(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の空気抜き具では、開口部が竹やり形状をなしているため、間隙の空気が抜ききる前に開口から空気抜き具内に充填材が流入する可能性がある。すなわち、竹やり形状の部分まで充填材が充填されると、充填材が空気抜き具内に流入し、一旦流入してしまうと、間隙に残存する空気を排出することは困難となる。そして、間隙に空気が残存することによって充填材が部分的に欠損すると、間隙に充填材を均一に充填することができないため、既設管路と覆工体との間の強度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、間隙の空気が抜ききる前に開口から充填材が空気抜き具内に流入することを防止し、間隙に充填材を均一に充填することができる充填材の充填方法を提供することである。
【0007】
第1の発明の充填材の充填方法は、既設管路と前記既設管路の内周側に被覆された内張り材との間隙に充填材を充填する、充填材の充填方法であって、前記内張り材
の上半部に設けられる空気抜き孔に空気抜き具を挿入し、前記既設管路の内周面に前記空気抜き具の先端面を当接さ
せる空気抜き具取り付け工程と、
前記内張り材の下部に設けた充填口から、前記間隙に充填材を
圧力を加えながら充填しつつ、前記空気抜き具の先端から前記間隙の空気を逃がす充填工程と、を備え、前記空気抜き具は、先端に空気が排出される空気抜き部が設けられていることを特徴とするものである。ここで、空気抜き具の先端面とは、先端の周囲に沿って形成される面のことである。この先端面を既設管路の内周面に当接させるとは、先端面のほぼ全周を前記内周面に当接させることをいう。
【0008】
本発明では、空気抜き具は、既設管路の内周面に先端面を当接させ
て、先端に空気が排出される空気抜き部が設けられている。従って、充填材が空気抜き具内に流入するまでに、間隙の空気を前記空気抜き
部から排出することができる。これにより、間隙に充填材を均一に充填し、間隙の空気を抜き切ることができる。また、間隙に滞留水が存在する場合、この滞留水も空気と同様に排出することができる。
【0009】
第2の発明の充填材の充填方法は、前記第1の発明において、前記空気抜き具の先端面は、前記充填工程中に前記既設管路の内周面に接近させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、空気抜き具の先端面は、充填工程中に既設管路の内周面に接近する。従って、間隙に空気および滞留水が多く残存するときには、充填の初期段階においては、既設管路の内周面に先端面を当接させず、間隙内で留めておき、先端の開口から空気および滞留水を排出させることができる。これにより、スムーズに多量の空気や滞留水の排出を促すことができる。その後、排出成分が充填材と近似してきたら、先端面を当接させることにより、先端に設けられた空気抜き部から先端面の移動距離分の間隙の空気および滞留水を抜ききることができる。更に、この先端面の接近動作を充填工程中に複数回行う(空気抜き具の先端を段階的に既設管路内周面に接近させる)ことで、より間隙の空気および滞留水を抜ききることができる。
【0011】
第3の発明の充填材の充填方法は、前記第1または第2の発明において、前記充填工程
を停止させた後、前記空気抜き具の先端を前記空気抜き孔の位置まで引き下
げ、前記間隙に設置されていた前記空気抜き具に対応する充填材を前記間隙に充填する追加充填工程を備えるものである。
【0012】
本発明では
、充填工程を停止させた後、空気抜き具の先端を空気抜き孔の位置まで引き下げ、間隙に設置されていた空気抜き具に対応する充填材を間隙に充填する追加充填工程を行う。これにより、空気抜き具に対応する空間が間隙内に生じることなく、充填材を欠損なく均一に充填することができるため、既設管路の内周面と内張り材の外周面との間の強度低下を防止することができる。
【0013】
第4の発明の充填材の充填方法は、前記第1〜3のいずれかの発明において、前記空気抜き孔は、前記内張り材に適宜設けられることを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、内張り材の被覆後または被覆前に、空気抜き孔を形成することができる。これにより、内張り材の被覆後であっても空気抜き具の設置数の変更が可能となる。従って、現場の事情に応じた設計変更に柔軟に対応することができる。例えば、既設管路において逆V字型になっているなど、空気の溜まりやすい箇所の対向面に空気抜き孔を開口させることができる。また、複数の空気抜き孔を形成することもできる。
【0015】
第5の発明の充填材の充填方法は、前記第1〜4のいずれかの発明において、前記空気抜き部は、切り欠き溝であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、空気抜き部は、切り欠き溝である。切り欠き溝は、既設管路の内周面に近い所に位置するため、間隙の空気および滞留水を抜ききることができる。また、切り欠き溝の深さを調整することにより、単位時間当たりの排出量の制御が可能となる。
【0017】
第6の発明の充填材の充填方法は、前記第1〜5のいずれかの発明において、前記空気抜き具は、先端の外周にテーパー面が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、前記空気抜き具は、先端の外周にテーパー面が形成されている。コンクリート等で形成された既設管路の内周面は粗面であり、空気抜き具の先端面を当接した状態でも、既設管路内周面との間にはわずかな隙間が生じている。この場合、
図11(左が実施例で、右は非実施例)に示すように先端外周のテーパー面を通じて、僅かに留まっている空気および滞留水まで空気抜き具内にスムーズに流入させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態は、地中に埋設された下水道管などの既設管路Pを補修する場合に、本発明を適用した一例である。マンホールHまたは立坑から既設管路P内に各種部材を搬入して組み立て、既設管路P内の所定の区間に既設管路Pの内面全周を被覆する内張り材100を構築する。
図2に示すように、内張り材100の端部は、例えば、速硬性モルタ
ルなどによって封止される。その後、空気抜き孔3a、空気抜き具200、排出ホース8、充填口12、充填ホース11および充填ポンプ10を設置し、既設管路Pと内張り材100との間に充填材を充填する。
【0021】
まず、本発明に適用される内張り材100および空気抜き具200の構成について説明する。
【0022】
(内張り材)
内張り材100は、既設管路Pを補強するためのものである。
図2および3に示すように、内張り材100は、既設管路Pの長さ方向に複数設けられる
補強材15を含む補強体1と、補強体1と表面部材3との間に介在する嵌合部材2と、補強体1の内周面に取り付けられる表面部材3と、からなる。
【0023】
補強体1は、複数のリング状の補強材15からなる。さらに、補強材15は、既設管路Pの内周面の左側部、右側部、及び、下部に沿って、それぞれ配置される3つの円弧状の補強部材15a,15b,15cからなる。補強部材15a〜15cは、結合部材(不図示)によって周方向に連結される。補強材15は、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、硬質合成樹脂などからなる。補強材15は、既設管路Pの長さ方向に互いに間隔を空けて配設され、互いに隣り合う補強材15同士がパイプ状の複数の連結部材16によって連結される。
図4に示すように、補強材15の内周面には、複数の凹部17が周方向に間隔を空けて形成され、嵌合部材2がそれぞれ嵌め込まれている。
【0024】
嵌合部材2は、既設管路Pの長手方向に長尺な部材であって、複数の補強材15にまたがって取り付けられる。嵌合部材2は、その長手方向と直交する断面において、補強材15に形成された凹部17の形状と同様の角張ったC字形状の断面を有する。このC字状の嵌合部材2の内部は、後述する表面部材3と嵌合する凹状の第1嵌合部2aとなっている。複数の嵌合部材2は、それぞれの第1嵌合部2aが既設管路Pの中心側に向けて開口するように、周方向に並べて補強体1に取り付けられる。嵌合部材2の第1嵌合部2aの奥部には、表面部材3との間をシールするためのシール部材18が設けられている。嵌合部材2は、例えば、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂からなる。補強体1の内周面には、この嵌合部材2を介して表面部材3が取り付けられる。
【0025】
表面部材3は、周方向の両端部に2つの凸状の第2嵌合部3bが形成された、略コの字型の断面を有する。1つの嵌合部材2の第1嵌合部2aに、周方向に隣接する2つの表面部材3の第2嵌合部3bが互いに接した状態で挿入され、2つの第2嵌合部3bの先端部がそれぞれ第1嵌合部2aと嵌合することによって補強体1に表面部材3が固定される。複数の表面部材3が周方向に並べて取り付けられることによって、既設管路Pの内周面が表面部材3により気密状態で覆われる。表面部材3は、例えば、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂からなる。
【0026】
既設管路Pの内周面と補強体1、嵌合部材2および表面部材3との間には、間隙Sが設けられる。この間隙Sに後述する充填材が充填される。
【0027】
(空気抜き具)
空気抜き具200は、間隙Sの空気および滞留水を排出するためのものである。
図9に示すように、空気抜き具200は、管体4と螺合ナット5と変換ネジ6とホースニップル7とを備える。
【0028】
管体4は、管形状をなす。管体4の長さは、既設管路Pの内周面から表面部材3の内周面までの距離以上である。管体4は、外周面にねじ切り4aが設けられる。この管体4の一端は、軸直角にカットされ、リング状の先端面が形成されている。管体4には、一端の外周にテーパー加工が施されたテーパー面4cが設けられる。このテーパー面4cは、先端面外周の面取り加工を指し、C加工やR加工などにより形成される。管体4は、その一端に空気抜き部が設けられる。なお、この空気抜き部は、図示例では切り欠き溝4bとして設けられている。切り欠き溝4bは、90°間隔で4つ設けられる。切り欠き溝4bの深さは、空気および滞留水が通り抜け可能であれば如何なる深さであっても構わない。切り欠き溝4bは、いくつ設けられていても構わない。切り欠き溝4bが設けられる間隔は、一定でなくても構わない。管体4は、例えば、ステンレスなどからなる。管体4の外周には、螺合ナット5が取り付けられる。
【0029】
螺合ナット5は、表面部材3に設けられた空気抜き孔3aに管体4を取り付けるためのものである。螺合ナット5の内周面には、管体4の外周面に設けられたねじ切り4aと同じピッチのねじ切り5dが設けられる。ねじの形状は、軸方向の精度が出しやすい台形ねじが好ましい。螺合ナット5は、螺合ナット5の内周面に設けられたねじ切り5dと管体4の外周面に設けられたねじ切り4aとが螺合されることによって、管体4に取り付けられる。螺合ナット5は、螺合ナット上部5aと螺合ナット下部5bとからなる。螺合ナット上部5aの外周面には、空気抜き孔3aに設けられたねじ切り3bと同じピッチのねじ切り5cが設けられる。なお、螺合ナット上部5aの外周面に設けられるねじ切り5cのピッチと螺合ナット5内周面に設けられるねじ切り5dのピッチは、同じであっても異なっていても構わない。螺合ナット5は、螺合ナット上部5aの外周面に設けられたねじ切り5cと空気抜き孔3aに設けられたねじ切り3bが螺合されることによって、表面部材3に取り付けられる。これにより、螺合ナット5に取り付けられた管体4は、表面部材3に対して上下動可能となる。螺合ナット上部5aの長さは、表面部材3の厚みより大きいことが望ましい。これにより、表面部材3に螺合ナット5を完全に螺合させて取り付けることができる。また、螺合ナット下部5bの外周面の形状は六角形状をなし、外径は少なくとも螺合ナット上部5aの外径より大きい。これにより、表面部材3に螺合ナット5を強く押し付けるように螺合することができるため、表面部材3に螺合ナット5をしっかりと固定することができる。これにより、表面部材3に空気抜き具200をしっかりと固定できるため、作業中の空気抜き具200の外れを防止することができる。なお、螺合ナット下部5bの外周面の形状は、六角形状でなくても構わない。例えば、八角形状であっても構わない。螺合ナット5は、例えば、ステンレスなどからなる。管体4の他端には、上下が開放された変換ネジ6が取り付けられる。
【0030】
変換ネジ6は、外径の異なる管体4とホースニップル7の一端とを接続するためのものである。この変換ネジ6を介して、管体4にホースニップル7が取り付けられる。
【0031】
ホースニップル7は、空気抜き具200に空気および滞留水を排出するための排出ホース8の一端を取り付けるためのものである。なお、排出ホース8の他端に減圧ポンプ(不図示)を接続し、積極的に空気および滞留水を排出することもできる。また、変換ネジ6とホースニップル7は一体のものであってもよい。
【0032】
次に、内張り材100を形成する内張り工程および空気抜き具200を用いて行われる各工程について説明する。
【0033】
(内張り工程)
この内張り工程は、既設管路P内に内張り材100を被覆し、後述する空気抜き具取り付け工程に先立って行われる。
【0034】
図3に示すように、補強材15を既設管路Pの内周面に沿って配設する。補強材15は、3つの補強部材15a〜15cを既設管路P内で周方向に連結することによって組み立てる。補強材15を複数の連結部材16によって既設管路Pの長手方向に複数個結合させることにより、筒状の補強体1が形成される。
【0035】
補強材15の複数の凹部17に、複数の嵌合部材2をそれぞれ嵌め込む。さらに、それぞれの嵌合部材2の第1嵌合部2aに、周方向に隣接する2つの表面部材3の第2嵌合部3bを挿入して嵌合させる。このように、筒状の補強体1に複数の表面部材3を全周に渡って取り付けることによって、既設管路Pの内周面を表面部材3で被覆する。以上により、既設管路Pに内張り材100が設けられる。
【0036】
(注入ホース取り付け工程)
図2に示すように、内張り材100設置後、内張り材100の下部には充填口12が設けられる。充填口12は、例えば、ドリルなどによって設けられる。充填口12は、内張り材100に複数個設けられる。充填口12は、充填可能な距離によって、内張り材100の長手方向に一定の間隔を空けて設けられる。充填口12が設けられる間隔は、一定でなくても構わない。なお、充填口12は、例えばキャップ(不図示)などによって封止される。充填口12には、充填ホース11が取り付けられる。充填ホース11は、充填ポンプ10と充填口12とを接続するためのものである。充填ホース11は、一端が充填口12に取り付けられ、他端が充填ポンプ10に取り付けられる。以上により、内張り材100と充填ポンプ10とが接続される。
【0037】
(空気抜き具取り付け工程)
図3および
図5に示すように、内張り材100の上半部に設置されている所望の表面部材3に、ねじ切り3bが形成された空気抜き孔3aを設ける。空気抜き孔3aは、表面部材3に複数設けられる。本実施例の内張り材100の場合においては、後述する螺合ナット5を深くネジこむために、嵌合部材2の間に設けることが好ましい。空気抜き孔3aは、内張り材100の長手方向に一定の間隔を空けて設けられる。通常、空気が溜まると予想される部分に現場で空気抜き孔3aを設ける。空気抜き孔3aは、例えば、ドリルなどによって設けられる。なお、空気抜き孔3aは、内張り材の被覆後または被覆前に設けても構わない。空気抜き孔3aが設けられる間隔は、一定でなくても構わない。また、現場で間隙S内へ空気が溜まりやすい箇所を見つけ、そこに空気抜き孔3aを設けることもできる。
【0038】
空気抜き孔3aに螺合ナット5を取り付ける。螺合ナット5は、螺合ナット上部5aの外周面に設けられたねじ切り5cと空気抜き孔3aに設けられたねじ切り3bとが螺合されることによって、空気抜き孔3aに取り付けられる。螺合ナット5は、嵌合部材2に当接するまでネジ込まれる。
【0039】
螺合ナット5に管体4を取り付ける。管体4は、螺合ナット5の内周面に設けられたねじ切り5dと管体4の外周面に設けられたねじ切り4aが螺合されることによって、螺合ナット5に取り付けられる。管体4は、切り欠き溝4bが設けられた一端面が既設管路Pの内周面に当接するまでネジ込まれる。なお、管体4は、後述する充填工程途中に一端面を既設管路Pの内周面に当接させても構わない。例えば、間隙Sに空気および滞留水が多く残存するときには先端面を当接させず、その後、残存する量が少なくなったときに先端面を当接させてもよい。管体4の一端面は、管体4の軸心に直交し、且つ、管体4の軸心は、既設管路Pの内周の中心を通る径方向に設けられている。以上により、内張り材100に空気抜き具200が取り付けられて固定される。
【0040】
ホースニップル7の他端には、排出ホース8が取り付けられる。ホースニップル7に取り付けられた排出ホース8の一端には、ホースバンド9が取り付けられる。これにより、排出ホース8がホースニップル7から外れることを防止する。なお、排出ホース8の他端を減圧ポンプ(不図示)に取り付けることもできる。
【0041】
空気抜き具取り付け工程は、間隙Sの空気をスムーズに排出できるため、後述する充填工程前に行うことが望ましいが、充填工程途中に行っても構わない。
また、予め管体4を螺合ナット5に組みつけておき、その後空気抜き孔3aに螺合ナット5を取り付けても構わない。
【0042】
(充填工程)
図2に示すように、充填材は、充填ポンプ10から充填ホース11を介して間隙Sに注入される。充填圧力は、0.1〜0.3MPa程度である。充填材は、内張り材100の下方から上方へと徐々に充填される。なお、充填材としては、例えば、セメントミルク、モルタル、コンクリートなどのセメント系材料または不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。
【0043】
図6に示すように、間隙Sに充填材を充填する。このとき、間隙Sの空気および滞留水は、管体4の一端面に設けられた切り欠き溝4bから排出される。この切り欠き溝4bは、既設管路Pの内周面に近い所に位置するため、間隙Sの空気および滞留水を抜ききることができる。注入される充填材と同じ性状の充填材が空気抜き具200の後端から排出することによって、間隙Sに充填材が隙間なく充填されていることを確認することができる。また、減圧ポンプ(不図示)を取り付けて稼働してもよい。減圧ポンプによって排出ホース8内、ホースニップル7内、変換ネジ6内および管体4内が減圧され、空気および滞留水の排出が促される。
【0044】
充填材が空気抜き具200の後端から漏出したことを確認した後、
図7に示すように、排出ホース8の他端は、排出ホース8を折り曲げ、折り曲げられた排出ホース8に仮止めテープ13を巻きつけることによって封止される。なお、排出ホース8の封止方法は、排出ホース8の他端が封止可能であれば如何なる方法であっても構わない。例えば、キャップ(不図示)などによって封止してもよい。排出ホース8の他端を封止した後、充填ポンプ10による充填材の注入を中断させる。
【0045】
(追加充填工程)
管体4は、管体4の一端が空気抜き孔3aの高さに到達するまでネジ下げられる。 ネジ下げられた分の管体4、すなわち、空気抜き孔3aから既設管路Pの内周面までの高さを有する管体4と対応する充填材を間隙Sに充填し、間隙S内の圧力管理で充填度合いを確認する。これにより、間隙Sに充填材を欠損なく均一に充填することができる。
なお、充填工程時に排出ホース8の他端封止を行わず、充填材を空気抜き具200の後端から排出し続けながら管体4をネジ下げ、その後封止してもよい。
また、充填工程前に、ネジ下げ位置となる管体4の外周面にマーキングしておくと、空気抜き孔3aの高さに合わせてネジ下げることが容易となる。
【0046】
(空気抜き具取り外し工程)
充填材を養生させる。充填材の養生後、空気抜き孔3aから空気抜き具200を取り外す。
【0047】
図8に示すように、空気抜き具取り外し工程後、空気抜き孔3aは、封止部材14によって封止される。
【0048】
図10に示すように、封止部材14の側面には、空気抜き孔3aに設けられたねじ切り3
bと同じピッチのねじ切り14aが設けられている。封止部材14は、空気抜き孔3aに螺合されて取り付けられる。封止部材14の厚みは、表面部材3の厚みより大きいことが望ましい。これにより、表面部材3に封止部材14を完全に螺合させて取り付けることができる。また、封止部材14には、スロット14bが設けられている。これにより、例えば、マイナスドライバーを用いることによって容易に封止部材14を取り付けることができる。なお、スロットは、例えば、スロット14bに加えてスロット14bに直交するスロットが設けられたものであっても構わない。
【0049】
なお、充填ホース11の取り外しおよび充填口12の封止は、適宜行う。
【0050】
(作用・効果)
本実施形態では、空気抜き具は、既設管路Pの内周面に先端面を当接させることで固定され、先端に空気を排出する切り欠き溝4bが設けられている。従って、充填材が空気抜き具200内に流入するまでに、間隙Sの空気を切り欠き溝4bから排出することができる。これにより、間隙Sに充填材を均一に充填し、間隙Sの空気を抜ききることができる。また、間隙Sに滞留水が存在する場合、この滞留水も空気と同様に排出することができる。さらに、切り欠き溝4bの深さを調整することにより、単位時間当たりの排出量の制御が可能となる。
【0051】
本実施形態では、空気抜き具200の先端面は、充填工程中に既設管路Pの内周面に接近させても構わない。従って、間隙Sに空気および滞留水が多く残存するときには、
図12に示すように既設管路Pの内周面に先端面を当接させず、先端の開口から空気および滞留水を排出させることができる。これにより、スムーズに排出を促すことができる。その後、残存する量が少なくなったときに先端面を当接させることにより、先端に設けられた空気抜き部から間隙Sの空気および滞留水を抜ききることができる。
【0052】
本実施形態では、充填工程完了後、空気抜き具200の後端を封止し、空気抜き具200の先端を空気抜き孔3aの位置まで引き下げた後、間隙Sに設置されていた空気抜き具200に対応する充填材を間隙Sに充填する追加充填工程を行う。これにより、間隙Sに充填材を欠損なく均一に充填することができるため、既設管路Pの内周面と内張り材
100の外周面との間の強度低下を防止することができる。
【0053】
本実施形態では、内張り材100の被覆後または被覆前に、表面部材3に空気抜き孔3aを形成することができる。これにより、内張り材100の被覆後であっても空気抜き具200の設置数の変更が可能となる。従って、現場の事情に応じた設計変更に柔軟に対応することができる。例えば、間隙Sにおいて空気の溜まりやすい箇所の対向面に空気抜き孔3aを開口させることができる。
【0054】
本実施形態では、前記空気抜き具200は、先端の外周にテーパー面4cが形成されている。これにより、僅かに留まっている空気および滞留水までも空気抜き具200内にスムーズに流入させることができる。
【0055】
本実施形態では、空気抜き具200は、外周にねじ切り4aが設けられた管体4と、内周が管体4に螺合され外周が空気抜き孔3aに螺合される螺合ナット5bを備えている。これにより、空気抜き具200は、軸方向上下動に係る高い操作性を確保することができる。また、簡単な工具のみによって、設置および撤去が可能となる。
【0056】
本実施形態では、空気抜き具取り外し工程後、空気抜き孔3aは、封止部材14によって封止される。これにより、空気抜き孔3aによる表面部材3の凹凸を無くすことができるため、空気抜き孔3aによって管路に流れる水の流れが阻害されることを防止できる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0058】
上記の実施形態では、本発明は、地中に埋設された下水道管に適用されると記載したが、例えば、トンネルの二次覆工などに適用しても構わない。
【0059】
また、上記実施形態では、内張り材100は、既設管路Pの長さ方向に複数設けられる
補強材15を含む補強体1と、補強体1と表面部材3との間に介在する嵌合部材2と、補強体1の内周面に取り付けられる表面部材3と、からなるが、この限りではない。内張り材は、例えば、押出成形された塩ビ管を既設管路P内に設置されたものでも構わない。
【0060】
また、上記の実施形態では、管体4は螺合ナット5を介して空気抜き孔3aに取り付けられると記載したが、管体4が空気抜き孔3aに直接取り付けられていても構わない。例えば、空気抜き孔3aの孔径と外径が等しく、外周面にねじ切り加工が施された管体4が、空気抜き孔3aに螺合されて取り付けられていても構わない。
【0061】
また、上記の実施形態では、ホースニップル7に排出ホース8が取り付けられると記載したが、例えば、管体4の他端が竹の子形状に形成され、管体4に排出ホース8が直接取り付けられていても構わない。
【0062】
また、上記の実施形態では、螺合ナット上部5aの長さは、表面部材3の厚みより大きいことが望ましいと記載したが、作業中に空気抜き具200が表面部材3から外れることなく固定可能であれば、如何なる長さでも構わない。
【0063】
また、上記の実施形態では、封止部材14の厚みは、表面部材3の厚みより大きいことが望ましいと記載したが、封止部材14が表面部材3から外れることなく固定可能であれば、如何なる厚みでも構わない。
【0064】
また、上記の実施形態では、空気抜き具200の先端に設けられた空気抜き部は、切り欠き溝4bであると記載したが、例えば、孔でも構わない。この孔は、例えば、テーパー面の所望の場所に、テーパー面に対して直交するように設けられる。