特許第6228668号(P6228668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228668
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】プラズマ処理された高分子膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 67/00 20060101AFI20171030BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20171030BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20171030BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B01D67/00 500
   B01D53/22
   B01D71/64
   B01D71/70 500
   B01D69/06
   B01D69/04
   B01D69/08
   B01D63/08
   B01D63/10
   B01D63/06
   B01D63/02
   C08G65/40
   C08J7/00 306
   C08J7/00CEZ
【請求項の数】46
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-526035(P2016-526035)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-500185(P2017-500185A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014070306
(87)【国際公開番号】WO2015095026
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/916,584
(32)【優先日】2013年12月16日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516114031
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オデー イハブ ニザール
(72)【発明者】
【氏名】シャオ レイ
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−526828(JP,A)
【文献】 特開平06−182167(JP,A)
【文献】 特開平06−154541(JP,A)
【文献】 特開2013−136009(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/057492(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0146538(US,A1)
【文献】 米国特許第07410525(US,B1)
【文献】 米国特許第07758751(US,B1)
【文献】 国際公開第2014/137923(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/122247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
C08G 65/40
C08J 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含むポリマーブレンドを含み、第2のポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、ポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマー、または、前記PIMポリマーとは異なる第2のPIMポリマーである、プラズマ処理された高分子膜であって、プラズマ処理におけるプラズマガスが、O2およびCF4含み、O2:CF4=〜1:2の比である、高分子膜。
【請求項2】
固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含むポリマーブレンドを含み、第2のポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、ポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマー、または、前記PIMポリマーとは異なる第2のPIMポリマーである、高分子膜であって、膜表面にプラズマ処理層を有する高分子膜であり、プラズマ処理におけるプラズマガスが、O2およびCF4含み、O2:CF4=〜1:2の比である、高分子膜。
【請求項3】
PIMポリマーがPIM-1である、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項4】
第2のポリマーがPEIポリマーである、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項5】
第2のガスから第1のガスを分離することができるか、またはガスの混合物から第1のガスを分離することができる、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項6】
第1のガスが窒素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスが窒素である、請求項5記載の高分子膜。
【請求項7】
第1のガスが窒素でありガスの混合物が窒素およびメタンを含むか、または第1のガスが水素でありガスの混合物が水素および窒素を含むか、または第1のガスが水素でありガスの混合物が水素およびメタンを含む、請求項5記載の高分子膜。
【請求項8】
25℃の温度および2気圧のフィード圧でRobesonの上限トレードオフ曲線を超える、メタンと比べた窒素についての選択性、窒素と比べた水素についての選択性、またはメタンと比べた水素についての選択性を有する、請求項6記載の高分子膜。
【請求項9】
80〜95%w/wのPIM-1と5〜20%w/wのPEIポリマーとを含む、請求項3記載の高分子膜。
【請求項10】
反応種を含むプラズマガスで30秒間〜30分間、30秒間〜10分間、1〜5分間、または2〜4分間プラズマ処理された、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項11】
15℃〜80℃または約50℃の温度でプラズマ処理された、請求項10記載の高分子膜。
【請求項12】
プラズマ処理におけるプラズマガスが、さらにN2、NH3CCl4、C2F4、C2F6、C3F6、C4F8、Cl2、H2、He、Ar、CO、CO2、CH4、C2H6、C3H8、またはこれらの任意の混合物を含、請求項1〜11のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項13】
平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、または中空糸膜である、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項14】
5〜95重量%のPIMポリマーと、95〜5重量%の第2のポリマーとを含む、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項15】
45〜95重量%のPIMポリマーと、55〜5重量%の第2のポリマーとを含む、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項16】
ブレンドが、少なくとも2つまたは少なくとも3つの異なるポリマーを含む、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項17】
共有結合性有機構造体(COF)添加剤、カーボンナノチューブ(CNT)添加剤、ヒュームドシリカ(FS)、二酸化チタン(TiO2)、またはグラフェンをさらに含む、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項18】
PIMポリマーが下記式
の繰り返し単位を有する、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項19】
PEIポリマーが、UltemまたはExtemである、請求項1または2記載の高分子膜。
【請求項20】
成分の混合物から少なくとも1つの成分を分離するための方法であって、
少なくとも第2の成分が保持物の形態で請求項1または2記載の高分子膜の第1の面上に保持されかつ少なくとも第1の成分が透過物の形態で第2の面へ向けて膜を透過するように、第1の面に成分の混合物を接触させる工程
を含む、方法。
【請求項21】
第1の成分が第1のガスであり、第2の成分が第2のガスである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第1のガスが窒素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスが窒素である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
保持物および/または透過物が精製工程に供される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
混合物を膜に供給する圧力が、20〜65℃の範囲の温度で、2〜20気圧である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
高分子膜の表面をプラズマ処理する方法であって、
(a)第1の固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含むポリマーブレンドを含む高分子膜を得る工程であって、第2のポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、ポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマー、または、前記PIMポリマーとは異なる第2のPIMポリマーである、工程;および
(b)該高分子膜の表面の少なくとも一部を、反応種を含むプラズマに供する工程
を含み、プラズマ処理におけるプラズマガスが、O2およびCF4含み、O2:CF4=〜1:2の比である、方法。
【請求項26】
プラズマが、グロー放電、コロナ放電、アーク放電、タウンゼント放電、誘電体バリア放電、中空陰極放電、高周波(RF)放電、マイクロ波放電、または電子ビームによって生成される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
プラズマが、RF放電によって生成される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
10W〜700W、50W〜700W、または50Wを超えるRF電力が、前記反応種を製造するためにプラズマガスに印加される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
高分子膜の表面の少なくとも一部が、30秒間〜30分間、30秒間〜10分間、1〜5分間、または2〜4分間プラズマ処理される、請求項25記載の方法。
【請求項30】
高分子膜の表面の少なくとも一部が、15℃〜80℃または約50℃の温度でプラズマ処理される、請求項25記載の方法。
【請求項31】
工程(a)および(b)が、13.3パスカル〜66.6パスカルの圧力で実施される、請求項25記載の方法。
【請求項32】
プラズマガスが、0.01〜100cm3/分の流量で提供される、請求項25記載の方法。
【請求項33】
プラズマガスが、さらに、N2、NH3CCl4、C2F4、C2F6、C3F6、C4F8、Cl2、H2、He、Ar、CO、CO2、CH4、C2H6、C3H8、またはこれらの任意の混合物を含む、請求項25〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
O2が0cm3/分を超え40cm3/分以下の流量で提供され、CF4が30〜100cm3/分の流量で提供される、請求項25記載の方法。
【請求項35】
工程(a)および(b)に供されていない類似の高分子膜と比較すると、プラズマ処理された高分子膜のガス分離性能が向上している、請求項25記載の方法。
【請求項36】
PIMポリマーがPIM-1である、請求項25記載の方法。
【請求項37】
第2のポリマーがPEIポリマーである、請求項25記載の方法。
【請求項38】
工程(a)からの高分子膜が、
(i)固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含む混合物を得ること;ならびに
(ii)該混合物を基材上に付着させること、および該混合物を乾燥させて膜を形成すること
によって調製される、請求項25記載の方法。
【請求項39】
混合物が液体形態であり、第1のポリマーおよび第2のポリマーが該混合物内で可溶化されている、請求項38記載の方法。
【請求項40】
混合物が、ジクロロメタンまたはクロロホルムを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
第1および第2のポリマーが、膜において均質にブレンドされている、請求項38記載の方法。
【請求項42】
乾燥が、真空乾燥または熱乾燥またはこれらの両方を含む、請求項38記載の方法。
【請求項43】
請求項1または2記載の高分子膜を含む、ガス分離装置。
【請求項44】
供給物質を受け入れるように構成された注入口と、保持物を排出するように構成された第1の吐出口と、透過物を排出するように構成された第2の吐出口とをさらに含む、請求項43記載のガス分離装置。
【請求項45】
注入口を通して供給物質を、第1の吐出口を通して保持物を、および第2の吐出口を通して透過物を押し進めるように加圧されるように構成された、請求項44記載のガス分離装置。
【請求項46】
平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、または中空糸膜を用いるために構成された、請求項43記載のガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年12月16日に出願の「PLASMA-TREATED POLYMERIC MEMBRANES」と題した米国仮特許出願第61/916,584号の恩典を主張する。参照した特許出願の内容は、参照により本願に組み入れられる。
【0002】
A. 発明の分野
本発明は、固有微多孔性ポリマー(PIM)とポリエーテルイミド(PEI)ポリマーなどの第2のポリマーとのポリマーブレンドを有する、プラズマ処理された高分子膜に関する。該膜は、ガス、蒸気、および液体分離用途に向けた改善された透過性および選択性パラメータを有する。特定の態様では、プラズマ処理された膜は、窒素/メタン、水素/メタンおよび水素/窒素の分離用途に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
B. 関連技術の説明
膜は、液体、蒸気またはガスから1種または複数種の物質を分離する能力を有する構造物である。これは、ある物質を通過させる(すなわち、透過物または透過物流)一方で、他の物質が通過するのを妨害する(すなわち、保持物または保持物流)ことによって、選択的バリアのように作用する。この分離特性は、物質を互いから分離することが望まれる場合(例えば、空気からの窒素または酸素の除去、窒素およびメタンのようなガスからの水素の分離、アンモニア工場の生成物流からの水素の回収、石油精製プロセスにおける水素の回収、バイオガスの他の成分からのメタンの分離、医療または冶金目的のための空気の酸素富化、燃料タンクの爆発を防止するように設計した発火防止装置における空槽部またはヘッドスペースの窒素富化、天然ガスおよび他のガスからの水蒸気の除去、天然ガスからの二酸化炭素の除去、天然ガスからのH2Sの除去、排気流からの揮発性有機液(VOL)の除去、空気の乾燥または脱湿など)に、実験室および工場環境の両方で広く適用可能である。
【0004】
膜の例は、ポリマーから作製されたものなどの高分子膜、液膜(例えば、乳化型液膜、固定化(支持化)液膜、溶融塩など)、および、アルミナ、二酸化チタン、ジルコニア酸化物、ガラス状物質などの無機物質から作製されたセラミック膜を含む。
【0005】
ガス分離用途向けには、選択される膜は典型的には高分子膜である。しかしながら、高分子膜が直面する問題の1つに、Robesonの上限曲線によって図示されるような、透過性と選択性との周知のトレードオフがある(L. M. Robeson, Correlation of separation factor versus permeability for polymeric membranes, J. Membr. Sci., 62(1991)165(非特許文献1)を参照されたい)。特に、例えば一方のガスと比べた他方のガスに対する選択性には上限があり、膜透過性の増加とともに選択性が線形に低下する。しかしながら、高透過性および高選択性はいずれも望まれる特質である。透過性がより高いということは、所与の容量のガスを処理するために必要とされる膜面積が少ないということと同じである。これは、膜ユニットのコスト削減につながる。選択性がより高いと、より純度の高いガス生成物を製造するプロセスが得られ得る。
【0006】
産業界で現在用いられている高分子膜の大半は、所与のRobesonの上限トレードオフ曲線を上回る性能がない。すなわち、そのような膜の大半は、透過性対選択性トレードオフ限界を超えておらず、それにより、使用の効率が劣りかつコストがより高くなっている。その結果、所与のガスに関して所望されるガス分離の程度または純度を得るためにさらなる加工工程が必要になる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】L. M. Robeson, Correlation of separation factor versus permeability for polymeric membranes, J. Membr. Sci., 62(1991)165
【発明の概要】
【0008】
現在利用可能な膜の欠点の解決策が今般発見された。この解決策は、少なくとも固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとのポリマーブレンドを有する高分子膜の選択性が、膜をプラズマ処理に供することによって劇的に改善し得るという驚くべき発見に基づいている。例を挙げると、本発明の膜は、Robesonの上限トレードオフ曲線を超える、メタンと比べた窒素についての選択性を示す。理論に拘束されるものではないが、プラズマ処理に供されていない類似の膜と比較して膜が特定の物質(例えば、CH4からN2、またはCH4からH2、またはN2からH2)についての改善された選択性を示すように、プラズマ処理により膜表面の最上層からの数百オングストロームまでが改質されていると考えられる。
【0009】
本発明の1つの特定の事例では、固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを有するポリマーブレンドを含む、プラズマ処理された高分子膜が開示される。PIMポリマーはPIM-1でありうる。第2のポリマーは、別のPIMポリマー(例えば、2つの異なるPIMポリマーのポリマーブレンド)、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、またはポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマーから選択されうる。特定の局面では、第1のポリマーはPIM(例えば、PIM-1)であり、第2のポリマーはPEIポリマー(例えば、Ultem(登録商標)、Extem(登録商標)、またはこれらの誘導体)である。ポリマーは、膜全体にわたって均質にブレンドされうる。第1および第2のポリマーに加えて、膜マトリクスは、少なくとも第3、第4、第5などのポリマーを含みうる。あるいは、膜は、第2のポリマーなしでPIMポリマーを含んでもよい(例えば、非ポリマーブレンド)。ブレンドは、前記クラスのポリマーの少なくとも1、2、3または全4種類を含みうる。さらに、ブレンドは、ブレンド内に少なくとも2つの異なるタイプのPIMポリマーが存在するように(例えば、PIM-1およびPIM-7、またはPIMおよびPIM-Pi)、単一のクラスまたは種のポリマー(例えば、PIMポリマー)由来であってもよく;あるいは、ブレンド内に少なくとも2つの異なるタイプのPEIポリマーが存在するように(例えば、SABIC Innovative Plastics Holding BVから市販されているUltem(登録商標)およびExtem(登録商標)、またはUltem(登録商標)およびUltem(登録商標)1010)、(PEI)ポリマー由来であってもよく;あるいは、ブレンド内に少なくとも2つの異なるタイプのPIポリマーが存在するように、PIポリマー由来であってもよく、あるいは、ブレンド内に2つの異なるタイプのPEI-Siポリマーが存在するように、PEI-Siポリマー由来であってもよい。特定の事例では、ブレンドは、異なるクラス由来のポリマーを含みうる(例えば、PIMポリマーとPEIポリマー、PIMポリマーとPIポリマー、PIMポリマーとPEI-Siポリマー、PEIポリマーとPIポリマー、PEIポリマーとPEI-Siポリマー、またはPIポリマーとPEI-Siポリマー)。1つの特定の態様では、ブレンドは、PIM-1などの(PIM)とPEIポリマー(例えば、Ultem(登録商標)およびExtem(登録商標)、またはUltem(登録商標)およびUltem(登録商標)1010)であり得、高分子膜は、第1のガスを第2のガス(ここで両ガスは混合物内に含まれている)から分離できるように設計されうる。好ましい局面では、高分子膜はPIMポリマーとPEIポリマーとを含み得、メタンから窒素、メタンから水素、または窒素から水素を分離することが可能でありうる。そのような高分子膜は、25℃の温度および2気圧のフィード圧でのRobesonの上限トレードオフ曲線を超える、メタンと比べた窒素についての選択性を有し得る。高分子膜(例えば、膜の表面の一部または表面全体)は、反応種を含むプラズマで30秒間〜30分間、30秒間〜10分間、1〜5分間、または2〜4分間プラズマ処理され得る。プラズマ処理の温度は、15℃〜80℃または約50℃でありうる。プラズマガスは、O2、N2、NH3、CF4、CCl4、C2F4、C2F6、C3F6、C4F8、Cl2、H2、He、Ar、CO、CO2、CH4、C2H6、C3H8、またはこれらの任意の混合物を含みうる。特定の態様では、反応ガスは、O2およびCF4を最大1:2の比で含みうる。いくつかの局面では、膜におけるポリマーの量は、膜が5〜95重量%のPIMポリマーと95〜5重量%の第2のポリマーとを含むか、またはその中の任意の範囲を含む(例えば、膜は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または95重量%の第1または第2のポリマーを含みうる)ような量でありうる。さらに特定の局面では、膜が80〜95%w/wのPIMポリマー(例えば、PIM-1)と5〜20%w/wの第2のポリマー(例えば、PEIポリマー)とを含むような範囲の量でありうる。膜は、平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、または中空糸膜でありうる。いくつかの事例では、膜は、均一な密度を有し得、対称膜、非対称膜、複合膜、または単層膜でありうる。膜は、添加剤(例えば、共有結合性有機構造体(COF)添加剤、金属−有機構造体(MOF)添加剤、カーボンナノチューブ(CNT)添加剤、ヒュームドシリカ(FS)、二酸化チタン(TiO2)、またはグラフェン)も含みうる。
【0010】
この明細書の全体にわたって開示する高分子膜を用いるプロセスも開示される。1つの事例では、2つの物質、ガス、液体、化合物などを互いから分離するために該プロセスを用いうる。このようなプロセスは、少なくとも第1の物質が保持物の形態で膜の第1の面上に保持されかつ少なくとも第2のガスが透過物の形態で第2の面へ向けて該膜を透過するように、分離すべき物質を有する混合物または組成物を第1の面に接触させる工程を含みうる。膜への混合物の供給圧すなわち混合物を膜に供給する圧力は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20気圧以上であるか、または1〜20気圧、2〜15気圧、もしくは2〜10気圧の範囲でありうる。さらに、分離工程の際の温度は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、もしくは65℃以上であるか、または20〜65℃もしくは25〜65℃もしくは20〜30℃の範囲でありうる。プロセスは、構成物または膜から保持物および/または透過物のいずれかまたは両方を除去することまたは単離することをさらに含みうる。保持物および/または透過物は、さらなる精製工程など(例えば、カラムクロマトグラフィー、追加の膜分離工程など)のさらなる加工工程に供され得る。特定の事例では、プロセスは、混合物からN2、H2、CH4、CO2、C2H4、C2H6、C3H6、および/またはC3H8の少なくとも1つを除去することを目的とし得る。好ましい局面では、膜は、少なくともN2およびCH4を含むガスの混合物からN2を分離するために用いうる。他の好ましい局面では、膜は、少なくともH2およびCH4を含むガスの混合物からH2を分離するために用いうるか、または少なくともH2およびN2を含むガスの混合物からH2を分離するために用いうる。本発明の膜を用いうるプロセスの例は、ガス分離(GS)プロセス、蒸気透過(VP)プロセス、浸透気化(PV)プロセス、膜蒸留(MD)プロセス、膜接触器(MC)プロセス、および担体媒介プロセス、吸着剤PSA(圧力スイング吸着)などを含みうる。さらに、標的とした液体、蒸気、またはガス物質をさらに精製するかまたは単離するために、同一または異なる本発明の膜を少なくとも2、3、4、または5つ以上互いに直列にして用いうることが考えられる。同様に、本発明の膜は、標的とした物質を精製するかまたは単離するために他の現在公知の膜と直列にして用いうる。
【0011】
別の局面では、例えば、少なくとも固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとのポリマーブレンドを有する高分子膜の表面の少なくとも一部を処理することによる、本発明の高分子膜を作製する方法が開示され、ここで該処理は反応種を含むプラズマに該表面を供することを含む。上記および本明細書全体にわたって述べるように、第2のポリマーは、第2のPIMポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、またはポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマーでありうる。特定の局面では、プラズマ処理で用いられるプラズマは、グロー放電、コロナ放電、アーク放電、タウンゼント放電、誘電体バリア放電、中空陰極放電、高周波(RF)放電、マイクロ波放電、または電子ビームによって生成されうる。特定の局面では、プラズマはRF放電によって生成され、ここで、10W〜700W、50W〜700W、300W〜700W、または50W以上のRF電力がプラズマガスに印加されて、反応種を製造する。高分子膜の表面は、30秒間〜30分間、30秒間〜10分間、1〜5分間、または2〜4分間プラズマ処理されうる。プラズマ処理は、15℃〜80℃の範囲の温度または約50℃で実施されうる。プラズマ処理は、0.1トル〜0.5トルの圧力で実施されうる。プラズマガスは、0.01〜100cm3/分の流量で提供されうる。特定の局面では、プラズマガスは、O2、N2、NH3、CF4、CCl4、C2F4、C2F6、C3F6、C4F8、Cl2、H2、He、Ar、CO、CO2、CH4、C2H6、C3H8、またはこれらの任意の混合物を含みうる。好ましい局面では、反応ガスはO2およびCF4を含み得、ガスの比は最大1:2でありうる。反応ガスがO2とCF4との混合物である事例では、O2は0〜40cm3/分の流量で提供され得、CF4は30〜100cm3/分の流量で提供されうる。このプラズマ処理は、プラズマ処理に供されていない類似の高分子膜と比較して向上した、プラズマ処理された高分子膜のガス分離性能をもたらし得る。方法は、少なくとも上述のPIMポリマーと第2のポリマーとを含む混合物を得ること、基材上に混合物を付着させること、および混合物を乾燥させて膜を形成することによって、高分子膜を作製する工程をさらに含み得る。形成された膜は次いでプラズマ処理され得る。混合物は、第1および第2のポリマーが溶液内に部分的にまたは完全に可溶化したような溶液であるか、または第1および第2のポリマーが混合物中で分散したような分散液でありうる。得られた膜は、膜全体にわたってポリマーが均質にブレンドされたようなものでありうる。混合物の乾燥は、例えば真空乾燥または熱乾燥またはこれらの両方によって実施され得る。
【0012】
本発明の高分子膜のいずれか1つを含むガス分離装置も開示される。ガス分離装置は、供給物質を受け入れるように構成された注入口と、保持物を排出するように構成された第1の吐出口と、透過物を排出するように構成された第2の吐出口とを含みうる。装置は、注入口を通して供給物質を、第1の吐出口を通して保持物を、および第2の吐出口を通して透過物を押し進めるように加圧されるように構成されうる。装置は、本発明の平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、または中空糸膜を収容しかつ利用するように構成されうる。
【0013】
「阻害する」または「低減する」またはこれらの用語のあらゆる変形は、添付の特許請求の範囲または明細書で用いられた場合に、所望の結果を達成するためのあらゆる測定可能な低下または完全な阻害を含む。
【0014】
「効果的な」または「処理する」または「防止する」またはこれらの用語のあらゆる変形は、添付の特許請求の範囲または明細書で用いられた場合に、所望の、予期した、または意図した結果を達成するのに十分であることを意味する。
【0015】
「約」または「およそ」という用語は、当業者には理解されるように、近接していることと規定され、1つの非限定的態様では、該用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると規定される。
【0016】
添付の特許請求の範囲または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて用いられた場合、「a」または「an」という言葉の使用は、「1つの」を意味する場合があるが、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、および「1つ以上の」という意味とも合致する。
【0017】
「含む(comprising)」(ならびに「comprise」および「comprises」などのcomprisingのあらゆる形態)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」などのhavingのあらゆる形態)、「含む(including)」(ならびに「includes」および「include」などのincludingのあらゆる形態)または「含有する(containing)」(ならびに「contains」および「contain」などのcontainingのあらゆる形態)という言葉は、包括的すなわちオープンエンドであり、付加的であり明記されていない要素または方法工程を除外するものではない。
【0018】
本発明の方法、材料、成分、配合物などは、明細書全体にわたって開示される特定の方法工程、材料、成分、配合物など「を含む」、「から本質的になる」、または「からなる」ことができる。移行句「から本質的になる」に関して、1つの非限定的局面では、本発明の膜の基本的かつ新規な特徴は、その透過性および選択性パラメータである。
【0019】
[本発明1001]
固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含むポリマーブレンドを含む、プラズマ処理された高分子膜。
[本発明1002]
PIMポリマーがPIM-1である、本発明1001の高分子膜。
[本発明1003]
第2のポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、ポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマー、または、本発明1001のPIMポリマーとは異なる第2のPIMポリマーである、本発明1001または1002の高分子膜。
[本発明1004]
第2のポリマーがPEIポリマーである、本発明1003の高分子膜。
[本発明1005]
第2のガスから第1のガスを分離することができるか、またはガスの混合物から第1のガスを分離することができる、本発明1001〜1004のいずれかの高分子膜。
[本発明1006]
第1のガスが窒素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスが窒素である、本発明1005の高分子膜。
[本発明1007]
第1のガスが窒素でありガスの混合物が窒素およびメタンを含むか、または第1のガスが水素でありガスの混合物が水素および窒素を含むか、または第1のガスが水素でありガスの混合物が水素およびメタンを含む、本発明1005の高分子膜。
[本発明1008]
25℃の温度および2気圧のフィード圧でRobesonの上限トレードオフ曲線を超える、メタンと比べた窒素についての選択性、窒素と比べた水素についての選択性、またはメタンと比べた水素についての選択性を有する、本発明1006または1007の高分子膜。
[本発明1009]
80〜95%w/wのPIM-1と5〜20%w/wのPEIポリマーとを含む、本発明1002または1004〜1008のいずれかの高分子膜。
[本発明1010]
反応種を含むプラズマガスで30秒間〜30分間、30秒間〜10分間、1〜5分間、または2〜4分間プラズマ処理された、本発明1001〜1009のいずれかの高分子膜。
[本発明1011]
15℃〜80℃または約50℃の温度でプラズマ処理された、本発明1010の高分子膜。
[本発明1012]
反応種が、O2、N2、NH3、CF4、CCl4、C2F4、C2F6、C3F6、C4F8、Cl2、H2、He、Ar、CO、CO2、CH4、C2H6、C3H8、またはこれらの任意の混合物を含むプラズマガスから製造された、本発明1010または1011の高分子膜。
[本発明1013]
反応ガスが、O2およびCF4を最大1:2の比で含む、本発明1012の高分子膜。
[本発明1014]
平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、または中空糸膜である、本発明1001〜1013のいずれかの高分子膜。
[本発明1015]
5〜95重量%のPIMポリマーと、95〜5重量%の第2のポリマーとを含む、本発明1001〜1008または1010〜1014のいずれかの高分子膜。
[本発明1016]
ブレンドが、少なくとも2つまたは少なくとも3つの異なるポリマーを含む、本発明1001〜1015のいずれかの高分子膜。
[本発明1017]
共有結合性有機構造体(COF)添加剤、カーボンナノチューブ(CNT)添加剤、ヒュームドシリカ(FS)、二酸化チタン(TiO2)、またはグラフェンをさらに含む、本発明1001〜1016のいずれかの高分子膜。
[本発明1018]
PIMポリマーが下記式
の繰り返し単位を有する、本発明1001〜1017のいずれかの高分子膜。
[本発明1019]
PEIポリマーが、UltemまたはExtemである、本発明1001〜1018のいずれかの高分子膜。
[本発明1020]
成分の混合物から少なくとも1つの成分を分離するための方法であって、
少なくとも第1の成分が保持物の形態で本発明1001〜1019のいずれかの高分子膜の第1の面上に保持されかつ少なくとも第2の成分が透過物の形態で第2の面へ向けて該膜を透過するように、第1の面に成分の混合物を接触させる工程
を含む、方法。
[本発明1021]
第1の成分が第1のガスであり、第2の成分が第2のガスである、本発明1020の方法。
[本発明1022]
第1のガスが窒素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスがメタンであるか、または第1のガスが水素であり第2のガスが窒素である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
保持物および/または透過物が精製工程に供される、本発明1020〜1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
混合物を膜に供給する圧力が、20〜65℃の範囲の温度で、2〜20気圧である、本発明1020〜1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
高分子膜の表面をプラズマ処理する方法であって、
(a)固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含むポリマーブレンドを含む高分子膜を得る工程;および
(b)該高分子膜の表面の少なくとも一部を、反応種を含むプラズマに供する工程
を含む、方法。
[本発明1026]
プラズマが、グロー放電、コロナ放電、アーク放電、タウンゼント放電、誘電体バリア放電、中空陰極放電、高周波(RF)放電、マイクロ波放電、または電子ビームによって生成される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
プラズマが、RF放電によって生成される、本発明1026の方法。
[本発明1028]
10W〜700W、50W〜700W、または50Wを超えるRF電力が、前記反応種を製造するためにプラズマガスに印加される、本発明1027の方法。
[本発明1029]
高分子膜の表面の少なくとも一部が、30秒間〜30分間、30秒間〜10分間、1〜5分間、または2〜4分間プラズマ処理される、本発明1025〜1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
高分子膜の表面の少なくとも一部が、15℃〜80℃または約50℃の温度でプラズマ処理される、本発明1025〜1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
工程(a)および(b)が、0.1トル〜0.5トルの圧力で実施される、本発明1025〜1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
プラズマガスが、0.01〜100cm3/分の流量で提供される、本発明1025〜1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
プラズマガスが、O2、N2、NH3、CF4、CCl4、C2F4、C2F6、C3F6、C4F8、Cl2、H2、He、Ar、CO、CO2、CH4、C2H6、C3H8、またはこれらの任意の混合物を含む、本発明1025〜1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
プラズマガスが、O2およびCF4を最大1:2の比で含む、本発明1033の方法。
[本発明1035]
O2が0〜40cm3/分の流量で提供され、CF4が30〜100cm3/分の流量で提供される、本発明1034の方法。
[本発明1036]
工程(a)および(b)に供されていない類似の高分子膜と比較すると、プラズマ処理された高分子膜のガス分離性能が向上している、本発明1025〜1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
PIMポリマーがPIM-1である、本発明1025〜1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
第2のポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリイミド(PI)ポリマー、ポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマー、または本発明1025のPIMポリマーとは異なる第2のPIMポリマーである、本発明1025〜1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
第2のポリマーがPEIポリマーである、本発明1038の方法。
[本発明1040]
工程(a)からの高分子膜が、
(i)固有微多孔性ポリマー(PIM)と第2のポリマーとを含む混合物を得ること;ならびに
(ii)該混合物を基材上に付着させること、および該混合物を乾燥させて膜を形成すること
によって調製される、本発明1025〜1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
混合物が液体形態であり、第1のポリマーおよび第2のポリマーが該混合物内で可溶化されている、本発明1040の方法。
[本発明1042]
溶媒が、ジクロロメタンまたはクロロホルムである、本発明1041の方法。
[本発明1043]
第1および第2のポリマーが、膜において均質にブレンドされている、本発明1040〜1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
乾燥が、真空乾燥または熱乾燥または両方を含む、本発明1040〜1043のいずれかの方法。
[本発明1045]
本発明1001〜1019のいずれかの高分子膜を含む、ガス分離装置。
[本発明1046]
供給物質を受け入れるように構成された注入口と、保持物を排出するように構成された第1の吐出口と、透過物を排出するように構成された第2の吐出口とをさらに含む、本発明1045のガス分離装置。
[本発明1047]
注入口を通して供給物質を、第1の吐出口を通して保持物を、および第2の吐出口を通して透過物を押し進めるように加圧されるように構成された、本発明1046のガス分離装置。
[本発明1048]
平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、または中空糸膜を用いるために構成された、本発明1045または1046のガス分離装置。
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付の図面、詳細な説明、および実施例から明らかになるであろう。しかしながら、添付の図面、詳細な説明、および実施例は、本発明の具体的な態様を表す一方で、単なる例示であり、限定することを意味していないと理解されるべきである。加えて、本発明の趣旨および範囲内での変更および修正は、この詳細な説明から当業者には明らかになるであろうと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】PIM-1の核磁気共鳴(NMR)スペクトル。
図2】マスキング方法および下側のセルフランジの断面。
図3】透過装置のフロースキーム。
図4】本発明の様々な膜のN2/CH4に関するガス分離性能。
図5】本発明の様々な膜のH2/CH4に関するガス分離性能。
図6】本発明の様々な膜のH2/N2に関するガス分離性能。
図7】本発明の様々な膜のH2/CO2に関するガス分離性能。
図8】本発明の様々な膜のCO2/CH4に関するガス分離性能。
図9】本発明の様々な膜のC2H4/C2H6に関するガス分離性能。
図10】本発明の様々な膜のC3H6/C3H8に関するガス分離性能。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
現在の高分子膜物質は、十分な透過性/選択性特性を有していない。これは、分離手法における効率の悪さ、およびそのような手法に付随するコストの高さにつながっている。
【0022】
特定のポリマーのポリマーブレンドを有するプラズマ処理された高分子膜では、今日利用可能な膜に欠如している透過性および選択性パラメータが改善していることが、今般発見された。この発見された膜は、ガス分離(GS)プロセス、蒸気透過(VP)プロセス、浸透気化(PV)プロセス、膜蒸留(MD)プロセス、膜接触器(MC)プロセス、および担体媒介プロセスなどの多種多様なプロセスにわたって用いられ得る。特定の事例では、そのような本発明の処理された膜は、プラズマ処理されていない類似の膜と比較して向上した、メタンからの窒素、またはメタンからの水素、または窒素からの水素についての選択性を表すことが示された。
【0023】
本発明のこれらおよび他の非限定的態様を次のサブセクションにおいて述べる。
【0024】
A. ポリマー
本発明の文脈において用いられうるポリマーの非限定例は、固有微多孔性ポリマー(PIM)、ポリエーテルイミド(PEI)ポリマー、ポリエーテルイミド−シロキサン(PEI-Si)ポリマー、およびポリイミド(PI)ポリマーを含む。上記のように、構成物および膜は、これらのポリマーのいずれか1つのブレンド(単一のクラスのポリマーのブレンドおよび異なるクラスのポリマーのブレンドを含む)を含みうる。
【0025】
1. 固有微多孔性ポリマー
PIMは、スピロ中心または高度な立体障害を有する場合がある、ねじれの部位と組み合わさったジベンゾジオキサン系ハシゴ型構造の繰り返し単位を有することを典型的には特徴とする。PIMの構造は、鎖の緻密なパッキングを妨げ、非常に大きい接触可能な表面積および高いガス透過性をもたらす。実施例で用いたPIM-1の構造を下に提供する:
。該ポリマーの分子量は、該ポリマーの長さを増やすかまたは減らすことによって、所望により変動させうる。PIM-1は、次のように合成されうる:
。本発明の文脈において用いうるさらなるPIMは、次の繰り返し単位を有する:
。いくつかの事例では、PIMポリマーは、次の反応スキームを用いて調製されうる:
。上の構造は、所望によりさらに置換されうる。
【0026】
本発明のブレンド高分子膜と共に用いうるPIMポリマーのさらなる一団は、参照により組み入れられるGhanem et. al., High-Performance Membranes from Polyimides with Intrinsic Microporosity, Adv. Mater. 2008, 20, 2766-2771に開示されたPIMとPIとがセットになったポリマーを含む。これらのPIM-PIポリマーの構造は次のとおりである:
【0027】
さらなるPIM、ならびにそのようなPIMを作製するおよび用いる方法の例は、いずれも参照により組み入れられる米国特許第7,758,751号および米国公報第2012/0264589号に提供されている。
【0028】
2. ポリエーテルイミドおよびポリエーテルイミド−シロキサンポリマー
本発明の文脈において用いうるポリエーテルイミドポリマーは、一般的に次の単量体繰り返し構造と一致する:
式中、TおよびR1は変動して、多種多様な使用可能なPEIポリマーを形成し得る。R1は、置換または非置換二価有機基、例えば:(a)炭素原子を6〜24個有する芳香族炭化水素基およびそのハロゲン化誘導体;(b)炭素原子を2〜20個有する直鎖または分岐鎖アルキレン基;(c)炭素原子を3〜24個有するシクロアルキレン基、または(d)下に規定する式(2)の二価の基を含みうる。Tは、-O-または式-O-Z-O-の基であり得、式中-O-または-O-Z-O-基の二価の結合は、3,3'、3,4'、4,3'、または4,4'位にある。Zは、置換または非置換二価有機基、例えば:(a)炭素原子を約6〜約20個有する芳香族炭化水素基およびそのハロゲン化誘導体;(b)炭素原子を約2〜約20個有する直鎖または分岐鎖アルキレン基;(c)炭素原子を約3〜約20個有するシクロアルキレン基、または(d)一般式(2)の二価の基:
を含み得、式中、Qは、-O-、-S-、-C(O)-、-SO2-、-SO-、-CyH2y-(yは1〜8の整数である)、およびパーフルオロアルキレン基を含むそのフッ素化誘導体からなる群より選択される二価の部分でありうる。Zは、式(3)の例示的な二価の基を含んでもよい
。特定の事例では、R1は、参照により本願に組み入れられる米国特許第8,034,857号に規定するものでありうる。
【0029】
用いうる(かつ実施例で用いられた)具体的なPEIの非限定例は、SABIC Innovative Plastics Holding BVから市販されているものを含む(例えば、Ultem(登録商標)およびExtem(登録商標))。様々なグレードのExtem(登録商標)およびUltem(登録商標)がすべて本発明の文脈において有用であると考えられる(例えば、Extem(登録商標)(VH1003)、Extem(登録商標)(XH1005)、およびExtem(登録商標)(XH1015))。
【0030】
ポリエーテルイミドシロキサン(PEI-Si)ポリマーも、本発明の文脈において用いうる。ポリエーテルイミドシロキサンポリマーの例は、参照により組み入れられる米国特許第5,095,060号に記載されている。用いうる具体的なPEI-Siの非限定例は、SABIC Innovative Plastics Holding BVから市販されているものを含む(例えば、Siltem(登録商標))。様々なグレードのSiltem(登録商標)がすべて本発明の文脈において有用であると考えられる(例えば、Siltem(登録商標)(1700)およびSiltem(登録商標)(1500))。
【0031】
3. ポリイミドポリマー
ポリイミド(PI)ポリマーは、イミドモノマーのポリマーである。イミドの一般的なモノマー構造は、次のとおりである:
。イミドのポリマーは、一般的にヘテロ環および直鎖形態という2つの形態のうちの1つをとる。それぞれの構造は次のとおりである:
式中、Rは変動して、多種多様な使用可能なPIポリマーを形成し得る。用いうる具体的なPI(すなわち、6FDA-ズレン)の非限定例は、次の反応スキームに記載されている。
【0032】
本発明の文脈において用いうるさらなるPIポリマーは、参照により組み入れられる米国公報第2012/0276300号に記載されている。例を挙げると、そのようなPIポリマーは、UV架橋性官能基およびペンダントヒドロキシ官能基の両方を含む:ポリ[3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(BTDA-APAF))、ポリ[4,4'−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(ODPA-APAF))、ポリ(3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノ−ビフェニル)(ポリ(BTDA-HAB))、ポリ[3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(DSDA-APAF))、ポリ(3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノ−ビフェニル)(ポリ(DSDA-APAF-HAB))、ポリ[2,2'−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(6FDA-BTDA-APAF))、ポリ[4,4'−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(ODPA-APAF-HAB))、ポリ[3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(BTDA-APAF-HAB))、およびポリ(4,4'−ビスフェノールA二無水物−3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(BPADA-BTDA-APAF))である。より包括的には、PIポリマーは次の式(I)を有し得る:
ここで、ポリマーの長さ、すなわち「n」は、典型的には1より大きいまたは5より大きい、典型的には10〜10,000、または10〜1000、または10〜500であり、
式(I)の-X1-が
であるかまたはこれらの混合物である場合は、式(I)の-X2-は、-X1-と同じであるかまたは
もしくはこれらの混合物より選択され、式(I)の-X3-は
もしくはこれらの混合物より選択され、-R-は
もしくはこれらの混合物である。
【0033】
B. 膜を作製する方法
高分子膜を作製するための多くの公知の方法がある。用いうるそのような方法は、エアキャスト法(すなわち、24〜48時間などの特定の設定時間で、溶媒の蒸発を制御する一連のエアフローダクト下を溶解ポリマー溶液が通過する)、溶媒または浸漬(emersion)キャスト法(すなわち、溶解したポリマーを移動ベルトに散布し、水浴内の液体が溶媒と交換される水浴または液体に通し、これにより細孔を形成させ、生じた膜をさらに乾燥する)、および熱キャスト法(すなわち、熱を用いて所与の溶剤系におけるポリマーの溶解性を高め、加熱された溶液を移動ベルトにキャストし、冷却に供する)を含む。
【0034】
本発明のブレンド高分子膜を作製するための特定の非限定的プロセスを下に提供する:
(1)PIMポリマーおよび第2のポリマーを適切な溶媒(クロロホルムなど)に溶解し、ガラス板に注ぐ。
(2)注いだ物質/ガラス板を穏やかな温度(70℃前後)の真空オーブンに最長で2日間入れて乾燥させる。
(3)乾燥させたら、膜厚を測定する(乾燥すると典型的には厚さが60〜100um)。
(4)乾燥させた膜を次いでプラズマ処理に供する。1つの非限定的局面では、プラズマ処理は、反応種を含むプラズマに高分子膜の表面の少なくとも一部を供することを含みうる。プラズマは、RF電力が10W〜700WであるRF放電に反応ガスを供することによって生成され得る。表面を反応種に供する期間は、15℃〜80℃の温度および0.1トル〜0.5トルの圧力で、30秒間〜30分間でありうる。多種多様な反応ガスを用いうる。特定の局面では、反応ガスは、最大1:2の比のO2とCF4との混合物であり得、ここでO2は0〜40cm3/分の流量で提供され、CF4は30〜100 cm3/分の流量で提供される。
(5)プラズマ処理後、高分子膜は、様々なガスに対して、単一のガスの透過について検査され得る。
【0035】
透過に関して、検査は単一のガス測定に基づくものであり、検査では系は脱気される。膜を次いで所望のガスで3回パージする。最長で8時間のパージに続いて膜が検査される。第2のガスを検査するため、系を再び脱気し、この第2のガスで3回パージする。さらなるガス毎にこのプロセスを繰り返す。透過性の検査は、固定温度(20〜50℃、好ましくは25℃)および圧力(好ましくは2気圧)に設定される。化学物質、電子線、ガンマ線放射などによるさらなる処理を実施してもよい。
【0036】
C. ポリマーおよび添加剤の量
ブレンドに加えるポリマーの量を変動させることができる。例えば、ブレンドにおけるそれぞれのポリマーの量は、膜の5〜95重量%の範囲であり得る。特定の局面では、各ポリマーは、構成物または膜の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または95重量%からの量で膜内に存在し得る。さらに、添加剤、例えば、共有結合性有機構造体(COF)添加剤、金属−有機構造体(MOF)添加剤、カーボンナノチューブ(CNT)添加剤、ヒュームドシリカ(FS)、二酸化チタン(TiO2)、グラフェンなどは、膜の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25重量%以上からの範囲の量で加えてもよい。そのような添加剤は、膜の形成に先立ってブレンドに加えられ得る。
【0037】
D. 膜の用途
本発明の膜は、多種多様な商業的用途を有する。例えば、石油化学および化学工業に関しては、He、N2、およびO2などの純粋なまたは濃縮したガスを供給する数多くの石油化学/化学プロセスが存在し、これらは、そのようなガスを精製するかまたは濃縮するために膜を用いる。さらに、化学プロセスの廃棄物流からおよび天然ガス流からのCO2およびH2Sなどのガスの除去、再捕捉、および再使用は、そのようなガスの製造に関する政府の規制を遵守するためや環境的な要因のために非常に重要である。また、オレフィンおよびパラフィンガスの効率的な分離は、石油化学工業において鍵となるものである。そのようなオレフィン/パラフィン混合物は、蒸気分解装置(例えば、エチレン生産)、接触分解装置(例えば、自動車用ガソリン生産)、またはパラフィンの脱水に起因し得る。本発明の膜は、これらや他の用途のそれぞれにおいて用いうる。特定の事例では、膜は、窒素とメタンとを含むガスの混合物から窒素を、または水素とメタンとを含むガスの混合物から水素を、または窒素と水素とを含むガスの混合物から水素を分離するために用いうる。
【0038】
例を挙げると、本発明の膜は、液相または気相中の特定の種の精製、分離または吸着に用いることができる。ガスの対の分離に加えて、膜は、タンパク質または他の熱に不安定な化合物を分離するためにも用いられうる。膜を、反応容器内へガスを運ぶためおよび容器外へ細胞培地を移すために発酵槽およびバイオリアクターにおいて用いてもよい。さらに、膜は、気流もしくは水流から微生物を除去するため、水の浄化、連続発酵/膜浸透気化システムにおけるエタノール生産、および/または気流もしくは水流における微量化合物もしくは金属塩の検出もしくは除去に用いうる。
【0039】
別の事例では、膜は、水性溶出液またはプロセス流体などの水からの有機化合物(例えば、アルコール、フェノール、塩素化炭化水素、ピリジン、ケトン)の除去においてなど、浸透気化による液体混合物の分離に用いうる。一例としては、発酵プロセスによって得られた比較的希薄なエタノール溶液(例えば、エタノール10%未満またはエタノール5%未満またはエタノール5〜10%)におけるエタノール濃度を高めるために、エタノール選択性の膜が用いられうるであろう。本発明の構成物および膜で考えられるさらなる液相分離の例は、浸透気化膜プロセスによるガソリンおよびディーゼル燃料の深度脱硫を含む(例えば、参照により組み入れられる米国特許第7,048,846号を参照されたい)。硫黄含有分子についての選択性を有する本発明の構成物および膜は、流動接触分解(FCC)および他のナフサ炭化水素流から硫黄含有分子を選択的に除去するために用いることができる。さらに、本発明の構成物および膜で分離され得る有機化合物の混合物は、酢酸エチル−エタノール、ジエチルエーテル−エタノール、酢酸−エタノール、ベンゼン−エタノール、クロロホルム−エタノール、クロロホルム−メタノール、アセトン−イソプロピルエーテル、アリルアルコール−アリルエーテル、アリルアルコール−シクロヘキサン、ブタノール−酢酸ブチル、ブタノール−1−ブチルエーテル、エタノール−エチルブチルエーテル、酢酸プロピル−プロパノール、イソプロピルエーテル−イソプロパノール、メタノール−エタノール−イソプロパノール、および/または酢酸エチル−エタノール−酢酸を含む。
【0040】
特定の事例では、本発明の膜は、空気清浄、石油化学、精製、天然ガス工業におけるガス分離プロセスに用いうる。そのような分離の例は、化学プロセスの廃棄物流からおよび煙道ガス流からの揮発性有機化合物(トルエン、キシレン、およびアセトンなど)の分離を含む。そのような分離のさらなる例は、天然ガスからのCO2、アンモニアパージガス流におけるN2、CH4、およびArからのH2の分離、精製所におけるH2の回収、プロピレン/プロパン分離などのオレフィン/パラフィン分離、ならびにイソ/ノルマルパラフィン分離を含む。分子の大きさが異なるガスのあらゆる所与の対または群、例えば、窒素および酸素、二酸化炭素およびメタン、水素およびメタンまたは一酸化炭素、ヘリウムおよびメタンは、本明細書に記載のブレンド高分子膜を用いて分離され得る。第3のガスから3種以上のガスを除去してもよい。例えば、本明細書に記載の膜を用いて粗天然ガスから選択的に除去され得るガス成分のいくつかは、二酸化炭素、酸素、窒素、水蒸気、硫化水素、ヘリウム、および他の微量ガスを含む。選択的に保持され得るガス成分のいくつかは、炭化水素ガスを含む。さらなる事例では、選択したガスは膜を通過する(例えば、透過ガスまたは浸透ガスの混合物)が残りのガスは膜を通過しない(例えば、保持ガスまたは保持ガスの混合物)ように、少なくとも2、3、または4つ以上のガスを含むガスの混合物に対して膜を用いてもよい。
【0041】
さらに、本発明の膜は、水から有機分子(例えば、浸透気化により水からエタノールおよび/またはフェノール)を分離するために、ならびに、金属(例えば、水銀(II)イオンおよび放射性セシウム(I)イオン)および他の有機化合物(例えば、水からのベンゼンおよびアトラジン(atrazene))の除去に、用いられ得る。
【0042】
本発明の膜のさらなる使用は、水の除去によるエステル化の収率を向上させるための親水性膜の使用と類似した様式での、特定の生成物の選択的除去による、平衡により制限された反応の収率を向上させるための化学反応器における使用を含む。
【0043】
本発明の膜は、シート、チューブ、螺旋体、または中空糸などのあらゆる都合の良い形態に加工してもよい。膜は、プラズマ処理された選択的薄層と、異なるポリマー物質を含む多孔性支持層とを組み込んだ複合薄膜にも加工され得る。
【0044】
表1は、本発明のいくつかの特定の非限定的なガス分離用途を含む。
【0045】
(表1)
【実施例】
【0046】
本発明を具体的な実施例によってさらに詳細に記載する。次の実施例は説明目的のみに提示され、本発明を何ら限定することを意図していない。当業者であれば、変更または改変しても本質的に同じ結果が得られる種々の重要性が低いパラメータを容易に認識するであろう。
【0047】
実施例1
(PIM-1の合成)
3,3,3',3',−テトラメチル−スピロビシンダン−5,5'6,6'−テトラオール(340mg、1.00mmol)および1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン(200mg、1.00mmol)を無水DMAc(2.7mL)に溶解し、試薬を完全に溶解させるために室温(すなわち、約20〜25℃)で15分間撹拌した。全(Grand)K2CO3(390mg、2.5mmol)を一度に加え、反応系を室温でさらに30分間撹拌した後に150℃まで加熱した。最初の10分間で粘度が上昇し、トルエン(3.0ml)を一度に加え、系を150℃でさらに10分間撹拌した。得られた混合物をメタノール/水=1/1の溶媒に注ぎ入れ、析出物をろ過し熱湯で3回洗浄し、次いでクロロホルムに溶解しメタノール中で析出させた。120℃で12時間真空乾燥させた後に黄色の粉末(450mg、収率97.8%)が得られた。Mn 100,000、Mw 200,000、PDI=2.0。特徴決定:1H NMR (400 MHz, CDC13) 6.85 (s, 2H), 6.48 (s, 2H), 2.30 (s, 2H), 2.20 (s, 2H), 1.39 (d, 12H, J= 22.8Hz)(図1を参照されたい)。
【0048】
実施例2
(膜調製)
PIM-1、Extem(登録商標)、Ultem(登録商標)、3種のPIM-1/Ultem、および1種のPIM-1/Extemの緻密な膜を、溶液キャスト法によって調製した。PIM-1/UltemおよびPIM-1/Extemブレンドの膜について、UltemおよびExtemはいずれもSABIC Innovative Plastics Holding BVから市販されている。UltemおよびExtemをそれぞれCH2Cl2に溶解し4時間撹拌する。続いて、実施例1からのPIM-1をUltemおよびExtemの各溶液に加え一晩撹拌した。それぞれの膜をCH2Cl2において合計2重量%のポリマー濃度でそれぞれ調製した。PIM-1/UltemおよびPIM-1/Extem膜について、ブレンド比は、各ブレンドの膜で90:10重量%であった(下の表2および図4〜10を参照されたい)。溶液を次いで1μm PTFEフィルタによってろ過し、水平にしたガラス板に支持されたステンレスリングに室温(すなわち、約20〜25℃)で移した。3日後に溶媒がほとんど蒸発した後に高分子膜が形成された。得られた膜を80℃で真空下にて少なくとも24時間乾燥させた。膜厚は、電子Mitutoyo 2109F厚さ計(株式会社ミツトヨ、神奈川、日本)によって測定した。厚さ計は、分解能が1ミクロンの非破壊ドロップダウン型であった。膜は、100%の縮尺で走査し(非圧縮のtiff形式)、Scion Image(Scion Corp、メリーランド、米国)ソフトウェアによって解析した。有効面積を手描きツールで右回りおよび左回りの両方で数回スケッチした。記録した厚さは、膜の異なる8点から得た平均値である。キャストした膜の厚みは、約77±5μmであった。
【0049】
製造した膜すべてのプラズマ処理は、Nanoplas(DSB 6000)機器を用いた高周波(RF)放電によって生成したプラズマに基づくものであった。プラズマ処理プロセスの特定のパラメータを下の表2に提供する(すなわち、400W、500W、および600Wのプラズマ電力;3分の処理時間;比が15:40であり流量が65cm3/分のO2/CF4の反応性ガス混合物;0.4トルの圧力)。
【0050】
実施例3
(膜のマスキング)
不透過性アルミニウムテープ202(3M 7940、図2を参照されたい)を用いて膜200をマスキングした。フィルタペーパー(Schleicher & Schuell BioScience GmbH、ドイツ)204を透過セル208のメタルシンター(Tridelta Siperm GmbH、ドイツ)206とマスキングした膜200との間に配置し膜を機械的に防護した。より小さなフィルタペーパー204を膜の有効透過領域210の下方に配置して、高さの違いを相殺しかつ膜を支持した。より幅の広いテープ202をサンドイッチ状の膜/テープの上に載せて供給面から透過面へのガスの漏洩を防止した。エポキシ(Devcon(登録商標)、二液型5分硬化エポキシ)212も、漏洩を防止するためにテープと膜との界面に塗布した。Oリング214で膜モジュールを外部環境から封止した。内部Oリング(上側のセルフランジ)は用いなかった。
【0051】
実施例4
(透過性および選択性データ)
ガス運搬特性を、可変圧力(定容)法を用いて測定した。超高純度ガス(99.99%)をすべての実験に用いた。装置全体を脱気する前に膜を透過セル内に載置した。透過ガスを次いで上流側へ導入し、圧力変換器を用いて下流側の透過物圧力をモニタリングした。公知の定常状態透過速度、膜を隔てた圧力差、浸透可能面積および膜厚から、透過係数を決定した(純ガス試験)。透過係数P[cm3(STP)・cm/cm2・s・cmHg]は、次の方程式によって決定される:
式中、Aは膜面積(cm2)であり、
Lは、膜厚(cm)であり、
pは、上流と下流との圧力差(MPa)であり、
Vは、下流の体積(cm3)であり、
Rは、一般ガス定数(6236.56cm3・cmHg/mol・K)であり、
Tは、セル温度(℃)であり、かつ
dp/dtは、透過速度である。
【0052】
高分子膜のガス透過性は、単位をバーラー(Barrer)とした平均透過係数を特徴とする。1バーラー=10-10cm3(STP)・cm/cm2・s・cmHg。ガス透過係数は、次の方程式によって表される溶液拡散機構に基づいて説明することができる:
P=D×S
式中、D(cm2/s)は、拡散係数であり:かつ
S(cm3(STP)/cm3・cmHg)は、溶解度係数である。
拡散係数は、次の方程式によって表され、タイムラグ法によって算出された:
式中、θ(秒)はタイムラグである。PおよびDが算出されたら、見かけの溶解度係数S(cm3(STP)/cm3・cmHg)を次の式によって算出してもよい:
。ガスA〜ガスBに関する緻密膜の理想選択性は、次のように規定される:
図3は、透過性および選択性データを得た際に用いた透過装置のフロースキームを提供する。
【0053】
上の手法を用いて様々な膜から得られた透過性および選択性データを表2に提供する。図4〜10は、本発明のプラズマ処理された膜が、様々なガス混合物についてポリマー上限を超えるガス分離性能を示すことを裏付けるいくつかのデータ点を提供する。過去の文献の高分子膜透過データは上限線を超えていない(上限線より下のドット)。
【0054】
(表2)透過性データおよび理想選択性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10