【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような技術上の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決策を提供する。
【0007】
低温で硬化可能な無機コーティング組成物であって、以下の成分を含む。
70−80wt%の無機溶液。前記無機溶液は、30−40wt%の有機アルコキシシラン(アルコキシシランまたは有機シランとも呼ばれる)と、15−20wt%の有機溶媒と、25−30wt%のシリカゾルとを含む。
5−10wt%の第1の機能性添加剤。前記第1の機能性添加剤はチタン酸カリウム、アルミナ、又はそれらの混合物から選択される。単に、機能性添加剤とも呼ばれる。
10−20wt%の無機顔料。
0.5−2.0wt%の他の機能性添加剤。
【0008】
上記比率は、前記無機コーティング組成物全体の中の各成分の割合を重量で表されたものである。
前記無機コーティング組成物は100wt%である。
【0009】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物は脱イオン水も含む。
【0010】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物は他の機能性添加剤を0.5−1.5wt%含む。
【0011】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物は他の機能性添加剤を0.5−1.0wt%含む。
【0012】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記アルコキシシランは式R
1mSi(OR
2)
4−mで表される。前記R
1,R
2は、置換または無置換のアルキル基またはアリール基(炭素が1−10)である。mは0−3である。R
1とOR
2との総数は4である。
【0013】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記R
1及び/又は前記R
2は、メチル基、エチル基、フェニル基、CF
3CH
2CH
2,CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2、及びCF
3(CF
2)
7CH
2CH
2を含む群から選択された少なくとも一つである。
【0014】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記シリカゾルはシリカ(SiO
2)粒子を20−40wt%含む。前記シリカ粒子の大きさはナノメートルサイズからミクロンサイズである。
【0015】
好ましくは、前記無機コーティング組成物は脱イオン水も含む。
【0016】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記無機顔料は、酸化チタン、黄鉛(chrome yellow)、アイアンブルー(iron blue)、カドミウムレッド(cadmium red)、カドミウムイエロー(cadmium yellow)、カーボンブラック、ベンガラ(iron oxide)、黄酸化鉄(iron oxide yellow)、又はそれらの混合物から選択される。
【0017】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記他の機能性添加剤は、トルマリン、希土類鉱石、又はそれらの混合物から選択される。
【0018】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記機能性添加剤は3−5wt%のチタン酸カリウムを含む。前記チタン酸カリウムは針状である。その粒子サイズは1−100nmである。
【0019】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物は、シランカップリング剤も含む。前記シランカップリング剤は前記無機コーティング組成物の総重量の5−40wt%である。前記シランカップリング剤は塗布前の前記無機コーティング組成物に添加される。前記シランカップリング剤を添加する前の無機コーティング組成物はパートAと呼ばれる。シランカップリング剤はパートBと呼ばれる。パートAとパートBとの重量割合は60−95:5−40である。パートAとパートBの総重量は100である。パートAが塗布される前に、パートBがパートAに加えられる。パートAとパートBを入れた容器を回転ローラに載せて、パートAとパートBを混合・硬化させる。硬化に要する時間は2−20時間である。容器の回転レートは50−400r/minである。前記シランカップリング剤はメチルトリメトキシシランである。
【0020】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記OR
2は、加水分解性アルコキシシランである。前記加水分解性アルコキシシランは、水、空気中の水分、又は基材の表面に存在する水分で加水分解する。そして、シリコンヒドロキシル(Si−OH)基が形成される。Si−O−M結合(Mは基材)によって前記基材の表面(M−OH)に強く結合する。
【0021】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物において、前記アルコキシシランはメチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、又はそれらの混合物である。
【0022】
好ましくは、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はそれらの混合物である。
【0023】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物の成分は超音波処理されてもよい。前記超音波の周波数は20KHz以上である。処理時間は30−40分である。更に、前記超音波の周波数は20−25KHzである。
【0024】
好ましくは、更に、前記無機コーティング組成物の調製プロセスにおいて、前記超音波は、前記アルコキシシランと前記シリカゾルの混合反応ステップにおいて、前記アルコキシシランと前記シリカゾルの混合物を処理するのに使用される。
【0025】
超音波分散のオペレーティング理論は以下の通りである。即ち、20KHzを超える周波数の超音波が物体の表面に照射されると、空気圧が繰り返し大きく減圧する。キャビテーション現象が起きる。キャビティが破断されると、部分的に高温・高圧とエアージェットが発生する。超音波により発生するエネルギーは、粒子を分散し、破断し、均質化するのに用いられる。
【0026】
好ましくは、更に、パウダー原材料を完全に分散させる為に、使用前に、これらの原材料に超音波が照射される。
【0027】
好ましくは、更に、化学反応をより完全に行わせる為に、使用前に、前記液体原材料に超音波が照射される。
【0028】
本発明は、前記無機コーティング組成物の調製方法を提供する。
前記調整方法は下記の通りである。
前記主剤と前記硬化剤の前記成分の調製。
前記主剤の調製方法は次の通りである。最初はシリカゾルの攪拌。前記有機溶媒の添加。続けて攪拌。脱イオン水の添加。続けて攪拌。反応温度を50℃以下に調節。前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はそれらの少なくとも二つの混合物から選択される。
前記硬化剤の調製方法は次の通りである。前記有機アルコキシシラン、第1の機能性添加剤、無機顔料、及び他の機能性添加剤を、前記脱イオン水に添加。そして、十分に混合。
前記主剤および前記硬化剤が混合される。粒子を除去する為、325−1000メッシュのネットで濾過される。前記無機コーティング組成物が得られる。
【0029】
好ましくは、更に、前記主剤の調整方法は次の通りである。先ず、シリカゾルの攪拌。前記有機溶媒を徐々に添加。続けて攪拌。脱イオン水を徐々に添加。続けて攪拌。前記シリカゾルが脱イオン水と混合されると、発熱する。反応温度は50℃以下に調節されなければならない。前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はそれらの少なくとも二つの混合物から選択される。前記有機溶媒は乾燥速度に影響する。この欠点は、保存能力を向上させることで相殺される。
【0030】
好ましくは、前記主剤の粘度は、通常、フォードカップで評価される。前記粘度は、通常、14−15秒である。
【0031】
本発明は、前記無機コーティング組成物の他の調製方法を提供する。
前記調整方法は次のステップを有する。
(1) 無機溶液調製:30−40wt%のアルコキシシランを、15−20wt%の有機溶媒、及び25−30wt%のシリカゾルと混合。40−50℃の温度で5−10分間攪拌。ゾル状態の無機溶液が得られる。
(2) 無機コーティング混合物調製:ステップ(1)で得た70−80wt%の前記無機溶液を、5−10wt%の機能性添加剤、10−20wt%の無機顔料、0.5−2.0wt%の他の機能性添加剤と混合。前記混合物を攪拌。無機コーティング混合物が得られる。
(3) ステップ(2)で得た前記無機コーティング混合物を、ホモジナイザに投入:高速で1−2時間攪拌。粒子が均質化される。
(4) ステップ(3)で得られた均質化された物質を、325−1000メッシュのネットを用いて、粒子を除去する為に、濾過。低温で硬化可能な無機コーティング組成物が得られる。
更に、前記ステップ(1)において、無機溶液の調製: 30−40wt%のアルコキシシランを、15−20wt%の有機溶媒、25−30wt%のシリカゾルと混合。40−50℃の温度で5−10分間攪拌。前記アルコキシシランが、前記混合溶液中で、シリカゾルと反応すると、発熱する。前記混合物は懸濁状態から徐々に透明になる。前記有機溶媒を加える目的は、前記溶液の粘度と反応速度を調整することである。上記のプロセスでゾル状態の無機溶液が得られる。
【0032】
好ましくは、更に、前記ステップ(2)において、無機コーティング混合物を撹拌: ステップ(1)で得た70−80wt%の無機溶液を、5−10wt%のチタン酸カリウム又はアルミナ、10−20wt%の無機顔料、0.5−2.0wt%の他の機能性添加剤と混合。その混合物を攪拌。無機コーティング混合物が得られる。
【0033】
好ましくは、更に、前記ステップ(1)において、無機溶液の調製: 前記30−40wt%のアルコキシシランを、前記15−20wt%の有機溶媒、25−30wt%のシリカゾルと混合。その混合物を40−50℃の温度で5−10分間攪拌。同時に、前記混合物に超音波が照射される。この時、前記アルコキシシランが前記混合溶液中のシリカゾルと反応し、発熱する。前記混合物は懸濁状態から徐々に透明になる。上記プロセスにおいて、化学反応が起きている間、超音波が照射される。Si−O結合の結合角が調節される。分子構造の配向が調節される。自己成長の代わりに、Si−O結合の成長を制御できる。
【0034】
好ましくは、前記無機塗膜の柔軟性を向上させる為、ファイバー形状のチタン酸カリウムが用いられる。前記チタン酸カリウムは、材料の柔軟性を向上させることが出来る。前記無機顔料として金属酸化物を用いてもよい。
【0035】
前記オルガノシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、又はそれらの混合物であってもよい。
【0036】
上記の無機コーティング組成物は、無機セラミックコーティングとも呼ばれる。
【0037】
更に、前記無機セラミックコーティングの調製方法は次の通りである。
フェイズ1,ゾル状態の前記無機溶液の調製: 30−40wt%の少なくとも一種または二種のアルコキシシランを、25−30wt%の前記シリカゾルと混合。その混合物を40−50℃の温度で5−10分間攪拌。ゾル状態の無機溶液が得られる。
フェイズ2,攪拌混合: 前記フェイズ1で得た70−80wt%の無機溶液を、5−10wt%のチタン酸カリウムおよび/またはアルミナ、10−20wt%の酸化チタンの無機顔料、0.5−2.0wt%の他の機能性添加剤と混合。その混合物を攪拌混合。無機コーティング混合物が得られる。
フェイズ3,前記フェイズ2で得た無機コーティング混合物をホモジナイザに投入:前記無機コーティング混合物を、粒子を均質化する為、高速で1−2時間攪拌。
フェイズ4,濾過:前記フェイズ3で得た均質化された物質を、325−1000メッシュのネットを用いて濾過し、大粒の粒子を除去。無機セラミックコーティングが得られる。
【0038】
好ましくは、更に、無機溶液を調製するフェイズにおいて、有機溶媒の添加。更に、前記フェイズ2において、5−10wt%の機能性添加剤は、3−5wt%の粒子サイズが1−100nmのチタン酸カリウムを含む。
前記無機コーティング組成物で形成された無機塗膜の構造と理論は以下の通りである。
【0039】
好ましくは、前記アルコキシシランは、分子式R
1mSi(OR
2)
4−mで表される。前記OR
2は、加水分解可能なアルコキシシランであり、水、空気中の水分、または基材の表面に存在する水分で加水分解され、シリコンヒドロキシル(Si−OH)基を形成する。前記(Si−OH)基は、Si−O−M結合により、基材の表面(M−OH)と強く結合する。表1に示される通り、前記Si−O結合は、他の結合よりも結合エネルギーが高い。前記無機塗膜は、耐候性、耐薬品性、摩擦抵抗、高硬度を特徴とする。前記無機塗膜は、ケイ素−酸素結合の柔軟性とレジリエンスにより、耐寒性および繰り返しのヒートショックに対する耐性も特徴とする。
【0040】
本発明において、前記有機シランは、二酸化ケイ素(SiO
2)の存在下における加水分解と縮合重合によって、無機溶液を形成する。前記無機溶液は、シリコンヒドロキシル(Si−OH)基を有する。この基は、強い結合エネルギーをもつSi−O−M結合を生じさせる。この為、前記無機溶液自体が強い結合剤の役割を果たすことができる。
【0041】
前記無機シランは、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、又はそれらの混合物である。20−30wt%のシリカゾルを加え、その混合物を攪拌することによって、上記無機溶液が得られる。シリカゾルの量が上記の範囲から外れると、Si−O−Mの結合力が弱まり、高温で膜が剥離する。
【0042】
加えて、前記コーティング組成物によって形成された膜の物理・化学的特性を向上させる為、チタン酸カリウムまたはアルミナが第1の機能性添加剤として用いられてもよい。これらの原材料の粒子は針状またはプレート状であるので、ひび割れが防止される。コーティング組成物の粘度が調節できる。第1の機能性添加剤の量は5−10wt%の範囲内である。第1の機能性添加剤の量が5wt%よりも少ないと、膜の性能低下を招く恐れが有り、膜表面が粗面となる。第1の機能性添加剤の量が10wt%よりも多いと、膜の光沢や付着力が低下する。
【0043】
本発明における前記無機コーティング組成物は、従来技術における塗料の代わりに用いることができる。その為には、色彩が豊かでなければならない。従来技術における塗膜では、色のバリエーションを得る為に、有機顔料や染料を用いるが、これらの有機物には様々な問題がある。よって、本発明における前記無機コーティング組成物は、様々な色を表現する為に、金属酸化物の顔料を用いる。10−20wt%の顔料を含むことが望ましい。この範囲より顔料の量が少ないと光沢が低下し、この範囲より多いと膜と基材との間の付着力が低下する。加えて、前記膜に更なる特性を与える為に、本発明における前記無機コーティング組成物は0.5−2.0wt%の他の機能性添加剤を含む。
【0044】
加えて、光触媒効果を得る為に、前記無機コーティング組成物に酸化チタンが添加されてもよい。酸化チタンは光によって活性化する為、様々な汚染物質を無害なものに変えることができる。
【0045】
加えて、必要に応じて、マイナスイオンを発生させたり、遠赤外線を放射したりする為に、前記無機コーティング組成物に前記他の機能性添加剤が加えられてもよい。前記他の機能性添加剤は、マイナスイオンを発生し得る物質を含む。一般的には、トルマリンや希土類鉱石がマイナスイオンを発生し得る物質として用いられる。
【0046】
前記無機コーティング組成物は、機能性添加剤を加えることによって、塗膜に柔軟性を与え、ひび割れを防止し、膜厚の問題を解消する。低温で硬化可能な無機コーティング組成物を調製する為に、シリカゾルとアルコキシシランとの間で縮合重合反応が行われる。前記無機コーティング組成物は、低温で硬化し、無機膜を形成する。この膜は優れた特性を有する。即ち、人体に対し無害で、かつ、環境にも安全である。
【0047】
先行技術と比較しても、本発明における前記無機コーティング組成物は、従来技術にはない優れた特性を有する。即ち、本発明は、前記無機コーティング組成物にとって困難な課題である低温での硬化を解決する。前記無機コーティング組成物は巨大な建物や装置の表面に用いることができる。本発明は、大型の焼成装置を必要としない。ボイラー等も必要ない。本発明は、生産性を向上させ、燃費を削減する。環境にも有益である。加えて、前記無機コーティング組成物で形成された膜は十分な柔軟性がある。加えて、本発明における前記無機コーティング組成物は、有害な有機原材料を含まず、取り扱いが簡単で、無臭であり、優れた化学的・物理的耐性を有し、膜を長期間維持することができ、人体に対し無害で、環境を汚染することもなく、安全性が確保されており、有用な結果をもたらす。更に、前記膜は、VOCやホルムアルデヒド等の有害物質の発生を防止できる。シックハウス症候群の発生を低減できる。加えて、前記膜の成分は無機原材料なので、前記膜を廃棄する場合にも、環境に対する影響を最低限に抑えることができる。また、熱および紫外線に対する耐性を特性とするため、剥落や退色を防止し、長期にわたって美しい外観を維持することができる。