(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228664
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】衣服、特にスポーツ用衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
A41D13/002
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-517177(P2016-517177)
(86)(22)【出願日】2014年3月1日
(65)【公表番号】特表2016-523316(P2016-523316A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2014000533
(87)【国際公開番号】WO2015131913
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ベネイト−フェーレ、ヨルディ
【審査官】
米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0031703(US,A1)
【文献】
実公昭30−006206(JP,Y1)
【文献】
国際公開第2012/058721(WO,A1)
【文献】
特開2003−003304(JP,A)
【文献】
実公昭30−013050(JP,Y1)
【文献】
特表2012−531535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/02−1/04
A41D 13/00−13/12
A41D 27/00−27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服(1)であって、該衣服(1)は、着用者の身体を少なくとも部分的に覆うセクション(2)を有するジャケットまたはシャツであり、前記セクション(2)が、空気流(F)を前記衣服(1)の外側から前記セクション(2)を通して前記衣服(1)の内側へ流して着用者の身体の一部を冷やすための少なくとも1つの通気部材(3)を有し、作動手段(4)が、前記衣服(1)の使用中に着用者の身体の一部の動きに応じて前記通気部材(3)を開閉するように配置される衣服において、
前記作動手段(4)は、材料セクションを備え、該セクションは、前記通気部材(3)を有する第1の端部(5)とつながっているとともに、着用者の手がある第2の端部(6)とつながっていることができ、前記作動手段(4)は、前記ジャケットまたはシャツのアームスリーブの少なくとも一部を含み、前記アームスリーブの前記第2の端部(6)は、着用者の親指(8)用に少なくとも1つの開口(7)を有し、前記衣服(1)の着用中に着用者の前記親指(8)が前記開口(7)を通って伸びると、前記第2の端部(6)と使用者の手との間に接続が確立され、該接続は、前記通気部材(3)を開くように前記アームスリーブの長手方向に沿って張力を伝えることを可能にすることを特徴とする、衣服(1)。
【請求項2】
前記アームスリーブの前記第2の端部(6)に複数の開口(7’、7’’、7’’’)が設けられ、該開口は、着用者の腕の長手方向(L)に沿って互いに距離(d)を置いて配置されることを特徴とする、請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記距離(d)は、1cmから3cmの間であることを特徴とする、請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
3つの前記開口(7’、7’’、7’’’)は、前記アームスリーブの前記第2の端部(6)に配置されることを特徴とする、請求項2または3に記載の衣服。
【請求項5】
前記ジャケットまたはシャツの少なくとも前記アームスリーブは、着用者の身体にぴったり密着することを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の衣服。
【請求項6】
前記通気部材(3)は、前記セクション(2)の2つの隣接するエッジ(9、10)で実現され、該エッジは、閉鎖状態では接触していて、開口状態では間をあけていることを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の衣服。
【請求項7】
前記エッジ(9、10)の少なくとも一方は、補強部材を含むか、あるいは補強材料で作製されることを特徴とする、請求項6に記載の衣服。
【請求項8】
前記2つの隣接するエッジ(9、10)の剛性は、異なることを特徴とする、請求項6または7に記載の衣服。
【請求項9】
前記エッジ(9)の一方は、前記作動手段(4)とつながっていることを特徴とする、請求項6〜8のうちいずれか一項に記載の衣服。
【請求項10】
前記作動手段(4)とつながっている前記エッジ(9)の剛性は、前記作動手段(4)とつながっていない前記エッジ(10)の剛性よりも高いことを特徴とする、請求項9に記載の衣服。
【請求項11】
剛性が低い方の前記エッジ(10)は、剛性を下げるために少なくとも1つのくぼみを有することを特徴とする、請求項8〜10のうちいずれか一項に記載の衣服。
【請求項12】
2つの通気部材(3)は、衣服の脊椎領域または肩胛骨領域に左右対称に配置されることを特徴とする、請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、特に、着用者の身体を少なくとも部分的に覆うセクションを有するスポーツ用衣服であって、このセクションが、空気流を衣服の外側からこのセクションを通して衣服の内側へ流して着用者の身体の一部を冷やすための少なくとも1つの通気部材を有する衣服に関する。
【0002】
この種の衣服が米国特許第5704064号(特許文献1)で知られている。特に周囲温度が高いときは、衣服を通る空気流に配慮して、衣服の着用者にとって快適な温度条件を確立することが有益である。したがって、衣服は、上記の文献に記載されているように、ジャケットの使用中に空気を流せる通気部材を備えている。
【0003】
また、スポーツ活動中に空気を流せる通気路を有するスポーツ用の服を作製することが有益である。通常必要とされる通気部材は静的である。すなわち衣服の表面に(すなわち前述したセクションに)特定の開口があり、この開口により衣服に空気を流せることは好ましくない。大きな通気用の開口は、スポーツ活動中は有益であるが、衣服がスポーツ向けに使用されていないときはこれに当てはまらない。そのため、通気用の開口は通常必要ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5704064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、スポーツ活動中に衣服を通る空気流を設けるという点で最適化された一般的な種類の衣服だが、スポーツが行われていないときは通常の(通気口のない)特性を有する衣服を提供することが本発明の目的である。さらに、通気作用は、スポーツ活動中に強化しなければならない。そのため、衣服着用者の運動中に冷やすことを改良しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるこの目的の解決策は、作動手段が、衣服の使用中に着用者の身体の一部の動きに応じて通気部材を開閉するように配置されることを特徴とする。
【0007】
作動手段は、材料セクションを備えていてよく、このセクションは、通気部材を有する第1の端部とつながっているとともに、着用者の手または足がある第2の端部とつながっていてよい。
【0008】
好ましくは、衣服は、ジャケットまたはシャツであり、作動手段は、ジャケットまたはシャツのアームスリーブの少なくとも一部を含む。
【0009】
この場合、アームスリーブの第2の端部は、着用者の親指用に好ましくは少なくとも1つの開口を有する。好ましくは、アームスリーブの第2の端部に複数の開口が設けられ、この開口は、着用者の腕の長手方向に沿って互いに距離を置いて配置される。この距離は、1cmから3cmの間であることが有益である。本発明の好適な実施形態では、アームスリーブの第2の端部に配置される3つの開口を提供する。好ましくは、開口は、互いに等間隔に配置される。
【0010】
ジャケットまたはシャツの少なくともアームスリーブ、および好ましくはジャケットまたはシャツ全体は、着用者の身体にぴったり密着する。
【0011】
通気部材は、このセクションの2つの隣接するエッジで実現でき、このエッジは、閉鎖状態では接触していて、開口状態では間をあけている。そのため、エッジの少なくとも一方は、補強部材を含むことができるか、あるいは補強材料で作製される。
【0012】
したがって、2つの隣接するエッジの剛性は、異なることが好ましい。エッジの一方は、作動手段とつながっていてよい。作動手段とつながっているエッジの剛性は、作動手段とつながっていないエッジの剛性よりも高いことが好ましい。剛性が低い方のエッジは、剛性を下げるために少なくとも1つのくぼみを有していてよい。
【0013】
好ましくは、2つの通気部材は、衣服の脊椎領域または肩胛骨領域に左右対称に配置され、好ましくは2つの通気部材は、衣服の上方領域に配置される。
【0014】
提供した衣服の設計によって有益な空気流は、必要なとき、すなわちスポーツ活動中に発生する。
【0015】
したがって、張力を伝達する作動手段が、全体的に有益な長手方向の伸張があるエッジに対して垂直である通気部材の一方のエッジに作用することが極めて有益である。そのため、着用者が自らの腕を前後に振った際に発生する(作動手段の)引っ張り線に対して通気部材が垂直になるということが、例えばランニング中に起こる。
【0016】
有益には、通気部材の一方のフラップ(一方のエッジに対応する上側フラップ)ともう一方のフラップ(もう一方のエッジに対応する下側フラップ)との間に、剛性の関係が生じる。上側フラップの方が、好ましくは、垂直力が印加された際に力がかかって「パッ」と開くほど高い剛性を有するが、下側フラップは、好ましくはその剛性を下げるために特定のくぼみを有するように設計され、これによって、力が印加された際に「パッ」と開かないようになる。この剛性の差によって通気部材を容易に開くことが可能になる。
【0017】
通気部材の開口(背面の通気口)は、親指の孔(前述した開口)から、好ましくは肩胛骨の上部に配置された実際の通気部材まで広がっている織物パネルを介して実現される。このつながりによって、着用者が自分の腕を前方に振ったとき、すなわち前記織物パネルにかかる張力が増したときの引っ張り力を直接伝達できる。この織物パネルには、使用者の快適性を考慮するために特定の伸縮性を可能にする材料を使用すべきである。
【0018】
調整可能な親指の孔は、もう1つの有益な特徴である。この特徴により、通気口を開けるのに印加すべき作動手段に発生する張力の点で、使用者の様々な好みや、様々な腕の長さ、および/または様々なランニング形式に合わせることが可能になる。孔は、好ましくは、衣服の袖の長手軸に沿って約2cmずつ離れていて袖口で終わる3つの連続する開口で構成される。
【0019】
このように、記載した通気機構を介して着用者の肌にかかる対流作用を増大できるようにすることによって、冷却を達成し、かつ/または支持する。
【0020】
図面には本発明の一実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ジャケットになっているスポーツ用衣服の前面図であり、着用者の手も描かれている図である。
【
図2】
図1のスポーツ用衣服を着用している着用者の側面図である。
【
図3】スポーツ用衣服を着用してランニング中の腕の動きを実行している着用者の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から
図4には、スポーツ用ジャケットである衣服1を示している。この衣服は、着用者の一部を公知の方法で覆っている。衣服1は、衣服のセクション2で着用者を覆っている。
図1を見ればわかるように、2つの通気部材3は、ジャケットの肩胛骨領域、すなわち衣服の背面側に配置され、前述した衣服1のセクション2に配置される。
【0023】
通気部材3は、実質的に2つのエッジ9および10によって画成される。2つのエッジ9、10は、隣接する位置にあってよい。この位置では、通気部材3は閉鎖される。また、両エッジは、間をあけた位置にあってもよい。つまりこの位置では、2つのエッジ9、10は、互いに離れて両者の間に開口を形成する。
図1では、絵の右半分に通気部材が閉鎖した位置にあるのが示され、絵の左半分に開口した位置が描かれている。この位置では、空気流Fは衣服を通って流れることができ、これを
図3に概略的に示している。
【0024】
通気部材3の開閉、すなわち2つのエッジ9と10との間の相対的な動きは、作動手段4によって制御される。そのような作動手段4は、衣服1のアームスリーブによって確立される。アームスリーブは、通気部材3の領域で終わってエッジ9とつながる第1の端部5を有する。さらに、アームスリーブは、着用者の手の領域で終わる第2の端部6を有する。
【0025】
着用者が大股で歩く過程では、腕は前方に振れるため、アームスリーブは作動手段4として作用する。なぜなら、アームスリーブは、特に
図4に示したように、着用者の手につながっているからである。ここで、アームスリーブは第2の端部6の領域に3つの開口7’、7’’および7’’’を有することが見てわかる。着用者の親指8は、開口のうちの1つを通って伸びることができ、
図4に描いた実施形態では、親指8は3つのうちの第1の開口7’を通って伸びている。
【0026】
そのため、腕の前方への動きは、アームスリーブ4の第2の端部6とともに行われる。アームスリーブ4は、張力を伝達する性質のある材料で作製されるため、第2の端部6の動きは第1の端部5に伝達され、第1の端部が今度はエッジ9をエッジ10から引き離して通気部材3を開口する。
【0027】
図4を見ればわかるように、開口7’、7’’、7’’’は、長手方向Lに距離dを開けて並んでいる。これらの距離は約2cmである。つまり、着用者は、最も適切な開口7’、7’’、7’’’を選択し、自分の親指8を対応する開口に通して誘導し、記載した作用を所望のレベルに応じて調整することができる。
【0028】
したがって、作動手段4は、着用者の腕の動きに応じて通気部材3を開閉するように配置される。
【0029】
実施形態では、2つの通気部材3が衣服1の肩胛骨領域で中央平面に左右対称に設けられているのが示されている。もちろん、3つ以上の通気部材3を設けてもよい。
【0030】
衣服1は、少なくともアームスリーブに関しては、長手方向の張力を着用者の手から通気部材へ、さらに具体的にはエッジ9へ正確に伝達できる弾性材料で構成される。有益には、図示したように、手からエッジ9までの織物材料は、エッジ9で直角に終わる、すなわち着用者の手からエッジ9までの織物材料の長手軸は、通気部材3の開口を形成する2つのエッジ9、10のスリット構成(
図1の右手側を参照)に対して直角である。
【0031】
通気部材3は、衣服1の内側で空気の流路(図示せず)に隣接してよい。流路は、衣服1の内側の所望の領域に空気を送ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 衣服
2 セクション
3 通気部材
4 作動手段
5 第1の端部
6 第2の端部
7 開口
7’ 開口
7’’ 開口
7’’’ 開口
8 親指
9 エッジ
10 エッジ
F 空流
d 距離
L 長手方向