特許第6228739号(P6228739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228739オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体、及び、分散剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228739
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体、及び、分散剤
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/42 20060101AFI20171030BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20171030BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20171030BHJP
   C08F 22/20 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B01F17/42
   B01F17/52
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C08F22/20
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-46877(P2013-46877)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173001(P2014-173001A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真理
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−125114(JP,A)
【文献】 特開平09−132445(JP,A)
【文献】 特開昭59−162159(JP,A)
【文献】 特表2008−512541(JP,A)
【文献】 特開2011−132383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F290/00−290/14
C08F299/00−299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とするオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含む分散剤であって、
該単量体(A)は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうち少なくとも1つに、下記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールが縮合反応した構造を有し、
該オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、単量体(A)由来の単量体単位の割合が、全単量体単位100モル%に対して、70モル%以上であることを特徴とする分散剤。
【化1】
式中、R、R、Rは、いずれか1つが、−COOM又は−(CHCOOMを表し、−COOM又は−(CHCOOMは、他のCOOM基と無水物を形成していてもよい。mは、1〜2の整数を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−COOMである場合、いずれか1つが、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、残りの1つが、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−(CHCOOMである場合、残りの2つが、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。
【化2】
式中、−R−O−は、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数を表す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。但し、R及びRは、一方が水素原子であり、もう一方が炭素数1〜20のアルキル基である。
【請求項2】
オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とするオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含むセメント混和剤であって、
該単量体(A)は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうち少なくとも1つに、下記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールが縮合反応した構造を有し、
該オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、単量体(A)由来の単量体単位の割合が、全単量体単位100モル%に対して、70モル%以上であるオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
【化3】
式中、R、R、Rは、いずれか1つが、−COOM又は−(CHCOOMを表し、−COOM又は−(CHCOOMは、他のCOOM基と無水物を形成していてもよい。mは、1〜2の整数を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−COOMである場合、いずれか1つが、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、残りの1つが、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−(CHCOOMである場合、残りの2つが、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。
【化4】
式中、−R−O−は、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数を表す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。但し、R及びRは、一方が水素原子であり、もう一方が炭素数1〜20のアルキル基である。
【請求項3】
前記単量体(A)は、前記ジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうちいずれか1つに前記ポリアルキレングリコールが縮合反応した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の分散剤又は請求項2に記載のセメント混和剤。
【請求項4】
前記オキシアルキレン基の平均付加モル数は、10〜300であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分散剤又はセメント混和剤。
【請求項5】
前記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分散剤又はセメント混和剤。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体に関する。より詳しくは、分散剤、セメント混和剤、セメント組成物等に好適に用いられるオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコール鎖を含有する重合体は、その鎖長や構成するアルキレンオキシドを適宜調整することによって親水性や疎水性、立体反発等の特性が付与され、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加されるセメント混和剤用途が検討されている。このようなセメント混和剤は、通常、減水剤(分散剤)等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を発揮させることを目的として使用される。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、ポリアルキレングリコール鎖がその立体反発によりセメント粒子を分散させる分散基として作用することができるため、ポリアルキレングリコール鎖を含有するポリカルボン酸系減水剤が高い減水作用を発揮するものとして新たに提案され、最近では高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
【0003】
従来のポリアルキレングリコール鎖を含有するポリカルボン酸系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルを含むものが一般的であり、分散性や減水性などにおいて一定の効果を発揮する。また、(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸に代えて、マレイン酸などのジカルボン酸のポリアルキレングリコールエステルを共重合体成分に含むものも検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を平均付加モル数で2〜300モル付加したジカルボン酸系単量体と、ジカルボン酸系単量体との共重合体を必須成分として含有するコンクリート混和剤が、流動性及び流動性の保持性に優れた効果を発揮することが記載されている。特許文献2には、ポリ無水イタコン酸とアルコキシポリアルキレングリコールとをエステル化させることにより、イタコン酸とエステル化されたイタコン酸との共重合体が得られることが記載されている。特許文献3には、イタコン酸などのジカルボン酸のポリアルキレングリコールジエステル体と、(メタ)アクリル酸類との共重合体が、分散性及び減水性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−132445号公報
【特許文献2】特開2011−132383号公報
【特許文献3】特表2008−512541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ポリアルキレングリコール鎖を含有するカルボン酸系単量体と、カルボン酸系単量体との共重合体として種々の構造のものが開示されているが、いずれも、カルボン酸系単量体を主体として含むものである。このような共重合体は、未だ、昨今要望される極めて高い性能(セメント分散性(減水性)、スランプフロー)を充分に発揮できるとはいえない。セメントの分散性は、セメントを扱う現場での作業性やセメントの硬化後の強度に関係する極めて重要な要素であり、性能がより優れたセメント組成物を実現するセメント混和剤が求められている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント組成物等における減水性及び保持性に優れるオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体、及び、該オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含む分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セメント分散性(減水性)等の性能に優れたセメント混和剤として使用できる重合体について種々検討したところ、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とするオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体であって、上記単量体(A)が、特定の構造のジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうち少なくとも1つに、特定の構造のポリアルキレングリコールが付加した構造を有するものであると、オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が減水性及び保持性に優れることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とするオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体であって、上記単量体(A)は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうち少なくとも1つに、下記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールが付加した構造を有することを特徴とするオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体である。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、R、R、Rは、いずれか1つが、−COOM又は−(CHCOOMを表し、−COOM又は−(CHCOOMは、他のCOOM基と無水物を形成していてもよい。mは、1〜2の整数を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−COOMである場合、いずれか1つが、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、残りの1つが、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−(CHCOOMである場合、残りの2つが、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。
【0011】
【化2】
【0012】
式中、−R−O−は、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、又は、置換基を有していてもよい炭素数7〜22のアラルキル基を表す。但し、R及びRは、いずれかが水素原子である。
【0013】
本発明はまた、上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含む分散剤でもある。
以下に、本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0014】
<単量体(A)>
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とする。
ここで、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位とは、上記単量体(A)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
【0015】
また、ここでいう「主体」とは、オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が2種以上の単量体単位により構成されるときに、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位が、全単量体単位の存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全単量体単位100モル%に対するオキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位のモル%で表すとき、50モル%を超えることが好ましい。これにより、従来のオキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体とカルボン酸系単量体との共重合により得られたポリカルボン酸系重合体とは、異なるポリマー主鎖骨格とすることができる。その結果、セメント表面へのポリマーの吸着状態や分散状態を改善することができる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、さらにより好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%、すなわち、実質的にオキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位のみを含むことである。
【0016】
上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が2種以上の単量体単位により構成されるとき、上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)以外のその他の単量体由来の単量体単位を含む。
該その他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類、これらのカルボン酸無水物、又は、これらの塩が挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、又は、これらの塩が好ましい。上記その他の単量体は2種以上併用してもよい。
【0017】
上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が2種以上の単量体単位により構成される場合は、2種以上の単量体単位がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
【0018】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体において、単量体(A)は、上記一般式(1)で表されるジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうち少なくとも1つに、上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールが付加した構造を有する。
すなわち、例えば、上記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rが−(CHCOOMである場合、単量体(A)は、下記一般式(3−1)〜(3−2)で表されるように、上記ジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうちいずれか1つに上記ポリアルキレングリコールが付加した構造(モノエステル構造)を有するものであってもよいし、例えば、下記一般式(3−3)で表されるように、上記ジカルボン酸系単量体が有する2つのCOOM基のうち両方に上記ポリアルキレングリコールが付加した構造(ジエステル構造)を有するものであってもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、R、R、m、Mは、一般式(1)と同様である。R、R及びnは、一般式(2)と同様である。R5a及びR5bは、同一又は異なって、一般式(2)のRと同様である。R6a及びR6bは、同一又は異なって、一般式(2)のRと同様である。n及びnは、同一又は異なって、一般式(2)のnと同様である。
【0021】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、上記モノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位と上記ジエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位とを両方有するものであってもよい。このような形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が、上記モノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位と上記ジエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位とを両方有するものである場合、モノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位の含有量は、全単量体(A)由来の単量体単位100モル%に対して、50モル%であることが好ましい。これにより、セメント表面に重合体を吸着させるのに充分なカルボキシル基を導入することができる。その結果、セメント分散性能がより向上する。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、さらにより好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%、すなわち、実質的にモノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位のみを含むことである。
【0022】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、上記一般式(1)においてR、R、Rのうちいずれか1つが−(CHCOOMである場合、−(CHCOOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造(例えば、上記一般式(3−1)で表される構造)の単量体(A)由来の単量体単位と、−COOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造(例えば、上記一般式(3−2)で表される構造)の単量体(A)由来の単量体単位とを両方有するものであってもよい。このような形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0023】
上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が、−(CHCOOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位と、−COOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位とを両方有するものである場合、−(CHCOOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位の含有量は、全モノエステル構造の単量体(A)由来の単量体単位100モル%に対して、50モル%であることが好ましい。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、さらにより好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%、すなわち、実質的に−(CHCOOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造を有する単量体(A)由来の単量体単位のみを含むことである。
【0024】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が、−(CHCOOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造を有する単量体(A)由来の単量体単位を有する場合、製造上、該構造とすることが容易であり、例えば、後述するような製造方法においては、化学反応において該構造を取りやすいと考えられるため、好ましい実施形態であるといえる。また、重合体の主鎖骨格(二重結合が重合して形成される鎖の部分)に直接COOM基が結合している方が、セメント等に対する分散能が発揮されやすいため好ましい。
【0025】
以上より、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、オキシアルキレン基を有するカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位のみから構成される単独重合体であり、モノエステル構造を有する単量体(A)由来の単量体単位のみを含み、かつ、−(CHCOOMに上記ポリアルキレングリコールが付加したモノエステル構造を有する単量体(A)由来の単量体単位のみを含むことが最も好ましい。このような形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0026】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体としては、その取り扱い性や、上記重合体をセメント混和剤用途に使用した場合のセメント組成物の保持性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が100万以下であることが好適である。より好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下、さらにより好ましくは20万以下、特に好ましくは15万以下、特により好ましくは10万以下、最も好ましくは5万以下である。また、セメント混和剤用途に用いる場合、ある程度セメント粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは1,000以上であることが好ましい。より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは1万以上、特に好ましくは2万以上、最も好ましくは3万以上である。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、さらに好ましくは15万以下、さらにより好ましくは10万以下、特に好ましくは75,000以下、最も好ましくは35,000以下である。また、1,000以上であることが好ましい。より好ましくは2,500以上、さらに好ましくは5,000以上、特に好ましくは10,000以上、最も好ましくは15,000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
【0027】
<ジカルボン酸系単量体>
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体において、ジカルボン酸系単量体は、下記一般式(1)で表される。
【0028】
【化4】
【0029】
式中、R、R、Rは、いずれか1つが、−COOM又は−(CHCOOMを表し、−COOM又は−(CHCOOMは、他のCOOM基と無水物を形成していてもよい。mは、1〜2の整数を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−COOMである場合、いずれか1つが、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、残りの1つが、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R、R、Rは、いずれか1つが−(CHCOOMである場合、残りの2つが、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。
【0030】
上記一般式(1)において、R、R、Rは、いずれか1つが、−COOM又は−(CHCOOMを表す。すなわち、上記ジカルボン酸系単量体は、C=C二重結合に−COOM及び−(CHCOOM、又は、2つの−COOMが結合した不飽和ジカルボン酸系単量体である。なお、−COOM又は−(CHCOOMは、他のCOOM基と無水物を形成していてもよい。
【0031】
上記一般式(1)において、R、R、Rのうちいずれか1つが−COOMである場合とは、下記一般式(4−1)〜(4−3)で表されるジカルボン酸系単量体又はこれらの塩である場合をいう。下記一般式(4−1)〜(4−3)で表されるジカルボン酸系単量体又はこれらの塩は、例えば、下記一般式(4−4)で表されるように無水物を形成していてもよい。下記一般式(4−4)は、下記一般式(4−2)で表されるジカルボン酸系単量体又はこれらの塩の無水物を表す。
【0032】
【化5】
【0033】
式中、R〜R、Mは、一般式(1)と同様である。
【0034】
上記一般式(1)において、R、R、Rは、R、R、Rのうちいずれか1つが−COOMである場合、いずれか1つは、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、残りの1つは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。すなわち、例えば、上記一般式(4−1)においては、Rが−COOMであるので、R又はRのうちいずれか1つは、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、残りの1つは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0035】
上記炭素数1〜10のアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−デシル基などが好ましい。
【0036】
上記一般式(1)において、R、R、Rのうちいずれか1つが−(CHCOOMである場合とは、下記一般式(5−1)〜(5−3)で表されるジカルボン酸系単量体又はこれらの塩である場合をいう。下記一般式(5−1)〜(5−3)で表されるジカルボン酸系単量体又はこれらの塩は、例えば、下記一般式(5−4)で表されるように無水物を形成していてもよい。下記一般式(5−4)は、下記一般式(5−3)で表されるジカルボン酸系単量体又はこれらの塩の無水物を表す。
【0037】
【化6】
【0038】
式中、R〜R、m、Mは、一般式(1)と同様である。
【0039】
上記一般式(1)において、R、R、Rは、R、R、Rのうちいずれか1つが−(CHCOOMである場合、残りの2つは、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。すなわち、例えば、上記一般式(5−1)においては、Rが−(CHCOOMであるので、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0040】
上記炭素数1〜10のアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−デシル基などが好ましい。
【0041】
上記一般式(4−1)〜(4−3)で表されるジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、メサコン酸、シトラコン酸などのジカルボン酸系単量体、これらのカルボン酸無水物又はこれらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウムまたは有機アミンの塩)が好適である。
上記一般式(5−1)〜(5−3)で表されるジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、イタコン酸、グルタル酸などのジカルボン酸系単量体、これらのカルボン酸無水物又はこれらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウムまたは有機アミンの塩)が好適である。
中でも、重合性の観点から、イタコン酸、グルタル酸、無水イタコン酸又はこれらの塩が好ましく、イタコン酸又はこれらの塩が特に好ましい。
また、これらの単量体は2種以上併用してもよい。
【0042】
上記一般式(1)において、Mで表される基としては、例えば、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
【0043】
<ポリアルキレングリコール>
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体において、ポリアルキレングリコールは、下記一般式(2)で表される。
【0044】
【化7】
【0045】
式中、−R−O−は、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、又は、置換基を有していてもよい炭素数7〜22のアラルキル基を表す。但し、R及びRは、いずれかが水素原子である。
【0046】
上記一般式(2)において、−R−O−は、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。
より好ましくは、炭素数2〜8のオキシアルキレン基であり、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ−1−ブテン基、オキシ−2−ブテン基、オキシトリメチルエチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシテトラメチルエチレン基、オキシモノブタジエン基、オキシオクチレン基等が挙げられる。また、オキシジペンタンエチレン基、オキシジヘキサンエチレン基等の脂肪族エポキシ基;オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、オキシオクチレン基等の脂環エポキシ基;オキシスチレン基、オキシ−1,1−ジフェニルエチレン基等の芳香族エポキシド基を用いることもできる。
【0047】
上記オキシアルキレン基としては、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体に求められる用途等に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、セメント混和剤成分の製造のために用いる場合には、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のオキシアルキレン基が主体であることが好適である。より好ましくは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等の炭素数2〜4のオキシアルキレン基が主体であることであり、更に好ましくは、オキシエチレン基が主体であることである。
【0048】
ここでいう「主体」とは、ポリアルキレングリコール鎖が2種以上のオキシアルキレン基により構成されるときに、全オキシアルキレン基の存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全オキシアルキレン基100モル%中のオキシエチレン基のモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
【0049】
上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が2種以上のオキシアルキレン基により構成される場合は、2種以上のオキシアルキレン基がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
【0050】
上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体としてはまた、炭素数3以上のオキシアルキレン基を含む場合には、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体にある程度の疎水性を付与することが可能となるため、上記重合体をセメント混和剤に使用した場合には、セメント粒子に若干の構造(ネットワーク)をもたらし、セメント組成物の粘性やこわばり感を低減することができる。その一方で、炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入し過ぎると、上記重合体の疎水性が高くなり過ぎることから、かえってセメント粒子を分散させる性能が充分とはならないおそれがある。このため、全オキシアルキレン基100質量%に対する炭素数3以上のオキシアルキレン基の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
なお、上記重合体に求められる用途によっては、炭素数3以上のオキシアルキレン基を含まない態様が好ましい場合もある。
【0051】
上記一般式(2)において、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数(オキシアルキレン基の平均繰り返し数)を表し、1〜1000の数を表す。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上の数であると、上記重合体にポリアルキレングリコールに基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1000を超える場合には、上記重合体を製造するために使用する原料化合物の粘性が増大したり、反応性が充分とはならない等、作業性の点で好適なものとはならないおそれがある。
上記平均付加モル数の下限値としては、より好ましくは10、さらに好ましくは20、さらにより好ましくは50、特に好ましくは75、特により好ましくは80、最も好ましくは100である。上限値としては、より好ましくは800、さらに好ましくは700、さらにより好ましくは600、特に好ましくは500、特により好ましくは300、最も好ましくは200である。
【0052】
上記一般式(2)において、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、又は、置換基を有していてもよい炭素数7〜22のアラルキル基を表す。但し、R及びRは、いずれかが水素原子である。
【0053】
上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−デシル基などが挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数7〜22のアラルキル基の具体例としては、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0054】
<オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体の製造方法>
本発明におけるオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の工程を行うことにより製造することができる。
【0055】
(i−1)カルボン酸へのエステル化反応工程
まず、カルボン酸が有するCOOM基と、ポリアルキレングリコールの末端のヒドロキシル基とを反応させてエステル結合を生成し、カルボン酸エステルを得る。
【0056】
上記(i−1)のカルボン酸へのエステル化反応には、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのスルホン酸系化合物が好ましい。また、カルボン酸の重合を防止する観点から、フェノチアジン、Nオキシル化合物、フェノール化合物、酢酸マンガンなどのマンガン塩、ジブチルチオカルバミン酸銅などのジアルキルジチオカルバミン酸銅塩、ニトロソ化合物、アミン化合物が好ましいが、熱安定性が高いため、これらの触媒を用いなくても製造できる。これらの触媒を用いる場合、触媒の含有量は、カルボン酸及びポリアルキレングリコールの総質量に対して200ppm以下であることが好ましい。より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0057】
上記(i−1)のカルボン酸へのエステル化反応は、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの溶媒の存在下で行うことができる。溶媒中の反応基質濃度(カルボン酸及びポリアルキレングリコールの総量)は、好適に反応を進行させる観点から、50〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
【0058】
(i―2)カルボン酸無水物へのエステル化反応工程
上記(i−1)のカルボン酸へのエステル化反応以外に、対応するカルボン酸無水物にポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基を反応させて、カルボン酸エステルを得ることもできる。
【0059】
上記(i―2)のカルボン酸無水物へのエステル化反応には触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのスルホン酸系化合物、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンなどのアミン系化合物が好ましい。また、カルボン酸無水物の重合を防止する観点から、フェノチアジン、Nオキシル化合物、フェノール化合物、酢酸マンガンなどのマンガン塩、ジブチルチオカルバミン酸銅などのジアルキルジチオカルバミン酸銅塩、ニトロソ化合物、アミン化合物が好ましいが、熱安定性が高いため、これらの触媒を用いなくても製造できる。これらの触媒を用いる場合、触媒の含有量は、カルボン酸無水物及びポリアルキレングリコールの総質量に対して200ppm以下であることが好ましい。より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0060】
上記(i―2)のカルボン酸無水物へのエステル化反応は、無溶媒で行うこともできるが、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒の存在下で行うこともできる。溶媒中の反応基質濃度(カルボン酸無水物及びポリアルキレングリコールの総量)は、好適に反応を進行させる観点から、50〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
【0061】
上記(i−1)及び(i−2)のエステル化反応において、反応温度は、50〜220℃であることが好ましい。これにより、短時間で高収率にエステル化を行うことができる。反応温度が50℃未満であると、反応に長時間を要する。また、反応時間が220℃を超えると、反応の進行がそれ以上加速されず不利である。反応温度として、より好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜180℃、特に好ましくは80〜150℃である。
【0062】
(ii)重合工程
次に、上記カルボン酸エステルを、ラジカル重合開始剤を用いて重合させる。
【0063】
上記重合反応は、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、例えば、セメント混和剤用途のように水溶液として使用されることが多い用途に用いる場合には、水溶液重合法によって重合することが好適である。
【0064】
上記溶液重合のうち、水溶液重合では、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、重合後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アゾアミジン化合物系開始剤が好適である。
【0065】
この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤(還元剤)を併用することもできる。例えば、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせが可能であり、有機系還元剤としては、L−アスコルビン酸(塩)、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸(塩)、エリソルビン酸エステル等を好適に用いることができる。これらのラジカル重合開始剤や促進剤(還元剤)はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モル%とすると、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは1000モル%以下、より好ましくは500モル%以下、さらに好ましくは400モル%以下である。
【0066】
また低級アルコール類、芳香族若しくは脂肪族炭化水素類、エステル類又はケトン類を溶媒とする溶液重合や塊状重合では、ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等のアゾ系開始剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、後述するようにアゾ系開始剤が好適である。なお、この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
【0067】
上記ラジカル重合開始剤の使用量としては、ポリアルキレングリコールやジカルボン酸系単量体成分の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ラジカル重合開始剤が重合に供するジカルボン酸系単量体成分に対して少なすぎると、ラジカル濃度が低すぎて重合反応が遅くなるおそれがあり、また逆に多すぎると、ラジカル濃度が高すぎて、適切な分子量の調整が困難になることがある。したがって、上記ラジカル重合開始剤の使用量は、ジカルボン酸系単量体成分の総量100モル%に対し、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上、さらに好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは0.2モル%以上、特により好ましくは1モル%以上、最も好ましくは5モル%以上であり、また、好ましくは50モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、さらにより好ましくは5モル%以下、特に好ましくは2モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。
【0068】
上記重合反応にはまた、連鎖移動剤を併用してもよい。使用可能な連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸又はそれらの塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸又はそれらの塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)等の低級酸化物又はその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
【0069】
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
【0070】
上記連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、適宜設定すればよいが、ジカルボン酸系単量体成分の総量100モル%に対し、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.25モル%以上、さらに好ましくは0.5モル%以上であり、また、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0071】
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0072】
上記重合反応においてはまた、所定の分子量の重合体を再現性よく得るために、重合反応を安定に進行させることが好適である。そのため、溶液重合では、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下(好ましくは0.01〜4ppm、より好ましくは0.01〜2ppm、さらに好ましくは0.01〜1ppm)の範囲に設定することが好ましい。なお、溶媒にカルボン酸エステルを添加した後に窒素置換等を行う場合には、カルボン酸エステルをも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが適当である。
【0073】
上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
【0074】
上記重合反応により得られた重合体は、水溶液状態で弱酸性以上(より好ましくはpH4以上、さらに好ましくはpH5以上、特に好ましくはpH6以上)のpH範囲に調整しておくことで取り扱いやすいものとすることができる。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、さらに好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。
【0075】
上記の重合反応により得られる反応生成物には、オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体の他、副生成物としての種々の重合体や未反応原料、原料に含まれる不純物を含むことがあるため、必要に応じて、個々の重合体を単離する工程に付してもよいが、通常、作業効率や製造コスト等の観点から、個々の重合体を単離することなく、各種用途に使用してもよい。
【0076】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、例えば、接着剤、シーリング剤、各種重合体への柔軟性付与成分、洗剤ビルダー等の種々の用途に好適に用いることができることに加え、セメントや石膏のような無機微粒子を含む組成物において、無機微粒子を分散させる分散剤としても好適に用いることができる。
このような本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含む分散剤もまた、本発明の1つである。
中でも、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、上述したように極めて高度のセメント分散性能を発揮できることから、セメント混和剤用途に用いることが好適である。このように、上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0077】
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、又はそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0078】
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体を含むセメント混和剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0079】
本発明のセメント混和剤としては、高減水率領域においても流動性、保持性及び作業性をバランスよく高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に使用することが可能であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0080】
上記セメント混和剤をセメント組成物に使用する場合、その配合割合としては、本発明の必須成分であるオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜8質量%であり、更に好ましくは0.05〜6質量%である。
【0081】
上記セメント混和剤としてはまた、他の公知のセメント添加剤と組み合わせて用いることもできる。
他のセメント添加剤としては、例えば、以下に示すようなセメント添加剤(材)等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、オキシアルキレン系消泡剤や、AE剤を併用することが特に好ましい。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記オキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体の固形分100質量部に対し、0.0001〜10質量部とすることが好適である。
【0082】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンの重合体又はそれらの共重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸の共重合体又はその四級化合物等。
【0083】
(2)高分子エマルジョン。
(3)遅延剤:グルコン酸、リンゴ酸又はクエン酸、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸又はその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)又はこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸又はその誘導体等。
【0084】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0085】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0086】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0087】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシル基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
【0088】
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
【発明の効果】
【0089】
本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、上述のような構成であるので、セメント組成物等における減水性及び保持性に優れるものである。このようなオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体は、分散剤、セメント混和剤、セメント組成物として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1図1は、GPCにより得られたRIクロマトグラムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0092】
実施例における各種測定は、以下のようにして行った。
<LCによるイタコン酸モノエステルの生成率測定>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
試料液注入量:100μL(試料濃度1〜2質量%の溶離液溶液)
【0093】
<GPCによる重合体の測定>
重合体の重量平均分子量、数平均分子量及びピークトップ分子量の測定は、以下の条件により行った。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
【0094】
(GPC解析条件)
得られたRIクロマトグラムにおいて、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ポリマーを検出・解析した。図1は、得られたRIクロマトグラムの一例を示す。図1に示すように、モノマーやモノマー由来の不純物のピークがポリマーピークに一部重なって測定された場合、それらとポリマーの重なり部分の最凹部において垂直分割してポリマー部(図1中に示すS1)とモノマー部(図1中に示すS2)を分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ポリマー部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
またポリマーの収率の目安として、RI検出器によるピーク面積の比より、「ポリマー純分」を下記のようにして計算した。
ポリマー純分=(ポリマーピーク面積:S1)/(ポリマーピーク面積:S1+モノマーや不純物のピーク面積:S2)
【0095】
<製造例1:イタコン酸エステル(1)の製造>
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器内に、無水イタコン酸(磐田化学株式会社製、261g)と、エチレンオキシドを平均付加モル数10付加させたメトキシポリエチレングリコール(株式会社日本触媒製、1000g)と、フェノチアジン(和光純薬工業社製、0.01g)を仕込み、250rpmで攪拌した。反応液が均一になってからメタンスルホン酸(和光純薬工業社製、45g)を添加して、90℃まで加温した。90℃で1時間反応後、室温まで冷却しイタコン酸エステル(1)を得た。LC分析の結果、イタコン酸モノエステルの生成率は89.77%、イタコン酸ジエステルの生成率は10.23%であった。
【0096】
<製造例2:イタコン酸エステル(2)の製造>
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器内に、無水イタコン酸(磐田化学株式会社製、443g)と、エチレンオキシドを平均付加モル数6付加させたメトキシポリエチレングリコール(株式会社日本触媒製、1000g)と、フェノチアジン(和光純薬工業社製、0.01g)を仕込み、250rpmで攪拌した。反応液が均一になってからメタンスルホン酸(和光純薬工業社製、43g)を添加して、90℃まで加温した。90℃で1時間反応後、室温まで冷却しイタコン酸エステル(2)を得た。
LC分析の結果、イタコン酸モノエステルの生成率は89.38%、イタコン酸ジエステルの生成率は10.62%であった。
【0097】
<実施例1:重合体(1)の製造>
開始剤溶液として、過硫酸アンモニウム(和光純薬工業社製、78g)にイオン交換水を加えて合計278gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器内に製造例1で得たイタコン酸エステル(1)1000g、イオン交換水466.67gを仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。
続いて、上記開始剤溶液を1時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後2時間、70℃に保って重合反応を完結させた後、室温まで冷却して、重合体(1)の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=8200、Mp=5300、Mn=4300であった。また、重合体純分は96.57%であった。
【0098】
<実施例2:重合体(2)の製造>
重合反応を60℃で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、重合体(2)の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=11800、Mp=8100、Mn=6800であった。また、重合体純分は85.75%であった。
【0099】
<実施例3:重合体(3)の製造>
重合反応を55℃で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、重合体(3)の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=24200、Mp=23100、Mn=6800であった。また、重合体純分は96.57%であった。
【0100】
<実施例4:重合体(4)の製造>
開始剤溶液として、過硫酸アンモニウム(和光純薬工業社製、58g)にイオン交換水を加えて合計258gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器内に製造例2で得たイタコン酸エステル(2)1000g、イオン交換水466.67gを仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。
続いて、上記開始剤溶液を1時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後2時間、70℃に保って重合反応を完結させた後、室温まで冷却して、重合体(4)の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=10800、Mp=5800、Mn=4300であった。また、重合体純分は100%であった。
【0101】
<比較例1〜2:比較重合体の製造>
単量体溶液として、エチレンオキシドを平均付加モル数9付加させたメトキシポリエチレングリコールのエステル化合物(新中村化学工業社製、1000g)、メタクリル酸(797g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(62g)にイオン交換水を加えて、合計1859gとした。
開始剤溶液として、過硫酸アンモニウム(和光純薬工業社製、20g)にイオン交換水を加えて合計200gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器内にイオン交換水560gを仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃まで加温した。
続いて、上記単量体溶液を4時間、開始剤溶液を5時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた後、室温まで冷却して、比較重合体の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=6500、Mp=4900、Mn=4300であった。また、重合体純分は95.08%であった。
【0102】
<モルタル試験>
実施例1〜4、及び、比較例1〜2で製造した重合体(1)〜(4)及び比較重合体をセメント混和剤として用いて、以下のようにしてモルタルのスランプフロー値を測定した。
比較例1及び2では、どちらも比較重合体を用いているが、比較例1では重合体の配合量を0.1質量%、比較例2では重合体の配合量を0.12質量%とした。
【0103】
(1)使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
砂:ISO基準砂
(2)モルタル配合量(g)
水=264
セメント=587
砂=1350
(3)試験方法
消泡剤としてMA404(BASFジャパン社製)を用いた。消泡剤は、モルタルに配合する水に予め溶かし、配合した。セメント100質量%に対する重合体及び消泡剤の配合量を表1に示す。
JIS R5201に記載の機械練り用練り混ぜ機を用い、同規格のモルタルフロー試験方法に準じて試験を行った。ただし、モルタルフロー試験での落下運動を行わず、コーンを上げただけでのフロー値を測定した。練り上げ直後と、注水から30分後のフロー値を測定した結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1〜4と比較例1との比較から、オキシアルキレン基を有する特定のカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とする重合体(1)〜(4)は、比較重合体に比べて、初期フロー値が高く、セメント組成物として優れた減水性を有することが分かる。
また、初期フロー値が同程度である実施例1と比較例2との比較から、オキシアルキレン基を有する特定のカルボン酸系単量体(A)由来の単量体単位を主体とする重合体(1)は、比較重合体に比べて、練り上げ直後と30分後のフロー値の変化が小さく、優れた保持性を有することが分かる。
以上から、本発明のオキシアルキレン基含有カルボン酸系重合体がセメント混和剤として好適に用いることができる重合体であることが明確になった。
図1