特許第6228732号(P6228732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228732
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20171030BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20171030BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20171030BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20171030BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08J5/18CFC
   H05K1/03 610K
   H05K1/03 610L
   C08K5/00
   C08K3/00
   C08L63/00
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-253504(P2012-253504)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-101431(P2014-101431A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇圓田 大介
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英志
(72)【発明者】
【氏名】鳥成 剛
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
(72)【発明者】
【氏名】森 弘幸
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−141933(JP,A)
【文献】 特開2002−212262(JP,A)
【文献】 特開2011−124381(JP,A)
【文献】 特開2011−197269(JP,A)
【文献】 特開2005−298582(JP,A)
【文献】 特開昭62−280736(JP,A)
【文献】 特開2001−329050(JP,A)
【文献】 特開2004−217909(JP,A)
【文献】 特開2002−338806(JP,A)
【文献】 特開平06−032876(JP,A)
【文献】 特開平04−239018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02
C08J 5/12−5/22
H05K 1/03
C08K 3/00
C08L 63/00
C08K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ上に形成された電極に接続可能な配線回路基板を形成するための樹脂シートであって、
エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とを含み、
180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であり、
180℃で1時間熱硬化した後のガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする樹脂シート(ただし、1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物を含む場合、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸または酸無水物との反応生成物を含む場合、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部を開環変性して得られる水酸基含有エポキシ樹脂とメトキシシラン部分縮合物とを脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性ノボラック型エポキシ樹脂を含有する場合、及び、水酸基含有エポキシ樹脂と1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物とアルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール縮合反応させて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有する場合を除く)。
【請求項2】
180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の0.5重量%フッ化水素酸に60秒浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に240秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの実装技術において、CSP(Chip Size / Scale Package)技術が注目されている。この技術のうち、WLP(Wafer Level Package)に代表される、一般的な回路基板を用いないチップのみの形態のパッケージは、小型化と高集積の面で特に注目されるパッケージ形態のひとつである。WLPの製造方法としては、半導体チップの電極位置に配線回路基板の導体部分を対応させて両者を接続する方法が挙げられる。
【0003】
前記配線回路基板は、そのフレキシブルな性質のために、チップ実装などの製造工程での取り扱い性は良好ではない。よって、従来では、特許文献1、2などに示されているとおり、先ず、支持基板上にフレキシブルな配線回路基板を形成して適当な剛性を持った該配線回路基板とし、工程での取り扱い性を改善した状態でチップ実装を行ない、剛体であるチップが実装された後に支持基板を除去するといった方法が用いられている。
【0004】
チップが配線回路基板に実装され、支持基板が除去された状態のものは、電極パッドが露出しただけのベアチップと比べて、外部導体(外部回路など)との接続や実装を容易とする接続用導体を備えた1つの半導体装置となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−349198号公報
【特許文献2】特開2001−44589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記配線回路基板は、支持体上にベース絶縁層が形成されたベース材料に対して、セミアディティブ法や、サブトラクティブ法など、従来公知の回路基板やインターポーザの製造技術を適用することにより形成することができる。しかしながら、このような方法では、各種溶剤が使用されることから、ベース絶縁層は、高い溶剤耐性が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、配線回路基板を形成するための樹脂シートについて検討した。その結果、下記の構成を採用することにより、耐溶剤性を高くすることが可能であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る樹脂シートは、半導体チップ上に形成された電極に接続可能な配線回路基板を形成するための樹脂シートであって、
180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、樹脂シートは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下である。20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であるため、メチルエチルケトンに対する溶出が抑制されているといえる。従って、メチルエチルケトンに対する溶出が抑制され、耐溶剤性を有する前記樹脂シートを用いれば、精度の高い配線回路基板を製造することができる。
【0010】
前記構成においては、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の0.5重量%フッ化水素酸に60秒浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であることが好ましい。上記配線回路基板の製造においては、酸(例えば、フッ化水素酸)が使用されることがある。熱硬化後に、20℃以上25℃以下の0.5重量%フッ化水素酸に60秒浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であると、さらに、耐酸性を有する。その結果、前記樹脂シートを用いれば、より精度の高い配線回路基板を製造することができる。
【0011】
前記構成においては、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に240秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましい。上記配線回路基板の製造においては、アルカリ(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)が使用されることがある。熱硬化後に、20℃以上25℃以下の3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に240秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、耐アルカリ性を有する。その結果、前記樹脂シートを用いれば、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る樹脂シートの断面模式図である。
図2】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図3】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図4】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図5】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図6】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図7】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図8】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図9】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図10】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図11】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図12】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。図1は、本実施形態に係る樹脂シートの断面模式図である。なお、本明細書において、図には、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。尚、本発明で用いている「上面」、「下面」など、上下を示す語句は、あくまで層の位置関係を説明するためのものであって、配線回路基板や半導体装置の実際の上下の姿勢を限定するものではない。
【0014】
樹脂シート20a(図1参照)は、半導体チップ上に形成された電極に接続可能な配線回路基板を形成するための樹脂シートである。なお、樹脂シート20aを用いて、配線回路基板を形成する方法や、配線回路基板を用いて半導体装置を製造する方法については、後に図2図11を用いて詳述する。
【0015】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下である。メチルエチルケトンに浸漬した後の前記重量減少率は、0.8重量%以下であることが好ましい。また、メチルエチルケトンに浸漬した後の前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であるため、メチルエチルケトンに対する溶出が抑制されているといえる。従って、メチルエチルケトンに対する溶出が抑制され、耐溶剤性を有する樹脂シート20aを用いれば、精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0016】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の0.5重量%フッ化水素酸に60秒浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、0.5重量%フッ化水素酸に浸漬した後の前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、酸(例えば、フッ化水素酸)が使用されることがある。熱硬化後に、20℃以上25℃以下の0.5重量%フッ化水素酸に60秒浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下であると、さらに、耐酸性を有する。その結果、より精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0017】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に240秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に浸漬した後の前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、アルカリ(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)が使用されることがある。熱硬化後に、20℃以上25℃以下の3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に240秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、耐アルカリ性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0018】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下のSC−1(組成は重量比で、アンモニア水(15重量%):過酸化水素:水=1:2:5)に100秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の洗浄工程においては、SC−1が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、SC−1に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0019】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下のSC−2(組成は重量比で、塩酸(38重量%):過酸化水素:水=1:2:5)に160秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の洗浄工程においては、SC−2が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、SC−2に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0020】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下の30重量%の過酸化水素水に840秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、過酸化水素水が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、過酸化水素水に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0021】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下の脱脂用溶液(アルカリ、水溶性・非水溶性溶剤、界面活性剤等)に300秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、脱脂用溶液が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、脱脂用溶液に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。前記脱脂用溶液としては、日鉱メタルプレーティング(株)製、ラピットクリーン P-1000を挙げることができる。
【0022】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下の70重量%の硝酸水溶液に30秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、脱脂用溶液が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、脱脂用溶液に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。
【0023】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下のめっき前処理液(組成:金属塩を有するアルカリ水溶液)に30秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、ジンケート溶液が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、ジンケート溶液に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。前記ジンケート溶液としては、日鉱メタルプレーティング(株)製、スーパージンケートプロセスSZIIを挙げることができる。
【0024】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下のニッケルめっき用溶液(組成:硫酸ニッケル、次亜燐酸ナトリウム、有機酸等)に1800秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、ニッケルめっき用溶液が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、ニッケルめっき用溶液に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。前記ニッケルめっき用溶液としては、日鉱メタルプレーティング(株)製、KG-535-0:KG-535-1=3:1を挙げることができる。
【0025】
樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上80℃以下の金めっき用溶液(組成:燐酸化合物、亜硫酸化合物、アミン化合物等)1200秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.6重量%以下である。また、前記重量減少率は、少ないほどが好ましいが、例えば、0重量%以上、0.01重量%以上である。配線回路基板の製造においては、ニッケルめっき用溶液が使用されることがある。前記重量減少率が1.0%重量以下であると、さらに、ニッケルめっき用溶液に対する耐性を有する。その結果、さらに精度の高い配線回路基板を製造することができる。前記重量減少率は、エラストマーの含有量を低減させたり、高ガラス転移温度の樹脂を使用したり、熱硬化後の架橋密度を高めたりすることによって、低下させることができる。前記金めっき用溶液としては、日鉱メタルプレーティング(株)製、CF-500SSを挙げることができる。
【0026】
樹脂シート20aでは、180℃で1時間熱硬化した後のガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。樹脂シート20aがこのような構成を備えることにより、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性等を効果的に発揮することが可能となる。
【0027】
樹脂シート20aを形成する樹脂組成物は、上述のような特性を有し、半導体チップ上に形成された電極に接続可能な配線回路基板の形成に利用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば以下のA成分からE成分を含有するエポキシ樹脂組成物が好ましいものとして挙げられる。なお、C成分は必要に応じて添加しても添加しなくてもよい。
A成分:エポキシ樹脂
B成分:フェノール樹脂
C成分:エラストマー
D成分:無機充填剤
E成分:硬化促進剤
【0028】
(A成分)
エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0029】
エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
また、低応力性の観点から、アセタール基やポリオキシアルキレン基等の柔軟性骨格を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、アセタール基を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液体状で取り扱いが良好であることから、特に好適に用いることができる。
【0031】
エポキシ樹脂(A成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0032】
(B成分)
フェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂、等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0033】
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂(A成分)との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0034】
エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0035】
(C成分)
エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)とともに用いられるエラストマー(C成分)は、被着体への追従性(埋め込み性)に必要な可撓性をエポキシ樹脂組成物に付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではない。例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。中でも、エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られる樹脂シート20aの耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0036】
なお、アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、定法によってラジカル重合することにより合成することができる。ラジカル重合の方法としては、有機溶剤を溶媒に行う溶液重合法や、水中に原料モノマーを分散させながら重合を行う懸濁重合法が用いられる。その際に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド及びメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が用いられる。なお、懸濁重合の場合は、例えばポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールのような分散剤を加えることが望ましい。
【0037】
エラストマー(C成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の15〜30重量%であることが好ましい。エラストマー(C成分)の含有量が15重量%以上であると、樹脂シート20aの柔軟性及び可撓性を得やすい。一方、上記含有量が30重量%以下であると、樹脂シート20aの硬化体の強度及び耐熱性の低下を抑制できる。
【0038】
また、エラストマー(C成分)のエポキシ樹脂(A成分)に対する重量比率(C成分の重量/A成分の重量)は、3〜4.7の範囲に設定することが好ましい。上記重量比率が3以上であると、樹脂シート20aの流動性をコントロールすることが容易となり、4.7以下であると、樹脂シート20aの接着性を良好とすることができる。
【0039】
(D成分)
無機質充填剤(D成分)は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種充填剤を用いることができ、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0040】
中でも、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性の点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることがより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.1〜30μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.3〜15μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。
【0041】
なお、平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0042】
無機質充填剤(D成分)の含有量は、好ましくはエポキシ樹脂組成物全体の70〜95重量%であり、より好ましくは72〜93重量%であり、さらに好ましくは75〜90重量%である。無機質充填剤(D成分)の含有量を70重量%以上とすることにより、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性を良好とすることができる。一方、上記含有量を90重量%とすることにより、樹脂シート20aの柔軟性や流動性が悪くなることを抑制できる。
【0043】
(E成分)
硬化促進剤(E成分)は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、硬化性と保存性の観点から、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物や、イミダゾール系化合物が好適に用いられる。これら硬化促進剤は、単独で用いても良いし、他の硬化促進剤と併用しても構わない。
【0044】
硬化促進剤(E成分)の含有量は、エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0045】
(その他の成分)
また、エポキシ樹脂組成物には、A成分からE成分に加えて、難燃剤成分を加えてもよい。難燃剤組成分としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物等の各種金属水酸化物を用いることができる。比較的少ない添加量で難燃性を発揮できる点や、コスト的な観点から水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを用いることが好ましく、水酸化アルミニウムを用いることが特に好ましい。
【0046】
金属水酸化物の平均粒径としては、エポキシ樹脂組成物を加熱した際に適当な流動性を確保するという観点から、平均粒径が1〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmである。金属水酸化物の平均粒径が1μm未満では、エポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となるとともに、エポキシ樹脂組成物の加熱時における流動性が十分に得られない傾向がある。また、平均粒径が10μmを超えると、金属水酸化物(E成分)の添加量あたりの表面積が小さくなるため、難燃効果が低下する傾向がみられる。
【0047】
また、難燃剤成分としては上記金属水酸化物のほか、ホスファゼン化合物を用いることができる。ホスファゼン化合物としては、例えばSPR−100、SA−100、SP−100(以上、大塚化学株式会社)、FP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0048】
少量でも難燃効果を発揮するという観点から、式(1)又は式(2)で表されるホスファゼン化合物が好ましく、これらホスファンゼン化合物に含まれるリン元素の含有率は、12重量%以上であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、nは3〜25の整数であり、R及びRは同一又は異なって、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する1価の有機基である。)
【化2】
(式(2)中、n及びmは、それぞれ独立して3〜25の整数である。R及びRは同一又は異なって、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する1価の有機基である。Rは、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する2価の有機基である。)
【0049】
また、安定性及びボイドの生成抑制という観点から、式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーを用いることが好ましい。
【化3】
(式(3)中、nは3〜25の整数であり、R及びRは同一又は異なって、水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基又はグリシジル基である。)
【0050】
上記式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーは、例えばFP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0051】
ホスファゼン化合物の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(D成分)、硬化促進剤(E成分)及びホスファゼン化合物(その他の成分)を含む有機成分全体の10〜30重量%であることが好ましい。すなわち、ホスファゼン化合物の含有量が、有機成分全体の10重量%未満では、樹脂シート20aの難燃性が低下する傾向がみられる。上記含有量が有機成分全体の30重量%を超えると、樹脂シート20aの表面にタックが生じやすくなり、作業性が低下する傾向がみられる。
【0052】
また、上記金属水酸化物及びホスファゼン化合物を併用し、シート封止に必要な可撓性を確保しつつ、難燃性に優れた樹脂シート20aを得ることもできる。両者を併用することにより、金属水酸化物のみを用いた場合の十分な難燃性と、ホスファゼン化合物のみを用いた場合は、十分な可撓性を得ることができる。
【0053】
金属水酸化物及びホスファゼン化合物を併用する場合の両者の含有量は、両成分の合計量が、エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは75〜85重量%である。上記合計量が70重量%未満では、樹脂シート20aの十分な難燃性が得ることが困難となり、90重量%を超えると、樹脂シート20aの表面にタックが生じやすくなり、作業性が低下する傾向がみられる。
【0054】
なお、エポキシ樹脂組成物は、上記の各成分以外に必要に応じて、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0055】
(樹脂シートの作製方法)
樹脂シート20aの作製方法を以下に説明する。まず、上述の各成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製する。混合方法は、各成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。その後、例えば、各成分を有機溶剤等に溶解又は分散したワニスを塗工してシート状に形成する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより混練物を調製し、このようにして得られた混練物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0056】
ワニスを用いる具体的な作製手順としては、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の支持体上に塗布し乾燥させることにより、樹脂シート20aを得ることができる。そして必要により、樹脂シート20aの表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせてもよい。
【0057】
上記有機溶剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。また通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0058】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、特に制限されるものではないが、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、通常、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。
【0059】
一方、混練を用いる場合には、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤の各成分をミキサーなど公知の方法を用いて混合し、その後、溶融混練することにより混練物を調製する。溶融混練する方法としては、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機により、溶融混練する方法などが挙げられる。混練条件としては、温度が、上記した各成分の軟化点以上であれば特に制限されず、例えば30〜150℃、エポキン樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは40〜140℃、さらに好ましくは60〜120℃であり、時間が、例えば1〜30分間、好ましくは5〜15分間である。これによって、混練物を調製することができる。
【0060】
得られる混練物を押出成形により成形することにより、樹脂シート20aを得ることができる。具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、押出成形することで、樹脂シート20aを形成することができる。このような押出方法としては、特に制限されず、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。押出温度としては、上記した各成分の軟化点以上であれば、特に制限されないが、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは、50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。以上により、樹脂シート20aを形成することができる。
【0061】
このようにして得られた樹脂シート20aは、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、樹脂シート20aは、単層構造にて使用してもよいし、2層以上の多層構造に積層してなる積層体として使用してもよい。
【0062】
(半導体装置の製造方法)
以下、図2図12を参照しながら、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を詳細に説明する。図2図12は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0063】
〔剥離層を有する支持体の準備〕
まず、支持体1を準備する(図2参照)。支持体1は、一定以上の強度を有することが好ましい。
【0064】
支持体1としては、特に限定されないが、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaAsウェハ等の化合物ウェハ、ガラスウェハ、SUS、6−4Alloy,Ni箔、Al箔等の金属箔等が挙げられる。平面視で、丸い形状を採用する場合は、シリコンウェハ又はガラスウェハが好ましい。また、平面視で矩形の場合は、SUS板、又は、ガラス板が好ましい。
【0065】
また、支持体1として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、紙等を用いることもできる。
【0066】
支持体1は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。支持体の厚みは、特に限定されないが、例えば、通常10μm〜20mm程度である。
【0067】
次に、支持体1上に剥離層5を形成する。
【0068】
剥離層5は、50℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に60秒間浸漬し、150℃で30分乾燥した後の重量減少率が1.0重量%以上であることが好ましく、1.2重量%以上であることがより好ましく、1.3重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記重量減少率は、大きいほど好ましいが、例えば、50重量%以下、30重量%以下である。50℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に60秒間浸漬し、150℃で30分乾燥した後の重量減少率が1重量%以上であるため、剥離層5がN−メチル−2−ピロリドンに溶け出し、充分に重量減少しているといえる。その結果、剥離層5をN−メチル−2−ピロリドンにより容易に剥離することができる。剥離層5の前記重量減少率は、例えば、原材料のNMPに対する溶解性によりコントロールすることができる。すなわち、原材料として、NMPに対する溶解性の高いものを選択するほど、当該原材料を用いて得られた溶剤離型シートは、NMPに対する溶解性は高くなる。
【0069】
剥離層5は、ダイナミック硬さが10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。また、前記ダイナミック硬さは、小さいほど好ましいが、例えば、0.001以上である。前記ダイナミック硬さが10以下であると、剥離層5の被着体への接着力を充分なものとすることができる。
【0070】
剥離層5は、表面硬度が、10GPa以下であることが好ましく、8GPa以下であることがより好ましく、6GPa以下であることがさらに好ましい。また、前記表面硬度は、小さいほど好ましいが、例えば、0.05GPa以上である。前記表面硬度が、10GPa以下であると、該剥離層5と被着体の接着力を制御することができる。
【0071】
剥離層5は、3%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に5分浸漬した後の重量減少率が1重量%未満であることが好ましく、0.9重量%未満であることがより好ましく、0.8重量%未満であることがさらに好ましい。また、前記重量減少率は、小さいほど好ましいが、例えば、0重量%以上、0.001重量%以上である。3%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に5分浸漬した後の重量減少率が1重量%未満であると、3%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液への溶け出しが少ないため、耐溶剤性(特に、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に対する耐溶剤性)を高めることができる。剥離層5の前記重量減少率は、例えば、用いるジアミンの組成(ジアミンの水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に対する溶解性)により、コントロールすることができる。
【0072】
剥離層5は、シリコンウエハに貼り合わせた後に剥離した際の、シリコンウエハ面上の0.2μm以上のパーティクルの増加量が、シリコンウエハに貼り合わせる前に対して、1000個/6インチウェハ未満であることが好ましく、900個/6インチウェハ未満であることがより好ましく、800個/6インチウェハ未満であることさらに好ましい。シリコンウエハに貼り合わせた後に剥離した際の、シリコンウエハ面上の0.2μm以上のパーティクルの増加量が、シリコンウエハに貼り合わせる前に対して、1000個/6インチウェハ未満であると、剥離後の糊残りを抑制することができる。
【0073】
剥離層5は、200℃に1分間保持した後の当該温度におけるシリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm以上であることが好ましく、0.30kg/5×5mm以上であることがより好ましく、0.50kg/5×5mm以上であることがさらに好ましい。また、剥離層5は、200℃を超え、500℃以下の温度領域におけるいずれかの温度において3分間保持した後の当該温度におけるシリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm未満であることが好ましく、0.10kg/5×5mm未満であることがより好ましく、0.05kg/5×5mm未満であることがさらに好ましい。200℃に1分間保持した後の当該温度におけるシリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm以上であり、200℃を超え、500℃以下の温度領域におけるいずれかの温度において3分間保持した後の当該温度におけるシリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm未満であると、より高い温度で剥離性を発現する剥離層5とすることができる。剥離層の前記剪断接着力は、例えば、剥離層に含まれる官能基数によりコントロールすることができる。
また、前記剥離層のシリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm未満(好ましくは、0.10kg/5×5mm未満、より好ましくは、0.05kg/5×5mm未満)となる温度は、200℃を超え、500℃以下の温度領域におけるいずれかの温度であれば、特に限定されないが、好ましくは、220℃を超え、480℃以下であり、より好ましくは、240℃を超え、450℃以下である。
なお、前記剥離層は、200℃以下であっても、長時間保持すると、シリコンウエハに対する前記剪断接着力は、0.25kg/5×5mm未満となる場合がある。また、前記剥離層は、200℃より大きい温度に保持したとしても、短時間であれば、シリコンウエハに対する前記剪断接着力は、0.25kg/5×5mm未満とはならない場合がある。
すなわち、「200℃より大きく500℃以下の温度領域におけるいずれかの温度において3分間保持した後の当該温度におけるシリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm未満」は、高温での剥離性を評価する指標であり、「200℃より大きく500℃以下の温度領域におけるいずれかの温度」にすると、直ちに、シリコンウエハに対する剪断接着力が0.25kg/5×5mm未満になることを意味するものではない。また、「200℃より大きく500℃以下の温度領域におけるいずれかの温度」にしなければ、剥離性を発現しないことを意味するものでもない。
【0074】
剥離層5は、50℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に60秒間浸漬し、150℃で30分乾燥した後の重量減少率が1.0重量%以上であれば、その形成材料は、特に限定されないが、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ゴム樹脂等を挙げることができる。
【0075】
前記ポリイミド樹脂は、一般的に、その前駆体であるポリアミド酸をイミド化(脱水縮合)することにより得ることができる。ポリアミド酸をイミド化する方法としては、例えば、従来公知の加熱イミド化法、共沸脱水法、化学的イミド化法等を採用することができる。なかでも、加熱イミド化法が好ましい。加熱イミド化法を採用する場合、ポリイミド樹脂の酸化による劣化を防止するため、窒素雰囲気下や、真空中等の不活性雰囲気下にて加熱処理を行なうことが好ましい。
【0076】
前記ポリアミド酸は、適宜選択した溶媒中で、酸無水物とジアミンとを実質的に等モル比となるように仕込み、反応させて得ることができる。
【0077】
前記ポリイミド樹脂としては、エーテル構造を有するジアミンに由来する構成単位を有することが好ましい。前記エーテル構造を有するジアミンは、エーテル構造を有し、且つ、アミン構造を有する端末を少なくとも2つ有する化合物である限り、特に限定されない。前記エーテル構造を有するジアミンのなかでも、グリコール骨格を有するジアミンであることが好ましい。前記ポリイミド樹脂が、エーテル構造を有するジアミンに由来する構成単位、特に、グリコール骨格を有するジアミンに由来する構成単位を有している場合、溶剤離型シートを高温(例えば、200℃以上)に加熱すると、剪断接着力を低下させることができる。この現象について、本発明者らは、高温に加熱されることにより、前記エーテル構造、又は、前記グリコール骨格が溶剤離型シートを構成する樹脂から脱離し、この脱離により剪断接着力が低下している推察している。
なお、前記エーテル構造、又は、前記グリコール骨格が溶剤離型シートを構成する樹脂から脱離していることは、例えば、300℃での加熱を30分する前後におけるFT−IRスペクトルを比較し、2800〜3000のスペクトルが加熱前後で減少していることにより確認できる。
【0078】
前記グリコール骨格を有するジアミンとしては、例えば、ポリプロピレングリコール構造を有し、且つ、アミノ基を両末端に1つずつ有するジアミン、ポリエチレングリコール構造を有し、且つ、アミノ基を両末端に1つずつ有するジアミン、ポリテトラメチレングリコール構造を有し、且つ、アミノ基を両末端に1つずつ有するジアミンを挙げることができる。また、これらのグリコール構造の複数を有し、且つ、アミノ基を両末端に1つずつ有するジアミンを挙げることができる。
【0079】
前記エーテル構造を有するジアミンの分子量は、100〜5000の範囲内であることが好ましく、150〜4800であることがより好ましい。前記エーテル構造を有するジアミンの分子量が100〜5000の範囲内であると、低温での接着力が高く、且つ、高温において剥離性を奏する剥離層5をえやすい。
【0080】
前記ポリイミド樹脂の形成には、エーテル構造を有するジアミン以外に、エーテル構造を有さない他のジアミンを併用することもできる。エーテル構造を有さない他のジアミンとしては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを挙げることができる。エーテル構造を有さない他のジアミンを併用することにより、被着体との密着力をコントロールすることができる。エーテル構造を有するジアミンと、エーテル構造を有さない他のジアミンとの混合比率としては、モル比で、100:0〜20:80が好ましく、99:1〜30:70がより好ましい。
【0081】
前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,9−ジオキサ−1,12−ジアミノドデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(α、ω−ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン)などが挙げられる。前記脂肪族ジアミンの分子量は、通常、50〜1,000,000であり、好ましくは100〜30,000である。
【0082】
芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。前記芳香族ジアミンの分子量は、通常、50〜1000であり、好ましくは100〜500である。なお、本明細書において、分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値(重量平均分子量)をいう。
【0083】
前記酸無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記酸無水物と前記ジアミンを反応させる際の溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロペンタノン等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、複数を混合して用いてもよい。また、原材料や樹脂の溶解性を調整するために、トルエンや、キシレン等の非極性の溶媒を適宜、混合して用いてもよい。
【0085】
剥離層5は、例えば、次の通りにして作製される。先ず、前記ポリアミド酸を含む溶液を作製する。次に、前記溶液を基材上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させる。前記基材としては、SUS304、6−4アロイ、アルミ箔、銅箔、Ni箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等が使用可能である。また、塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工、スピンコート塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度50〜150℃、乾燥時間3〜30分間の範囲内で行われる。これにより、本実施形態に係る剥離層5が得られる。
【0086】
剥離層5を有する支持体1は、剥離層5を支持体1に転写して作製することができる。また、剥離層5を有する支持体1は、ポリアミド酸を含む溶液を直接、支持体1に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させて作製してもよい。
【0087】
〔配線回路基板の形成〕
次に、支持体1の剥離層5上に配線回路基板2を形成する。剥離層を有する支持体上に配線回路基板を形成する方法には、セミアディティブ法や、サブトラクティブ法など、従来公知の回路基板やインターポーザの製造技術を適用してもよい。支持体上に配線回路基板を形成することにより、製造工程中、寸法安定性が良好となり、また、薄い配線回路基板の取り扱い性が良好となる。以下、配線回路基板の形成方法の一例を示す。
【0088】
〔ベース絶縁層の形成〕
図3に示すように、ベース絶縁層としての樹脂シート20aを支持体1の剥離層5上に貼り付ける。樹脂シート20aの厚さは、3〜50μmが好ましい。
【0089】
次に、外部接続用導体部22を形成すべき位置に、開口h1を形成する(図4参照)。開口h1の形成方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、感光性材料を用いて露光現像することにより、開口h1を形成することができる。開口形状は特に限定されないが、円形が好ましく、直径も適宜設定可能であるが、例えば、5μm〜500μmとすることができる。その後、熱硬化する。熱硬化の条件としては、加熱温度として好ましくは20℃から150℃、より好ましくは40℃から120℃、加熱時間として好ましくは0.5分から60分、より好ましくは1分から30分の間を採用することができる。
【0090】
〔接点用の金属膜の形成〕
次に、開口h1に接点用の金属膜211を形成する(図5参照)。金属膜211を形成することにより、電気的な接続をより好ましく行い、耐食性を高めることができる。金属膜211の形成方法は特に限定されないが、めっきが好ましく、該金属膜の材料としては、銅、金、銀、白金、鉛、錫、ニッケル、コバルト、インジウム、ロジウム、クロム、タングステン、ルテニウムなどの単独金属、またはこれら2種類以上からなる合金などが挙げられる。これらの中でも好ましい材料としては、金、錫、ニッケルなどが挙げられ、下地層をNiとし、表層をAuとする2層構造などが好ましい金属膜の態様として挙げられる。
【0091】
〔種膜、下側の導通路、導体層の形成〕
次に、必要に応じて、導体層23、及び、導通路25となるべきとなるべき部分の壁面に金属材料を良好に堆積させるための種膜(金属薄膜)23aを形成する(図6参照)。種膜23aは、例えば、スパッタリングによって形成することができる。種膜の材料としては、例えば、銅、金、銀、白金、鉛、錫、ニッケル、コバルト、インジウム、ロジウム、クロム、タングステン、ルテニウムなどの単独金属、またはこれら2種類以上からなる合金などが用いられる。導体層23の厚さは、特に限定はされないが、1〜500nmの範囲で適宜選択すればよい。また、導通路25は円柱状が好ましい形状であって、その直径は5〜500μm、好ましくは、5〜300μmである。その後、所定の配線パターンを有する導体層23、導通路25を形成する。配線パターンは、例えば、電解めっきにより形成することができる。その後、導体層23の無い部分の種膜を除去する。
【0092】
次に、図7に示すように、導体層23の上をめっきレジストr1にて覆い(導通路を形成すべき部分は除く)、かつ、支持体1の下面を全面的にレジストr2にて覆い、電解めっきにより、導通路24を形成する。
【0093】
〔接着剤層の形成〕
次に、めっきレジストr1、r2を除去し、露出した導体層23および導通路24を埋没させるように、エポキシ及びポリイミドを主成分とする接着剤層20bを形成し、導通路24の上端面が端子部として接着層上面に露出するように、該接着層をアルカリ性溶液などにてエッチングする(図8参照)。
【0094】
〔接続用導体部の端面への金属膜の形成〕
次に、図9に示すように、導通路24の上端面に、例えば、電解めっきにより、接続用導体部21を形成する。接続用導体部21は、例えば、ニッケル膜、金膜等により、形成することができる。以上により、配線回路基板が形成される。上記配線回路基板の形成工程においては、各種溶剤(特に、メチルエチルケトン)、が使用される場合がある。しかしながら、樹脂シート20aは、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下のメチルエチルケトンに2400秒間浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下である。従って、メチルエチルケトンに対する溶出が抑制されているといえる。その結果、樹脂シート20aを用いれば、精度の高い配線回路基板を製造することができる。
また、樹脂シート20aにおいて、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の0.5重量%フッ化水素酸に60秒浸漬した後の重量減少率が1.0重量%以下である場合には、さらに、耐酸性を有することになる。この場合、前記配線回路基板の形成工程において酸が使用されても、より精度の高い配線回路基板を製造することができる。
また、樹脂シート20aにおいて、180℃で1時間熱硬化した後に、20℃以上25℃以下の3.0重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に240秒浸漬した後の重量減少率が1.0%重量以下である場合には、さらに、耐アルカリ性を有することになる。この場合、前記配線回路基板の形成工程においてアルカリが使用されても、より精度の高い配線回路基板を製造することができる。
【0095】
〔実装工程、剥離工程、ダイシング〕
次に、上記で得た配線回路基板2(支持体1が剥離可能に付いたもの)に対して、チップを実装する。具体的には、半導体チップ3の電極31を、配線回路基板2の接続用導体部21と対向させるように配置した後(図10参照)、両者を接続して、配線回路基板2に半導体チップ3を実装する(図11参照)。なお、図11では、実装後の接続用導体部21、電極31のそれぞれの突起を省略して示している。その後、接着剤層20bのエージングを行い、さらに、配線回路基板2上の各チップ3に樹脂封止を施す(図示せず)。なお、樹脂封止には、シート状の封止用樹脂シートを用いてもよく、液状の樹脂封止材を用いてもよい。その後、剥離層5における支持体1とは反対側の面を界面として、支持体1を剥離層5とともに剥離する。剥離方法としては、N−メチル−2−ピロリドンを用いる溶剤剥離や、加熱による剥離が挙げられる。加熱による剥離の場合、加熱温度の下限値は、例えば、50℃、80℃、100℃、150℃、180℃とすることができる。また、前記剥離工程時の温度の上限は、好ましくは260℃であり、より好ましくは230℃であり、さらに好ましくは、200℃である。また、前記剥離工程において前記温度条件下に維持する時間は、温度に応じて異なるが、0.05〜120分が好ましく、0.1〜30分がより好ましい。なお、前記実装工程以降の工程においては260℃以上の熱に晒されないようにすることが好ましい。これにより、ハンダ等が溶融することを抑制することができる。これにより、半導体チップ3が配線回路基板2に実装された半導体装置4が得られる。
なお、支持体1を剥離した配線回路基板2に対して、ハンダボールを付与するといった加工を施してもよい。
【0096】
以上、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明したが、本発明における半導体装置の製造方法は、上述した例に限定されず、本発明の要旨の範囲内で適宜変更可能である。
【実施例】
【0097】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、部とあるのは、重量部を意味する。
【0098】
(実施例1)
<樹脂シートの作成>
下記(a)〜(f)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度26.8重量%の樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ100μmの樹脂シートを作製した。
(a)アクリル樹脂(ナガセケムテックス(株)製、テイサンレジンSG−70L)
50部
(b)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN1020−4P)
4.752部
(c)ビフェニレン型フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS)
4.848部
(d)シリカフィラー(アドマテックス(株)製、SE2050MC(60%))
17.78部
(e)シランカップリング剤((信越化学工業(株)製、KBM−303) 0.08部
(f)硬化促進剤としてのイミダゾール化合物(四国化成(株)製、2PHZ−PW)
0.101部
【0099】
(実施例2)
<樹脂シートの作成>
下記(a)〜(f)をミキサーにてプレンドし、2軸混練機にて120℃の条件下で2分間混練し、続いて、ダイから押出しすることで、厚さ20μmの樹脂シートを得た。
(a)エポキシ樹脂(新日鐵化学社製、YSLV−80XY) 280部
(b)フェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7851−SS 300部
(c)シリカフィラー(電気化学工業社製、FB−9454) 3300部
(d)シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403) 10部
(e)硬化促進剤(四国化成工業社製、2P4MHZ−PW) 6部
(f)カーボン(三菱化学社製、#40) 10部
【0100】
(フッ化水素酸へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃の0.5%のフッ化水素酸(HF)に60秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0101】
(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃の3%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)に5分浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0102】
(SC−1へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃のSC−1(組成は重量比で、アンモニア水(15重量%):過酸化水素:水=1:2:5)に100秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0103】
(SC−2へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃のSC−2(組成は重量比で、塩酸(38重量%):過酸化水素:水=1:2:5)に160秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0104】
(過酸化水素水へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃の30%の過酸化水素水に840秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0105】
(メチルエチルケトンへ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃のメチルエチルケトン(MEK)に2400秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0106】
(脱脂用溶液へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、50℃の脱脂用溶液(日鉱メタルプレーティング(株)製、ラピットクリーン P-1000)に300秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0107】
(硝酸水溶液へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃の70%の硝酸水溶液に30秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0108】
(めっき前処理液へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、23℃のめっき前処理液(日鉱メタルプレーティング(株)製、スーパージンケートプロセスSZII)に30秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0109】
(ニッケルめっき用溶液へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、80℃のニッケルめっき用溶液(日鉱メタルプレーティング(株)製、KG-535-0:KG-535-1=3:1)に1800秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0110】
(金めっき用溶液へ浸漬した際の重量減少率の測定)
まず、実施例1、及び、実施例2に係る樹脂シートを30mm×100mmに切り出し、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、75℃の金めっき用溶液(日鉱メタルプレーティング(株)製、CF-500SS)に1200秒浸漬した。室温(23℃)で、超純水にて3分間の洗浄を2回行なった後、120℃で30分間乾燥させた。その後、デシケーター内で室温に戻し、重量(浸漬後の重量)を測定した。
重量減少率は、下記式により求めた。結果を表1に示す。
(重量減少率(重量%))=[1−((浸漬後の重量)/(浸漬前の重量))]×100
【0111】
【表1】
【0112】
(樹脂シートのガラス転移温度(Tg)の測定)
引張貯蔵弾性率の測定は、固体粘弾性測定装置(レオメトリックサイエンティック社製:形式:RSA−III)を用いて行った。具体的には、樹脂シートを180℃で1時間加熱して熱硬化させ、この硬化物からサンプルサイズを長さ400mm×幅10mm×厚さ200μmとして測定試料を得た後、測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし−50〜300℃の温度域での引張貯蔵弾性率及び損失弾性率を、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの条件下で測定し、tanδ(G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率))の値を算出することによりガラス転移温度(Tg)を得た。その結果、実施例1の樹脂シートのガラス転移温度は、105℃となった。また、実施例2の樹脂シートのガラス転移温度は、110℃となった。
【符号の説明】
【0113】
1 支持体
2 配線回路基板
20a 樹脂シート(ベース絶縁層)
20b 接着剤層
21 接続用導体部
22 外部接続用導体部
23 導体層
23a 種膜
24 導通路
25 導通路
211 金属膜
3 半導体チップ
31 電極
4 半導体装置
5 剥離層
r1 レジスト
r2 レジスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12