特許第6228728号(P6228728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228728
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】遠心送風ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20171030BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F04D29/28 E
   F04D25/08 302E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-122300(P2012-122300)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-245658(P2013-245658A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月7日
【審判番号】不服2016-18188(P2016-18188/J1)
【審判請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和彦
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 藤井 昇
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−75288(JP,A)
【文献】 実開昭63−65896(JP,U)
【文献】 特開2004−92446(JP,A)
【文献】 特開平7−332290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D29/00-35/00
H02K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
樹脂製のインペラと、
を備え、
前記モータは、
円筒状部と、当該円筒状部から外側方向に広がるフランジ部と、を有する金属製のバックヨークを備えたロータ部と、
前記円筒状部内に配置され、ステータ巻線を施したステータ鉄心を有する固定部と、を備え、
前記樹脂製のインペラは、
複数の羽根と、
前記複数の羽根の他端側を一つに接合してなる環状の円板部と、
前記環状の円板部の前記フランジ部と対向する面において、前記複数の羽根が設けられる領域と対向する領域に形成された複数の突起部と、を備え、
前記フランジ部は、前記複数の突起部が通過する複数の孔を備え
前記突起部は、前記フランジ部の孔を通過して前記フランジ部の裏面から飛び出した先端部分の外形が前記フランジ部の孔の寸法より大きく、
前記インペラの内周面が、径方向において、前記円筒状部の外側面から離されている遠心送風ファン。
【請求項2】
前記突起部の先端部分は前記フランジ部にカシメ固定されている請求項1に記載の遠心送風ファン。
【請求項3】
前記バックヨークが有する円筒状部の外径は前記インペラの円板部の内径以下である請求項1又は2に記載の遠心送風ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心送風ファンに関するものであり、特に、空気を軸方向に取り込んで遠心力で径方向に吐き出すインペラとバックヨークを固定結合する構造を改良した遠心送風ファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アウターローター型の遠心送風ファンのインペラとバックヨークを固定結合する構造は、樹脂製のインペラの内周部に一体に成形された収納部に、インサートや熱溶着によって、金属製のバックヨークを接合していた。しかし、用途の拡大に応じて、過酷な環境下での使用が求められるようになり、樹脂製の収納部と金属製のバックヨークの熱収縮の違いにより、収納部が破損するという問題が発生している。また、省スペースでの送風冷却が求められ、遠心送風ファンの小型化が求められている。
【0003】
この問題を解決するために、バックヨークの外周を樹脂製の収納部で覆わないで、インペラとバックヨークとを結合してなる構造を採用した例もある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、参照)。
【0004】
すなわち、特許文献1には、金属製のバックヨークの開口部又は外側面に樹脂製の環状部をインサート成形し、更に、その環状部にインペラを超音波溶着して、インペラとバックヨークを固定結合してなる構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、一枚の鋼板でバックヨークとインペラを一体形成してなる構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、バックヨークの開口部にフランジ部を設けて、このフランジ部に金属製のインペラの羽根を取り付けてなる構造が開示されている。この構造では、羽根は金属製であり、フランジ部に一枚ずつ取り付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−23877号公報。
【特許文献2】特開2004−52735号公報。
【特許文献3】特開平6−299995号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、金属製のバックヨークの開口部又は外側面に樹脂製の環状部をインサート成形し、その環状部にインペラを超音波溶着するものであるので、かなりの工数増加が予測され、コストアップにつながる。つまり、プレス加工により成形されたバックヨークを、インサート成形用の金型にセットして環状部を成形した後、これとは別の工程で作成されたインペラを、バックヨークと環状部がつながった部品に超音波溶着等を行って一体化する。この際、インペラの中心軸とバックヨークの中心軸とを合わせる必要があるが、インペラと環状部は別部品であるので、中心軸の軸合わせが容易ではなくなる。このため、例えば環状部にインペラの羽根の断面形状を掘り込んだとしても、その部分に各羽根を入れ込む作業が必要となるので、従来の方法に比べても工数は大幅に増え、コストアップになるという問題点がある。また、環状部がバックヨークに接合している部分は、バックヨークの開口部近傍や外側面であるが、その部分は熱の発生源に近いので熱の影響を受けかねないという問題点がある。
【0009】
また、特許文献2記載の技術は、一枚の鋼板でバックヨークとインペラを一体形成した構造が開示されているが、この構造ではある程度の高さのあるインペラ、又は羽根の数が多いインペラにおいては実現するのが難しいという問題点がある。
【0010】
また、特許文献3の技術は、バックヨークの開口部にフランジ部を設けて、このフランジ部に金属製のインペラの羽根を取り付けた構造が開示されているが、この構造では、羽根は金属製であり、その羽根をフランジ部に一枚ずつ取り付けなければならない。このため、工数がかかり、コストアップになるという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、部品点数や工数は従来のままで、送風量を増大させて送風性能の向上が図れるとともに、インペラとバックヨークを強固に固定結合させて、過酷な環境においても破損することのない遠心送風ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明の遠心送風ファンは、モータと、樹脂製のインペラと、を備え、前記モータは、フランジ部を有する金属製のバックヨークを備え、樹脂製のインペラは、環状の円板部と、を備え、前記円板部は複数の突起部を備え、前記フランジ部は、前記複数の突起部が通過する複数の孔を備え、前記円板部に対して逆側には、前記フランジ部の裏面があり、前記フランジ部の裏面から飛び出した突起部の先端部分の外形は、前記フランジ部の孔の寸法よりも大きい構成である(請求項1)。
【0014】
また、前記突起部の先端部は前記フランジ部にカシメ固定されている構成が好ましい(請求項2)。
【0016】
また、前記バックヨークが有する円筒状部の外径は前記インペラの円板部の内径以下である構成が好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
(1)バックヨークを樹脂製の収納部で覆わないことにより、インペラとバックヨークの熱的破損を防ぐことができ、過酷な環境下においても使用することができる。
(2)インペラの樹脂の使用量を減らして軽量化が図れるとともにコスト低減が図れる。
(3)バックヨークの外周の周りに余分な樹脂を配設する必要が無くなるので、インペラの内周とバックヨークの外周の間に広い空間を設けて送風量を増加させ、送風性能を向上させることができる。
(4)金属製のバックヨークのフランジ部はプレス加工によって、また、樹脂製のインペラの嵌合部は射出成形により、それぞれバックヨーク又はインペラと一体で成形することができるので、バックヨークとインペラをモータの回転軸に対して容易に軸合わせすることができ、製造が簡略化し、コストの低減と製品品質の向上が図れる。
(5)バックヨークとフランジ部は一体であり、このフランジ部にインペラを固定結合しているので、インペラに駆動力を容易に伝達することが可能になる。
(6)バックヨークにフランジ部を設け、このフランジ部にインペラを取り付けることにより、熱源となるモータのステータ巻線と離れた位置でインペラとバックヨークを接合することができるので、インペラの変形や破損の虞がなく、信頼性が向上する。
(7)部品点数及び組立工数を従来のままに抑えて、実現することができる。
(8)フランジ部の径に一致させさえすれば、種々の製品(シロッコ型やターボ型などのタイプが違う製品、流量の違う製品、羽根の高さが違う製品など)に対して、モータはそのままの構造でインペラを交換するだけで対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る遠心送風ファンの外観斜視図である。
図2】同上遠心送風ファンにおけるモータとインペラの構成を示す断面図である。
図3】同上遠心送風ファンにおけるインペラの断面図である。
図4】同上遠心送風ファンにおけるモータのバックヨーク及び回転軸の断面図である。
図5】同上遠心送風ファンにおけるバックヨークとインペラの固定結合を説明する断面図で、(a)は固定結合前の状態を示す図、(b)は接合固定後の状態を示す図である。
図6】同上遠心送風ファンにおけるバックヨークとインペラの接合固定後の状態を示す斜視図である。
図7】本発明の遠心送風ファンにおけるバックヨークとインペラを固定結合する構造の一変形例を示す底面図である。
図8図7のA−A断面図である。
図9】本発明の遠心送風ファンにおけるバックヨークとインペラを固定結合する構造の他の変形例を示す底面図である。
図10図9のB部拡大図で、(a)は固定結合する直前の状態を示す図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は固定結合後の状態を示す図、(d)は(c)のD−D断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の説明では、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく相対的なものであり、本発明の遠心送風ファンの各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0023】
図1は本発明に係る遠心送風ファンの全体を示す外観斜視図である。同図において、遠心送風ファン11は、本体12aと蓋12bからなるスクロール状のケーシング12を備え、ケーシング12に空気の吸込口13及び吐出口14が形成されている。吸込口13はケーシング12の蓋12bの中央部分に形成され、吐出口14は蓋12bと略直交する本体12a側面に形成されている。また、ケーシング12の内部には、モータ15及びインペラ16等が収容されている。
【0024】
図2乃至図6に遠心送風ファン11におけるモータ15及びインペラ16の細部構造を示す。
【0025】
図2に示すように、ケーシング12の本体12aには、筒状をした軸受ハウジング17が設けられている。その軸受ハウジング17の内側には2つのベアリング18,18の外輪が各々支持されており、ベアリング18,18の内輪にはモータ15の回転軸19が支持されている。回転軸19の下端にはリング20が装着されており、回転軸19の抜け止めと軸方向の位置決めをするようになっている。
【0026】
インペラ16は、合成樹脂製であり、周方向に配列された複数の羽根21,21…と、複数の羽根21,21…の一端側を一つに接合してなる環状帯部22と、複数の羽根21,21…の他端側を一つに接合してなる内周から外周にかけて平坦なドーナッツ状の円板部23と、を一体に有して、射出成形により円筒状に形成されている。また、その射出成形時、円板部23の下面(以下フランジ部25bと対向する面を指す)には、図3に示すように円板部23と一体に断面円形をした突起部24が周方向に略等間隔で複数個(本例では6個)形成される。
【0027】
バックヨーク25は、金属製であり、プレス成形により略有底円筒状に形成されており、開口周縁には外側面と略垂直に外側方向に広がるフランジ部25bを一体に設けている。なお、バックヨーク25の円筒状部25aの外径はインペラ16の内径よりも小さく形成されて、インペラ16の内側面とバックヨーク25の外側面との間に広い空間を設けており、フランジ部25bの外径はインペラ16における円板部23の外径と略同じ大きさ、あるいは若干大きく形成されている。また、バックヨーク25の円筒状部25aの中央部には、図2及び図4に示すように回転軸19が直接嵌合挿入されて、回転軸19と一体化されている。さらに、フランジ部25bには、インペラ16における円板部23の突起部24と略同じ周径で、かつ同じ間隔で複数個(本例では6個)の上下に貫通した孔26が形成されている。
【0028】
そして、バックヨーク25とインペラ16は、その組立時、図5の(a)に示すようにインペラ16側の突起部24をフランジ部25bの孔26に嵌入させ、またフランジ部25bの裏面側から僅かに飛び出した突起部24の先端部分を熱で溶融してカシメ固定することにより、インペラ16とバックヨーク25を回転軸19と共に同心的に配して一体化するようになっている。図2及び図5の(b)と図6は、その熱カシメ固定を終えて、回転軸19とインペラ16とバックヨーク25が同心的に固定結合されて一体化した状態を示している。なお、突起部24のカシメ固定は、熱カシメ固定に限ることなく、冷間カシメ固定であってもよい。
【0029】
説明を図2に戻すと、上記バックヨーク25の内周にはリング状のマグネット27が接着により固定されており、回転軸19とバックヨーク25とマグネット27とでモータ15のロータ部を構成している。軸受ハウジング17の外周には、ステータ巻線28を施したステータ鉄心29が固定され、モータ15の固定部を構成している。すなわち、ここでのモータ15は、アウターローター型のモータであり、ロータ部は回転軸19を中心に固定部の外側にインペラ16と共に回転可能に配設されている。そして、ステータ鉄心29の下方(図2のステータ29の下方)には、電子部品によりブラシレスモータとしての電子回路を構成したPCボード30が取り付けられている。
【0030】
PCボード30が組み込まれた電子回路は、モータ15の固定部に対してモータ15の回転部を回転させるための電流を制御する。ステータ巻線28とPCボード30に組み込まれた電子回路とは、図示しないリード線により接続されている。また、PCボード30には同じく図示しないリード線が接続されており、PCボード30に電力の供給を行うようになっている。
【0031】
このように構成された遠心送風ファン11は、PCボード30の電子回路に外部から電力が供給されると、電子回路の制御により固定部のステータ巻線28に駆動電力が供給され、回転軸19とバックヨーク25とマグネット27等でなる回転部がインペラ16と一体に回転する。そして、インペラ16が回転をすると、吸込口13から空気が回転軸19の軸方向に向かってインペラ16内に取り込まれる。また、インペラ16内に取り込まれた空気は、インペラ16の羽根21の回転による遠心力でインペラ16の径方向に送られ、吐出口14を通ってケーシング12の外側に吐き出される。これにより、遠心送風ファン11は、所定の方向に吐出口14を向けると、その向けた方向に送風を行うことができる。
【0032】
したがって、この実施形態による遠心送風ファン11によれば、インペラ16の円板部23に設けた嵌合部としての突起部24を、バックヨーク25のフランジ部25bに設けた孔26に挿入し、そしてフランジ部25bの裏面側より突出された突起部24の先端部分を裏面側でカシメ固定するようにしているので、従来の構造で用いていたバックヨークを樹脂製の収納部で覆ってインペラと結合する構造をとらなくても、インペラ16とバックヨーク25の中心軸を一致させて、インペラ16とバックヨーク25を回転軸19と共に容易に一体化することができる。
【0033】
また、金属製のバックヨーク25のフランジ部25b及び孔26はプレス加工により、また、樹脂製のインペラ16の嵌合部である突起部24は射出成形により、それぞれバックヨーク25又はインペラ16と一体で成形することができるので、バックヨーク25とインペラ16をモータ15の回転軸19に対して容易に軸合わせすることができる。
【0034】
さらに、この遠心送風ファン11の構造では、金属製のバックヨーク25にフランジ部25bを設けて、このフランジ部25bにインペラ16の円板部23を当接させて取り付けることにより、インペラ16の内側面をバックヨーク25の円筒状部25aの外側面から離し、インペラ16の内側面とバックヨーク25の外側面との間に広い空間を設けているので、吸込口13からの空気をインペラ16とバックヨーク25の間にスムーズに吸い込んで送風量を増加させることができる。また、バックヨーク25からインペラ16を離すことにより、インペラ16が熱源となるステータ巻線28から離され、インペラ16の熱的破損を防ぐことができるので、過酷な環境下においても使用することが可能になる。さらに、フランジ部25bにインペラ16の円板部23を直接取り付けているので、従来の送風ファンで問題となっていたバックヨーク25の外側面の周りに配設する余分な樹脂を無くすことができる。
【0035】
また、この遠心送風ファン11の構造では、フランジ部25bの径に一致させさえすれば、種々の製品(シロッコ型やターボ型などのタイプが違う製品、流量の違う製品、羽根の高さが違う製品など)に対して、モータ15はそのままの構造でインペラ16を交換するだけで対応が可能となる。
【0036】
次に、本発明の遠心送風ファンにおけるバックヨークとインペラを固定結合する構造の一変形例を図7及び図8を参照して説明する。なお、ここでは図1乃至図6と同一又は相当部分に同一符号を付してその説明を省略し、主として上記実施形態における図5及び図6に示す構造との相違点について述べる。
【0037】
図7はバックヨーク25とインペラ16を固定結合した状態で示す底面図、図8図7のA−A断面図である。この変形例は、インペラ16側の円板部23に嵌合部として鍵型のツメ31を設け、バックヨーク25のフランジ部25bに鍵型のツメ31が挿入される切り欠き32を設けたものである。
【0038】
円板部23側の鍵型のツメ31は、インペラ16を射出成形する際、同時に、そのインペラ16の円板部23の外周部分に、図8に示すように、円板部23の下面から下側(フランジ部25bと当接し合う方向)に向かい、かつ先端のツメ部がそれぞれ内側を向いた断面L字形のツメとして、図7に示すように、周方向に略等間隔で円板部23と一体に複数個(本例では6個)形成されている。
【0039】
一方、バックヨーク25側の切り欠き32は、図7に示すように、バックヨーク25をプレス成形する際、同時に、そのバックヨーク25のフランジ部25bの外周縁の部分に、インペラ16における円板部23の鍵型のツメ31と略同じ周径、すなわち鍵型のツメ31が嵌合できる大きさで、かつ同じ間隔で複数個(本例では6個)形成されている。
【0040】
そして、この構造では、インペラ16の鍵型のツメ31をフランジ部25bの切り欠き32に押し込むと、ツメ31の先端部分がフランジ部25bと当接して外側に弾性変形して逃げる。また、更に押し込まれて先端のツメ部がフランジ部25bの裏面側に到達すると、ツメ31が弾性力復帰されて先端のツメ部がフランジ部25bの裏面側に係合される。これにより、インペラ16とバックヨーク25が、回転軸19と共に中心軸を一致させて同心的、かつ強固に、また簡単に固定結合される。図7及び図8は、このようにして固定結合された状態で示している。
【0041】
なお、この変形例では、バックヨーク25のフランジ部25bに切り欠き32を設けた構造を開示したが、切り欠き32に変えてツメ31が挿入される孔を設けてもよいものである。
【0042】
次に、本発明の遠心送風ファンにおけるバックヨークとインペラを固定結合する構造の他の変形例を図9及び図10を参照して説明する。なお、ここでは図1乃至図6と同一又は相当部分に同一符号を付してその説明を省略し、主として上記実施形態における図5及び図6に示す構造との相違点について述べる。
【0043】
図9はバックヨーク25とインペラ16を固定結合する直前の状態で示す底面図、図10図9のB部拡大図である。この変形例は、インペラ16側の円板部23に嵌合部としての係止部33を設け、バックヨーク25のフランジ部25bに係止部33が挿入される切り欠き34を設けたものである。
【0044】
円板部23側の係止部33は、インペラ16を射出成形する際、同時に、そのインペラ16の円板部23の外周部分に該インペラ16と一体に、円板部23の下面から下側(フランジ部25bと当接し合う方向)に突出し、かつ先端がそれぞれ内側(回転軸19側)を向いて断面略L字形をした鍵状片として、周方向に略等間隔で複数個(本例では6個)形成されている。なお、係止部33の上面(以下鍵状片内側平面でフランジ部25bの裏面に当接する面を指す)と円板部23の下面との距離は、フランジ部25bの厚み(肉厚)と略等しく形成されている。
【0045】
バックヨーク25側の切り欠き34は、バックヨーク25をプレス成形する際、同時に、そのバックヨーク25のフランジ部25bの外周縁の部分に、インペラ16における円板部23の係止部33の内径よりも僅かに小さい外周径で、かつ係止部33よりも僅かに大きな周方向幅を有する第1切り欠き部34aと、係止部33の内径よりも僅かに大きな外周径で第1切り欠き部34aと連続して形成された第2切り欠き部34bを有して、円板部23の係止部33と略同じ間隔で複数個(本例では6個)形成されている。
【0046】
そして、この構造では、インペラ16の係止部33をフランジ部25bの第1切り欠き部34aに対応させて、円板部23をフランジ部25bに当接させると、係止部33が切り欠き34内にスムーズに嵌め込まれる。図9及び図10(a),(b)はこの状態を示し、この状態では係止部33の上面はフランジ部25bの下面(図10(b)の下方)と略同じ位置、または若干下側に位置している。次いで、バックヨーク25を軸心周りに、図9中に示す矢印方向に回転させると、図10(c),(d)に示すように、第2切り欠き部34bが係止部33と対応する位置に移動されるとともに、係止部33がフランジ部25bの下面側に配置され、係止部33の上面と円板部23の下面でフランジ部25bを挟持する。この挟持により、インペラ16とバックヨーク25は、回転軸19と共に中心軸を一致させて同心的に固定結合される。したがって、この変形例の場合でも製造が簡略化し、コストの低減が図れるとともに製品品質の向上が図れる。なお、バックヨーク25をインペラ16に対して回転させる代わりに、インペラ16をバックヨーク25に対して回転させても同じである。
【0047】
この図9及び図10に示した変形例でも、バックヨーク25のフランジ部25bに設ける切り欠き34は、切り欠きに変えて第1切り欠き部34aの部分と第2切り欠き部34bの部分を設けた孔として形成してもよいものである。
【0048】
また、バックヨーク25を回転させる際、フランジ部25bと係止部33との突き当たりをなくしてスムーズに回転操作ができるようにするためには、第1切り欠き部34aと第2切り欠き部34bを連接している箇所(以下、これを「連接箇所35」という)に対応している係止部33の端面に、R曲面若しくは連接箇所35側に向かって下る傾斜面を設けるとよい。
【0049】
さらに、係止部33の上面と円板部23の下面との距離は、連接箇所35と対応する端面側ではフランジ部25bの厚み(肉厚)よりも大きく、バックヨーク25の回転方向に向かって徐々に狭まり、最終的にはフランジ部25bの厚みよりも小さくなるように形成し、バックヨーク25の回転に伴ってフランジ部25が係止部33の上面と円板部23の下面の間に圧入挟持するようにしてもよい。このようにした場合には、インペラ16とバックヨーク25をより強固に結合することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲では上記以外の変形、改良等も本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
11 遠心送風ファン
13 吸込口
14 吐出口
15 モータ
16 インペラ
19 回転軸
21 羽根
22 環状帯部
23 円板部
24 突起部(嵌合部)
25 バックヨーク
25a 円筒状部
25b フランジ部
26 孔
27 マグネット
28 ステータ巻線
31 ツメ(嵌合部)
32 切り欠き
33 係止部(嵌合部)
34 切り欠き
34a 第1切り欠き部
34b 第2切り欠き部
35 連接箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10