特許第6228740号(P6228740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228740
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】玉掛け外し装置及び自動スリング式吊具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/12 20060101AFI20171030BHJP
   B66C 1/10 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B66C1/12 G
   B66C1/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-55604(P2013-55604)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-181098(P2014-181098A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】井上 智文
(72)【発明者】
【氏名】中山 春海
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−089568(JP,U)
【文献】 実開昭53−036281(JP,U)
【文献】 実開平02−007281(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00−3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束された長尺重量物製品に巻回セットしたスリングベルトの玉掛け外し作業を行う玉掛け外し装置であって、
製品上方に装架される基台から揺動可能に垂下されると共に、前記スリングベルトに引掛け係合するフックを有するスイングアームと、
前記スイングアームの前記フックとの係合を深めるように前記スリングベルトを該フック側に付勢する取込み機構と、
前記スリングベルト及び前記フックの係合状態をロック及び解除するロック機構と、
前記スイングアーム、取込み機構及び前記ロック機構を所定の作動シーケンスに従って駆動する空圧駆動装置と、を備え、
前記取込み機構は、前記スイングアーム上に前記フックの近傍で揺動可能に支持された押込み片を有し、
前記ロック機構は、前記スイングアーム上に前記押込み片の近傍で揺動可能に支持されたロック片を有し、
前記ロック片は前記空圧駆動装置の作動により揺動して前記押込み片の揺動動作を規制可能であることを特徴とする玉掛け外し装置。
【請求項2】
前記スイングアームの揺動により前記フックが前記製品と前記スリングベルトの間隙に入り込んで該スリングベルトと係合することを特徴とする請求項1に記載の玉掛け外し装置。
【請求項3】
前記押込み片は揺動して前記フックに対して進退することを特徴とする請求項1又は2に記載の玉掛け外し装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の玉掛け外し装置をメインビーム上に2基隔置して搭載し、それらの前記フックが対向配置されながら前記メインビームに沿って移動可能に垂架され、
前記メインビームが製品上方で昇降可能に支持されることを特徴とする自動スリング式吊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、束ねた鋼材等の重量物を、スリングを使ってハンドリングする際に使用するスリングの玉掛け及び玉外し(玉掛け外し)作業を遠隔で行う玉掛け外し装置及び自動スリング式吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所内では製品である鋼材を適切な長さに切断し、それを何本か纏めた束(例えば鋼管10本)を、備え付けのクレーンで移動、保管、山積み、船積み及び卸し等のハンドリングをしている。その際、従来は作業者がクレーンや吊具のフックへのワイヤあるいはスリング等の掛け外しを行っていた。これらは玉掛け作業と呼ばれ、作業者は玉掛け工と呼ばれているが、当該作業には潜在的な危険性が数多くあり、様々な災害が発生し易い環境となっていた。例えば玉掛け工は鋼材の山(足場が悪い)に昇り降りする必要が生じる、クレーン操作者との意志の疎通がうまくいかない場合にクレーンの荷やフックが移動してきて接触することがある、船積み・卸しの際に船倉と荷の間に挟まれる、作業は足場が悪い中で無理な姿勢を取ることが多い、墜落、転落やスリングとフックの間等に指を挟む等である。そのため玉掛け外し作業においては、玉掛け工を必要としない無人化、完全ノータッチ化が望まれていた。
【0003】
玉掛け作業をノータッチ化し、災害をなくす工夫は数多く行なわれている。例えばマグネット式吊具の採用は、遠隔操作で製品を吸着でき、玉掛け工をなくすことができる。しかしこの場合、吊上げ能力に限界がある、上面が平坦なものに限られる、隣り合った鋼材も一緒に吸着してしまう等の問題がある。
【0004】
また、製品束の両端から掬い上げるタイプの吊具を使ってノータッチ化する方法もある(特許文献1〜3)。これらの場合は、間に吊索が入るようにスペーサ(“りん木”、“端太角”等と呼ばれる)等を使って、重なった鋼材束同士の間隔を開けて積み上げる必要がある。しかしこの方法ではスペーサを設置する場合にも玉掛け工は鋼材の山に登らなければならない場合が生じ、また鋼材が大型になるとスペーサも大きくなり重量も増加し、設置する作業そのものの危険性が高くなる。
【0005】
スリングベルトを使用し製品束をハンドリングする方法がある。これは鋼材束の両端部近くの2箇所に、適切な間隔でリング状のスリングベルトを設置しておき、ハンドリングはそのスリングベルトをクレーン又は吊具に掛け、持ち上げることにより行う方法である。鋼材を降ろした後は、スリングベルトを外すことなくそのままにしておき、また次のハンドリング時に使う。スリングベルトは軟らかく軽量なため、ワイヤより玉掛け外しがし易く、製品を傷つけることが少なく、玉掛け作業者がクレーン(あるいはそれに吊り下げられ装着された吊具)のフックへの玉掛け外し作業がし易い等の利点がある。また、リン木等のスペーサを使う等して製品束同士の間に吊索を入れるスペースを設けることは不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−35194号公報
【特許文献2】特開平2−99886号公報
【特許文献3】実用新案登録第2531529号公報
【特許文献4】特許第3074520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スリングベルトを使用する場合でも、これまでの玉掛け工と同じような危険性(例えばクレーンオペレータとの意志疎通不十分等に起因する吊荷や吊具との接触、指詰め、足場が悪いための躓き転倒や転落等)は依然として残る。
【0008】
なお、遠隔操作で玉外しを行う装置は多数ある。例えばピンを引き抜くことによる玉外し装置等である。例えば特許文献4に記載の吊荷の自動玉掛け外し装置等がある。しかし鋼材等の玉掛けを遠隔操作で行うことは困難が伴い、自動化装置も殆どないのが実情である。
【0009】
本発明はかかる実情に鑑み、遠隔操作により円滑且つ的確に自動的に玉掛け外し作業を行う玉掛け外し装置及び自動スリング式吊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による玉掛け外し装置は、結束された長尺重量物製品に巻回セットしたスリングベルトの玉掛け外し作業を行う玉掛け外し装置であって、製品上方に装架される基台から揺動可能に垂下されると共に、前記スリングベルトに引掛け係合するフックを有するスイングアームと、前記スイングアームの前記フックとの係合を深めるように前記スリングベルトを該フック側に付勢する取込み機構と、前記スリングベルト及び前記フックの係合状態をロック及び解除するロック機構と、前記スイングアーム、取込み機構及び前記ロック機構を所定の作動シーケンスに従って駆動する空圧駆動装置と、を備え、前記取込み機構は、前記スイングアーム上に前記フックの近傍で揺動可能に支持された押込み片を有し、前記ロック機構は、前記スイングアーム上に前記押込み片の近傍で揺動可能に支持されたロック片を有し、前記ロック片は前記空圧駆動装置の作動により揺動して前記押込み片の揺動動作を規制可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による玉掛け外し装置において、前記スイングアームの揺動により前記フックが前記製品と前記スリングベルトの間隙に入り込んで該スリングベルトと係合することを特徴とする。
【0012】
また、本発明による玉掛け外し装置において、前記押込み片は揺動して前記フックに対して進退することを特徴とする。
【0014】
また、本発明による自動スリング式吊具は、上記いずれかの玉掛け外し装置をメインビーム上に2基隔置して搭載し、それらの前記フックが対向配置されながら前記メインビームに沿って移動可能に垂架され、前記メインビームが製品上方で昇降可能に支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、玉掛け工が存在することなくノータッチ式の自動スリング式吊具により遠隔操作による玉掛け外し操作を可能とする。天井クレーン装置からは電力を供給するのみであり、自動スリング式吊具を設置する場合のクレーン設備の改造は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る玉掛け外し装置及びこれが搭載された自動スリング式吊具を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る玉掛け外し装置の構成例を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る玉掛け外し装置の構成例を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態における玉掛け外し作業を行う製品の例を示す斜視図及び断面図である。
図5】本発明の実施形態における玉掛け外し装置の要部構成を示す正面図及び側面図である。
図6】本発明の実施形態における取込み機構の要部側面図である。
図7】本発明の実施形態におけるロック機構の作用を示す正面図である。
図8】本発明の実施形態における玉掛け作業の主要工程を順に示す図である。
図9】本発明の実施形態における玉外し作業の主要工程を順に示す図である。
図10】本発明の実施形態における自動スリング式吊具の架台を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明における玉掛け外し装置及び自動スリング式吊具の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る玉掛け外し装置10及びこれが搭載された自動スリング式吊具100を示している。先ずこの設備の全体構成において、自動スリング式吊具100のメインビーム101がこの例では天井クレーン装置200によりワイヤ201を介して、水平に垂下される。メインビーム101は、その長手方向でセンター振分けで隔置された2基の玉掛け外し装置10を含む自動スリング式吊具100全体を支持し、天井クレーン装置200によって作業現場の所望の位置に移動可能である。
【0018】
例えばH鋼等の材料で形成されたメインビーム101においてその長手方向に沿って、玉掛け外し装置10が走行する走行路102を有し、玉掛け外し装置10は、その基台11が走行路102上を往復動可能(矢印X方向)に搭載される。基台11は後述するように電動式に走行駆動され、そのための電動モータに電力供給し、あるいは制御信号を送出する制御盤103がメインビーム101上に配置される。また、玉掛け外し装置10は空圧作動方式のアクチュエータで駆動され、その空圧駆動装置であるエアシリンダに圧搾空気を供給するエアコンプレッサ104がメインビーム101上に配置される。天井クレーン装置200のワイヤ201の下端に付設したフック(図示せず)を引っ掛けるためのフック掛け部105を有し、自動スリング式吊具100全体がワイヤ201により吊り下げられる。
【0019】
図2及び図3は、玉掛け外し装置10の構成例を示している。なお、図2では図1において右側に配置されたものが示されるが、左側のものは左右対称である点以外、同一の構成である。基台11はその構成部材であるベースプレート12を介して、メインビーム101に懸架式に支持される。具体的にはベースプレート12上方にはブラケットを介して、メインビーム101をそのH鋼の幅方向(以下、単に幅方向という。なお図2では紙面直交方向となる)両側から挟むように複数、この例では4つの走行輪13が取り付けられ、各走行輪13は走行路102上を転動可能である。ベースプレート12はメインビーム101下側に水平支持される。ベースプレート12上には走行駆動用の減速機一体型の電動モータ14が搭載され、この例では電動モータ14を駆動源とする基台11の駆動機構としてラックアンドピニオン方式が採用される。メインビーム101の下面にはその長手方向に沿ってラック15が敷設され、上記減速機の出力軸に取り付けられたピニオン16がラック15と噛合する。これにより電動モータ14の作動でラックアンドピニオン機構を介して、基台11従って玉掛け外し装置10全体がメインビーム101に懸架されながら、矢印X方向に走行することができる。なお、電動モータ14の作動はリモートコントロール(遠隔操作)で行うことができ、操作者は製品の長さに合せて2基の玉掛け外し装置102の相互間隔を確認しながら、それらを走行駆動することができる。
【0020】
ここで、本発明装置が取り扱う製品として、結束された長尺重量物が選ばれる。典型的な例として鋼製パイプ、即ち図4(A)に示すように複数の鋼管1をフープと呼ばれる薄い鉄帯2で束ねたものとする。この例では製品の束は、例えば長さを揃えて切断された鋼管等の鋼材を10本程度まとめたものである。そして、製品束の上面部に凹凸がある製品が望ましい。かかる凹凸を利用して、製品束の上面部のスリングベルト3と製品との間に掬い取るための爪もしくはフックを差し込むための間隙4(図4(B)、クロスハッチング部)が形成される。なお、1つの製品の束に、製品長さに合せて適切な間隔をおいて予め巻回セットされた2箇所のハンドリング用スリングベルト3に、遠隔操作で玉掛け作業が実施される。スリングベルト3はエンドレスタイプが望ましい。
【0021】
更に図2及び図3を参照して玉掛け外し装置10は、製品上方に装架された基台11から揺動可能に垂下されると共にスリングベルト3に引掛け係合するフック18を有するスイングアーム17と、このフック18との係合を深めるようにスリングベルト3を該フック側に付勢する取込み機構19と、スリングベルト3及びフック18の係合状態をロック及び解除するロック機構20と、スイングアーム17、取込み機構19及びロック機構20を所定の作動シーケンスに従って駆動する空圧駆動装置であるエアシリンダ21,22,23と、を備える。
【0022】
更に図5に玉掛け外し装置10を具体的に示す。なお、図5では図1において右側に配置されたものが示されるが、左側のものは左右対称である点以外、同一の構成である。スイングアーム17は、ベースプレート12の下方にて基台11のブラケット部材によって、幅方向に横架された支軸24を介して揺動可能に支持される。スイングアーム17の支軸24を挟んで反対側の基端部には、基台11のブラケット部材によってその基端側が軸支されたエアシリンダ21の出力ロッド21aが連結される。エアシリンダ21の作動により、スイングアーム17は図2の実線及び二点鎖線で示すように支軸24のまわりに所定角度だけ往復回動する。
【0023】
なお、エアシリンダ21(エアシリンダ22,23についても同様である)は、通常磁力を利用した所謂「オートスイッチ」式のものである。エアシリンダ21が所定のストロークに達したらONになり、そのオートスイッチからの信号を利用して、フック18等がストロークエンドに到達したことを感知する。そして、次の動作を行なうシーケンシャルプログラムが組まれている。
【0024】
スイングアーム17の先端において、フック18がメインビーム101の長手方向で内方へ延出する。フック18は図5(A)のようにスイングアーム17が略鉛直方向もしくはその適度に手前の回動角度にあるとき、その先細の尖端がメインビーム101の内方へ向けて前下がり傾斜となるように形成された掬上げ面18aを有する。また、掬上げ面18aに連接する基部側には凹部18b(上に凹状)を有し、この凹部18bは掬い上げたスリングベルト3に対する保持機能を備える。スイングアーム17、少なくともフック18の部分は幅方向の寸法が小さく、即ち比較的薄肉に形成される。更にフック18はスリングベルト3を介して製品からの荷重がかかる部位を中心として焼入れを行う等の処理を施すことで、その硬度アップを図り、磨耗を防ぐと共に表面性状を滑らかにしてスリングベルト3を滑り易くする。
【0025】
取込み機構19において、スイングアーム17の内側に突設されたブラケット25によって、幅方向に横架された支軸26を介して揺動可能に支持される取込み金具27を有する。この取込み金具27の支軸26の近傍部位には、スイングアーム17の内側(メインビーム101の中央部方向)に突設されたブラケット28によってその基端側が軸支されたエアシリンダ22の出力ロッド22aが連結される。エアシリンダ22の作動により、取込み金具27は支軸26のまわりに所定角度だけ往復回動する。
【0026】
取込み金具27は、図6に示すようにフック18を幅方向両側から挟むように該フック18に対して進退する一対のガイドプレート27aを有し、これらのガイドプレート27aは図示のようにフック18を跨ぐように相互に離間している。各ガイドプレート27aのフック18側もしくはスイングアーム17側の前縁部には、押込み片29がスライド可能に付設される。一対のガイドプレート27aの幅方向中央部において押込み片29のスライド方向に間隔をあけて、前縁部方向にガイドピン30が立設され、一方、押込み片29にはガイドピン30が係合する長穴29aが形成される。押込み片29はガイドピン30によってガイドされながら、長穴29aの長径寸法に応じたストロークだけスライド可能である。
【0027】
ここで、フック18の掬上げ面18aは図6に示されるように、上方に凸状の湾曲面として形成される。取込み金具27の作動時には押込み片29の下端部がその自重により掬上げ面18aに係接し、押込み片29はこの係接状態を維持しながら適宜スライドする。
【0028】
ロック機構20において、ブラケット25によって、幅方向に横架された支軸31を介して揺動可能に支持されるロック片32を有する。このロック片32の先端部位には、スイングアーム17の内側に突設されたブラケット33によってその基端側が軸支されたエアシリンダ23の出力ロッド23aが連結される。エアシリンダ23の作動により、ロック片32は支軸31のまわりに所定角度だけ往復回動する。
【0029】
取込み金具27において、支軸26まわりのロック片32側の基端部には、ロック片32の尖端部が係合可能な係合部27bが形成される。ロック片32の尖端部が係合部27bに係合することで、取込み金具27の回動を規制する。
【0030】
ロック機構20は取込み金具27を閉じた状態にロックし、スリングベルト3が外れるのを防ぐロック機能を有する。この場合、ロック機構20は一旦ロックがかかれば、空圧系のエア等の動力源が奪われてしまった場合でも外れることがない。例えば、図7のようにスイングアーム17が開き側に振れてしまっても、スリングベルト3を介して作用する製品からの荷重によってその係合強度が強くなる。
【0031】
上記構成において玉掛け作業を実施する場合、先ず、スリングベルト3が予め巻回セットされた製品に対して位置合せすべく、操作者の遠隔操作により玉掛け外し装置10は電動モータ14の作動で、メインビーム101上を走行し、適切なスリング吊上げ位置に停止される。
【0032】
図8は、玉掛け作業の典型的な主要工程を示している。なお、図8においては、図1の右側に配置された玉掛け外し装置10の主要部の主要部材のみを図示するが、この例では左側の玉掛け外し装置10は右側のものと同期して作動する。図8(A)の二点鎖線のように開いていたスイングアーム17は、エアシリンダ21の作動によりスリングベルト3と製品の間隙4(図4参照)を狙いながら、メインビーム101の中央部方向に向って揺動される。このスイングアーム17の揺動により、フック18が間隙4に差し込まれ、スリングベルト3に引っ掛かり係合する。この場合、フック18は先細で尖っているので、間隙4の僅かな隙間でもこの係合操作が可能である。これによりフック18の上にスリングベルト3が乗った状態になる。
【0033】
次に、取込み金具27を遠隔操作し、エアシリンダ22の作動によりガイドプレート27aをスイングアーム17側へ揺動させ、図8(B)のように押込み片29がスリングベルト3をフック18の更に奥まで押し込む。なお、この操作の前に、スリングベルト3の外れ止めも兼ねている取込み金具27は開いた状態にしておく。必要に応じ更に玉掛け外し装置10の位置を微調整する。このようにフック18との係合を深めるようにスリングベルト3をフック18側に付勢することで、スリングベルト3のフック18への引掛かりが更に確実になる。
【0034】
次に、取り込み金具27が最も奥の位置まで来たら、ロック機構20を作動させる。この場合、図8(C)のようにエアシリンダ23の作動によりロック片32の尖端部が取り込み金具27の係合部27bに係合し、取込み金具27は開かなくなり、これによりスリングベルト3がフック18から外れることがなくなる。なお、取込み金具27に対して強制的に開く方向に荷重がかかったとしても、ロック機構20は外れることはない。この状態で天井クレーン装置200によりワイヤ201を介して、メインビーム101を含む自動スリング式吊具100全体を吊り上げる。
【0035】
図9は、玉外し作業の典型的な主要工程を示している。なお、この場合も、図1の右側に配置された玉掛け外し装置10の主要部の主要部材のみを図示するが、この例では左側の玉掛け外し装置10は右側のものと同期して作動する。先ず、天井クレーン装置200により製品を吊り下げている自動スリング式吊具100全体を降下させ、製品を所定場所に降ろすと、スリングベルト3から製品の荷重が開放される(図9(A))。スリングベルト3を外す際には、エアシリンダ23及びエアシリンダ22を順次作動させ、それらを図9(B)のように収縮させる。これによりロック機構20のロックを外すと共に、取込み金具27を開き、図9(C)のようにスイングアーム17を反対方向に大きく上げる(開く)。するとスリングベルト3はフック18から自然に抜け落ちて離脱する。その際、フック18は反対方向に大きくスイングするので、荷重が抜けたスリングベルト3を確実にフック18から外すことができる。
【0036】
なお、上記の場合、自動スリング式吊具100そのものは、天井クレーン装置200や荷役用クレーンに脱着式としてもよいし、予めクレーン巻上設備と一体とした専用荷役装置としてもよい。脱着式の場合は、吊具のフック掛け装置(例えば特許第4741096号等に記載のもの)と同様の設備を備え付けるのが望ましい。
【0037】
また、詳細図示等を省略するが、ロック機構20を作動し、取込み金具27が固定された状態は、自動スリング式吊具100上に設置された表示灯の青色点滅により確認することができる。
また、2つのフック18に荷重がかかった状態を感知すると、走行動作やフック外し操作ができないインターロック機構を組み込み、安全化を図ることができる。
また、フック18が降下して鋼材製品に当たった場合の上向き荷重を感知する着床センサを完備し、製品に傷を付けるのを未然に防止することができる。なお、この着床センサとしては近接センサ等を用いることができる。
【0038】
更に、玉掛け外し作業の終了時等において本発明の自動スリング式吊具100の不使用時には天井クレーン装置200から取り外して、例えば図10に示すような架台300上に静置することができる。
【0039】
本発明によれば、玉掛け工が存在することなくノータッチ式の自動スリング式吊具100により遠隔操作による玉掛け外し操作を可能とする。その際、天井クレーン装置200からは、電力を供給するのみ(脱着式吊具とする場合)であり、従って自動スリング式吊具100を取り付けた後はケーブルを接続するだけで済み、本自動スリング式吊具100を設置する場合のクレーン設備の改造は不要である。
【0040】
また、スリングベルト3の下側の僅かな間隙4でも、フック18を差し込むことができる。従って、通常の玉掛け作業のようなスリングベルト3の玉掛け作業は不要となる。
また、取込み金具27を閉じてロックすれば、スリングベルト3が玉掛け外し装置10から外れることがない。例えばエア圧力、駆動電源等の駆動源がなくなった場合でもロック機構20によるロックは外れることはないため、高い安全性を確保することができる。
【0041】
また、吊り荷からスリングベルト3を外す場合も、玉掛け工が不要である。従って、玉掛け外しを直に行う作業が不要となり(即ち、完全ノータッチ化)、玉掛け作業に関連する災害は大幅に減少する。
【0042】
更に、メインビーム101は、製品に合せた長さで製作すればよい。また、スイングアーム17やフック18のスイング、取込み金具27の動作、ロック機構20は全てエア駆動とすることができる。油圧方式の場合のような油漏れや油滴落下がなく、また、製品に対して当たりが優しく傷を付ける恐れが小さい。装置も軽量化できる等の利点がある。
【0043】
特に、吊上げ荷重がかかった場合ある程度、スイングアーム17が動いてスイングする構造であるため、フック18や吊具本体に無理な力が生じない。つまりエアシリンダ21は空圧式であるから油圧の場合と異なり、吊り下げられた製品が傾斜した場合でもその出力ロッド21が適度に伸縮し、その場の状況に馴染むように安定化する。
この点に関して更に、仮に油圧式とした場合には、上述のように吊具が荷(製品)に馴染むようにするために油圧回路にリリーフバルブやアキュームレータ等を組み込まなければならず、油圧回路構成が複雑化せざるを得ない。一方、逆に吊具が荷に馴染まないように剛固に構成することも可能であるが、この場合には吊具本体の重量が増加し、装置能力としての吊り荷重が低下する上、装置の複雑化を招来することとなる。このように油圧を用いずに空圧式としたことによりこの種の装置において多大な効果を発揮する。
【0044】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において、左右の玉掛け外し装置10が同期して作動する例を説明したが、左右のうち片側ずつ単独で作動させることができる。
また、上記実施形態において、スイングアーム17がメインビーム101の中央部方向に向って揺動される例としたが、これとは反対にメインビーム101の中央部側から外方に向ける揺動をさせることで玉掛けを行うことも可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 玉掛け外し装置、11 基台、12 ベースプレート、13 走行輪、14 電動モータ、15 ラック、16 ピニオン、17 スイングアーム、18 フック、19 取込み機構、20 ロック機構、21,22,23 エアシリンダ、24 支軸、25 ブラケット、26 支軸、27 取込み金具、28 ブラケット、29 押込み片、30 ガイドピン、31 支軸、32 ロック片、100 自動スリング式吊具、101 メインビーム、102 走行路、103 制御盤、104 エアコンプレッサ、105 フック掛け部、200 天井クレーン装置、300 架台。
図1
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図7
図8
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図10