部分(41)の外周表面が、前記ハウジング(10)の内周表面上の噛み合い構造に螺合によって接続され、
前記伸縮式用量ドラム(40)の前記第2の近位部分(42)の内周表面は前記ピストンプランジャ(20)のねじ切りされた外周表面と螺合により接続され、
前記伸縮式用量ドラム(40)の前記第1の遠位部分(41)と前記ハウジング(10)の内周表面との螺合による前記接続は、前記伸縮式用量ドラム(40)の前記第2の近位部分(42)の内周表面と前記ピストンプランジャ(20)のねじ切りされた外周表面との螺合による前記接続のピッチとは異なるピッチを有し、
前記薬剤送達装置はさらに、
前記ピストンプランジャ(20)の内側に配された駆動ドラムスリーブ(30)を備え、
前記駆動ドラムスリーブ(30)と前記ピストンプランジャ(20)とは取外し自在に互いに連結可能であり、
前記駆動ドラムスリーブ(30)は前記伸縮式用量ドラム(40)に回動可能に接続され、
前記薬剤送達装置の遠位端に押す力を加えるをことにより、前記伸縮式容量ドラム(40)と前記駆動ドラムスリーブ(30)との接続を生じさせ、前記押す力により前記駆動ドラムに回転を生じさせ、それによって、前記駆動ドラムスリーブ(30)および前記ピストンプランジャ(20)を回転させる、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記ピストンプランジャ(20)の内側円周表面(22)は、複数の縦方向に延びるスプライン(23)を備え、該スプラインは、前記駆動ドラムスリーブに設けられた可撓性アーム(33)の突出物(34)と、取外し可能に接続するように配されている、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記薬剤送達装置は、前記伸縮性用量ドラム(40)前記第1の遠位部分の遠位端に用量設定ノブ(41a)をさらに備え、前記用量設定ノブ(41a)は、第1の方向に回転されているときに、用量を設定するためにユーザにより把持されるように構成されている、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記用量設定ノブ(41a)は、遠位端で前記用量ドラム(40)の前記第1の部分(41)と接続される個別の部品であるか、または、前記用量設定ノブ(41a)は、前記第1の部分(41)と一体的であり、これにより、前記伸縮性用量ドラム(40)の前記第1の部分(41)は、前記用量設定ノブ(41a)による用量設定の間、前記ハウジング(10)に対して前記第1の方向に遠位に回転移動するように構成されている、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
薬剤容器(82)を受けるように適合された薬剤容器ホルダ(80)をさらに備える、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
用量の設定の間、前記遠位方向への前記ピストンプランジャ(20)の移動を防止するための一方向手段をさらに備える、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記ピストンプランジャ(20)の外側円周表面(21)の一部は、ねじ切りされている、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路(51)を有するインサート(50)を備え、前記通路(51)には、前記ピストンプランジャ(20)の前記外側円周表面(21)のねじ山と噛み合うねじ山(52)が設けられ、前記インサートは、前記薬剤送達装置の初期位置では、前記ピストンプランジャ(20)の前記近位端に位置する、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記インサート(50)は、前記中心縦方向通路(51)と同軸の中心ボア(54)を遠位側にさらに備え、前記中心ボア(54)は、前記第1の直径より大きい第2の直径を有し、前記ボア(54)の内側表面には、円周方向に延びるラチェット(55)が設けられる、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記インサート(50)は、前記ハウジングに固定して接続された個別の部品であるか、または、前記インサートは、前記ハウジング(10)に一体的な部品である、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記一方向手段は、逆回転阻止要素(60)をさらに備え、前記逆回転阻止要素(60)は、円周方向に延び、かつ半径方向に可撓性の少なくとも1つのアーム(62)を円周
表面(61)に備え、前記少なくとも1つのアーム(62)は、前記インサート(50)の前記ラチェット(55)に相補的な形状を有する突起(63)を備える、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記突起(63)を備える前記少なくとも1つのアーム(62)は、薬剤送達の間、前記ラチェット(55)に当たる前記逆回転阻止要素(60)の回転が可聴フィードバックを生じるように弾性である、請求項11に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記逆回転阻止要素(60)は、少なくとも1つの半径方向に内側に向けられた突出部(66)を有する縦方向中心通路(65)を備え、前記少なくとも1つの突出部(66)は、前記ピストンプランジャ(20)の外側表面上の、対応する縦方向溝(25)内にそれぞれ受けられる、請求項11に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有するインサートを備え、前記中心縦方向通路は、少なくとも1つの半径方向に内側に向けられた突出部を有し、前記少なくとも1つの突出部は、前記ピストンプランジャ(20)の外側表面上の、対応する縦方向溝(25)内にそれぞれ受けられる、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記インサートは、前記中心縦方向通路と同軸の中心ボアを遠位側にさらに備え、前記中心ボアは、前記第1の直径より大きい第2の直径を有し、前記ボアの内側表面には、円周方向に延びるラチェットが設けられる、請求項14に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有する逆回転阻止要素をさらに備え、前記中心縦方向通路には、前記ピストンプランジャ(20)の前記外側円周表面(21)のねじ山と噛み合うねじ山が設けられ、前記逆回転阻止要素は、前記薬剤送達装置の初期位置では、前記ピストンプランジャ(20)の前記近位端に位置する、請求項15に記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記逆回転阻止要素は、円周方向に延び、かつ半径方向に可撓性の少なくとも1つのアームを円周表面に備え、前記少なくとも1つのアームは、前記インサートのラチェットに相補的な形状を有する突起を備える、請求項16に記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記ラチェット(55)は、前記ラチェット(55)と前記少なくとも1つのアームとの相互作用により、前記ピストンプランジャが一方向に連結されるように急峻な正面エッジおよび傾斜路形状のトレーリングエッジを備える、請求項11に記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
前記一方向手段は、前記インサート(50)と前記ピストンプランジャ(20)との間のねじ切りされた噛み合いの間に、自己ロッキングねじ山接続を備える、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
前記薬剤送達装置は、注射装置であり、好ましくはペン型注射器である、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達装置に関し、特に、送達前にユーザにより設定された用量の薬剤を送達することの可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
薬剤を送達するための装置が数多く市販されており、特許化もされている。これらの装置では、薬剤が、シリンジ、カートリッジなどの容器中に配置され、送達されるべきときに薬剤が圧力に晒される。非常に一般的な設計は、おおむね筒状のコンパートメントであり、このコンパートメントは、コンパートメントの一端のストッパと、たとえば、針、ノズルまたは患者に薬剤を送達することの可能な同様の部材など、コンパートメントの対向端に取付けられた送達部材とを有する。
【0003】
一定量の薬剤を送達するために、ストッパは圧力に晒され、すなわち、プランジャロッドによりコンパートメント内に押込まれる。これは、簡易な手持ち式シリンジの場合には指により手動で行なわれ、自動式または半自動式注射器では共通して、ばねなどの圧力手段により行なわれ得る。これに関連して、いわゆるペン型注射器がかなり一般的になっており、装置の遠位端で手動により押すことにより注射が行なわれる。このタイプの注射器では、同一の装置で異なる量の用量を送達すること、すなわち、送達前に、ある所定の用量を設定するのを可能とすることについての開発も行なわれてきた。
【0004】
欧州公開公報第1 601 395号に記載の解決策が、設定された用量を簡易かつ効率的に再設定することが可能であるかについての疑問もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、最新の装置の欠点が改善された薬剤送達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題の1つまたはいくつかを克服するために、独立クレーム1に従う薬剤送達装置が提供される。
【0007】
さらなる局面、改善およびバリエーションが、従属クレーム、図および説明に開示される。
【0008】
本出願において、「遠位」という用語を用いるとき、用量送達部位から離れた方向を示
す方向を指す。「遠位部分/端」という用語を用いるとき、薬剤送達装置の使用下で、用量送達部位から最も離れて位置する薬剤送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。それに応じて、「近位」という用語を用いるとき、用量送達部位を示す方向を指す。「近位部分/端」という用語を用いるとき、薬剤送達装置の使用下で、用量送達部位の最も近くに位置する薬剤送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。さらに、「縦方向」という用語は、「軸」を伴っていてもいなくても、装置または部品の最も長い延びの方向の、装置またはその部品を通る方向または軸を指す。同様に、「交差」という用語は、「軸」を伴っていてもいなくても、縦方向に対しておおむね垂直な方向の、装置またはその部品を通る方向または軸を指す。さらに、別段の記載がない限り、装置の機械的構造およびその部品の機械的相互接続を説明する以下の説明においては、装置は、初期の非始動状態または非作動状態にある。
【0009】
発明は、近位端および遠位端を有するハウジングを有する薬剤送達装置を提供する。中空ピストンプランジャは、ハウジング内に配置される。ピストンプランジャは、薬剤送達装置の縦方向におおむね相当する縦軸を有する。
【0010】
さらに、伸縮式用量ドラムは、ハウジングとピストンプランジャとの間に同心円状に配置される。伸縮式用量ドラムは、用量を設定し、用量を送達するとき、ハウジングに対して、かつピストンプランジャに対しての二方向に移動可能である。
【0011】
薬剤送達装置は、中空ピストンプランジャを近位端に向けて駆動するためのピストンプランジャ駆動手段も備える。ピストンプランジャ駆動手段は、中空ピストンプランジャ内に移動可能に配置され、かつ伸縮式用量ドラムに固定して接続された中空駆動ドラムスリーブを備える。中空駆動ドラムスリーブおよび中空ピストンプランジャは、取外し自在に互いに連結可能である。ピストンプランジャ駆動手段はさらに、中空駆動ドラムスリーブ内に移動可能に配置された縦方向ロッドを有する弾性スピン要素を備える。縦方向ロッドおよび中空駆動ドラムスリーブは、互いに取外し自在に連結可能であることにより、用量が設定された後、弾性スピン要素が近位端に向かって軸方向に移動することにより、縦方向ロッドおよび中空駆動ドラムスリーブが互いに連結され、これにより、中空駆動ドラムスリーブおよび中空ピストンプランジャも互いに連結され、これにより、中空ピストンプランジャおよび伸縮式用量ドラムが、設定された用量を送達するために近位端に向かってずらされ、さらに、設定された用量が送達された後、弾性スピン要素が遠位端に向かって軸方向に移動することにより、縦方向ロッドおよび中空駆動ドラムスリーブが分離され、これにより、中空駆動ドラムスリーブおよび中空ピストンプランジャも、新たな用量を設定するために分離される。
【0012】
弾性スピン要素は、ユーザによる用量の設定の間、中空駆動ドラムスリーブの遠位部分から軸方向に離間され、かつ、設定された用量の送達の間、中空駆動ドラムスリーブの遠位部分に対して当接するように構成されてもよい。
【0013】
伸縮式用量ドラムは、好ましくは、互いに対して摺動可能に配置された第1の部分(遠位部分)および第2の部分(近位部分)を備える。
【0014】
薬剤送達装置は、遠位端に用量設定ノブをさらに備えてもよい。用量設定ノブは、第1の方向に回転されているときに、用量を設定するためにユーザにより把持されるように構成されてもよい。
【0015】
薬剤送達装置の一実施形態に従うと、用量設定ノブは、遠位端で用量ドラムの第1の部分と接続され、好ましくは固定して接続される、個別の部品である。別の実施形態に従うと、用量設定ノブは、伸縮性用量ドラムの第1の部分と一体的である。伸縮性用量ドラム
の第1の部分は、用量設定ノブによる用量設定の間、ハウジングに対して第1の方向に遠位に回転移動するように構成されてもよい。
【0016】
代替的な実施形態に従うと、用量設定ノブは、遠位端で駆動ドラムスリーブと接続され、好ましくは固定して接続される、個別の部品である。代替的には、用量設定ノブは、駆動ドラムスリーブと一体的である。駆動ドラムスリーブは、用量設定ノブによる用量設定の間、ハウジングに対して第1の方向に遠位に回転移動するように構成されてもよい。
【0017】
薬剤送達装置は、薬剤容器を受けるように適合された薬剤容器ホルダをさらに備えてもよい。
【0018】
ピストンプランジャの外側円周表面の一部は、ねじ切りされていることが好ましい。たとえば、ピストンプランジャの近位部分は、ねじ切りされた構造を備えてもよい。しかしながら、発明は、ピストンプランジャの全表面がねじ切りされていることも包含する。外側表面上に、ピストンプランジャは少なくとも1つの縦方向溝、たとえば2つの溝を備えてもよい。さらに、ピストンプランジャの近位端は、ワッシャーおよびストッパを有するように配置されてもよい。ピストンプランジャの近位端のストッパは、薬剤容器内部に移動可能に受けられることを目的としてもよい。
【0019】
薬剤送達装置は、用量を設定する間、ピストンプランジャの遠位方向の移動を防止するための一方向手段をさらに備えてもよい。
【0020】
第1の好ましい実施形態に従うと、一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有するインサートを備える。通路には、ピストンプランジャの外側円周表面のねじ山と噛み合うねじ山が設けられ、インサートは、薬剤送達装置の初期位置では、ピストンプランジャの近位端に位置する。インサートは、中心縦方向通路と同軸の中心ボアを遠位側にさらに備えてもよい。中心ボアは、第1の直径より大きい第2の直径を有してもよい。さらに、ボアの内側表面には、円周方向に延びるラチェットが設けられてもよい。インサートは、ハウジングに固定して接続された個別の部品であってもよく、または、ハウジングに一体的な部品であってもよい。
【0021】
この実施形態の一方向手段は、逆回転阻止要素をさらに備えてもよく、逆回転阻止要素は、円周方向に延び、かつ半径方向に可撓性の少なくとも1つのアームをその円周表面に備える。1以上のアームは、インサートのラチェットに相補的な形状を有する突起を備えてもよい。突起を備える少なくとも1つのアームは、薬剤送達の間、ラチェットに当たる逆回転阻止要素の回転が可聴フィードバックを生じるように、弾性であってもよい。
【0022】
逆回転阻止要素は、少なくとも1つの半径方向に内側に向けられた突出部を有する縦方向中心通路を備えてもよい。少なくとも1つの突出部は、ピストンプランジャの外側表面上の対応する縦方向溝内にそれぞれ受けられてもよい。この構造は、ピストンプランジャの回転ロックを設けるが、ピストンプランジャの縦方向の移動は可能にする。
【0023】
別の実施形態に従うと、一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有するインサートを備え、中心縦方向通路は、少なくとも1つの半径方向に内側に向けられた突出部を有し、少なくとも1つの突出部は、ピストンプランジャの外側表面上の対応する縦方向溝内にそれぞれ受けられる。この構造は、ピストンプランジャの回転ロックを設けるが、ピストンプランジャの縦方向の移動は可能にする。インサートは、中心縦方向通路と同軸の中心ボアをその遠位側にさらに備えてもよい。中心ボアは、第1の直径より大きい第2の直径を有してもよく、ボアの内側表面には、円周方向に延びるラチェットが設けられる。
【0024】
この実施形態では、一方向手段は、第1の直径を有する中心縦方向通路を有する逆回転阻止要素をさらに備え、中心縦方向通路には、ピストンプランジャの外側円周表面のねじ山と噛み合うねじ山が設けられる。逆回転阻止要素は、薬剤送達装置の初期位置では、ピストンプランジャの近位端に位置してもよい。逆回転阻止要素は、円周方向に延び、かつ半径方向に可撓性の少なくとも1つのアームをその円周表面に備えてもよく、少なくとも1つのアームは、インサートのラチェットに相補的な形状を有する突起を備える。
【0025】
ラチェットは、ラチェットと少なくとも1つのアームとの相互作用により、ピストンプランジャが一方向に連結されるように急峻な正面エッジおよび傾斜路形状のトレーリングエッジを備えてもよい。
【0026】
またさらなる実施形態に従うと、一方向手段は、インサートとピストンプランジャとの間のねじ切りされた噛み合いの間に自己ロッキングねじ山接続を備える。
【0027】
ピストンプランジャの内側円周表面は、複数の縦方向に延びるスプラインを備えてもよく、駆動ドラムスリーブは、ピストンプランジャの複数の縦方向に延びるスプラインと取外し自在に係合するように構成された少なくとも1つの可撓性アームを備える。弾性スピン要素の縦方向ロッドは、弾性スピンボタンの近位方向への軸方向の移動により、少なくとも1つの可撓性アームが、ピストンプランジャの複数の縦方向に延びるスプラインと係合するように、中空駆動ドラムスリーブと作動可能に接続される。
【0028】
好ましい実施形態の薬剤送達装置では、弾性スピン要素は、その軸方向の移動の間、回転不動のままとなるように構成される。
【0029】
伸縮式用量ドラムの第1の部分の外側円周表面は、ハウジングの内側円周表面上の噛み合い構造に螺合によって接続されてもよい。伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面は、ピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面に螺合によって接続されてもよい。伸縮式用量ドラムの第1の部分とハウジングの内側円周表面との間のねじ切りされた接続は、伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面とピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面とのねじ切りされた接続のピッチと異なるピッチを有する。
【0030】
より詳細には、遠位部分は、その外側表面上に螺旋状または渦巻状に延びる溝を備えてもよい。溝は、用量ドラムの近位端から遠位部分の遠位端までの全体に延びてもよい。溝は、用量ドラムがハウジングに回転接続されるように、ハウジングの内側表面上に配置された少なくとも1つの突出部または渦巻状に延びる突起セグメントと協働することを目的とし、これにより、相互回転がこれらの部品の縦方向の移動を引起す。さらに、用量ドラムの第1の部分の遠位端領域は、ロッキング構造を有するように配置され、ロッキング構造は、薬剤送達装置の組立ての間、駆動ドラムスリーブがピストンプランジャ内へと移動されるとき、駆動ドラムスリーブのロッキング構造と係合する。
【0031】
伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面は、ピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面に螺合によって接続されてもよい。特に、第2の部分の近位端は、ねじ切りされた構造を備えてもよい。伸縮式用量ドラムの第1の部分とハウジングの内側円周表面との間のねじ切りされた接続は、伸縮式用量ドラムの第2の部分の内側円周表面とピストンプランジャのねじ切りされた外側円周表面とのねじ切りされた接続のピッチと異なるピッチを有する。
【0032】
ピストンプランジャは、設定された用量が薬剤容器内に残存する用量と同等であるとき、伸縮式用量ドラムおよび駆動ドラムスリーブの回転を阻害するための停止特徴をその外
側表面に備えてもよい。
【0033】
駆動ドラムスリーブは、おおむね筒状の形状であってよく、ピストンプランジャ内部に半径方向に配置される。駆動ドラムスリーブには、駆動ドラムスリーブの縦軸に交差する遠位端壁が設けられてもよい。遠位端壁は中心孔を有し、駆動ドラムスリーブは、弾性スピン要素をその中に受けるために中空である。駆動ドラムスリーブの近位端は、1つ以上、たとえば2つの、近位方向に延びる可撓性アームを備えてもよい。アームは、半径方向の力が加えられると、それらの近位端が半径方向に反らされ得るという意味で可撓性である。各可撓性アームの外側表面は、ピストンプランジャの内側表面上の縦方向スプラインまたはリブと選択的に係合するための半径方向に突出したピストンプランジャ係合突出部を備えてもよい。突出部の形状は、ピストンプランジャ上の円周方向に配置されたリブの形状におおむね相当してもよい。各可撓性アームの内側表面は、中空駆動ドラムスリーブ内に位置する弾性スピン要素と選択的に係合するための半径方向係合突出部を備えてもよい。
【0034】
遠位端壁は、2つの近位に延びるロッキングアームにより連結要素を形成してもよい。ロッキングアームは、各それぞれの外側表面に、駆動ドラムスリーブを用量ドラムの内側表面にロックするためのロッキング構造を備える。
【0035】
弾性スピン要素は、縦方向ロッドおよび遠位押しボタンを備えてもよい。押しボタンは、薬剤送達の間、ユーザの指に対する接触表面として作用することを目的とする。上述のように、弾性スピン要素の縦方向ロッドは中空駆動ドラムスリーブ内に収容される。その近位端で、縦方向ロッドは、係合構造を備えてもよく、係合構造は、縦方向ロッドの直径より大きい直径を有する第1の円周方向環状突出部と、縦方向ロッドの直径より大きい直径を有する第2の円周方向環状突出部とを備える。第2の突出部は、好ましくは、縦方向ロッドの近位端に位置し、第1の突出部は、第2の突出部から遠位に位置する。第1の突出部および第2の突出部は、その間に円周方向溝が形成されるように互いから軸方向に離間される。溝のサイズおよび縦方向溝上の配置は、駆動ドラムスリーブの可撓性アーム上の半径方向に内側に向けられた突出部が、初めに溝内に受けられるようにされる。このような初期段階では、可撓性アームは半径方向に外側に反らされていないが、張力のない状態にある。
【0036】
駆動ドラムスリーブと比較した弾性スピン要素の軸方向長さは、好ましくは、薬剤送達装置の初期状態、すなわち、係合突出部が溝内に受入れられた状態で、押しボタンの近位表面が間隙により連結要素の遠位表面から離間されるようにされる。この間隙はユーザによって用量が設定されるときに維持され、用量ドラムの第1の部分、駆動ドラムスリーブおよび弾性スピン要素は、遠位に移動される。しかしながら、押しボタンが近位方向に押されるとすぐに、押しボタンがまず間隙を跨ぐことにより、縦方向ロッドを駆動ドラムスリーブに対して近位方向に移動させる。このような相対的な変位により、遠位に位置する第1の環状突出部が可撓性アーム上の係合突出部に押し当てられることにより、アームが外側に反らされ、ピストンプランジャの内側表面上の縦方向スプラインと係合される。
【0037】
薬剤送達装置は注射装置、好ましくはペン型注射器、であってもよい。
他の局面、特徴、および利点は、上記の概要、ならびに図および請求項を含む、以下の説明により明らかになるであろう。
【0038】
以下の図面は、もっぱら例示目的で発明の実施形態を開示する。特に、図中の開示は、発明の保護の範囲を限定することを意図していない。示される実施形態は、請求項の範囲内でさまざまに変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】初期状態で示された、発明の好ましい実施形態に従う薬剤送達装置の斜視図である。
図2】用量が設定されたときの状態で示される、図1の好ましい実施形態に従う薬剤送達装置の斜視図である。
図3】設定された用量が送達された後に示される、図1の好ましい実施形態に従う薬剤送達装置の斜視図である。
図4】すべての薬剤が送達された状態で示される、図1の好ましい実施形態に従う薬剤送達装置の斜視図である。
図5図1の好ましい実施形態に従う薬剤送達装置の分解組立図である。
図6図1に従う薬剤送達装置の部分分解組立図である。
図7図1に従う薬剤送達装置の別の部分分解組立図である。
図8】初期状態で示される、図1に従う薬剤送達装置の断面図である。
図9】用量が設定されたときの状態の図2に従う薬剤送達装置の断面図である。
図10】用量送達のプロセスの開始時での薬剤送達装置の断面図である。
図11】設定された用量が送達された後での図3に従う薬剤送達装置の断面図である。
図12】新たな用量を設定するプロセスの開始時での薬剤送達装置の断面図である。
図13】すべての薬剤が送達された状態での図4に従う薬剤送達装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
実施形態の機械的構造
図1は、発明の好ましい実施形態に従う薬剤送達装置の斜視図である。薬剤送達装置は、近位端および遠位端を有し、近位部分または端11および遠位部分または端12を有するハウジング10を備える。薬剤送達装置の組立てられた状態では、ハウジング10は、薬剤送達装置の外側表面または外観の一部を構成する。しかしながら、ハウジングは他の多くの態様で設計されてもよいことが理解される。
【0041】
薬剤送達装置は、薬剤容器を収容する薬剤容器ホルダ80をさらに備える。薬剤容器ホルダ80も、薬剤送達装置の外側表面または外観の一部を構成する。容器ホルダ80の近位部分は、その近位端に、それ自体は既知である従来の注射針(図示せず)を取付けるためのネック82をさらに有するように配置される。しかしながら、他のタイプの接続部材、たとえば、差込式取付具 ルアーロック取付具などが配置されてもよいことが理解される。さらに、薬剤容器は、その本体内に一体化された注射針を有してもよい。この場合、ネック部82は省略されてもよい。
【0042】
装置の近位端を取外し自在に覆うためのキャップ(図示せず)が設けられてもよい。したがって、使用されないときには、薬剤容器ホルダ80の近位端が覆われる。
【0043】
薬剤送達装置の薬剤容器ホルダ80は、窓81を備え、窓81は、薬剤送達の進行、すなわち、薬剤送達装置が、薬剤がまだ注入されていない初期段階であるか、または薬剤容器が既に空であるかをユーザが見れるようにする。窓81を通して、ユーザは、少なくとも薬剤容器ホルダ80内に収容された薬剤容器(薬剤容器の遠位部分は、ハウジング10の近位部分内に達してもよい)を見ることができる。好ましい実施形態では、2つのこのような窓が薬剤容器ホルダ80の対向側に位置するように設けられる。
【0044】
さらに、ハウジング10の遠位端12では、以下により詳しく説明するように、設定さ
れた用量をユーザに示すために用いられるさらなる窓13が設けられる。ハウジング10の近位端12では、用量設定のための用量設定ノブ41aが遠位に突出する。
【0045】
図1は、初期状態での薬剤送達装置を示す。ユーザが用量設定ノブ41aを把持し、第1の方向、たとえば時計回り方向に回転させると、用量を設定するために、以下に詳しく説明するように、用量設定ノブ41aおよび他の部品が遠位に移動する。図2は、薬剤が設定されるときのこのような状態での薬剤送達装置の斜視図を示す。
【0046】
図3は、設定された用量が送達された後の薬剤送達装置の斜視図を示す。見られるように、用量設定ノブ41aおよびそれに連係された部品は、近位に移動されており、用量設定ノブ41aは再び初期の位置にある。しかしながら、窓81で見られるように、薬剤送達装置のピストンプランジャ20は近位方向にずらされており、薬剤容器内のストッパ29が窓81を通して見られるようになっている。
【0047】
次に、図4は、すべての薬剤が送達された状態、すなわち、数回の個別の用量が送達された状態の薬剤送達装置の斜視図を示す。ストッパ29は、薬剤容器85の近位端に位置しており、ねじ切りされた表面21を有するピストンプランジャ20の一部が窓81を通して見られ得る。
【0048】
薬剤容器ホルダ80は、近位ハウジング部分11に接続または取付けられるための取付手段を有して配置される。図示する実施形態では、取付手段は、対応する窪み14内に嵌合する突出部83(図5を参照)を備える。しかしながら、薬剤容器ホルダ80をハウジング10に取付けるための他の取付部材、たとえば、差込式取付具、ねじ山などを利用してもよいことが理解される。
【0049】
細長いピストンプランジャ20(図5から図7を参照)は、ハウジング10内に配置され、薬剤送達装置の縦方向におおむね相当する縦軸を有する。ピストンプランジャ20は、その外側表面の少なくとも一部上にねじ山21を有して配置される。図面に示す好ましい実施形態では、ピストンプランジャ20の近位部分は、ねじ切りされた構造21を備える。その外側表面上に、ピストンプランジャ20は、少なくとも1つの縦方向溝25を備える(図示する実施形態では、2つのこのような溝25が設けられている)。ピストンプランジャ20の近位端は、ストッパ29に当接するように適合されたワッシャーまたはスピナー28を有して配置される。ストッパ29は、薬剤容器85内部に移動可能に受けられることを目的とする。
【0050】
ピストンプランジャ20は、中心通路51を有して配置されるインサート50内に嵌合し、中心通路51の中心は、薬剤送達装置の縦軸におおむね一致する。ねじ山インサートの中心通路51は、ピストンプランジャ20のねじ山21と相補的な設計のねじ山52を有して配置される。インサート50の外側表面は、ハウジング10の内側表面上の対応する窪み15内に嵌合する少なくとも1つの突出部53などを備え、これにより、インサート50は、近位ハウジング部分10にロックされる。図5に示すように、ハウジング内の窪み15は、貫通孔として形成されてもよい。
【0051】
インサート50は、ねじ山インサート50の遠位側に中心ボア54をさらに備える。中心ボア54の直径は、段を付けられた構成が設けられるように、中心通路51の直径より大きい。中心ボア54の内側円周表面は、鋸歯形状の歯を有するように配置された円周方向に延びるラチェット55を有して配置される。
【0052】
ラチェット55は、環状の逆回転阻止要素60と協働し、逆回転阻止要素60は、2つの対向して位置付けられるアーム62を有して配置され、アーム62は、阻止要素60の
おおむね円周方向に外側円周表面61上に延びる。図5および図7では2つのこのようなアーム62が示されるが、1つのアームで充足してもよく、または、阻止部材60のサイズによっては、3つ以上のアームが設けられてもよい。1つ以上のアーム62はおおむね半径方向に可撓性である。アーム62の外側に向けられた表面上には、突起63が配置される。各突起63は、ねじ山インサート50のラチェット55に相補的な形状を有する。逆回転阻止要素60は、中心通路65をさらに有するように配置され、中心通路65を通ってピストンプランジャ20が延びる。中心通路65は、半径方向に内側に向けられた突出部またはリブ66を有して配置され、これらの突出部66は、ピストンプランジャ20の外側表面上の細長い溝25内に嵌合する。この構造は、ピストンプランジャ20の回転ロックを設けるが、ピストンプランジャ20の縦方向の移動は可能にする。
【0053】
ピストンプランジャ20は、中空ピストンプランジャ20の内側円周表面22上に設けられた複数の縦方向スプラインまたはリブ23をさらに有して配置される。おおむね筒状の駆動ドラムスリーブ30は、ピストンプランジャ20内部に半径方向に配置される。
【0054】
駆動ドラムスリーブ30には、駆動ドラムスリーブ30の縦軸に交差する遠位端壁31が設けられる。遠位端壁31は、中心孔を有し、駆動ドラムスリーブは、以下に説明するように、弾性スピン要素70をその中に受けるために中空である。駆動ドラムスリーブ30の近位端は、1つ以上、好ましくは2つの、近位方向に延びる可撓性アーム33を備える。アーム33は、以下に説明するように、半径方向の力が加えられると、それらの近位端が半径方向に反らされ得るという意味で可撓性である。各可撓性アーム33の外側表面は、ピストンプランジャ25の内側表面22上の縦方向スプライン23と選択的に係合するための半径方向に突出するピストンプランジャ係合突出部34を備える。突出部34の形状は、ピストンプランジャ20上に円周方向に配置されるリブ23の形状におおむね相当する。各可撓性アーム33の内側表面は、中空駆動ドラムスリーブ30内に位置する弾性スピン要素70と選択的に係合するための半径方向係合突出部37を備える。
【0055】
遠位端壁31は、2つの近位に延びるロッキングアーム35により連結要素を構成する。ロッキングアーム35は、それらの各外側表面に、用量ドラム40の内側表面に駆動ドラムスリーブ30をロックするためのロッキング構造36を備える。
【0056】
半径方向に見られるピストンプランジャ20の外側には、伸縮式用量(設定)ドラム40が配置される。用量ドラム40は、おおむね筒形状を有し、ピストンプランジャ20およびハウジング10と同軸に位置付けられる。用量ドラム40は、互いに対して摺動可能に配置された第1の遠位部分41および第2の近位部分42を備える。遠位部分41は、用量ドラム40の近位部分42の半径方向に外側に同軸に位置する。
【0057】
遠位部分41は、その外側表面41上に螺旋状または渦巻状に延びる溝49を備える。溝49は、近位端から用量ドラム40の遠位部分41の遠位端までの全体に延びる。溝49は、ハウジング10の内側表面上に配置された少なくとも1つの突出部または螺旋状に延びる突起セグメント16(図5)と協働することを目的とするため、用量ドラム40はハウジング10に回転接続され、これにより、相互回転がこれらの部品の縦方向の移動を引起す。用量ドラム40の第1の部分41の遠位端領域は、さらに、ロッキング構造を有するように配置され、ロッキング構造は、薬剤送達装置の組立の間、駆動ドラムスリーブ30がピストンプランジャ20内に移動されるとき、駆動ドラムスリーブ30のロッキング構造30と係合する。
【0058】
第1の部分41の遠位端には、用量設定ノブ41aが配置される。用量設定ノブ41aは、用量ドラム40の第1の部分41の外側表面より若干大きい直径を有する、近位に向けられたおおむね筒状の部分を備える。用量設定ノブ41aの最も外側の直径は、好まし
くは、ハウジング10の外径と同一平面上である。したがって、伸縮式用量ドラム40の第1の部分41は、用量設定ノブ41aによる用量設定の間、ハウジング10に相対的な第1の方向に遠位に回転移動するように構成される。
【0059】
伸縮式用量ドラム40の第2の部分42の内側円周表面44は、ピストンプランジャ20のねじ切りされた外側円周表面21に螺合によって接続される。特に、第2の部分42の近位端は、ねじ切りされた構造45(図6)を備える。伸縮式用量ドラム40の第1の部分41とハウジング10の内側円周表面との間のねじ切りされた接続は、伸縮式用量ドラム40の第2の部分42の内側円周表面44とピストンプランジャ20のねじ切りされた外側円周表面21のねじ切りされた接続とのピッチと異なるピッチを有する。
【0060】
図6でも見られるように、ピストンプランジャ20は、その外側表面上に、設定された用量が薬剤容器中の残存する用量と同等であるときに伸縮式用量ドラム40および駆動ドラムスリーブ30の回転を阻害するための停止特徴26を備える。
【0061】
弾性スピン要素70は、縦方向ロッド71および遠位押しボタン72を備える。押しボタンは、説明するように、薬剤送達の間にユーザの指に対する接触表面として作用することを目的とする。上述のように、弾性スピン要素70の縦方向ロッド71は、中空駆動ドラムスリーブ30内に収容される。その近位端には、縦方向ロッド71は、縦方向ロッドの直径より大きい直径を有する第1の円周方向環状突出部73と、縦方向ロッドの直径より大きい直径を有する第2の円周方向環状突出部74とを備える係合構造を備える。第2の突出部74は、好ましくは、縦方向ロッドの近位端に位置し、第1の突出部73は、第2の突出部74から遠位に位置する。第1の突出部73および第2の突出部74は、それらの間に円周方向溝75が形成されるように互いから軸方向に離間される。溝75のサイズおよび縦方向ロッド71上の配置は、駆動ドラムスリーブ30の可撓性アーム33上の半径方向に内側に向けられた突出部37が、初めに溝75内に受けられるようにされる。このような初期段階では、可撓性アーム33は半径方向に外側に反らされていないが、張力のない状態にある。
【0062】
駆動ドラムスリーブ30と比較した弾性スピン要素70の軸方向長さは、薬剤送達装置の初期状態、すなわち、係合突出部37が溝75内に受けられた状態では、押しボタン72の近位表面が間隙76により連結要素31の遠位表面から離間されるようにされる(たとえば図8を参照)。この間隙76は、ユーザにより用量が設定されるときに維持され(図9を参照)、用量ドラム40の第1の部分41、駆動ドラムスリーブ30および弾性スピン要素70は遠位に移動される。しかしながら、押しボタン72が近位方向に向けて押されるとすぐに、押しボタン72がまず間隙76を跨ぐことにより、駆動ドラムスリーブ30に相対的な近位方向に縦方向ロッド71を移動させる。このような相対的な変位により、遠位に位置する第1の環状突出部73が可撓性アーム33上の係合突出部37に対して押し当てられるため、アーム33が外側に反らされ、ピストンプランジャ20の内側表面22上の縦方向スプラインと係合される。さらに、押しボタン72が解除されるとすぐに、反らされたアーム33は、係合突出部37が溝75内に受けられるように内側に移動するよう努める。これにより、縦方向ロッド71は、駆動ドラムスリーブ30に相対的な遠位方向に移動される。装置は、間隙76内に配置される弾性部材をさらに備えることも可能であり、上記弾性部材は、単独部品であるか、または、駆動ドラムスリーブ30もしくは弾性スピン要素70のいずれかと一体的である。
【0063】
実施形態の機能および動作の説明
送達されるべき用量の設定動作
図8は、初期状態での薬剤送達装置の断面図を示す。
【0064】
用量が送達されるためには、用量を設定するために装置を作動する必要がある。送達されるべき用量を設定するためには、ユーザは、ハウジング10および遠位に配置された用量設定ノブ41aを把持し、それらを互いに対して回転させる。たとえば、用量設定ノブ41aは時計回り方向に回転される。用量設定ノブ41aを回転させると、用量ドラム40の第1の部分41が回転される。用量ドラム40の螺旋状溝49とハウジング10の渦巻状突起セグメントとの間の接続、回転により、用量ドラム40の第1の部分41がハウジング10に対して遠位方向に移動する。用量設定ドラム40の内部では、駆動ドラムスリーブ30と用量ドラム40との、ともに遠位端31での回転ロックのため、駆動ドラムスリーブ30も回転する。したがって、駆動ドラムスリーブ30は、用量ドラム40に回転接続される。
【0065】
用量ドラム40の第1の部分41の内側表面上の縦方向リブ48は、用量ドラム40の第2の部分42の外側表面上の縦方向溝と接する。したがって、第1の部分は、第2の部分に対して摺動し得る。さらに、第2の部分42も回転され、ねじ切りされた45がピストンプランジャ20のねじ切りされた表面内に係合することにより、第2の部分42も、異なるピッチのため第1の部分41より遅い速度ではあるが、遠位に移動する。第2の部分42の回転もピストンプランジャ20に対してある回転力を引起す。これにより、逆回転阻止要素60の突出部66がピストンプランジャ24の縦方向溝25内に嵌合するため、阻止要素60とピストンプランジャ20との間の回転ロックにより、逆回転阻止要素60も回転する。しかしながら、逆回転阻止要素60のアーム62は、逆回転阻止要素60の如何なる回転も防止されるように向けられ、かつ、ねじ山インサート50のラチェット55と協働している。したがって、ピストンプランジャ20は回転が防止される。回転中、好ましくは、ハウジング10の遠位端12の窓または孔13を通して用量ドラム40上の目盛り(図示せず)が示される。したがって、患者は、所定の用量の数量が表示されるまで用量設定ノブ41aを回転させる。
【0066】
ユーザが誤って過大な用量を設定してしまった場合、彼/彼女は反対方向に用量設定ノブ41aを回すことにより、用量ドラム40および駆動ドラムスリーブ30の両方が正確な用量に達するまで反対方向に回される。
【0067】
図9は、用量が設定されたときの状態での薬剤送達装置の断面図を示す。特に、間隙76が未だ存在することが見られ得る。
【0068】
事前設定された薬剤の用量の送達動作
ある用量の薬剤を送達するためには、ユーザは、装置の近位端を用量送達部位に押し当て、特に、薬剤送達装置が注射針である場合には注射部位に押し当てる。次のステップは、装置の遠位端の押しボタン72を押すことである。
【0069】
図10は、用量送達のプロセスの開始時での薬剤送達装置の断面図を示す。見られるように、間隙76は、ユーザにより加えられた力により閉止されており、ボタン72は、駆動ドラムスリーブ30の遠位連結部材31に接する。
【0070】
既に上述のように、押しボタン72への力により、駆動ドラムスリーブ30がまずピストンプランジャ20の内側表面と係合される。次に、一旦間隙76が跨がれると、押しボタン72に対する力により、用量始動ノブ41aが近位方向に進められる。この近位方向の力は、用量ドラム40に伝達され、ハウジング10とのねじ切りされた接続により、用量設定ドラム40は反時計回りに回転し、近位方向に移動する。用量ドラム40と駆動ドラムスリーブ30との間の回転ロックのため、後者も回転する。駆動ドラムスリーブ30のアーム33の半径方向の屈折により、駆動ドラムスリーブ30の内側に向けられた突出部34は、ピストンプランジャ20のスプライン23と固く係合する。
【0071】
したがって、用量ドラム40および駆動ドラムスリーブ30が回転するとき、後者はピストンプランジャ20も同様に回転させる。反時計回り方向のこの回転は、ねじ山インサート50のラチェット55と接するアーム62の設計により、逆回転阻止要素60によって可能となる。したがって、ピストンプランジャ20も逆回転阻止要素60とともに回転し、ねじ山インサート50のラチェット55上を摺動する逆回転阻止要素60のアーム62は、可聴かつ触覚可能な情報を与える。さらに、ピストンプランジャ20の回転により、ピストンプランジャ20は、ねじ山インサート50とのねじ切りされた接続により近位方向に移動され、これにより、ピストンプランジャ20の移動がストッパ29を近位方向に進めることにより、用量送達部材を通してある用量の薬剤が排出される。用量は、用量ドラム40がその初期位置に戻った時点で送達されており、初期位置は、何らかの阻止部材(図示せず)が用量ドラムのさらなる移動または回転を防止することにより限定され得る。
【0072】
図11は、設定された用量が送達された後の薬剤送達装置の断面図を示す。
装置は、用量送達部位から取外されてもよく、薬剤送達部材は捨てられてもよい。薬剤容器85が送達すべき用量を未だ十分に多く含む場合、「送達されるべき用量の設定動作」のステップから上記のステップを繰返せばよい。
【0073】
図12は、新たな用量を設定するプロセスの開始時での薬剤送達装置の断面図を示す。
図13は、すべての薬剤が送達された状態での薬剤送達装置の断面図を示す。ストッパ29は、薬剤容器の近位壁に位置する。
【0074】
図面および上記説明において、発明を詳しく例示し説明したが、このような例示および説明は例示的または模範的であって、制限的として見なされるべきではない。変更および改良が、下記の請求項の範囲内で当業者によりなされてもよいことが理解されるであろう。特に、本発明は、上記および下記の異なる実施形態からの特徴の任意の組合せを備えるさらなる実施形態を包含する。
【0075】
さらに、請求項では、「備える("comprising")」という用語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞(″a″または″an″)は、複数を除外しない。一つのユニットは、請求項に記載されるいくつかの特徴の機能を満たしてもよい。ある属性または値に関する「実質的に("essentially")」、「約("about")」、「およそ("approximately")」などの用語は、特に、ちょうどその属性またはちょうどその値もそれ
ぞれ規定する。請求項における如何なる参照符号も範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0076】
10 ハウジング、11 近位端、12 遠位端、20 ピストンプランジャ、40 伸縮性用量ドラム、41 第1の遠位部分、41a 用量設定ノブ、42 第2の近位部分、80 薬剤容器ホルダ、82 薬剤容器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13