特許第6228734号(P6228734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228734電子部品封止用樹脂シート、樹脂封止型半導体装置、及び、樹脂封止型半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228734
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】電子部品封止用樹脂シート、樹脂封止型半導体装置、及び、樹脂封止型半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08J5/18CFC
   H01L23/30 R
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-26935(P2013-26935)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156516(P2014-156516A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 英志
(72)【発明者】
【氏名】森 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219726(JP,A)
【文献】 特開平07−216196(JP,A)
【文献】 特開2012−046657(JP,A)
【文献】 特開2013−007028(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/097022(WO,A1)
【文献】 特開平08−255806(JP,A)
【文献】 特開2006−032478(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020688(WO,A1)
【文献】 特開2000−053876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02
C08J 5/12−5/22
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂封止型半導体装置の製造に使用され、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込むための電子部品封止用樹脂シートであって、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含み、
さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含み、
混練押出により製造されており、
厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であることを特徴とする電子部品封止用樹脂シート(ただし、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(Mab)・n(Qde)・cH2O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕。
【請求項2】
厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下において、100g/m・24時間以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品封止用樹脂シート。
【請求項3】
被着体と、
前記被着体にフリップチップ接続された半導体チップと、
前記半導体チップを封止する電子部品封止用樹脂シートと
を備え、
前記電子部品封止用樹脂シートは、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含み、さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含み、混練押出により製造されており、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であり、
前記被着体と前記半導体チップとの間には、空隙が形成されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置(ただし、前記電子部品封止用樹脂シートは、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(Mab)・n(Qde)・cH2O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子部品封止用樹脂シートを有する樹脂封止型半導体装置。
【請求項5】
樹脂封止型半導体装置の製造方法であって、
被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込む工程を具備し、
前記電子部品封止用樹脂シートは、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含み、
さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含み、
混練押出により製造されており、
厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法(ただし、前記電子部品封止用樹脂シートは、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(Mab)・n(Qde)・cH2O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品封止用樹脂シート、樹脂封止型半導体装置、及び、樹脂封止型半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造においては、リードフレームや回路基板等の各種基板に半導体チップを搭載した後、半導体チップ等の電子部品を覆うように樹脂封止が行なわれる。このようにして製造される樹脂封止型半導体装置においては、封止樹脂の吸水性が高いと信頼性が低下するという問題があった。そこで、従来、吸水性の低い封止樹脂を使用することにより、樹脂封止型半導体装置の信頼性の向上が図られていた。
【0003】
一方、従来、耐透湿性を有するポリプロピレン系樹脂シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のポリプロピレン系樹脂シートは、各種包装や容器に使用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−148853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂封止型半導体装置の製造において、吸水性の低い封止樹脂を使用したとしても、信頼性が向上しない場合があるといった問題があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることが可能な電子部品封止用樹脂シート、及び、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、上記従来の問題点を解決すべく検討した結果、樹脂封止型半導体装置においては、封止樹脂の透湿度が信頼性に関与していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る電子部品封止用樹脂シートは、樹脂封止型半導体装置の製造に使用される電子部品封止用樹脂シートであって、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含み、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であることを特徴とする。
【0009】
従来、樹脂封止型半導体装置の信頼性は、封止樹脂の吸水性に依存すると考えられており、透湿度については検討されていなかった。そのため、封止樹脂の吸水性が低いにも関わらず、樹脂封止型半導体装置の信頼性が確保できないといった事態が発生していた。本発明者らは、鋭意検討した結果、封止樹脂の透湿度が低いと、樹脂封止型半導体装置の信頼性が向上することを突き止めた。その理由として、本発明者らは、封止樹脂の透湿度が低いと、外部から電子部品にまで水が到達し難くなるためと推察している。つまり、たとえ、吸水性が低いとしても透湿度が高い封止樹脂を使用した場合には、やがて水が電子部品に到達することになるため、樹脂封止型半導体装置の信頼性が低下することになると推察している。
【0010】
前記構成によれば、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含んでおり、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であるため、外部から電子部品にまで水が到達しにくい。その結果、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる。なお、透湿度の評価条件を、温度85℃、湿度85%、168時間としたのは、半導体パッケージの耐はんだ信頼性試験(MSL試験)において最も厳しい吸湿条件であるLevel 1条件に合わせためである。
なお、厚さが250μmではない場合には、下記式1により換算して、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下における、厚さ250μmにした際の透湿度とする。
(式1) A−(250−D)×0.101
(A:透湿度、D:サンプル厚み(μm))
【0011】
前記構成においては、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下において、100g/m・24時間以下であることが好ましい。厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下において、100g/m・24時間以下であると、樹脂封止型半導体装置の信頼性をより向上させることができる。なお、透湿度の評価条件を、温度60℃、湿度90%、168時間としたのは、本条件が半導体パッケージの高温高湿放置試験におけるもっとも厳しい条件の一つであるからである。
なお、厚さが250μmではない場合には、下記式2により換算して、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下における、厚さ250μmにした際の透湿度とする。
(式2) A−(250−D)×0.010
(A:透湿度、D:サンプル厚み(μm)
【0012】
前記構成においては、混練押出により製造されていることが好ましい。本発明の電子部品封止用樹脂シートは、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含むため、シート状に成型し難い。そこで、混練押出により製造することにより、ボイド(気泡)等の少ない均一なシートとすることができる。その結果、さらに、低透湿性を実現することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る樹脂封止型半導体装置は被着体と、前記被着体にフリップチップ接続された半導体チップと、前記半導体チップを封止する電子部品封止用樹脂シートとを備え、前記電子部品封止用樹脂シートは、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含み、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であり、前記被着体と前記半導体チップとの間には、空隙が形成されていることを特徴とする。
【0014】
加速度センサ、圧力センサ、ジャイロセンサ等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)や表面弾性波フィルター(surface acoustic wave filter、SAWフィルター)においては、構造上、被着体と半導体チップとの間に空隙が形成されている必要があるものがある。しかしながら、このような空隙には、一旦、外部から水が侵入すると排除することは困難であり、この水により樹脂封止型半導体装置の信頼性が低下することになる。
【0015】
前記構成によれば、電子部品封止用樹脂シートが、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含んでおり、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であるため、外部から、被着体と半導体チップとの間の空隙に水が侵入し難い。その結果、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る樹脂封止型半導体装置は、前記に記載の電子部品封止用樹脂シートを有することを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、電子部品封止用樹脂シートが無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含んでおり、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であるため、外部から電子部品にまで水が到達しにくい。その結果、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法は、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程を具備し、前記電子部品封止用樹脂シートは、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含み、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であることを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、前記電子部品封止用樹脂シートが無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%含んでおり、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であるため、製造される樹脂封止型半導体装置は、外部から電子部品にまで水が到達しにくい。その結果、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る電子部品封止用樹脂シートの一例を示す断面模式図である。
図2】本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図3】本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図4】本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図5】本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図6】本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。図1は、本実施形態に係る電子部品封止用樹脂シートの一例を示す断面模式図である。なお、本明細書において、図には、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0022】
(電子部品封止用樹脂シート)
図1で示されるように、電子部品封止用樹脂シート2は、シート状の形態を有している。電子部品封止用樹脂シート2は、樹脂封止型半導体装置(例えば、図6に示す樹脂封止型半導体装置50)の製造に使用される。
【0023】
電子部品封止用樹脂シート2は、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であり、200g/m・24時間以下であることが好ましく、100g/m・24時間以下であることがより好ましい。また、前記透湿度は、小さいほど好ましいが、例えば、1g/m・24時間以上、である。厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m・24時間以下であるため、外部から電子部品にまで水が到達しにくい。その結果、電子部品封止用樹脂シート2を有する樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0024】
また、電子部品封止用樹脂シート2は、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下において、100g/m・24時間以下であることが好ましく、50g/m・24時間以下であることがより好ましく、20g/m・24時間以下であることがさらに好ましい。また、前記透湿度は、小さいほど好ましいが、例えば、0.5g/m・24時間以上である。厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下において、100g/m・24時間以下であると、電子部品封止用樹脂シート2を有する樹脂封止型半導体装置の信頼性をより向上させることができる。
【0025】
電子部品封止用樹脂シート2を形成する樹脂組成物は、電子部品(例えば、半導体チップ5)の封止に利用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば以下のA成分からE成分を含有する樹脂組成物が好ましいものとして挙げられる。
A成分:エポキシ樹脂
B成分:フェノール樹脂
C成分:エラストマー
D成分:無機充填剤
E成分:硬化促進剤
【0026】
(A成分)
エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0027】
エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
また、低応力性の観点から、アセタール基やポリオキシアルキレン基等の柔軟性骨格を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、アセタール基を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液体状で取り扱いが良好であることから、特に好適に用いることができる。
【0029】
エポキシ樹脂(A成分)の含有量は、電子部品封止用樹脂シート全体に対して1〜10重量%であることが好ましく、2〜5重量%であることがより好ましい。
【0030】
(B成分)
フェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂、等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂(A成分)との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0032】
エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0033】
(C成分)
エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)とともに用いられるエラストマー(C成分)は、電子部品封止用樹脂シートをシート状にした場合の半導体チップ5の封止に必要な可撓性を樹脂組成物に付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではない。例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。中でも、エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られる電子部品封止用樹脂シートの耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0034】
なお、アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、定法によってラジカル重合することにより合成することができる。ラジカル重合の方法としては、有機溶剤を溶媒に行う溶液重合法や、水中に原料モノマーを分散させながら重合を行う懸濁重合法が用いられる。その際に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド及びメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が用いられる。なお、懸濁重合の場合は、例えばポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールのような分散剤を加えることが望ましい。
【0035】
エラストマー(C成分)の含有量は、電子部品封止用樹脂シート全体に対して1〜10重量%であることが好ましく、2〜5重量%であることがより好ましい。エラストマー(C成分)の含有量を1重量%以上とすることにより、シートに可とう性、じん性をもたせることができる。また、エラストマー(C成分)の含有量を10重量%以下とすることにより、パッケージとして必要な成型物強度を発現することができる。
【0036】
また、エラストマー(C成分)のエポキシ樹脂(A成分)に対する重量比率(C成分の重量/A成分の重量)は、0.3〜2とすることが好ましく、0.7〜1.5とすることがより好ましい。上記重量比率を0.3以上とすることにより、シートにじん性および可とう性を付与することができる。一方、上記重量比率を2以下とすることにより、硬化後のパッケージの信頼性を維持することができる。
【0037】
(D成分)
無機質充填剤(D成分)は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種充填剤を用いることができ、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0038】
中でも、透湿性が低いという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることがより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.1〜50μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.3〜25μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。
【0039】
なお、平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0040】
無機質充填剤(D成分)の含有量は、電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70〜93重量%であることが好ましく、75〜90重量%であることがより好ましく、80〜88重量%であることがさらに好ましい。無機充填剤は、透湿性が低いため、含有量を70重量%以上とすることにより、電子部品封止用樹脂シート2の透湿度を低くすることができる。一方、無機充填剤の含有量を93重量%以下とすることにより、電子部品封止用樹脂シート2を容易にシート状にすることができる。
【0041】
(E成分)
硬化促進剤(E成分)は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、硬化性と保存性の観点から、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物や、イミダゾール系化合物が好適に用いられる。これら硬化促進剤は、単独で用いても良いし、他の硬化促進剤と併用しても構わない。
【0042】
硬化促進剤(E成分)の含有量は、エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0043】
(その他の成分)
また、樹脂組成物には、A成分からE成分に加えて、難燃剤成分を加えてもよい。難燃剤組成分としては、例えばホスファゼンなどの有機リン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物等の各種金属水酸化物などを用いることができる。樹脂組成物中での分散性の観点から有機リン系難燃剤が好ましいが、場合によっては、比較的少ない添加量で難燃性を発揮できる観点や、コスト的な観点から水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを用いる場合もある。これらは単独で用いても、組合せで用いても良い。
【0044】
なお、樹脂組成物は、上記の各成分以外に必要に応じて、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0045】
(電子部品封止用樹脂シートの作製方法)
電子部品封止用樹脂シート2の作製方法について、電子部品封止用樹脂シート2がシート状熱硬化型樹脂層である場合の手順を以下に説明する。
【0046】
まず、上述の各成分を混合することにより樹脂組成物を調製する。混合方法は、各成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。その後、例えば、各成分を有機溶剤等に溶解又は分散したワニスを塗工してシート状に形成する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより混練物を調製し、このようにして得られた混練物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0047】
ワニスを用いる具体的な作製手順としては、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の支持体上に塗布し乾燥させることにより電子部品封止用樹脂シート2を得ることができる。そして必要により、電子部品封止用樹脂シートの表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせてもよい。剥離シートは封止時に剥離する。
【0048】
上記有機溶剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。また通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0049】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、特に制限されるものではないが、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、通常、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。
【0050】
一方、混練を用いる場合には、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤の各成分をミキサーなど公知の方法を用いて混合し、その後、溶融混練することにより混練物を調製する。溶融混練する方法としては、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機により、溶融混練する方法などが挙げられる。混練条件としては、温度が、上記した各成分の軟化点以上であれば特に制限されず、例えば30〜150℃、エポキン樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは40〜140℃、さらに好ましくは60〜120℃であり、時間が、例えば1〜30分間、好ましくは5〜15分間である。これによって、混練物を調製することができる。
【0051】
得られる混練物を押出成形により成形することにより、電子部品封止用樹脂シート2を得ることができる。具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、押出成形することで、電子部品封止用樹脂シート2を形成することができる。このような押出方法としては、特に制限されず、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。押出温度としては、上記した各成分の軟化点以上であれば、特に制限されないが、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは、50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。以上により、電子部品封止用樹脂シート2を形成することができる。
【0052】
なかでも、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート2全体に対して、70〜93重量%含むため、シート状への成型性の観点から、混練押出により製造することが好ましい。混練押出により製造することにより、ボイド(気泡)等の少ない均一なシートとすることができる。その結果、さらに、低透湿性を実現することが可能となる。
【0053】
このようにして得られた電子部品封止用樹脂シート2は、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、シート状樹脂組成物は、単層構造にて使用してもよいし、2層以上の多層構造に積層してなる積層体として使用してもよい。
【0054】
(樹脂封止型半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法について、図2図6を参照しながら以下に説明する。図2図6は、本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0055】
前記半導体装置の製造方法は、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程を少なくとも具備する。
【0056】
[マウント工程]
先ず、図2で示されるように、基材31上に粘着剤層32が積層されたダイシングテープ3の粘着剤層32上に半導体ウエハ4を貼着して、これを接着保持させ固定する(マウント工程)。粘着剤層32は、半導体ウエハ4の裏面に貼着される。半導体ウエハ4の裏面とは、回路面とは反対側の面(非回路面、非電極形成面などとも称される)を意味する。貼着方法は特に限定されないが、圧着による方法が好ましい。圧着は、通常、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行われる。なお、ダイシングテープ3としては、従来公知のものを使用することができる。
【0057】
基材31としては、例えば、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等も用いることができる。
【0058】
粘着剤層32の形成に用いる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。また、粘着剤層32は紫外線硬化型粘着剤により形成することができる。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、ダイシング工程後に紫外線照射することにピックアップを容易とすることができる。
【0059】
[ダイシング工程]
次に、図3で示されるように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば、半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0060】
なお、ダイシングテープ3のエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシングテープ3を下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシングテープ3を支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【0061】
[ピックアップ工程]
ダイシングテープ3に接着固定された半導体チップ5を回収する為に、図4で示されるように、半導体チップ5のピックアップを行って、半導体チップ5をダイシングテープ3より剥離させる。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5を基材31側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0062】
[フリップチップ接続工程]
ピックアップした半導体チップ5は、図5で示されるように、基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)により固定させる。具体的には、半導体チップ5を、半導体チップ5の回路面(表面、回路パターン形成面、電極形成面などとも称される)が被着体6と対向する形態で、被着体6に常法に従い固定させる。例えば、半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ51を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)61に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体チップ5と被着体6との電気的導通を確保し、半導体チップ5を被着体6に固定させることができる(フリップチップボンディング工程)。このとき、半導体チップ5と被着体6との間には空隙が形成されており、その空隙間距離は、一般的に15μm〜300μm程度である。尚、半導体チップ5を被着体6上にフリップチップボンディング(フリップチップ接続)した後は、半導体チップ5と被着体6との対向面や間隙を洗浄してもよい。また、該空隙は、半導体装置の用途に応じて封止材(封止樹脂など)を充填させて封止してもよく、空隙のままとしておいてもよい。ただし、加速度センサ、圧力センサ、ジャイロセンサ等のMEMSや表面弾性波フィルター(SAWフィルター)においては、構造上、被着体と半導体チップとの間に空隙が形成されている必要があるため、このような用途においては、空隙のままとしておく。
【0063】
被着体6としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)等の各種基板を用いることができる。このような基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等が挙げられる。
【0064】
フリップチップボンディング工程において、バンプや導電材の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0065】
なお、フリップチップボンディング工程では、導電材を溶融させて、半導体チップ5の回路面側のバンプと、被着体6の表面の導電材とを接続させているが、この導電材の溶融時の温度としては、通常、260℃程度(例えば、250℃〜300℃)となっている。
【0066】
次に、必要に応じて、フリップチップボンディングされた半導体チップ5と被着体6との間の間隙を封止するための封止工程を行う。封止工程は、アンダーフィル用封止樹脂を用いて行われる。このときの封止条件としては特に限定されないが、通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより、封止樹脂の熱硬化が行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。
【0067】
前記アンダーフィル用封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されず、公知の封止樹脂等の封止材から適宜選択して用いることができるが、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。アンダーフィル用封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記に例示のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物によるアンダーフィル用封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができ、このようなフェノール樹脂としては、前記に例示のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0068】
[電子部品封止用樹脂シートの積層工程]
電子部品封止用樹脂シートの積層工程では、半導体チップ5を覆うように半導体チップ5側から電子部品封止用樹脂シート2を被着体6上に積層する(図6参照)。この電子部品封止用樹脂シート2は、半導体チップ5及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0069】
電子部品封止用樹脂シート2の積層方法としては特に限定されず、電子部品封止用樹脂シートを形成するための樹脂組成物の溶融混練物を押出成形し、押出成形物を半導体チップ5側から被着体6上に載置してプレスすることにより電子部品封止用樹脂シートの形成と積層とを一括にて行う方法や、電子部品封止用樹脂シートを形成するための樹脂組成物を半導体チップ5側から被着体6上に塗布し、その後乾燥させる方法、該樹脂組成物を離型処理シート上に塗布し、塗布膜を乾燥させて電子部品封止用樹脂シート2を形成した上で、この電子部品封止用樹脂シート2を半導体チップ5側から被着体6上に転写する方法などが挙げられる。
【0070】
電子部品封止用樹脂シート2がシート状であるため、半導体チップ5の被覆をする際は、半導体チップ5側から被着体6上に貼り付けるだけで半導体チップ5を埋め込むことができ、半導体装置の生産効率を向上させることができる。この場合、熱プレスやラミネーターなど公知の方法により電子部品封止用樹脂シート2を被着体6上に積層することができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40〜120℃、好ましくは、50〜100℃であり、圧力が、例えば、50〜2500kPa、好ましくは、100〜2000kPaであり、時間が、例えば、0.3〜10分間、好ましくは、0.5〜5分間である。また、電子部品封止用樹脂シート2の半導体チップ5への密着性および追従性の向上を考慮すると、好ましくは、減圧条件下(例えば10〜2000Pa)において、プレスすることが好ましい。
【0071】
このようにして半導体チップ5側から被着体6上に電子部品封止用樹脂シート2を積層させた後、電子部品封止用樹脂シート2を硬化させる。電子部品封止用樹脂シート2の硬化は、120℃から190℃の温度範囲、1分から60分の加熱時間、0.1MPaから10MPaの圧力にて行われる。以上により、樹脂封止型半導体装置50が得られる。特に、被着体6と半導体チップ5との間にアンダーフィル用封止樹脂を用いなかった場合には、被着体6と半導体チップ5との間に、空隙52が形成されている樹脂封止型半導体装置50を製造することができる。
【0072】
上述した実施形態では、電子部品封止用樹脂シートをフリップチップ型の半導体装置の製造に用いられる場合について説明した。しかしながら、本発明の電子部品封止用樹脂シートは、この例に限定されず、半導体チップの裏面が被着体に貼り付けられている半導体装置の製造にも用いることができる。
【0073】
上述した実施形態では、半導体チップの裏面には何も貼り付けられていない場合について説明したが、本発明ではこの例に限定されず、半導体チップの裏面に、フリップチップ型半導体裏面用フィルムを貼り付けてもよい。フリップチップ型半導体裏面用フィルムは、半導体チップをフリップチップボンディングにより基板に実装する際に、半導体チップの裏面(露出している裏面)を保護するために用いられるものであり、従来公知のものを採用することができる。
【0074】
上述した実施形態では、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する場合について説明したが、本発明における電子部品封止用樹脂シートは、半導体チップに限らず、その他の電子部品(例えば、コンデンサ、抵抗等)を覆うように、積層してもよい。すなわち、本発明の電子部品封止用樹脂シートは、半導体チップの埋め込みに限定されず、その他の電子部品の埋め込みに使用してもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0076】
<電子部品封止用樹脂シートの混練物の作製>
(実施例1)
以下の成分を2軸混練り機により、120℃で5分間混練し、混練物を調製した。
【0077】
A成分(エポキシ樹脂):ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)社製、YSLV−80XY) 3.38部
B成分(フェノール樹脂):ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS) 3.58部
C成分(エラストマー):熱可塑性エラストマー((株)カネカ社製、製品名:SIBSTER 072T) 3.04部
D成分(無機充填剤):球状シリカ(電気化学工業社製、製品名FB−9454FC、平均粒子径20μm) 88部
E成分(硬化促進剤):硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製2PHZ−PW) 0.119部
その他成分1:カーボンブラック(三菱化学社製、#3030B) 0.3部
その他成分2:難燃剤(フェノキシホスファゼンオリゴマー、製品名:FP−100、伏見製薬所製) 1.58部
【0078】
次に、上記混練物を押出成形し、押出成形物を真空プレスにて一定の厚み(本実施例1では、250μm)とした。真空プレスは、90度に熱したチャンバー内を真空状態にし、5分間プレス(プレス圧:2MPa)の条件で行なった。これにより、実施例1に係る電子部品封止用樹脂シートを得た。その後、150℃で1時間加熱し、硬化させた。
【0079】
(実施例2〜6、及び、比較例1)
配合量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜6、及び、比較例1に係るに電子部品封止用樹脂シートを得た。その後、150℃で1時間加熱し、硬化させた。
【0080】
参考例1
以下の成分を400重量部のメチルエチルケトンに溶解し、ホモジナイザーにて均一になるように配合した。
【0081】
A成分1(エポキシ樹脂1):(DIC社製、EXA−4850−150)3.62部
A成分2(エポキシ樹脂2):ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、EPPN501HY) 1.53部
B成分(フェノール樹脂):(群栄化学製、GS−200) 1.84部
C成分(エラストマー):アクリル酸ブチル86部、アクリロニトリル7部、メタクリル酸グリシジル7部からなる重量平均分子量75万のアクリル系共重合体
17.02部
D成分(無機充填剤):球状シリカ(アドマテックス社製、SO−E2、平均粒子径0.5μm) 75部
E成分(硬化促進剤):硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製2PHZ−PW) 0.25部
その他成分:カーボンブラック(三菱化学社製、#20) 0.74部
【0082】
次に、上記配合物をコンマコーターを用いて塗工し、溶剤乾燥することにより厚みが50μmの樹脂シートを得た。その後、70℃に加熱したロールラミネータにて上記樹脂シートを5枚積層することにより、厚さ250μmの参考例1に係る電子部品封止用樹脂シートを得た。その後、透湿度測定用に150℃で1時間加熱し、硬化させた。
【0083】
(比較例2、及び、比較例3)
配合量を表2の通りに変更した以外は、参考例1と同様にして比較例2、及び、比較例3に係るに電子部品封止用樹脂シートを得た。その後、150℃で1時間加熱し、硬化させた。
【0084】
<透湿度測定>
JIS Z 0208(カップ法)の規定に準じて、実施例、比較例で作成した電子部品封止用樹脂シート(熱硬化後)の透湿度を測定した。測定条件は下記の通りとした。結果を表1、及び、表2に示す。
(測定条件1)
温度85℃、湿度85%、168時間、電子部品封止用樹脂シートの厚さ:250μm
(測定条件2)
温度60℃、湿度90%、168時間、電子部品封止用樹脂シートの厚さ:250μm
【0085】
<信頼性評価結果>
厚さ0.5mmのアルミナ基板に、1mmx1mmx0.2mmtサイズのSiチップ25個(5列×5列、チップ間隔は0.5mmとした)が、金バンプによって超音波接続されたもの(チップ下面と基板とのギャップ:20μm)を準備した。
次に、実施例、及び、比較例にて作製した電子部品封止用樹脂シートを用いて、真空プレスにより上記Siチップの封止を行い(封止条件:50℃、1MPa、1分、真空度1000Pa)、150℃で1時間硬化させた。これにより各チップの下部に空隙が形成された状態の硬化物を得た。その後、ダイシングにより個別のパッケージに分割した。これをJEDECのMSL1(Moisture Sensitivity Level)試験に準拠した手法で、85℃、85%、168時間の条件にて吸湿させた。その後、IRリフロー装置にて260℃×3回の吸湿リフロー試験を行った。試験後のパッケージを超音波顕微鏡で観察し、基板、樹脂間に剥離が観察されたものを×、観察されなかったものを○とした。結果を表1、及び、表2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【符号の説明】
【0088】
2 電子部品封止用樹脂シート
3 ダイシングテープ
31 基材
32 粘着剤層
4 半導体ウエハ
5 半導体チップ
51 半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ
52 空隙
6 被着体
61 被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材
図1
図2
図3
図4
図5
図6