(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228743
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/26 20060101AFI20171030BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
H01F27/26 S
H01F37/00 M
H01F37/00 T
H01F37/00 J
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-73673(P2013-73673)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199835(P2014-199835A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年12月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(72)【発明者】
【氏名】趙 丁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 久夫
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−103421(JP,A)
【文献】
実開昭56−104119(JP,U)
【文献】
特開昭61−154117(JP,A)
【文献】
特開2011−040566(JP,A)
【文献】
特開平11−074131(JP,A)
【文献】
特開平04−206610(JP,A)
【文献】
特開平08−222445(JP,A)
【文献】
実開昭59−189217(JP,U)
【文献】
実公昭34−009818(JP,Y1)
【文献】
特開2005−206022(JP,A)
【文献】
特開平06−344909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/26
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア組立体と固定具とを有するインダクタであって、
前記コア組立体は、磁路の一部にギャップを有し、
前記固定具は、前記ギャップに生じる漏洩磁束と鎖交しないように前記ギャップから所定の距離以上離して取り付けられ、かつ、
前記コア組立体が収納筐体に収納された状態で、スタットボルトにより高さ方向に締め付けられ、外周方向に設けられた両端側が前記収納筐体の底部に固定されて前記収納筐体の内側に結合される、インダクタ。
【請求項2】
請求項1に記載されたインダクタであって、
前記コア組立体は、筒状であって、正面からみて幅方向の両側部に前記ギャップを有しており、
前記固定具は、前記コア組立体の外周において、軸方向に沿って取り付けられ、前記コア組立体を、前記幅方向に交差する高さ方向に締め付ける、インダクタ。
【請求項3】
請求項2に記載されたインダクタであって、
前記固定具は、前記軸方向でみた両端が、前記コア組立体の両端面に沿って折り曲げられている、インダクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載されたインダクタであって、さらに収納筐体を有し、
前記コア組立体は、前記収納筐体に収納され、
前記固定具は、前記コア組立体が前記収納筐体に収納された状態で、前記収納筐体の内側に結合される、インダクタ。
【請求項5】
請求項4に記載されたインダクタであって、前記収納筐体の内部に樹脂が充填されている、インダクタ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載されたインダクタであって、リアクトル、又は、インピーダンスボンドとして用いられる、インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタに関し、具体的には鉄道用のリアクトル、又は、インピーダンスボンドとして用いられるインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインダクタとしては、従来より、種々の構造のものが提案され、実用に供されている。例えば、特許文献1に記載されている発明は、電気鉄道用直流変電所において、その帰線側に設置される直流リアクトルであって、コイルと、コイルに挿入されるコア組立体とを含む。コア組立体は、いわゆるギャップ付鉄心コアであって、強磁性体からなる複数の鉄心ブロックと、各鉄心ブロックの間に介在する複数の常磁性体ブロックとが交互に積層され、金属製固定具によって一体化された円筒構造を有している。
【0003】
ところで、この種のインダクタは、ギャップ部分からの漏洩磁束の影響を受けて固定具に渦電流が発生し、発熱する不具合を生じることが知られている。特に、この種のインダクタが、鉄道用リアクトルである場合、鉄道用リアクトルは、大電流、及び、高電圧下で使用されるから、渦電流の発生による発熱の防止が、より高度に求められる。
【0004】
この点、従来の鉄道用リアクトルでは、これを収納する筐体内にオイルを充填することにより、渦電流により生じる発熱を冷却するオイル冷却方式が採られている。
【0005】
しかし、鉄道施設では、必ずしも上述したオイル冷却方式を採用しえない場合が生じる。例えば、トンネル内に設置される鉄道用リアクトルでは、火災防止の観点からオイル冷却方式を採用することはできない、という問題が生じる。
【0006】
上述した問題点の解決手段について、特許文献1には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−177012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、渦電流による発熱を防止うるインダクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係るインダクタは、コア組立体と、固定具とを有する。コア組立体は、磁路の一部にギャップを有しており、固定具は、ギャップに生じる漏洩磁束と鎖交しない
ようギャップから所定の距離以上離して取り付けられている
。この構造によると、固定具は、コア組立体のギャップに生じる漏洩磁束と鎖交しない位置に取り付けられているから、固定具に対する漏洩磁束の影響を回避し、もって、渦電流による発熱を防止することができる。
そして、コア組立体が収納筐体に収納された状態で、スタットボルトにより高さ方向に締め付けられ、外周方向に設けられた両端側が収納筐体の底部に固定されて収納筐体の内側に結合されている。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によれば、渦電流による発熱を防止うるインダクタを提供することができる。
【0011】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るインダクタの正面断面図である。
【
図2】
図1に示したインダクタの側面断面図である。
【
図3】
図1に示したインダクタの内部構造を示す平面図である。
【
図6】
図1乃至
図3に示したインダクタのコア組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図7において同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。本発明は、インダクタに関し、具体的には、電気鉄道用変電所と接続され、帰線側に設置されることにより電車電流を吸い上げる鉄道用帰線リアクトルや、鉄道用インピーダンスボンドとして用いられるインダクタに関する。
図1乃至
図3のインダクタは、大電流用、かつ、磁束密度の高いコア組立体1と、コイル2とを含む。これらは、当該技術分野において、周知の構成部分であるから、以下、簡単に説明する。
【0014】
コア組立体1は、少なくとも2つのコア部を正面からみて円筒形状に組み合わせたものでなり、磁路の一部にギャップ(g)を有している。具体的に、
図1乃至
図3のコア組立体1は、いわゆる巻鉄心と呼ばれるものであって、第1コア部11と、第2コア部12と、第3コア部13と、第4コア部14とを含む。
【0015】
第1〜第4コア部11〜14のそれぞれは、いわゆる鉄心ブロックであって、磁性金属板を複数回巻いて樹脂で固め、切断し、研磨したものである。第1、第2コア部11、12は、正面からみてコの字形状を有しており、第2コア部12のコの字形状の両端が、第1コア部11の同両端と向かい合う関係で配置されている。第3コア部13は、第1コア部11の一端と第2コア部12の一端との間に配置されており、第4コア部14は第1コア部11の他端と第2コア部12の他端との間に配置されている。すなわち、コア組立体1は、一対の第1、第2コア部11、12と、第1、第2コア部11、12の上下端部を連結する第3、第4コア部13、14とを備え、バンド状の締め付け具15によって締め付けられることにより、一体化された円筒構造を有している。
【0016】
コア組立体1は、正面からみて幅方向wの両側部にギャップgを有している。すなわち、コア組立体1は、環状に連結された磁路を形成するギャップ付鉄心コアであって、ギャップgは、第1コア部11と第3コア部13との間、第1コア部11と第4コア部14との間、及び、第2コア部12と第3コア部13との間、第2コア部12と第4コア部14との間にあらわれる。
【0017】
コイル2(
図5参照)は、コア組立体1の幅方向wの両側部分において、ギャップgに重なる位置に巻装されている。ギャップgは、コイル2の高さ寸法内に配置される。
【0018】
ところで、この種のインダクタは、ギャップ(g)部分からの漏洩磁束の影響を受けて固定具に渦電流が発生(渦電流損)し、熱を生じること、及び、コイル抵抗(銅損)によりコイル(2)に熱を生じることが知られている。特に、この種のインダクタが、鉄道用リアクトルである場合、鉄道用リアクトルは、大電流、及び、高電圧下で使用されるから、渦電流損、及び、銅損による発熱の防止が、より高度に求められる。
【0019】
この点、従来の鉄道用リアクトルでは、これを収納する筐体内にオイルを充填することにより、渦電流損、及び、銅損による発熱を冷却するオイル冷却方式が採られている。
【0020】
しかし、鉄道施設では、必ずしも上述したオイル冷却方式を採用しえない場合が生じる。例えば、トンネル内に設置される鉄道用リアクトルでは、火災防止の観点からオイル冷却方式を採用することはできない、という問題が生じる。また、オイル冷却方式では、オイルの品質劣化が早く、頻繁に交換しなければならない点で、維持管理コスト高を招く、という問題も生じる。
【0021】
本発明に係るインダクタの特徴の一つは、上述した問題を解決するため、固定具に対する漏洩磁束の影響を低減し、もって、渦電流損(及び、発熱)を防止するため、固定具の配置態様、及び、結合態様を工夫した点にある。
図1乃至
図3のインダクタは、固定具3と、収納筐体4と、冷却用の放熱性樹脂(図示省略)とを含む。
【0022】
固定具3は、ギャップgに生じる漏洩磁束と鎖交しない位置P2(
図4参照)に取り付けられている。固定具3は、軸方向aでみた両端が、コア組立体1の両端面10に沿って折り曲げられるとともに、コア組立体1の外周において軸方向aに沿って取り付けられることにより、コア組立体1を、幅方向wに交差する高さ方向hに締め付ける。固定具3は、外周方向(a)に横切って両端側で固定されている。
【0023】
ここで、固定具3は、ギャップgの位置P1から、磁気的、かつ、物理的に間隔を離れた位置P2に固定される(
図4参照)。固定具3の位置P2としては、ギャップgの間隔を基準として、位置P1から5倍以上離せば漏洩磁束による渦電流は生じない。例えば、ギャップgが1cmのときは、その5倍以上離せば、渦電流の発生を回避しうる。ギャップgの数を増やし、ギャップgあたりの間隔を狭くすれば離すべき距離は小さくなることにより、発熱を回避し、小型化することもできる。
【0024】
固定具3は、コア組立体1が収納筐体4に収納された状態で、収納筐体4の内側に結合される。具体的に、
図1乃至
図3のコア組立体1は、前後各1本のスタットボルト6で収納筐体4の底部に固定されている。この構成により、固定具3は、収納筐体4内のコア組立体1に対し、高さ方向hでみたスタットボルト6の締め付け力F1と、締め付け力F1をうけて固定具3自身が撓むことにより生じる前後方向(軸方向a)への締め付け力F2、及び、締め付け力F1をうけて固定具3がコア組立体1に密着することにより生じる周方向への締め付け力F3(摩擦力による滑り防止)の三方向の固定力(
図6、
図7参照)を付与することにより、コア組立体1を収納筐体4内に固定する。
【0025】
放熱性樹脂(図示省略)は、収納筐体4の内部空間に充填され、コア組立体1の周囲が放熱性樹脂によって覆われている。
【0026】
図1乃至
図7を参照して説明したインダクタによると、既に説明した従来の問題を全て解決することができる。すなわち、コア組立体1は、磁路の一部にギャップgを有しており、固定具3は、ギャップgに生じる漏洩磁束と鎖交しない位置P2に取り付けられている。この構造によると、固定具3に対する漏洩磁束の影響を低減し、もって、渦電流損を防止することができる。
【0027】
また、固定具3は、締め付け力F1〜F3を付与するから、コア組立体1の振動や、うなり(磁歪)を防止することができる。また、固定具3は、前後各1本のスタットボルト6により、収納筐体4の底部に直接固定されるから、固定のための部品点数が少ない上、作業効率が向上する。
【0028】
インダクタは、収納筐体4内に放熱性樹脂を充填した樹脂冷却方式をとるから、銅損によりコイル2に生じる熱を放熱冷却させることができる。このように、インダクタは、オイルレスの樹脂冷却方式であるから、オイル冷却方式とは異なり、品質劣化の問題が生じない。従って、維持管理コストを低減することができる。
【0029】
もっとも、樹脂冷却方式は、従来のオイル冷却方式と比較して放熱効率が悪い傾向にある。この点、
図1乃至
図7のインダクタでは、固定具3の配置により、渦電流損(及び、発熱)が防止されている。換言すれば、
図1乃至
図7のインダクタでは、銅損により生じる熱を冷却するだけでよいから、放熱性樹脂を用いた樹脂冷却方式をとることが可能となるとともに、放熱性樹脂の充填量と低減したとしても、充分な冷却効果が実現されている。
【0030】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0031】
1 コア組立体
10 コア組立体の両端面
3 固定具
4 収納筐体
g ギャップ
a 軸方向
w 幅方向
h 高さ方向