特許第6228812号(P6228812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228812
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】携帯型エンジン作業機
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/02 20060101AFI20171030BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20171030BHJP
   F02B 63/02 20060101ALI20171030BHJP
   F02B 63/00 20060101ALI20171030BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F02D11/02 F
   F02D11/02 P
   F02D9/02 351E
   F02B63/02
   F02B63/00 F
   A01D34/68 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-227342(P2013-227342)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-86819(P2015-86819A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊福 泰雄
【審査官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4490322(JP,B2)
【文献】 特開2008−115793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00〜11/10
F02B 63/00〜63/06
A01D 34/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部と、
前記作業部を駆動するエンジンと、
前記エンジンのスロットルバルブに接続されたスロットルケーブルと、
前記スロットルケーブルを引張して前記スロットルバルブを開放する方向に操作を行うスロットルレバーと、
所定の操作量の前記スロットルレバーの操作によって引張される前記スロットルケーブルの引張量を調整して前記スロットルバルブの開度を調整するバルブ開度調整機構と、を備え、
前記バルブ開度調整機構は、
前記スロットルレバーの近傍に回転自在に支持され、前記スロットルケーブルが接続されるケーブル接続部と前記スロットルレバーの操作力が作用する操作入力部とを有し、前記スロットルレバーの操作によって前記スロットルケーブルを引張する動作を行う引張リンクを具備し、
前記引張リンクの回転中心と前記ケーブル接続部との間の距離と、前記引張リンクの回転中心と前記操作入力部との間の距離と、の比を変更することで、所定の操作量の前記スロットルレバーの操作によって引張される前記スロットルケーブルの引張量を調整し、
前記スロットルレバーの操作力が前記スロットルケーブルを引張する方向に作用し始める前記スロットルレバーの操作量は、前記バルブ開度調整機構によって調整された前記スロットルケーブルの引張量にかかわらず一定である
ことを特徴とする携帯型エンジン作業機。
【請求項2】
前記バルブ開度調整機構は、前記引張リンクの回転中心を移動させることによって、前記引張リンクの回転中心と前記ケーブル接続部との間の距離と、前記引張リンクの回転中心と前記操作入力部との間の距離と、の比を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯型エンジン作業機。
【請求項3】
前記バルブ開度調整機構は、前記引張リンクの回転中心を移動させる操作が可能な引張量調整レバーを有している
ことを特徴とする請求項2に記載の携帯型エンジン作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンの動力によって駆動する刈払機、チェーンソー、パワーブロワ等の携帯型エンジン作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の携帯型エンジン作業機としては、作業部と、作業部を駆動するエンジンと、エンジンのスロットルバルブに接続されたスロットルケーブルと、スロットルケーブルを引張してスロットルバルブを開放する方向に操作を行うスロットルレバーと、所定の操作量のスロットルレバーの操作によって引張されるスロットルケーブルの引張量を調整してスロットルバルブの開度を調整するバルブ開度調整機構と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この携帯型エンジン作業機では、バルブ開度調整機構によって、所定の操作量のスロットルレバーの操作におけるエンジンの出力を任意に設定することが可能である。
【0003】
前記バルブ開度調整機構は、スロットルレバーの操作力がスロットルケーブルを引張する方向に作用し始めるスロットルレバーの操作量を調整することで、所定の操作量のスロットルレバーの操作におけるスロットルケーブルの引張量を調整している。すなわち、前記携帯型エンジン作業機では、所定の操作量のスロットルレバーの操作におけるスロットルケーブルの引張量を小さく設定すると、スロットルレバーの遊び量が大きくなる。また、前記携帯型エンジン作業機では、所定の操作量のスロットルレバーの操作におけるスロットルケーブルの引張量を大きく設定すると、バルブ開放レバーの遊び量が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4490322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記携帯型エンジン作業機では、所定の操作量のスロットルレバーの操作におけるスロットルケーブルの引張量の変更に伴って、スロットルレバーの遊び量が変化する。このため、前記携帯型エンジン作業機では、バルブ開度調整機構の設定状態によって、エンジンの出力がアイドル状態から変化し始めるスロットルレバーの操作量が異なることになり、使用者の操作性及び安全性に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、バルブ開度調整機構の設定状態にかかわらずエンジンの出力がアイドル状態から変化し始めるスロットルレバーの操作量を一定とすることで使用者の操作性及び安全性を向上させることのできる携帯型エンジン作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、作業部と、前記作業部を駆動するエンジンと、前記エンジンのスロットルバルブに接続されたスロットルケーブルと、前記スロットルケーブルを引張して前記スロットルバルブを開放する方向に操作を行うスロットルレバーと、所定の操作量の前記スロットルレバーの操作によって引張される前記スロットルケーブルの引張量を調整して前記スロットルバルブの開度を調整するバルブ開度調整機構と、を備え、前記バルブ開度調整機構は、前記スロットルレバーの近傍に回転自在に支持され、前記スロットルケーブルが接続されるケーブル接続部と前記スロットルレバーの操作力が作用する操作入力部とを有し、前記スロットルレバーの操作によって前記スロットルケーブルを引張する動作を行う引張リンクを具備し、前記引張リンクの回転中心と前記ケーブル接続部との間の距離と、前記引張リンクの回転中心と前記操作入力部との間の距離と、の比を変更することで、所定の操作量の前記スロットルレバーの操作によって引張される前記スロットルケーブルの引張量を調整し、前記スロットルレバーの操作力が前記スロットルケーブルを引張する方向に作用し始める前記スロットルレバーの操作量は、前記バルブ開度調整機構によって調整された前記スロットルケーブルの引張量にかかわらず一定である
【0008】
これにより、所定の操作量のスロットルレバーの操作によって引張されるスロットルケーブルの引張量をバルブ開度調整機構によって変更した場合においても、スロットルレバーの操作力がスロットルケーブルを引張する方向に作用し始めるスロットルレバーの操作量が一定となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スロットルレバーの操作力がスロットルケーブルを引張する方向に作用し始めるスロットルレバーの操作量を一定とすることができるので、エンジンの出力がアイドル状態から変化し始めるスロットルレバーの操作量が一定となり、使用者の操作性及び安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す出力調整装置を備えた刈払機の斜視図である。
図2】出力調整装置の斜視図である。
図3】一部のハウジングを取り外した出力調整装置の側面図である。
図4】出力調整装置の側面断面図である。
図5図3のA−A´断面図である。
図6】所定量のスロットルレバーの操作に対してスロットルケーブルの引張量を変更する構造の概略図である。
図7】出力調整装置の操作方法を示す図である。
図8】エンジンの出力調整方法を示す図である。
図9】エンジンの出力調整方法を示す図である。
図10】エンジンの出力調整方法を示す図である。
図11】本発明のその他の例を示す一部のハウジングを取り外した出力調整装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図10は、本発明の一実施形態を示すものである。なお、以下の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0012】
本実施形態では、本発明の携帯型エンジン作業機の一例として、エンジン駆動の刈払機について説明する。
【0013】
この刈払機1は、図1に示すように、前後方向に延びる操作杆2と、操作杆2の後端側に接続された駆動源としてのエンジン3と、操作杆2の前端側にギヤヘッド4を介して回動自在に取り付けられた円板状の作業部としての刈刃5と、を備えている。
【0014】
操作杆2は、内部にドライブシャフト(図示せず)が回動自在に設けられている。ドライブシャフトの後端側には、エンジン3が連結されている。また、ドライブシャフトの前端側には、ギヤヘッド4が連結されている。
【0015】
また、操作杆2の中央部のやや後側には、使用者が刈払機1を操作する際に、使用者が一方の手(例えば、左手)で保持するハンドル6が設けられている。ハンドル6は、操作杆2の上方及び左右両方に張り出す環状の部材である。ハンドル6は、上部側が後方に向くように、斜め後方に傾けられている。
【0016】
操作杆2のエンジン3とハンドル6との間に位置する部分には、使用者が刈払機1を操作する際に、使用者が他方の手(例えば、右手)で保持するグリップ7が設けられている。グリップ7は、操作杆2の外周部を覆う円筒状の部材である。
【0017】
操作杆2のグリップ7の前方に位置する部分には、使用者が他方の手でグリップ7を把持しながらエンジン3の出力を調整するための出力調整装置100が設けられている。出力調整装置100は、エンジン3の出力を調整するために、エンジン3に設けられたスロットルバルブ(図示せず)の開度を調整するものである。
【0018】
出力調整装置100は、図2乃至図5に示すように、操作杆2のグリップ7の前方に位置する部分に設けられたハウジング101と、エンジン3のスロットルバルブに連結されたスロットルケーブル110と、スロットルケーブル110を引張する操作を行うためのスロットルレバー120と、所定の操作量のスロットルレバー120の操作によって引張されるスロットルケーブル110の引張量を調整してスロットルバルブの開度を調整するバルブ開度調整機構130と、を備えている。
【0019】
スロットルケーブル110は、一端部がスロットルバルブに接続され、他端部がバルブ開度調整機構130の後述する引張リンクに接続されている。スロットルケーブル110は、スロットルバルブとハウジング101との間を操作杆2に沿って延びるアウタチューブ111内を移動自在に設けられている。スロットルケーブル110は、他端部がアウタチューブ111の端部から離間する位置まで延びており、他端部をアウタチューブ111の径方向に移動させることが可能である。
【0020】
スロットルレバー120は、操作杆2の下方を前後方向に延びる部材からなる。スロットルレバー120の前端側には、ハウジング101に支軸121を介して回転自在に支持される支持部120aが設けられている。スロットルレバー120には、支持部120aからグリップ7の下方を後方に延びるように形成され、使用者が他方の手で操作するための操作部120bが設けられている。操作部120bは、操作部120bを最大限上方に向けてスロットルレバー120を操作した場合に、グリップ7の下側に沿って延びるように形成されている。スロットルレバー120には、図4及び図5に示すように、支持部120aから上方に延びるように形成され、使用者の操作部120bを操作した力をバルブ開度調整機構130の後述する引張リンクに伝達するための操作力伝達部120cを有している。操作力伝達部120cには、後述する引張リンクに係合する係合ピン120dが幅方向に延びるように設けられている。スロットルレバー120は、図4に示すように、操作部120bがグリップ7から離れる方向に圧縮ばね120eによって付勢されている。
【0021】
バルブ開度調整機構130は、スロットルレバー120の操作に連動してスロットルケーブル110を引張する動作を行う引張リンク131と、引張リンク131に連結され、所定の操作量のスロットルレバー120の操作によるスロットルケーブル110の引張量を調整するための引張量調整レバー132と、を有している。
【0022】
引張リンク131には、スロットルケーブル110の他端部が接続されるケーブル接続部131aが一端部に設けられ、引張量調整レバー132に支軸133を介して回転自在に支持される支持部131bが他端部に設けられている。また、引張リンク131には、スロットルレバー120の係合ピン120dが当接する操作入力部としての当接面131cが、ケーブル接続部131aと支持部131bとの間に設けられている。当接面131cは、ケーブル接続部131aと支持部131bとの間に設けられた溝131dの側壁の前側に位置する部分である。
【0023】
引張リンク131は、スロットルレバー120の操作によって係合ピン120dを当接面131cに当接させることで、支持部131bを中心に回転する。引張リンク131は、支持部131bを中心にケーブル接続部131aを前方に移動させる方向に回転することで、スロットルケーブル110を引張する。
【0024】
引張量調整レバー132は、上端側が前後方向に移動自在となるように、下端側が支軸134を介してハウジング101に回転自在に支持されている。引張量調整レバー132の上端部には、グリップ7を把持した手の親指で引張量調整レバー132を前後方向に移動させる操作を行うための操作部132aが設けられている。引張量調整レバー132の下端側には、前方に向かって延びるとともに、引張リンク131の支持部131bが支軸133を介して回転自在に連結された連結部132bが設けられている。
【0025】
引張量調整レバー132は、操作部132aを前後方向の操作可能な範囲内の任意の位置で姿勢を保持することが可能である。引張量調整レバー132は、スロットルレバー120によってスロットルケーブル110を引張する操作を行う際に、操作部132aが前後方向の任意の位置に設定された状態を保持することが可能である。
【0026】
引張量調整レバー132は、操作部132aを前側に移動させると、連結部132bが下方に移動する。連結部132bが下方に移動すると、連結部132bに連結された引張リンク131も下方に移動し、引張リンク131の支持部131bとスロットルレバー120の係合ピン120dとの間の距離が大きくなる。
【0027】
また、引張量調整レバー132は、操作部132aを後側に移動させると、連結部132bが上方に移動する。連結部132bが上方に移動すると、連結部132bに連結された引張リンク131も上方に移動し、引張リンク131の支持部131bとスロットルレバー120の係合ピン120dとの間の距離が小さくなる。
【0028】
引張量調整レバー132は、操作部132aの操作によって引張リンク131を移動させることで、引張リンク131の回転中心となる支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)の間の距離D1と、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2と、の比を調整することが可能である。
【0029】
すなわち、図6(b)の状態において、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対して、支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)との間の距離D1の割合を小さくすると、図6(c)に示すように、所定の操作量Mのスロットルレバー120に対してスロットルケーブル110の引張量Pが大きくなる。
【0030】
また、図6(b)の状態において、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対して、支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)との間の距離D1の割合を大きくすると、図6(a)に示すように、所定の操作量Mのスロットルレバー120に対してスロットルケーブル110の引張量Pが小さくなる。
【0031】
また、本実施形態では、引張リンク131の当接面131cのケーブル接続部131a側を、前方に張り出すように形成している。これにより、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対して、支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)との間の距離D1の割合を最大限大きくすると、スロットルレバー120のスロットルケーブル110を引張する操作に遊びが生じて引張量Pが小さくなる。
【0032】
以上のように構成された携帯型エンジン作業機としての刈払機1において、エンジン3を始動して、スロットルレバー120を操作しない状態では、引張量調整レバー132の操作部132aの操作位置にかかわらず、エンジン3はアイドル運転の状態となる。
【0033】
エンジン3がアイドル運転の状態において、刈払機1による作業を行う場合には、使用者は、一方の手(例えば、左手)でハンドル6を把持するとともに、他方の手(例えば、右手)でグリップ7を把持する。このとき、使用者は、他方の手でグリップ7を把持する際に、図7に示すように、スロットルレバー120の操作部120bを最大限グリップ7側に操作し、グリップ7及びスロットルレバー120の操作部120bをまとめて把持する。この刈払機1は、図8に示すように、使用者がグリップ7とともに把持することによって操作されるスロットルレバー120の操作量で、作業を行う。
【0034】
刈払機1は、使用者がグリップ7及びスロットルレバー120の操作部120bを同時に把持した状態(図8)において、エンジン3の出力の調整を行うことが可能である。エンジン3の出力の調整は、グリップ7及びスロットルレバー120の操作部120bを把持した手の親指で、引張量調整レバー132の操作部132aを前後方向に移動させることにより行う。
【0035】
操作部132aが移動可能な範囲の前後方向中央部の位置(図6(b)の状態)から、エンジン3の出力を大きくする場合には、図8の矢印Rに示すように、操作部132aを後方に移動させる。操作部132aを後方に移動させると、引張リンク131は上方に移動し、引張リンク131の回転中心となる支持部131bと当接面131cに当接している係合ピン120dとの距離が小さくなる。これにより、図9に示すように、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対して、支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)との間の距離D1の割合が小さくなり、所定の操作量Mのスロットルレバー120に対するスロットルケーブル110の引張量Pが大きくなる(図6(c)の状態)。スロットルケーブル110の引張量Pが大きくなると、スロットルバルブの開度が大きくなるため、エンジン3の出力が大きくなる。
【0036】
また、操作部132aが移動可能な範囲の前後方向中央部の位置(図6(b)の状態)から、エンジン3の出力を小さくする場合には、図8の矢印Fに示すように、操作部132aを前方に移動させる。操作部132aを前方に移動させると、引張リンク131は下方に移動し、引張リンク131の回転中心となる支持部131bと当接面131cに当接している係合ピン120dとの距離が大きくなる。これにより、図10に示すように、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対して、支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)との間の距離D1の割合が大きくなり、所定の操作量Mのスロットルレバー120に対するスロットルケーブル110の引張量Pが小さくなる(図6(a)の状態)。スロットルケーブル110の引張量Pが小さくなると、スロットルバルブの開度が小さくなるため、エンジン3の出力が小さくなる。
【0037】
バルブ開度調整機構130は、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対する支持部131bと当接面131cのスロットルレバー120の係合ピン120dが当接する部分(操作入力部)との間の距離D1の割合を変更することによって、所定の操作量Mのスロットルレバー120に対するスロットルケーブル110の引張量Pを変更するようにしている。このため、スロットルレバー120の操作力がスロットルケーブル110を引張する方向に作用し始めるスロットルレバー120の操作量は、引張量調整レバー132の設定位置にかかわらず一定となる。
【0038】
このように、本実施形態の携帯型エンジン作業機では、スロットルレバー120の前端部の近傍に回転自在に支持され、スロットルケーブル110が接続されるケーブル接続部131aとスロットルレバー120の操作力が作用する当接面131cとを有し、スロットルレバー120の操作によってスロットルケーブル110を引張する動作を行う引張リンク131を具備し、引張リンク131の回転中心とケーブル接続部131aとの間の距離D2と、引張リンク131の回転中心と当接面131cの係合ピン120dが当接する部分との間の距離D1と、の比を変更することで、所定の操作量Mのスロットルレバー120の操作によって引張されるスロットルケーブル110の引張量Pを調整している。
これにより、スロットルレバー120の操作力がスロットルケーブル110を引張する方向に作用し始めるスロットルレバー120の操作量を一定とすることができるので、エンジン3の出力がアイドル状態から変化し始めるスロットルレバー120の操作量が一定となり、使用者の操作性及び安全性を向上させることが可能となる。
【0039】
また、バルブ開度調整機構130は、引張リンク131の回転中心となる支持部131bを移動させることによって、引張リンク131の回転中心とケーブル接続部131aとの間の距離D2と、引張リンク131の回転中心と当接面131cの係合ピン120dが当接する部分との間の距離D1と、の比を変更している。
これにより、簡易な構造によって、所定の操作量Mのスロットルレバー120の操作によって引張されるスロットルケーブル110の引張量Pを調整することができるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0040】
また、バルブ開度調整機構130は、引張リンク131の回転中心を移動させる操作が可能な引張量調整レバー132を有している。
これにより、刈払機1を使用中の使用者が作業を行いながら、所定の操作量Mのスロットルレバー120の操作によって引張されるスロットルケーブル110の引張量Pを調整することができるので、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0041】
尚、前記実施形態では、携帯型エンジン作業機の一例として刈払機1に本発明を適用したものを示したが、これに限られるものではない。本発明は、例えば、チェーンソー、パワーブロワ等の携帯型エンジン作業機に対しても適用することが可能である。
【0042】
また、前記実施形態では、引張リンク131の当接面131cのケーブル接続部131a側を、前方に張り出すように形成したものを示したが、これに限られるものではない。
図11に示すように、当接面131eをケーブル接続部131aと支持部131bとの間で平面状に形成し、スロットルレバー120のスロットルケーブル110を引張する操作に遊びが生じないようにしてもよい。この場合には、スロットルレバー120の操作量とスロットルケーブル110の引張量の関係を、支持部131bとケーブル接続部131aとの間の距離D2に対する支持部131bと係合ピン120dとの間の距離D1の割合により正確に関連付けることが可能である。
【0043】
また、前記実施形態では、引張リンク131の支持部131bを移動させることによって、引張リンク131の回転中心とケーブル接続部131aとの間の距離D2と、引張リンク131の回転中心と当接面131cの係合ピン120dが当接する部分との間の距離D1と、の比を変更するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。引張リンク131の回転中心とケーブル接続部131aとの間の距離D2と、引張リンク131の回転中心と当接面131cの係合ピン120dが当接する部分との間の距離D1と、の比が変更可能であれば、例えば、引張リンク131の回転中心としての支持部131bをハウジング101に回転自在に支持し、スロットルレバー120の回転中心を移動可能とすることで、引張リンク131の回転中心とケーブル接続部131aとの間の距離D2と、引張リンク131の回転中心と当接面131cの係合ピン120dが当接する部分との間の距離D1と、の比を変更するようにしてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、操作杆2から上方及び左右両側に張り出す環状のハンドル6と、操作杆2のエンジン3とハンドル6との間に設けられたグリップ7と、を有する刈払機1を示したが、これに限られるものではない。例えば、操作杆から上方及び左右両側に張り出すU字状に湾曲したハンドルと、ハンドルの両端部に設けられたグリップと、を有する刈払機に対しても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…刈払機、3…エンジン、5…刈刃、100…出力調整装置、110…スロットルケーブル、120…スロットルレバー、130…バルブ開度調整機構、131…引張リンク、131a…ケーブル接続部、131b…支持部、131c…当接面、132…引張量調整レバー。
図1
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図11