(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のバッファ及び前記第2のバッファに含まれるトランジスタのサイズが、前記第1のコンパレータ及び前記第2のコンパレータに含まれるトランジスタのサイズよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の充放電型発振回路。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0010】
図1は、充放電型発振回路の一例を示す回路図である。
【0011】
この
図1に示す充放電型発振回路は、充放電部11a,11bと、コンパレータ15a,15bと、RS型フリップフロップ回路17とを有する。
【0012】
充放電部11aは、電源ラインV
DDとノードN
11との間に接続された電流源12aと、ノードN
11と接地ラインとの間に接続されたキャパシタ13aと、キャパシタ13aに並列に接続されたトランジスタ14aとを有する。なお、電源ラインV
DDは第1の電源ラインの一例であり、接地ラインは第2の電源ラインの一例である。
【0013】
トランジスタ14aは、フリップフロップ回路17の出力端子Qから出力される信号Qによりオン−オフするスイッチとして動作する。トランジスタ14aがオフのときには電流源12aがオンとなって、電流源12aからキャパシタ13aに定電流が供給される。
【0014】
充放電部11bは、電源ラインV
DDとノードN
21との間に接続された電流源12bと、ノードN
21と接地ラインとの間に接続されたキャパシタ13bと、キャパシタ13bに並列に接続されたトランジスタ14bとを有する。
【0015】
トランジスタ14bは、フリップフロップ回路17の出力端子XQから出力される信号XQによりオン−オフするスイッチとして動作する。トランジスタ14bがオフのときには電流源12bがオンとなって、電流源12bからキャパシタ13bに定電流が供給される。
【0016】
コンパレータ15aは、ノードN
11の電圧VC1が基準電圧VFよりも低いときには出力信号を“L”レベルとし、ノードN
11の電圧VC1が基準電圧VFに到達すると出力信号を“H”レベルとする。このコンパレータ15aの出力信号は、フリップフロップ回路17の入力端子Sに伝達される。
【0017】
コンパレータ15bは、ノードN
21の電圧VC2が基準電圧VFよりも低いときには出力信号を“L”レベルとし、ノードN
21の電圧VC2が基準電圧VFに到達すると出力信号を“H”レベルとする。このコンパレータ15bの出力信号は、フリップフロップ回路17の入力端子Rに伝達される。
【0018】
フリップフロップ回路17は、入力端子Sに伝達される信号が“H”レベルになると、出力端子Qから出力される信号Qを“H”レベルとし、出力端子XQから出力される信号XQを“L”レベルとする。また、フリップフロップ回路17は、入力端子Rに伝達される信号が“H”レベルになると、出力端子Qから出力される信号Qを“L”レベルとし、出力端子XQから出力される信号XQを“H”レベルとする。フリップフロップ回路17は、論理回路の一例である。
【0019】
図2は、
図1に示す充放電型発振回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【0020】
時間t1でフリップフロップ回路17の出力信号Qが“L”レベルになると、電流源12aがオンになるとともに、トランジスタ14aがオフになる。そして、電流源12aからキャパシタ13aに定電流が供給され、ノードN
11の電圧VC1が時間とともに上昇する。
【0021】
なお、時間t1でフリップフロップ回路17の出力信号XQが“H”レベルになるので、電流源12bがオフになるとともにトランジスタ14bがオンになり、ノードN
21の電圧は接地電位(0V)に固定される。
【0022】
時間t2でノードN
11の電圧VC1が基準電圧VFに到達すると、コンパレータ15aの出力信号は“L”レベルから“H”レベルに変化する。この信号の変化がフリップフロップ回路17の入力端子Sに伝達されると、フリップフロップ回路17の出力信号Qは“L”レベルから“H”レベルに変化し、出力信号XQは“H”レベルから“L”レベルに変化する(時間t3)。
【0023】
フリップフロップ回路17の出力信号Qが“H”レベルになると、電流源12aがオフになるとともに、トランジスタ14aがオンになる。そして、ノードN
11の電圧VC1は接地電位(0V)に固定される。
【0024】
これと同時にフリップフロップ回路17の出力信号XQが“L”レベルになるので、電流源12bがオンになるとともに、トランジスタ14bはオフとなる。これにより、電流源12bからキャパシタ13bに定電流が供給され、ノードN
21の電圧VC2が時間とともに上昇する。
【0025】
時間t4でノードN
21の電圧VC2が基準電圧VFに到達すると、コンパレータ15bの出力信号が“L”レベルから“H”レベルに反転する。この信号の変化がフリップフロップ回路17の入力端子Rに伝達されると、フリップフロップ回路17の出力信号Qは“H”レベルから“L”レベルに変化し、出力信号XQは“L”レベルから“H”レベルに変化する(時間t5)。
【0026】
このようにして、フリップフロップ回路17の出力端子Qからは、電流源12a,12bから供給される電流量に応じた所定の周波数のパルス信号が出力される。
【0027】
ところで、上述した充放電型発振回路の発振周波数の上限値は1MHz程度であり、それよりも高い周波数で発振させると周波数の精度が悪くなる。これは、発振周波数が高くなると、コンパレータ15a内に存在する容量成分の影響によりノードN
11,N
21の電圧VC1,VC2の上昇速度が非直線的になり、
図2中にtd1,td2で示す遅延時間にばらつきが発生するためである。
【0028】
遅延時間のばらつきを小さくするために、コンパレータ15a,15bのゲインを大きくすることが考えられる。しかし、単にコンパレータ15a,15bのゲインを大きくしただけでは、コンパレータ15a,15bの消費電力が大きくなってしまう。
【0029】
以下の実施形態では、発振周波数が高くても周波数の精度が高く、消費電力が比較的少ない充放電型発振回路について説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係る充放電型発振回路の構成を示す回路図である。
図3において、
図1と同一物には同一符号を付している。
【0031】
本実施形態に係る充放電型発振回路は、充放電部11a,11bと、バッファ(電圧バッファ)21a,21bと、コンパレータ15a,15bと、フリップフロップ回路17とを有する。
【0032】
充放電部11aは、
図1の回路と同様に、電流源12aと、キャパシタ13aと、トランジスタ14aとにより構成されている。そして、電流源12aとキャパシタ13aとの間のノードN
11は、バッファ21aの入力端子に接続されている。
【0033】
バッファ21aの出力端子は、コンパレータ15aに接続されている。このコンパレータ15aは、バッファ21aを介して供給される信号の電圧が基準電圧VFよりも低いときは出力信号を“L”レベルとし、バッファ21aを介して供給される信号の電圧が基準電圧VFに到達すると出力信号を“H”レベルとする。コンパレータ15aから出力される信号は、RSフリップフロップ回路17の入力端子Sに伝達される。
【0034】
充放電部11bも、
図1の回路と同様に、電流源12bと、キャパシタ13bと、トランジスタ14bとにより構成されている。そして、電流源12bとキャパシタ13bとの間のノードN
21は、バッファ21bの入力端子に接続されている。
【0035】
バッファ21bの出力端子は、コンパレータ15bに接続されている。このコンパレータ15bは、バッファ21bを介して供給される信号の電圧が基準電圧VFよりも低いときは出力信号を“L”レベルとし、バッファ21bを介して供給される信号の電圧が基準電圧VFに到達すると出力信号を“H”レベルとする。コンパレータ15bから出力される信号は、フリップフロップ回路17の入力端子Rに伝達される。
【0036】
図4は、バッファ21aの一例を示す回路図である。なお、バッファ21bの構成はバッファ21aと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0037】
この
図4に示すバッファ21aは、電源ラインV
DDとノードN
12との間に接続された電流源22と、ノードN
12と接地ラインとの間に接続されたトランジスタ23とにより形成されている。このトランジスタ23のドレインは接地ラインに接続され、ソースはノードN
12に接続されて、ソースフォロワ回路を構成している。
【0038】
トランジスタ23のゲートは、充放電部11aのノードN
11に接続されている。また、ノードN
12は、コンパレータ15aの入力端子に接続されている。
【0039】
図5は、コンパレータ15aの一例を示す回路図である。なお、コンパレータ15bの構成はコンパレータ15aと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0040】
この
図5に示すコンパレータ15aは、電流源23と、トランジスタ32〜35とにより構成されている。
【0041】
電流源23は、電源ラインV
DDとノードN
13との間に接続されている。トランジスタ32,33は、ノードN
13と接地ラインとの間に直列に接続されている。また、トランジスタ34,35も、ノードN
13と接地ラインとの間に直列に接続されている。
【0042】
トランジスタ32のゲートはバッファ21aの出力端子に接続されており、トランジスタ34のゲートには基準電源(図示せず)から基準電圧VFが供給される。
【0043】
トランジスタ32とトランジスタ33との間のノードN
14は、トランジスタ33,35の各ゲートに接続されている。そして、トランジスタ34とトランジスタ35との間のノードN
16から出力される信号が、フリップフロップ回路17の入力端子Sに伝達される。
【0044】
なお、差動対のトランジスタ32,35のバイアス電流を、相互コンダクタンスg
mの温度変化に合わせて作成したバイアス電源から供給することが好ましい。これにより、温度変化にともなうコンパレータのゲイン変動量を小さくできるため、発振周波数の変動が抑制される。
【0045】
また、バッファ21a,21bには、温度変動量が小さいバイアス電流を供給することが望ましい。
【0046】
本実施形態では、充放電部11a,11bとコンパレータ15a,15bとの間にバッファ21a,21bを接続している。このバッファ21a,21b内のトランジスタには、大きなゲインが要求されない。そのため、バッファ21a,21b内のトランジスタ23には、コンパレータ15a,15b内のトランジスタよりもサイズが小さいトランジスタ、言い換えるとゲートとソース/ドレインとの間の寄生容量が小さいトランジスタを使用できる。
【0047】
そして、バッファ21a,21bをサイズが小さいトランジスタで形成することにより、充放電部11a,11bとコンパレータ15a,15bとを直接接続する場合に比べて、充放電部11a,11bに与える寄生容量の影響が小さくなる。その結果、発振周波数を高くしても良好な周波数精度を維持できる。
【0048】
また、充放電部11a,11bとコンパレータ15a,15bとの間にバッファ21a,21bを配置することにより、コンパレータ15a,15bのしきい値付近における急峻な電位変化(ΔV/Δt)が抑制される。このため、コンパレータ15a,15b内の寄生容量に流れる電流のピーク値が低減され、充放電電流に与える誤差が小さくなる。その結果、発振周波数のばらつきや温度変動がより一層小さくなるという効果を奏する。
【0049】
(電流源)
ところで、
図3に示す充放電型発振回路の発振周波数fは、キャパシタ13a,13bの容量値をC1、電流源12a,12bからキャパシタ13a,13bに流れる電流をi
c、コンパレータ15a,15bの応答遅れをt
dとすると、下記式により計算される。
【0050】
f=1/((C1×VF/i
c+t
d)×2)
充放電型発振回路の発振周波数の温度変動を小さくするためには、i
c及びt
dの温度変動を抑えることが重要になる。
【0051】
図6は、温度変動が小さい電流源の一例を示す回路図である。この電流源は、充放電部11a,11bの電流源12a,12bとして使用する。
【0052】
トランジスタ41は電源ラインV
DDと出力端子46との間に接続されている。また、トランジスタ42は電源ラインV
DDとノードN
17との間に接続され、トランジスタ43は電源ラインV
DDとノードN
18との間に接続されている。
【0053】
アンプ45の一方の入力端子はノードN
17に接続されており、他方の入力端子はノードN
18に接続されている。そして、このアンプ45の出力は、トランジスタ41,42,43の各ゲートに接続されている。
【0054】
ノードN
17と接地ラインとの間にはダイオードD
2が接続されており、ノードN
18と接地ラインとの間には抵抗R
1とダイオードD
1とが直列に接続されている。
【0055】
また、ノードN
17とノード
19との間には抵抗R
3が接続されており、ノードN
18とノード
19との間には抵抗R
2が接続されている。更に、ノードN
19と接地ラインとの間には、抵抗R
4が接続されている。
【0056】
この
図6に示す電流源では、I
1=I
2=V
t・ln(N)/R
1+V
be/R
5とすることで、抵抗の一次の温度変動を一定にできる。
【0057】
但し、R
5=R
2+2R
4=R
3+2R
4である。また、V
tはダイオードのサーマルボルテージであり、常温で26mV程度である。更に、NはダイオードD
1,D
2の面積比である。更にまた、V
beはダイオードD
2の両端の電位差であり、0.7V程度である。
【0058】
図7は相互コンダクタンスg
mの温度変動が小さい電流源の一例を示す回路図である。この電流源は、コンパレータ15a,15b内の電流源として使用する。
【0059】
電流供給部61は、電源ラインV
DDとノードN
32との間に接続されている。また、抵抗R1はノードN
32とノードN
33との間に接続されており、抵抗R
d3はノードN
33と接地ラインとの間に接続されている。
【0060】
トランジスタ62は、電源ラインV
DDとノードN
31との間に接続されている。また、トランジスタ66及び抵抗R
d2は、ノードN
31と接地ラインとの間に直列に接続されている。トランジスタ66のゲートは、ノードN
32に接続されている。
【0061】
トランジスタ67は、ノードN
31とノードN
34との間に接続されている。このトランジスタ67のゲートは、ノードN
33に接続されている。また、抵抗R
d1は、ノードN
34と接地ラインとの間に接続されている。
【0062】
トランジスタ63は、電源ラインV
DDと出力端子68との間に接続されている。また、電流供給部65は電源ラインV
DDとノードN
35との間に接続されており、抵抗R2はノードN
35と接地ラインとの間に接続されている。
【0063】
アンプ64の一方の入力端子はノードN
35に接続されており、他方の入力端子はノードN
34に接続されている。このアンプ64の出力は、トランジスタ62,63の各ゲートに接続されている。
【0064】
ここで、抵抗R
d1に流れる電流をI
dとし、抵抗R
2の両端の電位差をΔV
2としたときに、R
d1・I
dがΔV
2と等しくなるようにノードN
31に流れる電流I
sを調整することで、差動対ゲインの温度変動を小さくできる。
【0065】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る充放電型発振回路を示す回路図である。なお、
図8において、
図3と同一物には同一符号を付している。
【0066】
本実施形態に係る充放電発振回路では、バッファ21a,21bの出力をアンプ24a,24bに入力し、アンプ24a,24bの出力に応じてコンパレータ15a,15bの電流源23a,23bから供給される電流量を可変できるようにしている。
【0067】
図9は、コンパレータ15a及びアンプ24aの一例を示す回路図である。なお、コンパレータ15b及びアンプ24bの構成はコンパレータ15a及びアンプ24aと同様であるので、ここではその説明は省略する
アンプ24aの一方の入力端子には、バッファ21aを介してノードN
11の電圧VC1が供給される。また、アンプ24aの他方の入力端子には基準電圧VF2が供給される。この基準電圧VF2は、基準電圧VFよりも若干低く設定されている。
【0068】
そして、アンプ24aは、電圧VC1が基準電圧VF2よりも低いときには出力信号SA1を“L”レベルとし、電圧VC1が基準電圧VF2に到達すると出力信号SA1を“H”レベルにする。
【0069】
コンパレータ15aの電流源25aは、第1の電流供給部31aと、第2の電流供給部31bと、スイッチSA1とにより構成されている。第1の電流供給部31aは電源ラインV
DDとノードN
13との間に接続されている。また、第2の電流供給部31b及びスイッチSA1は、電源ラインV
DDとノードN
13との間に直列に接続されている。
【0070】
スイッチSA1は、アンプ24aから出力される信号SA1が“L”レベルのときにはオフとなり、信号SA1が“H”レベルのときにはオンになる。
【0071】
以下、本実施形態に係る充放電型発振回路の動作について、
図10に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0072】
時間t1でトランジスタ14aがオフになると、電流源12aから供給される電流によりキャパシタ13aに電荷が蓄積される。これにより、ノードN
11の電圧VC1は時間とともに上昇する。但し、ノードN
11の電圧VC1が基準電圧VF2よりも低いときは、コンパレータ15a内のトランジスタ32はオン、トランジスタ34はオフである。また、アンプ24aの出力は“L”レベルであり、スイッチSA1はオフである。
【0073】
時間t2でノードN
11の電圧VC1が基準電圧VF2に到達すると、アンプ24aの出力が“H”レベルになる。これにより、コンパレータ15aのスイッチSA1がオンになり、ノードN
13には2つの電流供給部31a,31bから同時に電流が供給される。その結果、コンパレータ15aの動作電流が増加する。
【0074】
次に、時間t3でノードN
11の電圧VC1が基準電圧VFに到達すると、コンパレータ15a内のトランジスタ32がオフ、トランジスタ34がオンになり、ノードN
16の電圧が上昇する。これにより、フリップフロップ回路17の入力端子Sに供給される信号が“H”レベルになる。
【0075】
フリップフロップ回路17の入力端子Sに供給される信号が“H”レベルになると、フリップフロップ回路17の出力Qは“H”レベルになり、反転出力XQは“L”レベルになる(時間t4)。
【0076】
そして、トランジスタ14aがオンになり、ノードN
11の電圧VC1が低下する。その結果、アンプ24aの出力は“L”レベルになり、コンパレータ15aのスイッチSA1はオフになって、コンパレータ15aの動作電流が減少する。
【0077】
一方、フリップフロップ回路17の反転出力XQが“L”レベルになると、トランジスタ14bがオフになり、電流源12bから供給される電流によりキャパシタ13bに電荷が蓄積されて、ノードN
21の電圧が上昇する。
【0078】
時間t5でノードN
21の電圧が基準電圧VF2に到達すると、アンプ24bの出力が“H”レベルになり、コンパレータ15bのスイッチSA1がオンになって、コンパレータ15bの動作電流が増加する。
【0079】
その後、時間t6でノードN
21の電圧VC2が基準電圧VFに到達すると、コンパレータ15b内のトランジスタ32がオフ、トランジスタ34がオンになり、ノードN
16の電圧が上昇する。これにより、フリップフロップ回路17の入力端子Rに供給される信号が“H”レベルになる。
【0080】
フリップフロップ回路17の入力端子Rに供給される信号が“H”レベルになると、フリップフロップ回路17の出力Qは“L”レベルになり、反転出力XQは“H”レベルになる(時間t7)。
【0081】
そして、トランジスタ14bがオンになり、ノードN
21の電圧VC2が低下する。その結果、アンプ24bの出力は“L”レベルになり、コンパレータ15b内のスイッチSA1はオフになって、コンパレータ15bの動作電流が減少する。
【0082】
本実施形態では、充放電部11a,11bとコンパレータ15a,15bとの間にバッファ21a,21bを配置しているので、第1の実施形態と同様に、発振周波数が高くても良好な周波数精度が得られる。また、本実施形態では、ノードN
11,N
21の電圧VC1,VC2が基準電圧VFに到達する前にスイッチSA1をオンにしてコンパレータ15a,15bの動作電流を増加している。これにより、消費電力の増加を抑制しつつ、発振周波数の精度をより一層向上できる。
【0083】
(第3の実施形態)
前述したように、充放電型発振回路では充放電部の電流源から供給する電流量により発振周波数が決まるので、電流源から供給する電流量を変化させることにより発振周波数を変化させることができる。そこで、本実施形態では、
図3又は
図8に示す充放電部11a,11bの電流源として、電流供給量を可変できる電流DAC(Digital to Analog Converter)を使用する。
【0084】
図11は、電流DACの一例を示す回路図である。
【0085】
この電流DAC70は、トランジスタMa,Mbと、トランジスタM
o〜M
4と、トランジスタ71a〜71eと、インバータ72a〜72eとにより構成されたカレントミラー回路を有する。
【0086】
トランジスタMaは電源ラインV
DDと端子73との間に接続されており、トランジスタMbは電源ラインV
DDと端子74との間に接続されている。
【0087】
トランジスタM
0とトランジスタ71aとは、電源ラインV
DDと端子74との間に直列に接続されている。これと同様に、トランジスタM
1〜M
4とトランジスタ71b〜71eとは、電源ラインV
DDと端子74との間にそれぞれ直列に接続されている。
【0088】
トランジスタMa,Mb,M
0〜M
4の各ゲートは共通接続されている。トランジスタ71a〜71eの各ゲートには、後述する制御部75から出力されるデジタルコードのビットB
0〜B
4が、インバータ72a〜72eを介して入力される。これらのトランジスタ71a〜71eは、デジタルコードの各ビットの状態に応じてオン−オフするスイッチとして動作する。
【0089】
トランジスタMa,Mb,M
o〜M
4のサイズは、トランジスタMa,Mb,M
o〜M
4に流す電流に応じて設定されている。ここでは、トランジスタM
0の面積を1としたときに、トランジスタMaの面積は32、トランジスタMb,M
4の面積は16、トランジスタM
3の面積は8、トランジスタM
2の面積は4、トランジスタの面積M
1は2に設定されている。
【0090】
この電流DAC70では、トランジスタMaに基準電流I
0を流し、デジタルコードにより端子74から出力される電流I
xを調整する。
【0091】
電流DAC70の出力電流I
xの可変範囲は、I
x=0.5I
0〜1.47I
0なので、基準電流I
0に対して約±50%の範囲で調整可能となる。調整刻みは、(1/32)I
0なので、約3.1%のステップで調整可能である。また、電源起動時は、B
4を“H”にすると、I
x=I
0になるので、これを中心値として使用する。
【0092】
このように充放電部11a,11bの電流源12a,12bとして電流DAC70を使用することにより、充放電型発振回路の発振周波数を変化させることができる。但し、電流切り替え時に発振回路から規格外の細いパルスが出力され、後段の回路に不具合が発生するおそれがある。
【0093】
そのため、本実施形態では、
図12に示すように、制御部75から出力されるデジタルコードをレジスタ76に書き込み、所定のタイミングでレジスタ76にトリガを供給する。このトリガによりレジスタ76から電流源12a,12b(電流DAC70)にデジタルコードを供給する。レジスタ76から電流源12a,12bへのデジタルコードの供給は、例えば電流源12a又は電流源12bが電流の供給を停止しているとき、又は電圧VC1,VC2が基準電圧VFに比べて十分に低いときに行う。
【0094】
(第4の実施形態)
更なる低消費電力化のために、例えば
図13に示すように、高周波の信号を発生する発振回路を間欠動作させる場合がある。この場合、高周波の信号を発生する発振回路(以下、「高速発振回路」という)と、間欠動作の周期を決める低周波の信号を発生する発振回路(以下、「低速発振回路」という)とを同期させることが重要となる。
【0095】
図14は、高速発振回路と低速発振回路との同期方法を例示した回路図である。ここでは、高速発振回路81の発振周波数は8192kHz、低速発振回路82の発振周波数は4kHzであり、それらの発振回路81,82を同期させるためにワンショット回路83を使用している。高速発振回路81として、第1〜第3の実施形態で説明した充放電型発振回路を使用する。
【0096】
ワンショット回路83はカウンタを内蔵し、低速発振回路82から出力される信号の立ち上がり、又は立下りをトリガとして高速発振回路81から出力される信号のカウントを開始する。そして、ワンショット回路83は、カウンタの値が1024になる毎にワンショットパルスを発生し、カウンタの値をリセットする。これにより、ワンショット回路83からは、周波数が8kHzの信号が出力される。
【0097】
低速発振回路82は、ワンショット回路83から出力される信号の立下りをトリガ(調整データ更新トリガ)として自身の出力信号の論理値を判定し、その結果に基づいて発振周波数を微調整する。
【0098】
図15は、低速発振回路82の一例を示す回路図である。
【0099】
この
図15に例示する低速発振回路82は、アップ/ダウンカウンタ91と、電流源92と、キャパシタ93と、トランジスタ94と、コンパレータ95と、遅延回路96と、T型フリップフロップ回路(T−FF)97とを有する。
【0100】
電流源92は、例えば
図11に示すような電流DACであり、アップ/ダウンカウンタ91から出力されるデジタルコードに応じた電流をキャパシタ93に供給する。
【0101】
アップ/ダウンカウンタ91は、制御部(図示せず)により初期値が設定される。その後、低速発振回路82が動作を開始すると、アップ/ダウンカウンタ91はワンショット回路83から出力される信号の立下り(トリガ)のタイミングで当該低速発振回路82の出力信号を取り込み、その出力信号の論理値に応じてカウンタの値を増減する。
【0102】
すなわち、アップ/ダウンカウンタ91は、出力信号の論理値が“L”のときにはカウンタの値に1を減算する。これにより、電流源92から供給される電流量が減少する。
【0103】
また、アップ/ダウンカウンタ91は、出力信号の論理値が“H”のときにはカウンタの値に1を加算する。これにより、電流源92から供給される電流量が増加する。
【0104】
トランジスタ94はキャパシタ93と並列に接続されており、遅延回路96から出力される信号によりオン−オフするスイッチとして動作する。トランジスタ94がオフの期間に電流源92から供給される電流によりキャパシタ93に電荷が蓄積され、電流源92とキャパシタ93との間のノードN
91の電圧が上昇する。一方、トランジスタ94がオンになると、ノードN
91は接地電位に固定される。
【0105】
コンパレータ95の一方の入力端子はノードN
91に接続されており、他方の端子には基準電圧VFが供給される。そして、コンパレータ95は、ノードN
91の電圧が基準電圧VFよりも低いときは出力信号を“L”とし、ノードN
91の電圧が基準電圧VFよりも高いときは出力信号を“H”とする。
【0106】
遅延回路96は、コンパレータ95から出力される信号を一定時間遅延して出力する。前述のトランジスタ94のゲートは、遅延回路96の出力端子に接続されている。
【0107】
この低速発振回路82の発振周波数は、電流源92から供給されるキャパシタ93への充電電流量と、遅延回路96の遅延時間とにより決定される。
【0108】
T型フリップフロップ回路97は、遅延回路96から出力される信号を1/2に分周し、デューティー比が50%の信号を出力する。
【0109】
以下、低速発振回路82の動作について、
図16のタイミングチャートを参照して説明する。ここでは、初期状態においてトランジスタ94がオフであるとする。
【0110】
トランジスタ94がオフになると、電流源92から供給される電流によりキャパシタ93に電荷が蓄積され、ノードN
91の電圧が時間とともに上昇する。そして、ノードN
91の電圧が基準電圧VFに到達すると、コンパレータ95の出力が“L”から“H”に変化する。
【0111】
コンパレータ95の出力は、遅延回路96により遅延されてトランジスタ94のゲートに伝達される。トランジスタ94は、遅延回路96から伝達された信号が“H”になるとオンになる。これにより、ノードN
91が接地電位となり、コンパレータ95の出力が“H”から“L”に変化する。このコンパレータ95の出力の変化は、遅延回路96による遅延時間が経過した後、トランジスタ94に伝達される。そして、トランジスタ94がオフになり、キャパシタ93への電荷の蓄積が開始される。
【0112】
このようにして、遅延回路96から、電流源92から供給される電流量と遅延回路96による遅延時間とに応じた周波数の信号が出力される。本実施形態では、遅延回路96の出力信号の周波数が8kHzとなるように、電流源92の電流供給量が設定される。
【0113】
T型フリップフロップ回路97の出力信号の論理値は、遅延回路96から出力される信号が“H”から“L”に変化するたびに反転する。これにより、T型フリップフロップ回路97から、周波数が遅延回路96から出力される信号の周波数の1/2であり、デューティー比が50%の信号が出力される。
【0114】
この低速発振回路82の発振周波数が4kHzよりも若干高い場合、アップ/ダウンカウンタ91にトリガが入力されたときの低速発振回路82の出力は“L”になる。この場合、アップ/ダウンカウンタ91は、現在のカウンタの値に1を減算する。これにより、電流源92から供給される電流量が電流DACの1ビット分だけ減少し、低速発振回路82の発振周波数が若干減少する(低速発振回路82の周波数を1ステップ下げる)。
【0115】
一方、低速発振回路82の発振周波数が4kHzよりも若干低い場合、アップ/ダウンカウンタ91にトリガが入力されたときの低速発振回路82の出力は“H”になる。この場合、アップ/ダウンカウンタ91は、現在のカウンタの値に1を加算する。これにより、電流源92から供給される電流量が電流DACの1ビット分だけ増加し、低速発振回路82の発振周波数が若干増加する(低速発振回路82の周波数を1ステップ上げる)。
【0116】
このようにして、低速発振回路82の発振周波数は高速発振回路81の発振周波数に基づいて補正され、低速発振回路82と高速発振回路81とが同期した状態で動作する。
【0117】
本実施形態では、低速発振回路82の発振周波数を、高速発振回路81の出力信号を使って自動的に調整する。このため、低速発振回路82の周波数精度や温度特性が悪くても、高速高精度発振回路81の発振周波数の精度に準じた精度で低速発振回路82を動作させることができる。
【0118】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0119】
(付記1)第1の充放電部と、
前記第1の充放電部の出力が入力される第1のバッファと、
前記第1のバッファの出力と第1の基準電圧との比較結果に応じた信号を出力する第1のコンパレータと、
第2の充放電部と、
前記第2の充放電部の出力が入力される第2のバッファと、
前記第2のバッファの出力と第2の基準電圧との比較結果に応じた信号を出力する第2のコンパレータと、
前記第1のコンパレータの出力と前記第2のコンパレータの出力とにより論理値が変化する信号を出力する論理回路と
を有することを特徴とする充放電型発振回路。
【0120】
(付記2)前記第1の充放電部及び前記第2の充放電部はそれぞれ、直列接続された電流源及びキャパシタと、前記キャパシタに並列に接続されたスイッチとを有することを特徴とする付記1に記載の充放電型発振回路。
【0121】
(付記3)前記電流源は、電流DACを有することを特徴とする付記2に記載の充放電型発振回路。
【0122】
(付記4)デジタルデータを記憶するレジスタを有し、前記レジスタは所定のタイミングで前記デジタルデータを前記電流DACに伝達することを特徴とする付記3に記載の充放電型発振器。
【0123】
(付記5)前記第1のバッファ及び前記第2のバッファが、電流源と、前記電流源にソースが接続されたトランジスタとを有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の充放電型発振回路。
【0124】
(付記6)前記第1のバッファ及び前記第2のバッファに含まれるトランジスタのサイズが、前記第1のコンパレータ及び前記第2のコンパレータに含まれるトランジスタのサイズよりも小さいことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の充放電型発振回路。
【0125】
(付記7)前記第1の充放電部及び前記第2の充放電部はそれぞれ、
第1の電源ラインと第1のノードとの間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと第2のノードとの間に接続された第2のトランジスタと、
前記第1のノードと第2の電源ラインとの間に直列に接続された第1の抵抗及び第1のダイオードと、
前記第2のノードと前記第2の電源ラインとの間に接続された第2のダイオードと、
前記第1のノードと第3のノードとの間に接続された第2の抵抗と、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間に接続された第3の抵抗と、
前記第3のノードと前記第2の電源ラインとの間に接続された第4の抵抗と、
第1の入力端子が前記第1のノードに接続され、第2の入力端子が前記第2のノードに接続され、出力端子が前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのゲートに接続されたアンプとを有し、
前記第1の抵抗の抵抗値をR1、前記第2の抵抗の抵抗値をR2、前記第3の抵抗の抵抗値をR3、前記第4の抵抗の抵抗値をR4、前記第1のトランジスタに流れる電流をI
1、前記第2のトランジスタに流れる電流をI
2、前記第1のダイオード及び前記第2のダイオードのサーマルボルテージをVt、前記第1のダイオードと前記第2のダイオードとの面積比をN、前記第2のダイオードの両端の電位差をV
beとしたときに、I
1=I
2=Vt・ln(N)/R1+Vbe/R5(但し、R5=R2+2R4=R3+2R4)の関係を満足することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の充放電型発振回路。
【0126】
(付記8)前記第1のコンパレータ及び前記第2のコンパレータに含まれる電流源はそれぞれ、
第1の電源ラインと第1のノードとの間に接続された第1の電流供給部と、
前記第1のノードと第2のノードとの間に接続された第1の抵抗と、
前記第2のノードと第2の電源ラインとの間に接続された第2の抵抗と、
前記第1の電源ラインと第3のノードとの間に接続された第1のトランジスタと、
前記第3のノードと前記第2の電源ラインとの間に直列に接続された第2のトランジスタ及び第3の抵抗と、
前記第3のノードと第4のノードとの間に接続された第3のトランジスタと、
前記第4のノードと前記第2の電源ラインとの間に接続された第4の抵抗と、
前記第1の電源ラインと第5のノードとの間に接続された第2の電流供給部と、
前記第5のノードと前記第2の電源ラインとの間に接続された第5の抵抗と、
第1の入力端子が前記第5のノードに接続され、第2の入力端子が前記第4のノードに接続され、出力端子が前記第1のトランジスタに接続されたアンプとを有し、
前記第4の抵抗の抵抗値をR
d1、前記第4の抵抗に流れる電流をI
d、前記第5の抵抗の両端の電位差をΔV
2としたときに、R
d1・I
d=ΔV
2となるように前記第1のトランジスタに流れる電流を調整することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の充放電型発振回路。
【0127】
(付記9)前記第1のバッファ及び前記第2のバッファの出力に応じて、前記第1のコンパレータ及び前記第2のコンパレータの動作電流が変化することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の充放電型発振回路。
【0128】
(付記10)前記第1のコンパレータ及び前記第1のコンパレータはいずれも、第1の電流供給部と、前記第1の電流供給部に並列接続されてスイッチによりオン−オフされる第2の電流供給部とを有することを特徴とする付記9に記載の充放電型発振回路。
【0129】
(付記11)前記第1のコンパレータは、前記第1のバッファの出力電圧が前記第1の基準電圧よりも低い第3の電圧に到達したときに動作電流が増加し、
前記第2のコンパレータは、前記第2のバッファの出力電圧が前記第2の基準電圧よりも低い第4の電圧に到達したときに動作電流が増加する
ことを特徴とする付記9に記載の充放電型発振回路。
【0130】
(付記12)第1の周波数の信号を出力する第1の発振回路と、
前記第1の周波数よりも低い第2の周波数の信号を出力する第2の発振回路と、
前記第1の発振回路の出力から前記第1の周波数よりも低く、前記第2の周波数よりも高い第3の周波数の信号を生成するワンショット回路とを有し、
前記第1の発振回路は、第1の充放電部と、
前記第1の充放電部の出力が入力される第1のバッファと、
前記第1のバッファの出力と第1の基準電圧との比較結果に応じた信号を出力する第1のコンパレータと、
第2の充放電部と、
前記第2の充放電部の出力が入力される第2のバッファと、
前記第2のバッファの出力と第2の基準電圧との比較結果に応じた信号を出力する第2のコンパレータと、
前記第1のコンパレータの出力と前記第2のコンパレータの出力とにより論理値が変化する信号を出力する論理回路とを有し、
前記第2の発振回路は、前記ワンショット回路の出力をトリガとして自身の出力信号を取り込み、取り込んだ信号の論理値に応じて前記第2の周波数を調整することを特徴とする充放電型発振回路。
【0131】
(付記13)前記第2の発振回路は、前記第2の発振回路の出力をアップ/ダウン信号として入力し、前記ワンショット回路の出力をトリガとして入力するアップ/ダウンカウンタと、
前記アップ/ダウンカウンタの出力に応じて電流量が変化する電流源と、
前記電流源に接続されたキャパシタと、
前記キャパシタに並列に接続されたスイッチと
を有することを特徴とする付記12に記載の充放電型発振回路。