(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の撥水性織編物は、特定の構成を有する混繊交絡糸を含み、表面に撥水剤が付着しており、かつJIS L 1096:2010に従って測定された伸長率(定荷重法、荷重14.7N)が、織物の形態を有する場合は3%以下、編物の形態を有する場合は120%以下であることを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
[混繊交絡糸]
本発明で使用される混繊交絡糸は、単糸繊度が0.2〜0.9dtex、かつ総繊度が30〜100dtexのポリエステル繊維Aと、単糸繊度が1.0〜5.0dtex、かつ総繊度が30〜100dtexのポリエステル繊維Bとから構成される。この混繊交絡糸は、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)が20/80〜80/20の範囲にあり、当該混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aによる突出部(凸部)が形成されている。
【0012】
ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの単糸繊度を、それぞれ上述の特定範囲とすることにより、両者を十分に絡めさせることができる。この絡まりにより、混繊交絡糸の表面部分において、相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されやすくなり、本発明の撥水性織編物表面においては、所謂ロータス効果が発現する。なお、本発明において、ポリエステル繊維Aによる突出部とは、混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aのループ、たるみなどによって、ポリエステル繊維Aが外側に突出した部分をいう。
【0013】
混繊交絡糸の突出部の上に水滴がのった場合、水滴が混繊交絡糸の内側に移行しにくいために、本発明の撥水性織編物においては、突出部による所謂ロータス効果が発現し、優れた撥水性能を発揮させることが可能となる。また、後述の通り、この混繊交絡糸は特定の単糸繊度を有する2種類のポリエステル繊維A、Bを特定の質量比で混繊したものであるため、表面部分に相対的に細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合った部分が形成されている。そして、この細い繊維が絡み合った部分は、空気を保持しやすい層(空気保持層)を形成する。突出部はポリエステル繊維Aが絡み合ったこの部分から突出している。すなわち、ポリエステル繊維Aの突出部の内側(混繊交絡糸の側)には、細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合って形成された上記の空気保持層が形成されているため、内側に水分が移行しにくくなっている。なお混繊交絡糸において、空気保持層のさらに内側では、ポリエステル繊維Aと、ポリエステル繊維Bとが絡み合っている。
【0014】
さらに、ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの総繊度を、それぞれ上述の特定範囲とすることにより、優れた撥水性を備えさせつつ、軽量性に優れ、ハリコシ感に優れた撥水性織編物とすることができる。ここで、単に構成繊維の繊度を細くしただけでは、ボリュームが低減し、ポリエステル繊維Aによる突出部が維持され難くなるため撥水性に劣り、さらにハリコシ感に劣る織編物しか得られない。しかし、本発明の撥水性織編物においては、ポリエステル繊維Bの材料繊維として熱水収縮性の高いものを用い、熱収縮処理が施された混繊交絡糸を含む。そのために、ポリエステル繊維Bは十分に熱収縮されて、ポリエステル繊維Aが突出して形成されている突出部を顕著に維持させやすくなり、細繊度のポリエステル繊維を用いた場合であっても(特に、ポリエステル繊維Aの繊度を十分に細くした場合であっても)突出部が維持される。さらに織編物の伸縮性が抑制されて、ストレッチ性が弱く伸び難いために、平坦な構造となり難く、構成繊維間の空隙が低減される。その結果、撥水性に顕著に優れた織編物とすることができる。さらに、ポリエステル繊維Bが十分に熱収縮した状態であるために柔らかくなり過ぎず、ハリコシ感に優れる織編物が得られる。
【0015】
織編物に対して高い撥水性能を付与できる混繊交絡糸とする観点から、ポリエステル繊維Aの単糸繊度としては、好ましくは0.2〜0.8dtex程度、より好ましくは0.2〜0.6dtex程度、さらに好ましくは0.2〜0.5dtex程度、特に好ましくは0.2〜0.5dtex程度が挙げられる。なお、ポリエステル繊維Aの単糸繊度が0.2dtex未満になると、繊維が細過ぎて開繊効果が乏しくなり、ポリエステル繊維Bとの絡み効果が小さくなって、交絡不良が発生しやすくなる。一方、ポリエステル繊維Aの単糸繊度が0.9dtexを超えると、繊維が剛直となり、ポリエステル繊維Bとの混繊が不十分となって、交絡不良が生じやすくなる。また、ポリエステル繊維Aが太くなると、織編物としたときの水滴との接触面積が大きくなり、さらに、繊維が剛直となるため、上述のような空気保持層が形成され難くなり、結果として所望の撥水性能が得られにくくなる。
【0016】
ポリエステル繊維Aの総繊度は30〜100dtexであり、30〜85dtexであることが好ましく、30〜80dtexであることがより好ましい。30dtex以上であると、ポリエステル繊維Bとの絡みが十分となり交絡状態が良好となり、突出部及び空気保持層を維持しやすくなる。100dtex以下であると、軽量性に優れる。
【0017】
ポリエステル繊維Bの単糸繊度が1.0dtex未満になると、ポリエステル繊維Aによって形成された上記の微細な突出部を混繊交絡糸の表面部分において保持することが困難となり、上記のような空気保持層が形成されにくくなる。また、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bの単糸繊度とが同程度になると、混繊交絡糸を有する本発明の撥水性織編物が柔らかくなり過ぎ、ハリコシのない織編物になりやすくなる。一方、ポリエステル繊維Bの単糸繊度が5.0dtexを超えると、上記範囲の単糸繊度を有するポリエステル繊維Aと混繊した場合にも、織編物全体として硬い風合いのものとなる。このような織編物は衣料用織編物などとして好ましくない。さらに、ポリエステル繊維Bの単糸繊度が5.0dtexを超えると、交絡状態が悪くなって、織編物の表面に、上記のような微細な突出部を形成し難くなり、織編物に対して高い撥水性能を付与することが難しくなる。優れた撥水性を備えさせつつ、優れたハリコシ感を効果的に備えさせるという観点から、ポリエステル繊維Bの単糸繊度としては、好ましくは1.5〜4.0dtex程度、より好ましくは2.0〜3.5dtex程度が挙げられる。
【0018】
ポリエステル繊維Bの総繊度は30〜100dtexであり、32〜90dtexであることが好ましく、40〜90dtexであることがさらに好ましく、40〜75dtexであることがより好ましい。30dtex以上であると、突出部及び空気保持層を形成、維持しやすくなる。100dtex以下であると、軽量性に優れる。
【0019】
ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの単糸繊度比(A/B)は、1/20〜1/4に設定すればよいが、1/20〜1/5であることが好ましく、1/15〜1/6であることがさらに好ましく、1/10〜1/6であることがより好ましい。本発明の撥水性織編物においては、より軽量とするためにポリエステル繊維Aの繊度を十分に小さくしても、上述したポリエステル繊維Bにより、突出部が形成され易くかつ維持され易い混繊交糸を含むことができ、さらに空隙が低減されるため、撥水性に顕著に優れるものとなる。
【0020】
本発明において、混繊交絡糸における仮撚捲縮の度合い、すなわち捲縮率として低い方が好ましく、例えば10%以下であることがより好ましく、0%であることが特に好ましい。混繊交絡糸はポリエステル繊維Bの熱収縮によって、表面部分に上記のような突出部を形成又は維持することができ、長手方向に熱収縮するために、混繊交絡糸としての捲縮率は実質的には有していないためである。混繊交絡糸の捲縮率が10%を超えると熱収縮処理が不十分であり、所望の撥水性、及び織編物としての良好なハリコシ感が発現しない傾向が現れることがある。
【0021】
混繊交絡糸の捲縮率は、例えば、以下の方法により測定して得られる。まず、枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で混繊交絡糸をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げる。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理する。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置する。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重及び0.00177cN/dtex(軽重荷)を掛け、長さXを測定する。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定する。その後、捲縮率(%)=(Y−X)/Y×100なる式に基づき、算出する。捲縮率の測定は、混繊交絡糸の5本について行い、それぞれの平均をその糸の捲縮率とする。
【0022】
ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)は、20/80〜80/20の範囲にある。ポリエステル繊維Aの質量比率(混率)が20%未満の場合、混繊交絡糸におけるポリエステル繊維Aの割合が少なすぎるため、上記のような突出部を混繊交絡糸の表面部分に形成することが困難となり、織編物に高い撥水性能を付与することが難しくなる。一方、ポリエステル繊維Aの混率が80%を超えると、ポリエステル繊維Bの割合が少なすぎて、上記の突出部を表面部分に保持することが難しくなる。このため、微細な突出部が潰れ易くなり、織編物に対して高い撥水性能を付与することが困難となる。ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)としては、好ましくは30/70〜70/30程度が挙げられる。
【0023】
混繊交絡糸は糸全体として混繊交絡されており、その交絡数としては、好ましくは90〜300個/m程度が挙げられ、130〜300個/mがより好ましく、200〜300個/mがさらに好ましい。交絡数が90個/m未満である場合、交絡状態が解け易くなり、混繊交絡糸の表面部分において上記のような微細な突出部を形成することが難しくなる場合がある。また、交絡状態が解け易くなると、織編物の製造工程において必然的に受けるガイド摩耗によって、糸条内部にズレが発生し、織編物の欠点を誘発しやすくなる場合がある。一方、交絡数が300個/mを超えると、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとが絡まり過ぎることで上記の突出部も形成されにくくなるため、織編物に高い撥水性能を付与し難くなる。なお、本発明において、混繊交絡糸の交絡数は、JIS L1013 8.15フック法に基づいて測定して得られた値である。
【0024】
また、本発明で使用される混繊交絡糸において、ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの少なくとも一方に対して、適宜の添加剤を含有させることにより、本発明の撥水性織編物に副次的な機能を付与することもできる。なお、添加剤によって付与される機能は、通常、添加剤の使用量(絶対量)が増すほど増大することを踏まえると、単糸繊度の大きなポリエステル繊維Bに添加剤を含有させた方が、ポリエステル繊維Aよりも添加剤の使用量を増大できるので好ましい。このような添加剤としては、例えば、太陽光遮断物質、赤外線吸収物質などが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明で使用される混繊交絡糸が太陽光遮断物質を含む場合には、太陽光遮断効果によって、撥水性織編物に清涼感を付与することができる。混繊交絡糸が太陽光遮断物質を含む場合、上述の観点から、ポリエステル繊維Bに太陽光遮断物質が含まれていることが好ましい。本発明で使用される太陽光遮断物質は、太陽光の可視光線や赤外線を透過させない物質であり、かつ、ポリエステル中に分散可能であるものであればよい。優れた太陽光遮断性を備えさせて撥水性織編物に良好な清涼感を付与するという観点から、太陽光遮断物質の好適な例として、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、インジウムオキサイドなどが挙げられる。これらの太陽光遮断物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
ポリエステル繊維Aおよび/またはポリエステル繊維Bに太陽光遮断物質を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば3〜10質量%程度、好ましくは3〜7質量%程度が挙げられる。このような含有量を充足することによって、紡糸性の低下を抑制しつつ、所望の清涼感を付与することができる。また、ポリエステル繊維Aまたはポリエステル繊維Bの繊維断面を同心芯鞘型として、芯部と鞘部に含まれる太陽光遮断物質の量に差を設けてもよい。例えば、鞘部に含まれる太陽光遮断物質の量を0.8質量%以下にすると同時に、繊維全体では太陽光遮断物質が3〜10質量%程度含まれるようにするとよい。鞘部の含有量を減らすことにより、製造工程においてガイド摩耗を受け難くなり、糸切れや毛羽が発生しにくくなる。
【0027】
また、本発明で使用される混繊交絡糸が赤外線吸収物質を含む場合には、撥水性織編物に保温性を付与することができる。混繊交絡糸が赤外線吸収物質を含む場合には、上述の観点から、ポリエステル繊維Bに赤外線吸収物質が含まれていることが好ましい。本発明で使用される紫外線吸収物質は、赤外線を吸収して熱に変換できる物質であり、かつポリエステル中に分散可能であるものであればよい。優れた赤外線吸収性を備えさせて撥水性織編物に良好な保温性を付与するという観点から、赤外線吸収物質の好適な例として、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、アンチモンドープ酸化インジュームなどが挙げられる。これらの赤外線吸収物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0028】
ポリエステル繊維Aおよび/またはポリエステル繊維Bに赤外線吸収物質を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば0.5〜5質量%程度が挙げられる。このような含有量を充足することによって、紡糸性の低下を抑制しつつ、所望の保温性を付与することができる。また、ポリエステル繊維Aまたはポリエステル繊維Bの繊維断面を同心芯鞘型として、芯部と鞘部に含まれる赤外線吸収物質の量に差を設けてもよい。例えば、芯部に含まれる赤外線吸収物質の量を5〜25質量%程度、より好ましくは7〜17質量%程度にすると同時に、繊維全体では赤外線吸収物質が0.5〜5質量%程度含まれるようにするとよい。鞘部の含有量を減らすことにより、製造工程においてガイド摩耗を受け難くなり、糸切れや毛羽が発生しにくくなる。
【0029】
また、本発明の撥水性織編物に意匠性を付与するために、ポリエステル繊維Aおよび/またはポリエステル繊維Bとして、カチオン可染ポリエステルを使用してもよい。カチオン可染ポリエステルを使用すると、染色加工時にカチオン染料で染色を行うことにより、杢感を付与することができる。
【0030】
カチオン可染ポリエステルとしては、カチオン染料で染色されるものであることを限度として特に制限されないが、エチレンテレフタレート単位に5−スルホイソフタル酸が全酸成分に対して0.5〜5.0モル%程度共重合されてなるポリエステルが好適である。
【0031】
[撥水剤]
本発明の撥水性織編物では、織編物の少なくとも一方の表面に撥水剤が付着している。本発明の撥水性織編物において、後述する透湿防水層を積層させる場合には、当該防湿防水層が設けられる面とは反対側の面に撥水剤が付着していればよく、後述する透湿防水層を積層させない場合には、織編物の一方の面又は双方の面に撥水剤が付着していればよい。
【0032】
本発明で使用される撥水剤としては、特に限定されないが、作業性や価格などの点から、フッ素系撥水剤が好適である。具体的には、化学構造中にポリフルオロアルキル基(Rf基)を有するフッ素系化合物からなるフッ素系撥水剤が好適である。Rf基とは、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基をいう。Rf基の炭素数は2〜20個が好ましく、2〜8個がより好ましく、1〜6個がさらに好ましい。Rf基は直鎖構造でも分岐鎖構造でもよい。特に分岐鎖構造の場合、分岐鎖部分がRf基の末端部分に存在し、かつ炭素数1〜8程度の短鎖であることが好ましく、1〜6がより好ましい。Rf基としては、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子に置換された基(パーフルオロアルキル基)が好ましい。
【0033】
フッ素系化合物としては、上記パーフルオロアルキル基を含有する重合体と、重合可能な他の重合性単量体とを公知の重合方法により重合した共重合体が好ましい。他の重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、塩化ビニルなどが挙げられる。また、必要に応じて、アクリル系化合物、酢酸ビニル系化合物、メラミン系化合物などを適宜混合してもよい。
【0034】
フッ素系撥水剤として市販品を用いることができ、例えば、旭硝子株式会社製「アサヒガード(商品名)」、日華化学株式会社製「NKガード(商品名)」などが挙げられる。フッ素系撥水剤としては、特に、環境保護の点からパーフルオロアルキルカルボン酸を含まないフッ素系撥水剤が好適である。フッ素系撥水剤は、水性エマルジョンの形態で使用することが好ましい。
【0035】
本発明で使用される撥水剤としては、環境配慮の面から、フッ素を含まない撥水剤(即ち、非フッ素系撥水剤)を使用してもよい。非フッ素系撥水剤としては、例えば炭化水素系、シリコーン系、ワックス系などが挙げられる。非フッ素系撥水剤として市販品を用いることができ、炭化水素系であれば例えば日華化学株式会社製「ネオシード(商品名)」、大原パラジウム製「パラジウムECO(商品名)」;シリコーン系であれば例えば日華化学株式会社製「ドライポン600E(商品名)」、信越化学工業株式会社製「ポロン(商品名)」;ワックス系であれば例えば日華化学株式会社製「TH−44(商品名)」、高松油脂製「ネオラックス(商品名)」などが挙げられる。特に、他の薬剤との併用で洗濯耐久性が高くしやすい炭化水素系が好適である。
【0036】
織編物に付着させる撥水剤の量については、使用する撥水剤の種類、目的とする撥水性の程度等に応じて適宜設定すればよいが、撥水剤に含まれる固形分量としては、例えば、0.05〜10g/m
2、好ましくは0.1〜7g/m
2が挙げられる。
【0037】
[撥水性織編物の構造・特性]
本発明の撥水性織編物において、構成する経糸及び/又は緯糸の少なくとも一部に前記混繊交絡糸が使用されていればよいが、優れた撥水性及びハリコシ感を備えさせるという観点から、織編物における前記混繊交絡糸の使用量として、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、より一層好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、90%以上、95質量%以上、又は100質量%が挙げられる。
【0038】
本発明の撥水性織編物は、混繊交絡糸の表面部分に形成された突出部によって顕著に優れた撥水性を有し、さらに上述のような混繊交絡糸に形成されている空気保持層によって撥水性能がより高められ、さらに構成繊維間の空隙が低減されて水滴が通過し難くなるため、従来公知の安価なフッ素系撥水剤などを使用することにより、織編物の構造を特段工夫せずとも、高い撥水性能を発揮することができる。つまり、本発明の撥水性織編物は、大きな水滴は勿論、小さな水滴も突出部によって支えることができ、さらに空気保持層の存在および空隙の低減により水滴が撥水性織編物の内部へ移行することを効果的に抑制することができるため、所謂ロータス効果と同様の撥水性能が顕著に向上している。
【0039】
本発明の撥水性織編物において、混繊交絡糸の表面部分に形成された突出部が、どの程度微細であるかの指標として、KES−Fシステムによる織編物表面粗さの平均偏差(SMD)が挙げられる。本発明の撥水性織編物においては、KES−Fシステムによる織物表面粗さの平均偏差(SMD)が、1.5〜5.0μmにあることが好ましい。当該平均偏差(SMD)が1.5μm未満の場合、混繊交絡糸の突出部が微細になり過ぎ平坦な形状に近くなる。そうすると、水滴と織編物の表面との接触面積が大きくなり、水滴に十分な表面張力が作用し難くなる。その結果、織編物において、高い撥水性能が発揮され難い。一方、当該平均偏差(SMD)が5.0μmを超えると、混繊交絡糸の突出部が大きくなり過ぎ、突出部の間に水滴が落ち易くなる傾向が現れることがある。その結果、水滴が織編物の内部に移行し易くなり、所望の撥水性能が発揮されにくくなることがある。本発明の撥水性織編物においては、当該織編物中に上記の混繊交絡糸を前述する使用量の範囲で含ませることにより、平均偏差(SMD)を所定範囲に設定することができる。
【0040】
本発明においては、軽量性を向上させるためにポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bとして細繊度のものを用いても、ポリエステル繊維Bが熱水収縮されているために、混繊交絡糸の突出部を容易に形成及び維持させることができ、1.5以上のSMDを達成することができる。
【0041】
なお、本発明において、KES−Fシステムによる織編物表面粗さの平均偏差(SMD)は、自動化表面試験機を用いて以下の測定条件で求められる値である。
(1)測定対象となる撥水性織編物を20cm四方の試験片に切り出し、試験片に400gの張力をかけて自動化表面試験機に設置する。
(2)金属摩擦子を含めて50gの垂直方向の荷重を試験片に掛け、バネの接触圧により10gの力で摩擦子を接触させた状態で、試験片を前後に30mm移動して、試験片の表面粗さの変動を計測する。
(3)測定は、WARP、WEFTの2方向で各3回行い、その平均値を平均偏差(SMD)とする。
【0042】
また、本発明において撥水性に優れる観点から、織物のカバーファクター(CF)が1500〜3000であることが好ましく、2200〜2800であることがより好ましい。CFが1500を下回ると、組織点の粗い織物となり、織物内に空隙が増える。そのため、その空隙に水滴が落ちる傾向となり、撥水性能の向上が期待できなくなることがある。一方、CFが3000を上回ると、組織点による拘束が強まり、織物としての引裂強力や破裂強力が低下することがある。
【0043】
なお、カバーファクター(CF)とは、織編物の粗密を数値化したものであり、織物の場合、以下の式により算出される。式中、Dは経糸の総繊度を示す。Eは緯糸の総繊度を示す。
CF=D
1/2×経糸密度(本/2.54cm)+E
1/2×緯糸密度(本/2.54cm)
【0044】
また、編物の場合、撥水性織編物の表面の密度が、55〜150コース/2.54cmかつ45〜100ウェール/2.54cmであることが好ましく、50〜100コース/2.54cmかつ45〜85ウェール/2.54cmであることがより好ましい。コース密度、ウェール密度のそれぞれの範囲を下回ると組織点の粗い編物となり、編物内に空隙が増える傾向が現れる。そのため、その空隙に水滴が落ちる傾向となり、撥水性能の十分な向上が期待できなくなることがある。一方、コース密度、ウェール密度のそれぞれの範囲を上回ると組織点による拘束が強まり、編物としての引裂強力や破裂強力が低下することがある。
【0045】
本発明の撥水性織編物は、JIS L 1096:2010に従って測定された伸長率(定荷重法、荷重14.7N)が、織物の形態を有する場合は3%以下であり、編物の形態を有する場合は120%以下である。好ましくは、上記の伸長率が、織物である場合は2%以下、編物である場合は110%以下である。伸長率(伸縮性)が上記範囲であると、混繊交絡糸に含まれるポリエステル繊維Bが十分に熱収縮されることで、ハリ、コシ感に優れた織編物であることの指標となる。さらに混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維Bが十分に熱水収縮されて、上記のようなポリエステル繊維Aに起因する微細な突出部が十分に形成、維持されているため、織編物としての撥水性能が高められていることの指標となる。さらに、伸縮性が上記範囲であると、ストレッチ性が過度に強くならず混繊交絡糸が伸び過ぎず平坦な構造とならならないうえに構成繊維間の空隙も低減されるため、織編物としての撥水性により優れることの指標となる。本発明の撥水性織編物においては、ポリエステル繊維Bが熱収縮処理されているために、上記のように伸縮性が抑制されてものとなる。なお、伸縮性の下限は、風合いが硬くなり過ぎないために、織物の形態を有する場合は0.5%、編物の形態を有する場合は100%程度であることが好ましい。本発明の撥水性織編物において、伸長率を上記範囲とするために、例えば、ポリエステル繊維Bを上記の質量比率で用いた混繊交絡糸を20質量%以上の割合で用いることが好ましい。具体的には、本発明の撥水性織編物が織物の形態である場合、上記の伸長率として、0.5〜3%、好ましくは0.5〜2.5%が挙げられる。また、本発明の撥水性織編物が編物の形態である場合、上記の伸長率として、100〜120%、好ましくは100〜110%が挙げられる。
【0046】
本発明の撥水性織編物は、構成繊維として細繊度のものを用いることで軽量性に優れる。本発明の撥水性織編物の目付けについては、特に制限されないが、例えば、200g/m
2以下であることが好ましく、150g/m
2以下であることがより好ましい。目付けの下限値は、特に限定されないが、例えば、80g/m
2である。具体的には、本発明の撥水性織編物の目付として、好ましくは80〜200g/m
2、より好ましくは80〜150g/m
2が挙げられる。
【0047】
また、本発明の撥水性織編物において、織編物の組織としては特に限定されず、適宜の組織(織物であれば平織、綾織、朱子織、必要に応じて多重組織、編物であれば丸編の天竺、スムース、経編のトリコット、必要に応じて多重組織)を採用してもよい。編物の方が織物に比べて生地表面の凹凸が適切に維持されるため、混繊交絡糸の突出部との相乗効果で水滴転がり性に顕著に優れるものとなる。
【0048】
本発明の撥水性織編物は、優れた撥水性能を有するものであるが、具体的には、撥水剤が付着した側の表面の水滴転がり角度が40度以下であることが好ましく、35度以下であることがさらに好ましく、30度以下であることがより好ましい。当該水滴転がり角度として、より具体的には、5〜40度が好ましく、5〜35度がさらに好ましく、5〜30度がより好ましい。水滴転がり角度とは、ロータス効果のような撥水性能の優劣を評価する指標であり、本発明における優れた撥水性能とは、高いロータス効果を有することと同義である。水滴転がり角度とは、水平版上に取り付けた水平状の試料(織編物)に、0.02mLの水を静かに滴下し、その後水平版を静かに傾斜させ、水滴が転がり始めるときの角度をいう。水滴転がり角度が40度を超える場合は、実際に織編物を縫製し、製品としたとき、雨水等による水滴を、その水滴形状を崩さずに振り払うことが困難となることがある。例えば、本発明の撥水性織編物中に上記の混繊交絡糸を50質量%以上含有させ、かつ、カバーファクター(CF)を上記範囲に設定することにより、水滴転がり角度を40度以下に容易に設定することができる。
【0049】
図1は、実施例1で得られた本発明の撥水性織編物における、厚み部分を光学顕微鏡で撮影した写真である(倍率:100倍)。
図1から明らかなように、ポリエステル繊維Bが熱収縮されていることにより、織編物自体が押し込められて、ポリエステル繊維Aによる突出部が維持されていることが理解できる。これにより、構成繊維の繊度を細くして軽量性を高めた場合であっても、特にポリエステル繊維Aの繊度をポリエステル繊維Bと比較してより細くした場合であっても、突出部が十分に維持されて平坦な織編物表面とならず、構成繊維間の空隙が低減されて撥水性に顕著に優れたものとなる。
【0050】
本発明の撥水性織編物は、片面に透湿防水層を積層させて積層生地にしてもよい。このように透湿防水層を設けることによって、透湿性と防水性を兼ね備えさせることができる。本発明の撥水性織編物において、撥水剤が一方の表面のみに付着している場合には、前記透水防湿層は、撥水剤が付着していない側に設ければよい。
【0051】
透湿防水層を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、主成分としてのポリウレタン樹脂から構成されるものが挙げられる。また、撥水性織編物と透湿防水層の間には接着剤層を含んでもよい。また、透湿防水層上に、さらに別の繊維布帛が積層されていてもよい。
【0052】
[その他の加工]
本発明の撥水性織編物には、必要に応じて、抗菌加工、染色加工、撥水裏吸水加工、UVカット加工、蓄熱加工、制菌加工、抗菌防臭加工、消臭加工、防汚加工、防蚊加工、カレンダー加工、プリント加工等の後加工が施されていてもよい。いずれの加工においても、本発明の効果が喪失する程度にまで突出部がつぶれないような条件で行うことが好ましい。
【0053】
[撥水性織編物の用途]
本発明の撥水性織編物は、撥水性及び軽量性に優れ、さらに適度なハリコシ感を有する。そのため、ユニフォーム衣料、スポーツ衣料、カジュアルウェア、アウトドア製品などの用途において、好適に用いられる。
【0054】
[撥水性織編物の製造方法]
本発明の撥水性織編物の製造方法は、伸度が18〜50%である熱収縮性混繊交絡糸を準備する工程(熱収縮性混繊交絡糸準備工程)と、熱収縮性混繊交絡糸を織編して生機を製造する工程(生機製造工程)と、生機を熱水収縮処理させて低伸縮性織編物を得る工程(熱水収縮処理工程)と、低伸縮性織編物を撥水加工して、本発明の撥水性織編物を得る工程(撥水加工工程)と、をこの順に含む。
【0055】
また、本発明の撥水性織編物に透湿防水層を積層させる場合には、前記撥水加工工程後の撥水性織編物の片面に、透湿防水層を積層させる工程(透湿防水層積層工程)を含む。
【0056】
以下、本発明の撥水性織編物の製造方法について、工程毎に具体的に説明する。
【0057】
(熱収縮性混繊交絡糸準備工程)
熱収縮性混繊交絡糸準備工程は、伸度が18〜50%である熱収縮性混繊交絡糸を準備すればよい。準備する熱収縮性混繊交絡糸の伸度として、好ましくは18〜45%、さらに好ましくは18〜40%が挙げられる。熱収縮性混繊交絡糸の伸度は、JIS L1013 8.5.1に基づいて、定速伸長型の引張り試験機を用いて、試料長200mm、引張り速度200mm/minの条件で引張試験を行うことによって求められる値である。後述するポリエステル高配向未延伸糸A及びポリエステル高配向未延伸糸Bの伸度の測定方法も同様である。
【0058】
熱収縮性混繊交絡糸準備工程の具体的実施態様については、特に制限されないが、例えば、以下の工程を含む態様が挙げられる。
(1)単糸繊度が1.0〜10.0dtex、総繊度が30〜200dtex、沸水収縮率が20%以上、伸度が80〜150%のポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸倍率1.3〜1.7倍で延伸し、ポリエステル延伸糸Bを得る延伸工程。
(2)単糸繊度が0.2〜1.44dtex、総繊度が30〜160dtex、伸度が80〜150%のポリエステル高配向未延伸糸Aを、加工速度100〜700m/分、延伸倍率1.1〜1.6倍の条件で仮撚りし、ポリエステル仮撚糸Aを得る仮撚り工程。
(3)延伸工程で延伸されたポリエステル延伸糸Bと、仮撚り工程で仮撚りされたポリエステル仮撚糸Aとを、流体ノズルを用いて、エアー圧0.1〜1.0Mpa、ポリエステル延伸糸Bとポリエステル仮撚糸Aとのオーバーフィード率差が0〜10.0%の条件で混繊交絡する混繊交絡工程。
【0059】
熱収縮性混繊交絡糸準備工程で準備される熱収縮性混繊交絡糸は、生機製造工程、熱水収縮処理工程、および撥水加工工程を経て、本発明の撥水性織編物に含まれる混繊交絡糸となり得るものである。熱収縮性混繊交絡糸準備工程においては、特定のポリエステル高配向未延伸糸B(混繊交絡糸を構成するポリエステル繊維Bとなる)を予め特定の延伸倍率にて延伸し、ポリエステル延伸糸Bとする延伸工程を行う。これにより、ポリエステル高配向未延伸糸A(混繊交絡糸を構成するポリエステル繊維Aとなる)及びポリエステル延伸糸Bの伸度は、ほぼ同じになるかポリエステル延伸糸Bの方がやや低くなる。次に、ポリエステル高配向未延伸糸Aを予め仮撚りし、ポリエステル仮撚糸Aを得る仮撚り工程を行う。これにより、ポリエステル高配向未延伸糸Aが開繊し、ポリエステル延伸糸Bと交絡しやすくなる。その後、延伸工程で延伸されたポリエステル延伸糸Bと、混繊の相手方となるポリエステル仮撚糸Aとを複合する混繊交絡工程を行い、熱収縮性混繊交絡糸を得る。熱収縮性混繊交絡糸においては、両者のオーバーフィード率を調整することによりポリエステル仮撚糸Aが外側(表面側)に多く配されることが好ましい。
【0060】
なお、生機製造工程、熱水収縮処理工程、および撥水加工工程を経て得られた本発明の撥水性織編物において、ポリエステル高配向未延伸糸Aが、混繊交絡糸を構成する上記のポリエステル繊維Aとなり、ポリエステル高配向未延伸糸Bが、混繊交絡糸を構成する上記のポリエステル繊維Bとなる。
【0061】
ポリエステル高配向未延伸糸とは、ポリエステルポリマーを2000〜4000m/分程度の速度で紡糸して巻き取られたマルチフィラメント糸をいう。ポリエステルポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を単独で用いたり、複数併用したりすることができる。また、ポリエステルポリマーは、共重合ポリエステルであってもよい。共重合成分としては、イソフタル酸、5−アルカリイソフタル酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸;ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロへキサンジオールなどの脂肪族または脂環式ジオール;P−ヒドロキシ安息香酸などの共重合成分が挙げられる。ポリエステルポリマーは、必要に応じて、艶消し剤、安定剤、難燃剤、着色剤等の改質剤を含んでいてもよい。ポリエステル高配向未延伸糸は、複数の高配向未延伸繊維が束になって構成されており、例えば、繊維断面を同心芯鞘型とする場合には、芯部、鞘部それぞれに配されるポリマーの相溶性を考慮して、両者のポリエステルポリマーを同一のものとするのが好ましい。
【0062】
ポリエステル高配向未延伸糸Aは、単糸繊度が0.2〜1.44dtex、総繊度が30〜160dtex、伸度が80〜150%であればよいが、単糸繊度が0.2〜0.9dtex、総繊度が30〜130dtex、伸度が85〜140%であることが好ましく、単糸繊度が0.22〜0.9dtex、総繊度が30〜100dtex、伸度が85〜130%であることがより好ましく、単糸繊度が0.22〜0.85dtex、総繊度が33〜100dtexであることが特に好ましい。ポリエステル高配向未延伸糸Aの単糸繊度が0.2dtex未満では、単糸が細過ぎて開繊効果が乏しくなり、後述のポリエステル高配向未延伸糸Bとの十分な混繊が難しくなって、交絡不良が生じ易くなる。その結果、本発明の撥水性織編物において、突出部が混繊交絡糸の表面部分に形成され難くなり、糸切れや毛羽も発生し易くなるため好ましくない。一方、ポリエステル高配向未延伸糸Aの単糸繊度が1.44dtexを超えると、糸条内に大きな空隙ができやすく、ポリエステル高配向未延伸糸Bと十分に混繊し難くなり、交絡不良が生じ易くなる。その結果、突出部が形成され難くなる。
【0063】
また、ポリエステル高配向未延伸糸Aの沸水収縮率は、ポリエステル高配向未延伸糸Bよりも低い範囲であることが好ましく、例えば、15〜35%、好ましくは15〜30%、さらに好ましくは15%以上20%未満が挙げられる。ここで、ポリエステル高配向未延伸糸Aの沸水収縮率は、JIS L1013 8.18.1に規定されている「かせ寸法変化率(A法)」において、100℃の熱水中で30分間浸漬する条件で測定されるかせ寸法変化率である。また、後述するポリエステル高配向未延伸糸Bの沸水収縮率の測定方法も同様である。
【0064】
ポリエステル高配向未延伸糸Aの総繊度が30dtex以上であると、ポリエステル高配向未延伸糸Bとの絡みが良好となり、突出部及び空気保持層を維持しやすくなる。一方、160dtex以下であると、軽量性に優れる撥水性織編物を得ることができる。
【0065】
ポリエステル高配向未延伸糸Aの伸度が80%未満である場合、後述の仮撚り工程において、糸切れが多発するおそれがある。一方、伸度が150%を超える高配向未延伸糸を得ようとしても、製造時に糸切れや品質低下等が発生して、安定供給が難しくなる。
【0066】
ポリエステル高配向未延伸糸Bは、単糸繊度が1.0〜10.0dtex、総繊度が30〜200dtex、沸水収縮率が20%以上、伸度が80〜150%であればよいが、単糸繊度が1.0〜5.0dtex、総繊度が30〜100dtex、沸水収縮率が20〜50%、伸度が85〜150%であることが好ましく、単糸繊度が1.5〜5.0dtex、総繊度が30〜90dtex、沸水収縮率が20〜40%、伸度が90〜150%であることがより好ましい。ポリエステル高配向未延伸糸Bの単糸繊度が1.0dtex未満の場合、撥水性織編物に含まれる混繊交絡糸となった後において、ポリエステル繊維Aからなる突出部を強固に保持することができず、突出部が潰れ易くなる。しかも、糸条全体が細くなり過ぎて、織編物の風合いがハリコシ感に乏しいものとなる。また、単糸繊度が10.0dtexを超えると、交絡状態が悪くなる。さらに、織編物の風合いとして適度なふくらみ感が不足して、硬い風合いのものしか得られず好ましくない。
【0067】
また、ポリエステル高配向未延伸糸Bの総繊度が30dtex以上であると、突出部及び空気保持層を維持し易くなる。一方、200dtex以下であると軽量性に優れる織編物を得ることができる。
【0068】
また、ポリエステル高配向未延伸糸Bの沸水収縮率が20%以上であると、後述の熱水収縮処理工程を経ることで、伸縮性およびSMDを上述のような範囲とすることができ、撥水性に顕著に優れた織編物を得ることができる。さらに、ハリコシ感に優れ、加えて風合いが硬くなり過ぎない撥水性織編物が得られるため好ましい。ここで、ポリエステル高配向未延伸糸Bの沸水収縮率は、JIS L1013 8.18.1に規定されている「かせ寸法変化率(A法)」において、100℃の熱水中で30分間浸漬する条件で測定されるかせ寸法変化率である。
【0069】
また、ポリエステル高配向未延伸糸Bの伸度が80%未満になると、後述の延伸工程において、糸切れが多発するおそれがある。また、伸度が150%を超えると、混繊交絡糸の伸度が高くなり過ぎて、品質安定の観点から好ましくない。
【0070】
次に、熱収縮性混繊交絡糸準備工程を、
図2の模式図を参照しながら詳述する。まず、上記のポリエステル高配向未延伸糸A、BのパッケージYA、YBをそれぞれクリールに仕掛ける。次にポリエステル高配向未延伸糸Bを第一供給ローラ1へ導入する。そして、第一供給ローラ1と第1引取ローラ3との間で、ヒーター2で熱を加えながらポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸する延伸工程を行う。
【0071】
延伸工程において、延伸倍率は、1.3〜1.7倍に設定すればよいが、好ましくは1.35〜1.7倍程度、より好ましくは1.4〜1.7倍程度である。これにより、ポリエステル高配向未延伸糸Aとポリエステル延伸糸Bの伸度は、ほぼ同じになる。ここで、延伸工程における延伸倍率とは、第一供給ローラ1の表面速度と第1引取ローラ3の表面速度との比(延伸倍率=第1引取ローラ3の表面速度/第一供給ローラ1の表面速度)をいう。なお、ポリエステル高配向未延伸糸Bを延伸することにより、その単糸繊度をより好ましいものに微調整できると共に、ポリエステル高配向未延伸糸Aとポリエステル延伸糸Bの混率をより好ましいものに微調整することもできる。ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸は、ヒーターなどを設置して熱を与えながら行う。ヒーターで加熱することで糸物性の安定した延伸糸Bを得ることができる。
【0072】
ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸倍率が1.3倍未満の場合、混繊交絡糸全体の伸度が高くなり、後加工(例えば、染色加工なども含む一連の加工)において、必然的に付加される張力により混繊交絡糸の物性が変動しやすくなり、織編物の品位品質面でのトラブル発生の要因となり得る。一方、延伸倍率が1.7倍を超えると、糸切れが多発しやすくなる。
【0073】
また、上記延伸工程に代えて、単糸繊度が0.6〜4.8dtex、総繊度が18〜96dtex、伸度が15〜60%、沸水収縮率が20%以上のポリエステル延伸糸Bを市販等から準備し、当該ポリエステル延伸糸Bを混繊交絡工程に供してもよい。準備するポリエステル延伸糸Bとして、好ましくは単糸繊度が0.8〜3.8dtex、総繊度が26〜76dtex、伸度が16〜40%、沸水収縮率が20〜45%が挙げられる。
【0074】
次に、上記ポリエステル高配向未延伸糸Aを所定条件下で仮撚りする仮撚り工程を行う。すなわち、ポリエステル高配向未延伸糸Aを、加工速度100〜700m/分、延伸倍率1.1〜1.6倍の条件で仮撚りする。具体的には、
図2に示すように、ポリエステル高配向未延伸糸Aを第二供給ローラ4へ導入し、ヒーター5、仮撚具6を経て、第二引取ローラ7から引き出すことで、ポリエステル仮撚糸Aを得る。ここで、
図2の第二供給ローラ4と第二引取ローラ7との間が複合仮撚域となる。具体的には、第二供給ローラ4と仮撚具6との間が加撚域T1となり、仮撚具6と第二引取ローラ7との間が解撚域T2となる。
【0075】
仮撚り工程において、加工速度とは、第二引取ローラ7から糸を引き出すときの糸速をいい、すなわち、第二引取ローラ7の表面速度をいう。
【0076】
仮撚りの方式は、一般に、スピンドル方式とフリクション方式とに大別される。本発明では、これらのいずれの方式も採用できる。一般に、仮撚具6としては、スピンドル方式の場合はピンタイプのものを使用し、フリクション方式の場合はディスクタイプのものを使用する。
【0077】
仮撚り工程において、加工速度は100〜700m/分であればよいが、スピンドル方式とフリクション方式とでは、好ましい仮撚条件が若干異なる。例えば、加工速度については、スピンドル方式では100〜200m/分程度が好ましく、フリクション方式では200〜700m/分程度が好ましい。また、ヒーター温度は、スピンドル方式では150〜200℃程度が好ましい。一方、フリクション方式では、接触式ヒーターで170〜200℃程度、点接触式ヒーターで200〜300℃程度の範囲がそれぞれ好ましい。ヒーター温度が上記範囲を下回ると、いずれの方式であっても十分な捲縮が付与し難く、また、上記範囲を上回ると、いずれの方式であっても繊維同士が融着し易くなり、繊維が十分開繊しなくなるので、後に混繊し難くなる。
【0078】
さらに、スピンドル方式とフリクション方式とでは、加撚・解撚の機構も若干異なる。
【0079】
スピンドル方式では、スピンドルの回転によってピンタイプの仮撚具6が回転し、糸が加撚される。このときの加撚の度合い、すなわち仮撚係数を20000〜34000とするのが好ましく、22000〜30000とするのがより好ましい。仮撚係数とは、K=T×D
1/2なる式で算出されるものである。なお、式中において、Kは仮撚係数、Tは仮撚数(T/M)、Dは複合仮撚糸の総繊度(dtex)である。仮撚数とは、T=スピンドル回転数(rpm)/第二引取ローラ7の表面速度(m/分)で算出されるものである。仮撚係数が20000未満になると、捲縮が弱くなり、仮撚糸Aに十分なクリンプを付与し難くなる。このため、本発明の撥水性織編物に含まれる混繊交絡糸の表面部分における上述の微細な突出部が形成されにくくなる。一方、仮撚係数が34000を超えると、クリンプ形状が緻密になり過ぎて、混繊交絡糸の表面部分において、上述の空気保持層が形成されにくくなる。
【0080】
他方、フリクション方式では、一般に、加撚の度合いを仮撚係数で管理するのではなく、K値及びディスク枚数で管理する。これは、両方式の加撚・解撚機構の違いによる。K値とは、解撚張力(F2)と加撚張力(F1)との比(F2/F1)をいい、F2とはディスクを通過した直後の糸張力を、F1とはディスクへ導入される直前の糸張力をいう。フリクション方式では、ディスクの回転により撚りがかかる。したがって、加撚の度合いは、ディスクスピードとディスク枚数とにより決定づけられることになる。ただし、ディスクスピードを直接的に管理することは、工程管理上あまり効率的とはいえないため、ディスクスピードの変動によりK値が変動する点に鑑み、K値を管理することが一般に効率的であるとされている。
【0081】
フリクション方式において、ディスクとしては、一般にポリウレタン製のものが使用される。ディスク枚数としては、一般に5〜7枚が好ましく、ディスクの厚さとしては5〜10mmが好ましい。また、K値としては、0.6〜1.2が好ましい。K値が0.6未満になると、糸切れが増えることに加え、毛羽の多い仮撚糸となる場合がある。一方、1.2を超えると、サージングが生じやすくなる。なお、サージングとは、加撚された撚りが解撚域で解かれず撚りが残った状態をいう。
【0082】
仮撚り工程において、延伸倍率は、1.1〜1.6倍であればよいが、1.1〜1.55倍程度が好ましく、1.15〜1.5倍程度がより好ましい。仮撚り工程における延伸倍率とは、第二供給ローラ4の表面速度と第二引取ローラ7の表面速度との比(延伸倍率=第二引取ローラ7の表面速度/第二供給ローラ4の表面速度)をいう。延伸倍率が1.1倍未満では、ポリエステル仮撚糸Aの品質安定化も難しくなる。また、延伸倍率が1.6倍を超えると、仮撚り工程において、毛羽や糸切れが多発する要因となるため、好ましくない。
【0083】
仮撚り工程の後、ポリエステル仮撚糸Aは、ポリステル延伸糸Bとともに流体ノズル8へ導かれ、流体ノズル8を用い、エアー圧0.1〜1.0Mpa、ポリエステル延伸糸Bとポリエステル仮撚糸Aとのオーバーフィード率差が0〜10.0%の条件で混繊交絡工程に供し、熱収縮性混繊交絡糸とする。熱収縮性混繊交絡糸において、ポリエステル仮撚糸Aの糸長をポリエステル延伸糸Bの糸長よりも、10%以下程度長くすることが好ましく、4〜8%程度長くすることがより好ましい。10%を超えてポリエステル仮撚糸Aがポリエステル延伸糸Bよりも長くなると、熱収縮性混繊交絡糸の嵩高性が増すため、本発明の撥水性織編物表面の突出部が過度に大きくなり、撥水性能が低下するので好ましくない。
【0084】
混繊交絡工程で使用される流体ノズルとしては、特に限定されないが、一般にタスランノズル又はインターレースノズルが好適である。また、その際のオーバーフィード率は、同一供給速度(オーバーフィード率差が0%)で供給する引き揃え混繊法では、1〜5%であることが好ましい。供給速度を変化させる、いわゆる芯/鞘混繊法では、ポリエステル仮撚糸Aとポリエステル延伸糸Bとのオーバーフィード率差を1〜7%としたうえで、ポリエステル延伸糸B(芯)のオーバーフィード率0.5〜3.0%、ポリエステル仮撚糸A(鞘)のオーバーフィード率4.0〜9.5%の条件下が好ましい。オーバーフィード率とは、流体ノズルへ導入される直前の糸速をV1、流体ノズルを通過した直後の糸速をV2としたとき、オーバーフィード率=(V1−V2)/V2×100(%)なる式で算出される。
図2の場合では、オーバーフィード率=(第一引取ローラ3の表面速度−第三引取ローラ9の表面速度)/第三引取ローラ9の表面速度×100(%)、又はオーバーフィード率=(第二引取ローラ7の表面速度−第三引取ローラ9の表面速度)/第三引取ローラ9の表面速度×100(%)なる式で算出される。上記条件で混繊交絡することでポリエステル繊維Aによる突出部を伴った上述の空気保持層が形成される。混繊交絡の条件が上記の範囲を外れると、本発明の撥水性織編物において、ポリエステル繊維Aによる突出部が適度な大きさのものとならず、混繊交絡糸の表面部分に上述のような空気保持層が形成されにくくなる。
【0085】
熱収縮性混繊交絡糸は、第三引取ローラ9を通過した後、巻取ローラ10によりパッケージ11に捲き取られる。なお、本発明の撥水性織編物に含まれる混繊交絡糸においては、目安として、交絡数が90〜300個/m程度の範囲にあると、適度な混繊交絡を有しているといえる。
【0086】
一般に、繊維は太くなれば剛直となり、細ければしなやかになるが、本発明においては、このような繊維の特性を利用し、仮撚り工程及び混繊交絡工程において、相対的に太いポリエステル延伸糸Bの間に生じる大きな空隙に、相対的に細いポリエステル仮撚糸Aを入り込ませることにより、織編物とした場合に、ポリエステル繊維Aを混繊交絡糸の表面部分において突出させることができる。
【0087】
(生機製造工程)
生機製造工程においては、上記の熱収縮性混繊交絡糸を製織編して生機を得る。製織編は、公知の織機、編機を用いて行えばよく、製織編に先立つ準備工程も公知の設備を使用すればよい。
【0088】
(熱水収縮処理工程)
熱水収縮処理工程においては、熱水中に生機を所定時間浸漬することで、ポリエステル延伸糸Bを十分に熱収縮させて、低伸縮性織編物を得る。熱水収縮処理は、例えば、80〜135℃程度で10〜30分程度でおこなうことができる。特定範囲の沸騰水収縮率のポリエステル高配向延伸糸Bから調製されたポリエステル延伸糸Bを用い、熱水収縮処理させることで、ポリエステル延伸糸Bを十分に熱収縮させ、突出部が十分に維持され、伸縮性が低減された織編物とすることができる。熱水収縮処理工程は精練加工及び染色加工において、実行されるものであってもよい。具体的には、熱水収縮処理工程は、精練処理として80〜120℃程度で10〜30分程度、染色処理として100〜135℃程度で10〜30分程度で行うことができ、より好ましくは精練処理として80〜100℃程度で10〜30分程度、染色処理として120〜135℃程度で10〜30分程度の条件でおこなうことができる。また、精練と染色を一緒に施しても構わない。
【0089】
以下に一例を示す。まず、生機を精練する。精練は、80〜130℃の温度下で連続方式またはバッチ方式により行えばよい。通常は、100℃以下でバッチ方式により行うのが好ましく、特にジェットノズルを備えた高圧液流染色機を用いて行うのが好ましい。精練した後は、必要に応じて、プレセットを行ってもよい。プレセットは通常、ピンテンターを用いて170℃〜200℃で30〜120秒間乾熱処理する。その後、常法に従って染色加工を行う。カチオン可染ポリエステルを構成素材として使用している場合には、カチオン染料で染色加工を行えばよい。また、必要に応じてファイナルセットを行ってもよい。
【0090】
本発明の製造方法において、生機(生機製造工程にて得られたもの)の厚みに対する、撥水性織編物の厚みが、1.01〜2.00倍であることが好ましく、1.20〜1.80倍であることがより好ましい。1.01倍以上であると、ポリエステル繊維Bが十分に熱収縮されていることとなり、混繊交絡糸においてポリエステル繊維Aによる突出部が十分に維持されて、撥水性およびハリコシ感に優れる織編物となる。2.00倍以下であると得られた撥水性織編物が過度に硬くならず、適切な風合いを具現化できる。
【0091】
斯くして得られる低伸縮性織編物を、後述する撥水加工工程に供することによって本発明の撥水性織編物が得られるので、当該低伸縮性織編物は、撥水性織編物の製造中間体として使用することができる。
【0092】
(撥水加工工程)
撥水加工工程においては、低伸縮性織編物を撥水加工する。例えば、まず、撥水剤を含む水溶液を調製し、次に、パディング法、スプレー法、キスロールコータ法、スリットコータ法などに基づき、低伸縮性織編物に上記水溶液を付与し、105〜190℃で30〜150秒間乾熱処理すればよい。上記水溶液には、必要に応じて架橋剤、柔軟剤、帯電防止剤などを併せて含ませてもよい。撥水加工後に得られた本発明の撥水性織編物は、カレンダー加工などが施されてもよい。
【0093】
(透湿防水層・繊維布帛の積層工程)
本発明の撥水性織編物に透湿防水層を積層させる場合は、公知の手法に従って、透湿防水層を積層させればよい。更に、透湿防水層上に繊維布帛を積層させる場合は、公知の手法に従って、繊維布帛を積層させればよい。
【0094】
[その他の加工]
本発明の撥水性織編物に、抗菌加工、染色加工、撥水裏吸水加工、UVカット加工、蓄熱加工、制菌加工、抗菌防臭加工、消臭加工、防汚加工、防蚊加工、カレンダー加工、プリント加工等を施す場合には、これらの加工は、前記撥水加工工程の前又は後、或は前記透湿防水層積層工程の前又は後に行えばよい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に従って本発明を具体的に説明する。本発明はこの実施例に限定されない。
【0096】
[測定方法・評価方法]
実施例及び比較例において、1.撥水性織編物、又は生機の厚み、2.高配向未延伸糸、延伸糸及び混繊交絡糸の単糸繊度、総繊度、3.目付け、4.高配向未延伸糸・高配向延伸糸の伸度、5.混繊交絡糸の交絡数、6.織編物表面粗さの平均偏差(SMD)、7.織編物の撥水性能(水滴転がり角度)、8.沸水収縮率、9.撥水性織編物の伸長率、10.風合い(官能評価)は、それぞれ、以下の方法により測定、評価を行った。
【0097】
1.撥水性織編物、または生機の厚み
得られた撥水性織編物、または生機をカッターナイフで切断し、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「マイクロスコープVHX−900」)を使用して、断面を100倍で観察し、厚みを測定した。
【0098】
2.高配向未延伸糸、延伸糸及び混繊交絡糸の単糸繊度、総繊度
高配向未延伸糸及び混繊交絡糸の単糸緯度、総繊度は、それぞれ、JIS L1013 8.3.1の規定に基づいて測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0099】
試料を枠周1.125mの検尺機又は同等の性能をもつ巻返し機を用い、2.94mN×表示tex数の荷重をかけ、120回/分の速度で巻き返し、900mの糸長の小かせを作り、その質量を量り,見掛繊度を求めた。この見掛繊度と別に測定した平衡水分率から、次の式によって正量繊度(tex)を算出し、5回の測定による平均値を、四捨五入によって小数点以下1けたに丸めた。なお、単位をdtexにする場合は、tex繊度を10分の1にすれば良い(1tex=10dtex)。
【数1】
前記式において、R
O(公定水分率)はポリエステル系合成繊維の公定水分率である0.4%を使用した。
また、前記式において、R
e(平衡水分率)は、水分平衡に達した試料から約5gを採り、その質量及び絶乾質量を量り、次の式によって平衡水分率(%)を算出し、2回の平均値を四捨五入法によって小数点以下1けたに丸めた値を使用した。水分平衡に達したとは、標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±4%の標準状態の試験室内で1時間以上の間隔で質量を測定し、その前後の質量差が後の質量の0.1%以内となった状態であることを示す。
【数2】
【0100】
3.目付け
JIS L1096:2010 8.3.2に基づいて目付けを測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0101】
試料から約200mm×200mmの試験片2枚を採取し、それぞれの標準状態における質量(g)を量り、1m
2当たりの質量(g/m
2)を求めた。その平均値を算出し,小数点以下1けたに丸めた。
【0102】
4.高配向未延伸糸・延伸糸の伸度
JIS L1013 8.5.1に基づいて高配向未延伸糸の伸度を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0103】
定速伸長型の引張り試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ「AGS−5KNG」)を用いて、試料長200mmに設定し初荷重(8.82mN×表示テックス)を掛け引張り試験機のつかみ部に取り付け、引張り速度200mm/minで試料を引っ張り、下記の計算式において伸びを算出した。なお、10回の平均値を求めた。
伸び(%)=最大強力時の伸び(mm)/試料長(mm)×100
【0104】
5.混繊交絡糸の交絡数
得られた撥水性織編物を解いて混繊交絡糸を採取し試料とした。JIS L1013 8.15フック法に基づいて、混繊交絡糸の交絡数(個/m)を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。なお、交絡数は交絡度と表記される場合がある。
【0105】
先ず、試料の一端を適切な性能をもつ垂下装置の上部つかみに取り付け、つかみ部から70cm程度下方の位置におもり(2.94mN×表示tex数)をつり下げ、試料を垂直に垂らした。つかみから下方約2cmの箇所と、つかみから下方約52cmの箇所で印を付けた。
荷重を外した後、試料の2cm印部箇所から、下方へ糸束を2分割するように、フック(直径が0.5mm〜1.0mmの針状、側面が滑らかに仕上げ処理されている)を挿入し、フックが52cm印部箇所から糸の絡みによって停止した箇所までの長さL(単位;mm)を測定し、下記式により、1mあたりの個数に換算した。50回の平均値を求めた。
交絡数=1000/L
【0106】
6.織編物表面粗さの平均偏差(SMD)
自動化表面試験機(カトーテック株式会社製「KESFB4−AUTO−A」)を使用してSMDを測定した。まず、20cm四方の試験片を採取し、400gの張力をかけた試験片を上記試験機に設置した。次に、金属摩擦子を含めて50gの垂直方向の荷重を掛け、バネの接触圧により10gの力で摩擦子を接触させ、試験片を前後に30mm移動して、試験片の表面粗さの変動を計測した。測定は、WARP、WEFTの2方向で各3回行い、その平均値をSMDとした。SMDは表面粗さの変動を示すものであり、値が大きいほど突出部による凹凸があると判定できる。
【0107】
7.織編物の撥水性能(水滴転がり角度)
水滴転がり角度は、水平版上に取り付けた水平状の試料(織編物)に、0.02mLの水を静かに滴下し、その後水平版を静かに傾斜させ、水滴が転がり始めるときの角度を測定し、水滴転がり角度とした。
【0108】
8.沸水収縮率
JIS L1013 8.18.1に規定されている「かせ寸法変化率(A法)」に基づいて測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0109】
試料に対して、枠周1.125mの検尺機又は同等の性能をもつ巻返し機を用い、2.94mN×表示tex数の初荷重をかけた。巻き数20回の小かせを作り、初荷重の40倍をかけてかせ長を測った。次に荷重を外し,100℃の熱水中に30分間浸せきした後に取り出して吸取紙又は布で水を切り、水平状態で自然乾燥した。次いで、再び初荷重の40倍の荷重をかけてかせ長を測り,次の式によって熱水寸法変化率(%)を算出し、5回の平均値を,四捨五入によって小数点以下1けたに丸め、沸水収縮率とした。
【数3】
【0110】
9.撥水性織編物の伸長率
JIS L 1096:2010に従って、撥水性織編物の伸長率を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0111】
たて方向に初め約60mm×約300mmの試験片をそれぞれ3枚採取し,幅の両側からほぼ同数の糸を取り除いて50mm幅とした。引張試験機を用い,試験片の一端を上部クランプで固定し,他端に試験片の幅で1mの長さにかかる重力に相当する荷重(N)(整数位までの値)の初荷重を加えた。次いで、200mm間隔に印を付けた。初荷重を取り外し、その後、静かに14.7Nの荷重を加えた。1分間保持後の印間の長さ(mm)を測定し、次の式によって伸び率(%)を求めた。なお、3回の平均値を算出し,小数点以下1けたに丸めた。
【0112】
10.風合い(官能評価)
得られた撥水性織編物に対し、触感により下記の基準で評価した。
○:ハリコシ感が良好である。
△:ハリコシ感が普通である。
×:柔らかすぎてハリコシ感に乏しい、又は過度に硬い。
【0113】
[撥水性織編物の製造]
(実施例1)
伸度104%、単糸繊度0.54dtex、沸水収縮率19.3%、総繊度45dtex84フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意した。一方、伸度118%、単糸繊度4.7dtex、総繊度56dtex12フィラメント、沸水収縮率22.3%のポリエステル高配向未延伸糸Bを用意した。そして、ポリエステル高配向未延伸糸A及びBを
図2に示すような熱収縮性混繊交絡糸の製造工程に供した。仮撚具5としてディスクタイプのものを使用し、複合仮撚条件及び混繊交絡条件は下記の通りとし、伸度26.6%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0114】
<延伸条件>
第一供給ローラ1の表面速度:284m/分
ヒーター2(非接触式ヒーター)の温度:245℃
ポリエステル高配向未延伸糸Bの延伸倍率:1.6倍
第一引取ローラ3の表面速度:455m/分
【0115】
<仮撚り条件>
第二供給ローラ4の表面速度:367m/分
ヒーター5(接触式ヒーター)の温度:160℃
撚り方向:Z方向
仮撚具6(ディスク)の構造:1−6−1
仮撚具6(ディスク)の厚さ:9mm
K値:1.0
第二引取ローラ7の表面速度:477m/分
仮撚時の延伸倍率:1.3倍
【0116】
<混繊交絡条件>
第三引取ローラ9の表面速度:450m/分
流体ノズル8:タスランノズル
エアー圧力:0.735MPa
ポリエステル仮撚糸Aのオーバーフィード率:6%
ポリエステル延伸糸Bのオーバーフィード率:1%
【0117】
次に、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸、緯糸ともに上記で得られた熱収縮性混繊交絡糸を無撚状態でそれぞれ配して、経糸密度156本/2.54cm、緯糸密度114本/2.54cmの平組織の生機を製織した。
【0118】
そして、BOILOFF精練機(福伸工業株式会社製)を用いて生機を80℃で精練した。次に、下記処方1に示す組成の染液を調製した後、この染液を用いて織物を135℃で30分間染色した。その後、シュリンクサーファー型乾燥機(株式会社ヒラノテクシード製)を用いて140℃で乾燥した。
<処方1>
染料:ダイスタージャパン株式会社製、分散染料「Dianix Blue UN−SE(商品名)」 2%omf
分散剤:日華化学株式会社製「ニッカサンソルトSN−250E(商品名)」 0.5g/L
酢酸(98%) 0.1mL/L
【0119】
さらに、下記処方2に示す組成の水溶液を調製した後、パッター加工機を用いて絞り率80%にて水溶液を織物に付与し、120℃で120秒間乾熱処理を行った。そして、180℃で30秒間ファイナルセットし、撥水性織編物(経糸密度197本/2.54cm、緯糸密度144本/2.54cm、カバーファクター(CF)2720)を得た。
<処方2>
フッ素系撥水剤:日華化学株式会社製「NKガードS−07(商品名)(Rf基の炭素数が6個)固形分20質量%」 50g/L
架橋剤:DIC株式会社製、メラミン樹脂「ベッカミンM−3(商品名)」 3g/L
触媒:DIC株式会社製「キャタリストACX(商品名)固形分35質量%」 3g/L
【0120】
(実施例2)
表面に上記で得られた熱収縮性混繊交絡糸を無撚状態で用い、裏面に56dtex24フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を無撚状態で用い、福原精機株式会社製の丸編機(LPJ−H型,33インチ,32ゲージ)にて、編密度が45コース/2.54cm、34ウェール/2.54cmのメッシュ組織の編地を製編した。この編地を用い、以降は実施例1と同様に、精練、染色加工及び撥水加工し、実施例2の撥水性織編物(編密度78コース/2.54cm、55ウェール/2.54cm)を得た。この撥水性織編物において、混繊交絡糸の混率は39質量%であった。
【0121】
(実施例3)
処方2に示す組成の水溶液の代わりに下記処方3に示す組成の水溶液を使用して撥水加工を行ったこと以外は、実施例1と同条件で、撥水性織編物(経糸密度197本/2.54cm、緯糸密度144本/2.54cm、カバーファクター(CF)2720)を得た。
<処方3>
炭化水素系撥水剤(非フッ素系撥水剤):日華化学株式会社製「ネオシードNR−7080(商品名)固形分30質量%」 100g/L
架橋剤:DIC株式会社製、メラミン樹脂「ベッカミンM−3(商品名)」 7g/L
触媒:DIC株式会社製「キャタリストACX(商品名)固形分35質量%」 5g/L
【0122】
(実施例4)
実施例1で得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度140本/2.54cm、緯糸密度103本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、撥水性織編物(経糸密度177本/2.54cm、緯糸密度130本/2.54cm、カバーファクター(CF)2449)を得た。
【0123】
(実施例5)
伸度105%、単糸繊度0.60dtex、沸水収縮率17.3%、総繊度90dtex150フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用いたこと以外は、実施例1と同様に混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度27.5%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0124】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度108本/2.54cm、緯糸密度90本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、撥水性織編物(経糸密度135本/2.54cm、緯糸密度112本/2.54cm、カバーファクター(CF)2470)を得た。
【0125】
(実施例6)
伸度104%、単糸繊度0.54dtex、沸水収縮率19.3%、総繊度45dtex84フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意した。一方、伸度29.9%、単糸繊度2.8dtex、総繊度66dtex24フィラメント、沸水収縮率26.0%のポリエステル高配向延伸糸Bを用意した。そして、ポリエステル高配向未延伸糸A及びポリエステル高配向延伸糸Bについて、
図2に示すような熱収縮性混繊交絡糸の製造工程のうち、第一供給ローラ1、ヒーター2、第一引取ローラ3を用いないこと以外は、実施例1と同条件で混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度27.8%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0126】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度111本/2.54cm、緯糸密度90本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、撥水性織編物(経糸密度138本/2.54cm、緯糸密度113本/2.54cm、カバーファクター(CF)2452)を得た。
【0127】
(実施例7)
伸度104%、単糸繊度0.54dtex、沸水収縮率19.3%、総繊度45dtex84フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意した。一方、伸度25.9%、単糸繊度1.8dtex、総繊度33dtex18フィラメント、沸水収縮率16.0%のポリエステル高配向延伸糸Bを用意した。そして、ポリエステル高配向未延伸糸A、及びポリエステル高配向延伸糸Bについて、
図2に示すような熱収縮性混繊交絡糸の製造工程のうち、第一供給ローラ1、ヒーター2、第一引取ローラ3を用いないこと以外は、実施例1と同条件で混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度24.3%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。なお、ポリエステル高配向未延伸糸Aを仮撚りすると、沸水収縮率は14.2%であった。
【0128】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度156本/2.54cm、緯糸密度114本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、実施例7の撥水性織編物(経糸密度184本/2.54cm、緯糸密度137本/2.54cm、カバーファクター(CF)2561)を得た。
【0129】
(実施例8)
伸度116%、単糸繊度0.85dtex、沸水収縮率18.5%、総繊度119dtex144フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用いたこと以外は、実施例1と同様に混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度29.1%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0130】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度90本/2.54cm、緯糸密度71本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、実施例8の撥水性織編物(経糸密度111本/2.54cm、緯糸密度79本/2.54cm、カバーファクター(CF)2105)を得た。
【0131】
(実施例9)
伸度104%、単糸繊度0.54dtex、沸水収縮率19.3%、総繊度45dtex84フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意した。一方、伸度27.8%、単糸繊度2.8dtex、総繊度33dtex12フィラメント、沸水収縮率23.0%のポリエステル延伸糸Bを用意した。ポリエステル高配向未延伸糸A及びポリエステル高配向延伸糸Bについて、熱収縮性混繊交絡糸の製造工程のうち、第一供給ローラ1、ヒーター2、第一引取ローラ3を用いなかったこと以外は、実施例1と同条件で混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度20.5%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0132】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度156本/2.54cm、緯糸密度114本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、実施例9の撥水性織編物(経糸密度197本/2.54cm、緯糸密度144本/2.54cm、カバーファクター(CF)2720)を得た。
【0133】
(比較例1)
経糸、緯糸ともに72dtex150フィラメントのポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ無撚状態で配して、経糸密度141本/2.54cm、緯糸密度112本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同様に染色加工及び撥水加工し、織物(経糸密度144本/2.54cm、緯糸密度119本/2.54cm、カバーファクター(CF)が2290)を得た。
【0134】
(比較例2)
表面に84dtex72フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、裏面に84dtex36fのポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ無撚状態で用い、福原精機株式会社製の丸編機(LPJ−H型,33インチ,28ゲージ)を用い、編密度が38コース/2.54cm、32ウェール/2.54cmのメッシュ組織の編地を製編した。その後、実施例1と同様に染色加工及び撥水加工し、編物(編密度54コース/2.54cm、39ウェール/2.54cm)を得た。
【0135】
(比較例3)
特許文献1(特開2015−98661号公報)の実施例2の記載に従って、比較例3の撥水性織物を製造した。具体的には、先ず、伸度92%、単糸繊度0.54dtex、トータル繊度180dtex336fのポリエステル高配向未延伸糸a(沸水収縮率19.5%)を用意した。一方、繊維断面が同心芯鞘型でその質量比率(芯/鞘)が75/25であり、太陽光遮蔽物質として酸化チタンを芯部に5質量%、鞘部に0.3質量部それぞれ含有すると共に、繊維全体で酸化チタンを3.825質量%含む高配向未延伸繊維から構成される、伸度147%、単糸繊度2.7dtex、トータル繊度130dtex48fのポリエステル高配向未延伸糸b(沸水収縮率19.7%)を用意した。そして、ポリエステル配向未延伸糸a及びポリエステル高配向未延伸糸bを用い、仮撚具としてディスクタイプのものを使用し、複合仮撚及び混繊交絡することにより、伸度25.4%の混繊交絡糸を得た。つまり、ポリエステル配向未延伸糸aを単独で仮撚りすることなく、かつ所定の沸水収縮率を有するポリエステル配向未延伸糸を用いることなく、混繊交絡糸を得た。
【0136】
これを、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経緯糸に上記で得られた混繊交絡糸を無撚状態でそれぞれ配して、経糸密度78本/2.54cm、緯糸密度50本/2.54cmの綾組織の生機を製織した。そして、BOILOFF精練機(福伸工業株式会社製)を用いて生機を95℃で精練し、続いて、連続リラクサー機(和歌山鉄工株式会社製)を用いてリラックスした。その後、織物を130℃で乾燥し、190℃で30秒間プレセットした。
【0137】
次に、上記処方1に示す組成の染液を調製した後、この染液を用いて織物を130℃で40分間染色した。その後、シュリンクサーファー型乾燥機(株式会社ヒラノテクシード 製)を用いて130℃で乾燥した。
【0138】
さらに、上記処方2に示す組成の水溶液を調製した後、パッター加工機を用いて絞り率80%にて水溶液を織物に付与し、120℃で120秒間乾熱処理した。そして、180℃で30秒間ファイナルセットした後、160℃でカレンダー加工した。得られた織物は、経糸密度83本/2.54cm、緯糸密度56本/2.54cm、カバーファクター(CF)は2176であった。
【0139】
(比較例4)
伸度104%、単糸繊度0.54dtex、総繊度45dtex84フィラメントのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意した。一方、伸度131%、単糸繊度3.3dtex、総繊度40dtex12フィラメント、沸水収縮率5.1%のポリエステル高配向未延伸糸Bを用意した。そして、ポリエステル高配向未延伸糸A及びBを実施例1と同条件で混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度28.8%の混繊交絡糸を得た。
【0140】
得られた混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度115本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、撥水性織編物(経糸密度165本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cm、カバーファクター(CF)2157)を得た。
【0141】
(比較例5)
伸度92%、単糸繊度0.54dtex、トータル繊度180dtex300fのポリエステル高配向未延伸糸Aを用意したこと以外は、実施例1と同条件で熱収縮性混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度27.4%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0142】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度70本/2.54cm、緯糸密度52本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、比較例5の撥水性織編物(経糸密度81本/2.54cm、緯糸密度60本/2.54cm、カバーファクター(CF)1804)を得た。
【0143】
(比較例6)
伸度28.7%、単糸繊度3.48dtex、総繊度167dtex48フィラメント、沸水収縮率22.0%のポリエステル延伸糸Bを使用したこと、および熱収縮性混繊交絡糸の製造工程のうち、第一供給ローラ1、ヒーター2、第一引取ローラ3を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度27.7%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0144】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度67本/2.54cm、緯糸密度50本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、比較例6の撥水性織編物(経糸密度83本/2.54cm、緯糸密度65本/2.54cm、カバーファクター(CF)2020)を得た。
【0145】
(比較例7)
処方2に示す組成の水溶液を織物に付与する工程を行わず、撥水加工をしなかったこと以外は、比較例1と同条件で織物を作製した。
【0146】
(比較例8)
伸度131%、単糸繊度3.3dtex、総繊度40dtex12フィラメント、沸水収縮率5.1%のポリエステル高配向未延伸糸Aを使用したこと以外は、実施例1と同条件で熱収縮性混繊交絡糸の製造工程に供し、伸度26.5%の熱収縮性混繊交絡糸を得た。
【0147】
得られた熱収縮性混繊交絡糸を経糸、緯糸に無撚状態でそれぞれ用い、ウォータージェット織機(津田駒工業株式会社製)を使用し、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度115本/2.54cmの平組織の生機を製織した。その後、実施例1と同条件で精練、染色、撥水加工を行い、撥水性織編物(経糸密度180本/2.54cm、緯糸密度本143/2.54cm、カバーファクター(CF)2483)を得た。
【0148】
(比較例9)
処方2に示す組成の水溶液を織物に付与する工程を行わず、撥水加工をしなかったこと以外は、実施例1と同条件で、撥水性織編物(経糸密度197本/2.54cm、緯糸密度144本/2.54cm、カバーファクター(CF)2720)を得た。
【0149】
[試験結果]
実施例及び比較例の撥水性織編物の構成及び評価結果を、表1、2に表す。
【表1】
【表2】
【0150】
実施例1〜9の撥水性織編物において、構成している混繊交絡糸は、ポリエステル繊維Aのループやたるみなどによって連続的に突出部が形成されており、当該突出部の内側(混繊交絡糸の内部側)には、細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合って形成された空気保持層が形成されていた。表1及び2に示す通り、実施例1〜9では軽量性に優れハリコシ感が十分であるうえに、ロータス効果による撥水性に顕著に優れた撥水性織編物を得ることができた。
一方、比較例1、3では熱水収縮性の高い糸を含む混繊交絡糸を使用していないことから織編物の伸長率が高くなっており、その結果、ハリコシ感が不十分であるうえに、ロータス効果による撥水性に劣った撥水性織編物となった。比較例2においては、熱水収縮性の高い糸を含む混繊交絡糸を使用しておらず、さらにポリエステル繊維Aの単糸繊度が太かったために、編地を得た実施例2と比較すると、撥水性に劣り、さらにハリコシ感にも劣るものとなった。
【0151】
また、比較例4では、ポリエステル繊維Bの総繊度が30dtex未満であり、ハリコシ感が不十分であった。比較例5では、ポリエステル繊維Aの総繊度が100dtexを超え、さらにポリエステル繊維Bの混率が低かったために、ふくらみ感は大きいものの、ハリコシ感が乏しいものであった。比較例6では、ポリエステル繊維Bの総繊度が100dtexを超えており、さらにポリエステル繊維Aの混率が低かったために、ハリコシ感が強すぎ、硬すぎる風合いであり、生地表面の微起毛感もすくなく、ころがり撥水性も悪かった。比較例7では、比較例1と同様の編物に対して撥水加工を施していないため、ハリコシ感が不十分であるだけでなく、撥水性が著しく劣っていた。比較例8では、ポリエステル繊維Aの単糸繊度が0.9dtexを超えており、ふくらみ感は大きいものの、ハリコシ感が乏しく、撥水性も不十分であった。撥水加工を行っていない比較例9においては、実施例1に比して撥水性が劣っていた。但し、比較例9に対して撥水処理を施すことによって優れた撥水性の付与が期待され、比較例9は撥水性織編物の製造中間体として有用である。
【0152】
図3は、比較例1で得られた織編物における、厚み部分を光学顕微鏡で撮影した写真である(倍率:100倍)。
図3から明らかなように、十分に熱水収縮されたポリエステル繊維を含まない混繊交絡糸を使用しているために、織編物が平坦となりポリエステル繊維Aによる突出部が形成されていないこと、また構成繊維間の空隙も大きくなることが理解できる。
混繊交絡糸を含み、表面に撥水剤が付着した撥水性織編物である。混繊交絡糸は、単糸繊度が0.2〜0.9dtex、かつ総繊度30〜100dtexのポリエステル繊維Aと、単糸繊度が1.0〜5.0dtex、かつ総繊度が30〜100dtexのポリエステル繊維Bとから構成される。ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの単糸繊度比(A/B)が1/20〜1/5の範囲である。ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとの質量比率(A/B)が20/80〜80/20の範囲である。混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aによる突出部が形成されており、JIS L 1096:2010に従って測定された伸長率(定荷重法、荷重14.7N)が、織物の形態を有する場合に3%以下であり、編物の形態を有する場合に120%以下である。