特許第6228811号(P6228811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228811旋回進捗度表示装置、自動操舵装置及び旋回進捗度表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228811
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】旋回進捗度表示装置、自動操舵装置及び旋回進捗度表示方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/04 20060101AFI20171030BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B63H25/04 D
   B63H25/04 E
   G01C21/20
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-227292(P2013-227292)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85866(P2015-85866A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】細川 天平
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0244639(US,A1)
【文献】 特開平01−263520(JP,A)
【文献】 特開平07−304497(JP,A)
【文献】 特開平10−289087(JP,A)
【文献】 特開昭62−050617(JP,A)
【文献】 米国特許第07143363(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/04
G01C 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の向きを示す情報、移動体の進行方向を示す情報、又は移動体の向きに連動して変化する情報の少なくとも何れかである方位情報を取得する方位情報取得部と、
前記方位情報取得部が取得した前記方位情報、及び、予め設定された前記方位情報の設定値に基づいて、移動体の旋回の旋回量を決定する旋回量決定部と、
前記方位情報取得部が取得した前記方位情報に基づいて、前記旋回の進捗度を算出する進捗度算出部と、
前記進捗度算出部が求めた前記旋回の進捗度として、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報と、前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値と、を図示する表示部と、
を備え
前記表示部には、円状又は環状の目盛りが表示され、
前記目盛りのうち、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報から前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値までに対応する部分と、前記目盛りの他の部分と、が異なる態様で表示されることを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回進捗度表示装置であって、
移動体は船舶であることを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の旋回進捗度表示装置であって、
前記表示部には、更に、前記旋回の開始前の前記方位情報の設定値が前記旋回の進捗度として図示されることを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載の旋回進捗度表示装置であって、
前記進捗度算出部は、前記旋回の開始及び完了の少なくとも何れかを示す情報と、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報のみに基づいて前記旋回の進捗度を算出することを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項5】
請求項1からまでの何れか一項に記載の旋回進捗度表示装置であって、
移動体は船舶であり、
移動体の向きを示す情報は船首方位センサから取得される船首方位であり、
前記進捗度算出部は、前記船首方位センサが取得した前記船首方位と、前記方位情報の設定値とに基づいて、前記旋回の進捗を算出することを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項6】
請求項に記載の旋回進捗度表示装置であって、
前記表示部には、前記旋回に応じて回転する船舶が図示されることを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか一項に記載の旋回進捗度表示装置であって、
移動体の向きに連動する情報は、当該移動体に対する風向であることを特徴とする旋回進捗度表示装置。
【請求項8】
移動体の向きを示す情報、移動体の進行方向を示す情報、又は移動体の向きに連動して変化する情報の少なくとも何れかである方位情報を取得する方位情報取得部と、
前記方位情報取得部が取得した前記方位情報、及び、前記方位情報の設定値に基づいて、移動体の旋回の旋回量を決定する旋回量決定部と、
前記方位情報取得部が取得した前記方位情報に基づいて、前記旋回の進捗度を算出する進捗度算出部と、
前記進捗度算出部が求めた前記旋回の進捗度として、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報と、前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値と、を図示する表示部と、
自動操舵で前記旋回を行う自動操舵部と、
を備え
前記表示部には、円状又は環状の目盛りが表示され、
前記目盛りのうち、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報から前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値までに対応する部分と、前記目盛りの他の部分と、が異なる態様で表示されることを特徴とする自動操舵装置。
【請求項9】
移動体の向きを示す情報、移動体の進行方向を示す情報、又は移動体の向きに連動して変化する情報である方位情報を取得する方位情報取得工程と、
前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報、及び、予め設定された前記方位情報の設定値に基づいて、移動体の旋回の旋回量を決定する旋回量決定工程と、
前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報に基づいて、前記旋回の進捗度を算出する進捗度算出工程と、
前記進捗度算出工程で求めた前記旋回の進捗度として、前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報と、前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値と、を図示する表示工程と、
を含み、
前記表示工程では、円状又は環状の目盛りが表示され、
前記目盛りのうち、前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報から前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値までに対応する部分と、前記目盛りの他の部分と、が異なる態様で表示されることを特徴とする旋回進捗度表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、船舶が旋回を行う際の進捗度を図示する旋回進捗度表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、設定された内容に応じて自動で船舶の舵取りを行う自動操舵装置が知られている。自動操舵装置は、例えば設定された針路(設定針路)と、船首方位センサから得られる船首方位と、の差分(偏角)に基づいて舵を制御することで、設定針路通りに航行することができる。特許文献1から3は、自動操舵装置に関する技術を開示する。
【0003】
特許文献1は、設定針路を変更する際に自動操舵装置で行われる舵の制御方法を開示する。特許文献2は、設定針路を徐々に変更することで、円を描くように船舶を航行させる自動操舵装置を開示する。特許文献3は、風向に応じて舵を制御することで、安定して針路制御を行う自動操舵装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−242199号公報
【特許文献2】特開2005−178434号公報
【特許文献3】特開2012−179968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動操舵装置は、設定針路と船首方位の差分等に基づいて、自動的に舵を操作する。そのため、ユーザは、船舶の旋回中において、いつまで旋回が行われるかを把握することができない。船舶は、自動車等と異なり旋回に時間が掛かり、揺れ等も伴うので、旋回の進捗度を把握したいという要求が存在する。この点、特許文献1から3では、船舶の旋回中に進捗度を知らせる点については何ら記載されていない。
【0006】
また、従来では、自動操舵装置又は汎用ディスプレイ等に旋回後の針路と現在の船首方位とを同時に表示させることがあった。以下、図8を参照して説明する。図8(a)は、旋回を行う前の画面である。この表示画面には、モード表示部71と、設定針路表示部72と、船首方位表示部73と、舵角表示部74と、が表示されている。
【0007】
モード表示部71には、通常の自動操舵中の場合は「Auto」と表示され、設定針路の変更等に応じて大きく旋回を行う場合は、「180T」等と表示される。設定針路表示部72には、設定針路が数字で表示される。船首方位表示部73には、現在の船首方位が数字で表示される。舵角表示部74は、舵角及びその方向が、数字とグラフを用いて表示される。
【0008】
図8(b)は、旋回中の画面である。この画面を参照すると、設定針路が169度であり、現在の船首方位が303度なので、これらの差分を計算することで、旋回が残りどの程度かを把握することができる。
【0009】
しかし、船舶の旋回中は当然船首方位が変化するので、船首方位表示部73の数字は素早く切り替わる。従って、ユーザは、この素早く切り替わる数字を読み取り、その上で旋回後の設定針路との差分を計算しないと、旋回が残りどの程度かを把握することができない。特に、船舶の旋回中は揺れ等が生じるため、これらの作業を行うことは現実的でない。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、船舶の旋回の進捗度を容易かつ直感的に把握可能な旋回進捗度表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の旋回進捗度表示装置が提供される。即ち、この旋回進捗度表示装置は、方位情報取得部と、旋回量決定部と、進捗度算出部と、表示部と、を備える。前記方位情報取得部は、移動体の向きを示す情報、移動体の進行方向を示す情報、又は移動体の向きに連動して変化する情報の少なくとも何れかである方位情報を取得する。前記旋回量決定部は、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報、及び、予め設定された前記方位情報の設定値に基づいて、移動体の旋回の旋回量を決定する。前記進捗度算出部は、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報に基づいて、前記旋回の進捗度を算出する。前記表示部は、前記進捗度算出部が求めた前記旋回の進捗度として、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報と、前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値と、を図示する。また、前記表示部には、円状又は環状の目盛りが表示され、前記目盛りのうち、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報から前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値までに対応する部分と、前記目盛りの他の部分と、が異なる態様で表示される。
【0013】
これにより、旋回の進捗度が図示されるので、ユーザは、旋回の進捗度を直感的に把握することができる。また、方位情報取得部が取得した方位情報と、旋回の完了後の方位情報の設定値と、を図示することで、ユーザは、旋回の進捗度のうち特に把握したい部分である、旋回の完了までの時間又は角度等を直感的に把握することができる。また、方位情報は角度に関連する値なので、円状又は環状の目盛りを用いて進捗度を表示することで、ユーザは、旋回の進捗度を一層直感的に把握することができる。
【0014】
前記の旋回進捗度表示装置においては、移動体は船舶であることが好ましい。
【0015】
これにより、船舶の旋回には時間が掛かるので、旋回の進捗度を直感的に把握できるという効果を一層有効に活用することができる。
【0018】
前記の旋回進捗度表示装置においては、前記表示部には、更に、前記旋回の開始時の前記方位情報の設定値が前記旋回の進捗度として図示されることが好ましい。
【0019】
これにより、ユーザは、旋回の開始から現在までにどの程度旋回したかを把握することができるので、旋回の完了までの時間又は角度等を一層直感的に把握することができる。
【0022】
前記の旋回進捗度表示装置においては、前記進捗度算出部は、前記旋回の開始及び完了の少なくとも何れかを示す情報と、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報のみに基づいて前記旋回の進捗度を算出することが好ましい。
【0023】
これにより、位置情報を求めることなく、旋回の進捗度を表示させることができる。
【0024】
前記の旋回進捗度表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、移動体は船舶である。移動体の向きを示す情報は船首方位センサから取得される船首方位である。前記進捗度算出部は、前記船首方位センサが取得した前記船首方位と、前記方位情報の設定値とに基づいて、前記旋回の進捗を算出する。
【0025】
これにより、ユーザは、旋回に伴う船首方位の変化を直感的に把握することができる。
【0026】
前記の旋回進捗度表示装置においては、前記表示部には、前記旋回に応じて回転する船舶が図示されることが好ましい。
【0027】
これにより、ユーザは、旋回の伴う船首方位の変化をより直感的に把握することができる。
【0028】
前記の旋回進捗度表示装置においては、移動体の向きに連動する情報は、当該移動体に対する風向であることが好ましい。
【0029】
これにより、旋回に伴う風向の変化が直感的に把握できるので、例えばヨットのタッキング又はジャイビングを行う際に有効な表示が実現できる。
【0030】
本発明の第2の観点によれば、前記旋回進捗度表示装置に自動操舵で旋回を行う自動操舵部を更に備えた自動操舵装置が提供される。
【0031】
これにより、自動操舵中はユーザの指示によらずに旋回を行うため、旋回の進捗度を直感的に把握できるという効果を一層有効に活用することができる。
【0032】
本発明の第3の観点によれば、以下の旋回進捗度表示方法が提供される。即ち、この旋回進捗度表示方法は、方位情報取得工程と、旋回量決定工程と、進捗度算出工程と、表示工程と、を含む。前記方位情報取得工程は、移動体の向きを示す情報、移動体の進行方向を示す情報、又は移動体の向きに連動して変化する情報である方位情報を取得する。前記旋回量決定工程は、前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報、及び、予め設定された前記方位情報の設定値に基づいて、移動体の旋回の旋回量を決定する。前記進捗度算出工程は、前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報に基づいて、前記旋回の進捗度を算出する。前記表示工程は、前記進捗度算出工程で求めた前記旋回の進捗度として、前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報と、前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値と、を図示する。また、前記表示工程では、円状又は環状の目盛りが表示され、前記目盛りのうち、前記方位情報取得工程で取得した前記方位情報から前記旋回の完了後の前記方位情報の設定値までに対応する部分と、前記目盛りの他の部分と、が異なる態様で表示される。
【0033】
これにより、旋回の進捗度が図示されるので、ユーザは、旋回の進捗度を直感的に把握することができる。また、方位情報取得工程で取得した方位情報と、旋回の完了後の方位情報の設定値と、を図示することで、ユーザは、旋回の進捗度のうち特に把握したい部分である、旋回の完了までの時間又は角度等を直感的に把握することができる。また、方位情報は角度に関連する値なので、円状又は環状の目盛りを用いて進捗度を表示することで、ユーザは、旋回の進捗度を一層直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係る自動操舵装置の構成を示すブロック図。
図2】設定針路と船首方位に基づいて旋回を行う様子を示す説明図。
図3】設定針路と船首方位に基づいて旋回を行う際に表示される画面。
図4】設定針路と船首方位に基づいて旋回を行う際に表示される画面。
図5】風向と設定風向に基づいて旋回を行う様子を示す説明図。
図6】風向と設定風向に基づいて旋回を行う際に表示される画面。
図7】円運動を行う際に表示される画面。
図8】従来の自動操舵装置で旋回を行う際に表示される画面。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態の自動操舵装置20は、移動体としての船舶に搭載され、当該船舶が備える舵31の操作を自動的に行うことにより、当該船舶の針路を制御する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の自動操舵装置20は、船首方位取得部21と、風向風速情報取得部22と、操作部23と、制御部24と、表示部25と、を備える。また、自動操舵装置20には、船首方位センサ11と、風向風速センサ12と、が接続されている。
【0037】
船首方位センサ11は、現在の船首方位(方位情報)を検出して、検出した船首方位を自動操舵装置20へ出力する。風向風速センサ12は、現在の風向及び風速を検出して、当該風向及び風速の情報を自動操舵装置20へ出力する。風向風速センサ12で検出できるのは、船舶に対する相対的な風向及び風速である。従って、以下の説明において、相対風向及び相対風速を単に「風向及び風速」等と称することがある。
【0038】
船首方位取得部21は、船首方位センサ11が出力した船首方位を取得して、制御部24へ出力する。風向風速情報取得部22は、風向風速センサ12が出力した風向及び風速を取得して制御部24へ出力する。
【0039】
操作部23は、自動操舵装置20へ指示を行うためのキー及びダイヤル等で構成される。ユーザは、このダイヤルを操作することで、設定針路及び設定風向を指示することができる。自動操舵装置20は、設定針路が指示された場合は、船首方位を設定針路に一致させるように操舵を行う。また、自動操舵装置は、設定風向が指示された場合は、風向を設定風向に一致させるように操舵を行う。
【0040】
制御部24は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアと、自動操舵のためのプログラム等のソフトウェアと、からなるコンピュータである。制御部24は、旋回量決定部24aと、進捗度算出部24bと、自動操舵部24cと、を備える。
【0041】
旋回量決定部24aは、入力された船首方位、風向、設定針路、及び設定風向等に基づいて、旋回量を決定する。旋回量とは、例えば設定針路が指示された場合、船首方位と予め設定された設定針路の差分(偏角)をゼロに近づけるための値である。旋回量の決定方法は任意であり、例えばPID制御を用いることができる。なお、設定風向が指示された場合も同様に、風向と設定風向との差分をゼロにするための旋回量を決定する。
【0042】
進捗度算出部24bは、船舶が旋回を行う際に、旋回の開始前の設定針路と、船首方位センサ11が取得した船首方位と、旋回の完了後の設定針路と、に基づいて、旋回の進捗度を算出する。進捗度算出部24bは、位置情報等を用いることなく、設定針路及び船首方位のみに基づいて進捗度を算出することができる。進捗度算出部24bが算出した旋回の進捗度は、表示部25に図示される。なお、本願における進捗度は、目標値とスタート値の何れか一方が設定され、それに対する現在の値を示す。具体的には進捗度は、(1)スタート値及び目標値が設定され、それらに対して現在の値がどの程度か、(2)スタート値のみが設定され、それに対して現在の値がどの程度か、(3)目標値のみが設定され、それに対して現在の値がどの程度か等を示す。
【0043】
自動操舵部24cは、自動操舵を行って船舶を旋回させる。具体的には、自動操舵部24cは、旋回量決定部24aが決定した旋回量を含む操作信号を生成する。自動操舵部24cが生成した操作信号は、アクチュエータ30へ出力される。
【0044】
表示部25は、液晶ディスプレイ等で構成される。表示部25には、自動操舵に関連した情報が表示される。具体的には、表示部25には、後述の図3(b)に示すように、設定針路表示部41と、船首方位表示部42と、旋回角度表示部43と、旋回進捗度表示部44と、が表示される。表示部25には、従来例で説明したモード表示部及び舵角表示部等を更に表示させても良い。なお、表示部25の詳細な表示内容は後述する。
【0045】
アクチュエータ30は、船体が備える舵31に接続されており、自動操舵部24cから入力された操作信号に応じて舵31を操作することができるように構成されている。このアクチュエータ30は、例えば油圧シリンダ及び油圧ポンプから構成することができるが、電動モータなど他の種類のアクチュエータでも良い。
【0046】
以上の構成により、自動操舵装置20は、船首方位を、操船者によって設定された設定針路に一致させるように舵の操作を自動的に行うものである。即ち、海上においては、波や風の影響を受けて揺動する船体の姿勢を維持するために、操船者が細かい舵切りを行わなければならず、操船者にとって負担が大きい。そこで自動操舵装置20によって舵の操作を自動的に行わせ、操船者が細かい舵切りを行わなくても針路を一定に保つようにしたものである。
【0047】
なお、自動操舵装置20は、様々なモードを有している。自動操舵装置20は、上記のように船首方位を設定針路に一致させるモード、及び、予め設定されたルートに沿うように自動的に操舵を行うモードを有する。また、自動操舵装置20は、風向を用いるモードとしては、上記のように風向を設定風向に一致させるモード、及び、風に向かって左右に旋回を行うモード(ヨットのタッキング用のモード)を有する。
【0048】
次に、自動操舵により旋回を行う際に表示部25に表示される内容について説明する。
【0049】
初めに、図2から図4を参照して、船舶5が船首方位及び設定針路に基づいて90度の旋回を行う場合について説明する。この場合、例えば図2に示すように船舶が旋回する。なお、図2は、予め設定されたルートに沿うように自動操舵を行うと考えることもできるし、設定針路が途中で変更された場合と考えることもできる。
【0050】
図3(a)は、旋回前に表示部25に表示される画面である。図3(a)には、設定針路表示部41と、船首方位表示部42と、旋回進捗度表示部44と、が表示されている。ここで、設定針路表示部41には、操作部23等により指示された現在の設定針路が数値で表示されている。船首方位表示部42には、船首方位センサ11が取得した現在の船首方位が数値で表示されている。
【0051】
旋回前における旋回進捗度表示部44には、目盛り44aと、船舶マーク44bと、が表示されている。目盛り44aは環状(リング状)であり、その内部に船舶マーク44bが表示されている。船舶マーク44bは、船首方位センサ11が取得した船首方位に該当する目盛り44aの部分を、当該船舶マーク44bの先端を用いて指し示す。
【0052】
なお、旋回進捗度表示部44は、旋回前には表示させずに、旋回の開始時に初めて表示させても良い。また、船舶マーク44bを省略し、目盛り44aを円状に表示しても良い。
【0053】
図3(b)は、旋回の開始直後に表示部25に表示される画面である。旋回を開始する際には、新たな設定針路が設定されるため、上記で説明した設定針路表示部41の値が新たな設定針路(旋回の完了後の設定針路)に変化する。また、旋回が進むに従って、船首方位表示部42の値が変化する。
【0054】
また、旋回が開始することで、旋回角度表示部43が新たに表示部25に表示される。旋回角度表示部43は、設定針路の変更量である旋回角度が表示される。図3に示す例では、設定針路を90度変化させるので、旋回角度表示部43には、旋回角度である90度という数値と、その方向(P)と、が表示される。旋回角度表示部43は、旋回が開始したときに表示され、旋回が完了したときに非表示となる。
【0055】
また、旋回が開始することで、旋回進捗度表示部44の表示態様が旋回前と比べて変化する。旋回進捗度表示部44には、旋回の開始に伴って新たに、開始点44cと、完了点44dと、環状ゲージ44eと、が表示される。
【0056】
開始点44cは、旋回の開始前の設定針路に対応する箇所に表示される。完了点44dは、旋回の完了後の設定針路に対応する箇所に表示される。開始点44c及び完了点44dは、ともに丸印であるが、表示態様が異なっている。特に、完了点44dは、他の表示と異なる色(目立つ色)で表示される。これは、ユーザが、旋回前よりも旋回後の設定針路の方が重要と考えることが多いからである。
【0057】
環状ゲージ44eは、残りの旋回量に対応する部分について、目盛り44aの表示態様を異ならせた部分である。従って、図3(b)に示すように、旋回の開始直後は、環状ゲージ44eは、旋回角度と同一の90度の範囲を占めている。その後、環状ゲージ44eは、旋回が進むに従って徐々に表示面積が小さくなる(図4を参照)。
【0058】
言い換えれば、環状ゲージ44eのうち、開始点44c側の端部は、現在の船首方位を示している。そのため、環状ゲージ44eの端部と、船舶マーク44bの先端と、は同じ箇所を示している。
【0059】
このように、本実施形態では、旋回の前後の設定針路と、船首方位センサ11が取得した現在の船首方位と、のみに基づいて旋回の進捗度が算出され、当該旋回の進捗度が表示部25に表示される。具体的には、ユーザは、開始点44cと環状ゲージ44eの一端部(又は船舶マーク44b)を参照することで、船舶が現在までにどの程度旋回したかを直感的に把握することができる。また、環状ゲージ44eを参照することで、船舶が後どの程度旋回するかを直感的に把握することができる。特に、ユーザは、後どの程度で船が真っ直ぐ動くかを知りたいため、後者の情報はより有用である。この点を考慮して、本実施形態では、完了点44dを目立つ色で表示するとともに、残りの旋回に応じた部分(環状ゲージ44e)の表示態様を変化させる構成である。
【0060】
その後、旋回が進行して、旋回が完了すると、旋回角度表示部43が非表示になるとともに、開始点44c、完了点44d、及び環状ゲージ44eが非表示となる。そして、90度ターンが終了し、通常の自動操舵モードに移行する。
【0061】
以上に説明したように、自動操舵装置20は、船首方位取得部21と、旋回量決定部24aと、進捗度算出部24bと、表示部25と、を備える。船首方位取得部21は、自船の向きを示す情報である方位情報を取得する。旋回量決定部24aは、(旋回前又は旋回時に)船首方位センサ11が取得した船首方位と、予め設定された針路の設定値(設定針路)と、に基づいて自船の旋回の旋回量を決定する。進捗度算出部24bは、(旋回中に)船首方位センサ11が取得した方位情報に基づいて、旋回の進捗度を算出する。表示部25は、進捗度算出部24bが求めた旋回の進捗度を図示する。
【0062】
これにより、旋回の進捗度が図示されるので、ユーザは、旋回の進捗度を直感的に把握することができる。
【0063】
次に、図5に示すように、船舶5が風に向かって左右に旋回を行うモードにおいて船舶5が旋回を行うときに、表示部25に表示される内容について説明する。このモードでは、船首を対称軸として対称な2つの設定風向が定められている。そして、所定時間毎又は所定距離毎に一方の設定風向から他方の設定風向に設定を切替え、それに伴って船舶5が旋回を行う。
【0064】
図6(a)は、旋回を行った直後に表示部25に表示される画面である。図6(a)には、設定風向表示部51と、現在風向表示部52と、船速表示部53と、旋回進捗度表示部54と、が表示されている。
【0065】
設定風向表示部51には、現在の設定風向が数値で表示されている。現在は旋回中なので、上記と同様に、設定風向表示部51には旋回の完了後の設定風向が表示されている。
【0066】
風向表示部52には、風向風速センサ12等から取得した、現在の風向が数値で表示されている。従って、風向表示部52の値は、旋回が進むに従って変化する。
【0067】
船速表示部53には、図略の船速計から取得した船舶5の船速が数値で表示されている。なお、船速は、相対船速であっても良いし、絶対船速であっても良いし、非表示でも良い。
【0068】
旋回進捗度表示部54は、目盛り54aと、開始点54cと、完了点54dと、環状ゲージ54eと、で構成されている。各部の詳細は、上記と同様なので簡単に説明する。目盛り54aは、風向を示すための目盛りであり、開始点54cは旋回の開始前の設定風向を示し、完了点54dは旋回の完了後の設定風向を示す。また、環状ゲージ54eは、開始点側の端部が、現在の風向を示している。
【0069】
この構成により、風向を用いて旋回の進捗度を表示することができる。従って、上記と同様の効果を発揮することができる。
【0070】
次に、図7を参照して、船舶が円を描くように移動し続けるときに、表示部25に表示される内容を説明する。図7(a)と図7(b)は、連続する画面ではなく、表示態様が異なる2つの表示例を並べたものである。
【0071】
図7(a)には、設定針路表示部61と、船首方位表示部62と、針路変更情報表示部63と、旋回進捗度表示部64と、が表示される。設定針路表示部61には、設定された現在の設定針路が数値で表示されている。船首方位表示部62には、船首方位センサ11が取得した現在の船首方位が数値で表示されている。針路変更情報表示部63には、設定針路を変更する度合いが表示されている。図7に示す例では、1秒毎に設定針路を3度変更する。
【0072】
図7(a)の旋回進捗度表示部64には、船舶マーク64aと、軌跡64bと、が表示されている。船舶マーク64aは、船舶が円軌道状のどの部分に位置するかを示す。なお、円運動を行っているため、制御部24は、船首方位のみに基づいて、円運動のどのあたりに船舶が位置するかを求めることができる(位置情報は不要)。軌跡64bは、船舶が移動した軌跡を示している。従って、軌跡64bのうち、船舶マーク64aの反対側の端部は、円運動の開始点である。
【0073】
図7(b)の旋回進捗度表示部64には、上記に加え、円ルート64cが破線で表示されている。円ルート64cは、船舶マーク64aが進行する円運動のうち、軌跡64bが表示されていない部分に表示される。これにより、ユーザは、船舶が円運動を行っていることをより直感的に把握することができる。
【0074】
以上の構成により、軌跡64b等に基づいて、旋回(円運動)の進捗度を表示することができる。従って、上記と同様の効果を発揮することができる。
【0075】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0076】
方位情報としては、自船の向きを示す情報、自船の進行方向を示す情報、又は自船の向きに連動して変化する情報であれば、任意の情報を用いることができる。
【0077】
旋回の進捗度は、自動操舵装置20が備える表示部25以外に表示しても良い。例えば、プロッタ装置の表示部又は複数の機器が接続される汎用型のディスプレイに表示することができる。この場合、自動操舵装置20と、この表示部等と、をまとめたものが旋回進捗度表示装置に該当する。
【0078】
本発明の構成は、1つの筐体にまとめて収容されている必要はなく、個別の装置を組み合わせて構成しても良い。
【0079】
上記実施形態では移動体として船舶を例に挙げて説明したが、本発明は船舶以外の移動体、例えば航空機及び走行車両(作業車両)等にも適用することができる。航空機は、船舶と同様に、方位センサを備えているので、上記実施形態と同様の構成で本発明を実現できる。また、走行車両は、上記と同様に方位センサを用いたり、ステアリングホイール又は車輪の角度等を検出するセンサを用いたりすることで本発明を実現できる。航空機又は走行車両に本発明を適用した場合においても、船舶の場合と同様の効果を実現することができる。
【符号の説明】
【0080】
11 船首方位センサ
12 風向風速センサ
20 自動操舵装置(旋回進捗度表示装置)
21 船首方位取得部
22 風向風速情報取得部
23 操作部
24 旋回量決定部
25 表示部
30 アクチュエータ
31 舵
41 設定針路表示部
42 船首方位表示部
43 旋回角度表示部
44 旋回進捗度表示部
44a 目盛り
44b 船舶マーク
44c 開始点
44d 完了点
44e 環状ゲージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8