(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228767
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】固体電解質用材料、固体電解質、および全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20171030BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20171030BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20171030BHJP
C01B 25/45 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
!C01B25/45 T
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-143723(P2013-143723)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-18634(P2015-18634A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 正一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真紀
【審査官】
式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−294429(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/100002(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/007445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01B 1/06
C01B 25/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liイオンを電荷担体として動作する全固体電池を構成する固体電解質用の材料であって、Liイオン伝導体からなる粉体状の母材と粉体状の焼結助剤とを含み、前記母材の平均粒径Aと前記焼結助剤の平均粒径Bとの比B/Aが、0.3≦B/A≦1.0であり、
前記母材は、化学式Li1+xAlxGe2−x(PO4)3で表される物質(但し、0<x<1)である、
ことを特徴とする固体電解質用材料。
【請求項2】
請求項1において、前記焼結助剤の平均粒径Bとの比B/Aが、0.4≦B/A≦0.8であることを特徴とする固体電解質用材料。
【請求項3】
請求項1または2において、前記焼結助剤の添加量が前記母材に対して0.5wt%以上3.5wt%以下であることを特徴とする固体電解質用材料。
【請求項4】
請求項3において、前記添加量が1.0wt%以上2.5wt%以下であることを特徴とする固体電解質用材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記焼結助剤がLi3PO4であることを特徴とする固体電解質用材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の前記固体電解質用材料を焼結させてなる固体電解質。
【請求項7】
請求項6に記載の固体電解質を含んで構成される全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Liイオンを電荷担体とした全固体電池の固体電解質用材料、その固体電解質用材料からなる固体電解質、および全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、各種電池の中でもエネルギー密度が高いことで知られている。一般に普及しているリチウム二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いている。そのため、リチウム二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が、他の電池よりも厳しく求められている。
【0003】
そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料であり、従来のリチウム二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。なお、以下の特許文献1や2には、全固体電池についての技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−150817号公報
【特許文献2】特開2009−206094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼結法で作製する全固体電池は、正極活物質を含むスラリー状の正極材料、負極活物質を含むスラリー状の負極材料、およびイオン伝導体を含むスラリー状の固体電解質用材料をそれぞれシート状に成形し、シート状の固体電解質用材料をシート状の正極材料と負極材料とで挟持した積層体を焼成してなる焼結体である。なお、正極材料と負極材料にも固体電解質用材料が含まれている。すなわち、焼結体である全固体電池は、自身を構成する全ての材料の焼結温度以上で焼成することで作製されることになる。
【0006】
ところで、固体電解質用材料の焼結温度は高く、例えば、引用文献1に記載の固体電解質は960℃で焼成しており、引用文献2に記載の固体電解質は850℃で焼成している。そして、このように800℃を超えるような焼成温度では、正極中あるいは負極中の活物質と固体電解質とが固相反応を起こし、電池としての容量を低下させる可能性がある。もちろん、焼成温度が高いほど製造コストも増加する。一方、焼成温度を低くすると固体電解質のイオン導電性が低下したり、焼結不足になったりするという問題が発生する。
【0007】
そこで本発明は、低温焼成が可能でかつ高いイオン伝導度を有する全固体電池用の固体電解質用材料を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、Liイオンを電荷担体として動作する全固体電池を構成する固体電解質用の材料であって、Liイオン伝導体からなる粉体状の母材と粉体状の焼結助剤とを含み、前記母材の平均粒径Aと前記焼結助剤の平均粒径Bとの比B/Aが、0.3≦B/A≦1.0で
あり、
前記母材は、化学式Li1+xAlxGe2−x(PO4)3で表される物質(但し、0<x<1)である、
ことを特徴とする固体電解質用材料としている。そして、前記焼結助剤の平均粒径Bとの比B/Aが、0.4≦B/A≦0.8
であればより好ましい。
【0009】
また、前記焼結助剤の添加量が前記母材に対して0.5wt%以上3.5wt%以下である固体電解質用材料としてもよい。より好適には、前記焼結助剤の添加量を1.0wt%以上2.5wt%以下とすることである。
【0010】
そして、上記いずれかの固体電解質用材料にお
いて、前記焼結助剤をLi
3PO
4としてもよい。
【0011】
また本発明は、上記いずれかに記載の前記固体電解質用材料を焼結させてなる固体電解質と、その固体電解質を含んで構成される全固体電池にも及んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固体電解質用材料によれば、低温で焼成しても高いイオン伝導度を有する固体電解質を得ることができる。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】固体電解質の製造方法の一例を示す図である。
【
図2】固体電解質の構造を模式的に示した図である。
【
図3】比較例に係る固体電解質と本発明の実施例に係る固体電解質の顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
===本発明に想到する過程===
上述したように、全固体電池の固体電解質として用いられる材料には、低い焼成温度と、高いイオン伝導度とが求められている。焼成温度を低下させるためには、一般的な焼結体(セラミックス)と同様に、固体電解質用材料の主体となるイオン伝導体(以下、母材とも言う)に焼結助剤を添加することが考えられる。また、イオン伝導度を向上させるための手法としては、固体電解質用材料が粉体にバインダや溶剤などを混合したスラリー状であることから、そのスラリー状の材料に含まれている固体電解質用材料の粉体や焼結助剤における個々の粒子の平均粒径を調整することが考えられる。
【0015】
しかしながら、上述した低温焼成のための手法やイオン伝導を向上させるための手法では、実用可能な固体電解質を得ることが極めて難しいということが、本発明者による固体電解質に関する研究によって判明した。例えば、焼結助剤は、基本的に固体電解質におけるイオン伝導性を阻害する物質であることから過剰に添加することができない。一般的、あるいは本発明者による研究開発過程で得た知見などから、焼結助剤の添加量については、固体電解質に対して2wt%前後の添加量が適量である。粒子の平均粒径についても生産性や既存の製造設備などを考慮すれば、とくに小さな平均粒径については、極端に小さな値は採用しにくい。一方、大きな平均粒径については、母材であれば表面積や粒子同士の接触面積の減少に伴ってイオン伝導度が低下し、添加剤であれば、イオン伝導体の粒子間に介在してイオン伝導体の粒子同士を離間させてしまうことからやはりイオン伝導度を低下させてしまう。一般的あるいは常識的には母材および焼結助剤の平均粒径は、ともに1〜2μm前後とすることが妥当である。
【0016】
以上より、焼結助剤の添加量や、粉体における粒子の平均粒径を調整する、という従来の手法を用いて焼成温度の低温化とイオン伝導度の向上とをともに達成することには限度がある。そこで本発明者は、特性を改良するための手法そのものから検討することとした。そして、上記特許文献1や2に記載の固体電解質に対して極めて低い700℃以下での焼結を可能としつつ、焼結助剤を含まない固体電解質単独でのイオン伝導度よりも高いイオン伝導度を得る、という目標を掲げて鋭意研究を重ねた。その結果、本発明に想到した。
【0017】
==特性改良手法について===
本発明者は、固体電解質の特性改良手法を開発するのに当たり、固体電解質におけるイオン伝導の仕組みについて考察した。具体的には、母材だけを用いた焼結体で固体電解質を構成した場合、その焼結体は、実質的にイオン伝導の主体となる物質でのみ形成されているものの、低温で焼成すると緻密な焼結体が得られず、焼結体中の母材の粒子同士が十分に接触できず、却ってイオン伝導度を低下させてしまう。高温焼成では、上述したように電極活物質との固相反応に起因する容量低下が憂慮される。焼結助剤を添加する場合でも、その焼成助剤がイオン伝導を阻害する要因に成り得るため、添加量を多くすることができない。母材や焼結助剤の平均粒径についても極端な値は採用し難い。
【0018】
そこで、本発明者は、母材と焼結助剤の体積比に着目した。言い換えれば、Liイオン伝導体からなる母材の粒子間の間隔に着目した。そして、母材と焼結助剤の単位体積当たりの体積比は、母材と焼結助剤のそれぞれの粒子の平均粒径(以下、粒径とも言う)の比(以下、粒径比とも言う)によって制御可能であると考えた。そして本発明の実施例に係る固体電解質用材料は、その材料中の母材と焼結助剤の粒径比を適切に設定することで、上記目標を達成している。
【0019】
===実施例===
本発明の実施例は、Liイオンを電荷移動の担い手(電荷担体)として動作する全固体電池を構成する固体電解質用の材料である。すなわち焼結体からなる固体電解質として焼成される前の材料である。そして、母材に固体中でLiイオンの移動が可能な物質(Liイオン伝導体)を用い、その母材に焼結助剤を添加したものである。具体的には、化学式Li
1+xAl
xGe
2−x(PO
4)
3表される母材(以下、LAGPとも言う)に焼結助剤としてLi
3PO
4を添加したものである。なおLi
3PO
4は母材と同様にLiイオン導電体でもある。なお、これら母材や焼結助剤は周知の物質であるが、本実施例に係る固体電解質用材料では、母材と焼結助剤のそれぞれの粒子の粒径比が適切に設定されており、それによって低温焼成を可能としつつ、その固体電解質用材料の焼結体である固体電解質は高いイオン伝導度を有している。
【0020】
<サンプルの製造>
本発明の実施例に係る固体電解質用材料における母材と焼結助剤の最適粒径比などを規定するために、所定の粒径を有する母材に粒径が異なる焼結助剤を添加してなる各種固体電解質用材料を焼結させてなる各種固体電解質をサンプルとして作製した。
図1にサンプルの製造方法の流れを示した。まず、母材の原料であるLi
2CO
3、Al
2O
3、GeO
2、NH
4H
2PO
4の粉体を所定の組成比になるように秤量して磁性乳鉢やボールミルで混合を行い(s1)、その混合物をアルミナルツボなどを用いて300℃〜400℃の温度で3h〜5h仮焼成する(s2)。仮焼成によって得られた粉体を1200℃〜1400℃の温度で1h〜2hの時間を掛けて溶解する(s3)。そして、その溶解した試料を急冷しその試料をガラス化する(s4)。
【0021】
ガラス化された試料を200μm以下の粒径となるように粗く解砕し(s5)、その粗解砕して得た粉体を大気中にて10h〜12h、800℃〜900℃の温度で焼成する(s6)。さらに、その焼成後の粉体中の粒子が所定の粒径となるように、ボールミルなどを用いて解砕する(s7)。このようにして母材であるLAGPの粉体が得られる。
【0022】
次に、母材の粉体に焼結助剤であるLi
3PO
4を所要量添加するとともに、スラリー状の固体電解質用材料を得る(s8)。具体的には、粉体状の母材に対しエチルセルロース等のバインダを20wt%〜30wt%、溶媒としてエタノール等の無水アルコールを30wt%〜50wt%、および所要量の焼結助剤をボールミルを用いて20h混合する。そして、その混合物を真空中にて脱泡すると(s9)、ペースト状の固体電解質用材料が得られる。なお、添加する焼結助剤の粒径については、市販品などを用いてサンプルに応じた粒径のものを調達し、それを母材と混合した。
【0023】
つぎに、脱泡したペースト状の固体電解質用材料をドクターブレード法にてPETフィルム上に塗工する(s10)。そして、PETフィルムからその塗工膜を剥離、転写することで、所謂「グリーンシート」を作製する。ここでは、塗工膜を多数用意しておき単体のグリーンシートを順次積層して多層構造体にする。そして、その多層構造体をプレス圧着し積層体にする(s11)。この積層体を適宜な大きさに裁断し(s12)、その裁断後の積層体を700℃で焼成する(s13)。この焼成工程は、全固体電池を作製する場合の最終的な焼成工程に相当する。すなわち、実際の全固体電池では、シート状の電極材料と固体電解質用材料とからなる積層体を焼成することになる。しかし、ここでは固体電解質のインピーダンスを測定し、その測定値に基づいてイオン伝導度を求めるため、固体電解質用材料のみからなる焼結体を作製することとし、さらに、その焼結体の表面に集電体を形成する(s14)。例えば、焼結体における積層構造の最下層と最上層にペースト状の金属(Al,Cuなど)を塗布し、その塗布膜が乾燥したのち、加熱してその塗布膜を焼結体表面に焼き付けて集電体を形成する。
【0024】
===最適粒径比===
固体電解質用材料に含まれている粉体状の母材と焼結助剤の最適粒径比を求めるために、母材の粒径を一般的な2.0μmとして焼結助剤の粒径が異なる各種サンプルを作製した。焼結助剤の粒径については、その範囲を一般的な値から大きく乖離させないように、ここでは0.5〜8.0μmの範囲で調整した。また、焼結助剤の添加量については常識的な値である2.0wt%とした。なお、比較例として、固体電解質用材料中に焼結助剤が含まれないサンプルも作製した。そして、各サンプルについてインピーダンスを測定し、イオン伝導度を求めた。
【0025】
以下の表1に各サンプルにおける粒径比とイオン伝導度との関係を示した。
【0026】
【表1】
表1においてサンプル1が比較例に対応する。そして、焼結助剤を添加したサンプル2〜11について、母材の粒径をA(=2.0μm)とし、焼結助剤の粒径をBとしたときの粒径比B/Aと、イオン伝導度と、そのイオン伝導度の値に応じた合否(○と×)をこの表1に示した。合否の判定は、サンプル1のイオン伝導度7.95×10
−5(S/cm)を基準値とし、その基準値よりも大きなイオン伝導度を示したサンプル3〜8を合格としている。さらに合格したサンプル3〜8の中で基準値よりもイオン伝導度が一桁大きい1.0×10
−4(S/cm)以上のイオン伝導度を示したサンプル4〜7については、他の合格サンプル(3、8)における合格記号「○」と区別するために「◎」の記号を付した。基準値以下となったサンプル(2、9〜11)を不合格「×」とした。
【0027】
表1に示した結果から、粒径比B/Aが0.3≦B/A≦1.0であれば700℃の焼成温度でもイオン伝導度を基準値よりも高められることが確認でき、この数値範囲が粒径比B/Aの適正値であると言える。また、0.4≦B/A≦0.8とすることで特に優れたイオン伝導特性が得られることが確認できた。
図2に表1の結果を模式的に示した。
図2(A)は粒径比B/Aが上記適正値より小さな場合における焼結体の構造を示しており、(B)は上記適正値より大きな場合における構造を示している。(C)は適正値内である場合での構造を示している。(A)に示したように、粒径比が0.3未満であると、固体電解質1aにおける母材の粒子(以下、母材粒子)2の粒径Aに対して焼結助剤の粒子(助剤粒子)3aの粒径Bが小さ過ぎるため、助剤粒子3aが焼成に際して短時間で溶けて母材粒子2の表面を覆い、母材粒子間(2−2)での粒界抵抗が増大し、イオン伝導度が低下したものと思われる。
【0028】
一方(B)に示したように、母材粒子2の粒径Aに対して助剤粒子3bの粒径Bが大き過ぎると、隣接する母材粒子間(2−2)に大きな空隙4ができる。母材粒子間2−2の距離も大きく離間する。それによってイオン伝導度が低下したものと考えられる。そして(C)に示したように母材粒子2と助剤粒子3cとが適度な粒径比B/Aであると、隣接する母材粒子2同士が接触あるいは近接するように配置されつつ、助剤粒子3bによってその母材粒子2の配置状態が強く固定される。それによって、低温焼成でも緻密な焼結体が得られ、かつイオン伝導度も向上したものと思われる。
図3に比較例であるサンプル1と、最も優れたイオン伝導度を示したサンプル5のそれぞれに対応する焼結体の顕微鏡写真を示した。
図3(A)は、サンプル1の焼結体を示しており、母材粒子間に空隙に対応する黒色の部分が存在し、粗い組織構造であることが容易にわかる。すなわち、焼結助剤を添加しないと700℃での低温焼成では十分に緻密な焼結体が得られないことが確認できた。(B)に示したサンプル5の焼結体では顕著な空隙がほとんどなく、滑らかな組織構造となっていることもわかる。すなわち
図3(C)に模式的に示した構造が実際に得られていることが確認できた。
【0029】
なお、上記特許文献1には、母材に焼結助剤を添加した固体電解質について記載されているものの、母材の粒径が0.6μm、焼結助剤の粒径が1μmとの旨が示されていることから、上記粒径比B/Aは1.66程度であり、上記適正値の範囲外となっている。そして、固体電解質のイオン伝導度が1.05×10
−4と比較的高いものの、960℃の高温焼成では電極活物質が相変化し、全固体電池の容量が低下する可能性が高い。特許文献2には、電極中にガラスセラミックスを添加することが記載されているが、当該文献2に記載の発明には、固体電解質を構成する酸化物ガラス(イオン導電体の粉体に相当する)にはそのガラスセラミックスを含ませるという技術思想自体がない。
【0030】
===焼結助剤の粒径===
上述したように、母材と焼結助剤の粒径比を適切に設定することで、固体電解質の低温焼成を可能とし、イオン伝導度も向上させることができる。なお上記粒径比は、焼結助剤の添加量を一定にしたときのものであったが、その添加量にある程度の数値範囲が存在するのであれば、添加量を厳密に規定する必要が無くなり、製造も容易となる。そこで、表1に示した結果において、最もイオン伝導特性が良好だったサンプル5における粒径比を採用しつつ、焼結助剤の添加量を増減させたサンプルを作製し、各サンプルにおけるイオン伝導度を調べた。
【0031】
表2に焼結助剤の添加量とイオン伝導度との関係を示した。
【0032】
【表2】
表2においても、焼結助剤を含まない比較例に係るサンプル1のイオン伝導を基準とした各サンプル12〜23の合否を示した。なお、サンプル16は、表1におけるサンプル5と同じ条件で作製されたものである。そして、この表2に示したように、母材に対して0.5wt%以上3.5wt%以下の範囲で焼結助剤を添加すると、比較例よりも高いイオン伝導度が得られた。さらに、添加量を1.0wt%以上2.5wt%以下とすることで、比較例よりも一桁高いイオン伝導度が得られた。これは、粒径比が同じであっても添加量が少なければ低温焼成によって緻密な焼結体が得られずにイオン伝導度が低下し、逆に添加量が多ければ固体電解質においてイオン伝導の主体となる母材が相対的に少なくなってイオン伝導度が低下したものと思われる。
【0033】
===その他の実施例など===
本発明の実施例に係る固体電解質用材料では、母材としてLAGPを用い、焼結助剤としてLi3PO4を用いていた。しかし、母材や焼結助剤の種類はこれに限るものではない。本発明の技術的思想は、Liイオンを電荷担体とした全固体電池を構成する固体電解質用材料において、低温焼成とイオン伝導度の向上とを両立させるために、Liイオン伝導体からなる母材の粒子間の間隔を制御する、という点にある。すなわち、本発明は、低温焼成を可能としつつイオン伝導度を向上させるために粒径比という条件を要件としたことに特徴を有している。
【符号の説明】
【0034】
1a〜1c 焼結体(固体電解質)、2 母材の粒子、3a〜3c 焼結助剤の粒子