(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の重合体は、単量体成分として、(a)炭素数が1〜5の脂肪族炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「(a)成分」と称する)、(b)炭素数が6〜40の脂肪族炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「(b)成分」と称する)、及び(c)上記一般式(1)で示されるマレイミド系単量体(以下、「(c)成分」と称する)を必須成分として重合してなる重合体であって、
上記(a)成分と上記(c)成分の合計質量割合が、重合体(全単量体成分)100質量%に対して、10〜70質量%であり、上記(b)成分の質量割合が30〜90質量%である。好ましくは、上記(a)成分と上記(c)成分の合計質量割合が、全単量体成分中、10〜50質量%であり、上記(b)成分の質量割合が50〜90質量%である。極性の低い長鎖アルキル基を有する(b)成分を主成分として用いることで油溶性が高い重合体となり得る。また、上記(a)成分〜(c)成分の合計100質量部当り、上記(c)成分は0.5質量部以上、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。上限は35質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。主鎖に環構造を導入できる極性の高い(c)成分が0.5質量部未満であると、金属表面への親和性が低下したり、剪断安定性が低下する傾向があり、35質量部を超えると潤滑油基油への溶解性が低下する傾向がある。
【0014】
以下、各単量体成分について詳述する。
本発明の重合体を合成するのに用いられる単量体成分の内、(a)成分として、具体的には、以下の下記一般式(2)で表される構造を有し、かつ、式中のR
3が水素原子又はメチル基であり、R
4が炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である(メタ)アクリレートエステル類が挙げられる。なお、R
4 は直鎖状、環状、分岐状のいずれであっても良く、置換基を有していても良い。
【0015】
【化2】
単量体(a)成分は、R
3及びR
4がそれぞれ単一の単量体であってもよく、R
3及び/又はR
4が異なる2種以上の単量体の混合物であってもよい。反応性の点から、R
3は水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、粘度指数向上の点から、R
4は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、直鎖状または分岐状であることが特に好ましい。
これらの化合物は、上述したように単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
単量体(a)成分の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単量体(a)成分の含量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜35質量部、特に好ましくは15〜30質量部である。
単量体(a)成分の含量が上記範囲において、他の成分との相溶性が良く、重合速度も良好で重合率も高く生産性が良い。また、共重合して得られる粘度指数向上剤の剪断安定性を向上させる効果がより良好となる。
【0016】
本発明において使用する単量体(b)成分の炭素数が6〜40の脂肪族炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、上記一般式(2)で表される構造を有し、かつ、式中のR
3が水素原子又はメチル基であり、R
4が炭素数6〜40のアルキル基、好ましくは6〜24のアルキル基、特に好ましくは12〜24のアルキル基である(メタ)アクリレートエステル類が挙げられる。また、R
4 は直鎖状、環状、分岐状のいずれであっても良く、置換基を有していても良い。
具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、オクチルフェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ジノニルフェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル (メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0017】
単量体(b)成分の含量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは30〜90質量部、さらに好ましくは40〜80質量部である。
上記数値範囲の単量体(b)成分を用いた重合体は、種々の組成の潤滑基油への溶解性が良好なものとなる。
【0018】
本発明において使用する単量体(c)成分は、下記一般式(1)で示されるマレイミド系単量体である。
【0019】
【化3】
(式中、R
1 及びR
2 はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基であり、Xは水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、環状、分岐状のアルキル基、アルケニル基、フェニル基及びナフチル基などのアリール基、シアノ基またはヒドロキシル基である。)
単量体(c)成分として、上記Xの内、環状のアルキル基として、ベンジル基などの芳香環を有するアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基及びナフチル基などのアリール基が好ましい。具体的には、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−ターシャリブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシルエチルマレイミド、N−ヒドロキシルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミドなどが挙げられ、これらの化合物が1種または2種以上用いられる。これらの中でもN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが好ましい。
【0020】
また、上記一般式(1)で示されるマレイミド系単量体に代えて、又は併用して、下記一般式(3)で示される単量体成分を用いても良い。式(3)で表される単量体は、重合して下記一般式(4)で表される構成単位を高い割合で生成し、重合体の耐熱性、粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。使用量は、上述した単量体(c)成分と同じ範囲で同様の効果を奏する。
【0022】
【化5】
一般式(3)、(4)で表される単量体のRは、水素原子、または炭素数が1〜30の有機基を表し、目的や用途に合わせて、適宜選択すればよい。
【0023】
また、式(3)で表される単量体を化合物名で例を挙げると、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メトキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フルオロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフルオロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジクロロエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ブロモエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジブロモエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ビニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メタリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸プロパギル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−メチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−t−ブチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アントラニル、その他アルキル−(α−メタリルオキシメチル)アクリレート系単量体などが挙げられる。これらの式(3)で表される単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
さらには、上記単量体(c)成分に代えて、又は併用して、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体を用いても良い。例えば、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート等の化合物等が挙げられる。これらの中でも、分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等を用いることが好適である。
【0025】
単量体(c)成分の含量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜35質量部、さらに好ましくは2〜35質量部、より好ましくは4〜30質量部、特に好ましくは4〜25質量部、最も好ましくは5〜15質量部である。
上記数値範囲の単量体(c)成分を用いた重合体は、金属表面への親和性を高めることができ、また、主鎖に環構造を導入することで、せん断安定性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の重合体を合成する単量体成分として、必須成分である(a)、(b)、(c)成分以外のラジカル重合性単量体(d)を含有することができる。この例としては、アルキル(メタ)アクリレート以外の、アルキル基の炭素数1〜30の不飽和モノまたはポリカルボン酸エステル類(ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ドデシルクロトネート、ジブチルマレエート、ジオクチルフマレート、ジラウリルマレエート、ジステアリルフマレート、ジオクチルイタコネート、ジラウリルイタコネートなど);ビニル芳香族化合物(スチレン、ビニルトルエンなど);ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);カルボン酸化合物類(無水マレイン酸、メタアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸など);アクロレイン;共役ジエン(ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなど);アセチレン;置換アセチレン[アルキルアセチレン(プロピン、1−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシンなど)、アリールアセチレン(フェニルアセチレン、p−メチルフェニルアセチレンなど)];アルキルビニルエーテル[通常、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、ヘプチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ペンタデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテルなど];アルキルアリルエーテル[通常、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基を有するアルキルアリルエーテル(メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、アミルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、ヘプチルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、ノニルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、トリデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ペンタデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテルなど]が挙げられ、これらのうち1種以上の単量体を含有することができる。
これらのうち好ましいものは、ビニル芳香族化合物、及びアルキルビニルエーテルであり、特に好ましいものは、スチレン、及び炭素数2〜6のアルキルを有するアルキルビニルエーテルである。
本発明における重合体中の、単量体(d)成分の含量は特に限定はないが、通常、全単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、さらに好ましくは0〜5質量部、特に好ましくは0〜2質量部である。
【0027】
さらに本発明における重合体は、必要に応じて窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる1種以上の原子を有する単量体(e)成分(分子内にチオエーテル基を有するラジカル重合性ビニル化合物を除く)を1種以上含有してもよい。この場合には、粘度指数向上剤に清浄分散性や抗酸化性などを付与でき好ましい。この例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルチオピロリドン、ビニルピリジン、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は通常1〜4)、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は、通常1〜4)、ビニルイミダゾール、モルフォリノアルキレン(メタ)アクリレート等や、アミノフェノチアジン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾリン、アミノメルカプトチアゾール、アミノピペリジン残基を有する(メタ)アクリレート誘導体などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、N−ビニルピロリドン、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は通常1〜4)、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は、通常1〜4)及びN−アリールフェニレンジアミン残基を有する(メタ)アクリレート誘導体である。
【0028】
本発明における重合体中の単量体(e)成分の含量は特に限定はないが、通常、全単量体成分の合計100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部、さらに好ましくは0〜3質量部、特に好ましくは0〜1質量部である。
【0029】
本発明にかかる重合体の重合方法は、たとえば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれでもよいが、特に限定はされない。触媒(開始剤)の種類や濃度は、目的とする分子量や分子量分布によって異なる。分散媒、乳化剤、分散剤等を使用する場合は特に制限がなく公知のものが使用できる。
例えば、ベンゾイルパーオキシドの過酸化物や、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤の存在下で、あるいは分子量分布を制御するために1−ドデカンチオール等の硫黄化合物の存在下で、単量体成分(a)〜(c)成分並びに必要に応じて用いられるその他の単量体成分を含む混合物をラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
また、過酸化物系開始剤と適当な還元剤の組み合わせによるレドックス開始系を用いることもできる。また、分子量分布を制御するための硫黄化合物、すなわち連鎖移動剤としては1−ドデカンチオールのほか、チオフェノール、2−メルカプトエタノール、四塩化炭素、四臭化炭素等があげられる。連鎖移動剤の好ましい量は、全単量体成分100質量部に対して、0.1から3質量部、より好ましくは0.2から2質量部である。この範囲にすることで、分子量分布が狭くなり、剪断安定性がよくなる。
【0030】
分子量分布を狭くすることは、粘度指数の改善やせん断安定性改善の観点から非常に有利であるため、重合方法としてはLiving Radical Polymerizationが挙げられる。使用例としては特表2008−518052号などがある。
触媒(重合開始剤)の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチル)ブチロニトリル、アゾビス(イソ酪酸)ジメチルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの過酸化物などが用いられる。重合開始剤の使用量は特に限定はされないが、全単量体成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。重合開始剤が0.001質量部未満であると重合反応が非常に遅くなる等の傾向があり、10質量部を超えると重合反応が激しくなって反応制御が難しくなる等の問題があり、いずれも好ましくない。
【0031】
重合反応を行う温度は、0〜200℃が好ましく、25〜150℃が特に好ましい。重合温度は0℃未満であると重合反応が非常に遅くなり、200℃を超えると反応が激しく制御が難しくなるので、いずれも好ましくない。重合反応の溶媒としては、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式飽和炭化水素類;シクロヘキセンなどの脂環式不飽和炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールのエーテル類;メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホン酸エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの脂環式炭酸エステル類;水、などが挙げられるが、好ましくは前記の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エステル類、エーテル類、アルコール類及びアミド類である。
【0032】
本発明の重合体、粘度指数向上剤の用途を考慮すると、いわゆる潤滑油に使用できる鉱油系基油又は合成系基油を好適に使用することができる。
【0033】
溶媒の使用量は特に制限はないが、単量体成分、重合開始剤、その他の成分の合計量の濃度が10〜80質量%となる程度が好ましい。
基油の好ましい例としては、以下に示す基油(1)〜(7)を原料とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。また(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)が特に好ましい。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1)〜(2)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合油
(5)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸残渣油の脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)〜(6)から選ばれる2種以上の混合油。
を水素化分解し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油
(8)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油。
【0034】
また、合成系基油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。合成系基油の100℃における動粘度は、1〜20mm
2/sであることが好ましい。
【0035】
反応容器の容量は、目的とする重合体の分子量等に応じて適宜選定するのが好ましい。例えば、重量平均分子量が5万以下の場合は、使用する単量体の量の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、よりこのましくは3倍以上、また7倍以下、好ましくは6倍以下、より好ましくは5倍以下とするのが好ましい。5万を超える分子量が目標の場合は使用する単量体の量の3倍以上、好ましくは4倍以上、よりこのましくは5倍以上、また10倍以下、好ましくは8倍以下、より好ましくは7倍以下とするのが好ましい。これは製造された重合体の粘度を取り扱いが可能になる粘度なるように溶媒量を調整するためである。
ただし、分子量制御のために、溶媒量に制限がある場合はこの限りではない。
【0036】
また、攪拌装置の種類及び撹拌速度は、単量体の混合物と溶媒が激しく均一に攪拌される速度であればよい。
【0037】
また、共重合反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、また、反応開始前に反応容器内を完全に窒素に置換しておくことが好ましい。
【0038】
また、共重合反応においては、モノマーが容器から蒸発せず、容器内に還流するようにするための冷却装置を用いることが好ましい。
【0039】
反応容器内への単量体の導入方法及び導入速度は、単量体の量及び目的とする重合体の種類等によって適宜選定することができる。例えば、目的の重合体がランダム共重合体である場合は、使用する単量体を完全に混合したものを、所定の速度で反応容器内に導入すればよい。一方、目的の重合体がブロック共重合体である場合には、1つの単量体を一度に反応容器内に導入し、十分反応させて単独重合体を得た後、他のモノマーについても同様に順次反応させることが可能である。
【0040】
共重合に用いる触媒(重合開始剤)の種類や濃度は、目的とする重合体、粘度指数向上剤の分子量や分子量分布等によって異なる。高分子の生成物を得たい場合は、反応温度を低くし(例えば70℃程度)、触媒量を少なくすることが好ましい。ただし、触媒の量は、容器内の残存酸素量、モノマーに残存している重合禁止剤との量等を考慮して調整することが好ましい。一方、低分子の生成物を得たい場合は、反応温度を高くし(例えば85〜90℃)、触媒を多くすることが好ましい。
【0041】
重合体を精製する方法は、限定されず、例えば、再沈澱、透析、遠心分離、減圧乾燥による溶剤除去などが採用される。
【0042】
本発明の重合体は、せん断安定性を改善できる粘度指数向上剤として好適に用いられる。せん断安定性の具体的数値としてPSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス:ASTM D 6022)や分解開始温度が指標となる。本実施形態に係る粘度指数向上剤は、上述した重合体を主成分、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99質量%以上、100質量%以下として含有する。この粘度指数向上剤のPSSIは、40以下であることが好ましく、より好ましくは35以下であり、さらに好ましくは30以下であり、特に好ましくは25以下である。また、上記PSSIは、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、特に好ましくは5以上である。PSSIが0.1未満の場合には粘度指数向上効果が小さくコストが上昇するおそれがあり、PSSIが40を超える場合にはせん断安定性や貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
粘度指数向上剤の分解開始温度は、220℃以上であることが好ましく、より好ましくは240℃以上であり、さらに好ましくは260℃以上であり、特に好ましくは280℃以上である。耐熱性の向上により分解安定性、せん断安定性が良好なものとなる。
その他、本発明の重合体は、低極性で且つ耐熱性に優れているため、スケール樹脂成型用の滑剤、離型剤、相溶化剤、感熱転写用インクバインダー、石油精製用汚れ防止剤などにも好適に用いることができる。
【0043】
本実施形態に係る粘度指数向上剤の重量平均分子量(M
W)は、適用される潤滑油の種類、用途等に応じて適宜選定することが望ましい。増粘効果および剪断安定性、耐熱性の観点から好ましい分子量がある。通常重量平均分子量(Mw)は1千〜100万の範囲であり、好ましくは1千〜50万の範囲である。
【0044】
なお、ここでいう重量平均分子量は、東ソー製GPCシステムHLC−8220にガードカラムとして東ソー製TSKguardcolumn SuperHZ−Lを、分離カラムとして東ソー製TSKgel SuperHZM−Mを2本直列接続し、リファレンス側カラムとして東ソー製、TSKgel SuperH−RCを使用し、クロロホルムを展開溶媒として、温度40℃、流速0.6mL/分、試料濃度0.1重量%、試料注入量50μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
また、溶解度パラメーターは粘度指数および低温での溶解性の観点から、通常6.5〜9.4の範囲であり、好ましくは8.7〜9.4の範囲であり、さらに好ましくは9.0〜9.3の範囲である。
また、HLB値は0.5〜6が好ましい。この物性値がこの範囲内にあると抗乳化性が特に良好である。さらに好ましくは、HLB値が1〜5.5、特に好ましくは1.5〜5である。
【0045】
本発明の粘度指数向上剤は通常、50ニュートラル油〜300ニュートラル油の様な粘度範囲にある鉱物油、MLDW油、イソパラフィンを含有する高粘度指数鉱物油、炭化水素系合成潤滑油、エステル系合成潤滑油に、目的の粘度に成るよう配合、溶解し本発明の潤滑油として使用されるが、粘度指数が115以上の高粘度指数油に本発明の粘度指数向上剤を添加した潤滑油の方が低温での低粘度化が図れ省燃費性が良好となる。
通常、基油に対し、本発明の粘度指数向上剤を1〜30質量%添加し、本発明の潤滑油として使用される。本発明の潤滑油がエンジン油の場合には2〜10質量%、ギヤ油や自動変速機油の場合は、7〜25質量%添加された場合に好ましい結果を与える。
【0046】
本発明の粘度指数向上剤には、更に他の流動点降下剤を含有していることが好ましい。この流動点降下剤としては、ポリ(メタ)アクリレートの従来公知のものが使用される。例えば、アルキル基の炭素数が10〜20の(メタ)アクリレート系のもの、又これら(メタ)アクリレート系のもので組成や分子量が異なる2種類以上のものを組み合わせたもの(例えば、特開昭54−70305公報等に記載のもの)や、更には非常に高分子量のもの(例えばUSP5229021など)等が挙げられる。このように流動点降下剤を含有する場合には、重合体に対し流動点降下剤は通常30質量%以下、好ましくは1〜20質量%である。
【0047】
本発明の粘度指数向上剤は、他の任意成分、例えば清浄剤(スルフォネート系、サリシレート系、フェネート系、ナフテネート系のもの等)、分散剤(イソブテニルコハク酸イミド系、マンニッヒ縮合物系等)、抗酸化剤(ジンクジチオフォスフェート、アミン系、ヒンダードフェノール系等)、油性剤(脂肪酸系、脂肪酸エステル系等)、摩擦摩耗調整剤(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンカーバメイト等)、極圧剤(硫黄リン系、クロル系等)を含んでいても良い。
【0048】
次に、本発明の実施形態に係る潤滑油組成物について詳述する。
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上述した重合体(重合体と他の成分を含む場合:粘度指数向上剤)を必須成分として含有する。さらに好ましくは摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤及び摩擦調整剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有することが好ましい。
本実施形態に係る潤滑油基油としては、上述した重合体の反応溶媒として述べた基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)が特に好ましい。
(8)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油。
【0049】
また、上記(8)の潤滑油基油を得るに際して、好都合なステップで、必要に応じて溶剤精製処理及び/又は水素化仕上げ処理工程を更に設けてもよい。
【0050】
また、本実施形態に係る潤滑油基油として合成系基油を用いても良い。合成系基油としては、100℃における動粘度が1〜20mm
2/sである、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。
【0051】
本実施形態に係る潤滑油基油の粘度指数は、100以上であることが好ましく、より好ましくは120〜160である。粘度指数が上記の下限値未満であると、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。また、粘度指数が上記の上限値を超えると、低温粘度特性が低下する傾向にある。
なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【0052】
本実施形態に係る潤滑油組成物においては、上記本実施形態に係る潤滑油基油を単独で用いてもよく、また、本実施形態に係る潤滑油基油を他の基油の1種又は2種以上と併用してもよい。なお、本実施形態に係る潤滑油基油と他の基油とを併用する場合、それらの混合基油中に占める上記潤滑油基油(8)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0053】
本実施形態に係る潤滑油組成物において、上述した本発明の重合体(粘度指数向上剤)の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
【0054】
本実施形態に係る潤滑油組成物は、上述した実施形態に係る重合体、粘度指数向上剤に加えて、摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤及び摩擦調整剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有することが好ましい。
【0055】
摩耗防止剤(又は極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、MoDTC、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤の添加が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
【0056】
金属系清浄剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩又は塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、特にカルシウムがより好ましい。
【0057】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノ又はビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0058】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0059】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0060】
泡消剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm
2/sのシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0061】
摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェートなどのコハク酸イミドモリブデン錯体や有機モリブデン酸のアミン塩等の有機モリブデン化合物のほか、基本構造として炭素数8以上30以下の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基を同じ分子内にもつ構造のものが挙げられる。極性基としては、アミンやポリアミン、アミドや、これらを同時に分子内に持つ、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等尿素やアルケニルコハク酸イミドタイプ、エステル、アルコールやジオール、あるいはエステルと水酸基を同時にもつ、例えばモノアルキルグリセリンエステルなどが挙げられる。そのほかアミンと水酸基とを同じ分子内に持つ、たとえばアルキルアミンアフコシキアルコール等など様々である。
【0062】
本実施形態に係る潤滑油組成物が摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、さび止め剤、泡消剤及び摩擦調整剤の1種又は2種以上を含有する場合、それぞれの含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましい。また、本実施形態に係る潤滑油組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.0001〜0.01質量%である。
【0063】
また、本実施形態に係る潤滑油組成物は、上記の成分に加えて、先の実施形態に係る粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤、さび止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤等をさらに含有することができる。
【0064】
先の実施形態に係る粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤は、具体的には非分散型又は分散型エステル基含有粘度指数向上剤であり、例として非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、非分散型又は分散型オレフィン−(メタ)アクリレート共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でも非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましい。特に非分散型又は分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましい。その他に、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体及びポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0065】
さび止め剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0066】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0067】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の%および部は質量%および質量部を表す。
(GPCによる重量平均分子量の測定方法)
システム:東ソー製GPCシステム HLC−8220
測定側カラム構成
・ガードカラム:東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ−L
・分離カラム:東ソー製、TSKgel SuperHZM−M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成
・リファレンスカラム:東ソー製、TSKgel SuperH−RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
(分解開始温度の測定方法)
重合体の熱分解温度は、以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:差動型示差熱天秤(ThermoPlus2 TG−8120、ダイナミックTG、(株)リガク製)
測定条件:試料量10mg
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素フロー200mL/分
方法:階段状等温制御法(150℃から500℃までの範囲内における質量減少速度値0.005%/秒以下に制御)
(粘度指数の測定方法)
基油(粘度指数:130)に実施例1〜5、比較例1で製造した粘度指数向上剤の5%溶液を調製し、JIS K2283の方法で測定した。
(基油への溶解性の評価方法)
重合体濃度が5重量%となるように、基油に重合体を添加した。以下の基準に従い、○〜×の判定を行った。
○:70℃の加温および攪拌で完全に溶解する。
△:100℃の加温および攪拌で完全に溶解する。
×:100℃の加温および攪拌でも溶け残りが生じる。
(比較例1)
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、モノマーの導入装置及び窒素吹き込み管を備えた反応容器に、トルエン46.7部、メチルメタクリレート20部、ステアリルメタクリレート30部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタンを0.75部、および酸化防止剤として、アデカスタブ2112(株式会社ADEKA製)0.05部を初期に仕込み、反応容器の気相部に窒素を導入し85℃に昇温した。続いて、ラジカル重合開始剤としてトルエン2.25部に溶解させた2、2-アゾビスジメチルバレロニトリル(ADVN)0.25部を反応容器に加えた。同時に、ADVN0.25部、n−ドデシルメルカプタン0.75部、メチルメタクリレート20部、ステアリルメタクリレート30部及びトルエン50部の混合液を、4時間かけて反応容器に滴下した。2時間熟成後、トルエン2.3部に溶解させたADVN0.3部を反応容器に加え、さらに3時間反応させた。得られた重合液を、真空下150℃1時間加熱し、重合体1を得た。
(実施例1)
初期仕込みのメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート19.75部及びフェニルマレイミド0.25部に、滴下のメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート19.75部及びフェニルマレイミド0.25部に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、重合体2を得た。
(実施例2)
初期仕込みのメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート17.5部及びフェニルマレイミド2.5部に、滴下のメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート17.5部及びフェニルマレイミド2.5部に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、重合体3を得た。
(実施例3)
初期仕込みのメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート15部及びフェニルマレイミド5部に、滴下のメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート15部及びフェニルマレイミド5部に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、重合体4を得た。
(実施例4)
初期仕込みのメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート10部及びフェニルマレイミド10部に、滴下のメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート10部及びフェニルマレイミド10部に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、重合体5を得た。
(実施例5)
初期仕込みのメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート7.5部及びフェニルマレイミド12.5部に、滴下のメチルメタクリレート20部を、メチルメタクリレート7.5部及びフェニルマレイミド12.5部に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、重合体6を得た。
得られた重合体のMw及びその他の評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
実施例1〜5で得られる重合体、粘度指数向上剤は比較例1に比べて分解開始温度が高く、耐熱性、せん断安定性に優れることを確認できた。実施例1〜3で得られる重合体、粘度指数向上剤は基油への溶解性が良好であった。
また、本明細書中に記載された各単量体やその好ましい使用量において本発明が有利な効果を奏することが立証されている。